共同研究・競争的資金等の研究 - 窪木 拓男
-
自家骨芽細胞に対するex vivo遺伝子導入法によるインプラント周囲骨の増生
研究課題/領域番号:12470419 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
李 起学, 中西 徹, 滝川 正春, 窪木 拓男, 荒川 光
配分額:8200000円 ( 直接経費:8200000円 )
本研究は,遺伝子治療を用いたインプラント周囲骨の骨増生法を開発することを目的に,現在遺伝子導入によく用いられているアデノウイルスベクターにCTGFなどの骨形成関連因子を組み込み,このウイルスベクターを実験動物の一部骨を欠損させた骨や実験的にインプラント周囲骨を欠損させた部位にex vivo法にて導入し骨を増生させることができるか検討を行うものである.
平成12年度から平成13年度に置いて本研究を行った結果,以下の結論を得た.
1.アデノウイルスベクターにレポータージーンであるlacZや骨形成関連因子であるCTGFを組み込むことができた.
2.そのベクターを用いた骨芽細胞におけるin vitroでの遺伝子導入効率はMOI50が最適であり,導入後7日を経てもCTGF遺伝子の発現とCTGFタンパクの産生が確認された.
3.実験的骨欠損作成過程では,抜歯創治癒,すなわち歯槽骨再生過程でCTGFが重要なキーファクターであることが確認された.
4.実験的骨欠損を作成し,ex vivo遺伝子導入法を試みた結果,自己の細胞(骨芽細胞)を単離採取して,増殖・分化させることが困難であることがわかった.
5.培養した骨芽細胞はチタン上に生着し,分化・増殖することが確認された.
以上の結果から今後は,自己の細胞を局所から採取し,目的とする細胞のみを効率良く単離し,分化増殖させる方法がex vivo法にとっては不可欠であり,その確立が必要であると考えられた. -
アデノウイルスベクター法を用いた早期osseointegrationの獲得
研究課題/領域番号:11877338 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究 萌芽的研究
李 起学, 滝川 正春, 中西 徹, 窪木 拓男
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
休止期や分裂増殖の遅い細胞へも高い効率で遺伝子導入が可能であり,in vivo遺伝子導入が容易な,アデノウイルスベクター法を用い,アデノウイルスベクターに骨形成能が高いCTGF, TGF-βの遺伝子を組み込む方法を用い,続いて,ラット脛骨にアデノウイルスベクターを投与し,周囲組織(骨芽細胞,間葉系細胞)に感染,遺伝子導入させることで,持続的にそれらの遺伝子を発現させ,早期osseointegrationの獲得を試みることを目的とした実験を行ってきた。
前年度において,アテロコラーゲンとウイルスベクターの複合化と,複合化したウイルスベクターのin vivo LacZ遺伝子導入を行った。しかし導入効率が低く他のキャリアを用いた実験系が必要であると考えられた。そこで本年度はポリ乳酸や他の高分子生体材料をキャリアとして用いウイルスベクターと複合化を行いin vivo実験を行った。
1.ポリ乳酸とウイルスベクターの複合化
ポリ乳酸とウイルスベクター液を混ぜ凍結乾燥を行い,複合化させることに成功した。
2.複合化したウイルスベクターのin vivo LacZ遺伝子導入
ラット脛骨内に1で作製したLacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを注入し,経時的にラットを屠殺し,脛骨におけるLacZ遺伝子発現をX-gal染色にて観察したところ,ポリ乳酸を用いても導入効率の上昇にはつながらなかった。
3.ウイルスベクターの他臓器への感染の有無
2のラット屠殺時,固定直前に気管,肝臓,膵臓,腎臓,骨格筋を摘出し,total RNAを抽出し,LacZに対するprimerを用い,RT-PCRを行ったところ,他臓器にLacZ遺伝子の発現は認められなかったことから,ウイルスベクターの他臓器への影響がないことが確認できた。 -
生物学的に修復象牙質を形成促進する分化・増殖因子の分子クローニングとその応用
研究課題/領域番号:10470417 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
李 起学, 山下 淳, 鈴木 康司, 窪木 拓男, 滝川 正春, 完山 学
配分額:11500000円 ( 直接経費:11500000円 )
象牙質の形成に関わる分化・成長因子が歯髄刺激時に産生され,歯髄細胞,特に象牙芽細胞が活性化されることにより,いわゆる修復象牙質が形成されると考えられている。本研究ではこの自己組織修復能力を活用した歯質保全療法の開発を目指して,修復象牙質の形成の際に特異的に発現している遺伝子の同定ならびに当該遺伝子の導入が可能であるかを検討した。
平成10年度では,歯に窩洞を形成したときの歯髄細胞に発現する特徴的遺伝子の検出をsubtractive hybridization法で行った。その結果,14のクローンが解析できた。
平成11年度では,ラット臼歯に歯髄に達する禽洞を形成し,LacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを注入,窩洞を接着性レジンで密閉した。*週後にラットを屠殺し,歯髄細胞におけるLacZ遺伝子発現をX-gal染色にて観察したところ露髄面に接する象牙芽細胞の*部に遺伝子導入が確認された。しかし,遺伝子導入率がきわめて低かった。この結果は露髄面にウイルス液を注入してもすぐに拡散してしまい一定時間ウイルスを感染させることができなかったためであると考えられた。今後は経時的にウイルスが徐放されるシステムを確立する必要があると考えられた。また,ラット屠殺時,固定直前に気管,肝臓,膵臓,腎臓,骨格筋を摘出し,total RNAを抽出し,LacZ遺伝子に対するprimerを用いてRT-PCRを行うことで他臓器に影響があるか確認したところ,他臓器への感染は認められなかった。 -
ヒト軟骨細胞のメカニカルストレスに関連した細胞内情報伝達機構-ストレスの多寡と細胞内情報伝達転換機構-
研究課題/領域番号:10470415 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 服部 高子, 滝川 正春
配分額:11300000円 ( 直接経費:11300000円 )
本研究では,負荷と軟骨破壊との関係,さらにはその機序を明らかにすることを目的として,周期的な伸展負荷が軟骨細胞の増殖,基質合成,軟骨破壊因子の発現におよぼす影響について検討し,以下の知見が得られた。
1.DNA,タンパク質およびコラーゲン合成に対する影響
15kPaおよび5kPaのどちらの負荷でもDNA合成能,タンパク合成能およびコラーゲン合成能は高頻度のストレスによって有意に低下した。
2.プロテオグリカンの蓄積と合成に対する影響
ウロン酸量はどちらの負荷でも高頻度のストレスによって有意に減少した。また,15kPaの高頻度のストレスを加えると,プロテオグリカン合成は経時的に減少したのに対し,低頻度のストレスでは,負荷後初期にプロテオグリカン合成がわずかに減少したがその後はほとんど変化しなかった。さらに,15kPaの高頻度のストレスにおいて培養上清中にMMPインヒビターを添加すると,ストレス負荷後のプロテオグリカンの減少が抑制された。
3.軟骨破壊因子の遺伝子発現におよぼす影響
IL-1,MMP-2 mRNAについては,どちらの負荷群においても負荷後早期に一時的な増加が認められた後,24時間以内には元のレベルにまで戻った。これに対し,MMP-9 mRNAの発現は,15kPa負荷群では24時間まで増加し続けた。
4.ゼラチナーゼ分泌に対する影響
5kPa負荷群ではMMP-2,MMP-9の産生はともにストレスの影響をほとんど受けなかったが,15kPa負荷群では潜在型および活性型MMP-9さらには潜在型MMP-2の産生が,ストレス負荷後24時間で対照群と比較して明らかに増加した。
5.NO産生におよぼす影響
高頻度の条件で負荷を加えた場合,NO産生は負荷後48時間以降対照群と比較すると有意に上昇した。 -
主要組織適合性抗原からみた顎関節症の免疫遺伝学的要因の研究
研究課題/領域番号:09877376 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究 萌芽的研究
山下 敦, 窪木 拓男
配分額:1500000円 ( 直接経費:1500000円 )
顎関節症の発症における遺伝的素因は,顎関節内障患者の家族歴からこの可能性が推測されているのみ(TaUentsら,1996)で,全く推測の域を出ていない.本申請は,当講座で行った双生児研究に引き統き,顎関節症に関連する遺伝的素因をヒトMHCすなわちHLAのタイプから免疫遺伝学的に解明しようとするものである。
現在まで、1)変形性顎関節症群16名:重度の顎関節の変形を伴うもの、2)顎関節リウマチ群5名:慢性関節リウマチが顎関節にも波及したものの2群に分けて継続して末梢血採取を行っている。サシブル数が少ないこともあり、はっきりした傾向は明言できないが、顎関節リウマチ群は、従来遺伝的なリスクが高いと報告された遺伝形質を持っていたが、変形性顎関節症の場合にはその傾向は曖昧であった。 -
顎関節潤滑因子産生機序に関する研究
研究課題/領域番号:09671988 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
篠田 一樹, 辻 清薫, 窪木 拓男
配分額:2600000円 ( 直接経費:2600000円 )
1.関節円板前方転位患者と変形性顎関節症患者,正常者の顎関節滑液の採取ならびに滑液中のヒアルロン酸濃度の測定
顎関節潤滑因子であるヒアルロン酸,リウブリシンの濃度の低下が滑液中において生じると,関節潤滑が円滑に行われなくなることにより関節円板転位を引き起こし,また,関節軟骨への栄養供給が低下することによって軟骨の破壊が進行し,結果として変形性関節症を引き起こすことが考えられている(Kamelchuk et al,1995)。本研究では,まず,関節円板前方転位患者と変形性顎関節症患者の患側顎関節から治療目的として希釈回収法にて滑液を採取した。また,ボランティアの正常者の顎関節から同様に希釈回収法にて滑液を採取した。そして,タンパク量測定キットならびに吸光度測定機器を用いて総タンパク濃度を測定したところ関節円板前方転位患者と変形性顎関節症患者のタンパク濃度が正常者のそれと比較して有意に高いことが明かとなった。続いて,各サンプルをSDS-PAGEにて電気泳動し,それぞれのタンパクの構成に違いがあるかを一次元電気泳動解析装置にて検討したところ,SDS-PAGEレベルでは特に各群で有意差は認められなかった。現在,市販されている抗ヒトヒアルロン酸抗体を用いたwestern blottingにて各群のヒアルロン酸のバンドの強度を測定し,各群に有意差があるか検討中である。 -
咀嚼筋血流変化と筋内細動脈血管径の調節機構からみた咀嚼筋障害の発症機序
研究課題/領域番号:08457528 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
山下 敦, 東 義晴, 窪木 拓男
配分額:5800000円 ( 直接経費:5800000円 )
1.安静時ヒト咬筋組織内血流動態に対するCold Pressor(CPT)の影響
Victor(1987)らにより実験的に骨格筋内の交感神経活動を増大させることが可能と報告されているCPTを健常ヒト被験者に加え,安静時におけるヒトの咬筋筋組織内血流動態に対する影響を近赤外線スペクトル法を用いて評価した.その結果,咬筋内の血流量ならびに酸素飽和度はCPTの設定温度が低いほど増大することが明らかとなった.さらに,最も設定温度の低い4℃のCPTでは,咬筋内血液量が,付加終了後にベースラインを越えて有意に減少を示した。本結果は,交感神経活動増大時には,ヒト咬筋内の血流動態が増大することを示していると考えられた.
2.αおよびβ遮断剤投与下安静時ヒト咬筋組織内血流動態に対するCPTの影響
本研究では,CPTにより惹起される筋内血流動態変化に対する交感神経系αおよびβ作用の役割を明確にするため,非選択的α遮断剤(メシル酸フェントラミン製剤)およびβ遮断剤(塩酸プロプラノロール製剤)を正常男性9名に体重比0.15mg/kgで静脈内投与を行い,4℃のCPTを右側下肢に付加し,咬筋内血流動態変化を評価した.その結果,CPT付加前安静時咬筋内血液量および酸素飽和度はフェントラミン投与により有意に増大し,プロプラノロール投与により減少した.また,CPT付加中の咬筋内血液量の増大には交感神経系β作用に加えてその他の調節因子が関与していることが明らかとなった.
3.慢性筋痛者における安静時ヒト咬筋組織内血流動態に対するCPTの影響
CPTにより惹起される筋内血流動態変化を慢性筋痛者と正常者それぞれ10名の男性について測定し比較を行った.筋内血流動態は右側僧帽筋から記録を行い,CPTの設定温度は4℃とし右側下肢に付加した.その結果,慢性筋痛者においてはCPT付加時の筋内血液量増大の有意な抑制が観察され,慢性筋痛の病態に筋内血流動態異常の関与が示唆された. -
変形性顎関節症の発症機序とその治癒機構
研究課題/領域番号:07672110 1995年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
窪木 拓男, 矢谷 博文, 山下 敦, 松香 芳三
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
本研究では軟骨細胞にフレクサ-セルを用いて周期的伸展負荷を加え,メカニカルストレスが軟骨基質の合成,あるいは軟骨破壊因子および成長因子の遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。
1)軟骨細胞に周期的伸展負荷を加えると,プロテオグリカン合成能は負荷を加えることのよりコントロールの無負荷群と比較すると有意に上昇したが,5kPa負荷群の上昇率(対照比230.3%増)は,15kPa負荷群(対照比179.1%増)に比べ高かった。
2)DNA合成能はどちらの条件においても有意に低下しており,その低下率は5kPa負荷群(対照比50.0%減)の方が15kPa負荷群(対照比30.1%減)に比べ大きかった。
3)IL-1βの遺伝子発現量については,どちらの条件においても負荷後早期に一時的な増加が認められたものの,24時間以内には元のレベルにまで戻った。
4)bFGFに関しては,5kPa負荷群ではほとんど変化が認められなかったが,15kPa負荷群では負荷後早期に一時的な増加が認められた。
5)MMP-9mRNAの発現は,5kPa負荷群ではほとんど変化が認められなかったのに対し15kPaの条件では24時間まで増加し続けていた。
6)MMP-2やTIMP-1,アグリカン,II型,X型コラーゲンmRNAの発現量は,いずれの負荷でも変化しなかった。
7)ザイモグラフィーによりMMPsの産生を調べると,proMMP-9およびMMP-9蛋白の産生量は5kPaの条件では変化しないのに対し,15kPaの条件では24時間後増加していた。しかし,MMP-2蛋白の産生量はどちらの条件の負荷においてもコントロール群に比べ大きな変化はなかった。 -
片側噛みしめ時におけるヒト顎関節関節円板動態
研究課題/領域番号:05771684 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
窪木 拓男
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
顎関節内障の発症には顎関節負荷の異常が密接に関連していると推測される。申請者は1986年より行ってきた顎関節部負荷のモデル解析に始まり、これまで顎関節部負荷が顎関節構造に与える影響について研究を行ってきた。その結果、持続片側噛みしめにより顎関節断層エックス線写真上において非噛みしめ側下顎頭の著しい後上方変位と前関節空隙の縮小が誘発されることを見出した。
しかし、関節硬組織のみを描出対象とするエックス線写真法では関節円板動態や筋活動状態を把握することはできない。したがって、本研究では関節円板の描出が可能なMRI法を用い、実験的前歯部噛みしめによる下顎頭-関節円板関係の変化を直接明らかとした。
本研究の結果、実験的前歯部噛みしめにより、T1強調MR画像上でも前関節空隙の縮小が生じ、滑液の層を描出していると思われる高信号域が移動、縮小することが明らかとなった。また、この層の移動を定量的に評価することを目的に、下顎頭-関節結節を結んだ直線上の信号強度の変化をプロファイル像として比較する方法を開発した。関節空隙の縮小は、関節負荷受圧複合体(関節結節上の関節軟骨、上関節腔の滑液、関節円板、下関節腔の滑液、下顎頭上の関節軟骨)の移動ならびに圧縮変形に起因することが明らかとなった。 -
成人顎関節の骨改造能に関する研究
研究課題/領域番号:04671183 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C) 一般研究(C)
矢谷 博文, 窪木 拓男
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
ヒト顎関節に生じる形態学的変化(リモデリング)については、下顎頭骨折や顎外科矯正処置後にみられたとする症例が数例報告されているだけで、ほとんど明らかにされていないといってよい。また、この形態学的変化は新しい下顎頭位に対する適応変化の一つの表われであると解釈されているが、その証拠はない。
そこで、関節円板が前方偏位した94名の顎関節内障患者の188顎関節(このうち61関節は復位性、58関節は非復位性関節円板前方転位と診断された)に、保存療法後にどのような形態的変化が現われるかを放射線学的に検討し、次のような結果を得た。
1.形態的変化のほとんどは下顎頭に生じ、側頭骨(下顎窩、関節結節)にはほとんど変化が生じなかった。すなわち、39の下顎頭に進行性リモデリング、15の下顎頭に退行性リモデリングが生じたのに対して、3関節結節に退行性変化が生じたのみであった。
2.進行性変化としては、下顎頭の二重輪郭像の出現および下顎頭全体が丸みを帯びるという変化が観察された。これに対して、退行性変化としては、下顎頭前関節面あるいは後関節面の扁平化、下顎頭の短縮化、あるいは関節結節の扁平化が観察された。
3.顎関節の形態学的変化を起こす頻度と患者の年齢には関連があり、高齢になるにつれて、進行性リモデリングの頻度は減少し、退行性リモデリングの頻度は増加した。
4.正常顎関節にはほとんど形態的変化が生じなかったのに対し、復位性関節円板前方転位では36%、非復位性関節円板前方転位では41%に形態変化が生じた。復位性関節円板前方転位ではそのほとんどが進行性リモデリングであった(34%)のに対し、非復位性関節円板前方転位は進行性変化と退行性変化の頻度がそれぞれ23%と18%であった。
5.円板の復位が得られた関節と得られなかった関節では、前者のほうが形態的変化を起こす頻度が高く、そのほとんどは進行性リモデリングであった。すなわち、円板復位に得られた関節全体の42%に進行性、3%に退行性リモデリングが生じたのに対し、復位の得られなかった関節全体の13%に進行性、17%に退行性リモデリングが生じた。
6.保存治療により下顎頭位が後方あるいは上方に変位した関節では形態的変化がまったくみられず、前方あるいは下方に変化した関節では47%、下顎頭位が変らなかった関節では33%に形態変化が観察された。前方あるいは下方に変位した場合のほとんどは進行性リモデリングであった(41%)のに対し、下顎頭位が変らなかった関節では、19%が進行性、14%が退行性変化であった。
以上より、ヒト顎関節は成人であっても本質的にリモデリング能を有しており、進行性および退行性リモデリングは保存治療により変えられた異なる関節内環境に対する異なる適応変化であると考えられた。また、形態変化を生じた患者の予後は良好であることから、これらの形態変化は関節内環境が正常化されたことの一つの指標となり得ることが示唆された。 -
顎関節円板,顎関節軟骨の耐圧縮特性に関する生物力学的ならびに組織学的研究
研究課題/領域番号:03771429 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
窪木 拓男
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )