共同研究・競争的資金等の研究 - 窪木 拓男
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細胞バーコーディング技術を応用したin vivo高解像度細胞系譜解析システムの構築
研究課題/領域番号:24K21302 2024年06月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)
大野 充昭, 窪木 拓男, 王 紫儀
配分額:26000000円 ( 直接経費:20000000円 、 間接経費:6000000円 )
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空間的1細胞エピゲノム解析から紐解く歯胚発生メカニズムの解明
研究課題/領域番号:24K22188 2024年06月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
窪木 拓男, 大野 充昭, 王 紫儀
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
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1細胞解析で解き明かすMSCsの免疫調節メカニズムとオートファジー
研究課題/領域番号:24K02633 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大野 充昭
配分額:18460000円 ( 直接経費:14200000円 、 間接経費:4260000円 )
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エピゲノムに着目した変形性関節症関連因子WISP1の発現制御機構の解明
研究課題/領域番号:24K13044 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前田 あずさ, 窪木 拓男
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
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新規センシング技術と機械学習による歯への機械的負荷を定量化する評価システムの構築
研究課題/領域番号:23K09294 2023年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
水口 一, 窪木 拓男, 水口 真実, 三木 春奈
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
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MR画像による長期予後調査より関節円板後部結合組織の偽円板化と予後との関連を探る
研究課題/領域番号:23K09295 2023年04月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
三木 春奈, 水口 一, 窪木 拓男
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
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MSC/2型Mφ1細胞間連携による炎症・再生連関促進の分子メカニズム解明
研究課題/領域番号:22K19627 2022年06月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大野 充昭
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
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BMP-2誘導性骨髄から紐解く骨髄ニッチ細胞・CAR細胞の起源と発生メカニズム
研究課題/領域番号:22K19625 2022年06月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
大野 充昭, 窪木 拓男
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
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咀嚼が唾液中BDNFならびに認知症発症に与える影響-ヒト高齢者を対象とした研究-
研究課題/領域番号:22K10101 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
三野 卓哉, 窪木 拓男, 大野 彩, 大野 充昭, 山下 徹, 黒崎 陽子
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
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時空間的トランスクリプトーム解析を応用した歯肉角化制御メカニズムの解明
研究課題/領域番号:22K10100 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
縄稚 久美子, 納所 秋二, 大野 充昭, 窪木 拓男, 大野 彩
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
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高齢者の低栄養における腸内細菌叢の役割解明と新規シンバイオティクス療法の開発
研究課題/領域番号:22K10057 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
小山 絵理, 後藤 和義, 大野 彩, 窪木 拓男, 大森 江, 大野 充昭
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
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IoTセンサーを利用した高齢者の口腔関連日常生活動作の測定と要介護後期介入転換
研究課題/領域番号:22K10076 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤原 彩, 窪木 拓男, 大野 彩, 水口 一
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
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高齢者の固定性インプラントを活用したシステム非依存的補綴治療介入の有効性の検討
研究課題/領域番号:22K10058 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
黒崎 陽子, 窪木 拓男, 三野 卓哉, 大野 彩
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
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1細胞エピゲノム解析から紐解く象牙芽細胞分化制御メカニズムと治療法への応用
研究課題/領域番号:22H03280 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
大野 充昭, 窪木 拓男
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
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1細胞エピゲノム解析から紐解く象牙芽細胞分化制御メカニズムと治療法への応用
研究課題/領域番号:23K24538 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
大野 充昭, 窪木 拓男, 王 紫儀
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
本研究では,歯科界において必須の情報でありながら未解決である象牙芽細胞マスター遺伝子の同定,さらにはダイレクトリプログラミングによる象牙芽細胞分化誘導法を確立する.具体的には,位置情報を付加した1細胞レベルでの解析に加えて,細胞分化の時間軸を加味した分化経 路推定解析を駆使し,候補転写因子群の抽出を行う.そして,iPS細胞樹立技術を逆手に取ったマスター遺伝子同定法を駆使して象牙芽細胞分化のマスター遺伝子を同定し,同定したマスター遺伝子や誘導した象牙芽細胞を利用して,象牙質再生療法の基盤技術を確立する事を目的としている.
2022年度に,生後5~7日齢のCol1a1-GFPマウスの歯胚を摘出後,酵素処理により細胞の単一化を行った.GFP陽性象牙芽細胞およびGFP陽性骨芽 細胞が含まれる CD45 (白血球),Ter119 (赤血球),CD31 (血管内皮細胞)陰性分画に存在する細胞をセルソーターにて分離し,約5000個の単一細胞を得て,シングル解析システム (10x chromium)にてscRNA-seq解析を実施した.そして,細胞のアノテーションを行い,間葉系幹細胞が象牙芽細胞へと分化する過程を,velocity解析およびtrajectory解析を駆使し,解析した.その結果,歯胚に存在するMki67陽性の細胞増殖能が高い間葉系幹細胞を同定することができた.また,この細胞が,全象牙細胞から象牙芽細胞へと分化する過程を明らかにすることができた.
今後,本結果から抽出された遺伝子に対し,機能解析を行う予定である. -
時空間的トランスクリプトーム解析・iPS干渉法を応用した歯の再生技術の開発
研究課題/領域番号:21H04842 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
窪木 拓男, 大野 充昭, 辻 孝, 渡辺 亮, 宝田 剛志
配分額:42510000円 ( 直接経費:32700000円 、 間接経費:9810000円 )
本申請研究では,「臓器としての歯の再生」を最終目的に,1細胞レベルでのRNA発現解析に加えて,時空間情報を加味した遺伝子発現解析法を駆使し,歯胚発生における1細胞レベル時空間的トランスクリプトームMapを構築し,これらのデータベースをもとに,iPS干渉法を応用し,歯原性上皮・間葉細胞の誘導方法を開発する.そして,器官原基法により,非歯原性細胞から,生理的機能を有した臓器としての歯を世界で初めて再生することを目的としている.
本年度は,歯胚発生における1細胞レベル時空間特異的トランスクリプトームMapを構築した.
具体的には,マウスE10.5,E11.5,E12.5,E14.5,E18.5の歯胚および非歯原性口腔粘膜組織を摘出し,酵素処理にて約1万細胞の単一細胞を得て,Single cell RNA-Seq (scRNA-Seq)解析し,どの細胞が,どの遺伝子を,どの程度発現しているか1細胞レベルで解析を行った.また,メッシュ状に位置情報となるインデックス配列が付加されたスライドガラスに,E10.5,E11.5,E12.5,E14.5,E16.5の歯胚を含むマウス頭部前頭断の凍結切片を貼り付け,HE染色を行い,組織学的情報を取得した.次に,スライド上でmRNAを単離,位置情報のインデックス配列が付加されたcDNAを合成し,ライブラリー作製後にシークエンスを行い,インデックス情報から,二次元空間での遺伝子発現情報を構築し,遺伝子発現Mapを構築した. -
変形性関節症におけるエピジェネティクスを介したWISP1遺伝子発現制御機構の解明
研究課題/領域番号:21K10019 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
前田 あずさ, 窪木 拓男, 大野 充昭
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
世界でも群を抜いた高齢化率を示している我が国において,医療費や介護給付費による財源圧迫を回避すべく健康寿命の延伸は喫緊の課題であり,国民が要支援となる最大の原因である変形性関節症 (OA) の発症原因や予防法の解明は,臨床的・医療経済学的に大変意義深い.これまでに変形性関節症の原因遺伝子のひとつとされているWISP1遺伝子に着目し,WISP1遺伝子の発現抑制下では変形性関節症の進行が抑制されることを証明してきたが,本研究では,変形性関節症の予防法の確立を視野に入れ,変形性関節症を発症した関節軟骨でWISP1遺伝子がどのように発現制御されているのか解明することを目的としている.
ヒト間葉系幹細胞 (hBMSCs) の軟骨分化過程ではDNAメチル基転移酵素 (DNMT3A) が高発現しており,DNMT3Aを強制発現させたhBMSCsでは軟骨分化が促進されることがわかっているが,軟骨細胞分化に伴い発現することが確認されているWISP1遺伝子が,軟骨細胞分化過程においてどのようにDNAメチル化修飾の影響を受けるのかを検討した.DNAメチル化阻害薬である5-aza-2-deoxycytidine (5-aza) で24時間処理したhBMSCsをマイクロマス培養法にて21日間培養し,軟骨細胞分化過程におけるWISP1遺伝子の発現パターンを定量性RT-PCR法にて評価したところ,コントロール群と比較して5-aza処理群ではWISP1遺伝子の発現は低下しており,脱メチル化によりWISP1遺伝子の発現が低下することが確認された. -
機械学習を応用した咀嚼機能低下を精度高く検出する新規検査方法,評価基準の開発
研究課題/領域番号:21K09977 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 真実, 窪木 拓男, 水口 一, 三木 春奈, 小山 絵理
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
要介護高齢者の増大に対して,要介護状態の発症を遅らせ,健康寿命を延伸することが強く望まれている。近年,フレイルが高齢者の自立喪失の有意なリスク因子であると報告された。フレイルサイクルの一端に口腔機能,特に咀嚼嚥下機能の低下による低栄養がある。そこで,口腔機能低下に関するリスク因子を早期に発見し,早期に口腔機能,栄養状態の改善を図ることができれば,高齢者の要介護状態への転落を遅延できると考えている。
実際の食事時の筋電図を音声波形解析技術の応用と機械学習により,早期の咀嚼機能低下を類推する試みを開始したが,教師データ獲得が困難であったため,他のリスク因子を検討する中でACTN3遺伝子多型が抽出された。そこで遺伝子多型との関連を検討することとした。
咀嚼嚥下機能の維持,賦活を目的とし行われる筋機能訓練により,オーラルディアドコキネシスに加え,舌圧も改善することが知られている。この舌圧は骨格筋量よりも体幹筋量の影響を受け,舌機能や舌骨上筋群は速筋繊維が優位な筋と言われている。一方,サルコペニア発症時には速筋線維優位な筋線維の萎縮が生じ,速筋はサルコペニアの影響を大きく受ける。このサルコペニア発症のリスク因子の一つに,ACTN3遺伝子R577X多型による筋線維の萎縮が明らかとなっているが,これらと舌機能低下並びに嚥下障害を呈するリスクについての関連は明らかでない。
そこで本年度は,ACTN3遺伝子R577X多型を評価するための予備的検討を行った。特に,高齢者を対象にDNAを採取する必要があることから,被検者負担の少ない採取方法並びにその結果の妥当性について検討した。その結果,唾液中,頬粘膜の擦過(10回,20回)を行い,R577X多型を評価したところ,同一の結果が得られた。これより,頬粘膜の10回擦過によってR577X多型を評価するのに十分なDNA採取ができることが明らかとなった。 -
Mφオートファジー異常から見た歯周病やインプラント周囲炎の新規治療戦略
研究課題/領域番号:21H03131 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大野 充昭
配分額:17290000円 ( 直接経費:13300000円 、 間接経費:3990000円 )
本研究は,歯周病やインプラント周囲炎における病態形成メカニズムを,歯槽骨破壊局所に集積するMφの活性化に注目し,オートファジー異常の観点から解明するとともに,炎症性サイトカインの産生経路を特定し,免疫トレランス獲得につながる新たな検査技術や 新規組織再生療 法開発につなげることを目的としている. 本年度の研究実績の概要を以下に示す.
1)実験的マウス周囲炎モデルにおけるマクロファージの分布
週齢の異なるマウス(C57BL/6, 5週齢および50週齢)の下顎第一臼歯に5-0絹糸を結紮した結果,5週齢と比較して50週齢で明らかな歯槽骨破壊が観察された.また,蛍光免疫染色によるマクロファージの分布を確認したところ,50週齢で炎症巣周囲に多くのマクロファージが分布していた.特に,炎症性マクロファージであるCD80陽性M1の分布が観察され,抗炎症性であるCD206陽性M2の分布は5週齢と比べて少ないことがわかった.また,組織の免疫トレランス維持に重要な役割を果たすと考えられている間葉系幹細胞の分布を検討したところ,50週齢ではPDGFra陽性間葉系幹細胞の分布は少ないことがわかった.
2)週齢の違いによる間葉系幹細胞とマクロファージの相互作用
5週齢,50週齢それぞれから単離・培養したマクロファージと間葉系幹細胞をカルチャーインサートを用いて共培養したところ,5週齢間葉系幹細胞はM1からM2へのマクロファージの極性変化を強く誘導したのに対して,50週齢間葉系幹細胞ではあまり誘導されないことがわかった. -
iPS干渉法を利用した間葉系幹細胞の幹細胞性制御機構の解明
研究課題/領域番号:20K21679 2020年07月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
窪木 拓男, 渡辺 亮, 大野 充昭, 秋山 謙太郎
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
近年,加齢変化が引き起こす疾患群に共通するホストの本質的変化として,ステムセルエイジングが注目されている。我々は加齢に伴い間葉系幹細胞(MSCs)の免疫調節能が著明に低下すること,また,骨芽細胞分化能の低下と脂肪細胞分化傾向への転換により,脂肪髄を呈することも明らかにしてきた。その結果,傷害組織で休眠から覚める,もしくは新たに動員されるMSCsの機能が低下し,局所の組織修復能や免疫調節能が低下,加齢性疾患の罹患感受性が上昇すると考えられる。したがって,骨髄MSCsの老化を防ぎ,幹細胞性が高いフラクションをいかに保つかが,これらの加齢性疾患におけるホストの病因の理解,さらには予防と治療に寄与するものと考えられる。そこで本研究は,骨髄MSCsの幹細胞性維持機構を解明することを目的に以下の計画を立てた。1)MSCs幹細胞性維持に関わる因子の探索:ヒト骨髄MSCsとヒト成人皮膚線維芽細胞 (hADFs)から,RNAを抽出し,RNA-Seqにて網羅的に比較検討を行い,転写因子に焦点を絞り,データベースを構築し,関連遺伝子を抽出する。2) 1)にて抽出した関連遺伝子から,iPS干渉法を駆使し,骨髄MSCsの幹細胞性維持に関わるマスター遺伝子の同定を試みる。また,このマスター遺伝子を利用して,hADFsからMSCsを作成する技術を確立する。今年度は,MSCs幹細胞性維持に関わる因子の探索を目的に,ヒト骨髄MSCsとhADFsから,RNAを抽出し,RNA-Seqにて網羅的に比較検討を行い,転写因子に焦点を絞り,データベースを構築し,関連遺伝子を抽出した。そして,抽出した転写因子の強制発現ベクターを作製し,iPS干渉法にて,さらなる絞り込みに成功した。
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人工知能による深層学習を応用した運動障害性咀嚼障害の多軸診断支援システムの開発
研究課題/領域番号:20K10071 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
大野 彩, 窪木 拓男, 森田 瑞樹, 菊谷 武, 百田 龍輔
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本申請研究では、①咀嚼運動を撮影した動画から評価できる「咀嚼機能評価プロトコール」の診断結果が、十分な信頼性・妥当性を有するかどうかを、臼歯部移送試験や専門医の診断等と比較して評価する。また②そのプロトコールを用いて、患者および正常咀嚼者の動画撮影および診断を行い、教師データを収集する。そして、③教師データを人工知能(AI)深層学習に供し、AIによる運動障害性咀嚼障害診断システムを開発することを目的としている。
本年度は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に則り、本研究計画について倫理審査委員会の承認を得た。そして、動画を用いた運動性咀嚼機能評価法の信頼性・妥当性の確認のため、まずは健常者にてプロトコールおよび咀嚼解析システムの精度確認を行った。その結果、撮影角度、影や眼鏡等の影響による運動検出精度の低下が明らかとなった。そのため、システムの改良を行い、運動検出精度を向上させることに成功した。 -
下顎骨後方移動術に伴う睡眠呼吸障害の発症リスクおよび施術基準の確立
研究課題/領域番号:19K10382 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
中村 政裕, 川邉 紀章, 片岡 伴記, 鬼頭 慎司, 森本 泰宏, 水口 一, 窪木 拓男, 宮脇 卓也
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
骨格性下顎前突患者に対し安全に下顎骨後方移動術を施行するためには、術後の上気道の狭窄やそれに伴う睡眠呼吸状態への影響に配慮しなければならない。過去の研究においても、下顎骨後方移動術を行った患者の上気道形態の変化は調べられているが、これらは覚醒時に撮影したセファログラムやコンピューター断層撮影画像を解析した静態評価であった。そのため、本研究は、上気道の動態および三次元解析が可能であるMRI movieおよびvolumetric MRIを用いて下顎骨後方移動術前後の睡眠時における上気道形態の変化を観察し、下顎骨の後方移動量と睡眠時の上気道の容量との関連を解明し、睡眠時の上気道形態変化と睡眠時呼吸状態との関連を調べることで睡眠呼吸障害の発症リスクを明らかにすることを目的としている。
本年度の研究実績として、研究を開始するにあたり、臨床研究実施計画書および研究説明書、同意書等を作成し、岡山大学臨床研究審査専門委員会への申請を行った。臨床研究審査専門委員会の承認が得られたため、患者への同意説明を開始した。 -
オーラルフレイル回避を目指した筋機能訓練の有効性検討と新規個別スキームの開発
研究課題/領域番号:19K10225 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 一, 三木 春奈, 水口 真実, 窪木 拓男
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
摂食機能の低下の抑制が可能となれば,健常高齢者の要介護状態への転落を遅延できるかもしれなという研究仮設のもと,高齢者の筋機能維持を筋機能訓練の観点から検証することを当初の目的としていた。その一方で,睡眠時の口腔周囲筋の機能亢進が筋機能訓練の一助となりうる可能性にも着目した。その結果,高齢者の就寝時の筋活動量と筋機能との関連についても検討を行うこととなった。
第一に,就寝中の咬筋の筋活動を簡便かつ適正に定量化することを目的に,音声動画撮影を追加したpolysomnography(PSG)検査をもとに,筋電図による睡眠時筋活動検査システムについて検討を行った。しかしながら従来の睡眠時の口腔周囲筋の活動評価は,筋電図をもとに一定の閾値を超えた筋活動の頻度を基準としてきたため,掻痒や体動による筋電図波形の亢進も筋活動の亢進として誤認されてしまう場合があり,その信頼性に問題があることが明らかとなった。すなわち,我々が行った動画記録を伴うポリソムノグラフ(PSG)検査において,咬筋の筋活動が亢進したイベントのうち,80.7±16.0%が体動や掻痒等による非特異的な筋活動やアーチファクトに起因したものであった事が示された。
本研究結果は,筋電計単体による口腔周囲筋の評価には多くの偽陽性イベントが含まれていることを示すものであり,従来の検査方法,評価方法の妥当性を高く評価できないとう結果となった。事実,閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)症状が出現する際には低酸素状態となることから,交感神経活動の亢進,微小/睡眠覚醒,筋活動の亢進が出現し,その結果,筋活動の亢進が認められることが知られている。
そこで,検査が容易な筋電図検査において,真の口腔周囲筋の活動と偽の筋電図の亢進現象(OSAS関連性,嚥下関連性,動作関連性,その他)を識別する手法の確立が急務と考えられた。 -
基底膜構成分子の誘導制御による低侵襲角化歯肉獲得療法の確立
研究課題/領域番号:19H03841 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
前川 賢治, 窪木 拓男, 冨田 秀太, ハラ エミリオ・サトシ, 大橋 俊孝, 大野 充昭
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
基底膜直下に存在する角化歯肉由来間葉細胞と非角化歯肉由来間葉細胞の遺伝子発現の相違を明らかにすることで,上皮細胞の角化に関わっている間葉細胞からのシグナル分子を抽出することが可能であると考える。そこで,令和元年度は,レーザーマイクロダイセクション法とRNA-Seq を組み合わせた候補因子の抽出を目的に,以下の実験を実施してきた。
間葉組織は,筋肉や脂肪など様々な組織を含むことから,マクロレベルで口蓋粘膜から間葉組織を採取すると,様々な組織を含んでしまう。基底膜直下の間葉組織の遺伝子発現解析を正確にするには,特異的に組織を採取することが可能なレーザーマイクロダイセクション法を用いる必要がある。そこで,マウスの口蓋粘膜(角化粘膜)と頬粘膜(非角化粘膜)の凍結組織切片を作製し,サンプルの厚み,固定方法,染色方法,レーザーの強度の調整等,様々な条件検討を行い,本組織において最適な条件を見出した。そして,これらのサンプルからRNAを抽出し,RNA-seqが可能な質の高いRNAが回収できていることを,TapStation (アジレント)にて確認した。
また、in vitroにおいて,角化粘膜の間葉組織に高発現している遺伝子をRNA-seq解析から抽出後,さらなる候補因子の絞り込みをin vitroにて行う予定である。そこで,令和元年度は,ヒト口腔扁平上皮癌由来の口腔粘膜上皮細胞であるTR146と,ヒト口腔粘膜細胞由来線維芽細胞を用いた三次元共培養実験モデルを構築すべく,コラーゲンゲルの種類,濃度や細胞の濃度などの条件検討を行い,正常な口腔粘膜組織に類似したin vitro モデル構築に適正な条件の絞り込みを終えた。 -
咀嚼が認知機能に与える影響の検討および認知症早期診断バイオマーカーの網羅的探索
研究課題/領域番号:19K10205 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
三野 卓哉, 窪木 拓男, 大野 彩, 大野 充昭, 山下 徹, 黒崎 陽子
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究の目的は,①ヒト高齢者において,試験的咀嚼運動刺激が,唾液や血液中BDNF濃度に及ぼす影響を検討すること,②ある要介護高齢者集団において,唾液や血液中のBDNF濃度が咀嚼能力ならびに認知機能と関連しているかを検討すること,③BDNFに加えて認知症発症の早期バイオマーカーを唾液中から網羅的に探索することである.
本年は,まずは目的①のための倫理委員会審査書類の作成を行った.また,倫理委員会審査書類の作成と並行して目的②のために,他の研究で毎年行っている岡山県下の老人介護施設(3施設)へ調査に出向き,基礎疾患,認知機能,ADLなどの臨床情報に加えて口腔内診査(残存歯数,機能歯数,カリエス数など)や摂食嚥下機能などを評価し,高齢者疫学調査データベースのアップデートを行った.現時点で、63名の要介護高齢者(認知機能健全:4名,MCI:10名,軽度認知症:7名,中等度認知症:23名,重度認知症:19名)を得ている.
今後は倫理委員会承認後に、岡山大学病院に所属する教職員のうち全身疾患ならびに服薬を認めない20歳以上の健康成人,あるいはクラウンブリッジ補綴科にてメインテナンスを行なっている患者のうち全身疾患ならびに服薬を認めない65歳以上の健康高齢患者からボランティアを募り,無刺激ガムによる試験的咀嚼運動刺激が,唾液や血液中BDNF濃度に及ぼす影響をランダム化クロスオーバーデザインにて検討する予定である. -
骨髄微小環境における骨形成・吸収メカニズムの分子基盤の解明と治療戦略
研究課題/領域番号:19H03842 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
大野 充昭, 窪木 拓男, 宝田 剛志, ハラ エミリオ・サトシ, 渡辺 亮, 秋山 謙太郎, 淺田 騰, 枝松 緑
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
BMP-2は,有効な骨再生療法を提供するとして大変期待されている.一方,我々は,骨髄腔内にBMP-2を投与すると逆に,骨形成が抑制され,骨髄腔が拡大するという大変興味深い知見を得た.本申請研究では,骨髄細胞のシングルセル解析にて,BMP-2投与による骨形成抑制・骨髄腔拡大に関わっている細胞を抽出し,これら候補細胞が,BMP-2投与下で骨髄ニッチや骨髄腔の維持にどの様にして関わっているのかを解析する. そして,上記の解析より,骨髄ニッチや骨髄腔の維持に関わりが深い細胞や分子を抽出し,その欠損マウスを用いてBMP-2にて骨形成が誘導可能か検証し,骨髄腔の維持に関わる細胞やその分子を同定する予定である.
令和元年度は,間葉系幹細胞が可視化されたCXCL12-GFPマウス,骨芽細胞が可視化されたCol1a1-GFPマウス,破骨細胞が可視化されたTrap-Tomatoマウスを用いて,BMP-2の骨髄内投与によりこれらの細胞がどのような挙動を取るか,詳細に検討した.また,BMP-2を骨髄内に投与による骨髄細胞分画の変化をフローサイトメーターにて詳細に検討し,single cell RNA-seq解析の条件検討を行った.
また,in vitroにてBMP-2が骨芽細胞分化に与える影響をどの骨髄細胞が抑制的に制御しているかを明らかにするため,B細胞,T細胞,ミエロイド系細胞をマグネットビーズが付与された抗体を用いて分離し,骨芽細胞分化に与える影響を検討し,どの骨髄細胞が間葉系細胞の骨形成能を抑制しているか絞り込みを行った. -
薬剤関連顎骨壊死の骨髄微小環境と大腸菌由来BMP-2の応用
研究課題/領域番号:19K10246 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
縄稚 久美子, 窪木 拓男, 大野 彩, 大野 充昭, 秋山 謙太郎
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
我々はこれまでに報告された方法に従い,8~12週齢雌マウスに,3週間,週2回のzoledronate (Zometa; Novartis, Stein, Switzerland) (0.05mg/kg) の皮下投与と,cyclophosphamide (C7397; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) (150 mg/kg) の腹腔内投与を行い,MRONJモデルマウスの作製を行った.薬剤の投与開始3週間後に上顎左右の第一大臼歯の抜歯を行い,その後14,28,56日目の組織を回収し,MRONJが創傷治癒に与える影響をマイクロCTを用いた骨形態学的評価,HE染色による組織学的評価を実施した. 骨形態・組織学的解析の結果,薬物の投与を行なっていない対照マウスの抜歯14日後の抜歯窩はほぼ骨により再生している像が観察された.しかし,MRONJモデルマウスの抜歯窩では14,28,56日目のどの時期においてもほとんど再生骨が観察されず,細胞成分が少ない疎な組織によって満たされていることを確認した.さらに,作製したMRONJモデルマウスの抜歯窩への骨形成タンパク質であるrhBMP-2とTCPの複合体を移植し,その効果を検討した結果,非移植群と比較して,抜歯窩根尖部に骨形成が観察され,形成骨以外の抜歯窩は,細胞成分を豊富に含む密な結合組織で満たされていた.また本モデルマウスはかなり重症度の高いMRONJモデルであるため,さらにマイルドなMRONJモデルマウスでの検証が必要であると考えられる.
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ステムセルエイジングの制御に向けた間葉系幹細胞未分化性維持機構の解明
研究課題/領域番号:18K19646 2018年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
窪木 拓男, 大野 充昭, 宝田 剛志, 渡辺 亮, 大野 彩, 秋山 謙太郎, 升井 伸治
配分額:6240000円 ( 直接経費:4800000円 、 間接経費:1440000円 )
老化による間葉系幹細胞 (MSCs)の能力低下が,加齢変化に伴う様々な疾患の発症に関与していることから,如何にMSCsの老化を防ぐかが重要な課題である.そこで本申請研究では,骨髄由来MSCs (BMSCs)の幹細胞性維持に必須な転写因子を同定することを目的とする.若齢マウスおよび老齢マウス由来MSCsの比較,ヒトBMSCsとヒト皮膚線維芽細胞の比較より,若齢マウス由来BMSCとヒトBMSCsに高発現している転写因子を抽出した.さらに,iPS干渉法を応用し,BMSCに重要な転写因子の抽出を行った.現在,BMSCsにおけるこれらの転写因子の機能を解析中である.
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iPS干渉法を応用した歯胚発生メカニズムの理解と歯の再生技術への応用
研究課題/領域番号:18H02991 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 大野 充昭, 辻 孝, 渡辺 亮, 宝田 剛志, ハラ エミリオ・サトシ
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
本申請研究は,歯科医学において未達成の重要な研究課題である「エナメル芽細胞・象牙芽細胞のマスター遺伝子」を同定し,それを利用して生理機能を有した 臓器としての歯の再生法を開発することを目的としている.具体的には,1器官原基法を応用した発生学的アプローチ,2レーザーマイクロダイセクションを応 用した組織学的アプローチ,3既知の重要な転写因子を利用した絞り込み等の技術を総動員してエナメル芽細胞・象牙芽細胞分化時におけるマスター遺伝子の絞 り込みを行い,iPS細胞樹立技術を逆手に取ったマスター遺伝子同定法(iPS干渉法)やゲノム編集技術を駆使してエナメル芽細胞・象牙芽細胞のマスター遺伝子を同定する.
2018年度に,発生過程の歯胚から定期的に組織を回収し,RNA-Seq解析データ,ヒト歯乳頭由来間葉系幹細胞 (以下, hSCAP),ヒト骨髄由来間葉系幹細胞,ヒト成人皮膚由来線維芽細胞 (以下, hADF)のRNA-Seq解析データを照らし合わせ,幹細胞の象牙芽細胞への分化や象牙芽細胞自身の分化に関わっている可能性がある転写因子を抽出した.
2019年度は,hSCAPに山中4因子と上記で抽出された転写因子を一つずつ入れ,どの転写因子が山中4因子の導入によるiPS細胞への誘導を阻害するのか検討した.その結果,13転写因子がiPS細胞への誘導を阻害することが明らかとなった.現在この13転写因子をhADFに遺伝子導入し,hADFがhSCAPにdirect reprogramingされていないか様々な方法で検討を行っている. -
変形性関節症の発症予防を目指したWISP遺伝子の機能解析
研究課題/領域番号:18K09682 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
前田 あずさ, 窪木 拓男, 大野 充昭, ハラ エミリオ・サトシ, 吉岡 裕也
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究では,国民が要支援となる最大の原因となっている変形性関節症 (OA) の原因遺伝子のひとつであると考えられているWISP1に着目し,OAの発症メカニズムを解明することで治療法ならびに予防法を確立することを目的としているが,前年度までに3種類のOAモデルマウス,すなわち ①加齢モデル,②機械的負荷モデル,③炎症誘発モデル の作製に成功した.
野生型とWISP1遺伝子欠損マウスを用いて機械的負荷モデルと炎症誘発モデルマウスを作製後,回収した膝関節から作製した組織切片をサフラニンO染色した後に,OA重症度の半定量的評価 (OARSIスコア) を行ったところ,野生型と比較してWISP1遺伝子欠損マウスではOARSIスコアが低い値を示しており,WISP1遺伝子が欠損することでOA誘発に伴う関節軟骨の破壊が抑制されていることが確認された.そこで,WISP1遺伝子欠損マウスでのOA重症化抑制に関わる因子を調べるため,膝関節腔内にコラゲナーゼを注射することでOAを誘発する炎症誘発モデルを3か月齢の野生型ならびにWISP1遺伝子欠損マウスを用いて作製し,7日後に回収した滑膜組織からRNAを抽出,リアルタイムRT-PCRを行い,軟骨基質破壊に関連する遺伝子の発現レベルを調べた.その結果,細胞外マトリックスの分解に関わるmmp3, mmp9, adamts4, adamts5の遺伝子発現量がWISP1遺伝子欠損マウスで低下していた.
以上より,WISP1がMMPやADAMTSといった細胞外マトリックス分解酵素の分泌を促進することで,OAを悪化させている可能性が示唆された. -
光操作技術による生体内間葉系幹細胞の集積に関する分子理解と歯槽骨関連疾患への応用
研究課題/領域番号:17H04399 2017年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
宝田 剛志, 窪木 拓男, 大野 充昭, 佐藤 守俊, 戸村 道夫, 戸口田 淳也, 渡辺 亮
配分額:16640000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:3840000円 )
抜歯窩創傷治癒過程に必須な間葉系幹細胞に関する従来の研究は、培養条件下での解析や、外来性移植MSCの効果の検証が主である。しかしこの現状では、生体内MSCの「内在性」の組織修復システムを理解することは難しい。申請者らは、青光照射でDNA組み換え反応をコントロールできる光活性型Cre(Photoactivatable(PA)-Cre)に着目し、このPA-Cre技術と、テトラサイクリン誘導発現系システム(TetON/OFF)のActb locusへのノックイン技術を組み合わせることで、R1年度は、in vivoでのlight/Dox-dependentなDNA組み換え反応を可能とする遺伝子改変マウス(TREPA-Creマウス)の開発を目指した。その結果、TRE-PACreマウスの開発に成功し、同マウスにtail veinよりtTA発現プラスミドと、レポーターであるLSL-tdTomatoプラスミドを導入することで、生体外からの光照射による肝臓でのDNA組み換え反応に成功し、これについて論文投稿を達成した(Takao et al, BBRC, 2020)。私たちが作製したTRE-PA-Creマウスを利用すれば、「生体組織」で、「細胞種(特定プロモーターでON)特異的」かつ、従来不可能であった「時間・空間(光照射時/部位)特異的」な精度を持つ生体内遺伝子操作が可能である。
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間葉系幹細胞の機能低下から見た歯周病やインプラント周囲炎発症の新規理解と対策
研究課題/領域番号:17H04392 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大島 正充, 大野 充昭
配分額:16640000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:3840000円 )
本研究は,骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs)の機能が,宿主の加齢変化によってどのように影響を受けるのかを解明するとともに,MSCsの機能低下が,歯周病やインプラント周囲炎などの歯周組織における感染性・炎症性疾患の発症や病状の進行にどのように関与するのかを解明することを目的としている.その結果,週齢の異なるマウスに実験的歯周病を誘導すると,週齢が上がるに連れて,歯周病による骨吸収が進行した.そこで,5週,50週齢マウス由来MSCsの機能を分析したところ,50週齢では細胞増殖,骨芽細胞分化能力が明らかに低下する一方で,脂肪細胞への分化能力が亢進するとともに,免疫調節能の低下が認められた.
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BMP-2含有人工骨膜の難治性骨疾患・骨癒合不全治療への応用
研究課題/領域番号:17K11750 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
大野 彩, 大野 充昭, 窪木 拓男, 三野 卓哉, 宝田 剛志, 笈田 育尚
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究では,BMP-2含有PLGAメンブレン(BMP-2含有人工骨膜)の臨床応用に向け,イヌインプラント周囲炎骨欠損モデルでの有用性を検討した.イヌインプラント周囲炎モデルのインプラント周囲骨欠損部に自家骨を移植したが,十分な骨再生は認められなかった.次に,本モデルの骨欠損部に,BMP-2含有β-TCPを移植し,その周囲をBMP-2含有人工骨膜にて被覆した.対照群にはBMP-2含有β-TCPのみを移植した.その結果,BMP-2含有人工骨膜被覆群では,対照群と比較し骨再生が促された.以上の結果より,BMP-2含有人工骨膜は,インプラント周囲炎などの難治症例において有用である可能性が示唆された.
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必須アミノ酸トリプトファンによる幹細胞老化制御機構の解明・骨質改善治療への応用
研究課題/領域番号:17K11751 2017年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
笈田 育尚, 窪木 拓男, 大野 彩, 宝田 剛志, 大野 充昭
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
口腔インプラント治療は,人工歯根が歯槽骨や顎骨と結合することにより強固な骨支持を得るため,骨量と骨質が重要な因子となる.しかし,日本人は欧米人と比べ歯槽骨が解剖学的に菲薄で,インプラント体埋入のために骨造成が必要な場合も少なくない.また,高齢化の進む日本で増加傾向にある骨粗鬆症患者へ口腔インプラント治療がなされる場合も多く,多くの研究者が骨造成や骨質改善に関する研究を進めてきた.
我々は,これまでの研究から骨髄由来間葉系幹細胞の幹細胞性維持という観点からスクリーニングし,同定したトリプトファンが,骨質改善や骨の創傷治癒を促進することが明らかにした.この結果は,トリプトファンの投与が口腔インプラントの骨結合促進においても有用である可能性を強く示唆するものである.しかし,口腔インプラントの埋入に伴うトリプトファンの投与が,①骨のリモデリングを担う骨芽細胞,破骨細胞や間葉系幹細胞にどのような影響を与えるのか,また,②インプラント体の初期固定や長期予後に有意に働くのか,また,トリプトファンによる幹細胞の活性化が骨粗鬆症をはじめとする老化疾患に対して有効なのか,未だその詳細は明らかでない.
そこで,本研究ではトリプトファンの骨代謝関連細胞に与える効果の検討を行うこととした.トリプトファンと間葉系幹細胞の骨芽細胞分化との関係性は明らかにしてきたが,破骨細胞との関係性は未だ不明である.はじめに,トリプトファンが破骨細胞分化に与える影響を検討した.すなわちトリプトファンを投与したマウスの大腿骨を経時的 (0, 3, 7, 14日)にサンプリングし,組織学的,分子生物学的に検討する計画をした.しかし本研究では研究期間が短く解析,評価するまでには至らなかった.
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二次骨化中心初期石灰化の生命科学、材料学、双方向からの解析と理解
研究課題/領域番号:16H06990 2016年08月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
ハラ エミリオ・サトシ, 松本 卓也, 岡田 正弘, 窪木 拓男, 長岡 紀幸, 服部 高子
配分額:2860000円 ( 直接経費:2200000円 、 間接経費:660000円 )
本研究では,マウス大腿骨二次石灰化現象について,軟骨内骨化の初期石灰化部位とタイミングを同定し,その部位における石灰化について,生命科学的・工学的に検討を行い,それぞれを時間空間的に比較することで,軟骨内骨化の多面的な理解を目的とした.実験の結果から,初期石灰化は生後6日目から開始することがわかった.開始点を電子顕微鏡で観察・解析した結果,細胞膜の断片(リン脂質)が石灰化の核になることがわかった.この結果から,リン脂質を基盤とした新しい無機有機ハイブリッド材料の開発に繋がる可能性があると考えられる.
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研究課題/領域番号:16H06991 2016年08月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
古味 佳子, 窪木 拓男, 秋山 謙太郎, 大野 充昭, 丸濱 功太郎, 吉岡 裕也, 國友 雅義
配分額:2990000円 ( 直接経費:2300000円 、 間接経費:690000円 )
本研究は,間葉系幹細胞の損傷組織への誘導集積させることで組織再生を促進する因子として注目されているHMGB1が骨髄由来間葉系幹細胞に与える影響を明らかとし,より効率的な組織再生療法を開発することが目的である.マウス大腿骨骨欠損モデルにおいて宿主間葉系幹細胞は骨欠損作製後1日に骨欠損部に集積し,幹細胞集積部位周囲にHMGB1の発現も確認された.in vitroにおけるHMGB1の間葉系幹細胞の機能に与える影響については,幹細胞性, 増殖ならびに走化性について明らかな影響は認められなかった.HMGB1の存在下で影響の起こりうる幹細胞の多分化能や免疫調節能についても今後のさらなる検討が必要である.
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研究課題/領域番号:16H06989 2016年08月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
小山 絵理, 窪木 拓男, 大野 彩, 大野 充昭, 秋山 謙太郎
配分額:2860000円 ( 直接経費:2200000円 、 間接経費:660000円 )
本邦の慢性腎臓病 (CKD)患者は年々増加しており,CKD患者の生命予後や合併症発症と口腔健康が関連することが報告され,口腔-腎連関が注目されている.
そこで本申請研究では,シャント感染部の細菌叢を明らかにし,口腔内細菌叢との関係を明らかにすることとした.次世代シークエンサーを用いた16SrRNA解析の結果,口腔内細菌叢に黄色ブドウ球菌が多くを占める患者が数人存在した.また,これらの患者の口腔内細菌叢と感染シャントの細菌叢が類似しており,口腔内に特異的に存在する菌がシャント感染部から検出された. -
MRI新技術を用いた上気道分析-OSAS患者の治療基準の作成を目指して-
研究課題/領域番号:16K11787 2016年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
片岡 伴記, 窪木 拓男, 森本 泰宏, 川邉 紀章, 村上 隆, 古森 紘基, 水口 一, 鬼頭 慎司, 中村 政裕
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
上気道の状態を継時的かつ三次元的に評価できるMRIを用いて、歯や顎の形態と上気道状態の関連を調べた。閉塞性睡眠時無呼吸患者への矯正治療の施術基準を明らかにするという目標は達成できなかったが、MRI movieとvolumetric MRIを用いた上気道の評価方法を確立し、動態評価としてのMRI movieの有用性を明らかにすることはできた。MRI movieを用いて歯や顎骨格形態と上気道状態の間の相関を調べた結果、下顎骨の前後的位置や大きさと上気道との間には相関があり、上顎骨の前後的位置や大きさ、下顎骨の垂直的位置や大きさと上気道との間には相関がないことを明らかにした。
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16SrRNA解析を応用した高齢者の低栄養起因口腔・腸内細菌叢の網羅的探索
研究課題/領域番号:16K11590 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 真実, 窪木 拓男, 大野 彩, 大野 充昭
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
要介護高齢者の腸内細菌叢ならびに代謝産物を網羅的に解析した結果,門レベルでは過体重者において細菌叢Xの比率,低体重者において細菌叢Yの比率が有意に増加していた.属レベルでは,BMIと正の相関にある細菌として細菌叢Z,負の相関にある細菌として細菌叢Aが抽出された.また一部の低体重者のサンプルが同じクラスターに分布していることが明らかとなった.
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BMP-2の環境選択的骨誘導/抑制メカニズムの解明・応用に基づく骨再生療法の開発
研究課題/領域番号:16H05524 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
大野 充昭, 窪木 拓男, 大島 正充, 大野 彩, 大橋 俊孝, 渡辺 亮, 秋山 謙太郎
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
BMP-2は骨形成を強力に誘導する成長因子として知られている.しかし,我々は,本研究において,骨形成を含むBMP-2の効果は骨髄内において著しく抑制され,本抑制効果は,骨髄細胞が直接骨芽細胞に作用することで生じていることを明らかにした.本研究成果は,BMP-2の臨床応用において,BMP-2の副作用その作用機序の一部を明らかにした大変重要な知見である.
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大腸菌発現系由来rhBMP-2含有β-TCP製人工骨を用いた再生療法の開発
研究課題/領域番号:16K11624 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
縄稚 久美子, 大野 充昭, 窪木 拓男, 大野 彩, 笈田 育尚
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
BMP-2を用いた骨再生療法は,自家骨移植に代わる最も有望な治療法として欧米を中心に実施されているが,未だ日本で承認されたBMP-2製剤は存在しない.我々は,大腸菌発現系を用いて生理活性を有したBMP-2タンパク質を作製することに成功した.そして,本申請研究では,イヌソケットプリザベーションモデルにおいて我々の開発品であるBMP-2/β-TCPが強力に骨形成を誘導することを明らかにした.
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研究課題/領域番号:16K15802 2016年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
大野 充昭, 窪木 拓男, 大島 正充, 前川 賢治, 大橋 俊孝, 渡辺 亮
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
象牙芽細胞分化の制御メカニズムのみならず,象牙芽細胞の分化に関わるマスター遺伝子は未だ不明である.そこで,我々は,象牙芽細胞分化に関わるマスター遺伝子の探索を目的に,組織学的・発生学的観点から網羅的解析を行った.その結果,いくつかの象牙芽細胞分化に関わる候補遺伝子を絞り込むことができた.今後,これらの遺伝子の機能解析を行っていく予定である.
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研究課題/領域番号:16K15801 2016年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
前川 賢治, 大野 充昭, 水口 一, 窪木 拓男
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
抗高脂血症剤服用によるミトコンドリアの機能障害が筋痛発症に関与している可能性が多数報告され,服用者の中でも,血中のビタミンDが欠乏した個体で筋痛の発症が有意に高いことが知られることから,ビタミンD機能と筋痛の関係の解明を試みた。
その結果,マウスを対象とした筋組織内でのビタミンD受容体の遺伝子発現量は,筋痛を発症しやすい僧帽筋や咬筋において四肢筋よりも有意に高く,ビタミンD機能が筋痛と関連している可能性が示された。また,ラットの咬筋に侵害刺激を付加した際の中枢神経系の疼痛感受性マーカー(c-fos)の発現陽性細胞数は,ビタミンD欠乏状態で増加傾向にあり,疼痛感受性が亢進する可能性が考えられた。 -
研究課題/領域番号:15H05026 2015年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
前川 賢治, 大野 充昭, 渡辺 亮, 秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大島 正充
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
角化歯肉は歯やインプラントの長期予後を確保するために重要だが,その再生治療は確立されておらず,自己組織移植による治療に依存している。実際,角化歯肉がどのようなメカニズムで形成されているか分かっていない。本研究で上皮の発生や恒常性維持に重要な基底膜に着目した解析を行った結果,角化歯肉の基底膜には,非角化歯肉と比べて,特定の成分が高発現していることが明らかとなった。さらにin vitroにおいて,同定した成分の機能解析を行った結果,口腔粘膜上皮細胞の角化を亢進する作用を認め,口腔粘膜上皮の角化を制御するメカニズムの一端を突き止めた。
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研究課題/領域番号:15K20439 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
三野 卓哉, 窪木 拓男, 大野 充昭, 大野 彩
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
インプラント周囲炎は細菌感染による疾患であるが,未だ細菌構成は明らかではな
い.我々は,6名のインプラント周囲炎罹患インプラント体の滲出液から,属レベルでクラスター解析を行った.その結果,複数のインプラント周囲炎部に認めたものの,歯周病罹患歯には認めなかった菌として5種,そして複数のインプラント周囲炎部に認めたものの,健全インプラント体には認めなかった菌として5種が同定された. -
研究課題/領域番号:15K15707 2015年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
大島 正充, 窪木 拓男, 大野 充昭, 秋山 謙太郎
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
本研究課題は、再生器官の発生に関わる時間軸・形態形成を制御しうるマスター遺伝子の探索を目的とした。生物種固有の発生メカニズムに基づく同一個体内の乳歯・永久歯の発生時間軸の違いに着目して、イヌ乳歯歯胚・永久歯歯胚の発現遺伝子をcDNAマイクロアレイにて比較検討したところ、FGF14およびFEZF2遺伝子を見出した。この中で、FGF14におけるマウスの歯胚発生に及ぼす影響を解析したところ、歯胚発生における上皮幹細胞やエナメル芽細胞に影響を与えていることが示唆された。
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フルオシノロンアセトニド(FA)を用いた変形性関節症の予防・治療法の開発
研究課題/領域番号:15K20480 2015年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
笈田 育尚, 窪木 拓男, 大野 充昭
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
日本に約1000万人の患者がいると言われる変形性関節症は,慢性の関節炎を伴う関節疾患であるが,未だ確実な治療は存在しない.我々は,形性関節症の治療法の開発を目的としてスクリーニングをし,フルオシノロンアセトニド(FA)を強力な軟骨細胞分化促進作用を有する薬剤として同定した.実際,免疫不全マウスの大腿骨膝蓋面に軟骨全層欠損を作製し,FAとTGF-β3刺激したヒト骨髄由来間葉系間質細胞を欠損部に移植した.その結果,軟骨欠損部ほぼ完全に再生された.
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ステムセルエイジングの制御に向けたアミノ酸による間葉系幹細胞未分化性維持
研究課題/領域番号:15K15708 2015年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
窪木 拓男, 大野 充昭, 前川 賢治, 秋山 謙太郎, 大島 正充
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
我々は,骨髄由来間葉系幹細胞 (BMSCs)の未分化維持に特定のアミノ酸が関わっていると考え,スクリーニングを行い,トリプトファンがBMSCsの幹細胞性維持に関与している事を突き止めた.実際,in vitroにおいて,トリプトファン処理により,BMSCsのコロニー形成能や細胞遊走能が上昇することが明らかとなった.また,マウスにトリプトファンを腹腔内投与すると,骨髄内の間葉系幹細胞数が増加し,骨髄内の海綿骨量が増加すること,また,骨欠損部の骨再生が促進される事が明らかとなった.本結果は,骨再生の新たな治療法の開発や,幹細胞老化により生じる骨疾患の新たな治療に繋がると考える.
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研究課題/領域番号:26253088 2014年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
窪木 拓男, 大島 正充, 辻 孝, 大野 充昭, 淺原 弘嗣, 秋山 謙太郎, 内部 健太
配分額:41600000円 ( 直接経費:32000000円 、 間接経費:9600000円 )
歯の喪失に対して,生理的活性を有した完全な歯を再生することに大きな期待が寄せられている.近年我々は,細胞を三次元に配置することで器官の原基を再生することが可能な器官原基法の開発に成功した.しかし,未だ歯の発生に関わる遺伝子の解明にはつながっていない.そこで,我々は,歯の発生に関わる遺伝子の探索を目的に解析を行った.その結果,いくつかの歯の発生および発生の時間軸に関わる候補遺伝子を絞り込むことに成功した.今後,これらの遺伝子の機能解析を行っていく予定である.
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研究課題/領域番号:26713053 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(A) 若手研究(A)
秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大野 充昭, 大島 正充
配分額:22490000円 ( 直接経費:17300000円 、 間接経費:5190000円 )
本申請研究は,創傷治癒過程における,再生の場に宿主間葉系幹細胞を集積させることによって組織を再生させる新規再生療法を開発することを目的とする.マウス大腿骨骨欠損モデルにおいて,宿主間葉系幹細胞の集積が,骨欠損作製後1日で確認され,cDNAマイクロアレイ法による網羅的解析では,幹細胞集積因子として炎症性サイトカインのひとつであるTNFaが検出された.TNFaが間葉系幹細胞の機能に与える影響を検討したところ,TNFaによって,幹細胞の増殖が抑制されるとともに,走化性が向上し,さらにはFASLの発現が促進されることによって免疫調節能が促進されていることが明らかとなった.
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次世代シークエンサーによるインプラント周囲細菌叢の網羅的解析と個別化抗菌療法開発
研究課題/領域番号:26861637 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
大野 彩, 窪木 拓男, 大野 充昭
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
インプラント周囲炎は細菌感染による疾患であるが,未だ細菌構成は明らかではない.我々は,インプラント周囲炎罹患インプラント体の滲出液から,群レベル,属レベルでクラスター解析を行った.その結果,インプラント体周囲の細菌叢には個人差があること,インプラント周囲炎罹患インプラント体と歯周病罹患歯が類似した細菌叢に,健全インプラント体と健全歯が類似した細菌叢にある傾向が明らかとなった.
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難治性神経疾患の新規治療法開発-歯髄由来幹細胞の新たな生物学的機能-
研究課題/領域番号:26670837 2014年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大野 充昭, 大島 正充
配分額:3250000円 ( 直接経費:2500000円 、 間接経費:750000円 )
本研究は難治性神経疾患モデルとして広く使用されている実験的脳脊髄炎モデルマウスに対して、ヒト歯髄由来間葉系幹細胞(DPSCs)ならびに骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCSs)を全身投与し, その治療効果の検討ならびに神経再生メカニズム解明を目的として行った.その結果、DPSCs,BMSCsともに全身投与後下肢の麻痺症状改善が見られただけでなく,免疫学的観点から制御性T細胞の回復ならびに炎症性Th17細胞の抑制も観察されたことから、DPSCsの治療効果がBMSCsと遜色無い事が判明した.しかしながら傷害神経部位への投与幹細胞の検出には至らず、神経再生のメカニズム解明は不明のままである.
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付着歯肉に特異的に発現 する遺伝子.蛋白の同定 とその機能解析
研究課題/領域番号:25893138 2013年08月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
熊崎 明日香, 窪木 拓男, 大野 充昭, 植田 淳二
配分額:2730000円 ( 直接経費:2100000円 、 間接経費:630000円 )
付着歯肉特異的遺伝子の同定を目的に,ラットの付着歯肉および可動粘膜から間葉細胞を採取し,機能解析を行った.その結果,可動粘膜由来間葉細胞の方が,付着歯肉由来のものと比較し,細胞接着,増殖,遊走能は有意に高かった.次に,PFA固定にて固定されたこれらの線維芽細胞上にヒト上皮細胞株を播種し,上皮細胞の角化に与える影響を検討した.その結果,付着歯肉由来間葉細胞上で培養した方が有意に上皮細胞の角化は促進された.以上の結果より,間葉細胞の接着因子が上皮の角化を制御していることが明らかとなった.現在,cDNA microarrayのデータと照らし合わせ,網羅的に解析している.
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BMP-2の環境選択的な骨誘導/抑制メカニズムの解明および適応症の探索
研究課題/領域番号:25463050 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
縄稚 久美子, 窪木 拓男, 園山 亘, 大野 充昭, 秋山 謙太郎, 新川 重彦
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
BMP-2は骨欠損、骨関連疾患の治療薬として、広く臨床応用されている。しかし、我々は,BMP-2の骨髄腔内において骨形成を抑制するという既存の報告と相反する大変興味深い結果を得てきた。そこで、本研究では、環境選択的な骨誘導/抑制メカニズムを解明し、BMP-2を応用したより確実で予見性の高い骨造成法を開発を目的とし研究を進めた。マウス実験において、骨髄の有無がBMP-2の骨形成能と大きく関わっていることが明らかとなった。更に、大型動物モデルを用い適応症を検討した結果、直接BMP-2が骨髄に作用しない、ソケットリフト、ソケットプリザベーション等の術式に最適であることが明らかとなった。
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高頻度睡眠時ブラキシズム患者は,睡眠時高血圧による心蔵血管系リスクを有するか
研究課題/領域番号:25670819 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
水口 一, 窪木 拓男, 前川 賢治
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
健常者を対象に撮影を含むPSGと小型機器による睡眠時ブラキシズム(SB)測定を終夜同時に行い,本装置の感度・特異度および正診率を算出した。その結果,SB低頻度以上を陽性とした場合,感度,特異度,正診率は1.00, 0.88, 0.93であり十分な信頼性を有していることが示された。
睡眠時覚醒(SA)とSB,随伴運動との関連を検討した結果,SBを伴う(SAwSB),SBを伴わないSA(SAw/oSB)での随伴運動の発生率は,SAwSBがSAw/oSBに比べ有意に多く,下肢体動の発症はSAwSBに有意に多かった。SBの発症には,睡眠時覚醒,下肢の動きや嚥下も何らかの関連がある可能性が考えられた。 -
研究課題/領域番号:25242041 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
辻 孝, 窪木 拓男, 大島 正充, 江草 宏, 坪田 一男, 梶原 康宏, 藤田 聡, 岸田 晶夫, 佐藤 明男, 武田 啓, 豊島 公栄
配分額:47190000円 ( 直接経費:36300000円 、 間接経費:10890000円 )
本研究課題では、次世代器官再生医療のための基盤技術の開発を目的とし、1)本研究グループの開発した器官原基法を用いることにより機能的な唾液腺・涙腺の再生が可能であることを明らかとし、再生器官原基移植による分泌腺再生医療の実現可能性を実証した。また、2) 器官再生に向けた細胞シーズの開発研究として、iPS細胞から毛包を有する皮膚器官系の再生が可能であることを実証した。さらに3) 器官再生医療の臨床応用に適用可能な機能性糖鎖ならびに自己組織化ペプチドを利用した新規機能性ゲル材料の基盤技術開発を達成した。以上の成果より、臨床応用化に向けた基盤技術と、幅広い器官再生医療の応用可能性を実証した。
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研究課題/領域番号:25670818 2013年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
窪木 拓男, 大野 充昭, 秋山 謙太郎, 園山 亘
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
近年, microRNA (miRNA)が細胞の性質決定に重要な役割を果たしている事が知られている.我々は,組織幹細胞未分化維持に関わるmiRNAを同定することを目的に,ヒト歯髄細胞および歯根膜細胞から高い幹細胞性を持つSide population (SP)細胞をセルソーターにて分離し, miRNA アレイおよびin silico解析を行った.その結果,幹細胞関連遺伝子の一つであるNANOG をターゲットとするmiR-720が同定された.実際,miR-720の強制発現,発現抑制実験の結果,miR-720がNANOGの発現を制御し,幹細胞性を制御していることが明らかとなった.
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研究課題/領域番号:24890136 2012年08月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
水口 真実, 曽我 賢彦, 窪木 拓男
配分額:2990000円 ( 直接経費:2300000円 、 間接経費:690000円 )
消化器領域等の悪性腫瘍の外科療法受診患者を対象に,周術期の口腔内管理を予知性高く効率的に推進する目的で,これら対象患者の口腔内の実態調査を行った.また,食道癌患者の術後回復と経口栄養摂取との関連について,症例報告を行った.さらに,周術期管理医療における歯科介入のあり方を議論する機会として,「第2回 周術期等高度医療を支える歯科医療を具体的に考えるシンポジウム」を平成26年1月26日に開催し,全国の周術期口腔機能管理の実務者と議論し最新の情報発信を行うとともに,周術期等の口腔内管理の新規開発ならびに介入を推進し,その効果の検証をさらに進めるための意見交換を行った.
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ヒト歯髄幹細胞による自己免疫性脳炎の治療効果とそのメカニズムの検討
研究課題/領域番号:24890135 2012年08月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
秋山 謙太郎, 窪木 拓男, 大野 充昭, 大島 正充
配分額:2990000円 ( 直接経費:2300000円 、 間接経費:690000円 )
実験的脳脊髄炎に対するヒト歯髄由来幹細胞の全身投与の治療効果をヒト骨髄由来幹細胞と比較検討した結果,脊髄炎の症状である下肢の麻痺を含む臨床症状において,いずれの幹細胞投与群でも明らかな治療効果を認める事ができた.しかしながら,免疫学的観点から評価した場合,骨髄由来幹細胞投与群において,歯髄由来幹細胞投与群よりも,免疫寛容獲得の指標となる抑制性T細胞の誘導効果が高い事が明らかとなった.
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インプラント周囲炎の生物学的病態解明と予防的診断プロトコルの開発
研究課題/領域番号:24792083 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
三野 卓哉, 窪木 拓男, 園山 亘, 大野 充昭, 大野 彩
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究の目的であるインプラント周囲炎の発症,進行に関与する生物学的マーカーの同定と臨床的リスク因子の検討を達成するために,過去の文献,診療録調査をもとに作成した臨床診査プロトコルを用い,初期インプラント周囲炎患者に対する前向き調査を開始した.研究対象者5名の診査時平均年齢は71.0±4.6歳で,口腔内の平均インプラント体埋入本数は4.8±2.4本,インプラント周囲炎と診断されたインプラント体数は1.4±0.5本であった.また,インプラント体ならびに天然歯周囲ポケットからペーパーポイントを用いて浸出液を採取した結果,本手法にて16S rRNA解析に必要な細菌DNA量を採取可能であった.
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歯乳頭由来幹細胞(SCAP)のニッチの解析による新たな間葉系幹細胞維持機構の解明
研究課題/領域番号:24659875 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
園山 亘, 窪木 拓男, 大野 充昭
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
生体内では,多くの器官に組織幹細胞が存在し,組織の恒常性の維持や修復に関与し,これらの組織幹細胞は,それぞれの組織内でニッチと呼ばれる特有な微小環境中に存在し,その幹細胞性を維持していることがよく知られている.そこで我々は幹細胞ニッチに関わる因子として,Ccn4遺伝子に注目し,Ccn4が歯の発生や創傷治癒に関与している可能性を明らかとした.今後,Ccn4遺伝子とニッチの維持機構の関係を明らかにしていく予定である.
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変形性関節症の予防や治療を目指した結合組織成長因子発現制御ペプチドの探索と評価
研究課題/領域番号:24792142 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
笈田 育尚, 窪木 拓男, 園山 亘, 大野 充昭, ハラ エミリオ サトシ, 新川 重彦, 中島 隆
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
結合組織成長因子(CTGF/ CCN2)は,軟骨細胞の増殖・成熟及び基質合成を促進し,関節軟骨を修復できることが報告されている.本研究では,CCN2の発現を亢進する新規化合物を網羅的に探索し,in vitroにてその機能解析を行った.
その結果,CCN2の発現を促進する因子として同定されたハルミンは軟骨分化促進作用,抗炎症作用の双方を持ち合わせる変形性関節症の予防,治療に有用な分子である可能性が示唆された. -
接着性および従来型ブリッジの超長期予後調査と次世代臨床データ蓄積システムの構築
研究課題/領域番号:23792227 2011年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
峯 篤史, 矢谷 博文, 窪木 拓男, 大野 彩, 吉田 利正, 黒崎 陽子, 三野 卓哉
配分額:2990000円 ( 直接経費:2300000円 、 間接経費:690000円 )
1989年4月から1992年3月の間に岡山大学歯学部附属病院第一補綴科で装着された3ユニット接着ブリッジ群(n = 86)と3ユニット従来型ブリッジ群(n = 100)の予後を調査した.接着ブリッジおよび従来型ブリッジの10年生存率は69 %と72 %,25年累積生存率は50 %と46 %であり,累積生存率に有意な差は認められなかった(p = 0.88).
トラブルの内容比較としては「除去」が従来型ブリッジで有意に多かったが(p = 0.01).「ブリッジの種類」「性別」「年齢」「残存歯数」「装着部位」「支台歯の状態」はトラブル発生の有無に影響を与える因子とならなかった(p = 0.82). -
ニューロモジュレーターであるセロトニン動態から見た睡眠時ブラキシズム発症機序解明
研究課題/領域番号:23390442 2011年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
水口 一, 窪木 拓男, 十川 千春, 前川 賢治, 十川 紀夫, 北山 滋雄, 松香 芳三
配分額:18200000円 ( 直接経費:14000000円 、 間接経費:4200000円 )
岡山大学歯学部6年時生全員を対象に自宅にて3日間連続してSB頻度を測定させ,同時にSB測定の翌朝採取した静脈血より血小板分画中のSERT量,総蛋白質量およびSERTによる5-HT取り込み能(取り込み量,取り込み速度,親和性)を計測した。解析対象被験者(男性/女性;22名/21名,平均年齢25.4+/-2.56歳)の3日間のSBレベルとSERTの5-HT取り込み量との間には,有意な負の相関が認められた(p<0.05, ρ=-0.31,Spearmanの順位相関係数)。これより睡眠時ブラキシズムの頻度にはSERTによる5-HT輸送能の差異が関与していた。
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研究課題/領域番号:23659898 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
前川 賢治, 岡 久雄, 窪木 拓男
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
脳卒中後に生じる中枢性の顔面神経麻痺等により,口腔周囲筋機能が低下し,運動性の咀嚼障害が生じることは少なくない。本申請では,このような患者の口腔周囲筋の連鎖的な筋活動を誘発可能な電気刺激法の確立を試みたが困難であった。従って,このような運動性の咀嚼障害をもつ介護者に対する介護がどれだけ負担となるのかを明らかとすることにより,口腔機能のリハビリテーションの重要性の認知度の向上と新しいリハビリテーション法の開発に間接的に寄与できるのではないかと考えた。その結果,全要支援・要介護高齢者225名を対象に検討し,口腔ケアや食事の時間,残存歯数といった咀嚼機能に関係する因子は介護負担に影響を与えていた。
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BMPー2の骨髄環境下における骨髄ニッチ形成・骨形成抑制メカニズムの解明
研究課題/領域番号:23890123 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
縄稚 久美子, 笈田 育尚, 園山 亘, 窪木 拓男
配分額:3250000円 ( 直接経費:2500000円 、 間接経費:750000円 )
本研究は,BMP-2 が骨髄腔内・外で相反する機能を持つという背景のもと,BMP-2 の骨髄腔内の骨代謝環境に与える影響および分子メカニズムを明らかにすることを目的とした.BMP-2 のマウス大腿骨骨髄腔内における骨形成を抑制するという,これまでの報告とは全く異なる結果を骨形態学的,分子生物学的に明らかにした.現在までに,このメカニズムの解明のため,ネガティフィードバック機構や,免疫学の観点からアプローチを行い,興味深いデータを得た.
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研究課題/領域番号:23659899 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
窪木 拓男, 園山 亘, 内部 健太, 大野 充昭
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
我々は,組織幹細胞の未分化維持に関わる因子の探索を目的にスクリーニングを行い,TNF-αが未分化維持に変わっていることを明らかとしてきた.実際,ヒト由来歯髄細胞をTNF-α刺激することで,未分化幹細胞マーカーであるCD146やSSEA4 の発現レベルが上昇することを明らかとしてきた.さらに,いくつかのmicroRNAが未分化維持に関わっていることを突き詰めた.
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研究課題/領域番号:23659897 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
松香 芳三, 窪木 拓男, 松尾 龍二, 小熊 恵二, 山本 由弥子, 熊田 愛
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
ラット三叉神経節細胞を分離し、マトリゲル処理を行った 37℃ CO_2チャンバー内で培養した。また、海馬細胞は市販のものを使用した。経時的に、細胞形態の変化を観察・記録し、コントロール群と比較したところ、A 型ボツリヌス毒素添加群の方が細胞寿命が長期化することが観察された。また、細胞から発生する樹状突起長を計測すると、A 型ボツリヌス毒素添加群の方が長いことが理解できた。
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低分子化合物ライブラリーを用いた骨形成過程における新規BMP2活性制御因子の探索
研究課題/領域番号:23592844 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤澤 拓生, 園山 亘, 窪木 拓男, 服部 高子
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
骨欠損部に対して骨形成タンパク(BMP)を用いて骨造を図る方法は次世代の骨造法の最も有望な方法と考えられているが,ターゲットとする細胞の応答性の低さから大量のタンパクが必要となり高コストとなること,および大量のタンパク投与による副作用のリスクが高まる危険があり,より低用量で高効果の得られる投与方法の開発が望まれている。そこで本研究はBMPの生理活性を増強する低分子化合物を同定し,その機能を解明することを目的に以下の実験を行った。
まず初めに一次スクリーニングとして低分子化合物(FDA approved Drug Library)の細胞増殖能,細胞障害度ならびにBMP-2の生物学的活性に与える影響について検討した。細胞増殖能についてはMTS assayで,細胞障害度に関してはLDH assayでそれぞれ評価した。BMP-2の生物学的活性に関してはBMP-2シグナルの増強の有無をBMP-2にのみ特異的な反応を示すId-1プロモーター領域を有するレポーター遺伝子を導入したC2C12細胞を用いたルシフェラーゼアッセイで評価した。その結果,640個の低分子化合物ライブラリーから細胞に障害を与えることなくBMP-2の生物学的活性を相乗的に増強する,あるいは化合物単体でBMP-2様の生物学的活性を示す可能性のある化合物を40個抽出した。さらに二次スクリーニングとしてin vitroでアルカリホスファターゼ活性の測定とアリザリンレッド染色による石灰化能の検討を行い40個の候補化合物からBMP-2の骨形成能を増強している可能性のある化合物を7個抽出した。 -
研究課題/領域番号:22249064 2010年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
窪木 拓男, 滝川 正春, 園山 亘, 辻 孝, 浅原 弘嗣
配分額:46670000円 ( 直接経費:35900000円 、 間接経費:10770000円 )
歯の発生は歯科リハビリテーション学にとって究極の目標である.我々はヒトへの応用を考え,大型動物の胎生後の組織を用い,器官原基法を応用することで歯の発生しうるかを検討してきた.そして,世界ではじめて,胎生後の組織を用い,生理機能を有する歯を再生することに成功した.また,歯の発生メカニズムを明らかにするため,転写因子の一つであるHox遺伝子に注目し,いくつかのHox遺伝子が歯の発生に特異的に発現していることを明らかとした.
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研究課題/領域番号:22390365 2010年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
松香 芳三, 窪木 拓男, 山本 由弥子, 熊田 愛, 小熊 恵二
配分額:18720000円 ( 直接経費:14400000円 、 間接経費:4320000円 )
シナプス小胞内への取り込み時に機能するボツリヌス毒素重鎖を蛍光標識したものをラット顔面部に注射したところ、同側の三叉神経節細胞で染色が確認された。反対側や染色液のみの注射では染色は観察されなかった。神経軸索輸送を阻害するコルヒチンを投与したラットでも染色は観察されなかった。三叉神経障害性疼痛モデルにおける温熱刺激(疼痛刺激)に対して、ボツリヌス毒素を顔面部皮膚に投与後には疼痛の減弱が観察された。また、末梢神経障害性疼痛モデルの知覚神経節にボツリヌス毒素を直接投与することにより、鎮痛反応が観察された。
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研究課題/領域番号:22390366 2010年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
前川 賢治, 早川 聡, 園山 亘, 窪木 拓男, 伊藤 嘉浩, 峯 篤史
配分額:19240000円 ( 直接経費:14800000円 、 間接経費:4440000円 )
これまで我々が開発してきた生体内でインプラント表面にアパタイトを析出可能なチタン表面は,純チタンのみに応用可能なものであった.しかしながら実際に臨床で使用されているチタンインプラントは,チタン合金製であるため,この技術を臨床応用するためには,チタン合金に同様の性能を付与する必要があった.今回,我々は,チタン合金表面に対する新たな熱化学処理方法(LPD法)を確立することにより,生体内でアパタイトを析出可能なチタン合金表面への酸化膜作製方法を開発した.LPD法で表面改質したチタン合金表面には問題なく細胞接着が生じ,ラット骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞分化が亢進される傾向にあることが明らかとなった.
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高脂血症治療薬;スタチンを応用した象牙質形成促進作用を持つ新規覆髄材の開発
研究課題/領域番号:22592150 2010年04月 - 2013年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
岡本 洋介, 窪木 拓男, 松香 芳三, 園山 亘, 大野 充昭
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
1.in vitroでのスタチンの歯髄幹綱胞における作用機序の検討
スタチンはメバロン酸経路の上流にあるHMG-CoA還元酵素を抑制しコレステロール産生の抑制することが報告されている。歯髄幹細胞(Dental Pulp Stem Cell : DPSC)でも同様の作用機序であるか検討するため,HMG-CoAの下流に位置するメバロン酸を用いた。培地にスタチン1μMとメバロン酸1mMの濃度で同時に添加し,MTS法で細胞増殖に与える影響を検討した。その結果,5日目にスタチン単独での細胞増殖抑制効果が消失していることを確認した。
またスタチンはメバロン酸経路の中間産物の抑制により,Rho経路を介し細胞周期をG1/S期で停止させることが報告されている。そこで細胞周期に与える影響を検討するため,スタチン1μM添加し3日間培養したDPSCをPIにて染色後,FACSを用い解析を行った。その結果,G0/G1期への集積像およびG2/M期ピークの減弱が観察された。以上の結果よりDPSCにおけるスタチンの作用はメバロン酸-Rho経路を介していることが示唆された。
2,イヌを用いた覆髄モデルの作製
本研究の臨床モデルは,歯髄に近接したカリエスが考えられる。そこで本研究ではビーグル犬(1歳齢)の犬歯を用い覆髄モデルを作製した。歯の遠心面がら近心に向け歯科用5倍速エンジンで窩洞の形成を行い,通常の歯科用覆髄剤を用い覆髄処置を行い,歯科用セメントを用い窩洞の充填を行った。1か月後に組織を回収し,通法に従い組織標本を作製した。その結果,安定して歯髄に近接した窩洞を形成できていることが確認された。
次に,このイヌ覆髄モデルを用い,スタチンの象牙質形成効果を検討した。つまり,スタチン2mMならびにPBSを各10μlを含むコラーゲンスポンジを覆髄剤として窩洞内に設置し,歯科用セメントにて充填した。1か月後に組織を回収し,組織標本を作製しHE染色を行なった結果,2mMのスタチンに有意な象牙質形成促進作用は認められなかった。 -
分子イメージングとバイオマーカー探索による慢性筋痛の局所病態解析
研究課題/領域番号:22592151 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
小野 剛, 前川 賢治, 水口 一, 松香 芳三, 窪木 拓男
配分額:2990000円 ( 直接経費:2300000円 、 間接経費:690000円 )
我々は,以前,近赤外線分光法を用いて慢性筋痛を訴える被験者の有痛筋組織内では,筋作業や交感神経活動亢進時の筋組織内の血管拡張機能が低下している所見を得た.さらに分子イメージング技術であるPositron emission tomography (PET)を用いて,筋組織のエネルギー源であるグルコースの取り込み量を僧帽筋に慢性筋痛を訴える被験者の僧帽筋と,非筋痛者の僧帽筋内とで比較した結果,筋痛者の僧帽筋組織内のグルコース取り込み量が非筋痛者のそれに比較して有意に抑制されることを明らかとした.これらの知見から更に慢性筋痛の病態を明らかとすることを目的に,筋組織内代謝と組織内血流の相互関係に着目した.相互関係を明らかとするためには,グルコース代謝の指標となる18F-FDGと,血流の指標となる150の筋組織内取り込み量をPETでダイレクトに測定することが有効と考え,150ガスをプローブとして実験に用いる手法の確立を目指して予備的検討を行っている.その一方で,150ガスを用いた血流動態評価が技術的な問題等で困難な場合に備え,血流の絶対量が測定可能な近赤外線分光計(オメガモニターBOM-L1 TR W)を用いて測定する血流動態測定の予備的検討も同時進行させている.加えて,最近,PETを用いた実験的研究で虚血のマーカーとして最近着目されている64Cu-ATSMを研究に用いることが可能かどうかも含めて検討中である.さらに,動物を対象としてPETを用いた基礎研究を開始することも考慮にいれ,理研分子イメージングセンターの研究者にコンタクトを取り準備を開始した.採択決定が11月となり,今年度の実質的な研究期間が3ヶ月と短かったため,実際の研究データの採取は来年度行う予定である
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インプラント周囲炎の早期診断ならびに新規治療法の開発
研究課題/領域番号:21592451 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
山崎 聖也, 窪木 拓男, 荒川 光, 小野 剛
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究の目的はインプラント周囲の炎症を未然に察知するためにインプラント周囲の炎症性歯肉を採取し特異的な生物学的マーカーを同定することである.昨年度に引き続き,当科で口腔インプラント治療を行った患者の中でどれだけの患者がインプラント周囲炎によりインプラントを喪失しているのかを把握する目的で,これまでに当院で口腔インプラント治療を行った患者のデータベースの整理を行った.過去15年間に当科にて口腔インプラント治療を行った全患者は453名であった,これらの患者に埋入されているインプラント体1本1本について追跡調査をおこないインプラント周囲炎の発症頻度ならびにインプラント周囲に炎症を引き起こすリスクファクターについて調査した.また,インプラント周囲に特異的に炎症が起こるのか(隣在歯から炎症が波及しているのではないか)を確認するためにインプラントの隣在歯に起こるトラブルの詳細を同時に調査した.
《方法》
1.1990年2月から2007年3月までの間に当科にて口腔インプラント治療を受けた全患者393人1062本の中でオッセオインテグレーションが獲得されたものが721本であった.これらのインプラント体を対象に多変量解析による生存分析をおこなった
2.多数歯の遊離端欠損患者に対して,インプラント群と可撤性部分床義歯群を選別し,欠損の隣在歯におこる炎症に起因するトラブルの発生を生存分析を用いて比較した
《結果》
1.インプラント体の10年累積生存率は94%であり.10本のインプラント体が除去に至っていた.インプラント体が除去に至るリスク要因は上部構造が術者可撤式である事と喫煙習慣である事が明らかとなった
2.インプラントと可撤性部分床義歯では欠損部の隣在歯におけるトラブルの発生率は有意に可撤性部分床義歯の方が高かった
今後はこれらの結果をふまえてインプラント体を除去するに至ったインプラント周囲炎をもった患者のインプラント体周囲歯肉からインプラント周囲に起こる炎症の特異的なマーカーを具体的に調査していく予定である -
症型分類(治療難易度)に基づく補綴治療の診療ガイドラインの策定と妥当性の検証
研究課題/領域番号:21249092 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
平井 敏博, 佐々木 啓一, 佐藤 裕二, 石橋 寛二, 窪木 拓男, 馬場 一美, 秀島 雅之, 小林 博, 櫻井 薫, 鱒見 進一, 越野 寿, 會田 英紀, 木村 彩, 河野 舞, 小山 重人, 北川 昇, 田邊 憲昌, 塚崎 弘明, 若林 則幸, 竜 正大, 河野 稔広
配分額:46150000円 ( 直接経費:35500000円 、 間接経費:10650000円 )
本研究の目的は、補綴歯科治療の難易度に基づく診療ガイドラインを策定し、その妥当性を検証することである。多施設共同研究の実施によって、新たに考案された多軸診断プロトコルが補綴歯科治療の難易度を計るのに有用であり、信頼性が高いことが確認された。本研究の成果により、エビデンスにもとづいた診療ガイドラインに則った補綴歯科診療の実施が可能になることは、診療の質および安全性の向上と効率化に繋がると考える。
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新規間葉系幹細胞のヒト幼弱智歯歯胚からの分離と象牙質再生への応用
研究課題/領域番号:20592267 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
完山 学, 土本 洋平, 窪木 拓男, 園山 亘, 片岡 健, 完山 学
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究では,ヒト幼弱智歯から新規に分離した歯胚由来間葉細胞と歯原性上皮細胞を用いて,in vitroで上皮間葉相互作用を再現することを目的とした.その結果,歯小嚢から分離・培養した上皮細胞はアメロゲニン遺伝子の発現を認め,歯肉から分離・培養した上皮細胞と比較して増殖能が高い歯原性上皮細胞であることが確認できた.この細胞と歯乳頭由来間葉細胞を混合共培養法すると上皮細胞の分化が促進された
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口腔インプラントは在宅・介護現場における要介護高齢者の口腔ケアの妨げになる?
研究課題/領域番号:20592264 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
荒川 光, 窪木 拓男, 松香 芳三, 完山 学, 山崎 聖也, 木村 彩, 野田 ?志, 山本 道代
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
口腔インプラント治療を受けた高齢者が全身状態の変化,特に痴呆,循環器系疾患によってリコールに応じることができなくなる実態が明らかになった.また,インプラント義歯を装着した健康な高齢者もメインテナンスの方法に対する疑問,インプラント体の予後への不安を抱いており,口腔インプラント治療を施術した我々歯科医師側の情報提示不足,さらに患者の高齢化を見据えた長期のケアプランの再考が求められていることがわかった
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研究課題/領域番号:20249077 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
五十嵐 順正, 佐々木 啓一, 古谷野 潔, 窪木 拓男, 前田 芳信, 馬場 一美, 赤川 安正, 春日井 昇平, 笛木 賢治, 小山 重人, 塚崎 弘明, 池邉 一典, 荻野 洋一郎, 是竹 克紀, 吉田 英子, 近藤 尚知, 黒田 真司, 青 藍一郎, 大井田 督仁, 酒井 良幸, 藤木 健吾, 岡野 耕大, 庄井 和人, 高市 敦士, 杉浦 健純, 井上 美智子, 佐藤 有加, 石澤 由起子, 吉田 晴奈, 山藤 千紗子, 枦山 智博, 森田 晃司, 木村 彩, 磯兼 衣里, 山田 昭人, 山根 晃一, 横山 政宣東
配分額:34060000円 ( 直接経費:26200000円 、 間接経費:7860000円 )
臼歯部遊離端欠損(短縮歯列)への補綴治療効果を明らかにすることを目的とし,7施設において短縮歯列に対して経過観察,または部分床義歯またはインプラント義歯による補綴治療が口腔関連QoLと咀嚼能力に及ぼす影響を検討した.その結果,欠損歯数の増加に伴い,口腔関連QoLと咀嚼能力が低下するが,補綴治療により向上が認められ,短縮歯列に対する補綴治療の有用性が示唆された.
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研究課題/領域番号:20249078 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
辻 孝, 窪木 拓男, 春日井 昇平, 友岡 康弘, 山本 照子, 園山 亘, 齋藤 正寛
配分額:48620000円 ( 直接経費:37400000円 、 間接経費:11220000円 )
人為的な細胞操作技術によって歯の器官原基である再生歯胚を作製し、歯の喪失部位に移植することにより、成体の口腔内で発生・萌出し、咬合機能、歯根膜機能、神経機能を有する機能的な歯が再生することを示した。さらに、再生歯胚から歯と歯周組織にて構成される完成した再生歯を作製して移植をすることにより、生着ならびに機能することが明らかとなった。これらのことから、再生歯胚ならびに再生歯の移植による機能的な歯の再生医療の実現可能性が示された。
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第二世代BMP-2を応用した口腔インプラントの骨結合促進と歯槽骨再生の実用化
研究課題/領域番号:20592268 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
縄稚 久美子, 窪木 拓男, 園山 亘, 完山 学, 山崎 聖也
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
1. 大腸菌由来BMP-2によるインプラント体周囲の骨再生の検討
大腸菌由来BMP-2を用いてインプラント体周囲への骨再生が可能かをラット背部皮下での異所性骨再生モデルで検討した.濃度は,0,1,5,10ug/ulのBMP-2水溶液を調整し,インプラント体を3分間浸漬したうえで移植した.移植から,2・3週間後にレントゲンで骨形成状態を確認したところ,5,10ug/ulのBMP-2溶液を用いたものでは明らかな骨形成が確認された.3週後に,インプラント体を回収し,非脱灰切片を作成し顕微鏡的に評価したところ,インプラント体と骨の直接的な接触が得られていることが確認された.
2. 大腸菌由来BMP-2を骨補填材と併用した際の骨再生の検討
大腸菌由来BMP-2と骨補填材とを併用した際の骨再生をラット背部皮下での異所性骨再生モデルで検討した.骨補填材は炭酸機含有アパタイトとβTCPを用いた.事前に両骨補填材の吸水量を検討し,一移植体当たり0,1.25,2.5,12.5,25,125ugのBMP-2を含有するように調整した上で移植した.レントゲン的に骨形成を確認したうえで,移植から3週後に移植体を回収し,組織学的に評価した.その結果,12.5,25,125ugのBMP-2を用いた群では両方の骨補填材を用いた群で明らかな骨新生を認めた.0.25,2.5ugでは3週の時点では骨形成は認めなかった.また,高濃度のBMP-2を用いた場合,移植体のボリュームは約10倍以上となるが,その中心部には赤血球を主体とする血液が停滞している部分が広く認められることが確認できた. -
モノアミン遺伝子多型よりみた睡眠時ブラキシズムの素因に関する分子遺伝学的研究
研究課題/領域番号:20592265 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 一, 窪木 拓男, 松香 芳三, 十川 紀夫, 北山 滋雄, 上原 淳二
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
本研究は,睡眠時ブラキシズムの発症メカニズムについて遺伝学的見地から解明を試みたものである。すなわち,脳内情報伝達物質であるモノアミン,特にセロトニン神経系の濃度調節機構に関与するトランスポーターの機能と睡眠時ブラキシズムの発症頻度の関連を検討した。同時に,我々が先行研究にて開発した睡眠時ブラキシズムの簡易測定装置の改良,被検者の集積基準についても検討を行った。その結果,軽度ブラキシズム群のセロトニントランスポーターの機能は,重度ブラキシズム群のそれと比較して有為に高い事が分かった。
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II型可溶型TNF受容体を用いた重度変形性顎関節症に対する局所抗サイトカイン療法
研究課題/領域番号:19592237 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
山崎 聖也, 上原 淳二, 窪木 拓男, 松香 芳三, 園山 亘, 山崎 聖也
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究では, 変形性顎関節症に対する新規関節腔内注入薬として可溶型腫瘍壊死因子受容体(sTNFR-II)を対象に考えており, 既に関節リウマチの治療薬として使用されているエタネルセプトにより, 関節軟骨破壊に関与する一部のマトリックスメタロプロテアーゼの関節軟骨細胞からの産生を抑制する傾向がみられた. また, 併せて変形性顎関節症に特異的なタンパク質を同定することで, 本治療の効果判定の指標としたり、新規治療に応用するため, 顎関節滑液中のタンパク質に関してもサイトカインアレイ解析や網羅的解析を行った.
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咬合感覚異常症患者における末梢および中枢知覚神経活動の亢進と治療法開発
研究課題/領域番号:19659506 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
松香 芳三, 窪木 拓男, 福島 俊士, 小川 匠, 坂口 千代美, 小野 剛
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
1.健常者における周囲歯肉への局所麻酔薬塗布後の歯の知覚閾値の低下
昨年に引き続き、咬頭嵌合位の咬合接触異常を訴えない健常者に局所麻酔薬(ハリケインゲル)を歯周歯肉へ塗布前後の歯の知覚閾値を計測したところ、閾値の低下が観察された。さらに、部位により知覚閾値の低下に差があることが理解できた。以上から、咬合感覚異常症患者の歯肉への局所麻酔薬の塗布により、歯の知覚を減少させることができる可能性、歯種により、反応が異なる可能性が示唆された。
2.咬合感覚異常症患者に対する局所麻酔薬の効果
昨年に引き続き、咬合感覚異常症患者に研究目的・内容を説明し、研究への参加を依頼した。包含基準は、1.咬頭嵌合位での咬合接触の異常を6か月以上にわたり訴える、2.患者は問題歯を特定可能であるとした。除外基準は、1.歯髄・歯周病変・顎関節症が存在する、2.多数の欠損歯のために、咬頭嵌合位が不安定である、3.歯科用局所麻酔薬に対するアレルギーがあるとした。それらの患者に対し、局所麻酔薬を塗布したところ、症状の軽快が観察された。
3.咬合感覚異常症患者と健常者の脳磁図計測
東京歯科大学の機器を使用し、脳磁図計測を行うため、プロトコールに関して東京歯科大学の担当研究者と検討した。被験者に能動的に咬合接触してもらうと、脳内の活動が生じるため、受動的に当該歯を押すこと装置の開発が必要であることが理解できた。研究費補助期間終了後になるが、今後、計測を継続していく予定である。
4.三叉神経刺激動物モデルにおける三叉神経節でのDNA変化の網羅的解析
ラット眼窩下神経をゆるく結紮することにより、刺激したモデルにおいて、三叉神経節内のDNA変化を網羅的に解析した。その結果、伝達物質遊離に関連するGRP75が増加していることが理解できた。 -
付着歯肉の分化に関連した特異的遺伝子・蛋白の同定とその機能解析
研究課題/領域番号:19659507 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
窪木 拓男, 高柴 正悟, 園山 亘, 滝川 正春
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
1.付着歯肉組織と遊離歯肉組織の遺伝子発現解析
前年度のマウスならびにラット歯肉組織の組織学的検討をもとにして,成体マウスの口腔内から実態顕微鏡下で付着歯肉と遊離歯肉をそれぞれ採取した、この組織からmRNAを抽出し,cDNAマイクロアレイを行い,両者の遺伝子発現を比較・検討した.
その結果,付着歯肉で発現量の高い遺伝子として,mmp12, integrin(alpha6), laminin(beta3), HIF-1a, VEGF, tenomodulin, collagen(typeV, alpha2), integrin(beta4)などが抽出された.一方,遊離歯肉で発現量の高い遺伝子としてIGFBP2, RABL3(member of RAS oncogene family-like3), RASA3(RAS p21 protein activator3), elastinなどが抽出された.既知の発現パターンと機能から考察するといくつかの遺伝子はたいへん興味深い研究対象と考えられた.
2,ヒト歯肉上皮細胞の培養
倫理委員会の許可を得て,抜歯時に得られたヒト歯肉サンプルから歯肉上皮細胞を分離し,同時に得た歯原性上皮細胞とその差異を比較,検討した.
その結果,歯肉上皮細胞は培養条件下では寿命が短く,cumulative population doubling(cPD)は平均8であった。一方,歯原性上皮細胞は平均16のcPDを示した.また,両者ともに上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン14とE-cadherinを遺伝子レベルで発現していたが,amelogeninの発現は歯肉上皮細胞では認めなかった.すなわち,歯肉上皮細胞は歯原性上皮細胞と比較して,明らかに異なるフェノタイプを有していることを明らかにした. -
三叉神経痛において生じている一次侵害受容神経過敏化のメカニズムの解明と治療法開発
研究課題/領域番号:18390512 2006年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
松香 芳三, 前川 賢治, 窪木 拓男, 完山 学, 杉本 朋貞, 竹居 孝二, 小野 剛, 小熊 惠二, 山本 由弥子, 北村 洋一, 熊田 愛
配分額:16850000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:2550000円 )
ラット顔面部の三叉神経を絹糸でゆるく結紮する三叉神経刺激により、疼痛を誘発すること、結紮側の三叉神経節細胞からの神経伝達物質遊離が増加していることが理解できた。また、毒素成分を精製した改良A型ボツリヌス毒素を顔面部皮膚に注射することにより、疼痛が軽減し、増強された神経伝達物質遊離を抑制することを証明した。
以上から、本研究結果は神経痛の発症メカニズムの解明に大きく貢献するとともに、改良A型ボツリヌス毒素の末梢投与は、神経痛患者に対して有意義な治療法となる可能性を示唆している。 -
発生過程を再現する象牙質再生技術の開発歯胚や歯髄の不死化細胞株樹立とその応用
研究課題/領域番号:18390514 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
完山 学, 窪木 拓男, 松香 芳三, 上原 淳二, 園山 亘, 土本 洋平
配分額:15200000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:2400000円 )
歯髄幹細胞, 歯胚上皮細胞, 歯胚間葉細胞を用いて, 歯胚発生段階で生じている上皮間葉相互作用を再現することで象牙質を再生しようと試みた.その結果, 上皮間葉相互作用に関連するSonic Hedgehog(Shh)と呼ばれる成長因子が象牙質を産生する象牙芽細胞の増殖や分化を促進することが明らかとなり, このShhが象牙質再生のキーファクターであることが示唆された.また, ヒトの智歯から採取した上皮細胞と間葉細胞を用い上皮間葉相互作用が試験管内で再現できる可能性が見いだされた.
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結合組織成長因子(CCN2/CTGF)を用いた顎顔面領域の三次元軟骨再生
研究課題/領域番号:18592121 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤澤 拓生, 服部 高子, 滝川 正春, 窪木 拓男, 上原 淳二
配分額:3950000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:450000円 )
本研究では,ドナーサイトから採取した自己軟骨細胞をCCN2/CTGFとともに培養・増幅し、付形した3次元スキャフォードに播種後に移植する新しい顎顔面再生療法を開発するための基礎研究を行い,以下の知見を得た.
細胞実験にはすべて4周齢の日本白色ウサギの耳介より採取した初代耳介軟骨細胞を用いた.
1.CTGFの細胞増殖に対する効果をMTS assayで評価したところ,50ng/mlのCTGF添加により耳介軟骨細胞の細胞増殖は,細胞播種後5日目と7日目にコントロール群と比較すると有意に促進された.
2.DNA合成に対するCTGFの効果を[^3H]thymidineの取り込みを指標に検討したところ,CTGFは濃度依存性に耳介軟骨細胞のDNA合成を上昇させ,50ng/mlでピークに達した(コントロールの約1.5倍).
3.プロテオグリカン合成に対するCTGFの効果は[^<35>S]sulfateの細胞内への取り込みを指標に検討した.プロテオグリカン合成もDNA合成と同様に添加したCTGFの濃度依存性に上昇し,50ng/mlでピークに達した(コントロール群の約1.4倍).
4.軟骨細胞の分化関連マーカー遺伝子の遺伝子発現に対する効果はリアルタイムPCRにて検討した.50ng/mlのCTGFでコンフルエントに達した耳介軟骨細胞を48時間刺激することにより,CTGFの遺伝子発現は1.9倍,エラスチンの遺伝子発現は5倍,2型コラーゲンの遺伝子発現は1.5倍上昇したが,10型コラーゲンの遺伝子発現には有意な発現上昇は認められなかった.またエラスチンのタンパク産生をビクトリアブルー染色で確認したところ,CTGF添加によりビクトリアブルーの染色性は亢進していた.すなわち,エラスチンのタンパク産生はCTGF添加によりコントロール群と比べると亢進していた.一方,アリザリンレッド染色ではその染色性にコントロール群との差は認められなかった.すなわち,CTGF添加により耳介軟骨細胞の石灰化は誘導されなかった.
5.In vivoにおける軟骨再生に対するCTGFの効果は,細胞ペレットをヌードマウスの背部皮下に移植することで検討した.移植後4週に移植片を取り出したところ,CTGF処理群はコントロール群と比べると移植片の大きさが明らかに大きくなっていた.移植片をサフラニン染色したところ,CTGF群,コントロール群ともにサフラニン染色陽性であったが,CTGF群のほうがその染色性は亢進していた.
これらの結果から,CTGFには耳介軟骨細胞においてそのphenotypeを増強する働きがあると考えら,CTGFを弾性軟骨の修復・再生にも応用できる可能性が示唆された。 -
アドレナリンレプターの遺伝子多型からみた慢性筋痛の病態解明と症型分類
研究課題/領域番号:18659572 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
前川 賢治, 窪木 拓男, 水口 一, 松香 芳三, 小野 剛
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
1) 頭頸部筋症状とβ2アドレナリン受容体多型の関連性の検討
岡山大学歯学部のヒトゲノム倫理委員会から承認を受け,本学附属病院の顎関節症・口腔顔面痛み専門外来を受診した患者の中で,研究参加に同意の得られた被験者より採血を行った.各被験者のDNAサンプルを取得開始し,現在,約200名のサンプルを保有している.また,切断酵素を用いたβ2アドレナリン受容体の遺伝子多型解析手法を確立した.今後は,β2受容体の遺伝子多型や筋症状に関する因子を予測因子として,多変量解析を用いて統計解析を進めていく予定である.
2) 頚部慢性筋痛者における筋組織内代謝特性に関する疫学的検討
岡山画像センターをがん検診を目的としてPET(Positron Emission Tomography)検査を受診した患者の中で,研究参加に同意の得られたものを対象とした.各被験者からはPET撮像前に頭頸部の慢性筋痛に関するアンケートに回答してもらい,筋痛に有無や場所,疼痛の強さに関するデータを得た.PET画像は,両側僧帽筋上部の規格化された部位にROI (region of interest)を設定し,その部位におけるFDG(F-18フルオロデオキシグルコース)の集積値を求めた.各被験者の基礎データ(年齢,性別,頭頸部慢性筋痛の有無,疼痛強度等)と僧帽筋部のFDGの集積値を予測因子とした多変量解析を行った.その結果,慢性筋痛を訴える被験者ではFDGの集積は有意に低下している結果が得られた.さらに,疼痛強度が強いほど,FDGの集積値は低い傾向にあった.これらの結果は,慢性筋痛者においては筋組織内の代謝が抑制されて可能性を示すものと思われた. -
第二世代BMPを応用した口腔インプラントの骨結合促進と歯槽骨再生
研究課題/領域番号:18592125 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
縄稚 久美子, 窪木 拓男, 完山 学, 藤澤 拓生
配分額:3790000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:390000円 )
ヘパリン結合部位を改変・修飾することで局所停滞性を高め,骨誘導能を改善した遺伝子組換え変異型骨形成因子(BMP-2 T4 mutant)は,それ自体で組織停滞性がよいため,本因子のキャリアに,従来の野生型BMP-2に最適化されたキャリアと同等の徐放プロファイルを持たせることが,よい骨再生能を生むかどうか不明であった。そこで我々は,徐放プロファイルをin vitroの系で求めるとともに,in vivoでそれを確認した。In vitro, in vivoの徐放試験については等イオン点が高いゼラチンハイドロゲルほど,高い収着挙動および徐放動態を示した。しかしながら,ラット頭蓋骨骨欠損モデルにおいては,カチオン化ゼラチンではほとんど骨再生は認めらなかったが、塩基性ゼラチンを用いた群では強い骨再生が認められた。以上から,BMP-2 T4 mutantは,塩基性ゼラチンと共に用いることで,確実な骨再生を安定的に実現できることがわかった.本結果をさらに大動物で確認するため,ビーグル犬の下顎骨に骨欠損を作製した後インプラントを埋入し,周囲におけるPl9/BMP-2 T4 mutantの骨誘導能を検討したところ,デンタルエックス線写真とCT画像,および組織像により骨の再生が得られたことが認められた.
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モノアミン遺伝子多型よりみた睡眠時ブラキシズムの素因に関する分子遺伝学的研究
研究課題/領域番号:18592122 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 一, 前川 賢治, 窪木 拓男, 北山 滋雄
配分額:3920000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:420000円 )
研究#1:若年者を対象に睡眠時ブラキシズム(Brux)頻度を貼付型Brux検出装置を用いて計測し,顎関節症症状の有症状率との関連を検討した.平成17年度岡山一宮高校1年生のなかで同意が得られた195名に顎関節部を含む頭頸背部筋の臨床診査,質問票による問診を行い,貼付型Brux検出装置による1晩のブラキシズム頻度との関連を検討した.その結果,127名の最終被検者では,男性ではブラキサーの診断閾値を高値にするほど,クリックや頭痛に対するO.R.は増加し,クリック6.67(p=0.02),頭痛4.85(p=0.04)であった.多変量解析では,Brux頻度とクリック有症状者との間には性差に関係なく有意な関連(O.R.:3.74, p=0.02)が認められたが,頭痛は男性であることに関連(O.R.:2.52, p=0.04)が認められた.一方,圧痛とBrux頻度の間に相関は認められなかった.
研究#2:エラー表示の発生を解決するため皮膚通電感知センサーの仕様変更を行い,改良型Brux測定装置を開発した.そこで,新旧バイトストリップをBrux陽性の6名に5日間同時に使用させ測定結果を比較した.その結果,旧型のエラー表示は14個(46.7%),新型では1個(3.3%)と有意にエラー発生率は低下した(p<0.01).
研究#3:Brux患者の特異性を検討する前段階として,Bruxの日差変動を考慮した各種の診断方法の診断方法の妥当性を検討した.本院補綴科(クラウンブリッジ)の顎関節症,口腔顔面痛み外来に受診した連続患者サンプルのうち,顎関節内障患者(ID)ならびに咀嚼筋痛患者(MFP)と診断された被検者に,10日間連続してBrux頻度を自宅に計測させた,各被験者毎のBrux頻度の診断方法を検討した.各種診断方法は,任意の1日の結果,連続2日間,および連続3日間の結果を抽出し,種々の方法にて代表値を算出した。これらの値にブラキサーの診断基準を適用し,10日間の代表値と比較した場合の各種診断方法の感度,特異度,正診率を算出した.最終サンプルの8名(女性:平均年齢41.5+/-20.7歳,ID群6名,MFP群2名)では1日の検査でも感度:0.80-0.90,特異度:0.80-0.86,正診率:0.81-088と高い値を示した.また,他の検査法では測定日数の増加に伴い正診率は上昇した. -
オゾン照射によるエルビウムヤグレーザー照射象牙質の脆弱層強化
研究課題/領域番号:18592123 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
峯 篤史, 窪木 拓男, 松香 芳三, 鈴木 一臣, 土本 洋平
配分額:2600000円 ( 直接経費:2600000円 )
牛切歯掛冠部唇側象牙質を用い,試料の半分はう蝕試料として人工脱灰溶液に5日間象牙質を浸漬した.それぞれの試料は3等分し.2試料にレーザー(Er : YAG, CO2)照射を行った.Scanning Electron Microscopy (SEM) (DS-720,TOPCON)を使用し,加速電圧20kVの条件で観察し,Energy Dispersive X-ray Spectroscopy (EDS) (Voyager III M3100. Noran Instrument Inc.)を用いてビーム電流50〜100pA,測定時間150秒の条件で測定した.測定結果からO/PおよびCa/Pを算出した.
その後オゾン照射(ヒールオゾン,Kavo)し同様に形態観察および元素測定を行った.
統計解析はまず歯質(健全,う蝕),処理(無処理,レーザー照射),オゾン照射(有,無)という三条件の影響を三元配置分散分析にて確認した後. Sheffe法を用いて有意水準5%で有意差検定した.
形態観察では各処理による著明な変化は認められないものの,CO2レーザー照射およびオゾン照射により閉じた象牙細管がより観察される傾向があった.
三元配置分散分析の結果,O/Caにおいては歯質(F=1.173,P=.281),処理(F=2.443,P=.0955),オゾン照射(F=2.320,P=.1330)のいずれも有意な影響を受けさなかった.一方,Ca/Pにおいては,オゾン照射の有無に有意な影響を受けなかったが(F=3.330,P=.0730),歯質(F=7.097,P=.0099,)および処理(F=7.846,P=.0009)は有意な影響を及ぼした.表面処理においてSheffe法によりCO2レーザー,Er : YAGレーザー間に有意差が認められた.
以上により,象牙質に対するオゾン照射により形態的ならびに元素的には大きな変化が認められないが明らかになった. -
アパタイトコーティング層の微細構造制御による新しい生体活性型インプラント
研究課題/領域番号:17390516 2005年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
前川 賢治, 吉田 靖弘, 窪木 拓男, 鈴木 一臣, 早川 聡, 尾坂 明義
配分額:17020000円 ( 直接経費:15400000円 、 間接経費:1620000円 )
失われた歯を補う目的で顎の骨に埋入されるチタンインプラントが,早期に確実に骨と結合して治療期間が短縮できるよう,チタン表面に生物学的な表面の改質を施した.具体的には,生体内に埋入された時に骨と親和性の高いアパタイトがチタン表面に自己形成される酸化膜を施し,骨の形成能が亢進される表面を開発した。また,ポリリン酸をチタン表面に吸着させることにより,高い生体活性を有するチタンインプラントの開発に繋がる可能性を示した。
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研究課題/領域番号:17209062 2005年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
窪木 拓男, 上田 実, 完山 学, 高柴 正悟, 辻 孝, 滝川 正春, 浅原 弘嗣, 土本 洋平, 園山 亘, 田川 陽一, 田川 陽一
配分額:48880000円 ( 直接経費:37600000円 、 間接経費:11280000円 )
マウスの歯の発生時に認められる遺伝子を検索し、従来報告のなかった28個の遺伝子を同定した。エナメル質形成細胞の成熟は、周囲に存在する細胞が制御していることを証明した。高脂血症治療薬(スタチン)は、象牙質の形成を促進し、歯科治療薬として応用しうることを示した。顎骨に存在する細胞は、手足の骨の細胞とは異なる性質を有していること、また、顎骨の再生促進に成長因子(結合組織成長因子、塩基性線維芽細胞増殖因子)が応用可能であることを確認した。
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レーザー照射歯質被着体に対応した新規機能性モノマーの合成と接着システムの開発
研究課題/領域番号:17390517 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
鈴木 一臣, 吉田 靖弘, 入江 正郎, 田仲 持郎, 西山 典宏, 窪木 拓男, 峯 篤吏
配分額:16390000円 ( 直接経費:15700000円 、 間接経費:690000円 )
緒言:う蝕治療時の窩洞形成に使用されているEr:YAGレーザーは、エアータービンやマイクロモーターのように騒音、振動による不快感がなく、また、無麻酔での治療が可能であることから注目されている。しかし、私達はEr:YAGレーザーを照射した歯質被着体とした場合、現行の歯質接着システムにおいてその性能が十分に発現しないことと、その原因の一つがレーザー照射歯質の脆弱化によることを解明した。そこで、Er:YAGレーザー照射後の歯質構造ならびに被着体としての性質を明らかにするとともに、本被着体に対応した新しい接着システム開発の重要性と臨床的意義から本研究に着手した。
材料および方法:1)レーザー照射歯質被着体は、Er:YAGレーザー(Erwin、Morita Co.)をエナメル質には127mJ,10pps×2秒,象牙質には69mJ,10pps×2秒の条件下で照射して作製した。2)接着システムのプライマーは、トリアジン系、アミノ酸系およびエポキシ系メタクリレート/HEMA,アルコールから調整した。3)接着強さの測定は、上述の被着体に各種プライマー、リン酸エステル系ボンデング材を作用させた後、コンポジットレジン(Clearfil APX、 Kurary Co.)を充填し、37℃水中浸漬24時間後の値を求めた。
結果および考察:Er:YAGレーザー照射歯質被着面に対するエポキシ系プライマーシステムの接着強さは、エナメル質に対して18.6MPa(コントロール:メガボンド/Kurary Co.;12MPa)、象牙質に17.2MPa(コントロール:9MPa)の値を表示した。この結果について本報告者らは、レーザー照射歯質被着体に発生したマイクロクラック間の空隙に存在している酸素の影響と考察している。すなわち、コントロールに用いている現在の歯科用接着材はラジカル重合型であって酸素が介在すると重合反応が著しく低下する。これに対して今回用いた開環重合型レジンは、反応中での酸素の影響を受けにくいことからの現象と考えている。 -
インプラント周囲の骨破壊活動性を評価できるチェアーサイド検査システムの実用化
研究課題/領域番号:17592025 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
荒川 光, 窪木 拓男, 完山 学, 上原 淳二, 縄稚 久美子, 山崎 聖也
配分額:3440000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:240000円 )
始めに,インプラント体周囲の骨吸収の活動性を評価するために,インプラント周囲歯肉溝滲出液(PICF)中のマリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1,-8,-13)を同定し,インプラント周囲の骨吸収との関連を検討した.対象は過去17年間にインプラント義歯を装着し,当科独自のメンテナンスプロトコルに従いリコールを受けた患者の中で,究の同意が得られたインプラント周囲炎患者4名とした.そして,年齢,性別,部位をマッチングしたコントロール者をリコール患者から4名抽出した.PICF濃度は,抗ヒトモノクロナール抗体を用いてWestern Blotting法にて検出た.その結果,年間0.8mm以上の進行性骨吸収が認められるPICF中からMMP-8のみが検出された.一方,慢性の骨吸収よびコントロール群のPICFからは,MMP-1,-8,-13のいずれも検出されなかった.以上から,進行性の骨吸収のリスマーカーとしてMMP-8が有望であることがわかった.
次に,多変量解析を用いて,インプラント周囲炎含めたインプラント体の予後(臨床的成功率)を左右するリスク子の検討を行った.その結果,Rough Surfaceのインプラント体であれば,年齢や喫煙,埋入部位やインプラント体長さといった現在リスク因子として報告されている因子は,インプラント体の臨床的成功率に影響を与えなかった.
そして,総括的に口腔インプラント治療の効果を評価するために,QoLアンケートを用いて,他の欠損補綴法を対とした治療前後の口腔関連QoL(OHQoL)を測定した.その結果,インプラント義歯を装着した患者の治療後のOHQoL化量は,ブリッジや可撤性床義歯を装着した患者のそれと比較して有意に上昇した. -
重度変形性顎関節症に対する抗サイトカイン療法の実用化
研究課題/領域番号:17592024 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
上原 淳二, 窪木 拓男, 藤澤 拓生, 水口 一
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
本研究では,変形性顎関節症の抗サイトカイン療法としてエタネルセプトの顎関節腔内注入療法の実用化を目的に,以下の基礎的実験を行った.
新生児ラット膝関節より採取した関節軟骨細胞を初代培養し,TNFα単独,IL1-β単独,同時刺激24時間後にエタネルセプトを培養液に加え,6,18時間後のmmp3,9,13発現変化を経時的にリアルタイムRT-PCR法にて定量した.
1)各単独,同時刺激で24時間後のmmp3,9,13発現は無刺激に比べ有意に増加し,同時刺激では単独刺激に比べ,いずれのmmp発現量も大きく増加した.
2)エタネルセプトは,TNFα単独と同時刺激で,いずれのmmp発現も抑制したが,IL-1β単独刺激では,抑制効果を示さなかった.
3)mmp3に関しては,TNFα単独刺激24時間後に,mmp9に関しては,TNFα単独刺激12,24時間後に,エタネルセプトによりその発現が有意に抑制された.
ラット変形性膝関節症モデルの膝関節腔内へエタネルセプトを局所投与し,組織学的に検討した.
1)いずれのエタネルセプト投与群においても関節軟骨破壊に対する抑制効果はみられなかった.
以上から,細胞実験では,エタネルセプトはTNFαが関与する軟骨細胞でのMMP3,9,13産生誘導を抑制することが示唆された.また,IL-1β単独刺激の場合,エタネルセプトによる抑制効果はみられなかったが,相乗効果を示すTNFαどの共存環境では,抑制傾向を示すことから,滑膜炎を伴うような炎症反応の強い変形性関節症では,その効果が期待できるかもしれない.今回の動物実験では,エタネルセプトの関節軟骨破壊への抑制効果は認められなかったが,今後は本研究モデルの妥当性を含め,さらなる検討が必要と考える.
本研究では,治療法実用化には至らなかったが,今回の結果は今後,本研究目的を遂行するには欠かせないデータといえる. -
口腔インプラントの骨結合を促進する遺伝子導入法の検討
研究課題/領域番号:16591948 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
鈴木 康司, 窪木 拓男, 完山 学, 峯 篤史
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
インプラント周囲骨の骨増生法を開発することを目的に,本研究を行った.まず,アデノウイルスベクターに骨芽細胞増殖因子のひとつである結合組織成長因子(CTGF)を組み込む実験を行った.β-galactosidaseとCTGF遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを作製し,マウス骨芽細胞株MC3T3-E1 cellを使用して遺伝子導入の効果を,X-gal染色,β-gal活性測定,RT-PCRにより導入効率,発現期間を検討した,その結果LacZ発現アデノウイルスベクターの至適濃度はMOI50であることが明らかとなった.同条件で,CTGF遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いてマウス骨芽細胞株MC3T3-E1 cellに遺伝子導入実験を行った結果,CTGFタンパクの産生が確認され,培養骨芽細胞に目的とする成長因子(CTGF)の遺伝子導入とそれに続くタンパク産生が可能であることが明らかとなった.さらにそれらをin vivoモデルに応用する実験系に取り組んだ。はじめにラットを用いた上顎骨抜歯窩モデルの作成とインプラント埋入モデルの確立を試みた。8週齢のWistar系雄性ラットの上顎第一臼歯と第二臼歯を抜去し,抜歯窩が完全に治癒するまでに3週間必要なことが確認できた。そこでインプラント埋入モデルはこの抜歯窩が治癒した歯槽骨に行うこととした。すなわち,直径1mm長さ2mmのチタンピンを抜歯後治癒した歯槽骨に埋入した。経時的に組織学的観察を行い,この動物モデルでオッセオインテグレーション獲得が組織学的に評価できる可能性を確認した。しかしながら引き抜き強さやプッシュアウトテストなどの物理学的な評価が困難であった。次に,ゼラチンハイドロゲルとCTGFやBMP-2タンパクを組み合わせラット抜歯窩モデルに応用した。しかし,抜歯窩の治癒過程においては抜歯後何も投与しないコントロール群と実験群に差が無かった。抜歯窩やインプラント周囲骨の増生を評価するためにはラットなどの小動物モデルでは明らかな差を求めるには限界があり,イヌやサルなどの大動物での実験モデルの確立が必要と考えられた。
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新規簡易貼付型ブラキシズム検出装置による大規模疫学ならびに臨床介入研究
研究課題/領域番号:16591949 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 一, 前川 賢治, 窪木 拓男
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
本研究では,我々が開発した簡便かつ客観的に睡眠時ブラキシズム(Brux)を評価することの出来る小型貼付型Brux測定装置(BiteStrip【○!R】)を用いて,(1)青年層のBrux頻度と頭頚背部の筋痛との関連を検討する,(2)高頻度で生じたエラーの原因と思われる東洋人特有の皮膚抵抗に対応した改良型装置の開発を行った.
対象は,高校生ならびに専門学校生のうち,本研究の参加に同意が得られた195名ならびに96名である.これら被験者にBiteStrip【○!R】を配布し,咬筋相当部皮膚に貼付して就寝させた.また,信頼性(κ=0.59)があらかじめ確認されている2名の検者が頭頸背部筋の圧痛検査を行った.この際,片側15部位の圧痛の有無を評価し,圧痛ありの部位の合計を圧痛点数とした.BiteStrip【○!R】によるBrux評価は,Bruxイベントの回数が40,75,125回をCut-offとした4段階にてそれぞれスコア0から3として評価し,Spearmanの順位相関係数にて関連性を検討した.
装置未返却者29名と,エラー表示もしくは表示なし52名を除いた高校生127名と専門学校生83名を最終被検者とした結果,両被検群ともに,総圧痛点数とBrux頻度の間に有意な相関は認められなかった(高校生/専門学校生:p=0.61/0.11,ρ=-0.05/0.18).これより,青年層においてはBrux頻度と頭頸背部の筋痛には関連が認められないことがわかった.
一方,この疫学研究より得られた結果,すなわち高頻度にエラー表示が発生する問題点を解決すべく,起動プログラムならびに皮膚通電感知センサーの仕様変更を行い,改良型Brux測定装置を開発した.そこで,新旧BiteStrip【○!R】の測定結果を比較して本改良点の効果について検討した.Brux陽性と診断された6名に5日間,新旧両方のBiteStrip【○!R】を貼付させ,その結果を比較した.6名が連続使用した5日間のうち,旧BiteStrip【○!R】では,エラー表示は14個(46.7%)であったのに対し,新BiteStrip【○!R】では1個(3.3%)と明らかにエラー発生率は低下した(P<0.01,Chi-Square test).これより新BiteStrip【○!R】は,旧型に比べ,東洋人に用いてもエラー表示が格段に少なく,優れた性能を示した. -
チタン表面への生体分子および細胞接着挙動のナノレベル・2次元・リアルタイム測定
研究課題/領域番号:16659533 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
吉田 靖弘, 鈴木 一臣, 窪木 拓男, 平田 伊左雄, 田川 陽一, 長岡 紀幸
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
チタンは医学・歯学の分野において人工歯根・人工骨の材料として重要な位置を占めており,その用途・規模は年々拡大している。本研究はチタンを用いた人工歯根・人工骨の治療期間短縮ならびに適応範囲拡大を目指し,チタン表面での生体物質の相互作用をnmオーダーでかつ多点で解析するシステムとして,2次元イメージング表面プラズモン解析装置(SPR)に適したイメージングSPR用チタンセンサーの設計・チタンSPRセンサー作製を目指した。
本研究のチタンSPRセンサーは二酸化チタンを直接表面に被覆せず,金属チタン表面を大気中で酸化させた。測定結果より,本研究で開発したチタンSPRセンサーは,タンパク質吸着量をng/mm^2のオーダーで精密に測定できることが明らかとなった。また,このセンサーを用いることにより,タンパク質の吸着過程を経時的に測定することも可能となった。これより,チタンセンサーは大気中で酸化された金属チタン表面での生体分子の相互作用を求める上で極めて有用であることが示唆された。
また,今回作製した2次元イメージングSPRは,(1)表面に存在する極微量の物質をpg〜ng/cm^2のオーダーでリアルタイムに定量可能,(2)多数の生体分子間相互作用に関するデータを瞬時に取得可能,(3)2次元平板上で同時に起こる複数(〜数1,000種類)の反応をパラレル分析することが可能であった。さらにユニークな特徴として(4)イメージングSPRでありながら正確な入射光角度-反射光強度のSPRスペクトルを測定可能であり,他のイメージングSPRと比べてより正確な物質吸着量を求めることができるなどの優れた長所を有していることも明らかとなった。
以上より,2次元イメージングSPRとチタンSPRセンサーはチタン材料の生体適合性の研究に重要な役割を果たすことが期待できる。 -
自己骨髄由来間葉系幹細胞にタンパク質導入法を応用した歯槽骨再生技術の開発
研究課題/領域番号:16659534 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
完山 学, 窪木 拓男, 荒川 光, 縄稚 久美子, 小島 俊司
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
本研究は,タンパク質導入法を用いて,BMP,SHH,FGF,IGF,TGF-b,CTGFなど骨形成に関連する成長因子を自己骨髄由来間葉系幹細胞内に導入し,次にそれらをキャリアとともに抜歯窩や実験的な歯槽骨欠損部位に移植することで歯槽骨の再生を試みようとするものである。
昨年度は,FITCとCTGF,そのファミリーであるcyr61,novなどの骨形成関連遺伝子のクローニングを行った。今年度はBMP-2,-4,SHH,FGF-2,galectin-1,-3,-9,sod-1など骨形成に関連する成長因子をコードするcDNAのクローニングを行った。現在,これらの遺伝子にPTD配列を含んだ遺伝子を増幅しPETベクターにクローニングを行っている。
in vivo実験においては,昨年度行った抜歯窩モデルが実験群とコントロール群で差が認められなかったことから今年度は大きな骨欠損モデルで試みた。はじめに生後8週齢のWistar系雄性ラット頭蓋骨全層骨欠損モデル(critical size defect)を作製した。これはラット頭蓋骨に直径6mmの全層骨欠損を作成したもので,この欠損部にBMP-2,FGF-2を含浸させた直径6mmのゼラチンハイドロゲルシート,I型コラーゲンシートを移植したところ,術後4週でゼラチンハイドロゲルシートもしくはI型コラーゲンシートとBMP-2を用いたものは,BMP-2単体やbFGF単体と比較して著名な骨再生が認められた。しかし,再生部位を歯槽骨に近づけるべく3.0kg雄性日本白色ウサギ下顎骨骨欠損モデル(defect size : 6mm)を用いた場合,I型コラーゲンキャリアとbFGFを用いても術後4週でコントロールとの著名な差を見いだすことができなかった。
今後は,PTD配列を含んだ骨形成関連遺伝子とゼラチンハイドロゲルやI型コラーゲンキャリア,さらに骨髄由来間葉系幹細胞を組み合わせた実験系を構築する予定である。 -
細胞増殖因子の徐放化による機能性チタンインプラントの開発
研究課題/領域番号:16390557 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
吉田 靖弘, 鈴木 一臣, 窪木 拓男, 平田 伊佐雄, 田川 陽一, 長岡 紀幸
配分額:13800000円 ( 直接経費:13800000円 )
1.ポリ乳酸系高分子
低結晶性ポリ乳酸誘導体,ポリエーテルセグメントを導入した親水化ポリ乳酸,側鎖官能基導入型ポリ乳酸誘導体を合成し,チタンとの接着性を評価した結果,いずれの共重合体もチタン表面に対して強固な結合を得ることはできず,容易に剥離することが示唆された。
2.異なる官能基を有する分子のチタン表面への吸着特性評価
リン酸系分子とカルボン酸系分子を用いて,官能基の違いがチタン表面への吸着特性に及ぼす影響を検討した結果,リン酸系の分子の方がカルボン酸系分子に比べて強固に吸着することが示唆された。さらにXPSにより詳細に分析した結果,チタンに吸着したリン酸系分子のP2pは未反応の分子に比べて低エネルギー側に化学シフトしており,リン酸系分子が化学的に吸着していることが示唆された。また,前処理として塩酸を用いることにより,チタン表面への吸着性が向上することも示唆された。
3.ポリリン酸
チタン表面に骨形成促進因子の吸着させる担体としてポリリン酸を選択し,細胞実験ならびに動物実験によりその効果を検討した。ヒト骨髄由来幹細胞ならびにマウス骨芽細胞様細胞株の細胞動態をMTS法により評価した結果,両者ともに初期細胞接着は,チタン表面へのポリリン酸吸着により有意に亢進された。また,細胞増殖に関してはチタン表面に吸着したポリリン酸の吸着量依存的に亢進された。さらにラット脛骨に埋入したチタン周囲の骨形成能を組織学的に評価した結果,ポリリン酸処理により周囲骨が良好に形成されることが示唆された。
4.リン酸化糖
リン酸化多糖を合成し,チタン表面処理に応用した。その結果,リン酸化されていない天然多糖類がチタン表面から容易に剥離するのに対し,リン酸化糖はチタン表面に強固に吸着することが示唆された。さらに,細胞実験の結果,今回用いたリン酸化多糖はポリリン酸に比べて,優れた細胞増殖能を有することが示唆された。 -
歯槽骨再建のための自己骨髄由来間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療の確立
研究課題/領域番号:16591947 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤澤 拓生, 窪木 拓男, 滝川 正春, 上原 淳二
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
本研究では,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞に対する結合組織成長因子(CTGF)の作用について検討し,以下の知見を得た。
1.ヒト骨髄液からの間葉系幹細胞の採取ならびに細胞培養
ヒト腸骨骨髄から骨髄液を採取し,9代まで継代培養を行い,得られた細胞集団のcharacterizationを行った。STRO-1の免疫染色を行ったところ,STRO-1陽性細胞が認められ,本研究に使用した細胞集団の中には幹細胞が存在しているこが確認された。また,これらの細胞群は骨芽細胞,脂肪細胞へと分化しうる多分化能を有していることを確認した。
2.幹細胞に対するCTGFの作用
1)アパタイトのディスクをCTGFでコーティングすることにより,その表面に接着する細胞数はCTGF濃度依存的に増加した。また,CTGFによる細胞接着促進はαvβ3インテグリンからp38のシグナル系路を介していることが示唆された。
2)CTGFは幹細胞の細胞増殖を促進させた。
3)ケモタキセルを用いた細胞遊走実験において,CTGF刺激により幹細胞の細胞遊走能は有意に促進された。
4)未分化間葉系細胞から骨芽細胞への分化を,アルカリホスファターゼ活性を指標に調べると,CTGF刺激により分化マーカーの一つであるアルカリホスファターゼ活性にはほとんど影響を及ぼさなかった。また,アリザリンレッド染色においても有意な差は認められなかった.すなわち,骨芽細胞への分化を抑制しないことが明らかとなった。
5)血管内皮細胞に対しても幹細胞と同様にCTGFは細胞接着や細胞遊走を促進させた。
6)in vivo移植実験において,ハイドロキシアパタイト-幹細胞-CTGF複合体をヌードマウスの背部皮下に移植すると,アパタイト-幹細胞-PBS複合体に比べて,アパタイト内部への細胞侵入が促進された。 -
チタンのオッセオインテグレーション獲得に関与する遺伝子クローニングとその応用
研究課題/領域番号:15390592 2003年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
完山 学, 窪木 拓男, 滝川 正春, 荒川 光, 鈴木 康司, 藤澤 拓生, 中西 徹
配分額:14800000円 ( 直接経費:14800000円 )
本研究は,チタン製インプラントのオッセオインテグレーション獲得に関連する遺伝子を明らかにすることを目的としている.
チタンプレート上での細胞培養及び発現遺伝子の解析を行った.すなわち,チタンの間葉系幹細胞に対する影響を検討するに先立って,チタン上で培養細胞がどのような影響を受けるか,取りわけ骨芽細胞が分化していく段階でマスターキーとなる遺伝子が存在するかどうかを検討した.その手法として骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1 cell)を研磨ガラスにチタンをコーティングしたプレート上で培養し,研磨ガラスおよび異種金属であるクロムと比較してどの様な影響があるか検討した.その結果,細胞接着・増殖・分化はチタン,クロム,研磨ガラスの順に高く,チタン上での骨芽細胞培養では細胞接着・増殖・分化が促進されることが明らかとなった.また,研磨ガラス,チタンプレート,クロムプレート上それぞれで,発現に変動のある遺伝子をサブトラクティブハイブリダイゼーション法にてスクリーニングし,その候補遺伝子としてEST遺伝子を含むxab-2, sod-1, galectin-1, actin related protein 2/3 mRNA, RIKEN cDNA 2210013021 gene, EST 601086505F1, and EST 01439などが検出された.これらの遺伝子の内,xab-2, sod-1, galectin-1の発現量を定量PCRであるリアルタイムPCRにて検討した結果,培養14日目における遺伝子発現量はチタン,クロム,研磨ガラスの順に高い発現を示した. -
腫瘍壊死因子可溶性レセプターを用いた重度変形性顎関節症治療の試み
研究課題/領域番号:15592050 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
前川 賢治, 藤澤 拓生, 窪木 拓男, 上原 淳二
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
変形性顎関節症患者11名(患者群)と健康被験者(対照群)10名の顎関節滑液中のsTNFRs濃度と,患者群におけるOAレベル,顎関節部の疼痛,開口量との関連を検討した.
1.患者群のsTNFR-I,-II濃度は対照群のそれらと比べ有意に高かった.
2.両群ともにsTNFR-I濃度は,sTNFR-II濃度より有意に高かった.
3.sTNFR-I濃度は,OAレベルと正の相関があり,sTNFR-II濃度は,咀嚼時疼痛と負の相関,開口量と正の相関があった.
変形性顎関節症の病態におけるsTNFRの役割を検討するため,変形性関節症にけるTNFR発現とサイトカインによるsTNFR産生に対する影響を調べた.
1.変形性膝関節症モデルの膝関節軟骨におけるTNFR発現は,対照側,患側いずれの組織においてもTNFR-I,II陽性細胞が認められ,患側で高発現していた.
2.ラット膝関節軟骨細胞へのIL-1β,TNFα刺激後における,tnfr発現量とsTNFR濃度を定量した結果,tnfr-I発現は,刺激による影響を受けず,tnfr=II発現は,刺激24時間後に無刺激時の約12倍となり,sTNFR-I濃度は,刺激48時間後に有意な上昇がみられるも,無刺激時の約2倍で,sTNFR-II濃度は,約5倍となった.
以上より関節軟骨細胞では,TNFR-Iは恒常的に,TNFR-IIは炎症性サイトカインによる影響を受け発現し,両者はsheddingにより可溶型として細胞外へと遊離してくることがわかった.滑液データとあわせて考えると,sTNFR-II濃度が高いほど症状が緩やかであった点から,なかなか症状の緩解しない重症の変形性顎関節症患者では,このsTNFR-II産生のメカニズムになんらかの異常がある可能性があり,この場合エタネルセプトのような分子標的治療薬の関節腔内注入療法の効果が期待できるのではないかと考える. -
口腔インプラントの骨結合獲得難易度を予測する生物学的診断法の開発
研究課題/領域番号:15659463 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
窪木 拓男, 高柴 正悟, 滝川 正春, 荒川 光, 藤沢 拓生
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
1.チタンの細胞培養および遺伝子発現への影響
骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1細胞)の細胞培養培養および遺伝子発現に対するチタンの影響を検討した。
1)チタンプレート
ポリスチレン製の培養皿と表面粗さを同程度にするために,研磨ガラスにチタンを真空蒸着したものを使用した。
2)細胞接着への影響
通常の培養皿と比較してチタンは細胞接着を抑制する傾向にあった。
3)細胞増殖への影響
通常の培養皿と比較して,細胞播種後1,2日ではチタンでは増殖が抑制されるものの3日では両材料ともコンフルエントに達した。
4)細胞分化への影響
骨芽細胞の分化の指標のひとつであるアルカリホスファターゼ活性は,両材料ともに細胞がコンフルエントになった後5日目ごろより上昇し,14日目でピークを向え,21日目では低下した。チタンでは通常の培養皿と比べてアルカリホスファターゼ活性は抑制された。
5)遺伝子発現への影響
通常の培養皿と比較し,チタンの遺伝子発現への影響をサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検討したところ,両材料間で発現に差のあるsod-1,xab-2の遺伝子を検出した。
6)リアルタイムPCR法による遺伝子発現の変動
サブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検出した発現に差のあるsod-1,xab-2の経時的な発現の変動を検討したところ,培養皿では細胞播種後5日目で発現のピークを向え,その後低下した。チタンでは発現のピークが10日目前後と培養皿より遅延し,発現も抑制されていた。 -
インプラント周囲炎の活動性を診断するチェアーサイド検査システムの開発
研究課題/領域番号:15592049 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
荒川 光, 窪木 拓男, 完山 学, 小島 俊司
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
インプラント周囲炎と診断され,インプラント体を除去した患者のうち同意が得られた2名からインプラント体周囲歯肉を採取し,免疫組織学的検討を行った.また,当科で口腔インプラント治療を受けた患者のうち,3名にインプラント周囲に重度骨吸収が観察された.これらインプラント周囲炎患者に従来の歯周外科治療を行い,治療効果とMMP-8との関連を検討した.さらに,インプラント周囲炎のリスク因子,すなわちオッセオインテグレーション獲得・維持を阻害するリスク因子の同定を目的に臨床疫学的検討を行った.
【方法】
1.インプラント周囲炎によりインプラント体を除去した2名の患者から採取した歯肉は,通法通り切片を作成し,HE染色ならびに抗MMP-1,-8,-13抗体を用いた免疫染色を行い,コラゲナーゼ産出細胞の局在を観察した.
2.インプラント周囲炎患者3名のうち,同意が得られた2名に対し歯周外科を行った.歯周外科施術前後にインプラント周囲溝滲出液(PICF)を採取し,従来行われている歯周検査,規格化レントゲン撮影を行った.PICF中のMMP-8の検出は抗MMP-8モノクロナール抗体を用いたWestern blottingにより行った.
3.全リコール患者136名の診療録から,オッセオインテグレーション獲得・維持を阻害すると思われる既知のリスク因子12項目を調査し,多変量解析によりリスク因子の同定を行った.
【結果】
1.インプラント周囲炎歯肉を用いて免疫組織学的検討を行った結果,炎症性細胞周囲にMMP-8の局在を認めた.
2.歯周外科前に検出されたMMP-8は,外科後には検出されなかった.そして,3カ月後のレントゲン所見では,術前と比較して,進行していた骨吸収は抑制もしくは骨添加が認められた.
3.多変量解析の結果,オッセオインテグレーション獲得阻害のリスク因子は,上下顎といった埋入部位,喫煙の有無,インプラント体の表面性状であった,一方,維持破壊のリスク因子は,埋入部位とインプラント体の長さであった. -
歯周病の遺伝子治療 -局所的遺伝子導入による生体反応の制御-
研究課題/領域番号:14370710 2002年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
高柴 正悟, 窪木 拓男, 西村 英紀, 久保田 聡, 明貝 文夫
配分額:13500000円 ( 直接経費:13500000円 )
標的因子の特定が重要な項目であるので,我々は歯周病の病態形成を鑑みて,(1)感染の非特異的な防御,(2)組織再生,の両面からターゲット因子を特定することにした。また,その生体毒性のために遺伝子治療の臨床応用に対する不安があるのも事実であるので,すべての実験は,その為害性も試験した。
1.標的遺伝子
ラットにおいて,歯槽骨の再生時に,1週目にcytochrime c oxidase遺伝子が,2.5週目にpro-a-2 type I collagen遺伝子が,特徴的に強く発現していた。これらを活性化することが細胞の活性度を高め,組織の線維化を促進することになるようである。歯髄では,ヒト14.7K-interacting protein 2(fip2)遺伝子のホモログが強く発現しており,ラットFIP-2遺伝子とした。この遺伝子の生理的な意味合いは不明であったので,現在も解析中である。さらに,炎症を制御するために,ヒト腫瘍壊死因子(TNF)-αを誘導する新規転写因子LITAFの活性化に関するプロモーターを特定した。
2.非ウィルスベクターによるβ-デフェシンの導入
口腔細菌の感染を抑制する作用のある抗菌ペプチドβ-デフェンシンを,上皮細胞や唾液腺に遺伝子導入によって強制発現させて,口腔内の細菌量の変化をラットにおいて調べた。さらに,催炎症性であるともいわれるこのペプチドが,唾液腺内で強制発現すると,組織に炎症を惹起させるかどうかも,組織学的に調べた。ラット唾液腺内での発現を実現させると,口腔内細菌が減少することと唾液腺組織の炎症が少ないことを確認できた。なお,電気的導入では,組織障害が大きかった。一方で,細菌内毒素の刺激時のこの遺伝子の発現誘導には,2つのNF-κB結合部位が促進的に作用し,NF-IL6結合部位は抑制的に作用することがわかった。導入したこの遺伝子の発現誘導に活用できるかもしれない。 -
歯周組識・歯槽骨再生のための自己間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療の確立
研究課題/領域番号:14370632 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 上田 実, 滝川 正春, 高柴 正悟, 前川 賢治, 吉田 靖弘, 中西 徹, 矢谷 博文
配分額:14800000円 ( 直接経費:14800000円 )
1,ヒト骨髄間葉系幹細胞の採取・培養
倫理委員会の許可を得て,ヒトボランティアの腸骨稜より骨髄液を採取し,培養・増殖させる方法を確立した.また,この細胞群は骨芽細胞,脂肪細胞へと分化しうる多分化能を有していることを確認した。
2,結合組織成長因子(CCN-2)コーティングによるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖,分化の促進
骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞を遊走させることができるCCN-2を多孔質アパタイトブロックにコーティングすることによって,スキャフォード内部への骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞の誘導に成功し,ブロック内部への血管新生,さらには骨再生を促進することに成功した.
3,チタン表面に対するヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖の促進
チタン表面にポリリン酸を吸着することにより,骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着や細胞増殖を促進することに成功した.この知見は,ポリリン酸がチタンのオッセオインテグレーションを促進する可能性を示唆するものである.
4,cDNAサブトラクション法によるチタンと骨とのオッセオインテグレーションに関連する因子の同定
ポリスチレンとチタンディッシュ上で骨芽細胞様細胞株を培養し,total RNAを回収後逆転写,cDNAサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて,チタン特異的遺伝子を検索した.その結果,チタン上で骨芽細胞を培養した場合には,sod-1,ribosomal protein L19の遺伝子発現が有意に抑制されていることが明らかになった。現在,さらに他の金属とも比較中である. -
生物学的に修復象牙質を形成促進するための分子クローニングとその応用法に関する研究
研究課題/領域番号:14571844 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
園山 亘, 滝川 正春, 高柴 正悟, 窪木 拓男, 矢谷 博文
配分額:3900000円 ( 直接経費:3900000円 )
1.ヒト抜去歯からの歯髄細胞の単離とその表現系の確認
本学倫理委員会の許可のもと,ヒト抜去歯から歯髄細胞を単離し,その遺伝子発現をRT-PCR法で確認した。その結果,本細胞は象牙芽細胞特異的とされるdentinsialophosphoprotein(DSPP)を発現しており,象牙芽細胞,もしくは前象牙芽細胞からなる細胞群であると思われた。
2.本細胞の細胞接着,増殖,分化に与える各種成長因子の効果の検討
既存の因子の中で修復象牙質形成に関与していると思われるβ型形質転換増殖因子(TGF-β1),塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と結合組織成長因子(CTGF)の細胞接着,増殖,分化に与える各種成長因子の効果を検討した。その結果,細胞接着はこれらの因子を培養プレートに吸着することにより促進された。また,細胞増殖はTGF-β1を培地に添加したときのみ有意に促進された。一方,アルカリフォスファターゼ活性は,bFGF, TGF-β1の添加により有意に抑制されたが,CTGF添加では,その影響は明らかでなかった。
3.ハイドロキシアパタイト(HAP)への細胞接着の検討
HAPに対する本細胞の3時間後の接着細胞数を検討したところ,ポリスチレン製の培養プレートに比較して,HAP上には有意に多くの細胞が接着していることが明らかとなった。
4.HAPが本細胞の分化に与える影響の検討
本細胞の遺伝子発現がHAP上で培養することにより影響を受けるかを検討したところ,DSPP,ならびにI型collagenの遺伝子発現が有意に促進しており,分化が誘導されていることが推測された。 -
変形性顎関節症の分子病態メカニズムならびに分子細胞治療に関する研究
研究課題/領域番号:14571843 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤沢 拓生, 滝川 正春, 西田 崇, 窪木 拓男, 前川 賢治, 矢谷 博文
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
本研究では重度変形性顎関節症の発症機序の解明と関節軟骨修復に遺伝子導入を応用することを目的に,(1)CTGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスを培養軟骨細胞に導入してその影響を検討するとともに,(2)実験的変形性顎関節症モデルの作製し変形性顎関節症の発症メカニズムについて解析した.
1.CTGFの遺伝子導入により細胞数は約1.4倍に増加した.
2.CTGFを遺伝子導入した細胞では,CTGF遺伝子の発現が増加しており,CTGFタンパクも産生された.
3.CTGFの遺伝子導入により,軟骨細胞の分化マーカーであるアグリカンとtype Xコラーゲン遺伝子発現も遺伝子導入後7日目まで増加していた.また,プロテオグリカン合成も有意に上昇した.
4.日本白色ウサギに強制開口行うことにより,ウサギ顎関節部に軟骨組織の象牙化や骨棘形成など,変形性顎関節様の変化を引き起こした.
5.骨棘形成周囲の肥大軟骨細胞に軟骨細胞のアポトーシスが認められた。
6.アポトーシスを起こしている軟骨細胞の周囲にNO産生細胞やMMP-3産生細胞が存在していた.
以上の結果より,軟骨細胞にCTGFを遺伝子導入することにより,軟骨細胞の細胞増殖だけでなく細胞分化も促進されることが明らかになった.また,軟骨基質欠損部にCTGFを応用することにより自己軟骨細胞による軟骨修復の可能性が示唆された.さらに,顎関節部に加えられた過剰なメカニカルストレスは,NOの産生を誘導し,軟骨細胞のアポトーシスとMMP3の産生を介して軟骨破壊を引き起こしていることが示唆されました.本研究で作製した変形性顎関節症モデルが,in vivoでの遺伝子導入による関節軟骨修復研究の進歩につながると推測される. -
頭頸部慢性疼痛患者のストレス付加時HPA系機能と疼痛閾値に関する分子生物学的研究
研究課題/領域番号:13672032 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
鈴木 康司, 笠井 昭夫, 前川 賢治, 窪木 拓男, 完山 学
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
正常被験者に規格化されたストレス刺激(cold pressor刺激,CP刺激)を付加し,交感神経系反応動態の変化を確認する目的で心拍数ならびに血圧の変動を測定した.またCP刺激を付加した際の血液中のコルチゾル,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)および内因性オピオイドの一つであるβエンドルフィンの濃度変化を測定し,CP刺激がこれらのHPA系関連のホルモン濃度変化に影響を及ぼすかどうか検討した.同時に三叉神経領域におけるストレス付加時の疼痛閾値の変動について検討した.
[方法]
1.被検者の右側上腕部に2分間のCP刺激を付加し,刺激直前,直後,5,15,30,45,60分後に血液を採取し,血漿を分離した.採取した血漿中のコルチゾル,ACTH, CRF,βエンドルフィンについてラジオイムノアッセイ法を用いて濃度を測定した.同じ実験系で心拍数,血圧も連続的に記録した.
2.同様の実験系でMedoc社製温度痛覚閾値測定装置TSA-2001を用い,温熱刺激による疼痛閾値を計測した.計測部位は三叉神経領域の左側外耳道前方10mmの顔面皮膚とした.
[結果]
1.心拍数,血圧ともにCP刺激の影響を有意に受けており刺激中に最も高い値を示した(p<0.0001).
2.ACTHはCP刺激5分後に濃度が最大となった.コルチゾルは刺激30分後に濃度が最大となった.βエンドルフィンは刺激直後に濃度が最大となった.これらは有意にCP刺激の影響を受けていた(p<0.0001).一方でCRFは有意な濃度変化がみられなかった.
3.三叉神経領域での疼痛閾値は刺激直後から30分後にかけて上昇する傾向にあったもの,統計的な有意差は認められなかった.
心拍数や血圧の変動が示すとおり,CP刺激により交感神経系ではより急速な応答が営まれていることが確認できた.一方HPA系では,急性ストレスであるCP刺激に対して交感神経系よりも緩やかな反応を示し、非常に長時間にわたってその影響が持続することから,本実験で用いたCP刺激はHPA系反応動態を測る上で有効な手段であることが明らかとなった.また,実験的なストレス刺激により三叉神経領域での疼痛閾値が上昇する傾向にあったことから,精神的,肉体的なストレスは,交感神経系や体液性のストレス反応を介して三叉神経系の疼痛閾値を変化させうることが示唆された. -
MMP-3転写調節部位遺伝子多型からみた顎関節症の予後に関する分子遺伝学的研究
研究課題/領域番号:13672033 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 一, 滝川 正春, 矢谷 博文, 窪木 拓男, 藤澤 拓生
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
MMP-3遺伝子のプロモーター領域の多型(5A/6A)と関節疾患感受性との関連性を明らかにすることを目的として遺伝子多型解析を検討した.まず,本年度は遺伝子多型解析に先立ち,本研究計画に対して岡山大学歯学部倫理委員会の承認を得る必要があった.そのため,平成13年11月から岡山大学歯学部倫理委員会の承認を受けた後,岡山大学歯学部附属病院第一補綴科に顎関節部の疼痛,機能障害を主訴に来院し,本研究の趣旨を文書にて説明し自発的同意の得られた被検者から一律3mlの血液採取を行った.
平成14年1月30日現在での被検者数は,男性18名,女性26名の計44名であり,これら被検者の血液よりDNAの抽出を行った.このDNA抽出に関する手法は確立し得た.
現在,抽出されたDNAから、MMP-3プロモーター領域の対立遺伝子の多型(variable number of tandem repeat : VNTR)ならびにIX型コラーゲンα3鎖の遺伝子多型(SNPs)を検討すべく,Ye et al.(1995)の方法ならびにPaassiltaらの方法に従い、PCR産物に対してTthlllI酵素処理を応用し,被検者個々の対立遺伝子の多型を明らかにした.
その結果,現在集積された被検者数では,遺伝子多型と関節疾患感受性との間に統計学的に有為な関連性を見いだすことはできなかった.しかしながら,現段階では被検者数が少なくtype II errorが生じている可能性があり,今後も被検者数の継続的蓄積が必要となると考えられた. -
血管径調節関連遺伝子多型からみた慢性筋痛の分子遺伝学的検討
研究課題/領域番号:13877327 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
窪木 拓男, 矢谷 博文, 鈴木 康司, 前川 賢治
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
全身の多部位に慢性筋痛を訴える線維性筋痛症(FMS)患者のβ_2アドレナリン受容体(β_2AR)機能評価のため,末梢血由来単核球細胞上に存在するβ_2ARを用い,情報伝達の際に産生されるcAMPを機能性マーカーとして,ELISA法により測定し,年齢,性別をマッチングさせた正常被験者のそれと比較した.FMS群(女性8名,平均年齢44.3歳)と無症状群(女性9名,平均年齢35.8歳)から静脈血を採取し,単核球を分離した.分離した単核球は10^6個ずつ分注し,安静時ベースラインと10^<-3>,10^<-5>Mに希釈したβAR刺激薬(Isoproterenol, IP)を5分間作用させた低・高濃度IP刺激後の3条件のcAMP量を測定した。その結果,低濃度である10^<-5>M IP作用後のcAMP量は,無症状群では有意な増加を示したが,FMS群では変化がみられなかった(無症状群:p<0.001,FMS群:P=0.520).FMS群において単核球におけるβ_2ARの刺激に対する反応が抑制されているという事実は,FMSの病態に全身性のβ_2AR機能の脱感作が関与する可能性を示唆する重要な所見と思われた.一方で,FMSとの病態メカニズムの差異が論争されている慢性局所性筋痛症のβ_2AR機能評価を,慢性筋痛者11名,正常被験者21名を対象にして前述の手法に従って行った.その結果,単核球が産生するcAMP濃度はIP刺激濃度依存性に増大したが,その濃度変化量は両群間に有意な差が見られなかった.本結果は,局所性慢性筋痛症の病態には,全身性のβ_2AR機能異常の関与は認められないこと,換言すれば,線維性筋痛症と局所性慢性筋痛症の病態が異なることを示す重要な所見であると考えられた.遺伝子多型の解析については「岡山大学歯学部ヒトゲノム・遺伝子研究倫理審査委員会」より患者の遺伝子解析について承認を得た後,本学歯学部附属病院顎関節症・口腔顔面痛み外来を受診した患者のなかで,本研究計画の被験者選択基準に合致し,研究の参加に同意の得られた者より,末梢血3mlを供与してもらい,サンプル数を増加させ,解析を進めている.
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チェアーサイドで行うインプラント周囲の歯槽骨破壊のリスク診断
研究課題/領域番号:13672031 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
荒川 光, 笠井 昭夫, 矢谷 博文, 窪木 拓男, 完山 学
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
我々は,当院で口腔インプラント治療を受け,メインテナンス中の全患者64名に対し,歯周病の病態把握に用いる分子生物学的手法,すなわち歯周病原因菌に対する末梢血清抗体価の測定,PCR法を用いたPICF中の細菌検査を行っている.その結果を踏まえ,継続管理を行っているが,インプラント周囲の重度の骨吸収を呈するインプラント周囲炎患者4名を経験した.そこで,この4名の患者に対し,インプラント周囲歯肉溝滲出液中(PICF)の好中球コラゲナーゼ(MMP-8)の検出を試みた.また,このインプラント周囲炎患者4名のうち同意が得られた3名に対し,従来の歯周外科治療を行い,臨床検査およびMMP-8を用いた生物学的手法で治療効果を検討した.
[方法]
1.対象はインプラント周囲炎患者4名とし,年齢,部位等をマッチングさせた患者をメンテナンス中の全患者64名から4名抽出し,コントロールとした.
2.また,インプラント周囲炎患者4名のうち治療の同意を得られた3名に対し,歯周外科を行った.
3.申請者らが妥当性を検討した方法を用いて,歯周外科施術前後にPICFを採取した.また,従来行われている歯周検査,術前および術後3カ月には規格化レントゲン撮影を行った.
4.採取したPICF中のMMP-8の検出は抗MMP-8モノクロナール抗体を用いたWestern blottingにより行った.
[結果]
1.進行性の骨吸収が認められるPICF中からのみMMP-8が検出され,MMP-8と骨破壊進行程度との関連性を示唆する結果を得た.
2.歯周外科施術前にはMMP-8が検出されたが,施術後には検出されなかった.また,3カ月後のレントゲン所見では,術前と比較して,骨吸収の程度は「変化なし」もしくは「骨添加」が認められた.すなわち,PICF中のMMP-8は,治療効果の判定にも有用であることが示唆された. -
重度変形性顎関節症治療のための軟骨由来軟骨成長因子(CTGF)の遺伝子導入
研究課題/領域番号:12557169 2000年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 中西 徹, 滝川 正春, 藤沢 拓生, 笠井 昭夫, 矢谷 博文, 完山 学
配分額:12000000円 ( 直接経費:12000000円 )
本研究では重度変形性顎関節症の発症機序の解明と関節軟骨修復に遺伝子導入を応用することを目的に,(1)実験的変形性顎関節症モデルの作製した.(2)CTGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスを培養軟骨細胞に導入してその影響を検討した.
1.日本白色ウサギに強制開口行うことにより,ウサギ顎関節部に変形性顎関節様の変化を引き起こした.すなわち,関節頭の中央部から後方部の軟骨層に軟骨組織の象牙化や,軟骨細胞の異常な集積が認められた.特に中央部では,軟骨層の消失が認められた.また,関節頭の前方部では軟骨組織の破壊が起きており,骨棘形成が認められ,その周辺部では軟骨細胞の異常な増殖が認められた.
2.軟骨細胞にCTGFを遺伝子導入すると,CTGFの遺伝子発現は上昇し,感染後7日目でピークに達した.
3.導入されたCTGF遺伝子により,軟骨細胞においてCTGFタンパクが産生されることが明らかとなった.
4.CTGFの遺伝子導入により,軟骨細胞のプロテオグリカン合成は有意に上昇した.
以上の結果より,軟骨細胞にCTGF遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入することにより,軟骨細胞の分化および増殖が促進されることが明らかとなり,軟骨修復へのCTGF遺伝子の遺伝子導入の有用性が示唆された.さらに,本研究で作製した変形性顎関節症モデルが,in vivoでの遺伝子導入による関節軟骨修復研究の進歩につながると推測される. -
修復象牙質を生物学的に形成促進するための分子クローニングとその導入法に関する研究
研究課題/領域番号:12470418 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 滝川 正春, 高柴 正悟, 園山 亘, 完山 学, 中西 徹
配分額:13800000円 ( 直接経費:13800000円 )
1.遺伝子導入法と導入率の検討
マーカー遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを作製し,培養細胞に対しての導入効率を検討した.その結果ほぼすべての細胞で導入したマーカーの活性が認められ,培養細胞に対して高い効率で意図した遺伝子を導入できることが確認された.
2.動物モデルにおける既存の因子の局在の確認
既存の因子の中で修復象牙質形成に関与していると思われるβ型形質転換増殖因子(TGF-β)と結合組織成長因子(CTGF)の局在を免疫染色法により確認した.その結果,修復象牙質様硬組織が確認されるようになる2週後になると,TGF-β,CTGFともに同組織周囲で発現が強くなることが確認された.このことから細胞外基質の分泌ならびに石灰化にTGF-βならびにCTGFが強く関与している可能性が示唆された.
3.起炎性因子の刺激による両因子の発現の変動
象牙芽細胞様細胞を起炎性因子で刺激した際のTGF-β1とCTGFの遺伝子発現レベルの変動をRT-PCR法を用いて検討した.その結果TGF-β1とCTGFはともに象牙芽細胞様細胞株で恒常的に発現していることが初めて確認された.また,刺激から24時間後にはTGF-β1の発現は減少し,逆にCTGFの発現は増えることが確認された.これまでの結果をあわせて考えると,細胞外基質の分泌ならびに石灰化にTGF-βならびにCTGFが強く関与している可能性が示唆された.
4.TGF-β1とCTGFの作用の検討
象牙芽細胞様細胞が対数増殖期にある時に両因子を作用させ,増殖に与える影響を検討した.その結果TGF-β1は細胞増殖を抑制する傾向にあったが,CTGFはその増殖を妨げなかった.また,CTGFの石灰化に対する効果を検討するため,この細胞にCTGFを添加した際のアルカリフォスフォターゼ活性を測定した.その結果CTGFの明らかな効果は認められなかった. -
顎口腔領域の各種感覚刺激によるMRI脳機能画像分析
研究課題/領域番号:12671825 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
岸 幹二, 繁原 宏, 若狭 亨, 杉本 朋貞, 窪木 拓男
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
本研究の目的は、第1に顎口腔領域における各種感覚刺激のfMRIに最適の撮像条件の設定、頭部の固定法、画像処理を確立することである。第2に味覚など体動や筋肉の動きを伴わない刺激および嚥下運動におけるfMRIの描出能について健全例について種々条件を変えて検討を加え、fMRIの顎口腔領域各種感覚刺激の研究、臨床応用の可能性を追及することである。
平成12年度にまず撮像法の検討を行った。手指の運動に対し、gradient echo type EPI(GE-EPI)とspin echo typeEPI(SP-EPI)の2種類の撮像シーケンスを用いて、fMRI画像の比較検討を行った。その結果、SP-EPIが信号検出の特異性、正確度共に高いため、このシーケンスを用いることにした。頭部固定は、ヘッドコイルと頭部に対し、ヘアバンド、スポンジ等を組み合わせることにより施行し、アイマスクと耳栓で視覚、聴覚刺激を遮断した。画像処理は、Magnetom Visibn付属のソフトウエア-(Numaris)内のz-scoreを用いて行った。次に、味覚刺激は、濃度1Mの食塩水と3mMのサッカリンを被験者の口腔へ挿入したチューブより滴下することにより与え、fMRI撮像を行った。その結果、味覚刺激による脳賦活領域はpariental operculum、frontal operculumとinsulaに分布することが明らかになった。味覚刺激の種類による分布の差異は今回の研究では認められなかった。
平成13年度は、主に嚥下運動によるfMRI studyを行った。すなわち、被験者の口腔に挿入したチューブより、蒸留水を3ml/秒注入し、断続的に嚥下してもらうことにより行った。その結果、primary motor cortex、primarys somatosensory cortexが主に賦活されることが明らかになった。 -
アドレナリンβ2受容体機能異常からみた慢性筋痛の病態解明に関する分子生物学的研究
研究課題/領域番号:12671883 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
前川 賢治, 水口 一, 鈴木 康司, 窪木 拓男, 矢谷 博文
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
全身の多部位に慢性筋痛を訴える線維性筋痛症(FMS)患者のβ_2アドレナリン受容体機能評価を末梢血由来リンパ球細胞上に存在するβ_2受容体を用いて,情報伝達の際に産生されるcAMPを機能性マーカーとして,正常被験者のそれと比較した.被験者はFMS群(女性8名,平均年齢44.3歳)と筋痛,関節疾患,頭痛等を認めない無症状群(女性9名,平均年齢35.8歳)である.各被験者から20mlの静脈血を採取し,比重遠心法を用いて単核球を分離した.分離した単核球は10^6個ずつ分注し,燐酸緩衝液のみを加えた安静時ベースラインと燐酸緩衝液で10^<-3>,10^<-5>Mに希釈したβアドレナリン受容体刺激薬(Isoproterenol, IP)を5分間作用させた低・高濃度IP刺激後の3条件のcAMP量を測定した。その結果,低濃度である10^<-5>M IP作用後のcAMP量は,無症状群では有意な増加を示したが,FMS群では変化がみられなかった(無症状群:p<0.001,FMS群:p=0.520).一方,10^<-3>M IP刺激後のcAMP量は,安静状態に比較して両群とも有意に増加した(無症状群:p=0.012,FMS群:p<0.001).FMS群において単核球におけるβ2受容体の刺激に対する反応が抑制されているという事実は,FMSの病態に全身性のβ_2受容体機能の脱感作が関与している可能性を示唆する重要な所見と思われた.一方で,FMSとの病態メカニズムの差異が論争されている慢性局所性筋痛症患者におけるβ_2アドレナリン受容体機能評価を,慢性筋痛者11名,正常被験者21名を対象に5段階(10^<-3>〜10^<-73>M)のIP濃度を用いて前述の手法に従って行った.その結果,単核球が産生するcAMP濃度はIP刺激濃度依存性に増大した.しかしながら,その刺激濃度依存性に増大するcAMP濃度変化は両群間において有意な差は見られなかった.本結果は,局所性慢性筋痛者の病態においては,全身性のβ_2アドレナリン受容体機能異常の関与は認められないこと,換言すれば,線維性筋痛症と局所性慢性筋痛症の病態が異なることを示す重要な所見であると考えられた.
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FunctionalMRIを用いた咀嚼運動と三次元脳内血液動態変化に関する研究
研究課題/領域番号:12557170 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
前川 賢治, 岸 幹二, 鈴木 康司, 窪木 拓男, 若狭 亨
配分額:6500000円 ( 直接経費:6500000円 )
主目的である正常者における習慣的咀嚼運動が脳のどの部位の活性化にもたらす影響については,MRIの撮影手法上,咀嚼は運動によるアーチファクトが大きく,信頼性、再現性の高い撮影を行うことが困難であった.したがって,嚥下運動時の大脳皮質活性部位の検索をfunctional MRIを用いて評価した.その結果,嚥下によって中心前回ならびに中心後回が活性化されることがあきらかとなった.主課題の実験に並行し,MRI(T2強調画像)を用いて8名の正常男性における30秒間の最大噛みしめ時の咬筋内信号強度を測定した.その結果,咬筋内T2信号強度は噛みしめ時に減少し,噛みしめ終了後に噛みしめ前ベースラインを越えて増大した.同じ被験者について同条件で近赤外線分光計を用いて咬筋内血流動態を測定したところ,本装置で測定した咬筋内筋組織内血流動態は,T2信号強度変化と非常に類似した反応を示した(Pearon's r=0.945,P<0.0001).また,交感神経活動増大時の筋組織内T2信号強度変化を測定するため,15名の正常男性を対象として,僧帽筋での信号強度変化を測定した.交感神経活動の増大にはCold Pressor Test (CPT)を用いた.その結果,CPT付加時には僧帽筋内T2信号強度は有意に増大し,付加終了後ベースラインに収束した.この結果は,以前我々が近赤外線分光計を用いて測定したCPT付加時の僧帽筋内血流動態反応と非常に類似していた.以上の筋活動状態ならびに非活動時の筋組織内血流動態変化測定の結果より,筋組織内血流動態はMRIT2強調画像の信号強度を測定することにより,非侵襲的かつ簡便に測定できることが明らかとなった.本結果は,筋組織内血流動態異常がその病態に関与していると推測される慢性筋痛の病態解明にMRIが使用できる可能性を示す所見であると思われる.
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自家骨芽細胞に対するex vivo遺伝子導入法によるインプラント周囲骨の増生
研究課題/領域番号:12470419 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
李 起学, 中西 徹, 滝川 正春, 窪木 拓男, 荒川 光
配分額:8200000円 ( 直接経費:8200000円 )
本研究は,遺伝子治療を用いたインプラント周囲骨の骨増生法を開発することを目的に,現在遺伝子導入によく用いられているアデノウイルスベクターにCTGFなどの骨形成関連因子を組み込み,このウイルスベクターを実験動物の一部骨を欠損させた骨や実験的にインプラント周囲骨を欠損させた部位にex vivo法にて導入し骨を増生させることができるか検討を行うものである.
平成12年度から平成13年度に置いて本研究を行った結果,以下の結論を得た.
1.アデノウイルスベクターにレポータージーンであるlacZや骨形成関連因子であるCTGFを組み込むことができた.
2.そのベクターを用いた骨芽細胞におけるin vitroでの遺伝子導入効率はMOI50が最適であり,導入後7日を経てもCTGF遺伝子の発現とCTGFタンパクの産生が確認された.
3.実験的骨欠損作成過程では,抜歯創治癒,すなわち歯槽骨再生過程でCTGFが重要なキーファクターであることが確認された.
4.実験的骨欠損を作成し,ex vivo遺伝子導入法を試みた結果,自己の細胞(骨芽細胞)を単離採取して,増殖・分化させることが困難であることがわかった.
5.培養した骨芽細胞はチタン上に生着し,分化・増殖することが確認された.
以上の結果から今後は,自己の細胞を局所から採取し,目的とする細胞のみを効率良く単離し,分化増殖させる方法がex vivo法にとっては不可欠であり,その確立が必要であると考えられた. -
アデノウイルスベクター法を用いた早期osseointegrationの獲得
研究課題/領域番号:11877338 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究 萌芽的研究
李 起学, 滝川 正春, 中西 徹, 窪木 拓男
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
休止期や分裂増殖の遅い細胞へも高い効率で遺伝子導入が可能であり,in vivo遺伝子導入が容易な,アデノウイルスベクター法を用い,アデノウイルスベクターに骨形成能が高いCTGF, TGF-βの遺伝子を組み込む方法を用い,続いて,ラット脛骨にアデノウイルスベクターを投与し,周囲組織(骨芽細胞,間葉系細胞)に感染,遺伝子導入させることで,持続的にそれらの遺伝子を発現させ,早期osseointegrationの獲得を試みることを目的とした実験を行ってきた。
前年度において,アテロコラーゲンとウイルスベクターの複合化と,複合化したウイルスベクターのin vivo LacZ遺伝子導入を行った。しかし導入効率が低く他のキャリアを用いた実験系が必要であると考えられた。そこで本年度はポリ乳酸や他の高分子生体材料をキャリアとして用いウイルスベクターと複合化を行いin vivo実験を行った。
1.ポリ乳酸とウイルスベクターの複合化
ポリ乳酸とウイルスベクター液を混ぜ凍結乾燥を行い,複合化させることに成功した。
2.複合化したウイルスベクターのin vivo LacZ遺伝子導入
ラット脛骨内に1で作製したLacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを注入し,経時的にラットを屠殺し,脛骨におけるLacZ遺伝子発現をX-gal染色にて観察したところ,ポリ乳酸を用いても導入効率の上昇にはつながらなかった。
3.ウイルスベクターの他臓器への感染の有無
2のラット屠殺時,固定直前に気管,肝臓,膵臓,腎臓,骨格筋を摘出し,total RNAを抽出し,LacZに対するprimerを用い,RT-PCRを行ったところ,他臓器にLacZ遺伝子の発現は認められなかったことから,ウイルスベクターの他臓器への影響がないことが確認できた。 -
生物学的に修復象牙質を形成促進する分化・増殖因子の分子クローニングとその応用
研究課題/領域番号:10470417 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
李 起学, 山下 淳, 鈴木 康司, 窪木 拓男, 滝川 正春, 完山 学
配分額:11500000円 ( 直接経費:11500000円 )
象牙質の形成に関わる分化・成長因子が歯髄刺激時に産生され,歯髄細胞,特に象牙芽細胞が活性化されることにより,いわゆる修復象牙質が形成されると考えられている。本研究ではこの自己組織修復能力を活用した歯質保全療法の開発を目指して,修復象牙質の形成の際に特異的に発現している遺伝子の同定ならびに当該遺伝子の導入が可能であるかを検討した。
平成10年度では,歯に窩洞を形成したときの歯髄細胞に発現する特徴的遺伝子の検出をsubtractive hybridization法で行った。その結果,14のクローンが解析できた。
平成11年度では,ラット臼歯に歯髄に達する禽洞を形成し,LacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを注入,窩洞を接着性レジンで密閉した。*週後にラットを屠殺し,歯髄細胞におけるLacZ遺伝子発現をX-gal染色にて観察したところ露髄面に接する象牙芽細胞の*部に遺伝子導入が確認された。しかし,遺伝子導入率がきわめて低かった。この結果は露髄面にウイルス液を注入してもすぐに拡散してしまい一定時間ウイルスを感染させることができなかったためであると考えられた。今後は経時的にウイルスが徐放されるシステムを確立する必要があると考えられた。また,ラット屠殺時,固定直前に気管,肝臓,膵臓,腎臓,骨格筋を摘出し,total RNAを抽出し,LacZ遺伝子に対するprimerを用いてRT-PCRを行うことで他臓器に影響があるか確認したところ,他臓器への感染は認められなかった。 -
ヒト軟骨細胞のメカニカルストレスに関連した細胞内情報伝達機構-ストレスの多寡と細胞内情報伝達転換機構-
研究課題/領域番号:10470415 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 服部 高子, 滝川 正春
配分額:11300000円 ( 直接経費:11300000円 )
本研究では,負荷と軟骨破壊との関係,さらにはその機序を明らかにすることを目的として,周期的な伸展負荷が軟骨細胞の増殖,基質合成,軟骨破壊因子の発現におよぼす影響について検討し,以下の知見が得られた。
1.DNA,タンパク質およびコラーゲン合成に対する影響
15kPaおよび5kPaのどちらの負荷でもDNA合成能,タンパク合成能およびコラーゲン合成能は高頻度のストレスによって有意に低下した。
2.プロテオグリカンの蓄積と合成に対する影響
ウロン酸量はどちらの負荷でも高頻度のストレスによって有意に減少した。また,15kPaの高頻度のストレスを加えると,プロテオグリカン合成は経時的に減少したのに対し,低頻度のストレスでは,負荷後初期にプロテオグリカン合成がわずかに減少したがその後はほとんど変化しなかった。さらに,15kPaの高頻度のストレスにおいて培養上清中にMMPインヒビターを添加すると,ストレス負荷後のプロテオグリカンの減少が抑制された。
3.軟骨破壊因子の遺伝子発現におよぼす影響
IL-1,MMP-2 mRNAについては,どちらの負荷群においても負荷後早期に一時的な増加が認められた後,24時間以内には元のレベルにまで戻った。これに対し,MMP-9 mRNAの発現は,15kPa負荷群では24時間まで増加し続けた。
4.ゼラチナーゼ分泌に対する影響
5kPa負荷群ではMMP-2,MMP-9の産生はともにストレスの影響をほとんど受けなかったが,15kPa負荷群では潜在型および活性型MMP-9さらには潜在型MMP-2の産生が,ストレス負荷後24時間で対照群と比較して明らかに増加した。
5.NO産生におよぼす影響
高頻度の条件で負荷を加えた場合,NO産生は負荷後48時間以降対照群と比較すると有意に上昇した。 -
主要組織適合性抗原からみた顎関節症の免疫遺伝学的要因の研究
研究課題/領域番号:09877376 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究 萌芽的研究
山下 敦, 窪木 拓男
配分額:1500000円 ( 直接経費:1500000円 )
顎関節症の発症における遺伝的素因は,顎関節内障患者の家族歴からこの可能性が推測されているのみ(TaUentsら,1996)で,全く推測の域を出ていない.本申請は,当講座で行った双生児研究に引き統き,顎関節症に関連する遺伝的素因をヒトMHCすなわちHLAのタイプから免疫遺伝学的に解明しようとするものである。
現在まで、1)変形性顎関節症群16名:重度の顎関節の変形を伴うもの、2)顎関節リウマチ群5名:慢性関節リウマチが顎関節にも波及したものの2群に分けて継続して末梢血採取を行っている。サシブル数が少ないこともあり、はっきりした傾向は明言できないが、顎関節リウマチ群は、従来遺伝的なリスクが高いと報告された遺伝形質を持っていたが、変形性顎関節症の場合にはその傾向は曖昧であった。 -
顎関節潤滑因子産生機序に関する研究
研究課題/領域番号:09671988 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
篠田 一樹, 辻 清薫, 窪木 拓男
配分額:2600000円 ( 直接経費:2600000円 )
1.関節円板前方転位患者と変形性顎関節症患者,正常者の顎関節滑液の採取ならびに滑液中のヒアルロン酸濃度の測定
顎関節潤滑因子であるヒアルロン酸,リウブリシンの濃度の低下が滑液中において生じると,関節潤滑が円滑に行われなくなることにより関節円板転位を引き起こし,また,関節軟骨への栄養供給が低下することによって軟骨の破壊が進行し,結果として変形性関節症を引き起こすことが考えられている(Kamelchuk et al,1995)。本研究では,まず,関節円板前方転位患者と変形性顎関節症患者の患側顎関節から治療目的として希釈回収法にて滑液を採取した。また,ボランティアの正常者の顎関節から同様に希釈回収法にて滑液を採取した。そして,タンパク量測定キットならびに吸光度測定機器を用いて総タンパク濃度を測定したところ関節円板前方転位患者と変形性顎関節症患者のタンパク濃度が正常者のそれと比較して有意に高いことが明かとなった。続いて,各サンプルをSDS-PAGEにて電気泳動し,それぞれのタンパクの構成に違いがあるかを一次元電気泳動解析装置にて検討したところ,SDS-PAGEレベルでは特に各群で有意差は認められなかった。現在,市販されている抗ヒトヒアルロン酸抗体を用いたwestern blottingにて各群のヒアルロン酸のバンドの強度を測定し,各群に有意差があるか検討中である。 -
咀嚼筋血流変化と筋内細動脈血管径の調節機構からみた咀嚼筋障害の発症機序
研究課題/領域番号:08457528 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
山下 敦, 東 義晴, 窪木 拓男
配分額:5800000円 ( 直接経費:5800000円 )
1.安静時ヒト咬筋組織内血流動態に対するCold Pressor(CPT)の影響
Victor(1987)らにより実験的に骨格筋内の交感神経活動を増大させることが可能と報告されているCPTを健常ヒト被験者に加え,安静時におけるヒトの咬筋筋組織内血流動態に対する影響を近赤外線スペクトル法を用いて評価した.その結果,咬筋内の血流量ならびに酸素飽和度はCPTの設定温度が低いほど増大することが明らかとなった.さらに,最も設定温度の低い4℃のCPTでは,咬筋内血液量が,付加終了後にベースラインを越えて有意に減少を示した。本結果は,交感神経活動増大時には,ヒト咬筋内の血流動態が増大することを示していると考えられた.
2.αおよびβ遮断剤投与下安静時ヒト咬筋組織内血流動態に対するCPTの影響
本研究では,CPTにより惹起される筋内血流動態変化に対する交感神経系αおよびβ作用の役割を明確にするため,非選択的α遮断剤(メシル酸フェントラミン製剤)およびβ遮断剤(塩酸プロプラノロール製剤)を正常男性9名に体重比0.15mg/kgで静脈内投与を行い,4℃のCPTを右側下肢に付加し,咬筋内血流動態変化を評価した.その結果,CPT付加前安静時咬筋内血液量および酸素飽和度はフェントラミン投与により有意に増大し,プロプラノロール投与により減少した.また,CPT付加中の咬筋内血液量の増大には交感神経系β作用に加えてその他の調節因子が関与していることが明らかとなった.
3.慢性筋痛者における安静時ヒト咬筋組織内血流動態に対するCPTの影響
CPTにより惹起される筋内血流動態変化を慢性筋痛者と正常者それぞれ10名の男性について測定し比較を行った.筋内血流動態は右側僧帽筋から記録を行い,CPTの設定温度は4℃とし右側下肢に付加した.その結果,慢性筋痛者においてはCPT付加時の筋内血液量増大の有意な抑制が観察され,慢性筋痛の病態に筋内血流動態異常の関与が示唆された. -
変形性顎関節症の発症機序とその治癒機構
研究課題/領域番号:07672110 1995年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
窪木 拓男, 矢谷 博文, 山下 敦, 松香 芳三
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
本研究では軟骨細胞にフレクサ-セルを用いて周期的伸展負荷を加え,メカニカルストレスが軟骨基質の合成,あるいは軟骨破壊因子および成長因子の遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。
1)軟骨細胞に周期的伸展負荷を加えると,プロテオグリカン合成能は負荷を加えることのよりコントロールの無負荷群と比較すると有意に上昇したが,5kPa負荷群の上昇率(対照比230.3%増)は,15kPa負荷群(対照比179.1%増)に比べ高かった。
2)DNA合成能はどちらの条件においても有意に低下しており,その低下率は5kPa負荷群(対照比50.0%減)の方が15kPa負荷群(対照比30.1%減)に比べ大きかった。
3)IL-1βの遺伝子発現量については,どちらの条件においても負荷後早期に一時的な増加が認められたものの,24時間以内には元のレベルにまで戻った。
4)bFGFに関しては,5kPa負荷群ではほとんど変化が認められなかったが,15kPa負荷群では負荷後早期に一時的な増加が認められた。
5)MMP-9mRNAの発現は,5kPa負荷群ではほとんど変化が認められなかったのに対し15kPaの条件では24時間まで増加し続けていた。
6)MMP-2やTIMP-1,アグリカン,II型,X型コラーゲンmRNAの発現量は,いずれの負荷でも変化しなかった。
7)ザイモグラフィーによりMMPsの産生を調べると,proMMP-9およびMMP-9蛋白の産生量は5kPaの条件では変化しないのに対し,15kPaの条件では24時間後増加していた。しかし,MMP-2蛋白の産生量はどちらの条件の負荷においてもコントロール群に比べ大きな変化はなかった。 -
片側噛みしめ時におけるヒト顎関節関節円板動態
研究課題/領域番号:05771684 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
窪木 拓男
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
顎関節内障の発症には顎関節負荷の異常が密接に関連していると推測される。申請者は1986年より行ってきた顎関節部負荷のモデル解析に始まり、これまで顎関節部負荷が顎関節構造に与える影響について研究を行ってきた。その結果、持続片側噛みしめにより顎関節断層エックス線写真上において非噛みしめ側下顎頭の著しい後上方変位と前関節空隙の縮小が誘発されることを見出した。
しかし、関節硬組織のみを描出対象とするエックス線写真法では関節円板動態や筋活動状態を把握することはできない。したがって、本研究では関節円板の描出が可能なMRI法を用い、実験的前歯部噛みしめによる下顎頭-関節円板関係の変化を直接明らかとした。
本研究の結果、実験的前歯部噛みしめにより、T1強調MR画像上でも前関節空隙の縮小が生じ、滑液の層を描出していると思われる高信号域が移動、縮小することが明らかとなった。また、この層の移動を定量的に評価することを目的に、下顎頭-関節結節を結んだ直線上の信号強度の変化をプロファイル像として比較する方法を開発した。関節空隙の縮小は、関節負荷受圧複合体(関節結節上の関節軟骨、上関節腔の滑液、関節円板、下関節腔の滑液、下顎頭上の関節軟骨)の移動ならびに圧縮変形に起因することが明らかとなった。 -
成人顎関節の骨改造能に関する研究
研究課題/領域番号:04671183 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C) 一般研究(C)
矢谷 博文, 窪木 拓男
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
ヒト顎関節に生じる形態学的変化(リモデリング)については、下顎頭骨折や顎外科矯正処置後にみられたとする症例が数例報告されているだけで、ほとんど明らかにされていないといってよい。また、この形態学的変化は新しい下顎頭位に対する適応変化の一つの表われであると解釈されているが、その証拠はない。
そこで、関節円板が前方偏位した94名の顎関節内障患者の188顎関節(このうち61関節は復位性、58関節は非復位性関節円板前方転位と診断された)に、保存療法後にどのような形態的変化が現われるかを放射線学的に検討し、次のような結果を得た。
1.形態的変化のほとんどは下顎頭に生じ、側頭骨(下顎窩、関節結節)にはほとんど変化が生じなかった。すなわち、39の下顎頭に進行性リモデリング、15の下顎頭に退行性リモデリングが生じたのに対して、3関節結節に退行性変化が生じたのみであった。
2.進行性変化としては、下顎頭の二重輪郭像の出現および下顎頭全体が丸みを帯びるという変化が観察された。これに対して、退行性変化としては、下顎頭前関節面あるいは後関節面の扁平化、下顎頭の短縮化、あるいは関節結節の扁平化が観察された。
3.顎関節の形態学的変化を起こす頻度と患者の年齢には関連があり、高齢になるにつれて、進行性リモデリングの頻度は減少し、退行性リモデリングの頻度は増加した。
4.正常顎関節にはほとんど形態的変化が生じなかったのに対し、復位性関節円板前方転位では36%、非復位性関節円板前方転位では41%に形態変化が生じた。復位性関節円板前方転位ではそのほとんどが進行性リモデリングであった(34%)のに対し、非復位性関節円板前方転位は進行性変化と退行性変化の頻度がそれぞれ23%と18%であった。
5.円板の復位が得られた関節と得られなかった関節では、前者のほうが形態的変化を起こす頻度が高く、そのほとんどは進行性リモデリングであった。すなわち、円板復位に得られた関節全体の42%に進行性、3%に退行性リモデリングが生じたのに対し、復位の得られなかった関節全体の13%に進行性、17%に退行性リモデリングが生じた。
6.保存治療により下顎頭位が後方あるいは上方に変位した関節では形態的変化がまったくみられず、前方あるいは下方に変化した関節では47%、下顎頭位が変らなかった関節では33%に形態変化が観察された。前方あるいは下方に変位した場合のほとんどは進行性リモデリングであった(41%)のに対し、下顎頭位が変らなかった関節では、19%が進行性、14%が退行性変化であった。
以上より、ヒト顎関節は成人であっても本質的にリモデリング能を有しており、進行性および退行性リモデリングは保存治療により変えられた異なる関節内環境に対する異なる適応変化であると考えられた。また、形態変化を生じた患者の予後は良好であることから、これらの形態変化は関節内環境が正常化されたことの一つの指標となり得ることが示唆された。 -
顎関節円板,顎関節軟骨の耐圧縮特性に関する生物力学的ならびに組織学的研究
研究課題/領域番号:03771429 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
窪木 拓男
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )