共同研究・競争的資金等の研究 - 窪木 拓男
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自己骨髄由来間葉系幹細胞にタンパク質導入法を応用した歯槽骨再生技術の開発
研究課題/領域番号:16659534 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
完山 学, 窪木 拓男, 荒川 光, 縄稚 久美子, 小島 俊司
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
本研究は,タンパク質導入法を用いて,BMP,SHH,FGF,IGF,TGF-b,CTGFなど骨形成に関連する成長因子を自己骨髄由来間葉系幹細胞内に導入し,次にそれらをキャリアとともに抜歯窩や実験的な歯槽骨欠損部位に移植することで歯槽骨の再生を試みようとするものである。
昨年度は,FITCとCTGF,そのファミリーであるcyr61,novなどの骨形成関連遺伝子のクローニングを行った。今年度はBMP-2,-4,SHH,FGF-2,galectin-1,-3,-9,sod-1など骨形成に関連する成長因子をコードするcDNAのクローニングを行った。現在,これらの遺伝子にPTD配列を含んだ遺伝子を増幅しPETベクターにクローニングを行っている。
in vivo実験においては,昨年度行った抜歯窩モデルが実験群とコントロール群で差が認められなかったことから今年度は大きな骨欠損モデルで試みた。はじめに生後8週齢のWistar系雄性ラット頭蓋骨全層骨欠損モデル(critical size defect)を作製した。これはラット頭蓋骨に直径6mmの全層骨欠損を作成したもので,この欠損部にBMP-2,FGF-2を含浸させた直径6mmのゼラチンハイドロゲルシート,I型コラーゲンシートを移植したところ,術後4週でゼラチンハイドロゲルシートもしくはI型コラーゲンシートとBMP-2を用いたものは,BMP-2単体やbFGF単体と比較して著名な骨再生が認められた。しかし,再生部位を歯槽骨に近づけるべく3.0kg雄性日本白色ウサギ下顎骨骨欠損モデル(defect size : 6mm)を用いた場合,I型コラーゲンキャリアとbFGFを用いても術後4週でコントロールとの著名な差を見いだすことができなかった。
今後は,PTD配列を含んだ骨形成関連遺伝子とゼラチンハイドロゲルやI型コラーゲンキャリア,さらに骨髄由来間葉系幹細胞を組み合わせた実験系を構築する予定である。 -
細胞増殖因子の徐放化による機能性チタンインプラントの開発
研究課題/領域番号:16390557 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
吉田 靖弘, 鈴木 一臣, 窪木 拓男, 平田 伊佐雄, 田川 陽一, 長岡 紀幸
配分額:13800000円 ( 直接経費:13800000円 )
1.ポリ乳酸系高分子
低結晶性ポリ乳酸誘導体,ポリエーテルセグメントを導入した親水化ポリ乳酸,側鎖官能基導入型ポリ乳酸誘導体を合成し,チタンとの接着性を評価した結果,いずれの共重合体もチタン表面に対して強固な結合を得ることはできず,容易に剥離することが示唆された。
2.異なる官能基を有する分子のチタン表面への吸着特性評価
リン酸系分子とカルボン酸系分子を用いて,官能基の違いがチタン表面への吸着特性に及ぼす影響を検討した結果,リン酸系の分子の方がカルボン酸系分子に比べて強固に吸着することが示唆された。さらにXPSにより詳細に分析した結果,チタンに吸着したリン酸系分子のP2pは未反応の分子に比べて低エネルギー側に化学シフトしており,リン酸系分子が化学的に吸着していることが示唆された。また,前処理として塩酸を用いることにより,チタン表面への吸着性が向上することも示唆された。
3.ポリリン酸
チタン表面に骨形成促進因子の吸着させる担体としてポリリン酸を選択し,細胞実験ならびに動物実験によりその効果を検討した。ヒト骨髄由来幹細胞ならびにマウス骨芽細胞様細胞株の細胞動態をMTS法により評価した結果,両者ともに初期細胞接着は,チタン表面へのポリリン酸吸着により有意に亢進された。また,細胞増殖に関してはチタン表面に吸着したポリリン酸の吸着量依存的に亢進された。さらにラット脛骨に埋入したチタン周囲の骨形成能を組織学的に評価した結果,ポリリン酸処理により周囲骨が良好に形成されることが示唆された。
4.リン酸化糖
リン酸化多糖を合成し,チタン表面処理に応用した。その結果,リン酸化されていない天然多糖類がチタン表面から容易に剥離するのに対し,リン酸化糖はチタン表面に強固に吸着することが示唆された。さらに,細胞実験の結果,今回用いたリン酸化多糖はポリリン酸に比べて,優れた細胞増殖能を有することが示唆された。 -
歯槽骨再建のための自己骨髄由来間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療の確立
研究課題/領域番号:16591947 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤澤 拓生, 窪木 拓男, 滝川 正春, 上原 淳二
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
本研究では,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞に対する結合組織成長因子(CTGF)の作用について検討し,以下の知見を得た。
1.ヒト骨髄液からの間葉系幹細胞の採取ならびに細胞培養
ヒト腸骨骨髄から骨髄液を採取し,9代まで継代培養を行い,得られた細胞集団のcharacterizationを行った。STRO-1の免疫染色を行ったところ,STRO-1陽性細胞が認められ,本研究に使用した細胞集団の中には幹細胞が存在しているこが確認された。また,これらの細胞群は骨芽細胞,脂肪細胞へと分化しうる多分化能を有していることを確認した。
2.幹細胞に対するCTGFの作用
1)アパタイトのディスクをCTGFでコーティングすることにより,その表面に接着する細胞数はCTGF濃度依存的に増加した。また,CTGFによる細胞接着促進はαvβ3インテグリンからp38のシグナル系路を介していることが示唆された。
2)CTGFは幹細胞の細胞増殖を促進させた。
3)ケモタキセルを用いた細胞遊走実験において,CTGF刺激により幹細胞の細胞遊走能は有意に促進された。
4)未分化間葉系細胞から骨芽細胞への分化を,アルカリホスファターゼ活性を指標に調べると,CTGF刺激により分化マーカーの一つであるアルカリホスファターゼ活性にはほとんど影響を及ぼさなかった。また,アリザリンレッド染色においても有意な差は認められなかった.すなわち,骨芽細胞への分化を抑制しないことが明らかとなった。
5)血管内皮細胞に対しても幹細胞と同様にCTGFは細胞接着や細胞遊走を促進させた。
6)in vivo移植実験において,ハイドロキシアパタイト-幹細胞-CTGF複合体をヌードマウスの背部皮下に移植すると,アパタイト-幹細胞-PBS複合体に比べて,アパタイト内部への細胞侵入が促進された。 -
チタンのオッセオインテグレーション獲得に関与する遺伝子クローニングとその応用
研究課題/領域番号:15390592 2003年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
完山 学, 窪木 拓男, 滝川 正春, 荒川 光, 鈴木 康司, 藤澤 拓生, 中西 徹
配分額:14800000円 ( 直接経費:14800000円 )
本研究は,チタン製インプラントのオッセオインテグレーション獲得に関連する遺伝子を明らかにすることを目的としている.
チタンプレート上での細胞培養及び発現遺伝子の解析を行った.すなわち,チタンの間葉系幹細胞に対する影響を検討するに先立って,チタン上で培養細胞がどのような影響を受けるか,取りわけ骨芽細胞が分化していく段階でマスターキーとなる遺伝子が存在するかどうかを検討した.その手法として骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1 cell)を研磨ガラスにチタンをコーティングしたプレート上で培養し,研磨ガラスおよび異種金属であるクロムと比較してどの様な影響があるか検討した.その結果,細胞接着・増殖・分化はチタン,クロム,研磨ガラスの順に高く,チタン上での骨芽細胞培養では細胞接着・増殖・分化が促進されることが明らかとなった.また,研磨ガラス,チタンプレート,クロムプレート上それぞれで,発現に変動のある遺伝子をサブトラクティブハイブリダイゼーション法にてスクリーニングし,その候補遺伝子としてEST遺伝子を含むxab-2, sod-1, galectin-1, actin related protein 2/3 mRNA, RIKEN cDNA 2210013021 gene, EST 601086505F1, and EST 01439などが検出された.これらの遺伝子の内,xab-2, sod-1, galectin-1の発現量を定量PCRであるリアルタイムPCRにて検討した結果,培養14日目における遺伝子発現量はチタン,クロム,研磨ガラスの順に高い発現を示した. -
腫瘍壊死因子可溶性レセプターを用いた重度変形性顎関節症治療の試み
研究課題/領域番号:15592050 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
前川 賢治, 藤澤 拓生, 窪木 拓男, 上原 淳二
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
変形性顎関節症患者11名(患者群)と健康被験者(対照群)10名の顎関節滑液中のsTNFRs濃度と,患者群におけるOAレベル,顎関節部の疼痛,開口量との関連を検討した.
1.患者群のsTNFR-I,-II濃度は対照群のそれらと比べ有意に高かった.
2.両群ともにsTNFR-I濃度は,sTNFR-II濃度より有意に高かった.
3.sTNFR-I濃度は,OAレベルと正の相関があり,sTNFR-II濃度は,咀嚼時疼痛と負の相関,開口量と正の相関があった.
変形性顎関節症の病態におけるsTNFRの役割を検討するため,変形性関節症にけるTNFR発現とサイトカインによるsTNFR産生に対する影響を調べた.
1.変形性膝関節症モデルの膝関節軟骨におけるTNFR発現は,対照側,患側いずれの組織においてもTNFR-I,II陽性細胞が認められ,患側で高発現していた.
2.ラット膝関節軟骨細胞へのIL-1β,TNFα刺激後における,tnfr発現量とsTNFR濃度を定量した結果,tnfr-I発現は,刺激による影響を受けず,tnfr=II発現は,刺激24時間後に無刺激時の約12倍となり,sTNFR-I濃度は,刺激48時間後に有意な上昇がみられるも,無刺激時の約2倍で,sTNFR-II濃度は,約5倍となった.
以上より関節軟骨細胞では,TNFR-Iは恒常的に,TNFR-IIは炎症性サイトカインによる影響を受け発現し,両者はsheddingにより可溶型として細胞外へと遊離してくることがわかった.滑液データとあわせて考えると,sTNFR-II濃度が高いほど症状が緩やかであった点から,なかなか症状の緩解しない重症の変形性顎関節症患者では,このsTNFR-II産生のメカニズムになんらかの異常がある可能性があり,この場合エタネルセプトのような分子標的治療薬の関節腔内注入療法の効果が期待できるのではないかと考える. -
口腔インプラントの骨結合獲得難易度を予測する生物学的診断法の開発
研究課題/領域番号:15659463 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
窪木 拓男, 高柴 正悟, 滝川 正春, 荒川 光, 藤沢 拓生
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
1.チタンの細胞培養および遺伝子発現への影響
骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1細胞)の細胞培養培養および遺伝子発現に対するチタンの影響を検討した。
1)チタンプレート
ポリスチレン製の培養皿と表面粗さを同程度にするために,研磨ガラスにチタンを真空蒸着したものを使用した。
2)細胞接着への影響
通常の培養皿と比較してチタンは細胞接着を抑制する傾向にあった。
3)細胞増殖への影響
通常の培養皿と比較して,細胞播種後1,2日ではチタンでは増殖が抑制されるものの3日では両材料ともコンフルエントに達した。
4)細胞分化への影響
骨芽細胞の分化の指標のひとつであるアルカリホスファターゼ活性は,両材料ともに細胞がコンフルエントになった後5日目ごろより上昇し,14日目でピークを向え,21日目では低下した。チタンでは通常の培養皿と比べてアルカリホスファターゼ活性は抑制された。
5)遺伝子発現への影響
通常の培養皿と比較し,チタンの遺伝子発現への影響をサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検討したところ,両材料間で発現に差のあるsod-1,xab-2の遺伝子を検出した。
6)リアルタイムPCR法による遺伝子発現の変動
サブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検出した発現に差のあるsod-1,xab-2の経時的な発現の変動を検討したところ,培養皿では細胞播種後5日目で発現のピークを向え,その後低下した。チタンでは発現のピークが10日目前後と培養皿より遅延し,発現も抑制されていた。 -
インプラント周囲炎の活動性を診断するチェアーサイド検査システムの開発
研究課題/領域番号:15592049 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
荒川 光, 窪木 拓男, 完山 学, 小島 俊司
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
インプラント周囲炎と診断され,インプラント体を除去した患者のうち同意が得られた2名からインプラント体周囲歯肉を採取し,免疫組織学的検討を行った.また,当科で口腔インプラント治療を受けた患者のうち,3名にインプラント周囲に重度骨吸収が観察された.これらインプラント周囲炎患者に従来の歯周外科治療を行い,治療効果とMMP-8との関連を検討した.さらに,インプラント周囲炎のリスク因子,すなわちオッセオインテグレーション獲得・維持を阻害するリスク因子の同定を目的に臨床疫学的検討を行った.
【方法】
1.インプラント周囲炎によりインプラント体を除去した2名の患者から採取した歯肉は,通法通り切片を作成し,HE染色ならびに抗MMP-1,-8,-13抗体を用いた免疫染色を行い,コラゲナーゼ産出細胞の局在を観察した.
2.インプラント周囲炎患者3名のうち,同意が得られた2名に対し歯周外科を行った.歯周外科施術前後にインプラント周囲溝滲出液(PICF)を採取し,従来行われている歯周検査,規格化レントゲン撮影を行った.PICF中のMMP-8の検出は抗MMP-8モノクロナール抗体を用いたWestern blottingにより行った.
3.全リコール患者136名の診療録から,オッセオインテグレーション獲得・維持を阻害すると思われる既知のリスク因子12項目を調査し,多変量解析によりリスク因子の同定を行った.
【結果】
1.インプラント周囲炎歯肉を用いて免疫組織学的検討を行った結果,炎症性細胞周囲にMMP-8の局在を認めた.
2.歯周外科前に検出されたMMP-8は,外科後には検出されなかった.そして,3カ月後のレントゲン所見では,術前と比較して,進行していた骨吸収は抑制もしくは骨添加が認められた.
3.多変量解析の結果,オッセオインテグレーション獲得阻害のリスク因子は,上下顎といった埋入部位,喫煙の有無,インプラント体の表面性状であった,一方,維持破壊のリスク因子は,埋入部位とインプラント体の長さであった. -
歯周病の遺伝子治療 -局所的遺伝子導入による生体反応の制御-
研究課題/領域番号:14370710 2002年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
高柴 正悟, 窪木 拓男, 西村 英紀, 久保田 聡, 明貝 文夫
配分額:13500000円 ( 直接経費:13500000円 )
標的因子の特定が重要な項目であるので,我々は歯周病の病態形成を鑑みて,(1)感染の非特異的な防御,(2)組織再生,の両面からターゲット因子を特定することにした。また,その生体毒性のために遺伝子治療の臨床応用に対する不安があるのも事実であるので,すべての実験は,その為害性も試験した。
1.標的遺伝子
ラットにおいて,歯槽骨の再生時に,1週目にcytochrime c oxidase遺伝子が,2.5週目にpro-a-2 type I collagen遺伝子が,特徴的に強く発現していた。これらを活性化することが細胞の活性度を高め,組織の線維化を促進することになるようである。歯髄では,ヒト14.7K-interacting protein 2(fip2)遺伝子のホモログが強く発現しており,ラットFIP-2遺伝子とした。この遺伝子の生理的な意味合いは不明であったので,現在も解析中である。さらに,炎症を制御するために,ヒト腫瘍壊死因子(TNF)-αを誘導する新規転写因子LITAFの活性化に関するプロモーターを特定した。
2.非ウィルスベクターによるβ-デフェシンの導入
口腔細菌の感染を抑制する作用のある抗菌ペプチドβ-デフェンシンを,上皮細胞や唾液腺に遺伝子導入によって強制発現させて,口腔内の細菌量の変化をラットにおいて調べた。さらに,催炎症性であるともいわれるこのペプチドが,唾液腺内で強制発現すると,組織に炎症を惹起させるかどうかも,組織学的に調べた。ラット唾液腺内での発現を実現させると,口腔内細菌が減少することと唾液腺組織の炎症が少ないことを確認できた。なお,電気的導入では,組織障害が大きかった。一方で,細菌内毒素の刺激時のこの遺伝子の発現誘導には,2つのNF-κB結合部位が促進的に作用し,NF-IL6結合部位は抑制的に作用することがわかった。導入したこの遺伝子の発現誘導に活用できるかもしれない。 -
歯周組識・歯槽骨再生のための自己間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療の確立
研究課題/領域番号:14370632 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 上田 実, 滝川 正春, 高柴 正悟, 前川 賢治, 吉田 靖弘, 中西 徹, 矢谷 博文
配分額:14800000円 ( 直接経費:14800000円 )
1,ヒト骨髄間葉系幹細胞の採取・培養
倫理委員会の許可を得て,ヒトボランティアの腸骨稜より骨髄液を採取し,培養・増殖させる方法を確立した.また,この細胞群は骨芽細胞,脂肪細胞へと分化しうる多分化能を有していることを確認した。
2,結合組織成長因子(CCN-2)コーティングによるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖,分化の促進
骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞を遊走させることができるCCN-2を多孔質アパタイトブロックにコーティングすることによって,スキャフォード内部への骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞の誘導に成功し,ブロック内部への血管新生,さらには骨再生を促進することに成功した.
3,チタン表面に対するヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖の促進
チタン表面にポリリン酸を吸着することにより,骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着や細胞増殖を促進することに成功した.この知見は,ポリリン酸がチタンのオッセオインテグレーションを促進する可能性を示唆するものである.
4,cDNAサブトラクション法によるチタンと骨とのオッセオインテグレーションに関連する因子の同定
ポリスチレンとチタンディッシュ上で骨芽細胞様細胞株を培養し,total RNAを回収後逆転写,cDNAサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて,チタン特異的遺伝子を検索した.その結果,チタン上で骨芽細胞を培養した場合には,sod-1,ribosomal protein L19の遺伝子発現が有意に抑制されていることが明らかになった。現在,さらに他の金属とも比較中である. -
生物学的に修復象牙質を形成促進するための分子クローニングとその応用法に関する研究
研究課題/領域番号:14571844 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
園山 亘, 滝川 正春, 高柴 正悟, 窪木 拓男, 矢谷 博文
配分額:3900000円 ( 直接経費:3900000円 )
1.ヒト抜去歯からの歯髄細胞の単離とその表現系の確認
本学倫理委員会の許可のもと,ヒト抜去歯から歯髄細胞を単離し,その遺伝子発現をRT-PCR法で確認した。その結果,本細胞は象牙芽細胞特異的とされるdentinsialophosphoprotein(DSPP)を発現しており,象牙芽細胞,もしくは前象牙芽細胞からなる細胞群であると思われた。
2.本細胞の細胞接着,増殖,分化に与える各種成長因子の効果の検討
既存の因子の中で修復象牙質形成に関与していると思われるβ型形質転換増殖因子(TGF-β1),塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と結合組織成長因子(CTGF)の細胞接着,増殖,分化に与える各種成長因子の効果を検討した。その結果,細胞接着はこれらの因子を培養プレートに吸着することにより促進された。また,細胞増殖はTGF-β1を培地に添加したときのみ有意に促進された。一方,アルカリフォスファターゼ活性は,bFGF, TGF-β1の添加により有意に抑制されたが,CTGF添加では,その影響は明らかでなかった。
3.ハイドロキシアパタイト(HAP)への細胞接着の検討
HAPに対する本細胞の3時間後の接着細胞数を検討したところ,ポリスチレン製の培養プレートに比較して,HAP上には有意に多くの細胞が接着していることが明らかとなった。
4.HAPが本細胞の分化に与える影響の検討
本細胞の遺伝子発現がHAP上で培養することにより影響を受けるかを検討したところ,DSPP,ならびにI型collagenの遺伝子発現が有意に促進しており,分化が誘導されていることが推測された。 -
変形性顎関節症の分子病態メカニズムならびに分子細胞治療に関する研究
研究課題/領域番号:14571843 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤沢 拓生, 滝川 正春, 西田 崇, 窪木 拓男, 前川 賢治, 矢谷 博文
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
本研究では重度変形性顎関節症の発症機序の解明と関節軟骨修復に遺伝子導入を応用することを目的に,(1)CTGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスを培養軟骨細胞に導入してその影響を検討するとともに,(2)実験的変形性顎関節症モデルの作製し変形性顎関節症の発症メカニズムについて解析した.
1.CTGFの遺伝子導入により細胞数は約1.4倍に増加した.
2.CTGFを遺伝子導入した細胞では,CTGF遺伝子の発現が増加しており,CTGFタンパクも産生された.
3.CTGFの遺伝子導入により,軟骨細胞の分化マーカーであるアグリカンとtype Xコラーゲン遺伝子発現も遺伝子導入後7日目まで増加していた.また,プロテオグリカン合成も有意に上昇した.
4.日本白色ウサギに強制開口行うことにより,ウサギ顎関節部に軟骨組織の象牙化や骨棘形成など,変形性顎関節様の変化を引き起こした.
5.骨棘形成周囲の肥大軟骨細胞に軟骨細胞のアポトーシスが認められた。
6.アポトーシスを起こしている軟骨細胞の周囲にNO産生細胞やMMP-3産生細胞が存在していた.
以上の結果より,軟骨細胞にCTGFを遺伝子導入することにより,軟骨細胞の細胞増殖だけでなく細胞分化も促進されることが明らかになった.また,軟骨基質欠損部にCTGFを応用することにより自己軟骨細胞による軟骨修復の可能性が示唆された.さらに,顎関節部に加えられた過剰なメカニカルストレスは,NOの産生を誘導し,軟骨細胞のアポトーシスとMMP3の産生を介して軟骨破壊を引き起こしていることが示唆されました.本研究で作製した変形性顎関節症モデルが,in vivoでの遺伝子導入による関節軟骨修復研究の進歩につながると推測される. -
頭頸部慢性疼痛患者のストレス付加時HPA系機能と疼痛閾値に関する分子生物学的研究
研究課題/領域番号:13672032 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
鈴木 康司, 笠井 昭夫, 前川 賢治, 窪木 拓男, 完山 学
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
正常被験者に規格化されたストレス刺激(cold pressor刺激,CP刺激)を付加し,交感神経系反応動態の変化を確認する目的で心拍数ならびに血圧の変動を測定した.またCP刺激を付加した際の血液中のコルチゾル,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)および内因性オピオイドの一つであるβエンドルフィンの濃度変化を測定し,CP刺激がこれらのHPA系関連のホルモン濃度変化に影響を及ぼすかどうか検討した.同時に三叉神経領域におけるストレス付加時の疼痛閾値の変動について検討した.
[方法]
1.被検者の右側上腕部に2分間のCP刺激を付加し,刺激直前,直後,5,15,30,45,60分後に血液を採取し,血漿を分離した.採取した血漿中のコルチゾル,ACTH, CRF,βエンドルフィンについてラジオイムノアッセイ法を用いて濃度を測定した.同じ実験系で心拍数,血圧も連続的に記録した.
2.同様の実験系でMedoc社製温度痛覚閾値測定装置TSA-2001を用い,温熱刺激による疼痛閾値を計測した.計測部位は三叉神経領域の左側外耳道前方10mmの顔面皮膚とした.
[結果]
1.心拍数,血圧ともにCP刺激の影響を有意に受けており刺激中に最も高い値を示した(p<0.0001).
2.ACTHはCP刺激5分後に濃度が最大となった.コルチゾルは刺激30分後に濃度が最大となった.βエンドルフィンは刺激直後に濃度が最大となった.これらは有意にCP刺激の影響を受けていた(p<0.0001).一方でCRFは有意な濃度変化がみられなかった.
3.三叉神経領域での疼痛閾値は刺激直後から30分後にかけて上昇する傾向にあったもの,統計的な有意差は認められなかった.
心拍数や血圧の変動が示すとおり,CP刺激により交感神経系ではより急速な応答が営まれていることが確認できた.一方HPA系では,急性ストレスであるCP刺激に対して交感神経系よりも緩やかな反応を示し、非常に長時間にわたってその影響が持続することから,本実験で用いたCP刺激はHPA系反応動態を測る上で有効な手段であることが明らかとなった.また,実験的なストレス刺激により三叉神経領域での疼痛閾値が上昇する傾向にあったことから,精神的,肉体的なストレスは,交感神経系や体液性のストレス反応を介して三叉神経系の疼痛閾値を変化させうることが示唆された. -
MMP-3転写調節部位遺伝子多型からみた顎関節症の予後に関する分子遺伝学的研究
研究課題/領域番号:13672033 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
水口 一, 滝川 正春, 矢谷 博文, 窪木 拓男, 藤澤 拓生
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
MMP-3遺伝子のプロモーター領域の多型(5A/6A)と関節疾患感受性との関連性を明らかにすることを目的として遺伝子多型解析を検討した.まず,本年度は遺伝子多型解析に先立ち,本研究計画に対して岡山大学歯学部倫理委員会の承認を得る必要があった.そのため,平成13年11月から岡山大学歯学部倫理委員会の承認を受けた後,岡山大学歯学部附属病院第一補綴科に顎関節部の疼痛,機能障害を主訴に来院し,本研究の趣旨を文書にて説明し自発的同意の得られた被検者から一律3mlの血液採取を行った.
平成14年1月30日現在での被検者数は,男性18名,女性26名の計44名であり,これら被検者の血液よりDNAの抽出を行った.このDNA抽出に関する手法は確立し得た.
現在,抽出されたDNAから、MMP-3プロモーター領域の対立遺伝子の多型(variable number of tandem repeat : VNTR)ならびにIX型コラーゲンα3鎖の遺伝子多型(SNPs)を検討すべく,Ye et al.(1995)の方法ならびにPaassiltaらの方法に従い、PCR産物に対してTthlllI酵素処理を応用し,被検者個々の対立遺伝子の多型を明らかにした.
その結果,現在集積された被検者数では,遺伝子多型と関節疾患感受性との間に統計学的に有為な関連性を見いだすことはできなかった.しかしながら,現段階では被検者数が少なくtype II errorが生じている可能性があり,今後も被検者数の継続的蓄積が必要となると考えられた. -
血管径調節関連遺伝子多型からみた慢性筋痛の分子遺伝学的検討
研究課題/領域番号:13877327 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
窪木 拓男, 矢谷 博文, 鈴木 康司, 前川 賢治
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
全身の多部位に慢性筋痛を訴える線維性筋痛症(FMS)患者のβ_2アドレナリン受容体(β_2AR)機能評価のため,末梢血由来単核球細胞上に存在するβ_2ARを用い,情報伝達の際に産生されるcAMPを機能性マーカーとして,ELISA法により測定し,年齢,性別をマッチングさせた正常被験者のそれと比較した.FMS群(女性8名,平均年齢44.3歳)と無症状群(女性9名,平均年齢35.8歳)から静脈血を採取し,単核球を分離した.分離した単核球は10^6個ずつ分注し,安静時ベースラインと10^<-3>,10^<-5>Mに希釈したβAR刺激薬(Isoproterenol, IP)を5分間作用させた低・高濃度IP刺激後の3条件のcAMP量を測定した。その結果,低濃度である10^<-5>M IP作用後のcAMP量は,無症状群では有意な増加を示したが,FMS群では変化がみられなかった(無症状群:p<0.001,FMS群:P=0.520).FMS群において単核球におけるβ_2ARの刺激に対する反応が抑制されているという事実は,FMSの病態に全身性のβ_2AR機能の脱感作が関与する可能性を示唆する重要な所見と思われた.一方で,FMSとの病態メカニズムの差異が論争されている慢性局所性筋痛症のβ_2AR機能評価を,慢性筋痛者11名,正常被験者21名を対象にして前述の手法に従って行った.その結果,単核球が産生するcAMP濃度はIP刺激濃度依存性に増大したが,その濃度変化量は両群間に有意な差が見られなかった.本結果は,局所性慢性筋痛症の病態には,全身性のβ_2AR機能異常の関与は認められないこと,換言すれば,線維性筋痛症と局所性慢性筋痛症の病態が異なることを示す重要な所見であると考えられた.遺伝子多型の解析については「岡山大学歯学部ヒトゲノム・遺伝子研究倫理審査委員会」より患者の遺伝子解析について承認を得た後,本学歯学部附属病院顎関節症・口腔顔面痛み外来を受診した患者のなかで,本研究計画の被験者選択基準に合致し,研究の参加に同意の得られた者より,末梢血3mlを供与してもらい,サンプル数を増加させ,解析を進めている.
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チェアーサイドで行うインプラント周囲の歯槽骨破壊のリスク診断
研究課題/領域番号:13672031 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
荒川 光, 笠井 昭夫, 矢谷 博文, 窪木 拓男, 完山 学
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
我々は,当院で口腔インプラント治療を受け,メインテナンス中の全患者64名に対し,歯周病の病態把握に用いる分子生物学的手法,すなわち歯周病原因菌に対する末梢血清抗体価の測定,PCR法を用いたPICF中の細菌検査を行っている.その結果を踏まえ,継続管理を行っているが,インプラント周囲の重度の骨吸収を呈するインプラント周囲炎患者4名を経験した.そこで,この4名の患者に対し,インプラント周囲歯肉溝滲出液中(PICF)の好中球コラゲナーゼ(MMP-8)の検出を試みた.また,このインプラント周囲炎患者4名のうち同意が得られた3名に対し,従来の歯周外科治療を行い,臨床検査およびMMP-8を用いた生物学的手法で治療効果を検討した.
[方法]
1.対象はインプラント周囲炎患者4名とし,年齢,部位等をマッチングさせた患者をメンテナンス中の全患者64名から4名抽出し,コントロールとした.
2.また,インプラント周囲炎患者4名のうち治療の同意を得られた3名に対し,歯周外科を行った.
3.申請者らが妥当性を検討した方法を用いて,歯周外科施術前後にPICFを採取した.また,従来行われている歯周検査,術前および術後3カ月には規格化レントゲン撮影を行った.
4.採取したPICF中のMMP-8の検出は抗MMP-8モノクロナール抗体を用いたWestern blottingにより行った.
[結果]
1.進行性の骨吸収が認められるPICF中からのみMMP-8が検出され,MMP-8と骨破壊進行程度との関連性を示唆する結果を得た.
2.歯周外科施術前にはMMP-8が検出されたが,施術後には検出されなかった.また,3カ月後のレントゲン所見では,術前と比較して,骨吸収の程度は「変化なし」もしくは「骨添加」が認められた.すなわち,PICF中のMMP-8は,治療効果の判定にも有用であることが示唆された. -
重度変形性顎関節症治療のための軟骨由来軟骨成長因子(CTGF)の遺伝子導入
研究課題/領域番号:12557169 2000年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 中西 徹, 滝川 正春, 藤沢 拓生, 笠井 昭夫, 矢谷 博文, 完山 学
配分額:12000000円 ( 直接経費:12000000円 )
本研究では重度変形性顎関節症の発症機序の解明と関節軟骨修復に遺伝子導入を応用することを目的に,(1)実験的変形性顎関節症モデルの作製した.(2)CTGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスを培養軟骨細胞に導入してその影響を検討した.
1.日本白色ウサギに強制開口行うことにより,ウサギ顎関節部に変形性顎関節様の変化を引き起こした.すなわち,関節頭の中央部から後方部の軟骨層に軟骨組織の象牙化や,軟骨細胞の異常な集積が認められた.特に中央部では,軟骨層の消失が認められた.また,関節頭の前方部では軟骨組織の破壊が起きており,骨棘形成が認められ,その周辺部では軟骨細胞の異常な増殖が認められた.
2.軟骨細胞にCTGFを遺伝子導入すると,CTGFの遺伝子発現は上昇し,感染後7日目でピークに達した.
3.導入されたCTGF遺伝子により,軟骨細胞においてCTGFタンパクが産生されることが明らかとなった.
4.CTGFの遺伝子導入により,軟骨細胞のプロテオグリカン合成は有意に上昇した.
以上の結果より,軟骨細胞にCTGF遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入することにより,軟骨細胞の分化および増殖が促進されることが明らかとなり,軟骨修復へのCTGF遺伝子の遺伝子導入の有用性が示唆された.さらに,本研究で作製した変形性顎関節症モデルが,in vivoでの遺伝子導入による関節軟骨修復研究の進歩につながると推測される. -
修復象牙質を生物学的に形成促進するための分子クローニングとその導入法に関する研究
研究課題/領域番号:12470418 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
窪木 拓男, 滝川 正春, 高柴 正悟, 園山 亘, 完山 学, 中西 徹
配分額:13800000円 ( 直接経費:13800000円 )
1.遺伝子導入法と導入率の検討
マーカー遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを作製し,培養細胞に対しての導入効率を検討した.その結果ほぼすべての細胞で導入したマーカーの活性が認められ,培養細胞に対して高い効率で意図した遺伝子を導入できることが確認された.
2.動物モデルにおける既存の因子の局在の確認
既存の因子の中で修復象牙質形成に関与していると思われるβ型形質転換増殖因子(TGF-β)と結合組織成長因子(CTGF)の局在を免疫染色法により確認した.その結果,修復象牙質様硬組織が確認されるようになる2週後になると,TGF-β,CTGFともに同組織周囲で発現が強くなることが確認された.このことから細胞外基質の分泌ならびに石灰化にTGF-βならびにCTGFが強く関与している可能性が示唆された.
3.起炎性因子の刺激による両因子の発現の変動
象牙芽細胞様細胞を起炎性因子で刺激した際のTGF-β1とCTGFの遺伝子発現レベルの変動をRT-PCR法を用いて検討した.その結果TGF-β1とCTGFはともに象牙芽細胞様細胞株で恒常的に発現していることが初めて確認された.また,刺激から24時間後にはTGF-β1の発現は減少し,逆にCTGFの発現は増えることが確認された.これまでの結果をあわせて考えると,細胞外基質の分泌ならびに石灰化にTGF-βならびにCTGFが強く関与している可能性が示唆された.
4.TGF-β1とCTGFの作用の検討
象牙芽細胞様細胞が対数増殖期にある時に両因子を作用させ,増殖に与える影響を検討した.その結果TGF-β1は細胞増殖を抑制する傾向にあったが,CTGFはその増殖を妨げなかった.また,CTGFの石灰化に対する効果を検討するため,この細胞にCTGFを添加した際のアルカリフォスフォターゼ活性を測定した.その結果CTGFの明らかな効果は認められなかった. -
顎口腔領域の各種感覚刺激によるMRI脳機能画像分析
研究課題/領域番号:12671825 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
岸 幹二, 繁原 宏, 若狭 亨, 杉本 朋貞, 窪木 拓男
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
本研究の目的は、第1に顎口腔領域における各種感覚刺激のfMRIに最適の撮像条件の設定、頭部の固定法、画像処理を確立することである。第2に味覚など体動や筋肉の動きを伴わない刺激および嚥下運動におけるfMRIの描出能について健全例について種々条件を変えて検討を加え、fMRIの顎口腔領域各種感覚刺激の研究、臨床応用の可能性を追及することである。
平成12年度にまず撮像法の検討を行った。手指の運動に対し、gradient echo type EPI(GE-EPI)とspin echo typeEPI(SP-EPI)の2種類の撮像シーケンスを用いて、fMRI画像の比較検討を行った。その結果、SP-EPIが信号検出の特異性、正確度共に高いため、このシーケンスを用いることにした。頭部固定は、ヘッドコイルと頭部に対し、ヘアバンド、スポンジ等を組み合わせることにより施行し、アイマスクと耳栓で視覚、聴覚刺激を遮断した。画像処理は、Magnetom Visibn付属のソフトウエア-(Numaris)内のz-scoreを用いて行った。次に、味覚刺激は、濃度1Mの食塩水と3mMのサッカリンを被験者の口腔へ挿入したチューブより滴下することにより与え、fMRI撮像を行った。その結果、味覚刺激による脳賦活領域はpariental operculum、frontal operculumとinsulaに分布することが明らかになった。味覚刺激の種類による分布の差異は今回の研究では認められなかった。
平成13年度は、主に嚥下運動によるfMRI studyを行った。すなわち、被験者の口腔に挿入したチューブより、蒸留水を3ml/秒注入し、断続的に嚥下してもらうことにより行った。その結果、primary motor cortex、primarys somatosensory cortexが主に賦活されることが明らかになった。 -
アドレナリンβ2受容体機能異常からみた慢性筋痛の病態解明に関する分子生物学的研究
研究課題/領域番号:12671883 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
前川 賢治, 水口 一, 鈴木 康司, 窪木 拓男, 矢谷 博文
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
全身の多部位に慢性筋痛を訴える線維性筋痛症(FMS)患者のβ_2アドレナリン受容体機能評価を末梢血由来リンパ球細胞上に存在するβ_2受容体を用いて,情報伝達の際に産生されるcAMPを機能性マーカーとして,正常被験者のそれと比較した.被験者はFMS群(女性8名,平均年齢44.3歳)と筋痛,関節疾患,頭痛等を認めない無症状群(女性9名,平均年齢35.8歳)である.各被験者から20mlの静脈血を採取し,比重遠心法を用いて単核球を分離した.分離した単核球は10^6個ずつ分注し,燐酸緩衝液のみを加えた安静時ベースラインと燐酸緩衝液で10^<-3>,10^<-5>Mに希釈したβアドレナリン受容体刺激薬(Isoproterenol, IP)を5分間作用させた低・高濃度IP刺激後の3条件のcAMP量を測定した。その結果,低濃度である10^<-5>M IP作用後のcAMP量は,無症状群では有意な増加を示したが,FMS群では変化がみられなかった(無症状群:p<0.001,FMS群:p=0.520).一方,10^<-3>M IP刺激後のcAMP量は,安静状態に比較して両群とも有意に増加した(無症状群:p=0.012,FMS群:p<0.001).FMS群において単核球におけるβ2受容体の刺激に対する反応が抑制されているという事実は,FMSの病態に全身性のβ_2受容体機能の脱感作が関与している可能性を示唆する重要な所見と思われた.一方で,FMSとの病態メカニズムの差異が論争されている慢性局所性筋痛症患者におけるβ_2アドレナリン受容体機能評価を,慢性筋痛者11名,正常被験者21名を対象に5段階(10^<-3>〜10^<-73>M)のIP濃度を用いて前述の手法に従って行った.その結果,単核球が産生するcAMP濃度はIP刺激濃度依存性に増大した.しかしながら,その刺激濃度依存性に増大するcAMP濃度変化は両群間において有意な差は見られなかった.本結果は,局所性慢性筋痛者の病態においては,全身性のβ_2アドレナリン受容体機能異常の関与は認められないこと,換言すれば,線維性筋痛症と局所性慢性筋痛症の病態が異なることを示す重要な所見であると考えられた.
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FunctionalMRIを用いた咀嚼運動と三次元脳内血液動態変化に関する研究
研究課題/領域番号:12557170 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
前川 賢治, 岸 幹二, 鈴木 康司, 窪木 拓男, 若狭 亨
配分額:6500000円 ( 直接経費:6500000円 )
主目的である正常者における習慣的咀嚼運動が脳のどの部位の活性化にもたらす影響については,MRIの撮影手法上,咀嚼は運動によるアーチファクトが大きく,信頼性、再現性の高い撮影を行うことが困難であった.したがって,嚥下運動時の大脳皮質活性部位の検索をfunctional MRIを用いて評価した.その結果,嚥下によって中心前回ならびに中心後回が活性化されることがあきらかとなった.主課題の実験に並行し,MRI(T2強調画像)を用いて8名の正常男性における30秒間の最大噛みしめ時の咬筋内信号強度を測定した.その結果,咬筋内T2信号強度は噛みしめ時に減少し,噛みしめ終了後に噛みしめ前ベースラインを越えて増大した.同じ被験者について同条件で近赤外線分光計を用いて咬筋内血流動態を測定したところ,本装置で測定した咬筋内筋組織内血流動態は,T2信号強度変化と非常に類似した反応を示した(Pearon's r=0.945,P<0.0001).また,交感神経活動増大時の筋組織内T2信号強度変化を測定するため,15名の正常男性を対象として,僧帽筋での信号強度変化を測定した.交感神経活動の増大にはCold Pressor Test (CPT)を用いた.その結果,CPT付加時には僧帽筋内T2信号強度は有意に増大し,付加終了後ベースラインに収束した.この結果は,以前我々が近赤外線分光計を用いて測定したCPT付加時の僧帽筋内血流動態反応と非常に類似していた.以上の筋活動状態ならびに非活動時の筋組織内血流動態変化測定の結果より,筋組織内血流動態はMRIT2強調画像の信号強度を測定することにより,非侵襲的かつ簡便に測定できることが明らかとなった.本結果は,筋組織内血流動態異常がその病態に関与していると推測される慢性筋痛の病態解明にMRIが使用できる可能性を示す所見であると思われる.