共同研究・競争的資金等の研究 - 髙柴 正悟
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修復象牙質を生物学的に形成促進するための分化・増殖因子の研究
研究課題/領域番号:09671951 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高柴 正悟, 鷲尾 憲文, 滝川 雅之
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
歯髄組織に意図的にしかも能率的に修復象牙質を形成させるには,それに関わる歯髄細胞特異的な分化あるいは増殖因子を明らかにしなければならない。そして,修復象牙質の形成に必要な因子を歯髄細胞に発現させる必要がある。本研究では.1)ある特定の組織や細胞に発現する特異的な遺伝子を同定する方法を確立し,2)象牙質深部に窩洞を形成後に,歯髄組織に発現量の増加する特徴のある遺伝子をスクリーニングし,3)遺伝子またはその産物を象牙細管を経由して歯髄腔に到達させるための基礎データを得た。
1. 窩洞形成後に歯髄組織に発現する特徴的な遺伝子
歯髄組織は微量であるので,少量の組織から発現量の変動する遺伝子を捉える方法を確立した。そして,窩洞形成後に歯髄組織に発現する特ぇ的な遺伝子を,PCR法で増幅したcDNA断片として検出した。
2. 遺伝子またはその産物を象牙細管を経由して歯髄腔に到達させるためのモデル
生活歯髄を含む歯に窩洞形成を行った後に窩底に染色液を塗布して器官培養した。染色液は象牙細管を経由して歯髄腔の内壁にまで達していた。このことから,遺伝子またはその産物は,象牙細管を経由して歯髄に到達可能であることが示唆された。
3. 培養ヒト歯根膜線維芽細胞が特徴的に発現する遺伝子に関する研究
本細胞が特徴的に発現する遺伝子を同定することに成功した。この研究から,表現型が類似する歯根膜と歯肉の繊維芽細胞間では分化・増殖に関係する多くの因子を共通して発現していることが明確となった。これらの情報は,組織標本におけるsubtractive hybridization(SH)の応用に大いに貢献した。
4. 歯周病細菌Porphyromonas gingivalisの菌株間で異なる遺伝子
本菌の膿瘍形成に関連する遺伝子を染色体DNAからSHを用いて同定することに成功した。本成果は,SH法を真核生物へ応用するための基礎的データとなった。 -
L-セレクチンを介したβ_2-インテグリンのシグナル伝達機構から捉える歯周病病態
研究課題/領域番号:09671952 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
葛城 教子, 高柴 正悟
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
我々は以前に,β_2-インテグリン発現異常のある2名の早期発症型歯周炎(EOP)患者を発見した。この研究結果から,β_2-インテグリンは歯周病を規定しているマーカーとなりうることが示唆された。β_2-インテグリン遺伝子を歯周病の遺伝子診断のマーカーとして確立するためには,歯周病患者におけるβ_2-インテグリンのシグナル伝達機構を解析する必要がある。白血球の組織浸潤過程におけるrollingからstickingへの運動は,L-セレクチンを介してシグナルが伝達され,β_2-インテグリンが活性化されることによって誘導されることが分かっている。我々はまず,上記のEOP患者を含む歯周病患者由来のB細胞株を用いて,β_2-インテグリンの発現をL-セレクチンの発現機能との関わりにおいて調べた。
被験細胞として,13名の被験者(EOP患者9名および健常者4名)の末梢血から樹立したEBウィルストランスフォームB細胞株を用い,以下の結果を得た。
1.無刺激時のL-セレクチンの発現量は,被験細胞株間で差がなかった。β_2-インテグリン発現異常のあるEOP患者を含む4被験細胞では,PMA刺激によるL-セレクチンの発現減少の割合が,健常者を含む他の9被験細胞に比べて少なかった。
2.PMA刺激時の上記の4被験細胞では,B細胞培養上清のsoluble L-セレクチン量が健常者を含む他の9被験細胞に比べて少なかった。
以上の結果から4名のEOP患者由来のB細胞株は,他のEOP患者および健常者のそれらとはL-セレクチンの発現量に違いがあり,L-セレクチンの発現機序が異なっていると考えられる。本研究において,L-セレクチンを介したβ_2-インテグリンのシグナル伝達機構のなかで,L-セレクチンの発現機能が一般的でないEOP患者4名が存在することが分かったので,それらの病態を規定する遺伝子が分子生物学的に調べるなら,“歯周病関連遺伝子"の解明となる。 -
トランスフォーミング成長因子の歯根膜線維芽細胞機能制御に関する研究
研究課題/領域番号:08457506 1996年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
新井 英雄, 鷲尾 憲文, 明貝 文夫, 高橋 慶壮, 西村 英紀, 高柴 正悟, 滝川 雅之
配分額:4800000円 ( 直接経費:4800000円 )
トランスフォーミング成長因子(TGF-β)は種々の細胞における増殖,細胞外基質合成あるいは硬組織の代謝などに関わる因子として歯周組織再生における役割が注目されている。本研究は歯周組織再生におけるTGF-βの役割を明らかにすることを目的とし,TGF-βの歯根膜線維芽細胞機能に及ぼす作用ならびに歯根膜線維芽細胞が発現するTGF-βおよびそれらのレセプターの動態を調べた。
その結果,1.TGF-βは培養ヒト歯根膜線維芽細胞のDNA合成,コラーゲン合成,非コラーゲン蛋白合成,および硬組織形成能の指標であるアルカリフォスファターゼ活性すべてを促進した。2.培養ヒト歯根膜線維芽細胞はTGF-β1とそのレセプター(typeI,II,III)を遺伝子レベルで発現した。3.歯根膜の生理的な環境下での咬合圧を考慮し,培養ヒト歯根膜線維芽細胞に機械的外力(緊張・弛緩力を規則的に一定時間)をかけることによって模倣し,TGF-βとそのレセプター(typeI,II,III)発現に対する機械的刺激の影響を調べたところTGF-β1 mRNAとそのレセプター(typeI,II)mRNAの発現はともに抑制された。In vitroにおいてもラット歯周組織におけるTGF-β mRNAの発現をin situハイブリダイゼーションで調べたところ,歯肉線維芽細胞ではなく歯根膜細胞において顕著に発現していることがわかった。
これらの結果よりTGF-βはヒト歯根膜線維芽細胞の細胞増殖,細胞外基質合成ならびに硬組織の代謝といった細胞機能を促進することによって歯周組織再生に重要な役割を果たすことが示唆された。そして,その作用は歯周組織においてオートクリンの機構が働き,さらに咬合によって調節される可能性が示された。 -
活性型ビタミンD3レセプター誘導因子による歯根膜繊維芽細胞の硬組織形成の制御
研究課題/領域番号:08672187 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
滝川 雅之, 高橋 慶壮, 西村 英紀, 高柴 正悟, 新井 英雄
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
歯根膜繊維芽細胞(PLF)の機能はホルモンあるいはサイトカインなどの外来性因子のみならず,細胞自らが産生する内因性因子によっても制御されている。PLFは細胞密度が高くなるとビタミンD3レセプター(VDR)発現を誘導する因子を産生することを我々はすでに明らかにした。そこで本研究では,まずVDR発現誘導因子と既知の増殖因子との関連について調べた。その結果,インシュリン様成長因子-I,IIおよび上皮成長因子はPLFのVDRmRNA発現を誘導したが,トランスフォーミング成長因子は影響しなかった。このことは,PLFのVDR発現がこれら増殖因子も含む様々な内因性因子によって制御されていることを示すものであった。従って,PLFのみが特異的に発現する遺伝子群を同定し,それら遺伝子の面からPLFの機能を考察することとした。PLFの遺伝子群から歯肉線維芽細胞(GF)の遺伝子群をサブトラクトしたcDNAライブラリーを作製し,サザンハイブリダイゼイション法によって,PLFに特異的と思われる34種類のクローンを得た。それらは,5個が未知のクローンであり,その他は各々が既知の遺伝子の一部に高い相同性を示すものであった。この中にはnm23protein,v-fos transformation effector proteinなど,細胞の分化・増殖に関わる遺伝子が含まれていた。これらの遺伝子群は,同一個体のGFに比較して得られたものであり,細胞分化や硬組織代謝のみならず従来の認識にはないPLFの機能を発現する可能性がある。今後は得た遺伝子群を機能によって分類し,どのような分化段階で発現するか発現量の差を含めた特異性を検討する必要がある。
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Molecular biological study on tissue regeneration
1996年
資金種別:競争的資金
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歯肉線維芽細胞の亜群構成の変化から促えた歯周病の病態
研究課題/領域番号:06671909 1994年 - 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
新井 英雄, 鷲尾 憲文, 本行 博, 高柴 正悟
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
ヒト歯肉線維芽細胞をインターロイキン(IL)-1存在下で24時間培養すると腫瘍壊死因子(TNF-α)によるプロスタグラジン(PG)E_2産生促進作用が亢進することを明らかにした。また,IL-1によってTNF-αレセプターの数と親和性が低下していることも明らかにした。そこで,IL-1によるヒト歯肉線維芽細胞のTNF-αに対する反応性の変化を,IL-1レセプター(IL-1R)mRNA発現およびIL-1のTNF-αレセプターのサブタイプのmRNA発現様態への影響の面から調べた。
ヒト歯肉線維芽細胞においてタイプIとタイプIIのIL-lRmRNA発現をRT-PCR法によって検出した。また,タイプIIL-lRmRNAの発現量はタイプIIのものよりはるかに多かった。このことから,ヒト歯肉線維芽細胞の表面の主なIL-1RはタイプIであると考えられる。
ヒト歯肉線維芽細胞はタイプIとタイプII双方のTNF-αレセプターのmRNAを発現し,その発現量はタイプIの方がずっと多かった。
細胞をIL-1で刺激すると,タイプIレセプターのmRNA発現量は著名に抑制を受けるが,タイプIIレセプターのmRNA量はほとんど影響をうけなかった。
これらの結果から,TNF-αに対する細胞の親和性(PGE_2産生促進作用)がIL-1によって亢進するという現象は単純にTNF-αレセプターの発現様態で説明できない。 -
炎症性歯周組織におけるインターロイキン8-産生機構に関する分子生物学的研究
研究課題/領域番号:06671912 1994年 - 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
高柴 正悟, 磯島 修, 鷲尾 憲文, 村山 洋二, 宮本 学, 高柴 正悟
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
白血球走化性因子であるInterleukin(IL)-8は,LPS等の炎症刺激によって誘導されるIL-1βおよびTNF-αによってさらに誘導されると考えられる。
本研究では,マウスの皮膚およびマウス真皮培養線維芽細胞におけるIL-8遺伝子の発現様態を調べた。その結果,培養線維芽細胞は,IL-1βやTNF-αの前処理の有無にかかわらず,IL-8遺伝子およびIL-1β遺伝子を発現していた。これらは,培養線維芽細胞の発現するIL-8遺伝子が自ら発現するIL-βのオートクライン機構によって誘導されている可能性がある。しかし,invivoのマウス皮膚真皮線維芽細胞は,外来性のIL-1βやTNF-αで刺激してもIL-8遺伝子を発現しなかった。皮膚でのIL-8遺伝子発現細胞は角化細胞と内皮細胞であった。真皮の線維芽細胞は炎症を伴わない組織内ではIL-1βやTNF-αに対し非感受性でありIL-8遺伝子を発現しないが,in vitroではIL-1βやTNF-αに感受性を示し,IL-8遺伝子を発現する。 -
IL-2産生能の亢進および低下が歯周病発症に果たす役割の分子生物学的研究
研究課題/領域番号:04671159 1992年04月 - 1993年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 一般研究(C)
新井英雄, 明貝 文夫, 高橋 慶壮, 西村 英紀, 高柴 正悟, 滝川 雅之
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
T細胞の歯周病病態への役割を考察することを目的に、歯周病患者48名を含む被験者72名の末梢血を用いて単核球サブセットの割合、及びT細胞機能を調べた。結果は、いずれも個体差が大きく歯周病の臨床所見や病型とは相関し難いというものであったが、CD3分子への刺激でInterleukin-2(IL-2)産生能が亢進あるいは低下した被験者4名が検出された。これら被験者についてIL-2産生能の発現様式を細胞内シグナル転送の点から調べた。その結果、1名の被験者にみられたIL-2産生能亢進に細胞内Ca^<2+>濃度の上昇に関わる過程が関与し、被験者3名のIL-2産生能低下にはこの過程が関与しないことが示唆された。本研究においてIL-2産生能が亢進した被験者では、その原因として細胞内Ca^<2+>の極端な上昇が関与していることが示唆され、このことは歯周病との関わりの面からだけでなく、細胞内Ca^<2+>の上昇そのもののメカニズムの面からも興味がもたれる。一方、IL-2産生能の低下がみられた被験者3名はT細胞の機能低下に基づく易感染性宿主として注目される。本研究でとりあげた特徴的なIL-2産生能を示す4名の被験者のうち3名は若年性歯周炎に罹患していた。しかし、問診と一般血液検査の結果に限っては、これら3名の被験者は歯周病以外の疾患には罹患していなかった。従って、わずかな宿主応答の異常は、歯周病のような、常時慢性的な細菌刺激を受ける局所での感染性疾患に結びつき易いが、全身的な感染性疾患に結びつくことは少ないと考えられる。以上から歯周病の発症と進行と様式は多様で、それらの様式は個体レベルで明確にされなければならないことがうかがわれた。
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Study on molecular pathogenesis of inflammation
1992年
資金種別:競争的資金
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白血球膜糖蛋白質変異による歯周病の遺伝子診断の研究
研究課題/領域番号:03454441 1991年 - 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
村山 洋二, 清水 秀樹, 高柴 正悟, 高橋 慶壮, 磯島 修, 栗原 英見, 滝川 雅之, 永井 淳, 阿久津 功, 野村 慶雄
配分額:6500000円 ( 直接経費:6500000円 )
歯周病の遺伝子診断に向かって、1)接着分子インテグリンβ_2発現異常、および2)HLA-DQ遺伝子の変異について研究を行った。
白血球表層の接着分子であるintegrinβ_2の発現が、歯周病の発症と進行に関わる機序を推察することを目的として、白血球粘着異常症(LAD)を有する前思春期性歯周炎患者2名(PP1およびPP2)、integrinβ_2の発現異常を認めるが、限局型若年性歯周炎(LJP)のみを発症している患者1名(LJP1)、integrinβ_2の発現に異常がないLJP患者1名とPP患者1名、および健常者2名のB細胞株について、細胞凝集に関わる細胞生物学的性状ならびにintegrinβ_2β鎖のmRNAレベルにおける変異を調べた。mRNA解析には、B細胞株から得た全RNAを用いて、ノーザンブロット法、reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法およびRNase cleavage法を応用した。B細胞凝集能において、LJP1由来のB細胞は、PMA刺激時、他のLJP患者および健常者由来の細胞に比較して小さいクラスターを多数形成し、細胞凝集の様態を異にした。PP1とPP2由来のB細胞は細胞凝集能をもたなかった。ノーザンブロット法により、PP1とPP2の細胞では、integrinβ_2β鎖mRNAに相当するバンドを約4.4kbとして検出し、その他の被験細胞では約3.2kbとして検出した。β鎖mRNAの発現量は、PP1とPP2の細胞では、その他の細胞に比較して少なかった。RT-PCR法により、すべての被験細胞のintegrinβ_2β鎖mRNAからβ鎖cDNA塩基配列上の73ntから1191ntの領域を増幅することができた。PP1とPP2の細胞のmRNAからは73ntから2385ntの領域を増幅することはできなかった。RNase cleavage法により、PP1とPP2のmRNAにおいて、965ntから1450ntの領域に遺伝子の変異が存在することを検出した。
また、早期発症型歯周炎患者では、HLA-DQβ遺伝子のイントロンに特定な変異を伴うことが多いことを発見した。 -
歯周病患者に検出されたHLA遺伝子変異の解析
研究課題/領域番号:03857257 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
高柴 正悟
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
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Study on genetics of periodontal diseases
資金種別:競争的資金