共同研究・競争的資金等の研究 - 髙柴 正悟
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歯髄・根尖部歯周組織の創傷治癒メカニズムの解明と再生療法への応用
研究課題/領域番号:18209057 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
吉嶺 嘉人, 北村 知昭, 柴 秀樹, 川島 伸之, 徳田 雅行, 高柴 正悟, 前田 勝正, 横瀬 敏志, 庄司 茂, 斎藤 隆史, 國末 和司
配分額:45110000円 ( 直接経費:34700000円 、 間接経費:10410000円 )
歯の神経(歯髄)や根の先の周りの骨(根尖部歯周組織)に異常が生じる疾患において、これらの傷害が治癒するメカニズムを詳細に調べることで、従来とは異なる新しい治療法の確立に向けた包括的な研究を試みた。その結果、歯髄・象牙質・骨組織の再生への足がかりとなるデータを多く得ることができた。今後更に研究を発展させることで、臨床応用の可能な治療法の開発へと繋がるものと期待される。
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マイクロバブルを用いた口腔嫌気性菌除去方法の検討
研究課題/領域番号:18659623 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
高柴 正悟, 谷本 一郎, 前田 博史
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
平成19年度の研究課題に関する研究実績は以下のとおりである。
1.マイクロバブル濃度の測定とバブル径の測定
平成18年度の研究では,市販のマイクロバブル水にはほとんど抗菌性のないことが明らかとなった。原因としては,マイクロバブル濃度が低いこと,そしてバブルの径が大きくマイクロバブルとしての作用が発現していないことが考えられた。このため,高速ビデオ撮影装置を応用して,バブル発生状況を調べた。その結果,市販の装置では直径がナノメーターあるいはマイクロメーターレベルのバブルはほとんど発生していないことが明らかとなった。そこで,本学工学部(柳瀬眞一郎)に依頼し,工学部で開発されたマイクロバブル発生装置を用いて,以下の抗菌試験と,ヒト細胞への影響について調べた。
2.歯周病細菌に対する抗菌試験
歯周病細菌Porphyromonas gingivalisを対数増殖期まで培養し,培養液5ccに対して1ccのマイクロバブル水を添加し,その後の菌増殖を培養液の吸光度で評価した。その結果,菌増殖はコントロール(蒸留水)とマクロバブル水の間で差がなく,マイクロバブル水にはほとんど抗菌性のないことが示された。
3.ヒト細胞への影響
ヒト上皮系細胞(HeLa)と単球系細胞(THP-1)の培養液中にマイクロバブル水を添加して,2時間細胞を培養した。その後,細胞を回収して,マイクロバブルが細胞のサイトカインならびに増殖因子発現に与える影響をプロテインアレイ法で解析した。その結果,マイクロバブルを添加した細胞のサイトカインプロファイルと増殖因子プロファイルはコントロールと比較して変化がなく,マイクロバブルによる影響はないことが示唆された。
これらの結果はマイクロバブルによる短時間の刺激では、細菌や細胞へ与える影響がほとんどないことを示すものである。今後は洗浄効果(プラーク除去)を中心にマイクロバブルの口腔内応用を考えていく必要がある。 -
研究課題/領域番号:17209062 2005年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
窪木 拓男, 上田 実, 完山 学, 高柴 正悟, 辻 孝, 滝川 正春, 浅原 弘嗣, 土本 洋平, 園山 亘, 田川 陽一, 田川 陽一
配分額:48880000円 ( 直接経費:37600000円 、 間接経費:11280000円 )
マウスの歯の発生時に認められる遺伝子を検索し、従来報告のなかった28個の遺伝子を同定した。エナメル質形成細胞の成熟は、周囲に存在する細胞が制御していることを証明した。高脂血症治療薬(スタチン)は、象牙質の形成を促進し、歯科治療薬として応用しうることを示した。顎骨に存在する細胞は、手足の骨の細胞とは異なる性質を有していること、また、顎骨の再生促進に成長因子(結合組織成長因子、塩基性線維芽細胞増殖因子)が応用可能であることを確認した。
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メタゲノム解析アプローチによる口腔バイオフィルム感染症研究の新展開
研究課題/領域番号:17390502 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
福井 一博, 苔口 進, 谷本 一郎, 高柴 正悟, 前田 博史, 狩山 玲子, 玉木 直文
配分額:16260000円 ( 直接経費:15300000円 、 間接経費:960000円 )
これまで口腔内細菌叢については培養法に基づいて研究されてきた。口腔内には700種以上の細菌の存在が推定されているが、培養法では約50%しか明らかにされていない。口腔内環境の理解には全細菌叢を知る必要があり、培養できない、まだ性状不明な細菌種も口腔疾患の病因に関与する可能性がある。
そこで我々はこの問題を解決する新しいアプローチとして細菌16SリボソームRNA遺伝子(16S rDNA)に基づくメタゲノム解析を考案した。本研究では様々な口腔内細菌叢の様態や構成や変化を培養法に依存しない分子生物学的方法によって調べた。すなわち、16SrDNAを指標に口腔内細菌叢を解析する方法としてクローンライブラリー法、PCR-DGGE法に加えて、T-RFLP法を確立し、研究を進めた。さらにPhilip S.Stewart教授(モンタナ州立大学Center for Biofilm Engineering)の支援のもと、改良キャピラリーフローセルと共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いてバイオフィルム形成過程や阻害過程を高解像度でリアルタイムに三次元的に解析できる実験系を確立した。
まず、口臭を主訴とする患者の膿栓試料の細菌叢についてクローンライブラリー法で16S rDNA塩基配列(約600bp)を分析した結果、口臭原因物質である含硫黄化合物を産生するFusobacterium種などの嫌気性細菌や未知の細菌群を同定した。
またPCR-DGGE法解析によってProfessional toothbrushingは歯肉縁下プラーク中の歯周病細菌群を減少させ、細菌叢を劇的に変化させることが判った。
さらに、日本の歯周病患者では深い歯周ポケットの重度な歯周炎病巣ほどメタン産生古細菌の検出割合が高く、一方化学療法前後における造血幹細胞移植患者では、病原細菌や日和見感染菌などが口腔内に出現し、細菌叢が劇的に変動することも判った。 -
創傷歯髄から単離した新しい遺伝子FIP-2の象牙質・歯髄複合体形成への関わり
研究課題/領域番号:17591991 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
新井 英雄, 高柴 正悟, 西村 英紀, 成石 浩司, 谷本 一郎, 前田 博史
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
象牙質・歯髄複合体の形成は重要な生態防御機能である。我々は,ラット創傷歯髄から単離した新規遺伝子FIP-2の発現動態と細胞死への影響を調べた。
In situハイブリダイゼーション法によって,FIP-2A/Bがそれぞれ特異的な発現局在を示したため,プロモーターの制御機構を調べた。RACE法によって2.2-kbと1.5-kbの断片をそれぞれのプロモーター領域として単離し,プロモーターアッセイによって,FIP-2Aの転写は-1,570〜-1,270領域が,FIP-2Bの転写は-895〜-595領域が最も促進すること,さらにFIP-2Bの転写活性がより高いことを明らかにした。これらプロモーター領域とFIP-2A/B cDNAを含む発現ベクターをラット腎臓細胞に遺伝子導入し,FIP-2A/Bの細胞内局在を免疫染色法にて調べた。FIP-2Aは細胞質に疎らに発現する一方で,FIP-2Bは細胞質のゴルジ小体に機能的に局在することが分かった。すなわち,創傷歯髄で強く発現するFIP-2Bは,選択的プロモーターによって転写が調整され,細胞機能に重要な役割を果たす可能性が示唆された。
ラット歯髄由来細胞株におけるFIP-2B発現は,ウエスタンブロット法によって,tumor necrosis factor(TNF)-αでc-jun N-terminal kinase依存的に誘導されること,さらに過酸化水素による細胞死誘導刺激時,翻訳後修飾を示唆する分子量の増加を伴うことを確認した。この時,FIP-2Bが核内移行することを免疫染色法にて確認した。すなわち,歯髄炎症の過程で,FIP-2Bはリン酸化などの修飾を受け核内に移行し,細胞死制御因子の転写を促進的に調節している可能性がある。
以上の結果から,歯髄炎症時,FIP-2Bは選択的プロモーターを介し,TNF-αによって誘導され,細胞死を制御する可能性がある。 -
カテプシン-Lプロモーターの薬剤応答配列を標的とした歯肉増殖症の治療法開発
研究課題/領域番号:17659657 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
西村 英紀, 高柴 正悟, 畑中 加珠, 小柳津 功介
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
薬物性宙肉増殖症の病巣局所には細胞外基質が多量に蓄積し、病変歯肉組織は高度に線維化している。申請者らは過去に、本疾患を惹起する3種類の薬剤すべてが歯肉線維芽細胞においてライソゾーム酵素カテプシンーLの活性を遺伝子の転写レベルで抑制することを報告した(Nishimura F et al.,Am J Pathol,2002)。カテプシンーLは炎症性サイトカインーIL-6やMCP-1によってその遺伝子発現が調節されていると言われている。そこで、歯肉線維芽細胞においてIL-6やMCP-1を発現'させるモデルとしてHLAクラスII抗原を介した刺激を用い、これらサイトカインの調節機構を明らかにした。歯肉線維芽細胞上のHLAクラスII抗原はfocal adhesion kinase(FAK)と会合しており、HLAクラズII抗原を介した刺激でFAKがリン酸化を受け、IL-6やMCP-1が産生されることを明らかにした。FAKのリン酸化を特異的に阻害するといわれるルテオリンを作用させると、FAKのリン酸化が濃度依存性に抑制されるとともに、 HLAクラスII抗原を介した刺激によって誘導されるIL-6やMCP-1の産生量が低下した。これらのことからルテオリンによる歯肉線維芽細胞中のFAKリン酸化阻害作用が、梅肉増殖症惹起薬剤の作用と類似の効果を及ぼすことで結果的にカテプシンーL活性が抑制され、細胞外基質が蓄積する可能性が示唆された。これら3種類の薬剤はいずれも細胞内へのカルシウムイオンの流入を阻害することが知られている。今後、ルテオリンによるFAKリン酸化阻害作用がカルシウムイオンの流入阻害を介したものかどかを確認する必要がある。
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歯周病細菌に対する血清抗体価測定法の標準化に関する調査研究
研究課題/領域番号:17639021 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高柴 正悟, 永田 俊彦, 安孫子 宣光, 山崎 和久, 長澤 敏行, 日野 孝宗
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
採血および検査方法の改善,標準化したデータベースの作成,臨床的に有効である根拠の探求を,基礎科学的問題,臨床的および社会的問題,産学官連携上の問題の観点から,6人の研究者が担当して,これらを組み合わせて9つの観点から検討した。
大規模臨床研究を実施する体制を,日本歯周病学会でのWGを中心に産学官の連携が成り立つように作成した。なお,米国において口腔内細菌と歯周病の病状を虚血性心疾患の罹患と重症度の関連をみる大規模臨床研究を行っているノースカロライナ大学チャペルヒル校の状況を,研究体制の樹立のモデルとして用い,さらに,基礎的な研究を臨床研究に発展させて検査と治療法の開発を行っている国立衛生研究所顎顔面歯科部門(NIDCR)における研究の展開の仕方をモデルとして用いた。そのために,これらの施設において研修を受けた日本人研究者から資料収集を行い,研究遂行上の検討を行った。
さらに,抗原調製と供給の方法,抗体価測定キット開発,測定データの集計と配信方法に関して,共同開発を行うことが可能な企業(4社)を検索して,コンソーシアム設立の準備を行った。
これらの調整と相互の成果の報告のため,岡山大学において本研究班とコンソーシアム参加企業が集合して,班会議を開催した。この結果をもとに,研究代表者は,コンソーシアム参加企業の各社と,検査の実施上の技術的問題,データ解析の方法,検査の普及のための方策等,種々の問題点を検討した。
さらに,臨床検査関連の各種学会において,歯周病細菌に対する血清IgG抗体価の測定とその応用に関する歯科領域でのこれまでの成果を公表して,本検査の実施に際しての臨床検査学分野での問題点を洗い出した。
日本歯周病学会の研究委員会が主催する学会のワークショップにおいて途中までの成果を公表し,歯周病細菌に対する血清抗体価測定検査ために,本研究班を中心として基盤研究(A)を申請した。 -
歯周病の分子標的治療開発へのゲノミクス・プロテオミクス統合研究
研究課題/領域番号:16209063 2004年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
安孫子 宜光, 栗原 英見, 村上 伸也, 中山 浩次, 天野 敦夫, 高柴 正悟
配分額:49530000円 ( 直接経費:38100000円 、 間接経費:11430000円 )
パラサイト研究ゲノミクス研究:歯周病関連細菌P.gingivalisは、FimAのgenotype,I型33277株(中山)、II型TDC60株(安孫子)の全ゲノム塩基配列解読を行い、新たな病原因子検索ベース公開予定である。新規のP.gingivalisのジンジパイン分泌・輸送系システム(VIII型分泌機構)タンパク質分子を見いだした(中山)。一方で、T-RFLP法を用いた口腔内細菌叢解析システムを構築した(中野)。
ボスサイト研究トランスクリプトミクス研究:歯周病発症機序解明/治療をめざしたGeneChip解析を進めた。根尖性歯周炎治療モデルでの炎症治癒過程、機械的刺激を加えた歯根膜線維芽細胞、高血糖状態培養ヒト歯肉線維芽細胞の網羅的遺伝子解析(高柴)、歯周組織局所因子の骨髄由来間葉系幹細胞の分化に及ぼす影響(栗原)について解析した。幹細胞移植による歯周組織再生医療の確立を目指し、ヒト脂肪組織由来細胞の骨への分化能についてGeneChip解析を行い、脂肪組織由来未分化間葉系幹細胞の移植による歯周組織再生療法の開発を行った(村上)。さらに、組織再生を目指し、Odd-skipped遺伝子に関する研究(天野)を開始した。FGF2とフォルスコリンの同時刺激におけるBSP転写を検討した(小方)。P.gingivalis LPSが、マクロファージのIRAK-M発現を特異的に増強し、下流シグナル伝達を抑制するにとにより宿主細胞の低応答性に関与する可能性を示した(山崎)。
プロテオミクス研究:GeneChip,ProteinChipを用い、マラッセ上皮遺残由来細胞と歯肉上皮細胞の遺伝子発現およびサイトカイン/成長因子分泌のプロファイリングをおこなった(大島)。P.gingivalisのプロテオームデーターベースの構築を行った(安孫子、中野)。 -
自己組織化型アパタイト人工格子の創製と生体分子吸着特性制御
研究課題/領域番号:16360330 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
早川 聡, 尾坂 明義, 都留 寛治, 吉田 靖弘, 鈴木 一臣, 高柴 正悟
配分額:15000000円 ( 直接経費:15000000円 )
ヒドロキシアパタイト(HAp)格子内イオン置換によるタンパク質吸着特性の制御を追究するために,HApおよび炭酸含有ヒドロキシァパタイト(CHA)を合成した。長期透析患者の透析アミロイドーシス症の原因物質とされるβ_2-ミクログロブリン(β_2-MG)と必須タンパク質のモデルである牛血清アルブミン(BSA)を指標物質として用い,その混合タンパク質水溶液中でのβ_2-MGに対するCHAの高い選択吸着能を明らかにしだ。安定同位体<13>^Cをエンリッチした炭酸源を用いてナノ結晶性炭酸含有ヒドロキシアパタイト粉末を合成し,.その結晶格子構造中の炭酸イオン,リン酸イオン周囲の局所構造を固体二次元<13>^C{1^H},<31>^p{1^H}異種核相関(HetCor)MAS-NMR分光法で明らかにした。透過型電子顕微鏡観察の結果からHApよりもCHAの粒子サイズは僅かに減少し,合成中に炭酸イオンの添加によって,結晶成長が抑制されたと考えられる。<13>^C{1^H}HetCor MAS-NMRスペクトルの結果によると炭酸イオン周囲の局所構造には少なくとも4種類のサイトカが存在し,いずれもCO_3^<2->イオンの状態で存在しており,HCO_3噂イオンは観測されなかった。OHサイトには少なくとも2種類のサイトが存在することが明らかとなった。
亜鉛含有量の異なるヒドロキシアパタイトを合成し,β_2-MGと必須タンパク質のモデルである牛血清アルブミン(BSA)を指標物質に用い,その混合タンパク質水溶液中でのβ_2-MGに対する選択吸着能とヒドロキシアパタイトの組成,結晶子径,比表面積,微細構造の関係について考察した。亜鉛含有量が増加すると,結晶子径は低下して比表面積は増加した。亜鉛含有量が増加するに伴い,BSAの吸着率は6.0から2.3%に減少しβ_2-MGの吸着率は28から94%に急激に増加した.亜鉛イオンがタンパク質吸着能に及ぼす影響を調べるために,亜鉛イオンを含有する水溶液にHApを含浸することによって,HAp表面に亜鉛を導入したZn/HApを作製した。結晶性および粒子サイズをほとんど変えることなくHApに亜鉛を導入した。β_2-MGの吸着サイトは亜鉛とその周辺の表面化学構造であると予想され,HAp構成要素イオン(Ca^<2+>,PO_4-<3->,OH^-)の一部を金属及び陰イオン種で置換することによって病因タンパク質に対する吸着特性をさらに向上できる可能性が期待される。 -
根尖性歯周炎により破壊された歯周組織の治癒のメカニズムの解明と再生医療への応用
研究課題/領域番号:16209056 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
阿南 壽, 前田 勝正, 前田 英史, 島内 英俊, 高柴 正悟, 川島 伸之
配分額:47060000円 ( 直接経費:36200000円 、 間接経費:10860000円 )
根尖性歯周炎の進展にサイトカイン、骨吸収活性化因子RANKL神経系の関与を明らかにした(川島伸之)。根尖病変の治癒期においては、IL-1αを含む133の遺伝子の発現が亢進するとともに、defensin-α5を含む50の遺伝子の発現が低下することをを明らかにした(高柴正悟)。根尖性歯周炎罹患歯の根管治療開始時と根管充填直前では細菌叢は量的に減少するだけでなく、質的にも異なっていることを明らかにした(島内英俊)。イヌのデヒーセンスに増殖歯根膜組織を応用することにより、歯周組織欠損部における新生骨の形成およびセメント質の再生を認めた。(太田幹夫)。再生の足場として、ハイドロキシアパタイト線維を応用した新規の移植材を開発した(土倉康)。不死化ヒト歯根膜細胞を作製後、クローニングにより多化能を有したクローン細胞株を樹立した。また、NTAはヒト歯根膜細胞のオステオポンチンおよびオステオカルシンの遺伝子発現を促進し骨芽細胞様細胞への分化を誘導することを明らかにした(前田英史)。ヒト歯根膜細胞においてPGE2はEP2/EP4-cAMP依存的PKAカスケードを介してBMP-2依存的な骨芽細胞様分化の促進を助長することを明らかにした(小林誠)。FGF-2はヒト歯根膜細胞のグリコサミノグリカン産生を制御することを明らかにした(島袋善夫)。多血小板血漿(PRP)は破骨細胞の分化に抑制的に作用することを明らかにした(菊地寛高)。歯髄創傷部にエムドゲインゲルを投与することにより、早期にBMP-2およびBMP-4の発現が増加し新生硬組織の形成が認められることを明らかにした(前田勝正)。ラット根尖病変の治癒における骨組織の再生には、TGF-β1を発現した抗炎症性マクロファージの一時的な増加と持続的なBMP-2を発現した修復性マクロファージの増加が必要であった(阿南壽)。
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日本人歯周病患者の遺伝子多型に基づく感受性検査および診断の確立
研究課題/領域番号:16209062 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
永田 俊彦, 吉江 弘正, 村上 伸也, 高柴 正悟, 栗原 英見, 和泉 雄一
配分額:50050000円 ( 直接経費:38500000円 、 間接経費:11550000円 )
最終年度は研究代表者と分担者の12施設から集められた合計622名の被験者血液サンプルの分析が行われた。被験者の内訳は,侵襲性歯周炎(AgP)172名,その対照群(AgP-cont)178名,慢性歯周炎(CP)147名,その対照群(CP-cont)125名である。これらのサンプルを用いてインベーダー法による遺伝子多型分析が行われ,疾患群と対照群との間で3つのSNP, AgP vs AgP-contにおけるFcαR56T/CとMMP-3(-1171)5A/6A(-/T),およびCP vs CP-contにおけるIL-1(+4845)G/T)で有意差が得られた。
何れのSNPにおいても遺伝子型分布あるいはアリル頻度の片方のみが有意差を示したため,これら3つのSNPが歯周病感受性遺伝子(疾患特異的遺伝子多型)であるとは現時点では断定できず,今後のさらなる検討が必要と考えられた。一方,各分担者の個別のSNP研究において,歯肉増殖症の発現患者では発現しない人と比べてα2インテグリン(+807C/T)の遺伝子型分布とアレル頻度に有意差があること(永田,片岡),FcgIIB-232TとFcgRIIA-R131遺伝子の組み合せを保有する場合,自己免疫疾患の人では健常者より歯周炎罹患が11倍高くなること(吉江,小林),IL-1B3(-3893)遺伝子型と歯周病の重篤度との関連性はなかった(村上),FPR1は好中球に発現する受容体であるが,FPR1遺伝子上に30個のSNPsが発見され,その内4SNPsが侵襲性歯周炎と関連していたこと(渡辺),IL12RB2の転写制御領域に存在する複数のSNPsがNKおよびT細胞の細胞性免疫機能に及ぼす影響が示されたこと(大山),マンノース結合レクチン遺伝子の変異を有する者の割合は歯周病患者および糖尿病患者で高かったこと(林)などが明らかとなった。(786字) -
バイオフィルムにおける歯周病細菌病原因子発現様態のゲノム-プロテオミクス解析
研究課題/領域番号:16659499 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
苔口 進, 福井 一博, 高柴 正悟, 西村 英紀, 前田 博史, 狩山 玲子, 井上 哲圭
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
本研究は難治性の口腔バイオフィルム感染症である歯周病に関して、どのような機序でバイオフィルムを形成し、抵抗性を獲得し、またその中で歯周病細菌が病原性を発揮するのかについて分子生物学的手法を用いて解明することを目的とした。今年度は以下のような研究実績の概要である。
1)歯周病細菌Porphyromonas gingivalisの増殖や膿瘍形成に与る可能性のある遺伝子としてribonucleotide reductase D遺伝子(nrdD)を特定した。またP.gingivalisのバイオフィルム形成の際機能する二成分情報伝達系による発現調節網の解析を行ない、新規二成分系転写調節因子をコードする遺伝子を特定した。nrdDおよび二成分系転写調節遺伝子の欠損株を作成し、現在バイオフィルム形成、蛋白発現、さらには遺伝子発現パターンを親株と比較検討している。
2)現在、歯周病病巣バイオフィルムの生息し歯周病との関わりが注目されている未知難培養細菌の歯周病巣における分布様態を調べた。重度な歯周炎病巣ほどメタン産生古細菌であるMeth anobrevibacter種の検出割合が高く、患者血清の中にはM.oralisおよびM.smithiiの菌体蛋白と反応するものも認められた。さらに宿主細胞や免疫担当細胞との反応性を調べ、病原因子の特定を進めている。
3)バイオフィルム実験モデル系として、ガラスキャピラリー中で細菌バイオフィルムを形成させ、蛍光染色キットを用いて生菌と死菌を染め分け、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて観察するキャピラリーフローセルシステムを確立した。抗バイオフィルム効果測定の新しい実験・評価や抗バイオフィルム剤の探索にペグ付き96穴マイクロプレートを用いる系の有用性を確認した。この系でクランベリーなど天然物から新規抗バイオフィルム効果のある物質を見出そうとしている。 -
歯周靭帯細胞における機械的ストレス応答性遺伝子のグルーピングと転写機構
研究課題/領域番号:16659579 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
明貝 文夫, 高柴 正悟, 西村 英紀, 新井 英雄
配分額:2800000円 ( 直接経費:2800000円 )
【目的】
機械的刺激が培養ヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)に及ぼす遺伝子発現変化を,マイクロアレイを用いて網羅的に解析する。
【材料と方法】
1.HPLFの刺激およびRNAの抽出
HPLFに,Flexercell Strain Unitを用いて機械的刺激を0.5,1,2,16時間与え,全RNAを回収した。刺激は1分間に6回の割合に5秒間ずつの緊張と弛緩を繰り返し行った。刺激を与えないものをコントロールとした。
2.マイクロアレイ解析
機械的刺激が細胞に及ぼす遺伝子発現変化を,Human Genome Focus Array(Affymetrix;約8,500遺伝子)を用いて,標的遺伝子のmRNA発現量を調べた。統計的手法を用いて解析した。
3.発現を変化する標的遺伝子の抽出とその機能
機械的刺激による発現量の変化が2倍以上を示した標的遺伝子として抽出した。それらの既知の機能をGeneSpring databases(Silicone Genetics)で調べ,系統別にカテゴリ分類した。
【結果】
1.標的遺伝子の抽出とその機能
機械的刺激によってその発現量が2倍以上変化するものは122であった。これらの標的遺伝子は,発現動態から8つのクラスターに分けられた。全てのクラスターはCell Growth and Maintenanceカテゴリ,あるいはIntracellular Signalingカテゴリに属する遺伝子を含んでいた。遺伝子の発現動態とcategoryに関係を見つけることができなかった。しかしながら,各々のクラスターは,Intracellular SignalingあるいはCell Surface Linked Signal Transductionカテゴリに属する遺伝子を含んでいた。
【考察と結論】
HPLFにおいて,機械的刺激は,外界からの刺激を感知しそして細胞内へシグナルとして伝える分子だけではなく,細胞増殖や代謝に関わる分子の発現に役割を果たすと考えられる。 -
細菌鉄結合蛋白X線結晶構造解析から新規抗菌薬の創製に向けて
研究課題/領域番号:15390566 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
苔口 進, 福井 一博, 高柴 正悟, 西村 英紀, 前田 博史, 新井 英雄, 井上 哲圭
配分額:12600000円 ( 直接経費:12600000円 )
本研究は、歯周病細菌の増殖と病原性発現に不可欠な細菌鉄結合蛋白の分子生物学的研究を発展させ、エジンバラ大学Campopiano博士とシェフィールド大学Artymiuk博士にX線結晶解析の協力を得て、その立体構造解析を行なった。さらに新規抗菌薬を探求し、創薬の基礎とすることを目的に行ない、以下の研究成果を得た。
細菌鉄結合蛋白の結晶化とX線結晶解析については歯周病細菌Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)のDNA binding protein starved cells(Dps)蛋白(ABO80734)とフェリチン(ferritin : Ftn)蛋白(DDBJ AB004902)について実施した。AaはFtn1とFtn2という2つの鉄結合蛋白を菌体内で発現していた。Ftn1は結晶蛋白が得られたが、Ftn2はアモルファス状にしかならなかった。Dps蛋白(10〜27mg/ml)は、結晶スクリーニング溶液中で温度17度でハンギングドロップ蒸気拡散法によって良質の六角柱結晶(数mm)を生成できた。得られたAaDps結晶についてX線解析を行い、分子置換はListeria innocuaの十二量体フェリチン様蛋白を参照に鉄結合活性中心部位およびC末端の特徴的なジスルフィド部位を決定できた。
新規抗菌薬として生体抗菌物質として注目されるデフェンシンを取り上げ、ヒト細胞からの発現制御様態および抗菌活性について検討した。また、天然植物では尿路感染症の民間療法として用いられているクランベリーを取り上げ、飲用後の尿中代謝物から大腸菌性バイオフィルムの形成を阻害する活性化合物として、ferulic acid、homovanillic acid、4-coumaric acid、isoferulic acid、vanillic acidを特定した。これらの低分子化合物は、複合的に作用して細菌バイオフィルム形成を抑制している可能性があった。 -
口腔インプラントの骨結合獲得難易度を予測する生物学的診断法の開発
研究課題/領域番号:15659463 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
窪木 拓男, 高柴 正悟, 滝川 正春, 荒川 光, 藤沢 拓生
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
1.チタンの細胞培養および遺伝子発現への影響
骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1細胞)の細胞培養培養および遺伝子発現に対するチタンの影響を検討した。
1)チタンプレート
ポリスチレン製の培養皿と表面粗さを同程度にするために,研磨ガラスにチタンを真空蒸着したものを使用した。
2)細胞接着への影響
通常の培養皿と比較してチタンは細胞接着を抑制する傾向にあった。
3)細胞増殖への影響
通常の培養皿と比較して,細胞播種後1,2日ではチタンでは増殖が抑制されるものの3日では両材料ともコンフルエントに達した。
4)細胞分化への影響
骨芽細胞の分化の指標のひとつであるアルカリホスファターゼ活性は,両材料ともに細胞がコンフルエントになった後5日目ごろより上昇し,14日目でピークを向え,21日目では低下した。チタンでは通常の培養皿と比べてアルカリホスファターゼ活性は抑制された。
5)遺伝子発現への影響
通常の培養皿と比較し,チタンの遺伝子発現への影響をサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検討したところ,両材料間で発現に差のあるsod-1,xab-2の遺伝子を検出した。
6)リアルタイムPCR法による遺伝子発現の変動
サブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検出した発現に差のあるsod-1,xab-2の経時的な発現の変動を検討したところ,培養皿では細胞播種後5日目で発現のピークを向え,その後低下した。チタンでは発現のピークが10日目前後と培養皿より遅延し,発現も抑制されていた。 -
日本人の腎結石から分離した新種ナノバクテリアに関する多面的解析
研究課題/領域番号:15659381 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
公文 裕巳, 門田 晃一, 筒井 研, 八木 直人, 高柴 正悟
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
岡山大学泌尿器科で採取された日本人の尿路結石47検体、パラグアイで採取された尿路結石18検体、岡山大学一般歯科診療室で採取された歯石14検体を対象としてNanobacteria-like organism(NLO)の電子顕微鏡による観察、ならびに、分離培養を試みた。日本人の尿路結石とパラグアイ人の尿路結石でのNLOの検出率は、それぞれ61.7%(29/47)、66.7%(12/18)とほぼ同率であった。分離培養はそれぞれ7例と3例に可能であった。結石成分分析において、リン酸カルシウム含有率はNLO検出例約70%、分離培養例約78%と高率であったが、分析上でリン酸カルシウムを含有しないものからも検出・分離された。なお、歯石からは検出されなかった。
SPring-8での解析では、NLOの大きさが分解能以下のサイズであったにもかかわらず、アパタイト層の構築様式の三次元的解析が可能であり、個々のアパタイの外皮で被われたNLOが集簇的に融合、その集合体全体を包み込むように最外層にアパタイト層が構築されて成長することが明らかとなった。増殖培地の工夫により増殖様式はアパタイト型のほかに浮遊型が存在すること、その増殖速度も培養条件に左右されること、ならびにOD650でモニタリング可能であることが判明した。モノクローナル抗体で特異的に染色可能であることも明らかとなったが、Nanobacteriaに特異的であるとされたプライマー(フィンランドのグループのオリジナル文献:(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8274,1998)ならびに細菌属に共通のユニバーサルプライマーを用いるPCRでは特異的な反応は得られなかった。NLOの増殖のメカニズムに未だ不明な点が少なくないが、尿路結石等の異所性石灰化にNLOが関与することが強く示唆された。 -
歯周病原細菌の感染局所における病原因子発現の統括的プロファイリング
研究課題/領域番号:15592187 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
新井 英雄, 谷本 一郎, 前田 博史, 苔口 進, 高柴 正悟, 新井 英雄
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
A.actionomycetemcomitans (Aa)は歯周病を引き起こす主役を担う菌として注目されている。この菌の病原因子としては白血球毒素,LPS,線毛,CDTなどが注目されている。その一方でこの菌は歯周組織が健全なヒトからも分離されることがある。このことは歯周ポケット内にAaの存在することが直ちに歯周病の発症と進行につながるわけではないことを意味する。我々はAaが病原性を発揮するためには上記の病原因子や未知の分子が宿主内で発現し,相互に関連・統合する必要があると仮説をたてた。また,歯周病は複数細菌の混合感染であるため単一菌からその病態をとらえることは難しく,病態解析のためにはプラーク中の細菌種構成についても検索をする必要がある。
本研究ではAaの病原因子発現プロファイルを解析するために宿主内発現分子を同定し,細菌叢解析のための新しい検査方法を確立した。
1.Aaの宿主内発現分子の同定
宿主から分離直後のAaと継代培養したAaでcDNAサブトラクションを行い,宿主内で発現量が増加している遺伝子を同定した。同定された遺伝子は主要外膜蛋白遺伝子(ompA),prx様遺伝子,mip様遺伝子であり,ompAとprx様遺伝子は既知の遺伝子と高い相同性を示した。これに対してmip様遺伝子は既知のもの(Legionellaのmip)との相同性が約30%であった。
2.mip様遺伝子の機能解析
ompAとprxについては遺伝子情報からその病原性・機能が推測できた。mip様分子については既報の分子に相同性の高いものが存在しなかっため機能解析を行った。相同性組み換え法によってMip欠損株を作成したところ,欠損株では上皮細胞侵入能が著しく低下することが分かった。
3.歯周ポケット内細菌叢解析法の確率
等温遺伝子増幅法(LAMP法)を応用して主要な歯周病細菌検出のための検査法を確立した。 -
バイオフィルム形成に伴う歯周病原因子の遺伝子発現制御
研究課題/領域番号:15591932 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
井上 哲圭, 新垣 隆資, 苔口 進, 高柴 正悟, 福井 一博, 太田 寛行
配分額:2700000円 ( 直接経費:2700000円 )
<バイオフィルム(BF)形成過程の観察> Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)の野生株では,表面への付着初期では多数の線毛産生が観察されるが,成熟バイオフィルムでは線毛産生が抑制され,菌と菌が密に接着している様子(自己凝集)が観察された。菌体表面には多糖様構造物も観察された。BF形成に伴うミクロな環境変化に応答して,菌体表層物質の産生調節が起こることが示唆された。<BF形成と色素結合性> BF形成株ではコンゴレッド色素に対する結合性を示したが,非形成株では示さなかった。線毛遺伝子破壊株でもこの結合性は保持されており,色素結合性は線毛以外のBF形成因子の存在を示すものと考えられた。この色素結合性は,過ヨウ素酸処理により消失したことから菌体表層多糖の合成を反映していると推察された。ゲノム遺伝子解析から,コンゴレッド結合性多糖合成遺伝子クラスターのホモログが本菌に存在することがわかり,その中の一つの遺伝子破壊株を作製したが,BF形成への明らかな影響は検出できなかった。この遺伝子クラスターとBF形成との関係について,より詳細な検討が必要である。<自己凝集アッセイ> 菌体表層多糖と自己凝集との関連性を検討した。過ヨウ素酸処理,DNA分解酵素処理で自己凝集が完全に抑制されたことから,自己凝集には菌体表層の多糖に加え,DNAも関与することが示された。<白血球毒素産生の調節> BF形成と毒素産生へのカタボライト抑制調節タンパク質Crpの影響を調べるために,crp遺伝子破壊株の作製を試みたが分離できなかった。Aaではcrpが必須遺伝子である可能性が示唆された。また,毒素産生は酸性pHにより促進されることから,BF形成過程における局所pHの低下は毒素産生増加に働くことが示唆された。
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歯周病の遺伝子治療 -局所的遺伝子導入による生体反応の制御-
研究課題/領域番号:14370710 2002年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 窪木 拓男, 西村 英紀, 久保田 聡, 明貝 文夫
配分額:13500000円 ( 直接経費:13500000円 )
標的因子の特定が重要な項目であるので,我々は歯周病の病態形成を鑑みて,(1)感染の非特異的な防御,(2)組織再生,の両面からターゲット因子を特定することにした。また,その生体毒性のために遺伝子治療の臨床応用に対する不安があるのも事実であるので,すべての実験は,その為害性も試験した。
1.標的遺伝子
ラットにおいて,歯槽骨の再生時に,1週目にcytochrime c oxidase遺伝子が,2.5週目にpro-a-2 type I collagen遺伝子が,特徴的に強く発現していた。これらを活性化することが細胞の活性度を高め,組織の線維化を促進することになるようである。歯髄では,ヒト14.7K-interacting protein 2(fip2)遺伝子のホモログが強く発現しており,ラットFIP-2遺伝子とした。この遺伝子の生理的な意味合いは不明であったので,現在も解析中である。さらに,炎症を制御するために,ヒト腫瘍壊死因子(TNF)-αを誘導する新規転写因子LITAFの活性化に関するプロモーターを特定した。
2.非ウィルスベクターによるβ-デフェシンの導入
口腔細菌の感染を抑制する作用のある抗菌ペプチドβ-デフェンシンを,上皮細胞や唾液腺に遺伝子導入によって強制発現させて,口腔内の細菌量の変化をラットにおいて調べた。さらに,催炎症性であるともいわれるこのペプチドが,唾液腺内で強制発現すると,組織に炎症を惹起させるかどうかも,組織学的に調べた。ラット唾液腺内での発現を実現させると,口腔内細菌が減少することと唾液腺組織の炎症が少ないことを確認できた。なお,電気的導入では,組織障害が大きかった。一方で,細菌内毒素の刺激時のこの遺伝子の発現誘導には,2つのNF-κB結合部位が促進的に作用し,NF-IL6結合部位は抑制的に作用することがわかった。導入したこの遺伝子の発現誘導に活用できるかもしれない。 -
歯周組識・歯槽骨再生のための自己間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療の確立
研究課題/領域番号:14370632 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
窪木 拓男, 上田 実, 滝川 正春, 高柴 正悟, 前川 賢治, 吉田 靖弘, 中西 徹, 矢谷 博文
配分額:14800000円 ( 直接経費:14800000円 )
1,ヒト骨髄間葉系幹細胞の採取・培養
倫理委員会の許可を得て,ヒトボランティアの腸骨稜より骨髄液を採取し,培養・増殖させる方法を確立した.また,この細胞群は骨芽細胞,脂肪細胞へと分化しうる多分化能を有していることを確認した。
2,結合組織成長因子(CCN-2)コーティングによるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖,分化の促進
骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞を遊走させることができるCCN-2を多孔質アパタイトブロックにコーティングすることによって,スキャフォード内部への骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞の誘導に成功し,ブロック内部への血管新生,さらには骨再生を促進することに成功した.
3,チタン表面に対するヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖の促進
チタン表面にポリリン酸を吸着することにより,骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着や細胞増殖を促進することに成功した.この知見は,ポリリン酸がチタンのオッセオインテグレーションを促進する可能性を示唆するものである.
4,cDNAサブトラクション法によるチタンと骨とのオッセオインテグレーションに関連する因子の同定
ポリスチレンとチタンディッシュ上で骨芽細胞様細胞株を培養し,total RNAを回収後逆転写,cDNAサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて,チタン特異的遺伝子を検索した.その結果,チタン上で骨芽細胞を培養した場合には,sod-1,ribosomal protein L19の遺伝子発現が有意に抑制されていることが明らかになった。現在,さらに他の金属とも比較中である.