共同研究・競争的資金等の研究 - 髙柴 正悟
-
コラーゲン結合型FGF-2による水平性歯槽骨吸収に対する歯周組織再生療法の開発
研究課題/領域番号:19H03831 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 松下 治, 伊東 孝, 平山 晴子, 山本 直史, 美間 健彦
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
本研究は,水平性骨吸収に対する歯周組織再生療法を実現するために,既に歯科臨床で応用されている塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と細菌由来のコラーゲン結合ドメイン(CBD)を組み合わせた融合タンパク質(CBFGF)を用いた研究である。本研究の目的は,CBFGFの最適化とイヌを用いた実験モデルによる非臨床試験データの取得である。2019年度は,認可済みのbFGF製剤に合わせて,CBFGFを組換融合型から架橋型へ変更するための実験とイヌの骨欠損モデルを用いた実験を実施した。まず,CBFGFの最適化について,架橋反応の比率・濃度などの反応条件を決定するために,多量のbFGFとCBDを要した。そこで,大腸菌生産系を用いてbFGFとCBDを精製し,実験効率の改善を図った。現在は,CBDとbFGFを架橋する適切な条件を探索しているところである。また,イヌを用いた実験モデルでは,歯周組織再生療法の適応症である垂直性骨欠損(2壁性)で組換融合型CBFGFの有効性を実証し,水平性骨欠損および垂直性骨欠損(1壁性)を作製して,組換融合型CBFGFを投与した。現在,動物へのタンパク質の投与は終了し,一部のサンプルはCT撮影まで行っている。
また,組換融合型CBFGFについてこれまでに得られたデータについては,研究発表(Takashiba S, International Academy of Periodontology, 2019;Nakamura S, et al, International Association of Dental Research, General Session & Exhibition, 2019;岡本ら,日本歯科保存学会,2019;高柴,BioJapan 2019)を行って,今後の研究の進め方やCBFGFの製剤化に関して,様々な研究者や企業と情報交換を行った。 -
研究課題/領域番号:22390397 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 前田 博史, 大原 直也, 野添 幹雄
配分額:13000000円 ( 直接経費:10000000円 、 間接経費:3000000円 )
歯周病原細菌の血漿IgG抗体価測定では,全菌体抗原が使用されるためにその標準化・高速化が困難である。本研究では,Porphyromonas gingivalisの全菌体抗原の中から歯周病患者が認識する抗原成分を選抜し,16種類の抗原タンパク質の合成に成功した。さらに,患者血清との反応性を検討した。今後,血清の認識パターンと臨床所見との関連性を分析することによって,測定に有用な抗原分子を特定し,高速自動化を目指す。
-
指尖毛細血管採血による血漿抗体価測定を用いた歯周病細菌感染度の判定法の研究
研究課題/領域番号:18209061 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
高柴 正悟, 永田 俊彦, 安孫子 宣光, 山崎 和久, 長澤 敏行, 日野 孝宗, 吉村 篤利, 島内 英俊, 小方 頼昌, 沼部 幸博, 野口 俊英, 村上 伸也, 成石 浩司
配分額:48100000円 ( 直接経費:37000000円 、 間接経費:11100000円 )
我々は, 歯周病検査法としての歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価検査の有用性を検討した。P. gingivalis(Pg)などの4菌株を標的とした。また対象は慢性歯周炎患者549名とした。「BOP陽性率」および「4mm以上の歯周ポケットの割合」を各々3群に分類して各群の抗体価の有意差を調べた結果, Pgに対する血漿IgG抗体価は歯周病の悪化に相応して高値を示した。また「歯周基本治療後」群の抗体価(N=377)は, 「初診時」群の値と比較して4菌株すべての抗原において有意に減少した。すなわち, 本検査法は歯周病病態を評価し得る検査であると考える
-
歯周病による腸内の鉄代謝異常が大腸癌の進行に与える影響の解明
研究課題/領域番号:24K12912 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
平井 公人, 大原 利章, 高柴 正悟
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
-
制御性T細胞の変化が関わるシェーグレン症候群特異的な新規非翻訳RNAの探索と解析
研究課題/領域番号:22K09925 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
池田 淳史, 高柴 正悟, 伊藤 達男
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
シェーグレン症候群(SS)は唾液腺に生じる自己免疫疾患で、唾液分泌能の低下により齲蝕や摂食嚥下障害などが発症する。その結果、栄養摂取量の低下を介して健康寿命が短縮するため、社会的に大きな問題となっている。一般にSSを含めた自己免疫疾患の発症・進行には、制御性T細胞(Treg)の異常が関与している。既存のSSに関する研究報告の多くは、唾液腺中に存在するこのTregの数のみに着目し、DNAの塩基配列に依存しない遺伝子の調節機構であるエピジェネティクスの制御によるTregの機能的変化という観点では研究されていない。近年、疾患特異的なlong non-coding RNA(lncRNA)が、エピジェネティクスの制御などを介してTregに影響を与え、自己免疫疾患の発症や進行に関与していることが判明してきたが、SS特異的なlncRNAは発見されていない。
以上から、SS特異的に発現しているlncRNAによるエピジェネティックスの制御を介したTregの機能的変化が、SSの病態に関与しているのではないかという問いが生まれた。従って本研究の主目的を、SS特異的なlncRNA によってどのようにTregの機能が変化するか明らかにし、SSの発症・進行機序の一端を解明することに設定した。
まず、倫理委員会に本実験遂行にあたり、計画書を作成・提出し、承認を得た。そして、岡山大学病院リウマチ・膠原病内科の協力のもと、シェーグレン症候群患者のリクルートを行い、同意が得られた患者から採血を行い、岡山大学病院バイオバンクに資料を登録・保管した。
また、フローサイトメトリーを用いて、研究担当者自身の血液からTregの分離が的確に行えるか確認を行っている。 -
細胞外小胞の口腔トロピズムを基軸とする侵襲性歯周炎の病態解明と診断への応用展開
研究課題/領域番号:21H03119 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山本 直史, 江口 傑徳, 宮地 孝明, 高柴 正悟, 江國 大輔, 井手口 英隆
配分額:16900000円 ( 直接経費:13000000円 、 間接経費:3900000円 )
侵襲性歯周炎(Aggressive periodontitis:AgP)は全身的には健康な若年者に発症し,急速に進行する特殊な歯周炎であるが、その発症病態は不明なままである。本研究では,臓器特異的な作用(臓器トロピズム)が近年注目されている血中の細胞外小胞(EV)とAgPの病態関与の可能性を調べた。
今年度は、AgP患者6名と健常者3名の初診時血中EVから,AgPで高発現するmiRNAをRNAシーケンスにて調べ,マーカー候補となるそれらのmiRNA mimicをヒト歯肉線維芽細胞と歯周炎モデルマウスに遺伝子導入した。誘導された炎症性サイトカインの発現量をリアルタイムPCR法とELISA法にて測定し,歯槽骨吸収量をマイクロCTにて調べた。
健常者と比較して,AgP患者で発現量が2倍以上増加したmiRNAを500種類以上同定した。それらのうち5種のmiRNAとmiR-181b-5pを歯肉線維芽細胞に導入すると,IL-6とIL-1βの産生が増加した。とりわけ,miR-181b-5p を歯肉組織に導入すると歯槽骨吸収が進行した。
すなわち、AgP患者の血中EVには診断マーカー候補となるmiRNAが多く発現しており,miR-181b-5pはIL-6とIL-1β発現を伴う炎症を助長することによってAgPを重症化する可能性が示された。 -
細胞外小胞の口腔トロピズムを基軸とする侵襲性歯周炎の病態解明と診断への応用展開
研究課題/領域番号:23K21486 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山本 直史, 江口 傑徳, 宮地 孝明, 高柴 正悟, 江國 大輔, 井手口 英隆
配分額:16900000円 ( 直接経費:13000000円 、 間接経費:3900000円 )
侵襲性歯周炎(Aggressive periodontitis:AgP)は全身的には健康な若年者に発症し,急速に進行する特殊な歯周炎であるが、その発症病態は不明なままである。本研究では,臓器特異的な作用(臓器トロピズム)が近年注目されている血中の細胞外小胞(EV)とAgPの病態関与の可能性を調べた。
昨年度、AgP患者6名と健常者3名の初診時血中EVから,AgPで高発現するmiRNAをRNAシーケンスにて調べ、マーカー候補を同定した。今年度は、それらのmiRNA mimicを歯周炎モデルマウスに遺伝子導入し、炎症メカニズムを調べた。誘導された炎症性サイトカインの発現量をリアルタイムPCR法にて測定し,歯槽骨吸収量をマイクロCTにて調べた。
マーカ候補の5種のmiRNAとmiR-181b-5pをマウス歯肉組織に導入するとに導入すると,IL-6とIL-1βの産生が増加した。とりわけ,miR-181b-5p を歯肉組織に導入すると、M1マクロファージやTh1とTh17細胞が増加し,歯槽骨吸収が進行した。
すなわち、AgP患者の血中EVには診断マーカー候補となるmiRNAが多く発現しており,miR-181b-5pはIL-6とIL-1β発現を伴う炎症を助長することによってAgPを重症化する可能性が示された。
さらに、EVが内包する炎症性miRNAが歯周組織に到達するメカニズムに,血中EVの特異表面蛋白を介した臓器指向性が関与するとの仮説の下、EVのプロテオーム解析を行った。昨年度までに検証した様々なEV抽出方法と前処理法の結果を元にプロトコルを確立し、まずは健常者血中のEVのプロテオーム解析を行ったところ、多くのEVマーカーを含む2844蛋白質が同定・定量された。 -
プロトンポンプ阻害剤服用時に歯周病原細菌が腸内細菌叢へ及ぼす影響
研究課題/領域番号:21K09893 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
平井 公人, 横田 憲治, 高柴 正悟
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
本研究の目的は胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用により胃酸の殺菌作用が低下した状態で,歯周病原細菌であるPorphyromonas. gingivalisもしくはその代謝産物が腸内細菌叢へ与える影響を調査することである。健康なマウスでは経口投与された細菌はほとんどが胃酸で殺菌されるが,PPI投与により胃酸の殺菌作用が低下した状態ではP.gingivalisは胃を生菌として通過し遠位腸管まで到達できるかどうかを検討した。
まずはPPIであるランソプラゾールのマウスへの経口投与が胃酸のpHをどの程度上昇させるかを検討するためにPPI投与後24時間後に安楽死させ切除した胃の内容物のpHを計測した。PPI投与群でも非投与群でもpHは2-3程度と差がなかった。これはマウスの餌の摂取制限ができないために胃内容物が多かったことが原因と考えられるため,今後はPPIの薬効の確認には血中ガストリン濃度の測定などで評価する必要がある。
歯周病感染モデルではマウスに1週間PPIの経口投与を行った後にP.gingivalisを2日間経口投与し,24時間後に盲腸の糞便を回収した。回収した糞便から約10mg採取し変法GAMブイヨン寒天培地上で嫌気培養し得られた菌体から採取したDNAと,盲腸糞便から直接採取したDNAを用いてP.gingivalisを特異的に認識するプライマーを用いてのDNA量をリアルタイムPCR法を用いて評価したとこと,PPIの有無に関わらず盲腸内で生菌としては確認されなかったが,盲腸内からはP.gingivalis遺伝子を確認することができた。また大腸組織の病理学的評価においてはPPI投与群で非投与群に比べてP.gingivalis経口投与によると思われる腸管粘膜の炎症性細胞浸潤や腸管上皮の傷害などの炎症所見が重症化する傾向にあった。 -
がん化学療法に伴う口腔粘膜炎の疼痛緩和・発症制御を目指す 新規口腔粘膜保護材の開発
研究課題/領域番号:20333757 2020年08月 - 2022年03月
日本医療研究開発機構 橋渡し研究戦略的推進プログラム・シーズB
大森 一弘, 高柴正悟, 入江 正郎, 堀綾花, 吉田道弘, 堀田勝幸, 本田成道, 小里達也, 山本裕也, 高木智久, 二村優次
-
歯周病原細菌の感染とタンパク質シトルリン化を介する関節リウマチの病態解明
研究課題/領域番号:20K09954 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
畑中 加珠, 大森 一弘, 高柴 正悟
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究は、関節リウマチとその類似疾患患者を対象に、シトルリン化に関与する歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価を調べることによって、歯周病原細菌の感染と関節リウマチの病態との関連を明らかにすることを目的としている。
抗シトルリン化蛋白抗体陽性を特徴とする関節リウマチとその類似疾患で抗シトルリン化蛋白抗体陰性であるリウマチ性多発筋痛症の患者を対象とした。研究協力者である小山芳伸医師から岡山赤十字病院 膠原病患者の「検体バンク」に保存されている関節リウマチおよびリウマチ性多発筋痛症患者142名の初発時(治療前)の血清の提供を受けた。シトルリン化の関与が報告されているPorphyromonas gingivalis(Pg)およびAggregatibacter actinomycetemcomitansを含む歯周病原細菌9菌種13菌株に対する血清IgG抗体価の測定を行った。なお、既に岡山大学および岡山赤十字病院の倫理審査委員会の承認は得ている。
抗シトルリン化蛋白抗体陽性群と陰性群で歯周病原細菌に対する血清抗体価の違いを検討したところ、陽性群とりわけ高値陽性群は陰性群と比較してPgに対する血清抗体価が有意に高い結果となった。また、関節リウマチ患者群とリウマチ性多発筋痛症患者群とで血清抗体価を比較したところ、有意な差は認められなかった。さらに、関節リウマチ患者に絞って、疾患活動性や治療反応性と血清抗体価との関連についても検討したところ、活動性に関連はなかったが、治療反応性が不良な患者はPgおよびAaの血清抗体価が有意に高い結果となった。すべての解析において、両疾患のリスク因子である喫煙についても検討したが、関連は見出せなかった。 -
APPLICATION OF RvD2 AS A REGENERATIVE DIRECT PULP CAPPING MATERIAL
研究課題/領域番号:20K09938 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
アリアス・マルティネス スレマ・ロサリア, 大森 一弘, 山城 圭介, 高柴 正悟
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
Vital pulp therapy (VPT)’s aim is reparative dentin production after pulp injury. Current VPT agents have biocompatibility problems. Previously we proved that RvD2, an anti-inflammatory lipid mediator, produced in vivo from polyunsaturated fatty acids healed apical periodontitis (AP). Having analgesic, angiogenic, bacterial clearance effects, RvD2 is the "ideal VPT agent". In 2020, we reported reparative dentin (RD) after RvD2 and Ca(OH)2 application (rat model). IMH results showed GPR18’s expression in RvD2 group. This year we added this agent in dental pulp cells, finding decreased expression of Tnf-α and Il-1β, suggesting that RvD2 had an anti-inflammatory effect. RvD2 may establish a favorable environment for the formation of RD in the dental pulp by its anti-inflammatory effects.
-
超高齢社会での応用を目指す低分子化合物terreinの標的分子の同定・機能解析
研究課題/領域番号:19K10108 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大森 一弘, 中山 真彰, 竹内 恒, 高柴 正悟, 萬代 大樹
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
超高齢社会を迎えた我が国において,食生活を司る口腔機能を維持することは健康寿命を延伸する上で必須である。一方,8020達成率が50%を超えた現代において,高齢者の口腔内に存在する歯自体が感染源となり,口腔疾患の罹患率が上昇する新たな問題が生じている。 そのため,安全・簡便に応用できる新規口腔治療法の開発が社会的に望まれる。申請者らの研究グループは,抗菌・抗炎症作用を有する一方,極めて細胞毒性が低い真菌由来代謝産物terreinに着目し,1) 有機化学的大量合成経路の確立,2)抗IL-6効果,3)破骨細胞分化抑制効果等を報告した。しかし,terreinの作用機序(標的分子)は未だ不明であり,terreinの有益性を検証する上で標的分子の同定は必要不可欠である。本研究では,様々な薬理作用を期待できる低分子化合物terreinの標的分子を同定し,歯内・歯周疾患モデルを用いた機能解析を行い,terreinの新たな口腔治療薬(治療法)としての可能性を検証することを目的としている。本年度は,terreinの破骨細胞分化抑制メカニズムの一端として、RANKL誘導性のNFATc1の発現を抑制するメカニズムの一端を解明し,報告した。従来考えていたRANKL刺激時に誘導されるNF-kaB経路、MAPKs経路に影響を与えず、別の経路を抑制することによって骨吸収を抑制する可能性が示唆された。今後,terreinの標的分子を同定していく上で,その候補分子の数を絞り込む上で有用な結果が得られたと判断する。
-
フッ素による歯周病態のメタボリックコントロールを目指す基礎研究
研究課題/領域番号:19K10150 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大杉 綾花, 高柴 正悟, 久保田 聡
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究の目的は抗う蝕作用を持つフッ素イオンが歯周組織の線維化を抑制するかを、検証することである。その第一段階として、申請時の研究計画通りにマウス線維芽細胞株NIH-3T3を用いた検討をまず行った。通常条件で培養した同細胞にフッ化ナトリウム(NaF)を添加し、抗線維化分子であるCCN3の遺伝子発現誘導が起こるか検証したところ、NAFの存在の如何にかかわらずCCN3遺伝子発現は定量限界値以下にとどまった。続いて、TGF-betaで線維化を誘導した条件でNaFの効果を検討したところ、軟骨様細胞株ではNaFによって線維化分子CCN2の遺伝子発現が抑制されたが、NIH-3T3細胞では逆に強く誘導された。なお、申請時には計画してはいなかったが、この予想外の結果を検証するために、通常条件下におけるNaFのCCN2遺伝子発現に対する影響も検討した。その結果、やはりNaFによるCCN2遺伝子の発現誘導が観察された。ところが興味深いことに、TGF-betaによる線維化誘導によって発現が上昇したI型コラーゲン遺伝子については、仮説通りにNaFによって抑制された。これらNIH-3T3による実験結果は,2つの意味で重要である。1)NaFが線維化とはI型コラーゲンの増産に他ならないので、NaFの抗線維化作用がここに立証され、本研究を発展させる根拠が得られたこと、2)NaFがCCN2産生を誘導しつつ線維化を抑制するという事実は、CCN2が線維化を引き起こすとされてきた従来の定説を覆すものであること。今後は、これらを踏まえつつ、次年度の研究に進むことになる。次の研究ステップは、ヒト歯肉線維芽細胞を用いて同様の結果が得られるかを検証する実験である。当初の計画ではヒト正常歯肉から得られた線維芽細胞をそのまま用いる予定であったが、実験系の安定性を考慮して、これを不死化した細胞株を樹立して、検討を行うことにした。幸い初年度に、この細胞の樹立は完了できている。
-
末梢血単核球のミトコンドリア活性化を用いた新しい運動トレーニング評価法の開発
研究課題/領域番号:18K19681 2018年06月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
荻野 景規, 古松 毅之, 長岡 憲次郎, 梅田 孝, 伊藤 達男, 荻野 学芳, 荻野 志穂奈, 浜田 博喜, 高柴 正悟, 松田 依果, 東 華岳, 菅沼 成文, 栄徳 勝光
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
運動トレーニングによる酸化ストレス刺激が、ミトコンドリアの活性化による抗酸化酵素や解毒酵素群の発現上昇を招き、寿命延伸につながるというミトホルミシスの概念が、運動後の生体の骨格筋細胞の 【生検】 組織で検討されていた。本邦では、筋肉の 【生検】 は、一般的ではないので、末梢血単核球でも評価出来るか可能性を検討してきた。当初、毎日1時間の運動を1ヶ月続けることにより末梢血単核球で、抗酸化酵素群のmRNAの上昇が検出可能であったが、毎日30分、2週間の軽いジョギングの臨床研究で、末梢血単核球のSOD1、SOD2、catalase、selenoprotein P等の抗酸化酵素群や CARS2、SQR等の硫化水素代謝酵素、SIRT3等のmRNAの発現上昇が認められ、ミトホルミシス現象を検証できた。運動中止後2週間経過した時点でもこれらの酵素群の高発現を認め、運動効果の持続を認めた。運動前の検証で、SOD2は、運動習慣のある人で有意に高いことが判明した。SOD2やSIRT3、CARS2、SQRはミトコンドリアに存在する酵素であり、特にCARS2、SQRは、GSH合成や硫化水素代謝酵素であり、これらの酵素の発現上昇は、電子伝達系からATP合成能の増加の可能性もある。ヒトの運動後の末梢血単核球のミトホルミシス現象は、ヒト培養単核球であるTHP1を、低酸素から再酸素添加状態でも同じ結果が得られることから、運動による末梢血単核球細胞の抗酸化酵素上昇発現は、筋肉だけの現象ではなく、運動により末梢血細胞を含む全組織細胞が、低酸素後の再酸素化(虚血再還流)でミトコンドリアが活性化され、誘導されることを示した。
<BR>
末梢血単核球のSOD2mRNAと運動習慣と関連性を検証するため、岡山県で最も企業健診受診者の多い健診機関である淳風会で企業健診受診者約400名を対象に行い、横断研究で、現在解析中である。 -
Rothia mucilaginosa感染症の病因解明と感染コントロール法の確立
研究課題/領域番号:18K09613 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前田 博史, 辻 則正, 高柴 正悟, 曽我 賢彦
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
Rothia mucilaginosaの根管内感染分布状態を調べ、根尖性歯周炎の病態との関連性について検討した。臨床サンプルの採取は大阪歯科大学医の倫理委員会の承認のもと(大歯医倫 第110972号)、指針に従って実施した。
根管細菌サンプルを200名の患者から採取した。採取したサンプルからDNAを抽出し、PCR法を用いて、R. mucilaginosa, R. aeria,ならびにR. dentocariosaの根管内分布を調べた。その結果、R. mucilaginosaは24.5%、R. aeriaは47.5%、そしてR. dentocariosaは27.5%の割合で感染根管内に分布していることが明らかとなった。
根尖部歯肉に腫脹を認める場合のR. mucilaginosaの検出頻度は42.9%であり、症状との関連性が認められた。同様に根尖部にエックス線透過像が存在する場合、ならびに打診痛が認められる場合のR. aeriaの検出頻度は、58.1%ならびに56.7%であり、R. aeriaの分布とそれぞれの臨床所見に関連性があった。さらにR.aeriaが検出された場合には、何等かの炎症所見が患歯に認められることが、統計学的有意差をもって示された。
Rothia種は、造血幹細胞移植患者をはじめとする易感染性宿主の全身感染症起因菌としての報告が相次いでいる。本研究結果は、日本人の感染根管内に比較的高頻度にRothia種が分布していることを示すものであり、感染根管が、易感染性宿主においてはRothia感染症の感染巣となるリスクを示唆するものである。また、炎症所見との関連性が認められる結果は、根管内から歯周組織へ菌が移行していることを強く示唆するものである。 -
幹細胞ニッチの制御を目指したインテグリンペプチド療法の開発
研究課題/領域番号:18K09576 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
山本 直史, 小林 寛也, 山城 圭介, 高柴 正悟
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
組織再生のためには,増殖因子と細胞外基質との協調した相互作用によって規定される幹細胞の微小環境(幹細胞ニッチ)の構築が必須である。我々は,幹細胞ニッチの制御能を有するインテグリンα3阻害ペプチド(α325)を用いて,α325/増殖因子含有ゲルによる創傷治癒・組織再生促進効果を本年度に調べた。
1)抜歯窩モデルにおける組織再生効果
再生骨量の定量性高いマウス抜歯窩モデル(Aoyagi et al, J Cell Biochem, 2018)を用いて,骨再生のためのα325の有効濃度を探索した。担体として,昨年度の検証結果から,既報(Nakamura et al, J Periodontol, 2019)に従いコラーゲンパウダー(CP)を用いた。CPはin vivo実験における操作性,滞留性は非常良好であったが,残留CPによる抜歯窩の治癒阻害が散見された。これはマウス抜歯窩の治癒速度がCPの吸収速度を上回るためと考えられた。
2)ラット骨欠損モデルにおける組織再生効果
上記Nakamuraらの方法に従ってラット骨欠損モデルを作製し,α325/増殖因子含有CPによる創傷治癒・組織再生促進効果を調べた。α325填入後8週において,α325はCPのみと比較して歯槽骨量を有意に増加し(1.31倍),それはFGF-2の効果(1.21倍)と同程度であった。また,α325とFGF-2を混合添加すると,さらに骨量は増加した(1.50倍)。すなわち,α325は創傷治癒・組織再生促進効果を有し,さらに増殖因子との併用が有効である可能性が示された。 -
越境性大気中PM2.5結合ヒトアルブミンの生体影響とその予防法の開発
研究課題/領域番号:18H03039 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
荻野 景規, 尾長谷 靖, 菅沼 成文, 栄徳 勝光, 荻野 学芳, 荻野 志穂奈, 市村 宏, 長岡 憲次郎, 高柴 正悟, 伊藤 達男, 早川 和一, 中村 裕之, 上原 孝, 浜田 博喜, 岡野 光博, 江口 依里, 竹本 圭
配分額:12870000円 ( 直接経費:9900000円 、 間接経費:2970000円 )
大気中PM2.5にヒトアルブミンが結合していることを発見し、ヒトアルブミン抗体を用いた免疫学的手法及びプロテオーム解析で証明してきた。しかしながら、プロテオーム解析では、ヒトアルブミンはヒト試料の混入としてとらえられることが多く、データの確信を得るため、さらなる検証を進めた。PM粒子からタンパク質を抽出し、ヒトアルブミンに対する特異抗体でさらに抽出し、アミノ酸に分解して、3-ニトロチロシンを検出することが出来た。このことは、PM2.5に結合したヒトアルブミンが、大気中に浮遊する過程で、オゾンや二酸化窒素等の大気環境物質との反応したものであり、実験の過程で混入したものではないことを証明できた。一方、PM2.5の気管支上皮細胞への影響評価を、培養気管支上皮細胞でおこない、毒性の評価に使用されるLDHやWST-8では、PM2.5は、LDH及びWST-8の反応を阻害することがわかり、PM2.5が直接電子伝達を傷害している可能性が認められた。PM2.5がヒトアルブミンを添加することによりミトコンドリアに局在する抗酸化酵素SOD2のmRNAを有意に発現上昇する現象をすでに認めており、追加実験で、活性酸素の上昇、ミトコンドリアの障害をみとめたことより、PM2.5とヒトアルブミンの共添加は、細胞内ミトコンドリアの電子伝達系を阻害している可能性が示唆された。さらに、PM2.5とヒトアルブミンの共添加によるSOD2 の発現上昇は、クラスリン依存性エンドサイトーシスの重要な因子であるAP2A1のsiRNA添加により抑制され、カベオリンのsiRNAでは、抑制されなかった。すなわち、PM2.5は、クラスリン依存性エンドサイトーシスにより細胞内へ侵入していることが判明し、PM2.5の細胞内侵入機序が明らかとなった。
-
Inflamm-agingを中心とした歯周病,サルコペニア,糖尿病の病態解明
研究課題/領域番号:18K09598 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
小林 寛也, 山本 直史, 山城 圭介, 高柴 正悟
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
サルコペニア予防は高齢者の要介護度を低下させるために重要な課題である。近年,炎症性老化の概念が提唱され,全身の慢性炎症が骨格筋の筋衛星細胞の分化能を障害し,サルコペニアを発症することが示唆されている。歯周病は口腔常在細菌の感染で生じる慢性炎症性疾患であり,加齢に伴う免疫機能低下により進行する。歯周炎症によって産生される炎症性サイトカインは,全身の慢性炎症を惹起し,肺炎や糖尿病などの悪化に繋がることが明らかになっている。また,サルコペニアによる骨格筋量の減少がインスリン抵抗性に繋がることから,歯周病由来の慢性炎症はサルコペニアの進展,糖尿病の悪化と負のスパイラルを形成している可能性がある。
そこで本研究の目的は,歯周病原細菌の感染により惹起される慢性炎症が,筋組織の治癒過程,インスリン抵抗性に及ぼす影響とその制御メカニズムの一端を,老齢マウスを用いた歯周炎モデルにおいて明らかにすることである。平成31年度に行った研究成果は以下の通りである。
①老齢歯周炎モデルマウスの安定的作製を実現した。
②モデルマウスから血清を採取し,Bio-Plexマルチプレックスによって炎症性サイトカインを網羅的に解析し,歯周炎や糖尿病の有無での発現パターンを比較した。その結果,いくつかのサイトカインの挙動に変化が生じていることを確認した。
今後は,各種組織(筋,血管,骨,関節など)の再生・治癒に炎症性サイトカインが与える影響を免疫学的および組織学的手法を用いて調べていく。 -
抗炎症性低分子化合物terreinおよびその類縁体の歯内歯周疾患治療への応用
研究課題/領域番号:16K11549 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大森 一弘, 中山 真彰, 高柴 正悟, 萬代 大樹
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究では,抗炎症性低分子化合物terreinの炎症性骨吸収疾患(特に歯内・歯周疾患)に対する治療薬としての可能性を検討した。 その研究成果として,①新規terrein類縁体の合成に成功,破骨細胞分化抑制効果を確認した,②terreinの細胞内標的分子の一つとしてJAK1のタンパク質リン酸化を抑制することを確認した,③絹糸結紮歯周病マウスモデルにおいてterreinを腹腔投与すると有意に歯槽骨の吸収を抑制することを確認,炎症性細胞の上皮下への浸潤を抑制することを確認した。以上の結果から,低分子化合物terreinの歯内歯周疾患治療薬として応用できる可能性が示唆された。
-
研究課題/領域番号:16K20670 2016年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
山城 圭介, 青柳 浩明, 井手口 英隆, 高知 信介, 山本 直史, 高柴 正悟, 和氣 秀徳, 西堀 正洋
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
High mobility group box 1(HMGB1)は,DNA結合タンパク質であるが,組織の損傷や壊死によって細胞外へ分泌された場合,炎症メディエーターとして機能する。HMGB1が歯周炎の進行にどのように影響を及ぼすか,その詳細なメカニズムは未だ明らかになっていない。本研究の結果,炎症刺激により歯肉上皮細胞,マクロファージ様細胞からHMGB1が産生されることが明らかとなった。また,歯周炎モデルマウスに抗HMGB1抗体を投与することで,歯周炎による炎症は抑制される。その結果,好中球の遊走,IL-1βの産生などが抑制され,歯周炎による骨吸収が抑制されることが明らかとなった。
-
ペプチド核酸を応用した選択的細菌抑制による微生物叢コントロール法の確立
研究課題/領域番号:15K11404 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前田 博史, 苔口 進, 高柴 正悟, 北松 瑞生
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
本研究の目的はアンチセンスPNAを口腔微生物に対して応用し,特定細菌種の増殖抑制を行うことである。歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis、ならびにAggregatibacter actinomycetemcomitansのHSP遺伝子ならびにAcpP遺伝子を標的としてアンチセンスPNAを設計・合成し、増殖抑制効果を調べた。結果、P. gingivalisに対しては、両遺伝子を標的としたアンチセンスPNAによって、増殖を効果的に抑制することができた。A. actinomycetemcomitansに対しては、PNAによる顕著な増殖抑制効果はみられなかった。
-
根尖性歯周炎等の口腔内感染巣に由来する「歯性好中球減少性発熱」の概念の確立
研究課題/領域番号:26462881 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
曽我 賢彦, 前田 嘉信, 室 美里, 樋口 智子, 奥井 明美, 片岡 広太, 江國 大輔, 谷本 光音, 飯田 征二, 森田 学, 松田 友里, 川村 夢乃, 安岡 利香, 武田 悠理子, 三島 美鈴, 片山 朋子, 小野 佳子, 高橋 郁名代, 近藤 英生, 藤井 伸治, 峠 亜也香, 佐藤 公麿, 藤井 友利江, 宮岡 満奈, 向井 麻里子, 兒玉 由佳, 竹本 奈奈, 高柴 正悟, 森 毅彦, 細川 亮一, 那須 淳一郎, 松原 稔, 三浦 公, 神崎 洋光, 岡田 裕之, 山本 和秀, 杉浦 裕子
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
1)歯性感染と好中球減少性発熱の関連を明らかにした。智歯周囲炎も好中球減少性発熱に関与することが明らかとなった。
2)濃厚な抗菌剤治療を行っている患者においては口腔粘膜上細菌叢が通常の口腔内細菌叢と全く異なり,口腔粘膜障害は普段想像し得ない菌種の感染門戸になっていることを明らかにした。細菌叢の変化が口腔粘膜障害の増悪に関係し,感染経路が形成されることで好中球減少性発熱を呈する可能性を示唆した。
3)心内膜炎の一症例を対象に起炎菌と口腔内細菌の同一性について遺伝子レベルで証明した。口腔内感染巣との関連が重要視される感染性心内膜炎を対象にして,口腔内の感染管理の重要性を示す成果を得た。 -
インテグリンの活性制御による歯周組織幹細胞の遊走促進:分子リガンド創製への展開
研究課題/領域番号:26463134 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
山本 直史, 高柴 正悟, 畑中 加珠, 下江 正幸
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
歯根膜細胞は,結合組織付着によるメカニカルな防御機能に加えて,多分化能を有する幹細胞としての機能を有することから,歯根膜細胞の欠損部位への遊走は歯周組織の恒常性維持や再生に重要な役割を果たす。本研究で,Integrin α3は歯根膜細胞の遊走を抑制し,integrin α5は遊走を促進することが明らかになった。とりわけ,integrin α3阻害剤が歯根膜細胞の遊走促進に有効であることが分かった。
-
歯周炎・糖尿病・リウマチの共通リスクサイトカイン遺伝子の解明
研究課題/領域番号:25253104 2013年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
吉江 弘正, 高柴 正悟, 永田 俊彦, 三谷 章雄, 石原 裕一, 小林 哲夫, 木戸 淳一, 大森 一弘, 前田 博史, 野口 俊英
配分額:44980000円 ( 直接経費:34600000円 、 間接経費:10380000円 )
本研究の目的は、歯周炎、糖尿病(DM)、関節リウマチ(RA)の共通リスクサイトカイン遺伝子を特定することである。慢性歯周炎(CP)併発RA185名、CP併発2型DM 149名、CP 251名、健常130名を対象に17遺伝子多型を解析した結果、2つの多型(KCNQ1 rs2237892、PADI4_104 rs174803)がCP・RA併発に有意に関連した。また、CP併発RA群ではCP非併発RA群と比べ環状シトルリン化ペプチドに対する血清抗体価が高い傾向にあることを認めた。以上から、KCNQ1とPADI4が日本人のRA・CPの共通リスク遺伝子となる可能性が示唆された。
-
唾液腺体性幹細胞とiPS細胞を用いた唾液腺機能再生に関する研究
研究課題/領域番号:25463217 2013年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
峯柴 淳二, 大森 一弘, 山本 直史, 高柴 正悟
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
【研究の目的】唾液は,口腔感染制御を含めて口腔内環境を保つ重要な働きを持つ。しかし唾液を分泌する唾液腺は,自己再生能が低く,障害後の機能回復は難しい。我々は,CD49F+細胞がin vitroではINHIBIN βA,INHIBIN βB,FOLLISTATINを発現することを報告している。INHIBINのβ鎖はホモ二量体を構成し,ACTIVIN分子と成る。一方FOLLISTATINは,ACTIVINに特異的に結合し,その受容体への結合を阻害する。本研究は,マウス顎下腺の主排泄導管を結紮後に解除すると顎下腺が再生することを利用し,in vivoにおいて唾液腺組織再生中のCD49F,INHIBIN βA,INHIBIN βB,そしてFOLLISTATINの発現局在の解明を目的とした。
【研究実施計画および結果】
マウス顎下腺の片側の排泄導管を血管結紮用クリップで結紮,他方は対照とし,6日後に結紮を解除した。結紮解除1,2,4,8,16日後の顎下腺を摘出し,パラフィン包埋切片作製の後,INHIBIN βA,INHIBIN βB,CD49FそしてFOLLISTATINの局在を免疫組織染色法で検討した。その結果,結紮解除後のどの日数でもINHIBIN βAは染色されず,INHIBIN βBとCD49fは染色された。また,結紮解除後8日目にはFOLLISTATINが染色された。さらに連続切片上で,CD49F,INHIBIN βB,そしてFOLLISTATINが同部位で染色された。以上から,結紮解除後8日目以降の唾液腺組織再生に,CD49F+細胞でのactivin-follistatin相互作用の関与を想定できる。
以上から本研究を行った結果,マウス顎下腺主排泄導管結紮解除後8日目の導管上皮細胞で,CD49F,INHIBIN βB,FOLLISTATINが発現していることが解明された。 -
研究課題/領域番号:24659925 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
前田 博史, 高柴 正悟, 苔口 進, 北松 瑞生, 山城 圭介, 峯柴 史, 磯島 大地
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
本課題はキャリアーペプチドを付加したペプチド核酸を歯周病原細菌に対するアンチセンス核酸として設計し、歯周病原細菌に対する抗菌薬として応用するための基礎研究である。今回、キャリアーペプチドの設計と細菌への導入効率を解析した。キャリアーペプチドの配列は既報のアミノ酸配列を参考として、合計64種類を合成した。
ペプチドには蛍光標識を行い、歯周病原細菌P. gingivalis,、A. actinomycetemcomitans、ならびに大腸菌への導入効率を評価した。その結果、Tmr-KFFKFFKFFK-NH2の配列を持つペプチドが高効率にP. gingivalisに導入されることが明らかとなった。 -
歯周病原細菌の感染と歯科インプラントの安全性に関するコホート研究
研究課題/領域番号:24659924 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
高柴 正悟
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
口腔細菌感染症への配慮が少ない中で口腔インプラント治療が行われている状況が多い。そのため,潜在性の口腔感染(歯周病等)が口腔インプラント治療の予後に与える影響は大きいものと考えられる。
このことを明らかにするための臨床研究案を策定した。「歯周病原性菌に対する血漿IgG抗体価検査を取り入れた口腔インプラント施術前後10年間にわたる感染評価」という研究案を作成し,口腔細菌叢変化の包括的検討法も樹立した。 -
口腔内感染度からみたビスフォスフォネート系製剤関連顎骨壊死の予防システムの構築
研究課題/領域番号:23593058 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
畑中 加珠, 高柴 正悟, 山本 直史, 山城 圭介
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
がんの骨転移などの治療に使用されるビスフォスフォネート(BP)製剤の投与を受けている患者において、顎骨壊死(ONJ)が発生するという事象が報告されている。岡山大学病院では、腫瘍センターに歯科衛生士を配置し、口腔内のトラブルの実態を調査した。その結果、年々腫瘍センター利用患者および歯科衛生士の面談件数は増えており、3年間で新たに6件のONJを見つけることができた。当院歯周科および口腔外科にてフォローしている。また、他の化学療法患者に口内炎の訴えがある患者が多く見られた。
-
研究課題/領域番号:23659977 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
山本 直史, 高柴 正悟, 畑中 加珠, 山城 圭介, 山口 知子
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
生細胞の細胞周期の進行をリアルタイムで識別できるトランスジェニックマウス(Fucciマウス)は、歯周組織での時空的な細胞周期の動態を解析するための重要なツールであり,特に未分化な細胞と歯肉上皮の細胞周期の可視化に有用である。これを応用したFucciマウスの歯周病モデルの分子イメージング結果から,歯周組織の炎症期に活性化好中球が産生する一連の活性酵素が,歯周組織構成細胞の細胞周期をG1期で停止させる可能性が示唆された。
-
2011年 - 2012年
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 探索タイプ
高柴 正悟
本研究では、岡山県の特産品で安価に原料供給を受けることが出来るマッシュルームの石づき(廃棄部分)を原材料として、細菌バイオフィルムを抑制するレクチンの応用に関して、1安価で安定した大量抽出技術を確立し、2抽出物がStreptococcus mutans(S. mutans)以外のう蝕原因菌等の口腔細菌のバイオフィルム形成に対する抑制効果を検討して、本製法で得たレクチンを用いた口腔ケア剤がコスト的にも有効性においても実用的であることを検証する。本年度の研究では、マッシュルーム石づきからレクチン含有エキス製造法の確立を目標として開発研究を進めてきた。評価方法としては、赤血球凝集測定によって抽出物のレクチン活性を評価した。現段階では目標値にほぼ達する行程を確立することができており、今後バイオフィルム抑制効果および他菌種への検討へと移行する。
-
前立腺癌の臓器転移に及ぼす歯周感染病巣の影響に関する基礎的研究
研究課題/領域番号:22592312 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
谷本 一郎, 渡部 昌実, 成石 浩司, 峯柴 淳二, 大森 一弘, 高柴 正悟
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
歯周病という慢性炎症において局所で繰り返す細菌感染は,感染局所と全身において,全く逆の生体反応をもたらすことがわかった。微細な感染を繰り返すことは,たとえば敗血症になるような多量の細菌感染から,あらかじめ全身を守ることにつながっていると考えられる。慢性炎症がもたらす全身的な生体反応制御が,感染以外のがん転移という侵襲に対しても影響を及ぼしているかもしれない。
-
歯肉上皮細胞における増殖因子による細胞接着因子制御のメカニズムの分子生物学的解明
研究課題/領域番号:22890119 2010年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援
山城 圭介, 山本 直史, 高柴 正悟
配分額:2977000円 ( 直接経費:2290000円 、 間接経費:687000円 )
歯周病は歯周病原細菌の感染が原因で起こる慢性炎症で,日本人の約8割が罹患していると言われており,歯の喪失のもっとも大きな原因である。しかし個人差による進行の程度などわからないことも多い。歯肉上皮と歯が接着することは細菌感染に対しての物理的バリアとなっており,接着を強固にすることは歯周病の予防に大変重要であると考えられる。本研究では,歯肉上皮細胞が産生する増殖因子が,細胞接着を制御していると仮説を立てそのメカニズムを調べたものである。
-
遷延する慢性感染が慢性閉塞性肺疾患の免疫応答に与える影響とその機序の解明
研究課題/領域番号:21590964 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
室 繁郎, 伊藤 功朗, 成石 浩司, 佐藤 晋, 高柴 正悟, 三嶋 理晃, 伊藤 功朗, 黄瀬 大輔, 星野 勇馬, 小川 恵美子
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
93名のCOPD患者の観察研究の結果、安定期の測定した歯周病抗体価の高値は、COPD増悪頻度に抑制的に関連するという、予想とは反対の結果を得た。血清中のIL-4とIL-7の濃度は、歯周病抗体価の陰性群で、歯周病抗体価陽性群に比して高値であるという結果であり、抗体産生能力と、液性免疫に関連するサイトカインが増悪の有無に関連する可能性が示唆された。また、肺気腫は増悪を経験することによって進行することが明らかとなった。
-
古細菌シャペロニン分子の交差反応性と歯周病ならびに自己免疫疾患への関与
研究課題/領域番号:21592624 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前田 博史, 高柴 正悟, 苔口 進, 谷本 一郎
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
歯周病は口腔内細菌の感染によって発症する疾患である。ところが近年、細菌とは異なる微生物の古細菌が歯周病の原因となるが報告された。古細菌はヒトのシャペロニンと類似した蛋白質を保有している。このため、この分子に対する免疫応答が誘導された場合には、自己のシャペロニンが免疫応答の標的となり、自己免疫応答が誘導される可能性が高い。本研究では、歯周病患者と自己免疫疾患患者のシャペロニンに対する応答性を解析し、シャペロニンに対する自己免疫応答が誘導されている可能性を示した。
-
RhoAによる細胞分化機構を応用した歯根膜細胞移植治療のための基礎的研究
研究課題/領域番号:20592429 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
山本 直史, 高柴 正悟, 峯柴 淳二, 山城 圭介, 成石 浩司, 塩見 信行, 園山 亘
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化過程は、RhoA-ROCKシグナルが制御する細胞骨格の性状に依存的であり、その細胞骨格はBMP-4やWnt3aおよびWnt5aなどの硬組織分化に関与する遺伝子発現を制御すると考えられる。一方、RhoAおよびROCKを過剰発現した歯根膜細胞は著しい細胞増殖能の低下を示したことから、歯根膜細胞の分化は、細胞骨格の性状に加えて、種々の増殖因子や細胞外基質の協調制御が重要であると考えられる。
-
MMP-3を標的とした糖尿病患者における歯周病悪化メカニズムの分子生物学的解明
研究課題/領域番号:20592428 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
成石 浩司, 畑中 加珠, 高柴 正悟, 峯柴 淳二, 大森 一弘, 塩見 信行
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
糖尿病患者の歯周病が重篤化することが知られる。本研究において,高血糖状態で培養した歯肉線維芽細胞のMMP-3産生量は有意に増加した。しかし,sIL-6Rの産生性は著明に亢進しなかった。さらにTHP-1細胞において,MMP-3阻害剤の添加によってsIL-6Rの産生量が有意に抑制された。以上の事から,MMP-3産生の亢進が糖尿病患者における歯周病悪化を誘導する可能性が示唆された。さらにMMP-3がTHP-1細胞のsIL-6R産生性を亢進させることを考え合わせて,糖尿病患者における歯周病の悪化メカニズムには,歯肉線維芽細胞とマクロファージの相互作用にIL-6シグナル伝達系が関与する可能性が示唆された。
-
ラット根管治療モデルを用いたラミニンγ2発現動態からみた根尖病巣治癒メカニズム
研究課題/領域番号:20592226 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
畑中 加珠, 山本 直史, 高柴 正悟, 下江 正幸, 山口 知子, 成石 浩司, 加古 綾
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
根尖性歯周炎(根尖周囲に骨吸収をきたす炎症性疾患)の治癒過程において遺伝子発現の亢進を報告した細胞外基質ラミニンおよび炎症性サイトカインIL-1αを中心に、骨再生を担う骨芽細胞に対するこれら分子の効果を検討した。IL-1αは骨芽細胞のインテグリンα3発現を亢進し、また、骨芽細胞のラミニンに対する細胞接着性を亢進させたという結果は、根尖病巣の治癒期に病巣部への骨芽細胞の誘導・定着を示唆するものである。
-
付着歯肉の分化に関連した特異的遺伝子・蛋白の同定とその機能解析
研究課題/領域番号:19659507 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
窪木 拓男, 高柴 正悟, 園山 亘, 滝川 正春
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
1.付着歯肉組織と遊離歯肉組織の遺伝子発現解析
前年度のマウスならびにラット歯肉組織の組織学的検討をもとにして,成体マウスの口腔内から実態顕微鏡下で付着歯肉と遊離歯肉をそれぞれ採取した、この組織からmRNAを抽出し,cDNAマイクロアレイを行い,両者の遺伝子発現を比較・検討した.
その結果,付着歯肉で発現量の高い遺伝子として,mmp12, integrin(alpha6), laminin(beta3), HIF-1a, VEGF, tenomodulin, collagen(typeV, alpha2), integrin(beta4)などが抽出された.一方,遊離歯肉で発現量の高い遺伝子としてIGFBP2, RABL3(member of RAS oncogene family-like3), RASA3(RAS p21 protein activator3), elastinなどが抽出された.既知の発現パターンと機能から考察するといくつかの遺伝子はたいへん興味深い研究対象と考えられた.
2,ヒト歯肉上皮細胞の培養
倫理委員会の許可を得て,抜歯時に得られたヒト歯肉サンプルから歯肉上皮細胞を分離し,同時に得た歯原性上皮細胞とその差異を比較,検討した.
その結果,歯肉上皮細胞は培養条件下では寿命が短く,cumulative population doubling(cPD)は平均8であった。一方,歯原性上皮細胞は平均16のcPDを示した.また,両者ともに上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン14とE-cadherinを遺伝子レベルで発現していたが,amelogeninの発現は歯肉上皮細胞では認めなかった.すなわち,歯肉上皮細胞は歯原性上皮細胞と比較して,明らかに異なるフェノタイプを有していることを明らかにした. -
歯周病細菌の発現する非翻訳RNA遺伝子の網羅的クローニングと機能解析
研究課題/領域番号:19592387 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前田 博史, 高柴 正悟, 新井 英雄, 谷本 一郎, 曽我 賢彦
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
歯周病の原因となる細菌(歯周病細菌)における、非翻訳RNAの役割を解析することを目的として、以下の研究成果を得た。(1) 歯周病細菌Aggregatibacter actinomycetetemcomitansに大腸菌と類似した非翻訳RNAが発現していることを示した。(2) A. actinomycetemcomitansからRNAシャペロンを同定し、クローニングした。(3) RNAシャペロンを介した非翻訳RNAによる遺伝子発現調節機構がA. actinomycetemcomitansに存在する可能性を示した。(4)歯周病の病態には細菌だけでなく古細菌種が関与しており、その解析の必要性を示した。
-
研究課題/領域番号:19592201 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
谷本 一郎, 塩見 信行, 成石 浩司, 高柴 正悟, 前田 博史
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
口腔内の二大感染症であるう蝕と歯周病を効果的に予防するため, 歯面にとどまる殺菌剤と新規担体の組み合わせを開発した。塩化セチルピリジニウム(CPC)とリン酸化プルランの混合物は, リン酸化アパタイト表面に吸着し, う蝕原性細菌・歯周病原細菌に対して抗菌作用を発揮することが明らかになった。新規物質であるリン酸化プルランの安全性をラットの肝臓で確かめ, 為害性が少ない物質であることを確認した。
-
歯髄・根尖部歯周組織の創傷治癒メカニズムの解明と再生療法への応用
研究課題/領域番号:18209057 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
吉嶺 嘉人, 北村 知昭, 柴 秀樹, 川島 伸之, 徳田 雅行, 高柴 正悟, 前田 勝正, 横瀬 敏志, 庄司 茂, 斎藤 隆史, 國末 和司
配分額:45110000円 ( 直接経費:34700000円 、 間接経費:10410000円 )
歯の神経(歯髄)や根の先の周りの骨(根尖部歯周組織)に異常が生じる疾患において、これらの傷害が治癒するメカニズムを詳細に調べることで、従来とは異なる新しい治療法の確立に向けた包括的な研究を試みた。その結果、歯髄・象牙質・骨組織の再生への足がかりとなるデータを多く得ることができた。今後更に研究を発展させることで、臨床応用の可能な治療法の開発へと繋がるものと期待される。
-
マイクロバブルを用いた口腔嫌気性菌除去方法の検討
研究課題/領域番号:18659623 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
高柴 正悟, 谷本 一郎, 前田 博史
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
平成19年度の研究課題に関する研究実績は以下のとおりである。
1.マイクロバブル濃度の測定とバブル径の測定
平成18年度の研究では,市販のマイクロバブル水にはほとんど抗菌性のないことが明らかとなった。原因としては,マイクロバブル濃度が低いこと,そしてバブルの径が大きくマイクロバブルとしての作用が発現していないことが考えられた。このため,高速ビデオ撮影装置を応用して,バブル発生状況を調べた。その結果,市販の装置では直径がナノメーターあるいはマイクロメーターレベルのバブルはほとんど発生していないことが明らかとなった。そこで,本学工学部(柳瀬眞一郎)に依頼し,工学部で開発されたマイクロバブル発生装置を用いて,以下の抗菌試験と,ヒト細胞への影響について調べた。
2.歯周病細菌に対する抗菌試験
歯周病細菌Porphyromonas gingivalisを対数増殖期まで培養し,培養液5ccに対して1ccのマイクロバブル水を添加し,その後の菌増殖を培養液の吸光度で評価した。その結果,菌増殖はコントロール(蒸留水)とマクロバブル水の間で差がなく,マイクロバブル水にはほとんど抗菌性のないことが示された。
3.ヒト細胞への影響
ヒト上皮系細胞(HeLa)と単球系細胞(THP-1)の培養液中にマイクロバブル水を添加して,2時間細胞を培養した。その後,細胞を回収して,マイクロバブルが細胞のサイトカインならびに増殖因子発現に与える影響をプロテインアレイ法で解析した。その結果,マイクロバブルを添加した細胞のサイトカインプロファイルと増殖因子プロファイルはコントロールと比較して変化がなく,マイクロバブルによる影響はないことが示唆された。
これらの結果はマイクロバブルによる短時間の刺激では、細菌や細胞へ与える影響がほとんどないことを示すものである。今後は洗浄効果(プラーク除去)を中心にマイクロバブルの口腔内応用を考えていく必要がある。 -
研究課題/領域番号:17209062 2005年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
窪木 拓男, 上田 実, 完山 学, 高柴 正悟, 辻 孝, 滝川 正春, 浅原 弘嗣, 土本 洋平, 園山 亘, 田川 陽一, 田川 陽一
配分額:48880000円 ( 直接経費:37600000円 、 間接経費:11280000円 )
マウスの歯の発生時に認められる遺伝子を検索し、従来報告のなかった28個の遺伝子を同定した。エナメル質形成細胞の成熟は、周囲に存在する細胞が制御していることを証明した。高脂血症治療薬(スタチン)は、象牙質の形成を促進し、歯科治療薬として応用しうることを示した。顎骨に存在する細胞は、手足の骨の細胞とは異なる性質を有していること、また、顎骨の再生促進に成長因子(結合組織成長因子、塩基性線維芽細胞増殖因子)が応用可能であることを確認した。
-
メタゲノム解析アプローチによる口腔バイオフィルム感染症研究の新展開
研究課題/領域番号:17390502 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
福井 一博, 苔口 進, 谷本 一郎, 高柴 正悟, 前田 博史, 狩山 玲子, 玉木 直文
配分額:16260000円 ( 直接経費:15300000円 、 間接経費:960000円 )
これまで口腔内細菌叢については培養法に基づいて研究されてきた。口腔内には700種以上の細菌の存在が推定されているが、培養法では約50%しか明らかにされていない。口腔内環境の理解には全細菌叢を知る必要があり、培養できない、まだ性状不明な細菌種も口腔疾患の病因に関与する可能性がある。
そこで我々はこの問題を解決する新しいアプローチとして細菌16SリボソームRNA遺伝子(16S rDNA)に基づくメタゲノム解析を考案した。本研究では様々な口腔内細菌叢の様態や構成や変化を培養法に依存しない分子生物学的方法によって調べた。すなわち、16SrDNAを指標に口腔内細菌叢を解析する方法としてクローンライブラリー法、PCR-DGGE法に加えて、T-RFLP法を確立し、研究を進めた。さらにPhilip S.Stewart教授(モンタナ州立大学Center for Biofilm Engineering)の支援のもと、改良キャピラリーフローセルと共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いてバイオフィルム形成過程や阻害過程を高解像度でリアルタイムに三次元的に解析できる実験系を確立した。
まず、口臭を主訴とする患者の膿栓試料の細菌叢についてクローンライブラリー法で16S rDNA塩基配列(約600bp)を分析した結果、口臭原因物質である含硫黄化合物を産生するFusobacterium種などの嫌気性細菌や未知の細菌群を同定した。
またPCR-DGGE法解析によってProfessional toothbrushingは歯肉縁下プラーク中の歯周病細菌群を減少させ、細菌叢を劇的に変化させることが判った。
さらに、日本の歯周病患者では深い歯周ポケットの重度な歯周炎病巣ほどメタン産生古細菌の検出割合が高く、一方化学療法前後における造血幹細胞移植患者では、病原細菌や日和見感染菌などが口腔内に出現し、細菌叢が劇的に変動することも判った。 -
創傷歯髄から単離した新しい遺伝子FIP-2の象牙質・歯髄複合体形成への関わり
研究課題/領域番号:17591991 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
新井 英雄, 高柴 正悟, 西村 英紀, 成石 浩司, 谷本 一郎, 前田 博史
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
象牙質・歯髄複合体の形成は重要な生態防御機能である。我々は,ラット創傷歯髄から単離した新規遺伝子FIP-2の発現動態と細胞死への影響を調べた。
In situハイブリダイゼーション法によって,FIP-2A/Bがそれぞれ特異的な発現局在を示したため,プロモーターの制御機構を調べた。RACE法によって2.2-kbと1.5-kbの断片をそれぞれのプロモーター領域として単離し,プロモーターアッセイによって,FIP-2Aの転写は-1,570〜-1,270領域が,FIP-2Bの転写は-895〜-595領域が最も促進すること,さらにFIP-2Bの転写活性がより高いことを明らかにした。これらプロモーター領域とFIP-2A/B cDNAを含む発現ベクターをラット腎臓細胞に遺伝子導入し,FIP-2A/Bの細胞内局在を免疫染色法にて調べた。FIP-2Aは細胞質に疎らに発現する一方で,FIP-2Bは細胞質のゴルジ小体に機能的に局在することが分かった。すなわち,創傷歯髄で強く発現するFIP-2Bは,選択的プロモーターによって転写が調整され,細胞機能に重要な役割を果たす可能性が示唆された。
ラット歯髄由来細胞株におけるFIP-2B発現は,ウエスタンブロット法によって,tumor necrosis factor(TNF)-αでc-jun N-terminal kinase依存的に誘導されること,さらに過酸化水素による細胞死誘導刺激時,翻訳後修飾を示唆する分子量の増加を伴うことを確認した。この時,FIP-2Bが核内移行することを免疫染色法にて確認した。すなわち,歯髄炎症の過程で,FIP-2Bはリン酸化などの修飾を受け核内に移行し,細胞死制御因子の転写を促進的に調節している可能性がある。
以上の結果から,歯髄炎症時,FIP-2Bは選択的プロモーターを介し,TNF-αによって誘導され,細胞死を制御する可能性がある。 -
カテプシン-Lプロモーターの薬剤応答配列を標的とした歯肉増殖症の治療法開発
研究課題/領域番号:17659657 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
西村 英紀, 高柴 正悟, 畑中 加珠, 小柳津 功介
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
薬物性宙肉増殖症の病巣局所には細胞外基質が多量に蓄積し、病変歯肉組織は高度に線維化している。申請者らは過去に、本疾患を惹起する3種類の薬剤すべてが歯肉線維芽細胞においてライソゾーム酵素カテプシンーLの活性を遺伝子の転写レベルで抑制することを報告した(Nishimura F et al.,Am J Pathol,2002)。カテプシンーLは炎症性サイトカインーIL-6やMCP-1によってその遺伝子発現が調節されていると言われている。そこで、歯肉線維芽細胞においてIL-6やMCP-1を発現'させるモデルとしてHLAクラスII抗原を介した刺激を用い、これらサイトカインの調節機構を明らかにした。歯肉線維芽細胞上のHLAクラスII抗原はfocal adhesion kinase(FAK)と会合しており、HLAクラズII抗原を介した刺激でFAKがリン酸化を受け、IL-6やMCP-1が産生されることを明らかにした。FAKのリン酸化を特異的に阻害するといわれるルテオリンを作用させると、FAKのリン酸化が濃度依存性に抑制されるとともに、 HLAクラスII抗原を介した刺激によって誘導されるIL-6やMCP-1の産生量が低下した。これらのことからルテオリンによる歯肉線維芽細胞中のFAKリン酸化阻害作用が、梅肉増殖症惹起薬剤の作用と類似の効果を及ぼすことで結果的にカテプシンーL活性が抑制され、細胞外基質が蓄積する可能性が示唆された。これら3種類の薬剤はいずれも細胞内へのカルシウムイオンの流入を阻害することが知られている。今後、ルテオリンによるFAKリン酸化阻害作用がカルシウムイオンの流入阻害を介したものかどかを確認する必要がある。
-
歯周病細菌に対する血清抗体価測定法の標準化に関する調査研究
研究課題/領域番号:17639021 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高柴 正悟, 永田 俊彦, 安孫子 宣光, 山崎 和久, 長澤 敏行, 日野 孝宗
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
採血および検査方法の改善,標準化したデータベースの作成,臨床的に有効である根拠の探求を,基礎科学的問題,臨床的および社会的問題,産学官連携上の問題の観点から,6人の研究者が担当して,これらを組み合わせて9つの観点から検討した。
大規模臨床研究を実施する体制を,日本歯周病学会でのWGを中心に産学官の連携が成り立つように作成した。なお,米国において口腔内細菌と歯周病の病状を虚血性心疾患の罹患と重症度の関連をみる大規模臨床研究を行っているノースカロライナ大学チャペルヒル校の状況を,研究体制の樹立のモデルとして用い,さらに,基礎的な研究を臨床研究に発展させて検査と治療法の開発を行っている国立衛生研究所顎顔面歯科部門(NIDCR)における研究の展開の仕方をモデルとして用いた。そのために,これらの施設において研修を受けた日本人研究者から資料収集を行い,研究遂行上の検討を行った。
さらに,抗原調製と供給の方法,抗体価測定キット開発,測定データの集計と配信方法に関して,共同開発を行うことが可能な企業(4社)を検索して,コンソーシアム設立の準備を行った。
これらの調整と相互の成果の報告のため,岡山大学において本研究班とコンソーシアム参加企業が集合して,班会議を開催した。この結果をもとに,研究代表者は,コンソーシアム参加企業の各社と,検査の実施上の技術的問題,データ解析の方法,検査の普及のための方策等,種々の問題点を検討した。
さらに,臨床検査関連の各種学会において,歯周病細菌に対する血清IgG抗体価の測定とその応用に関する歯科領域でのこれまでの成果を公表して,本検査の実施に際しての臨床検査学分野での問題点を洗い出した。
日本歯周病学会の研究委員会が主催する学会のワークショップにおいて途中までの成果を公表し,歯周病細菌に対する血清抗体価測定検査ために,本研究班を中心として基盤研究(A)を申請した。 -
歯周病の分子標的治療開発へのゲノミクス・プロテオミクス統合研究
研究課題/領域番号:16209063 2004年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
安孫子 宜光, 栗原 英見, 村上 伸也, 中山 浩次, 天野 敦夫, 高柴 正悟
配分額:49530000円 ( 直接経費:38100000円 、 間接経費:11430000円 )
パラサイト研究ゲノミクス研究:歯周病関連細菌P.gingivalisは、FimAのgenotype,I型33277株(中山)、II型TDC60株(安孫子)の全ゲノム塩基配列解読を行い、新たな病原因子検索ベース公開予定である。新規のP.gingivalisのジンジパイン分泌・輸送系システム(VIII型分泌機構)タンパク質分子を見いだした(中山)。一方で、T-RFLP法を用いた口腔内細菌叢解析システムを構築した(中野)。
ボスサイト研究トランスクリプトミクス研究:歯周病発症機序解明/治療をめざしたGeneChip解析を進めた。根尖性歯周炎治療モデルでの炎症治癒過程、機械的刺激を加えた歯根膜線維芽細胞、高血糖状態培養ヒト歯肉線維芽細胞の網羅的遺伝子解析(高柴)、歯周組織局所因子の骨髄由来間葉系幹細胞の分化に及ぼす影響(栗原)について解析した。幹細胞移植による歯周組織再生医療の確立を目指し、ヒト脂肪組織由来細胞の骨への分化能についてGeneChip解析を行い、脂肪組織由来未分化間葉系幹細胞の移植による歯周組織再生療法の開発を行った(村上)。さらに、組織再生を目指し、Odd-skipped遺伝子に関する研究(天野)を開始した。FGF2とフォルスコリンの同時刺激におけるBSP転写を検討した(小方)。P.gingivalis LPSが、マクロファージのIRAK-M発現を特異的に増強し、下流シグナル伝達を抑制するにとにより宿主細胞の低応答性に関与する可能性を示した(山崎)。
プロテオミクス研究:GeneChip,ProteinChipを用い、マラッセ上皮遺残由来細胞と歯肉上皮細胞の遺伝子発現およびサイトカイン/成長因子分泌のプロファイリングをおこなった(大島)。P.gingivalisのプロテオームデーターベースの構築を行った(安孫子、中野)。 -
自己組織化型アパタイト人工格子の創製と生体分子吸着特性制御
研究課題/領域番号:16360330 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
早川 聡, 尾坂 明義, 都留 寛治, 吉田 靖弘, 鈴木 一臣, 高柴 正悟
配分額:15000000円 ( 直接経費:15000000円 )
ヒドロキシアパタイト(HAp)格子内イオン置換によるタンパク質吸着特性の制御を追究するために,HApおよび炭酸含有ヒドロキシァパタイト(CHA)を合成した。長期透析患者の透析アミロイドーシス症の原因物質とされるβ_2-ミクログロブリン(β_2-MG)と必須タンパク質のモデルである牛血清アルブミン(BSA)を指標物質として用い,その混合タンパク質水溶液中でのβ_2-MGに対するCHAの高い選択吸着能を明らかにしだ。安定同位体<13>^Cをエンリッチした炭酸源を用いてナノ結晶性炭酸含有ヒドロキシアパタイト粉末を合成し,.その結晶格子構造中の炭酸イオン,リン酸イオン周囲の局所構造を固体二次元<13>^C{1^H},<31>^p{1^H}異種核相関(HetCor)MAS-NMR分光法で明らかにした。透過型電子顕微鏡観察の結果からHApよりもCHAの粒子サイズは僅かに減少し,合成中に炭酸イオンの添加によって,結晶成長が抑制されたと考えられる。<13>^C{1^H}HetCor MAS-NMRスペクトルの結果によると炭酸イオン周囲の局所構造には少なくとも4種類のサイトカが存在し,いずれもCO_3^<2->イオンの状態で存在しており,HCO_3噂イオンは観測されなかった。OHサイトには少なくとも2種類のサイトが存在することが明らかとなった。
亜鉛含有量の異なるヒドロキシアパタイトを合成し,β_2-MGと必須タンパク質のモデルである牛血清アルブミン(BSA)を指標物質に用い,その混合タンパク質水溶液中でのβ_2-MGに対する選択吸着能とヒドロキシアパタイトの組成,結晶子径,比表面積,微細構造の関係について考察した。亜鉛含有量が増加すると,結晶子径は低下して比表面積は増加した。亜鉛含有量が増加するに伴い,BSAの吸着率は6.0から2.3%に減少しβ_2-MGの吸着率は28から94%に急激に増加した.亜鉛イオンがタンパク質吸着能に及ぼす影響を調べるために,亜鉛イオンを含有する水溶液にHApを含浸することによって,HAp表面に亜鉛を導入したZn/HApを作製した。結晶性および粒子サイズをほとんど変えることなくHApに亜鉛を導入した。β_2-MGの吸着サイトは亜鉛とその周辺の表面化学構造であると予想され,HAp構成要素イオン(Ca^<2+>,PO_4-<3->,OH^-)の一部を金属及び陰イオン種で置換することによって病因タンパク質に対する吸着特性をさらに向上できる可能性が期待される。 -
根尖性歯周炎により破壊された歯周組織の治癒のメカニズムの解明と再生医療への応用
研究課題/領域番号:16209056 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
阿南 壽, 前田 勝正, 前田 英史, 島内 英俊, 高柴 正悟, 川島 伸之
配分額:47060000円 ( 直接経費:36200000円 、 間接経費:10860000円 )
根尖性歯周炎の進展にサイトカイン、骨吸収活性化因子RANKL神経系の関与を明らかにした(川島伸之)。根尖病変の治癒期においては、IL-1αを含む133の遺伝子の発現が亢進するとともに、defensin-α5を含む50の遺伝子の発現が低下することをを明らかにした(高柴正悟)。根尖性歯周炎罹患歯の根管治療開始時と根管充填直前では細菌叢は量的に減少するだけでなく、質的にも異なっていることを明らかにした(島内英俊)。イヌのデヒーセンスに増殖歯根膜組織を応用することにより、歯周組織欠損部における新生骨の形成およびセメント質の再生を認めた。(太田幹夫)。再生の足場として、ハイドロキシアパタイト線維を応用した新規の移植材を開発した(土倉康)。不死化ヒト歯根膜細胞を作製後、クローニングにより多化能を有したクローン細胞株を樹立した。また、NTAはヒト歯根膜細胞のオステオポンチンおよびオステオカルシンの遺伝子発現を促進し骨芽細胞様細胞への分化を誘導することを明らかにした(前田英史)。ヒト歯根膜細胞においてPGE2はEP2/EP4-cAMP依存的PKAカスケードを介してBMP-2依存的な骨芽細胞様分化の促進を助長することを明らかにした(小林誠)。FGF-2はヒト歯根膜細胞のグリコサミノグリカン産生を制御することを明らかにした(島袋善夫)。多血小板血漿(PRP)は破骨細胞の分化に抑制的に作用することを明らかにした(菊地寛高)。歯髄創傷部にエムドゲインゲルを投与することにより、早期にBMP-2およびBMP-4の発現が増加し新生硬組織の形成が認められることを明らかにした(前田勝正)。ラット根尖病変の治癒における骨組織の再生には、TGF-β1を発現した抗炎症性マクロファージの一時的な増加と持続的なBMP-2を発現した修復性マクロファージの増加が必要であった(阿南壽)。
-
日本人歯周病患者の遺伝子多型に基づく感受性検査および診断の確立
研究課題/領域番号:16209062 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
永田 俊彦, 吉江 弘正, 村上 伸也, 高柴 正悟, 栗原 英見, 和泉 雄一
配分額:50050000円 ( 直接経費:38500000円 、 間接経費:11550000円 )
最終年度は研究代表者と分担者の12施設から集められた合計622名の被験者血液サンプルの分析が行われた。被験者の内訳は,侵襲性歯周炎(AgP)172名,その対照群(AgP-cont)178名,慢性歯周炎(CP)147名,その対照群(CP-cont)125名である。これらのサンプルを用いてインベーダー法による遺伝子多型分析が行われ,疾患群と対照群との間で3つのSNP, AgP vs AgP-contにおけるFcαR56T/CとMMP-3(-1171)5A/6A(-/T),およびCP vs CP-contにおけるIL-1(+4845)G/T)で有意差が得られた。
何れのSNPにおいても遺伝子型分布あるいはアリル頻度の片方のみが有意差を示したため,これら3つのSNPが歯周病感受性遺伝子(疾患特異的遺伝子多型)であるとは現時点では断定できず,今後のさらなる検討が必要と考えられた。一方,各分担者の個別のSNP研究において,歯肉増殖症の発現患者では発現しない人と比べてα2インテグリン(+807C/T)の遺伝子型分布とアレル頻度に有意差があること(永田,片岡),FcgIIB-232TとFcgRIIA-R131遺伝子の組み合せを保有する場合,自己免疫疾患の人では健常者より歯周炎罹患が11倍高くなること(吉江,小林),IL-1B3(-3893)遺伝子型と歯周病の重篤度との関連性はなかった(村上),FPR1は好中球に発現する受容体であるが,FPR1遺伝子上に30個のSNPsが発見され,その内4SNPsが侵襲性歯周炎と関連していたこと(渡辺),IL12RB2の転写制御領域に存在する複数のSNPsがNKおよびT細胞の細胞性免疫機能に及ぼす影響が示されたこと(大山),マンノース結合レクチン遺伝子の変異を有する者の割合は歯周病患者および糖尿病患者で高かったこと(林)などが明らかとなった。(786字) -
バイオフィルムにおける歯周病細菌病原因子発現様態のゲノム-プロテオミクス解析
研究課題/領域番号:16659499 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
苔口 進, 福井 一博, 高柴 正悟, 西村 英紀, 前田 博史, 狩山 玲子, 井上 哲圭
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
本研究は難治性の口腔バイオフィルム感染症である歯周病に関して、どのような機序でバイオフィルムを形成し、抵抗性を獲得し、またその中で歯周病細菌が病原性を発揮するのかについて分子生物学的手法を用いて解明することを目的とした。今年度は以下のような研究実績の概要である。
1)歯周病細菌Porphyromonas gingivalisの増殖や膿瘍形成に与る可能性のある遺伝子としてribonucleotide reductase D遺伝子(nrdD)を特定した。またP.gingivalisのバイオフィルム形成の際機能する二成分情報伝達系による発現調節網の解析を行ない、新規二成分系転写調節因子をコードする遺伝子を特定した。nrdDおよび二成分系転写調節遺伝子の欠損株を作成し、現在バイオフィルム形成、蛋白発現、さらには遺伝子発現パターンを親株と比較検討している。
2)現在、歯周病病巣バイオフィルムの生息し歯周病との関わりが注目されている未知難培養細菌の歯周病巣における分布様態を調べた。重度な歯周炎病巣ほどメタン産生古細菌であるMeth anobrevibacter種の検出割合が高く、患者血清の中にはM.oralisおよびM.smithiiの菌体蛋白と反応するものも認められた。さらに宿主細胞や免疫担当細胞との反応性を調べ、病原因子の特定を進めている。
3)バイオフィルム実験モデル系として、ガラスキャピラリー中で細菌バイオフィルムを形成させ、蛍光染色キットを用いて生菌と死菌を染め分け、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて観察するキャピラリーフローセルシステムを確立した。抗バイオフィルム効果測定の新しい実験・評価や抗バイオフィルム剤の探索にペグ付き96穴マイクロプレートを用いる系の有用性を確認した。この系でクランベリーなど天然物から新規抗バイオフィルム効果のある物質を見出そうとしている。 -
歯周靭帯細胞における機械的ストレス応答性遺伝子のグルーピングと転写機構
研究課題/領域番号:16659579 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
明貝 文夫, 高柴 正悟, 西村 英紀, 新井 英雄
配分額:2800000円 ( 直接経費:2800000円 )
【目的】
機械的刺激が培養ヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)に及ぼす遺伝子発現変化を,マイクロアレイを用いて網羅的に解析する。
【材料と方法】
1.HPLFの刺激およびRNAの抽出
HPLFに,Flexercell Strain Unitを用いて機械的刺激を0.5,1,2,16時間与え,全RNAを回収した。刺激は1分間に6回の割合に5秒間ずつの緊張と弛緩を繰り返し行った。刺激を与えないものをコントロールとした。
2.マイクロアレイ解析
機械的刺激が細胞に及ぼす遺伝子発現変化を,Human Genome Focus Array(Affymetrix;約8,500遺伝子)を用いて,標的遺伝子のmRNA発現量を調べた。統計的手法を用いて解析した。
3.発現を変化する標的遺伝子の抽出とその機能
機械的刺激による発現量の変化が2倍以上を示した標的遺伝子として抽出した。それらの既知の機能をGeneSpring databases(Silicone Genetics)で調べ,系統別にカテゴリ分類した。
【結果】
1.標的遺伝子の抽出とその機能
機械的刺激によってその発現量が2倍以上変化するものは122であった。これらの標的遺伝子は,発現動態から8つのクラスターに分けられた。全てのクラスターはCell Growth and Maintenanceカテゴリ,あるいはIntracellular Signalingカテゴリに属する遺伝子を含んでいた。遺伝子の発現動態とcategoryに関係を見つけることができなかった。しかしながら,各々のクラスターは,Intracellular SignalingあるいはCell Surface Linked Signal Transductionカテゴリに属する遺伝子を含んでいた。
【考察と結論】
HPLFにおいて,機械的刺激は,外界からの刺激を感知しそして細胞内へシグナルとして伝える分子だけではなく,細胞増殖や代謝に関わる分子の発現に役割を果たすと考えられる。 -
細菌鉄結合蛋白X線結晶構造解析から新規抗菌薬の創製に向けて
研究課題/領域番号:15390566 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
苔口 進, 福井 一博, 高柴 正悟, 西村 英紀, 前田 博史, 新井 英雄, 井上 哲圭
配分額:12600000円 ( 直接経費:12600000円 )
本研究は、歯周病細菌の増殖と病原性発現に不可欠な細菌鉄結合蛋白の分子生物学的研究を発展させ、エジンバラ大学Campopiano博士とシェフィールド大学Artymiuk博士にX線結晶解析の協力を得て、その立体構造解析を行なった。さらに新規抗菌薬を探求し、創薬の基礎とすることを目的に行ない、以下の研究成果を得た。
細菌鉄結合蛋白の結晶化とX線結晶解析については歯周病細菌Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)のDNA binding protein starved cells(Dps)蛋白(ABO80734)とフェリチン(ferritin : Ftn)蛋白(DDBJ AB004902)について実施した。AaはFtn1とFtn2という2つの鉄結合蛋白を菌体内で発現していた。Ftn1は結晶蛋白が得られたが、Ftn2はアモルファス状にしかならなかった。Dps蛋白(10〜27mg/ml)は、結晶スクリーニング溶液中で温度17度でハンギングドロップ蒸気拡散法によって良質の六角柱結晶(数mm)を生成できた。得られたAaDps結晶についてX線解析を行い、分子置換はListeria innocuaの十二量体フェリチン様蛋白を参照に鉄結合活性中心部位およびC末端の特徴的なジスルフィド部位を決定できた。
新規抗菌薬として生体抗菌物質として注目されるデフェンシンを取り上げ、ヒト細胞からの発現制御様態および抗菌活性について検討した。また、天然植物では尿路感染症の民間療法として用いられているクランベリーを取り上げ、飲用後の尿中代謝物から大腸菌性バイオフィルムの形成を阻害する活性化合物として、ferulic acid、homovanillic acid、4-coumaric acid、isoferulic acid、vanillic acidを特定した。これらの低分子化合物は、複合的に作用して細菌バイオフィルム形成を抑制している可能性があった。 -
口腔インプラントの骨結合獲得難易度を予測する生物学的診断法の開発
研究課題/領域番号:15659463 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
窪木 拓男, 高柴 正悟, 滝川 正春, 荒川 光, 藤沢 拓生
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
1.チタンの細胞培養および遺伝子発現への影響
骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1細胞)の細胞培養培養および遺伝子発現に対するチタンの影響を検討した。
1)チタンプレート
ポリスチレン製の培養皿と表面粗さを同程度にするために,研磨ガラスにチタンを真空蒸着したものを使用した。
2)細胞接着への影響
通常の培養皿と比較してチタンは細胞接着を抑制する傾向にあった。
3)細胞増殖への影響
通常の培養皿と比較して,細胞播種後1,2日ではチタンでは増殖が抑制されるものの3日では両材料ともコンフルエントに達した。
4)細胞分化への影響
骨芽細胞の分化の指標のひとつであるアルカリホスファターゼ活性は,両材料ともに細胞がコンフルエントになった後5日目ごろより上昇し,14日目でピークを向え,21日目では低下した。チタンでは通常の培養皿と比べてアルカリホスファターゼ活性は抑制された。
5)遺伝子発現への影響
通常の培養皿と比較し,チタンの遺伝子発現への影響をサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検討したところ,両材料間で発現に差のあるsod-1,xab-2の遺伝子を検出した。
6)リアルタイムPCR法による遺伝子発現の変動
サブトラクティブハイブリダイゼーション法にて検出した発現に差のあるsod-1,xab-2の経時的な発現の変動を検討したところ,培養皿では細胞播種後5日目で発現のピークを向え,その後低下した。チタンでは発現のピークが10日目前後と培養皿より遅延し,発現も抑制されていた。 -
日本人の腎結石から分離した新種ナノバクテリアに関する多面的解析
研究課題/領域番号:15659381 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
公文 裕巳, 門田 晃一, 筒井 研, 八木 直人, 高柴 正悟
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
岡山大学泌尿器科で採取された日本人の尿路結石47検体、パラグアイで採取された尿路結石18検体、岡山大学一般歯科診療室で採取された歯石14検体を対象としてNanobacteria-like organism(NLO)の電子顕微鏡による観察、ならびに、分離培養を試みた。日本人の尿路結石とパラグアイ人の尿路結石でのNLOの検出率は、それぞれ61.7%(29/47)、66.7%(12/18)とほぼ同率であった。分離培養はそれぞれ7例と3例に可能であった。結石成分分析において、リン酸カルシウム含有率はNLO検出例約70%、分離培養例約78%と高率であったが、分析上でリン酸カルシウムを含有しないものからも検出・分離された。なお、歯石からは検出されなかった。
SPring-8での解析では、NLOの大きさが分解能以下のサイズであったにもかかわらず、アパタイト層の構築様式の三次元的解析が可能であり、個々のアパタイの外皮で被われたNLOが集簇的に融合、その集合体全体を包み込むように最外層にアパタイト層が構築されて成長することが明らかとなった。増殖培地の工夫により増殖様式はアパタイト型のほかに浮遊型が存在すること、その増殖速度も培養条件に左右されること、ならびにOD650でモニタリング可能であることが判明した。モノクローナル抗体で特異的に染色可能であることも明らかとなったが、Nanobacteriaに特異的であるとされたプライマー(フィンランドのグループのオリジナル文献:(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8274,1998)ならびに細菌属に共通のユニバーサルプライマーを用いるPCRでは特異的な反応は得られなかった。NLOの増殖のメカニズムに未だ不明な点が少なくないが、尿路結石等の異所性石灰化にNLOが関与することが強く示唆された。 -
歯周病原細菌の感染局所における病原因子発現の統括的プロファイリング
研究課題/領域番号:15592187 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
新井 英雄, 谷本 一郎, 前田 博史, 苔口 進, 高柴 正悟, 新井 英雄
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
A.actionomycetemcomitans (Aa)は歯周病を引き起こす主役を担う菌として注目されている。この菌の病原因子としては白血球毒素,LPS,線毛,CDTなどが注目されている。その一方でこの菌は歯周組織が健全なヒトからも分離されることがある。このことは歯周ポケット内にAaの存在することが直ちに歯周病の発症と進行につながるわけではないことを意味する。我々はAaが病原性を発揮するためには上記の病原因子や未知の分子が宿主内で発現し,相互に関連・統合する必要があると仮説をたてた。また,歯周病は複数細菌の混合感染であるため単一菌からその病態をとらえることは難しく,病態解析のためにはプラーク中の細菌種構成についても検索をする必要がある。
本研究ではAaの病原因子発現プロファイルを解析するために宿主内発現分子を同定し,細菌叢解析のための新しい検査方法を確立した。
1.Aaの宿主内発現分子の同定
宿主から分離直後のAaと継代培養したAaでcDNAサブトラクションを行い,宿主内で発現量が増加している遺伝子を同定した。同定された遺伝子は主要外膜蛋白遺伝子(ompA),prx様遺伝子,mip様遺伝子であり,ompAとprx様遺伝子は既知の遺伝子と高い相同性を示した。これに対してmip様遺伝子は既知のもの(Legionellaのmip)との相同性が約30%であった。
2.mip様遺伝子の機能解析
ompAとprxについては遺伝子情報からその病原性・機能が推測できた。mip様分子については既報の分子に相同性の高いものが存在しなかっため機能解析を行った。相同性組み換え法によってMip欠損株を作成したところ,欠損株では上皮細胞侵入能が著しく低下することが分かった。
3.歯周ポケット内細菌叢解析法の確率
等温遺伝子増幅法(LAMP法)を応用して主要な歯周病細菌検出のための検査法を確立した。 -
バイオフィルム形成に伴う歯周病原因子の遺伝子発現制御
研究課題/領域番号:15591932 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
井上 哲圭, 新垣 隆資, 苔口 進, 高柴 正悟, 福井 一博, 太田 寛行
配分額:2700000円 ( 直接経費:2700000円 )
<バイオフィルム(BF)形成過程の観察> Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)の野生株では,表面への付着初期では多数の線毛産生が観察されるが,成熟バイオフィルムでは線毛産生が抑制され,菌と菌が密に接着している様子(自己凝集)が観察された。菌体表面には多糖様構造物も観察された。BF形成に伴うミクロな環境変化に応答して,菌体表層物質の産生調節が起こることが示唆された。<BF形成と色素結合性> BF形成株ではコンゴレッド色素に対する結合性を示したが,非形成株では示さなかった。線毛遺伝子破壊株でもこの結合性は保持されており,色素結合性は線毛以外のBF形成因子の存在を示すものと考えられた。この色素結合性は,過ヨウ素酸処理により消失したことから菌体表層多糖の合成を反映していると推察された。ゲノム遺伝子解析から,コンゴレッド結合性多糖合成遺伝子クラスターのホモログが本菌に存在することがわかり,その中の一つの遺伝子破壊株を作製したが,BF形成への明らかな影響は検出できなかった。この遺伝子クラスターとBF形成との関係について,より詳細な検討が必要である。<自己凝集アッセイ> 菌体表層多糖と自己凝集との関連性を検討した。過ヨウ素酸処理,DNA分解酵素処理で自己凝集が完全に抑制されたことから,自己凝集には菌体表層の多糖に加え,DNAも関与することが示された。<白血球毒素産生の調節> BF形成と毒素産生へのカタボライト抑制調節タンパク質Crpの影響を調べるために,crp遺伝子破壊株の作製を試みたが分離できなかった。Aaではcrpが必須遺伝子である可能性が示唆された。また,毒素産生は酸性pHにより促進されることから,BF形成過程における局所pHの低下は毒素産生増加に働くことが示唆された。
-
歯周病の遺伝子治療 -局所的遺伝子導入による生体反応の制御-
研究課題/領域番号:14370710 2002年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 窪木 拓男, 西村 英紀, 久保田 聡, 明貝 文夫
配分額:13500000円 ( 直接経費:13500000円 )
標的因子の特定が重要な項目であるので,我々は歯周病の病態形成を鑑みて,(1)感染の非特異的な防御,(2)組織再生,の両面からターゲット因子を特定することにした。また,その生体毒性のために遺伝子治療の臨床応用に対する不安があるのも事実であるので,すべての実験は,その為害性も試験した。
1.標的遺伝子
ラットにおいて,歯槽骨の再生時に,1週目にcytochrime c oxidase遺伝子が,2.5週目にpro-a-2 type I collagen遺伝子が,特徴的に強く発現していた。これらを活性化することが細胞の活性度を高め,組織の線維化を促進することになるようである。歯髄では,ヒト14.7K-interacting protein 2(fip2)遺伝子のホモログが強く発現しており,ラットFIP-2遺伝子とした。この遺伝子の生理的な意味合いは不明であったので,現在も解析中である。さらに,炎症を制御するために,ヒト腫瘍壊死因子(TNF)-αを誘導する新規転写因子LITAFの活性化に関するプロモーターを特定した。
2.非ウィルスベクターによるβ-デフェシンの導入
口腔細菌の感染を抑制する作用のある抗菌ペプチドβ-デフェンシンを,上皮細胞や唾液腺に遺伝子導入によって強制発現させて,口腔内の細菌量の変化をラットにおいて調べた。さらに,催炎症性であるともいわれるこのペプチドが,唾液腺内で強制発現すると,組織に炎症を惹起させるかどうかも,組織学的に調べた。ラット唾液腺内での発現を実現させると,口腔内細菌が減少することと唾液腺組織の炎症が少ないことを確認できた。なお,電気的導入では,組織障害が大きかった。一方で,細菌内毒素の刺激時のこの遺伝子の発現誘導には,2つのNF-κB結合部位が促進的に作用し,NF-IL6結合部位は抑制的に作用することがわかった。導入したこの遺伝子の発現誘導に活用できるかもしれない。 -
歯周組識・歯槽骨再生のための自己間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療の確立
研究課題/領域番号:14370632 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
窪木 拓男, 上田 実, 滝川 正春, 高柴 正悟, 前川 賢治, 吉田 靖弘, 中西 徹, 矢谷 博文
配分額:14800000円 ( 直接経費:14800000円 )
1,ヒト骨髄間葉系幹細胞の採取・培養
倫理委員会の許可を得て,ヒトボランティアの腸骨稜より骨髄液を採取し,培養・増殖させる方法を確立した.また,この細胞群は骨芽細胞,脂肪細胞へと分化しうる多分化能を有していることを確認した。
2,結合組織成長因子(CCN-2)コーティングによるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖,分化の促進
骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞を遊走させることができるCCN-2を多孔質アパタイトブロックにコーティングすることによって,スキャフォード内部への骨髄由来間葉系幹細胞や血管内皮細胞の誘導に成功し,ブロック内部への血管新生,さらには骨再生を促進することに成功した.
3,チタン表面に対するヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着,増殖の促進
チタン表面にポリリン酸を吸着することにより,骨髄由来間葉系幹細胞の細胞接着や細胞増殖を促進することに成功した.この知見は,ポリリン酸がチタンのオッセオインテグレーションを促進する可能性を示唆するものである.
4,cDNAサブトラクション法によるチタンと骨とのオッセオインテグレーションに関連する因子の同定
ポリスチレンとチタンディッシュ上で骨芽細胞様細胞株を培養し,total RNAを回収後逆転写,cDNAサブトラクティブハイブリダイゼーション法にて,チタン特異的遺伝子を検索した.その結果,チタン上で骨芽細胞を培養した場合には,sod-1,ribosomal protein L19の遺伝子発現が有意に抑制されていることが明らかになった。現在,さらに他の金属とも比較中である. -
歯周病原性細菌によって起こる誤嚥性肺炎の分子免疫学的病態の研究
研究課題/領域番号:14657554 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
高柴 正悟, 前田 博史, 明貝 文夫, 苔口 進
配分額:2600000円 ( 直接経費:2600000円 )
誤嚥性肺炎は,食物や口腔内細菌などの誤嚥に起因する肺炎であり,主に高齢者に発症する。とりわけ歯周病に罹患している高齢者の口腔内には大量の歯周病細菌が存在するので,誤嚥性肺炎発症のリスクは高いと考えられる。また,肺炎は重篤になると肺局所の炎症にとどまらず,全身症状の悪化をきたし時に死を招くこともある。したがって誤嚥性肺炎を発症した肺局所の炎症巣の全身に対する影響を知ることは重要である。我々は,本研究援助の下,(1)誤嚥性肺炎のマウスモデルを構築し,(2)肺局所と血清中のIL-1β,IL-6,TNF-α,そしてTNF-αのアンタゴニストである可溶性TNF受容体(sTNFR1およびsTNFR2)の産生動態を比較検討した。誤嚥性肺炎のマウスモデルは,代表的な歯周病細菌であるPorphyromonas gingivalis(P.g)の死菌体をマウスの肺に直接,感染させて構築した。このモデルは,組織学的に,P.g感染後,1-3日後の肺に著明な炎症性細胞浸潤を認め,7日後の肺では健常レベル回復するという比較的弱い炎症症状をきたすものである。我々は,この肺炎マウスにおける肺と血清中において,各種サイトカイン産生量を経時的(感染後2時間,1,3,7日)に測定した。IL-1βは,肺局所において感染後2時間-3日後に有意に増加したが血清中では検出できなかった。IL-6は,肺局所において感染後2時間-3日後に有意に増加し,血清中においても感染後2時間で有意に増加した。TNF-αは,肺局所において感染後2時間のみで有意に増加したが,血清中では検出できなかった。またsTNFR1の産生量は感染の有無によって,肺局所,血清中ともに変化しなかった。一方,sTNFR2は肺局所において感染後2時間-3日後に有意に増加したが,血清中では変化しなかった。また,感染後2時間で血清中のsTNFR2/sTNFR1比が有意に増加した。以上の結果から,この血清中におけるIL-6とsTNFR2の産生量の増加が肺の局所炎症に対する全身反応であることが示唆される。この研究結果により,将来の局所炎症に対するサイトカインを用いた炎症制御療法の発展が期待される。
-
TNF-αの新しい転写因子LITAFが歯周病病態に果たす役割
研究課題/領域番号:14571982 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
明貝 文夫, 新井 英雄, 西村 英紀, 高柴 正悟, 河野 隆幸, 前田 博史
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
抗LITAFモノクロナール抗体を用いてTHP-1細胞を免疫染色した結果,LPS-induced TNF-α factor(LITAF)は刺激のない状態では細胞質に存在するが,LPS刺激すると核内で豊富になることが判明した。ウエスタンブロット解析によって,THP-1の細胞質内と核内のそれぞれおけるLITAFタンパクの動態を示すことができた.すなわち,LPSで2時間刺激すると核内LITAFの量が上昇するが,その後24時間まではもとのレベルに戻った。他方,細胞質内LITAF量はLPSで刺激しても有意な変化は見られなかった。これらの結果から,LITAFタンパクはLPS刺激によって細胞質内から核内へと輸送されることが示唆された。LITAFタンパクは核移行シグナルを有さないので,他のDNA結合タンパクがその輸送に必要なのかも知れない。
ヒトゲノムライブラリからLITAFプロモーターの1.2kbをクローニング・シークエンスした。これについて詳細なレポータープラスミドを構築し,これをヒトT細胞株に導入してプロモーターアッセイを行った。プロモーター活性は-76から-43の領域で最大を示し,ここには既知のコンセンサスシークエンスが存在しなかった。LITAFの転写にはこの未知のシークエンスが重要な役割を果たすことが示唆された。 -
生物学的に修復象牙質を形成促進するための分子クローニングとその応用法に関する研究
研究課題/領域番号:14571844 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
園山 亘, 滝川 正春, 高柴 正悟, 窪木 拓男, 矢谷 博文
配分額:3900000円 ( 直接経費:3900000円 )
1.ヒト抜去歯からの歯髄細胞の単離とその表現系の確認
本学倫理委員会の許可のもと,ヒト抜去歯から歯髄細胞を単離し,その遺伝子発現をRT-PCR法で確認した。その結果,本細胞は象牙芽細胞特異的とされるdentinsialophosphoprotein(DSPP)を発現しており,象牙芽細胞,もしくは前象牙芽細胞からなる細胞群であると思われた。
2.本細胞の細胞接着,増殖,分化に与える各種成長因子の効果の検討
既存の因子の中で修復象牙質形成に関与していると思われるβ型形質転換増殖因子(TGF-β1),塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と結合組織成長因子(CTGF)の細胞接着,増殖,分化に与える各種成長因子の効果を検討した。その結果,細胞接着はこれらの因子を培養プレートに吸着することにより促進された。また,細胞増殖はTGF-β1を培地に添加したときのみ有意に促進された。一方,アルカリフォスファターゼ活性は,bFGF, TGF-β1の添加により有意に抑制されたが,CTGF添加では,その影響は明らかでなかった。
3.ハイドロキシアパタイト(HAP)への細胞接着の検討
HAPに対する本細胞の3時間後の接着細胞数を検討したところ,ポリスチレン製の培養プレートに比較して,HAP上には有意に多くの細胞が接着していることが明らかとなった。
4.HAPが本細胞の分化に与える影響の検討
本細胞の遺伝子発現がHAP上で培養することにより影響を受けるかを検討したところ,DSPP,ならびにI型collagenの遺伝子発現が有意に促進しており,分化が誘導されていることが推測された。 -
歯周組織の治癒に関わる遺伝子の研究
研究課題/領域番号:01F00761 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
高柴 正悟, 村山 洋二, PETELIN Milan, PETELIN M.
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
研究1 歯周病細菌Porphyromonas gingivalis (Pg)感染した肺炎マウスにおける局所・全身のTNF-αおよび可溶性TNFレセプターの産生動態
近年,歯周病細菌が何らかの経路で遠隔臓器に感染し,様々な為善作用を及ぼすことが知られるようになってきた。しかし,その詳細な生体反応のメカニズムについては不明である。本研究は,代表的な炎症性サイトカインであるTNF-αおよび可溶性TNFレセプター(sTNFR)の産生動態を指標に,Pg感染性肺炎が全身にどのような影響を及ぼすのかを調べた。
【方法】Pg感染を肺炎マウスにおいて,経時的にその肺抽出液および血清中のTNF-αおよび可溶性TNFレセプターの産生量を市販のELISAキットを用いて調べた。
【結果】肺抽出液中:TNF-α量は,Pg感染後2時間で有意に高い値を示した。また1型sTNFRの産生量は,感染の有無に関わらず変化しなかったが,2型sTNFRの産生量は,感染後1-3日まで有意に高い値を示した。血清中:TNF-α量は,感染の有無に関わらず変化しなかった。また,2型sTNFR/1型sTNFR比は,Pg感染後2時間で有意に高い値を示した。
【考察および結論】Pg感染後,肺局所において産生されたTNF-αの為害作用は,局所・全身ともに2型sTNFRの産生量が増すことによって抑制制御されている可能性がある。したがって,TNF-αを中心とした局所炎症の拡がりを制御するには,2型sTNFRが有効なのかもしれない。
研究2 ラット唾液腺に発現させた抗菌ペプチドを用いた歯周病抗菌療法における基礎研究
近年,医科額域における遺伝子治療の発展は目覚ましい。この流れから,我々は歯周病における遺伝子治療の応用を検討している。本研究では,ラット唾液腺に遺伝子を強制発現するための有効な手段を探るため,効率のよい遺伝子導入法を検討した。
【方法】ラット唾液腺に電気的手法,化学的手法および直接法の3種遺伝子導入方法でβ-gal遺伝子を発現させ,その発現強度を比較検討した。
【結果】化学的手法による遺伝子導入方法が,他の手法に比して有意に高いレベルでβ-galを発現した。
【考察および結論】歯周病抗菌療法には,化学的手法を用いた遺伝子導入法が有効な手段であることを示唆する。今後,βデフェンシンなどの抗菌物質を唾液腺に強制発現させ,歯周病抗菌療法の応用に向けた有効性を検討する予定である。 -
ティッシュエンジニアリングを用いた組織再生構築に関する総合的研究
研究課題/領域番号:12307051 2000年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
山田 了, 前田 勝正, 高柴 正悟, 栗原 英見, 小田 茂, 長谷川 紘司
配分額:39730000円 ( 直接経費:33700000円 、 間接経費:6030000円 )
1.Mescnchymal stem cells部門:増殖歯根膿の基礎的成果をふまえて臨床応用の頃階に入った(山田、太田)。SPARCは組織分解とHPLcellsの増殖を促進し、歯周靭帯の修復過程に関与することが示唆された(栗原)歯肉線維芽細胞に比較しヒト歯根膜細胞においてmRNAの最も顕著な発現量を示した遺伝子は、PDL-29mRNAであり、in vitroがin vivoより大きいことを示した(高柴)。BMP-2依存的な骨芽細胞分化は、EP2/4アゴニストによりさらに増加することが確認された(長谷川)再生療法における移植材の開発で多層性線維芽細胞シートおよび細胞外マトリックスの役割について検索し、ティネシンの沈着は線維芽細胞の多層性増殖を促すことが示唆された(前田)。2.Gnowth factor部門:歯根膜細胞をbbFGFにて刺激することにより、高分子型のヒアルロン酸の生合成が誘導されること、シンデカン-2のsheddingが惹起された(村上)。ラットにおける再生された長い付着上皮について、NORsを標識するAgNOR染色法を用いて検索し、長い付着上皮が、増殖活性を維持する再生結合組織によって置換されることが示唆された(橋本)。rhBMP-2によって新生した歯周組織は長期的に維持されて機能し得ることが明らかになり、スペーサーの応用により骨性癒着を減少できることが示された(川浪)リン酸カルシウムセメント(CPC)の骨形成能をビーグル犬を用い検索し、セメントの吸収、ホール中の新生骨形成、血管供給が観察された(小田)。3.Matrix factor部門:生体吸収性GBR用PLLA頃を試作し、動物実験による病理組織学的検索により、長期吸収型PLLA膜は、臨床応用の可能性が示唆された(和泉)。人工歯相の第一段階であるセメント実の形成には、人工歯根表面の幾何学的性質が重要であることを明らかにした(滝田)
-
根尖病巣が全身に及ぼす影響に関する研究
研究課題/領域番号:12307044 2000年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
石原 祥世, 川島 信之, 野杁 由一郎, 高橋 慶壮, 長谷川 雅子, 林 義彦, 山本 宏治, 松下 健二, 高柴 正悟
配分額:34980000円 ( 直接経費:30600000円 、 間接経費:4380000円 )
感染根管歯に生息する嫌気性細菌およびそれら細菌により形成されたバイオフィルムの性状を生化学的および微細形態学的に解析し、(1)菌種によってバイオフィルム形成に差がある、(2)菌体外バイオフィルムにglycocalyx様構造物が存在する、ことを明らかにした。また、根管内細菌の同定法として、チェアーサイド嫌気システムによるE.faecalisの分離・同定法を確立した。さらに、polymerase chain reaction法を応用して感染根管内細菌の同定システムを構築した。
全身疾患と根尖病巣との関連をいくつかの易感染性宿主群について調べた。すなわち、非ホジキン病、C型肝炎、難治性皮膚疾患および70歳以上の老人病院入院患者を対象とし実態調査した。非ホジキン病およびC型肝炎患者では、根管治療に伴うCRP値の変動を調べたが、有意な関連は見出せていない。感染根管治療により皮膚の難治性痒疹湿疹が軽快することから、アトピー性皮膚炎および掌蹠膿疱症患者がどの程度歯周病関連細菌およびう蝕原性細菌に感作されているか免疫学的に検討し、アトピー性皮膚炎の末梢血T細胞は口腔レンサ球菌S.intermediusに強く感作されていること、また、アトピー性皮膚炎患者における歯根嚢胞の病態形成にはIL-8およびIL-6が関与していることを示唆した。さらに、掌蹠膿胞症患者は健常者に比較して有意に血中IL-8量が増加していることを明らかにした。高齢者は、根尖病巣に加えて歯周病に罹患した被験者が多く、根尖病巣単独の影響を評価できる被験者を増やす必要がある。残存歯(20本余)すべてが感染根管であり,副腎皮質ホルモンの使用のために易感染となっている患者に対して,感染根管治療を行った。その結果,内科的治療では低下しなかったCRPが正常値のレベルに低下した。 -
修復象牙質を生物学的に形成促進するための分子クローニングとその導入法に関する研究
研究課題/領域番号:12470418 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
窪木 拓男, 滝川 正春, 高柴 正悟, 園山 亘, 完山 学, 中西 徹
配分額:13800000円 ( 直接経費:13800000円 )
1.遺伝子導入法と導入率の検討
マーカー遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを作製し,培養細胞に対しての導入効率を検討した.その結果ほぼすべての細胞で導入したマーカーの活性が認められ,培養細胞に対して高い効率で意図した遺伝子を導入できることが確認された.
2.動物モデルにおける既存の因子の局在の確認
既存の因子の中で修復象牙質形成に関与していると思われるβ型形質転換増殖因子(TGF-β)と結合組織成長因子(CTGF)の局在を免疫染色法により確認した.その結果,修復象牙質様硬組織が確認されるようになる2週後になると,TGF-β,CTGFともに同組織周囲で発現が強くなることが確認された.このことから細胞外基質の分泌ならびに石灰化にTGF-βならびにCTGFが強く関与している可能性が示唆された.
3.起炎性因子の刺激による両因子の発現の変動
象牙芽細胞様細胞を起炎性因子で刺激した際のTGF-β1とCTGFの遺伝子発現レベルの変動をRT-PCR法を用いて検討した.その結果TGF-β1とCTGFはともに象牙芽細胞様細胞株で恒常的に発現していることが初めて確認された.また,刺激から24時間後にはTGF-β1の発現は減少し,逆にCTGFの発現は増えることが確認された.これまでの結果をあわせて考えると,細胞外基質の分泌ならびに石灰化にTGF-βならびにCTGFが強く関与している可能性が示唆された.
4.TGF-β1とCTGFの作用の検討
象牙芽細胞様細胞が対数増殖期にある時に両因子を作用させ,増殖に与える影響を検討した.その結果TGF-β1は細胞増殖を抑制する傾向にあったが,CTGFはその増殖を妨げなかった.また,CTGFの石灰化に対する効果を検討するため,この細胞にCTGFを添加した際のアルカリフォスフォターゼ活性を測定した.その結果CTGFの明らかな効果は認められなかった. -
歯根吸収誘導因子の研究
研究課題/領域番号:12671851 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
明貝 文夫, 西村 英紀, 高柴 正悟, 村山 洋二, 河野 隆幸
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
歯根吸収を誘導する因子を得るために,機械的刺激を与えた歯根膜線維芽細胞においてmRNA量の増加する遺伝子をサブトラクティプハイブリダイゼーション法でスクリーニングした。そして,候補遺伝子を多数クローニングすることに成功し,これらの特徴について以下の結果を得た。
1.候補遺伝子の歯根膜線維芽細胞におけるmRNA発現をリバースノーザン法で調べたところ,機械的刺激によってRNA量が顕著に増加する遺伝子断片1-15を得た。
2.上記遺伝子断片をプローブしてヒトcDNAライブラリをスクリーニングしたところ,2.3kbのクロンを得ることに成功した.この遺伝子の塩基配列を決定したところ,これはMRGX cDNAであることが判明した。MRGXは最近報告されたタイプの転写因子であった。
3.歯根膜線維芽細胞は械的刺激によってMRGX mRNA発現が誘導された。さらに,この条件においてTGF-β mRNA発現も誘導されていた。TGF-βのプロモーター領域には,shear-stress-responsive elementが存在する。
4.MRGXのantisense RNAを歯根膜線維芽細胞に強制発現させた場合には,TGF-βのmRNA発現量は増加した。このことは,MRGXが直接的にかあるいは間接的に制御する可能性を示すものである。また,機械的刺激を加えない条件下でも,歯根膜線維芽細胞はMRGXを発現していることがノーザンハイブリダイゼーション法で確認できた。従って,歯根膜線維芽細胞は械的刺激を受けると,MRGXを介してTGF-βのmRNA発現が調節されることが考えられた。
TGF-βは破骨細胞を活性化する作用がある。外傷力を受けた歯の歯根膜細胞は,MRGXの制御が外れるとTGF-βを旺盛に産生する可能性がある。破歯細胞は破骨細胞に似るとされており,MRGXは歯根吸収に関わる候補因子として位置付けることができる。 -
歯周病治療のための口腔細菌モニタリングシステム
研究課題/領域番号:12557192 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
村山 洋二, 西村 英紀, 新井 英雄, 高柴 正悟, 原田 慶宏, 苔口 進
配分額:12300000円 ( 直接経費:12300000円 )
歯周病の診断における細菌学的検査の必要性は高まっている。これまでの検査は細菌の培養操作を必要とし,膨大な時間と労力を要するものであった。このため,実際の臨床の場に応用することが困難であった。近年,分子生物学の発展により,PCR法を応用した遺伝子レベルの細菌検出法が開発され,急速に臨床応用されつつある。PCR法は感度や迅速性・簡便性には優れているが,定量的な判断は難しい。本研究はこの問題点を解決するためにリアルタイムPCR法を用いた口腔細菌モニタリングシステムの開発を目的とした。
PCRは16S rRNA遺伝子を標的とし,細菌共通のプライマー,歯周病細菌特異的プライマー(Porphyromonas gingivalis, Actinobacillus actinomycetemcomitans, prevotella intermedia用),そして抗生剤(テトラサイクリン)耐性遺伝子tetQ用のプライマーを複数設計して,特異性と定量性の面で優れたプライマーの選択と反応条件の検討を行った。結果として,歯周ポケット内の総細菌と特異細菌の検出・定量が10-10^7cellの範囲で可能となった。PCR産物の検出にはSYBR GreenとTaqMan systemの両方法を用いたが,2方法の間に感度,定量性と特異性においての差はなかった。コスト面ではSYBR Greenの検出法が安価であるために臨床サンプルを用いた実験にはSYBR Greenを用いることとした。
確立したリアルタイムPCR法と従来のPCR法の結果を臨床サンプルで比較したところ,両者の結果は概ね一致した。また薬剤耐性遺伝子tetQの定量も可能となり,薬剤耐性菌のモニタリングを組み込んだ歯周病細菌検査システムを確立することができた。 -
歯周病の発症と進行に関わる交叉免疫応答を誘導する抗原蛋白
研究課題/領域番号:12877343 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
村山 洋二, 大山 秀樹, 西村 英紀, 高柴 正悟, 河野 隆幸
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
Prophyromonas gingivalis由来の分子量53kDaの外膜蛋白(Ag53)は,多くの歯周炎患者由来のIgG抗体およびヘルパーT細胞株によって共通して認識される領域(Ag53p141-161)を有する。本研究において我々は、歯周病細菌抗原由来蛋白を認識するT細胞が他の抗原蛋白と交叉応答し得ることを明らかにすることを目的とした。昨年度我々は、早期発症型歯周炎患者の末梢血単核球からAg53p141-161をHLA-DRB1^*1501拘束的に認識するTh細胞クローン(HT8.3)を樹立した。さらに,Ag53p141-161のアミノ酸配列と相同性を示す領域を有する蛋白5種類をデータベースから探り当てた。しかし,相同性を示す領域の合成ペプチドを作成したが,これらペプチドに対してHT8.3は応答性を示さなかった。このことは,Ag53p141-161の領域において,どの部位がT細胞の抗原認識に関わるかについての詳細を明らかにすることが必須であることを示唆するものである。
以上のことから本年度は,1)HT8.3の抗原認識に関わる詳細な部分を知ること,さらには2)Ag53p141-161において抗原認識に関わる詳細な部分のアミノ酸置換ペプチドに対するTh細胞の応答性を調べることを行なった。その結果,1)Ag53p141-161において,T細胞の抗原認識に関わる領域はAg53p144-155であること,2)Ag53p144-155においてp147(V)を1leにp151(A)をGlyにそれぞれ1残基置換したペプチドは,野性型ペプチドよりも低濃度でHT8-3の増殖応答を誘導することを突き止めた。
これらのペプチドの発見によって,歯周病細菌抗原由来蛋白を認識するT細胞が他の抗原蛋白と交叉応答し得ることの可能性,さらにはアナログペプチドを用いた免疫療法の進展への可能性が示唆された。 -
単球系細胞が産生するTNF-αの新規転写因子を制御することによる歯周炎治療
研究課題/領域番号:12470471 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 前田 博史, 明貝 文夫, 西村 英紀
配分額:13100000円 ( 直接経費:13100000円 )
グラム陰性菌の内毒素であるLPSの刺激を受けた単球系細胞が腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を産生して,炎症の進行とそれに伴う組織の破壊が生ずる。これは,歯周病に罹患した歯周組織でも同様である。そこで,TNF-αの産生を制御する試みとしてTNF-α遺伝子の転写に関わるが,細胞の他の活性にも強く関わるNF-κBではなく,我々が新規に得たLPS誘導性の転写因子であるLITAF(LPS-induced TNF-α factor)を用いて,TNF-α遺伝子の転写を制御しようとした。LITAFの産生をLITAF遺伝子のアンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いて抑制するとTNF-αの遺伝子転写が抑制されることはわかっている。
LITAF遺伝子の転写に関わるプロモーター領域の塩基配列を解析して,LITAFの遺伝子転写に関わるLPS誘導性の転写因子の候補を推定するとともに,レポーター遺伝子を用いてLPSが強く関わるLITAF遺伝子の転写に必要なプロモーター領域を明らかにできた。一方で,LPS刺激をうけた単球内では,細胞質内に広く存在していたLITAFが核内に集積してくることを,免疫染色と免疫ブロツト法で明らかにした。また,この因子を実際に導入する系を確立するためにβ-galactosidaseを組み込んだvectorをラットに遺伝子導入し,その発現を確認した。
さらに,NF-κBの抑制因子の一つであるIκB-αの変異体遺伝子を単球に導入して,NF-κBが関与しない条件下でのLITAFのTNF-α産生への影響度を検討するとともに,LITAFの抑制効果を検討する実験系を樹立した。現段階では系の樹立にとどまっているが,本研究期間の終了後にあっても,この系を用いてTNF-α産生に対するLITAFの作用の度合いとその抑制効果を検討する予定である。 -
早期発症型歯周炎の病態解析と診断基準確立に向けた共同研究の企画調査
研究課題/領域番号:12897021 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
山崎 和久, 高柴 正悟, 栗原 英見, 吉江 弘正, 相田 宜利, 村上 伸也
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
早期発症型歯周炎(Early-Onset Periodontitis;EOP)は乳歯あるいは永久歯列を有する者において、いわゆる成人性歯周炎の発症時期よりも明らかに早期に発症し、その後、急速な進行経過をたどって歯の脱落にいたる疾患である。本邦における発症頻度は欧米におけるそれと比較してかなり低いといわれているが(岡本ら0.18%)、全国規模での疫学調査報告はなく、詳細については明らかになっていない。その発症には細菌学的、免疫学的要因の関与が示唆されているが、成人性歯周炎におけるそれらと同様、単一病原細菌による特異的な疾患ではなく、複数の細菌種が関与しているという報告がほとんどであるが、欧米においては主要な原因菌としてActinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)がもっとも注目されており、その病原因子や、病態との関連について多くの報告がある。また、宿主防御機構の異常が示唆されることから免疫機能に関係している因子についても多くの研究があり、免疫担当細胞の機能異常との関連が示唆されている。しかし、日本人早期発症型歯周炎とAa菌の関連は低いとする報告や、宿主防御機能の低下についても統一された見解は得られていない。この理由は診断に統一された基準が無く、いずれもAAPの基準を参考に独自の基準を加えて行っていることによると思われる。そこで、本企画調査では日本人における早期発症型歯周炎の病態を明らかにし、診断の一助とするために患者集団の選択、細菌検査・免疫学的検査の項目・方法を統一するための基準作りをすることが決められた。
-
象牙質特異遺伝子を局所に導入することによって歯質保全を図る研究
研究課題/領域番号:11557143 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 明貝 文夫, 新井 英雄, 村山 洋二
配分額:8700000円 ( 直接経費:8700000円 )
象牙質の再生に関与すると思われる遺伝子を,象牙質窩洞を形成したラット臼歯の歯髄からsubtractive hybridizationによって得た。その総数は,250bp以上の断片長のものに絞ると,歯髄傷害時に発現量が増加したものが16種,減少したものが7種であった。増加したものには,チトクロムc,カテプシンB,機能が不明な3種のEST(expressed sequence tags)遺伝子,さらに1種類の未知の遺伝子を含んでいた。減少したものには,リボゾームタンパク,ラミニンγ2鎖遺伝子,I型コラーゲンα2鎖遺伝子,さらに2種の未知の遺伝子を含んでいた。これらの遺伝子の歯髄内における発現状態(発現している細胞とその位置)をin situ hybridizationにて調べようとした。しかし,明瞭な結果を得ることに至っていない。一方,Northern hybridizationによって,1種類のEST遺伝子の発現の差が最も大きいと判断できた。そこで,この遺伝子の全長を得て,この遺伝子は約3.8kbであること,そしてヒトFIP-2(Adenovirus 14.7kDa-interacting protein)に一部分で83%の相同性があることが判明した。さらに,この遺伝子は,FIP-2遺伝子よりも翻訳部分が長く,ジンクフィンガードメインとロイシンジッパーを含むコイルドコイルドドメインの構造を持っていた。
一方,既知の遺伝子を歯髄組織に導入する試みは昨年までの進展状況から変化していない。ベクター系をプラスミド系とウィルス系の2種を用いて,導入効率を検討する段階にある。β-ガラクトシダーゼ遺伝子を組み込んだAdenovirus系の発現ベクターを用いて展開した。導入効率はプラスミドベクター系よりも高いようであったが,導入されている部分は歯髄組織の最表層であり,両ベクター間での違いはほとんどなかった。深部への浸透を必要とするのか,あるいは表層でよいのかを考察する必要がある。
特定の遺伝子を選択することと遺伝子導入の効率を考慮することが,本研究の根本的な問題である。遺伝子導入の効率向上と反復使用を可能にするベクター系の開発が必要である。さらに,特定遺伝子の同定が進んできているので遺伝子の選択という問題は解決されるであろうが,発現誘導を歯髄のどの部分で行えばよいかが今後の問題となるであろう。 -
上皮由来抗菌ペプチドの利用による歯周病原性細菌の感染予防にむけて
研究課題/領域番号:11877366 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
高柴 正悟, 苔口 進, 前田 博史, 明貝 文夫
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
ヒト上皮細胞の産生するヒト型ベータデフェンシン-2(HBD-2)には,サイトカインや細菌内毒素の刺激によってその産生が誘導される特徴があるので,感染頻度の高い口腔内において,HBD-2の感染予防治療への応用が期待される。本研究では,HBD-2の発現様態と転写制御因子を解明することを目的とした。
歯周病罹患歯肉中にHBD-2のmRNA発現を検出し,そのcDNAをクローニングした。また,同歯肉を用いた組織免疫染色によって歯肉上皮顆粒層にHBD-2を検出した。この遺伝子をテトラサイクリンによって転写活性を制御することができる哺乳動物発現ベクターpTRE-Mycに挿入し,子宮頚部上皮癌細胞にin vitro遺伝子導入を行って,テトラサイクリンを添加することによってHBD-2遺伝子(hbd-2)の転写を制御した。そして,この細胞の溶解液中のHBD-2の産生をELISA法によって確認した。さらに,この細胞溶解液は大腸菌に対して抗菌活性を示すことがわかった。今後は,ラット等を用いたin vivoにおける遺伝子導入において,テトラサイクリンによる制御を試みる必要がある。一方,導入と発現の効率を向上させるために,海外の研究者の協力の下,ウイルス由来の新規発現ベクターにhbd-2を挿入している途中である。
また,hbd-2プロモーターをクローニングし,β-ガラクトシダーゼをレポーター遺伝子として有しているpSEAPベクターに挿入した。これを子宮頚部上皮癌細胞に導入し,細菌内毒素刺激下での同細胞の産生するβ-ガラクトシダーゼ活性を測定することによって,hbd-2プロモーター領域中の転写制御領域を特定することを試みた。その結果,転写開始点から352bp上流領域に制御部位が存在することがわかった。今後は,この部に結合する転写制御因子を特定する必要がある。 -
骨芽細胞分化マーカーCbfa1遺伝子産物を応用した骨再生誘導に関する研究
研究課題/領域番号:10671967 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
明貝 文夫, 高柴 正悟, 村山 洋二
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
歯槽骨の再生過程においてCbfa1を含む骨再生関連候補遺伝子について発現様態を調べ,そして外来遺伝子導入の基礎実験を行い以下の成果を得た。
骨再生過程の組織は,ラットの臼歯部歯槽骨に骨欠損を人工的に作成し,治癒過程にあるに肉芽とその周囲の骨組織とした。この組織は摘出し,組織標本を作成した。歯槽骨に欠損を形成した後の1週目では,欠損内は幼若な肉芽組織で占められていた。2週目には,肉芽組織内に血管の増生を確認した。4週目では,歯槽骨の欠損面に染色性が異なるとともにその表層に骨芽細胞様細胞が配列する骨梁を確認した。歯槽骨の再生過程において骨再生関連候補遺伝子の発現をリバースノーザンハイブリダイゼーションで調べた。この組織においては,Cbfa1のみならずBGPおよびTGF-βとその受容体の遺伝子のmRNAを検出できた。そして,mRNA量が骨の再生過程において経時的に変化する遺伝子は,TGF-βとその受容体であるTGFβR-IIIであった。
Cbfa1遺伝子産物を骨再生に応用するためには,先ず外来遺伝子を細胞に発現させ,その遺伝子産物が活性を発揮させる系を確立することが必須条件である。そこで,ヒトIL-1βcDNA全長を発現ベクターに挿入し,これを培養COS-1に遺伝子導入することによって発現細胞株を得た。そして,この細胞株とヒト歯肉線維芽細胞を共培養した。In situハイブリダイゼーションでIL-8遺伝子発現細胞を調べたところ,COS-1に近接するヒト歯肉線維芽細胞にIL-8 mRNAを検出した。この結果は,外来性遺伝子を発現させた細胞を生体に移植すると,その周囲の細胞が新たなる遺伝子発現を発揚される可能性を示すものであった。 -
ダウン症患者における歯周炎発症に関する包括的研究
研究課題/領域番号:10671966 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
西村 英紀, 高柴 正悟, 苔口 進, 江草 正彦, 高橋 慶壮
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
(1)ダウン症患者の末梢血好中球機能:ダウン症患者の好中球走化能を走化因子としてFMLP,IL-8,C5aを用い評価した。その結果,ダウン症患者由来好中球は用いたいずれの走化因子に対しても濃度依存性に走化性を示した。また至適走化因子濃度における遊走細胞数は同年代の健常対照と同程度であり,機能低下はなかった。すなわち従来報告されているような好中球の走化能に機能低下はなかった。
(2)in vitroにおける組織修復機能:ダウン症患者の体細胞は,健常者に比べ,より急激な速度で老化(replicative senescence)することが知られている。これは,細胞の老化マーカーであるテロメアの短縮速度が正常細胞に比べ速いことに起因する。また,静止期に達した細胞では増殖因子による刺激に対して細胞増殖に必須の転写因子であるc-fosの発現が低下することが知られている.そこで,ダウン症患者の体細胞モデルとして老年者由来細胞を用い,塩基性線維芽細胞増殖因子に対する走化能を若年者由来細胞と比較した。細胞には歯周組織の再構築に最も重要であるとされる歯根膜線維芽細胞を用いた。生体の老化に伴って,歯根膜線維芽細胞の遊走能が低下した。また,走化したすべての細包がc-fosを発現しているのに対し,遊走しない細胞では。c-fosを発現した細胞とそうでない細胞が混在していたことから,c-fosが細胞の遊走に関与すること,また老化細胞における走化活性の低下にc-fosの発現低下が深く関与することが示唆された。以上の結果から,ダウン症患者に見られる重度歯周炎の成因には,従来報告のある好中球の機能低下よりも,生体の急激な老化現象がもたらす歯根膜組織の修復能力の低下が関与する可能件が示された。 -
歯周病関連遺伝子に関する総合研究
研究課題/領域番号:10357020 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
栗原 英見, 菅井 基行, 岡田 宏, 安孫子 宜光, 山崎 和久, 高柴 正悟, 安孫子 宜光, 片岡 正俊
配分額:25300000円 ( 直接経費:25300000円 )
歯周病に関連する遺伝子を,染色細菌,宿主防御,代謝,組織再生という視点から多角的に検討した.
感染細菌に関しては,Porphyromonas gingivalis由来のヘマグルチニンの遺伝子配列から機能ドメインを解明した.P.gingivalisヘマグルチニンの結合ドメインにはPVQNLTという特異的な配列があり,インフルエンザウィルスのそれと高い相合性を有していた.また,Actinobacillus actinomycetemcomitansから新規のcytolethal distending toxin遺伝子(Aa cdt)をクローニングに成功した.As cdtは3つのクラスターから構成され,それぞれCDT A,B,Cをコードしていた.E.coliを用いた欠失実験から毒素活性にはCDT A,B,Cの全てが必要であることを明らかにした.一方,宿主防御に関しては,歯周炎患者血清中に存在する自己抗体産生に関連する遺伝子をT細胞受容体(TCR)とヒト白血球型抗原(HLA)から解析した.TCRについては,リコンビナントhsp60およびP.gingivalisのGroELによって抹消血T細胞を刺激した後,TCRβ鎖のCDR3領域を解析し,増殖したT細胞のクローンと歯周組織に集積しているT細胞が同一のCDR3アミノ酸配列を有することを明らかにした.HLAについては,歯肉あるいは歯周靭帯由来の線維芽細胞に対する自己抗体を持つ患者はparvovirus B19に対しても高い抗体価を示し,これらの患者のHLA class II genotypeは,DQA1^*0101,DQA1^*0501,DQB1^*0503の発現頻度が健常者よりも高いことを明らかにした.また,欧米で報告のあるIL-1のgenotypeと成人性歯周炎との関連については,調べた限りにおいては,日本人ではIL-1のgenotypeと成人性歯周炎との間に相関はなかった.
歯周炎を伴うことが多い低フホスファターゼ症について,2名の発端者およびその家族から臓器非特異性アルカリホスファターゼ遺伝子に新たな点突然変異を見出した.
組織再生に関わる未知の遺伝子の検出は,創傷治癒過程の歯周組織と健康歯周組織から得た遺伝子をサブトラクション法で行った.その結果,治癒過程で発現が増加する未知の16個のcDNAと発現が減少する未知の9個のcDNAを分離することに成功した. -
歯髄細胞から象牙芽細胞への分化と歯髄の石灰化に対する研究
研究課題/領域番号:09307045 1997年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
上野 和之, 高柴 正悟, 加藤 喜郎, 岩久 正明, 泉 利雄, 冨士谷 盛興, 八重柏 隆, 熊谷 敦史, 横瀬 敏志, 斉藤 隆史
配分額:30900000円 ( 直接経費:30900000円 )
象牙芽細胞の活性化による損傷象牙質の再構築は歯の長期保存には重要である。歯髄細胞から象牙芽細胞への分化,および歯髄の石灰化には、種々の成長因子が深く関与していると考えられているが、そのメカニズムの細胞については明らかにされていない。本実験は、これらのメカニズムを解明するために、人歯髄および動物歯髄各々の実験系を用いて検索を試みた。
人歯髄を用いた実験系では、歯髄の器官培養系の確立と分化の可能性、Dentin bridge形成過程におけるヒト歯髄神経終末の役割、重度辺縁性歯周炎と歯髄石灰化との関連,TGF-β、bFGFによるオステオカルシン等の発現の及ぼす活性化ビタミンD_3の影響等が示された。動物歯髄を用いた実験系では,歯髄刺激時に発現する遺伝子およびその導入,歯根部硬組織形成におけるbFGFの影響,YAG laserによる窩洞形成後の子髄反応、控訴し北色蛍光ラべリング法による被蓋硬組織の形成過程,石灰化促進機能を有する接着性レジン直接覆髄剤の開発,in vitroにおける象牙質コラーゲンの石灰化,ラット歯髄細胞の培養系の確立などに関して示された。
今回の一連の研究から,歯髄細胞から象牙芽細胞への分化に関与する作用因子の究明や象牙質形成に影響する非生物学的材料の影響についてはある程度まで解明され,その一部は臨床応用に結びつく可能性が示唆された。また、異栄養性の石灰化に影響を及ぼす作用因子の存在の可能性も強く示唆された。 -
種々なるGrowth factorを応用した歯周組織再建に関する総合的研究
研究課題/領域番号:09307041 1997年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
加藤 熈, 川浪 雅光, 亀山 洋一郎, 前田 勝正, 小田 茂, 高田 隆, 高柴 正悟, 川瀬 俊夫, 大塚 吉兵衛
配分額:38600000円 ( 直接経費:38600000円 )
1.rhBMPを用いた歯周組織再建法の検討
牛骨より抽出したBMPとrhBMP-2とでは,歯周組織に対する反応が異なることが明らかとなった。そこで臨床応用を考え,免疫学的に問題が少なく骨形成能も高いrhBMP-2を中心に歯周組織細胞を用いた研究,および担体に免疫学的に副作用のないポリ乳酸グリコール酸ゼラチン複合体(PGS)を用い動物実験を行った。その結果,rhBMP-2は歯根膜細胞の石灰化能を高めること,PGSを担体として骨欠損を伴う歯周病の治療に用いた場合,歯槽骨のほかセメント質と歯根膜も再生可能であること,中高齢ラットでも骨再生能が著しく増加することが明らかとなった。
2.PDGF,IGF,TGF-β,b-FGFによる歯周組織再建法の検討
PDGF,IGF,TGF-β,b-FGFが歯周組織細胞へ与える影響検討した結果,PDGF-BBは歯根膜細胞の増殖を促進する作用があり,イヌを用いた実験では歯根再植時に用いると根と骨の癒着を防ぐことが示された。IGFとb-FGFは歯根膜細胞の増殖を促進すること,TGF-βは歯肉線維芽細胞を増殖させること,さらにこれらの因子の併用により細胞増殖が増加することが明らかとなった。
3.象牙質や歯周組織に含まれる新しいGrowth factorの検討
象牙質,セメント質,再生途中の組織に含まれるgrowth factorを検討した結果,象牙質中の非コラーゲン蛋白は骨原性細胞や骨芽細胞の増殖を抑制するが,TGF-βを含み骨芽細胞に作用すると考えられた。セメント質にはセメント質由来増殖因子(CGF)が存在し,歯槽骨細胞を増殖させることが明らかとなった。再生途中の歯周組織には骨やセメント質の再生能が認められた。
4.まとめと今後の研究課題
rhBMPは歯周組織再建法に臨床応用できる可能性が高いことが明らかとなり,他のgrowth factorも歯周組織への反応がかなり明らかにされた。今後は各factorの単独使用や併用法について更なる研究を行い再建効果や副作用を明確にする必要がある。 -
合成ペプチドを用いた歯周病の免疫療法確立のための基礎的研究
研究課題/領域番号:09470425 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
村山 洋二, 大山 秀樹, 西村 英紀, 高柴 正悟
配分額:12000000円 ( 直接経費:12000000円 )
歯周病に対して合成ペプチドを用いたP.gingivalis感染に対する免疫療法を導入する試みの第一歩として,Ag53に対するT細胞応答性(T細胞認識部位,HLA拘束性,リンフォカイン産生性および抗体産生への関与)を歯周病に対する疾患感受性の異なるグループ間で比較し,分子レベルでその違いを把握することを行った。その結果は以下の通りである。
1) Ag53を特異的に認識するT細胞株を早期発症型歯周病(EOP)患者6名および健常者16名の被験者から樹立し,それらT細胞株のAg53上の認識部位を調べた結果,EOP患者由来のT細胞株の多くは,Ag53の特定の領域Ag53p141-161をT細胞エピトープとして認識した。それら被験者は共通したHLAハプロタイプを有さなかった。
2) Ag53に対するT細胞応答は,多くの被験者でHLA-DRBl分子拘束性であった。
3) すべてのT細胞株は,Thlタイプのサイトカインであるインターフェロン-γ(IFN-γ)を産生した。Th2タイプのサイトカイン(IL-4,5,6,10)の産生様態は各株ごとに異なった。
4) T細胞が産生するサイトカインがIgG抗体産生にどのように影響するかを評価した結果,Th1に対するTh2タイプのサイトカイン産生量の比率(Th2/Th1)が高いT細胞株は,強いAg53特異的IgG抗体産生を誘導した。しかし,Th2/Th1が低いT細胞株は,抗体産生を誘導しなかった。
5) Ag53特異的IgG抗体産生が誘導された系の培養上清に含まれるIL-5量は,産生のなかった系に比較して多かった。以上の結果は,T細胞株が産生するIL-5が,Ag53特異的なIgG抗体産生に影響を与えることを示唆するものである。
以上の結果から,Ag53p141-161に対するT細胞応答性の違いはP.gingivalis感染に対する感受性を反映する可能性がある。 -
修復象牙質を生物学的に形成促進するための分化・増殖因子の研究
研究課題/領域番号:09671951 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高柴 正悟, 鷲尾 憲文, 滝川 雅之
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
歯髄組織に意図的にしかも能率的に修復象牙質を形成させるには,それに関わる歯髄細胞特異的な分化あるいは増殖因子を明らかにしなければならない。そして,修復象牙質の形成に必要な因子を歯髄細胞に発現させる必要がある。本研究では.1)ある特定の組織や細胞に発現する特異的な遺伝子を同定する方法を確立し,2)象牙質深部に窩洞を形成後に,歯髄組織に発現量の増加する特徴のある遺伝子をスクリーニングし,3)遺伝子またはその産物を象牙細管を経由して歯髄腔に到達させるための基礎データを得た。
1. 窩洞形成後に歯髄組織に発現する特徴的な遺伝子
歯髄組織は微量であるので,少量の組織から発現量の変動する遺伝子を捉える方法を確立した。そして,窩洞形成後に歯髄組織に発現する特ぇ的な遺伝子を,PCR法で増幅したcDNA断片として検出した。
2. 遺伝子またはその産物を象牙細管を経由して歯髄腔に到達させるためのモデル
生活歯髄を含む歯に窩洞形成を行った後に窩底に染色液を塗布して器官培養した。染色液は象牙細管を経由して歯髄腔の内壁にまで達していた。このことから,遺伝子またはその産物は,象牙細管を経由して歯髄に到達可能であることが示唆された。
3. 培養ヒト歯根膜線維芽細胞が特徴的に発現する遺伝子に関する研究
本細胞が特徴的に発現する遺伝子を同定することに成功した。この研究から,表現型が類似する歯根膜と歯肉の繊維芽細胞間では分化・増殖に関係する多くの因子を共通して発現していることが明確となった。これらの情報は,組織標本におけるsubtractive hybridization(SH)の応用に大いに貢献した。
4. 歯周病細菌Porphyromonas gingivalisの菌株間で異なる遺伝子
本菌の膿瘍形成に関連する遺伝子を染色体DNAからSHを用いて同定することに成功した。本成果は,SH法を真核生物へ応用するための基礎的データとなった。 -
L-セレクチンを介したβ_2-インテグリンのシグナル伝達機構から捉える歯周病病態
研究課題/領域番号:09671952 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
葛城 教子, 高柴 正悟
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
我々は以前に,β_2-インテグリン発現異常のある2名の早期発症型歯周炎(EOP)患者を発見した。この研究結果から,β_2-インテグリンは歯周病を規定しているマーカーとなりうることが示唆された。β_2-インテグリン遺伝子を歯周病の遺伝子診断のマーカーとして確立するためには,歯周病患者におけるβ_2-インテグリンのシグナル伝達機構を解析する必要がある。白血球の組織浸潤過程におけるrollingからstickingへの運動は,L-セレクチンを介してシグナルが伝達され,β_2-インテグリンが活性化されることによって誘導されることが分かっている。我々はまず,上記のEOP患者を含む歯周病患者由来のB細胞株を用いて,β_2-インテグリンの発現をL-セレクチンの発現機能との関わりにおいて調べた。
被験細胞として,13名の被験者(EOP患者9名および健常者4名)の末梢血から樹立したEBウィルストランスフォームB細胞株を用い,以下の結果を得た。
1.無刺激時のL-セレクチンの発現量は,被験細胞株間で差がなかった。β_2-インテグリン発現異常のあるEOP患者を含む4被験細胞では,PMA刺激によるL-セレクチンの発現減少の割合が,健常者を含む他の9被験細胞に比べて少なかった。
2.PMA刺激時の上記の4被験細胞では,B細胞培養上清のsoluble L-セレクチン量が健常者を含む他の9被験細胞に比べて少なかった。
以上の結果から4名のEOP患者由来のB細胞株は,他のEOP患者および健常者のそれらとはL-セレクチンの発現量に違いがあり,L-セレクチンの発現機序が異なっていると考えられる。本研究において,L-セレクチンを介したβ_2-インテグリンのシグナル伝達機構のなかで,L-セレクチンの発現機能が一般的でないEOP患者4名が存在することが分かったので,それらの病態を規定する遺伝子が分子生物学的に調べるなら,“歯周病関連遺伝子"の解明となる。 -
トランスフォーミング成長因子の歯根膜線維芽細胞機能制御に関する研究
研究課題/領域番号:08457506 1996年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
新井 英雄, 鷲尾 憲文, 明貝 文夫, 高橋 慶壮, 西村 英紀, 高柴 正悟, 滝川 雅之
配分額:4800000円 ( 直接経費:4800000円 )
トランスフォーミング成長因子(TGF-β)は種々の細胞における増殖,細胞外基質合成あるいは硬組織の代謝などに関わる因子として歯周組織再生における役割が注目されている。本研究は歯周組織再生におけるTGF-βの役割を明らかにすることを目的とし,TGF-βの歯根膜線維芽細胞機能に及ぼす作用ならびに歯根膜線維芽細胞が発現するTGF-βおよびそれらのレセプターの動態を調べた。
その結果,1.TGF-βは培養ヒト歯根膜線維芽細胞のDNA合成,コラーゲン合成,非コラーゲン蛋白合成,および硬組織形成能の指標であるアルカリフォスファターゼ活性すべてを促進した。2.培養ヒト歯根膜線維芽細胞はTGF-β1とそのレセプター(typeI,II,III)を遺伝子レベルで発現した。3.歯根膜の生理的な環境下での咬合圧を考慮し,培養ヒト歯根膜線維芽細胞に機械的外力(緊張・弛緩力を規則的に一定時間)をかけることによって模倣し,TGF-βとそのレセプター(typeI,II,III)発現に対する機械的刺激の影響を調べたところTGF-β1 mRNAとそのレセプター(typeI,II)mRNAの発現はともに抑制された。In vitroにおいてもラット歯周組織におけるTGF-β mRNAの発現をin situハイブリダイゼーションで調べたところ,歯肉線維芽細胞ではなく歯根膜細胞において顕著に発現していることがわかった。
これらの結果よりTGF-βはヒト歯根膜線維芽細胞の細胞増殖,細胞外基質合成ならびに硬組織の代謝といった細胞機能を促進することによって歯周組織再生に重要な役割を果たすことが示唆された。そして,その作用は歯周組織においてオートクリンの機構が働き,さらに咬合によって調節される可能性が示された。 -
活性型ビタミンD3レセプター誘導因子による歯根膜繊維芽細胞の硬組織形成の制御
研究課題/領域番号:08672187 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
滝川 雅之, 高橋 慶壮, 西村 英紀, 高柴 正悟, 新井 英雄
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
歯根膜繊維芽細胞(PLF)の機能はホルモンあるいはサイトカインなどの外来性因子のみならず,細胞自らが産生する内因性因子によっても制御されている。PLFは細胞密度が高くなるとビタミンD3レセプター(VDR)発現を誘導する因子を産生することを我々はすでに明らかにした。そこで本研究では,まずVDR発現誘導因子と既知の増殖因子との関連について調べた。その結果,インシュリン様成長因子-I,IIおよび上皮成長因子はPLFのVDRmRNA発現を誘導したが,トランスフォーミング成長因子は影響しなかった。このことは,PLFのVDR発現がこれら増殖因子も含む様々な内因性因子によって制御されていることを示すものであった。従って,PLFのみが特異的に発現する遺伝子群を同定し,それら遺伝子の面からPLFの機能を考察することとした。PLFの遺伝子群から歯肉線維芽細胞(GF)の遺伝子群をサブトラクトしたcDNAライブラリーを作製し,サザンハイブリダイゼイション法によって,PLFに特異的と思われる34種類のクローンを得た。それらは,5個が未知のクローンであり,その他は各々が既知の遺伝子の一部に高い相同性を示すものであった。この中にはnm23protein,v-fos transformation effector proteinなど,細胞の分化・増殖に関わる遺伝子が含まれていた。これらの遺伝子群は,同一個体のGFに比較して得られたものであり,細胞分化や硬組織代謝のみならず従来の認識にはないPLFの機能を発現する可能性がある。今後は得た遺伝子群を機能によって分類し,どのような分化段階で発現するか発現量の差を含めた特異性を検討する必要がある。
-
Molecular biological study on tissue regeneration
1996年
資金種別:競争的資金
-
歯肉線維芽細胞の亜群構成の変化から促えた歯周病の病態
研究課題/領域番号:06671909 1994年 - 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
新井 英雄, 鷲尾 憲文, 本行 博, 高柴 正悟
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
ヒト歯肉線維芽細胞をインターロイキン(IL)-1存在下で24時間培養すると腫瘍壊死因子(TNF-α)によるプロスタグラジン(PG)E_2産生促進作用が亢進することを明らかにした。また,IL-1によってTNF-αレセプターの数と親和性が低下していることも明らかにした。そこで,IL-1によるヒト歯肉線維芽細胞のTNF-αに対する反応性の変化を,IL-1レセプター(IL-1R)mRNA発現およびIL-1のTNF-αレセプターのサブタイプのmRNA発現様態への影響の面から調べた。
ヒト歯肉線維芽細胞においてタイプIとタイプIIのIL-lRmRNA発現をRT-PCR法によって検出した。また,タイプIIL-lRmRNAの発現量はタイプIIのものよりはるかに多かった。このことから,ヒト歯肉線維芽細胞の表面の主なIL-1RはタイプIであると考えられる。
ヒト歯肉線維芽細胞はタイプIとタイプII双方のTNF-αレセプターのmRNAを発現し,その発現量はタイプIの方がずっと多かった。
細胞をIL-1で刺激すると,タイプIレセプターのmRNA発現量は著名に抑制を受けるが,タイプIIレセプターのmRNA量はほとんど影響をうけなかった。
これらの結果から,TNF-αに対する細胞の親和性(PGE_2産生促進作用)がIL-1によって亢進するという現象は単純にTNF-αレセプターの発現様態で説明できない。 -
炎症性歯周組織におけるインターロイキン8-産生機構に関する分子生物学的研究
研究課題/領域番号:06671912 1994年 - 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
高柴 正悟, 磯島 修, 鷲尾 憲文, 村山 洋二, 宮本 学, 高柴 正悟
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
白血球走化性因子であるInterleukin(IL)-8は,LPS等の炎症刺激によって誘導されるIL-1βおよびTNF-αによってさらに誘導されると考えられる。
本研究では,マウスの皮膚およびマウス真皮培養線維芽細胞におけるIL-8遺伝子の発現様態を調べた。その結果,培養線維芽細胞は,IL-1βやTNF-αの前処理の有無にかかわらず,IL-8遺伝子およびIL-1β遺伝子を発現していた。これらは,培養線維芽細胞の発現するIL-8遺伝子が自ら発現するIL-βのオートクライン機構によって誘導されている可能性がある。しかし,invivoのマウス皮膚真皮線維芽細胞は,外来性のIL-1βやTNF-αで刺激してもIL-8遺伝子を発現しなかった。皮膚でのIL-8遺伝子発現細胞は角化細胞と内皮細胞であった。真皮の線維芽細胞は炎症を伴わない組織内ではIL-1βやTNF-αに対し非感受性でありIL-8遺伝子を発現しないが,in vitroではIL-1βやTNF-αに感受性を示し,IL-8遺伝子を発現する。 -
IL-2産生能の亢進および低下が歯周病発症に果たす役割の分子生物学的研究
研究課題/領域番号:04671159 1992年04月 - 1993年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 一般研究(C)
新井英雄, 明貝 文夫, 高橋 慶壮, 西村 英紀, 高柴 正悟, 滝川 雅之
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
T細胞の歯周病病態への役割を考察することを目的に、歯周病患者48名を含む被験者72名の末梢血を用いて単核球サブセットの割合、及びT細胞機能を調べた。結果は、いずれも個体差が大きく歯周病の臨床所見や病型とは相関し難いというものであったが、CD3分子への刺激でInterleukin-2(IL-2)産生能が亢進あるいは低下した被験者4名が検出された。これら被験者についてIL-2産生能の発現様式を細胞内シグナル転送の点から調べた。その結果、1名の被験者にみられたIL-2産生能亢進に細胞内Ca^<2+>濃度の上昇に関わる過程が関与し、被験者3名のIL-2産生能低下にはこの過程が関与しないことが示唆された。本研究においてIL-2産生能が亢進した被験者では、その原因として細胞内Ca^<2+>の極端な上昇が関与していることが示唆され、このことは歯周病との関わりの面からだけでなく、細胞内Ca^<2+>の上昇そのもののメカニズムの面からも興味がもたれる。一方、IL-2産生能の低下がみられた被験者3名はT細胞の機能低下に基づく易感染性宿主として注目される。本研究でとりあげた特徴的なIL-2産生能を示す4名の被験者のうち3名は若年性歯周炎に罹患していた。しかし、問診と一般血液検査の結果に限っては、これら3名の被験者は歯周病以外の疾患には罹患していなかった。従って、わずかな宿主応答の異常は、歯周病のような、常時慢性的な細菌刺激を受ける局所での感染性疾患に結びつき易いが、全身的な感染性疾患に結びつくことは少ないと考えられる。以上から歯周病の発症と進行と様式は多様で、それらの様式は個体レベルで明確にされなければならないことがうかがわれた。
-
Study on molecular pathogenesis of inflammation
1992年
資金種別:競争的資金
-
白血球膜糖蛋白質変異による歯周病の遺伝子診断の研究
研究課題/領域番号:03454441 1991年 - 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
村山 洋二, 清水 秀樹, 高柴 正悟, 高橋 慶壮, 磯島 修, 栗原 英見, 滝川 雅之, 永井 淳, 阿久津 功, 野村 慶雄
配分額:6500000円 ( 直接経費:6500000円 )
歯周病の遺伝子診断に向かって、1)接着分子インテグリンβ_2発現異常、および2)HLA-DQ遺伝子の変異について研究を行った。
白血球表層の接着分子であるintegrinβ_2の発現が、歯周病の発症と進行に関わる機序を推察することを目的として、白血球粘着異常症(LAD)を有する前思春期性歯周炎患者2名(PP1およびPP2)、integrinβ_2の発現異常を認めるが、限局型若年性歯周炎(LJP)のみを発症している患者1名(LJP1)、integrinβ_2の発現に異常がないLJP患者1名とPP患者1名、および健常者2名のB細胞株について、細胞凝集に関わる細胞生物学的性状ならびにintegrinβ_2β鎖のmRNAレベルにおける変異を調べた。mRNA解析には、B細胞株から得た全RNAを用いて、ノーザンブロット法、reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法およびRNase cleavage法を応用した。B細胞凝集能において、LJP1由来のB細胞は、PMA刺激時、他のLJP患者および健常者由来の細胞に比較して小さいクラスターを多数形成し、細胞凝集の様態を異にした。PP1とPP2由来のB細胞は細胞凝集能をもたなかった。ノーザンブロット法により、PP1とPP2の細胞では、integrinβ_2β鎖mRNAに相当するバンドを約4.4kbとして検出し、その他の被験細胞では約3.2kbとして検出した。β鎖mRNAの発現量は、PP1とPP2の細胞では、その他の細胞に比較して少なかった。RT-PCR法により、すべての被験細胞のintegrinβ_2β鎖mRNAからβ鎖cDNA塩基配列上の73ntから1191ntの領域を増幅することができた。PP1とPP2の細胞のmRNAからは73ntから2385ntの領域を増幅することはできなかった。RNase cleavage法により、PP1とPP2のmRNAにおいて、965ntから1450ntの領域に遺伝子の変異が存在することを検出した。
また、早期発症型歯周炎患者では、HLA-DQβ遺伝子のイントロンに特定な変異を伴うことが多いことを発見した。 -
歯周病患者に検出されたHLA遺伝子変異の解析
研究課題/領域番号:03857257 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
高柴 正悟
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
-
Study on genetics of periodontal diseases
資金種別:競争的資金