共同研究・競争的資金等の研究 - 髙柴 正悟
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コラーゲン結合型FGF-2による水平性歯槽骨吸収に対する歯周組織再生療法の開発
研究課題/領域番号:19H03831 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 松下 治, 伊東 孝, 平山 晴子, 山本 直史, 美間 健彦
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
本研究は,水平性骨吸収に対する歯周組織再生療法を実現するために,既に歯科臨床で応用されている塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と細菌由来のコラーゲン結合ドメイン(CBD)を組み合わせた融合タンパク質(CBFGF)を用いた研究である。本研究の目的は,CBFGFの最適化とイヌを用いた実験モデルによる非臨床試験データの取得である。2019年度は,認可済みのbFGF製剤に合わせて,CBFGFを組換融合型から架橋型へ変更するための実験とイヌの骨欠損モデルを用いた実験を実施した。まず,CBFGFの最適化について,架橋反応の比率・濃度などの反応条件を決定するために,多量のbFGFとCBDを要した。そこで,大腸菌生産系を用いてbFGFとCBDを精製し,実験効率の改善を図った。現在は,CBDとbFGFを架橋する適切な条件を探索しているところである。また,イヌを用いた実験モデルでは,歯周組織再生療法の適応症である垂直性骨欠損(2壁性)で組換融合型CBFGFの有効性を実証し,水平性骨欠損および垂直性骨欠損(1壁性)を作製して,組換融合型CBFGFを投与した。現在,動物へのタンパク質の投与は終了し,一部のサンプルはCT撮影まで行っている。
また,組換融合型CBFGFについてこれまでに得られたデータについては,研究発表(Takashiba S, International Academy of Periodontology, 2019;Nakamura S, et al, International Association of Dental Research, General Session & Exhibition, 2019;岡本ら,日本歯科保存学会,2019;高柴,BioJapan 2019)を行って,今後の研究の進め方やCBFGFの製剤化に関して,様々な研究者や企業と情報交換を行った。 -
研究課題/領域番号:22390397 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高柴 正悟, 前田 博史, 大原 直也, 野添 幹雄
配分額:13000000円 ( 直接経費:10000000円 、 間接経費:3000000円 )
歯周病原細菌の血漿IgG抗体価測定では,全菌体抗原が使用されるためにその標準化・高速化が困難である。本研究では,Porphyromonas gingivalisの全菌体抗原の中から歯周病患者が認識する抗原成分を選抜し,16種類の抗原タンパク質の合成に成功した。さらに,患者血清との反応性を検討した。今後,血清の認識パターンと臨床所見との関連性を分析することによって,測定に有用な抗原分子を特定し,高速自動化を目指す。
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指尖毛細血管採血による血漿抗体価測定を用いた歯周病細菌感染度の判定法の研究
研究課題/領域番号:18209061 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
高柴 正悟, 永田 俊彦, 安孫子 宣光, 山崎 和久, 長澤 敏行, 日野 孝宗, 吉村 篤利, 島内 英俊, 小方 頼昌, 沼部 幸博, 野口 俊英, 村上 伸也, 成石 浩司
配分額:48100000円 ( 直接経費:37000000円 、 間接経費:11100000円 )
我々は, 歯周病検査法としての歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価検査の有用性を検討した。P. gingivalis(Pg)などの4菌株を標的とした。また対象は慢性歯周炎患者549名とした。「BOP陽性率」および「4mm以上の歯周ポケットの割合」を各々3群に分類して各群の抗体価の有意差を調べた結果, Pgに対する血漿IgG抗体価は歯周病の悪化に相応して高値を示した。また「歯周基本治療後」群の抗体価(N=377)は, 「初診時」群の値と比較して4菌株すべての抗原において有意に減少した。すなわち, 本検査法は歯周病病態を評価し得る検査であると考える
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歯周病による腸内の鉄代謝異常が大腸癌の進行に与える影響の解明
研究課題/領域番号:24K12912 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
平井 公人, 大原 利章, 高柴 正悟
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制御性T細胞の変化が関わるシェーグレン症候群特異的な新規非翻訳RNAの探索と解析
研究課題/領域番号:22K09925 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
池田 淳史, 高柴 正悟, 伊藤 達男
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
シェーグレン症候群(SS)は唾液腺に生じる自己免疫疾患で、唾液分泌能の低下により齲蝕や摂食嚥下障害などが発症する。その結果、栄養摂取量の低下を介して健康寿命が短縮するため、社会的に大きな問題となっている。一般にSSを含めた自己免疫疾患の発症・進行には、制御性T細胞(Treg)の異常が関与している。既存のSSに関する研究報告の多くは、唾液腺中に存在するこのTregの数のみに着目し、DNAの塩基配列に依存しない遺伝子の調節機構であるエピジェネティクスの制御によるTregの機能的変化という観点では研究されていない。近年、疾患特異的なlong non-coding RNA(lncRNA)が、エピジェネティクスの制御などを介してTregに影響を与え、自己免疫疾患の発症や進行に関与していることが判明してきたが、SS特異的なlncRNAは発見されていない。
以上から、SS特異的に発現しているlncRNAによるエピジェネティックスの制御を介したTregの機能的変化が、SSの病態に関与しているのではないかという問いが生まれた。従って本研究の主目的を、SS特異的なlncRNA によってどのようにTregの機能が変化するか明らかにし、SSの発症・進行機序の一端を解明することに設定した。
まず、倫理委員会に本実験遂行にあたり、計画書を作成・提出し、承認を得た。そして、岡山大学病院リウマチ・膠原病内科の協力のもと、シェーグレン症候群患者のリクルートを行い、同意が得られた患者から採血を行い、岡山大学病院バイオバンクに資料を登録・保管した。
また、フローサイトメトリーを用いて、研究担当者自身の血液からTregの分離が的確に行えるか確認を行っている。 -
細胞外小胞の口腔トロピズムを基軸とする侵襲性歯周炎の病態解明と診断への応用展開
研究課題/領域番号:21H03119 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山本 直史, 江口 傑徳, 宮地 孝明, 高柴 正悟, 江國 大輔, 井手口 英隆
配分額:16900000円 ( 直接経費:13000000円 、 間接経費:3900000円 )
侵襲性歯周炎(Aggressive periodontitis:AgP)は全身的には健康な若年者に発症し,急速に進行する特殊な歯周炎であるが、その発症病態は不明なままである。本研究では,臓器特異的な作用(臓器トロピズム)が近年注目されている血中の細胞外小胞(EV)とAgPの病態関与の可能性を調べた。
今年度は、AgP患者6名と健常者3名の初診時血中EVから,AgPで高発現するmiRNAをRNAシーケンスにて調べ,マーカー候補となるそれらのmiRNA mimicをヒト歯肉線維芽細胞と歯周炎モデルマウスに遺伝子導入した。誘導された炎症性サイトカインの発現量をリアルタイムPCR法とELISA法にて測定し,歯槽骨吸収量をマイクロCTにて調べた。
健常者と比較して,AgP患者で発現量が2倍以上増加したmiRNAを500種類以上同定した。それらのうち5種のmiRNAとmiR-181b-5pを歯肉線維芽細胞に導入すると,IL-6とIL-1βの産生が増加した。とりわけ,miR-181b-5p を歯肉組織に導入すると歯槽骨吸収が進行した。
すなわち、AgP患者の血中EVには診断マーカー候補となるmiRNAが多く発現しており,miR-181b-5pはIL-6とIL-1β発現を伴う炎症を助長することによってAgPを重症化する可能性が示された。 -
細胞外小胞の口腔トロピズムを基軸とする侵襲性歯周炎の病態解明と診断への応用展開
研究課題/領域番号:23K21486 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山本 直史, 江口 傑徳, 宮地 孝明, 高柴 正悟, 江國 大輔, 井手口 英隆
配分額:16900000円 ( 直接経費:13000000円 、 間接経費:3900000円 )
侵襲性歯周炎(Aggressive periodontitis:AgP)は全身的には健康な若年者に発症し,急速に進行する特殊な歯周炎であるが、その発症病態は不明なままである。本研究では,臓器特異的な作用(臓器トロピズム)が近年注目されている血中の細胞外小胞(EV)とAgPの病態関与の可能性を調べた。
昨年度、AgP患者6名と健常者3名の初診時血中EVから,AgPで高発現するmiRNAをRNAシーケンスにて調べ、マーカー候補を同定した。今年度は、それらのmiRNA mimicを歯周炎モデルマウスに遺伝子導入し、炎症メカニズムを調べた。誘導された炎症性サイトカインの発現量をリアルタイムPCR法にて測定し,歯槽骨吸収量をマイクロCTにて調べた。
マーカ候補の5種のmiRNAとmiR-181b-5pをマウス歯肉組織に導入するとに導入すると,IL-6とIL-1βの産生が増加した。とりわけ,miR-181b-5p を歯肉組織に導入すると、M1マクロファージやTh1とTh17細胞が増加し,歯槽骨吸収が進行した。
すなわち、AgP患者の血中EVには診断マーカー候補となるmiRNAが多く発現しており,miR-181b-5pはIL-6とIL-1β発現を伴う炎症を助長することによってAgPを重症化する可能性が示された。
さらに、EVが内包する炎症性miRNAが歯周組織に到達するメカニズムに,血中EVの特異表面蛋白を介した臓器指向性が関与するとの仮説の下、EVのプロテオーム解析を行った。昨年度までに検証した様々なEV抽出方法と前処理法の結果を元にプロトコルを確立し、まずは健常者血中のEVのプロテオーム解析を行ったところ、多くのEVマーカーを含む2844蛋白質が同定・定量された。 -
プロトンポンプ阻害剤服用時に歯周病原細菌が腸内細菌叢へ及ぼす影響
研究課題/領域番号:21K09893 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
平井 公人, 横田 憲治, 高柴 正悟
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
本研究の目的は胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用により胃酸の殺菌作用が低下した状態で,歯周病原細菌であるPorphyromonas. gingivalisもしくはその代謝産物が腸内細菌叢へ与える影響を調査することである。健康なマウスでは経口投与された細菌はほとんどが胃酸で殺菌されるが,PPI投与により胃酸の殺菌作用が低下した状態ではP.gingivalisは胃を生菌として通過し遠位腸管まで到達できるかどうかを検討した。
まずはPPIであるランソプラゾールのマウスへの経口投与が胃酸のpHをどの程度上昇させるかを検討するためにPPI投与後24時間後に安楽死させ切除した胃の内容物のpHを計測した。PPI投与群でも非投与群でもpHは2-3程度と差がなかった。これはマウスの餌の摂取制限ができないために胃内容物が多かったことが原因と考えられるため,今後はPPIの薬効の確認には血中ガストリン濃度の測定などで評価する必要がある。
歯周病感染モデルではマウスに1週間PPIの経口投与を行った後にP.gingivalisを2日間経口投与し,24時間後に盲腸の糞便を回収した。回収した糞便から約10mg採取し変法GAMブイヨン寒天培地上で嫌気培養し得られた菌体から採取したDNAと,盲腸糞便から直接採取したDNAを用いてP.gingivalisを特異的に認識するプライマーを用いてのDNA量をリアルタイムPCR法を用いて評価したとこと,PPIの有無に関わらず盲腸内で生菌としては確認されなかったが,盲腸内からはP.gingivalis遺伝子を確認することができた。また大腸組織の病理学的評価においてはPPI投与群で非投与群に比べてP.gingivalis経口投与によると思われる腸管粘膜の炎症性細胞浸潤や腸管上皮の傷害などの炎症所見が重症化する傾向にあった。 -
がん化学療法に伴う口腔粘膜炎の疼痛緩和・発症制御を目指す 新規口腔粘膜保護材の開発
研究課題/領域番号:20333757 2020年08月 - 2022年03月
日本医療研究開発機構 橋渡し研究戦略的推進プログラム・シーズB
大森 一弘, 高柴正悟, 入江 正郎, 堀綾花, 吉田道弘, 堀田勝幸, 本田成道, 小里達也, 山本裕也, 高木智久, 二村優次
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歯周病原細菌の感染とタンパク質シトルリン化を介する関節リウマチの病態解明
研究課題/領域番号:20K09954 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
畑中 加珠, 大森 一弘, 高柴 正悟
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究は、関節リウマチとその類似疾患患者を対象に、シトルリン化に関与する歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価を調べることによって、歯周病原細菌の感染と関節リウマチの病態との関連を明らかにすることを目的としている。
抗シトルリン化蛋白抗体陽性を特徴とする関節リウマチとその類似疾患で抗シトルリン化蛋白抗体陰性であるリウマチ性多発筋痛症の患者を対象とした。研究協力者である小山芳伸医師から岡山赤十字病院 膠原病患者の「検体バンク」に保存されている関節リウマチおよびリウマチ性多発筋痛症患者142名の初発時(治療前)の血清の提供を受けた。シトルリン化の関与が報告されているPorphyromonas gingivalis(Pg)およびAggregatibacter actinomycetemcomitansを含む歯周病原細菌9菌種13菌株に対する血清IgG抗体価の測定を行った。なお、既に岡山大学および岡山赤十字病院の倫理審査委員会の承認は得ている。
抗シトルリン化蛋白抗体陽性群と陰性群で歯周病原細菌に対する血清抗体価の違いを検討したところ、陽性群とりわけ高値陽性群は陰性群と比較してPgに対する血清抗体価が有意に高い結果となった。また、関節リウマチ患者群とリウマチ性多発筋痛症患者群とで血清抗体価を比較したところ、有意な差は認められなかった。さらに、関節リウマチ患者に絞って、疾患活動性や治療反応性と血清抗体価との関連についても検討したところ、活動性に関連はなかったが、治療反応性が不良な患者はPgおよびAaの血清抗体価が有意に高い結果となった。すべての解析において、両疾患のリスク因子である喫煙についても検討したが、関連は見出せなかった。 -
APPLICATION OF RvD2 AS A REGENERATIVE DIRECT PULP CAPPING MATERIAL
研究課題/領域番号:20K09938 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
アリアス・マルティネス スレマ・ロサリア, 大森 一弘, 山城 圭介, 高柴 正悟
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
Vital pulp therapy (VPT)’s aim is reparative dentin production after pulp injury. Current VPT agents have biocompatibility problems. Previously we proved that RvD2, an anti-inflammatory lipid mediator, produced in vivo from polyunsaturated fatty acids healed apical periodontitis (AP). Having analgesic, angiogenic, bacterial clearance effects, RvD2 is the "ideal VPT agent". In 2020, we reported reparative dentin (RD) after RvD2 and Ca(OH)2 application (rat model). IMH results showed GPR18’s expression in RvD2 group. This year we added this agent in dental pulp cells, finding decreased expression of Tnf-α and Il-1β, suggesting that RvD2 had an anti-inflammatory effect. RvD2 may establish a favorable environment for the formation of RD in the dental pulp by its anti-inflammatory effects.
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超高齢社会での応用を目指す低分子化合物terreinの標的分子の同定・機能解析
研究課題/領域番号:19K10108 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大森 一弘, 中山 真彰, 竹内 恒, 高柴 正悟, 萬代 大樹
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
超高齢社会を迎えた我が国において,食生活を司る口腔機能を維持することは健康寿命を延伸する上で必須である。一方,8020達成率が50%を超えた現代において,高齢者の口腔内に存在する歯自体が感染源となり,口腔疾患の罹患率が上昇する新たな問題が生じている。 そのため,安全・簡便に応用できる新規口腔治療法の開発が社会的に望まれる。申請者らの研究グループは,抗菌・抗炎症作用を有する一方,極めて細胞毒性が低い真菌由来代謝産物terreinに着目し,1) 有機化学的大量合成経路の確立,2)抗IL-6効果,3)破骨細胞分化抑制効果等を報告した。しかし,terreinの作用機序(標的分子)は未だ不明であり,terreinの有益性を検証する上で標的分子の同定は必要不可欠である。本研究では,様々な薬理作用を期待できる低分子化合物terreinの標的分子を同定し,歯内・歯周疾患モデルを用いた機能解析を行い,terreinの新たな口腔治療薬(治療法)としての可能性を検証することを目的としている。本年度は,terreinの破骨細胞分化抑制メカニズムの一端として、RANKL誘導性のNFATc1の発現を抑制するメカニズムの一端を解明し,報告した。従来考えていたRANKL刺激時に誘導されるNF-kaB経路、MAPKs経路に影響を与えず、別の経路を抑制することによって骨吸収を抑制する可能性が示唆された。今後,terreinの標的分子を同定していく上で,その候補分子の数を絞り込む上で有用な結果が得られたと判断する。
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フッ素による歯周病態のメタボリックコントロールを目指す基礎研究
研究課題/領域番号:19K10150 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大杉 綾花, 高柴 正悟, 久保田 聡
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究の目的は抗う蝕作用を持つフッ素イオンが歯周組織の線維化を抑制するかを、検証することである。その第一段階として、申請時の研究計画通りにマウス線維芽細胞株NIH-3T3を用いた検討をまず行った。通常条件で培養した同細胞にフッ化ナトリウム(NaF)を添加し、抗線維化分子であるCCN3の遺伝子発現誘導が起こるか検証したところ、NAFの存在の如何にかかわらずCCN3遺伝子発現は定量限界値以下にとどまった。続いて、TGF-betaで線維化を誘導した条件でNaFの効果を検討したところ、軟骨様細胞株ではNaFによって線維化分子CCN2の遺伝子発現が抑制されたが、NIH-3T3細胞では逆に強く誘導された。なお、申請時には計画してはいなかったが、この予想外の結果を検証するために、通常条件下におけるNaFのCCN2遺伝子発現に対する影響も検討した。その結果、やはりNaFによるCCN2遺伝子の発現誘導が観察された。ところが興味深いことに、TGF-betaによる線維化誘導によって発現が上昇したI型コラーゲン遺伝子については、仮説通りにNaFによって抑制された。これらNIH-3T3による実験結果は,2つの意味で重要である。1)NaFが線維化とはI型コラーゲンの増産に他ならないので、NaFの抗線維化作用がここに立証され、本研究を発展させる根拠が得られたこと、2)NaFがCCN2産生を誘導しつつ線維化を抑制するという事実は、CCN2が線維化を引き起こすとされてきた従来の定説を覆すものであること。今後は、これらを踏まえつつ、次年度の研究に進むことになる。次の研究ステップは、ヒト歯肉線維芽細胞を用いて同様の結果が得られるかを検証する実験である。当初の計画ではヒト正常歯肉から得られた線維芽細胞をそのまま用いる予定であったが、実験系の安定性を考慮して、これを不死化した細胞株を樹立して、検討を行うことにした。幸い初年度に、この細胞の樹立は完了できている。
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末梢血単核球のミトコンドリア活性化を用いた新しい運動トレーニング評価法の開発
研究課題/領域番号:18K19681 2018年06月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
荻野 景規, 古松 毅之, 長岡 憲次郎, 梅田 孝, 伊藤 達男, 荻野 学芳, 荻野 志穂奈, 浜田 博喜, 高柴 正悟, 松田 依果, 東 華岳, 菅沼 成文, 栄徳 勝光
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
運動トレーニングによる酸化ストレス刺激が、ミトコンドリアの活性化による抗酸化酵素や解毒酵素群の発現上昇を招き、寿命延伸につながるというミトホルミシスの概念が、運動後の生体の骨格筋細胞の 【生検】 組織で検討されていた。本邦では、筋肉の 【生検】 は、一般的ではないので、末梢血単核球でも評価出来るか可能性を検討してきた。当初、毎日1時間の運動を1ヶ月続けることにより末梢血単核球で、抗酸化酵素群のmRNAの上昇が検出可能であったが、毎日30分、2週間の軽いジョギングの臨床研究で、末梢血単核球のSOD1、SOD2、catalase、selenoprotein P等の抗酸化酵素群や CARS2、SQR等の硫化水素代謝酵素、SIRT3等のmRNAの発現上昇が認められ、ミトホルミシス現象を検証できた。運動中止後2週間経過した時点でもこれらの酵素群の高発現を認め、運動効果の持続を認めた。運動前の検証で、SOD2は、運動習慣のある人で有意に高いことが判明した。SOD2やSIRT3、CARS2、SQRはミトコンドリアに存在する酵素であり、特にCARS2、SQRは、GSH合成や硫化水素代謝酵素であり、これらの酵素の発現上昇は、電子伝達系からATP合成能の増加の可能性もある。ヒトの運動後の末梢血単核球のミトホルミシス現象は、ヒト培養単核球であるTHP1を、低酸素から再酸素添加状態でも同じ結果が得られることから、運動による末梢血単核球細胞の抗酸化酵素上昇発現は、筋肉だけの現象ではなく、運動により末梢血細胞を含む全組織細胞が、低酸素後の再酸素化(虚血再還流)でミトコンドリアが活性化され、誘導されることを示した。
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末梢血単核球のSOD2mRNAと運動習慣と関連性を検証するため、岡山県で最も企業健診受診者の多い健診機関である淳風会で企業健診受診者約400名を対象に行い、横断研究で、現在解析中である。 -
Rothia mucilaginosa感染症の病因解明と感染コントロール法の確立
研究課題/領域番号:18K09613 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
前田 博史, 辻 則正, 高柴 正悟, 曽我 賢彦
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
Rothia mucilaginosaの根管内感染分布状態を調べ、根尖性歯周炎の病態との関連性について検討した。臨床サンプルの採取は大阪歯科大学医の倫理委員会の承認のもと(大歯医倫 第110972号)、指針に従って実施した。
根管細菌サンプルを200名の患者から採取した。採取したサンプルからDNAを抽出し、PCR法を用いて、R. mucilaginosa, R. aeria,ならびにR. dentocariosaの根管内分布を調べた。その結果、R. mucilaginosaは24.5%、R. aeriaは47.5%、そしてR. dentocariosaは27.5%の割合で感染根管内に分布していることが明らかとなった。
根尖部歯肉に腫脹を認める場合のR. mucilaginosaの検出頻度は42.9%であり、症状との関連性が認められた。同様に根尖部にエックス線透過像が存在する場合、ならびに打診痛が認められる場合のR. aeriaの検出頻度は、58.1%ならびに56.7%であり、R. aeriaの分布とそれぞれの臨床所見に関連性があった。さらにR.aeriaが検出された場合には、何等かの炎症所見が患歯に認められることが、統計学的有意差をもって示された。
Rothia種は、造血幹細胞移植患者をはじめとする易感染性宿主の全身感染症起因菌としての報告が相次いでいる。本研究結果は、日本人の感染根管内に比較的高頻度にRothia種が分布していることを示すものであり、感染根管が、易感染性宿主においてはRothia感染症の感染巣となるリスクを示唆するものである。また、炎症所見との関連性が認められる結果は、根管内から歯周組織へ菌が移行していることを強く示唆するものである。 -
幹細胞ニッチの制御を目指したインテグリンペプチド療法の開発
研究課題/領域番号:18K09576 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
山本 直史, 小林 寛也, 山城 圭介, 高柴 正悟
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
組織再生のためには,増殖因子と細胞外基質との協調した相互作用によって規定される幹細胞の微小環境(幹細胞ニッチ)の構築が必須である。我々は,幹細胞ニッチの制御能を有するインテグリンα3阻害ペプチド(α325)を用いて,α325/増殖因子含有ゲルによる創傷治癒・組織再生促進効果を本年度に調べた。
1)抜歯窩モデルにおける組織再生効果
再生骨量の定量性高いマウス抜歯窩モデル(Aoyagi et al, J Cell Biochem, 2018)を用いて,骨再生のためのα325の有効濃度を探索した。担体として,昨年度の検証結果から,既報(Nakamura et al, J Periodontol, 2019)に従いコラーゲンパウダー(CP)を用いた。CPはin vivo実験における操作性,滞留性は非常良好であったが,残留CPによる抜歯窩の治癒阻害が散見された。これはマウス抜歯窩の治癒速度がCPの吸収速度を上回るためと考えられた。
2)ラット骨欠損モデルにおける組織再生効果
上記Nakamuraらの方法に従ってラット骨欠損モデルを作製し,α325/増殖因子含有CPによる創傷治癒・組織再生促進効果を調べた。α325填入後8週において,α325はCPのみと比較して歯槽骨量を有意に増加し(1.31倍),それはFGF-2の効果(1.21倍)と同程度であった。また,α325とFGF-2を混合添加すると,さらに骨量は増加した(1.50倍)。すなわち,α325は創傷治癒・組織再生促進効果を有し,さらに増殖因子との併用が有効である可能性が示された。 -
越境性大気中PM2.5結合ヒトアルブミンの生体影響とその予防法の開発
研究課題/領域番号:18H03039 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
荻野 景規, 尾長谷 靖, 菅沼 成文, 栄徳 勝光, 荻野 学芳, 荻野 志穂奈, 市村 宏, 長岡 憲次郎, 高柴 正悟, 伊藤 達男, 早川 和一, 中村 裕之, 上原 孝, 浜田 博喜, 岡野 光博, 江口 依里, 竹本 圭
配分額:12870000円 ( 直接経費:9900000円 、 間接経費:2970000円 )
大気中PM2.5にヒトアルブミンが結合していることを発見し、ヒトアルブミン抗体を用いた免疫学的手法及びプロテオーム解析で証明してきた。しかしながら、プロテオーム解析では、ヒトアルブミンはヒト試料の混入としてとらえられることが多く、データの確信を得るため、さらなる検証を進めた。PM粒子からタンパク質を抽出し、ヒトアルブミンに対する特異抗体でさらに抽出し、アミノ酸に分解して、3-ニトロチロシンを検出することが出来た。このことは、PM2.5に結合したヒトアルブミンが、大気中に浮遊する過程で、オゾンや二酸化窒素等の大気環境物質との反応したものであり、実験の過程で混入したものではないことを証明できた。一方、PM2.5の気管支上皮細胞への影響評価を、培養気管支上皮細胞でおこない、毒性の評価に使用されるLDHやWST-8では、PM2.5は、LDH及びWST-8の反応を阻害することがわかり、PM2.5が直接電子伝達を傷害している可能性が認められた。PM2.5がヒトアルブミンを添加することによりミトコンドリアに局在する抗酸化酵素SOD2のmRNAを有意に発現上昇する現象をすでに認めており、追加実験で、活性酸素の上昇、ミトコンドリアの障害をみとめたことより、PM2.5とヒトアルブミンの共添加は、細胞内ミトコンドリアの電子伝達系を阻害している可能性が示唆された。さらに、PM2.5とヒトアルブミンの共添加によるSOD2 の発現上昇は、クラスリン依存性エンドサイトーシスの重要な因子であるAP2A1のsiRNA添加により抑制され、カベオリンのsiRNAでは、抑制されなかった。すなわち、PM2.5は、クラスリン依存性エンドサイトーシスにより細胞内へ侵入していることが判明し、PM2.5の細胞内侵入機序が明らかとなった。
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Inflamm-agingを中心とした歯周病,サルコペニア,糖尿病の病態解明
研究課題/領域番号:18K09598 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
小林 寛也, 山本 直史, 山城 圭介, 高柴 正悟
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
サルコペニア予防は高齢者の要介護度を低下させるために重要な課題である。近年,炎症性老化の概念が提唱され,全身の慢性炎症が骨格筋の筋衛星細胞の分化能を障害し,サルコペニアを発症することが示唆されている。歯周病は口腔常在細菌の感染で生じる慢性炎症性疾患であり,加齢に伴う免疫機能低下により進行する。歯周炎症によって産生される炎症性サイトカインは,全身の慢性炎症を惹起し,肺炎や糖尿病などの悪化に繋がることが明らかになっている。また,サルコペニアによる骨格筋量の減少がインスリン抵抗性に繋がることから,歯周病由来の慢性炎症はサルコペニアの進展,糖尿病の悪化と負のスパイラルを形成している可能性がある。
そこで本研究の目的は,歯周病原細菌の感染により惹起される慢性炎症が,筋組織の治癒過程,インスリン抵抗性に及ぼす影響とその制御メカニズムの一端を,老齢マウスを用いた歯周炎モデルにおいて明らかにすることである。平成31年度に行った研究成果は以下の通りである。
①老齢歯周炎モデルマウスの安定的作製を実現した。
②モデルマウスから血清を採取し,Bio-Plexマルチプレックスによって炎症性サイトカインを網羅的に解析し,歯周炎や糖尿病の有無での発現パターンを比較した。その結果,いくつかのサイトカインの挙動に変化が生じていることを確認した。
今後は,各種組織(筋,血管,骨,関節など)の再生・治癒に炎症性サイトカインが与える影響を免疫学的および組織学的手法を用いて調べていく。 -
抗炎症性低分子化合物terreinおよびその類縁体の歯内歯周疾患治療への応用
研究課題/領域番号:16K11549 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大森 一弘, 中山 真彰, 高柴 正悟, 萬代 大樹
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究では,抗炎症性低分子化合物terreinの炎症性骨吸収疾患(特に歯内・歯周疾患)に対する治療薬としての可能性を検討した。 その研究成果として,①新規terrein類縁体の合成に成功,破骨細胞分化抑制効果を確認した,②terreinの細胞内標的分子の一つとしてJAK1のタンパク質リン酸化を抑制することを確認した,③絹糸結紮歯周病マウスモデルにおいてterreinを腹腔投与すると有意に歯槽骨の吸収を抑制することを確認,炎症性細胞の上皮下への浸潤を抑制することを確認した。以上の結果から,低分子化合物terreinの歯内歯周疾患治療薬として応用できる可能性が示唆された。
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研究課題/領域番号:16K20670 2016年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
山城 圭介, 青柳 浩明, 井手口 英隆, 高知 信介, 山本 直史, 高柴 正悟, 和氣 秀徳, 西堀 正洋
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
High mobility group box 1(HMGB1)は,DNA結合タンパク質であるが,組織の損傷や壊死によって細胞外へ分泌された場合,炎症メディエーターとして機能する。HMGB1が歯周炎の進行にどのように影響を及ぼすか,その詳細なメカニズムは未だ明らかになっていない。本研究の結果,炎症刺激により歯肉上皮細胞,マクロファージ様細胞からHMGB1が産生されることが明らかとなった。また,歯周炎モデルマウスに抗HMGB1抗体を投与することで,歯周炎による炎症は抑制される。その結果,好中球の遊走,IL-1βの産生などが抑制され,歯周炎による骨吸収が抑制されることが明らかとなった。