共同研究・競争的資金等の研究 - 大橋 俊孝
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基底膜コラーゲン遺伝子の機能解析に関する共同研究
研究課題/領域番号:11694280 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:8200000円 ( 直接経費:8200000円 )
基底膜の機能解析に関する三年間の研究結果として次のような研究結果が得られた。
1)Col4a遺伝子発現停止マウスの解析を行うことにより、α(IV)鎖の生体内における生物学的機能について推測することが出来た。col4a3遺伝子のノックアウトマウスを入手したのでこのマウスの解析を行なうことにより、IV型コラーゲン遺伝子の機能を解析する方法論を設定できた。また、他のcol4a遺伝子ノックアウトマウスの作成を新たに開始したので、IV型コラーゲン遺伝子の発現を完全に停止したマウスの表現系の解析が可能になった。
2)IV型コラーゲン分子の会合体様式の解析
新しい解析方法、コラーゲン部分を細菌コラゲナーゼで分解し、NC1ヘキサマー解析を、未変性コラーゲンを認識する特異的モノクローン抗体を用いた免疫沈降と、変性したコラーゲン鎖を認識する特異的モノクローン抗体を用いたウエスタンブロット解析により、生体内での高分子会合体様式の解析に成功した。その結果、腎糸球体ではα3α4α5鎖によるネットワークとα1α2によるネットワークが別々に構築されていることが分かった。他に平滑筋細胞周囲基底膜の解析も行ない、こちらはハイブリッドネットより構築されていることが分かった。
3)腎糸球体基底膜の解析によりその特異機能はα3α4α5鎖によるネットワークによることが明確になったが、同様のα3α4α5鎖会合体が脳脈絡叢基底膜にも存在することを明らかにした。これは上衣細胞が産生し、血液成分の濾過を行なうための基底膜のfiltration機能と大きく関わりあうことが判明した。 -
エンドスタチンの血管内皮細胞増殖抑制効果の機構
研究課題/領域番号:11470274 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:13900000円 ( 直接経費:13900000円 )
1)血管内皮細胞培養系での低酸素状態でのXVIII型コラーゲンの生合成変化
ヒト毛細血管内皮細胞および周辺細胞の培養系で、XVIII型コラーゲン遺伝子の発現を調べると、共に正常酸素濃度に比べて、低酸素状態ではXVIII型コラーゲン遺伝子の発現は、RNAでも蛋白レベルでも優位に低下していることが分かった。
2)In vivoにおけるエンドスタチン投与によりChondrosarcomaの縮小効果
ヌードマウスにヒトリコンビナントエンドスタチン(50μg/kg/day)を腫瘍周辺に三週間投与することによって、明らかにchondrosarcomaの増生が抑えられた。しかしながら、chondrosarcomaのcell lineであるOUMS-27の細胞培養系では、0-100ng/mlの濃度で投与したリコンビナントヒトエンドスタチンの増殖抑制効果、遊走活性に変化はなかった。bFGFおよびVEGFで活性化したHUVECの遊走活性は、エンドスタチンによって阻害された。エンドスタチンはI型コラーゲン上での血管内皮細胞の遊走活性、接着活性は阻害したが、増殖活性には影響がなかった。
3)XVIII型コラーゲンとXV型コラーゲンの血管基底膜上での発現部位の相違
XVIII型コラーゲン遺伝子の翻訳産物は、血管基底膜に認められた。アミノ酸配列、ドメイン構造が似ているXV型コラーゲンも同様に、血管基底膜に認められる。しかしながら、局在は微妙に違っていた。平滑筋細胞周囲基底膜にはどちらかもしくは両コラーゲンが存在したが、毛細血管周囲基底膜は、臓器組織によって、両方のコラーゲンもしくはXVIII型コラーゲンのみが存在した。このことは、両コラーゲン遺伝子の生理学的機能と関連があるかもしれない。 -
新生血管の構築と基底膜コラーゲンの新しい機能
研究課題/領域番号:11877121 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
1 血管系特に毛細血管全体におけるXVIIIコラーゲンおよびXVコラーゲン遺伝子の発現
両コラーゲンは内皮細胞直下基底膜と血管壁に存在する平滑筋細胞周囲の基底膜であることがわかった。毛細血管内皮細胞下基底膜ではXVIII型とXV型を共通に発現するものが認められる.即ち腎や小腸粘膜、皮膚の毛細血管の内皮細胞下基底膜はXVIII型/XV型両者が共存する.しかしこれは組織臓器により異なり、肺胞壁、肝類洞、糸球体基底膜はXVIII型が主であり、他方胎盤、心臓、骨格筋、小腸筋層ではXV型が主であった.しかし、XVIII型/XV型両者の発現のない毛細血管は認められなかった.このように、毛細血管内皮細胞下基底膜のXVIII型とXV型の発現には多様性がある、XVIII型とXV型ともに発現するものが基本だが、類洞や糸球体基底膜のように特殊化した毛細血管ではXVIII型が優位に発現された.
2 基底膜IV型コラーゲンの新しい機能
IV型コラーゲンのα鎖は6種類あり、中央にコラーゲン部分、N末(NC2ドメイン)とC末(NC1ドメイン)に非コラーゲンドメインを有する。私達は、これらの6種類のα鎖のNC1ドメインをリコンビナントで作製し、これらを用いて血管内皮細胞の接着性と走化性をみたところ、α2、α3、α6鎖NC1ドメインにそれを抑制する活性が認められた。さらに、血管内皮細胞の接着と走化性はインテグリンαvβ1依存性であることが分かった。鶏胚の系(CAMアッセイ)でbFGFによって誘導された血管新生が、明らかにコントロールとくらべて優位に、リコンビナントα2、α3、α6鎖NC1ドメインによって抑制されるという結果を得た。このことは初めての報告であり、IV型コラーゲンの断片に新しい機能があることが明らかになったという意味で意義のある発見である。 -
人工臓器作製を目指した基底膜再構築の基礎研究
研究課題/領域番号:10557113 1998年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:12900000円 ( 直接経費:12900000円 )
私達は、上皮細胞/内皮細胞とマトリックスとの間に存在する基底膜を産生し、細胞とマトリックスとの間に挿入することによって、生体内と同じ構成の人工臓器を作製することを究極の目的とする。本研究では、IV型コラーゲンのα鎖構成分子作製のための基礎研究を行なってきた。
・平滑筋細胞周囲基底膜分子構成が臓器により異なる。臓器特有機能と相関する可能性がある。
・COL4A3とCOL4A4遺伝子の上流域の構造と発現制御の問題を、ヒトの遺伝子について解析し、二つの転写産物が二つのプロモーターから発現されていることを明らかにした。
・ウシ卵巣廬胞周囲の基底膜分子構成が発育段階によって異なってくることを示した。
・細胞培養系においてα1(IV)鎖とα2(IV)鎖の生合成を調べたところ、特にα2(IV)鎖がProMMP-9と相互作用していることをが明らかになった。
・正常乳腺上皮細胞と、癌化した上皮細胞下基底膜のIV型コラーゲン分子構成を見ると、正常ではα1/α2とα5/α6分子であるのが、癌化、浸潤度、悪性度によって分布が異なることが分かった。
・COL4A5遺伝子に変異が認められているイヌAlport症候群の例をを観察すると、mRNAレベルではα5(IV)鎖が減少しているのにα6(IV)鎖は正常と比べ変化がないが、タンパク質レベルでは両α鎖共に欠如している事が分かった。α6鎖産生が別の機序で行なわれ、α5/α6分子を形成している可能性を示していることが分かった。
・上皮細胞直下基底膜の分子構成が臓器により異なる。臓器特有機能と相関する可能性がある。
・複数のIV型コラーゲンのNC1ドメインには、血管新生を抑制する活性があり、腫瘍増生を抑えることを初めて示した。
・LMX1B遺伝子の変異で生じるNail patella症候群では腎糸球体基底膜に異常が起こるが、Lmxlb(-/-)マウスでは腎糸球体においてα3(IV)鎖とα4(IV)鎖が減少していることを突き止めた。さらにこの転写因子であるLMX1BがマウスとヒトのCOL4A4遺伝子の第一イントロンのエンハンサー様配列に結合するだけでなく、発現を上昇させることを明らかにした。 -
軟骨細胞分化を誘導する因子のクローニングに関する研究
研究課題/領域番号:10877227 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
二宮 善文, 植木 靖好, 百田 龍輔, 大橋 俊孝
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
本研究は、肢芽発生過程において、軟骨新生を誘導する分化機構を分子の変化として捉えるために、軟骨分化誘導因子をクローニングすることを目的として、現在までに鶏胚の肢芽Stagc20(間葉系細胞)とStage24(軟骨細胞系)からmRNAを抽出し、前者からcDNAライブラリーを作製、後者から引き算し、残りのcDNAをPCRで増幅することにより前者に陽性であって後者に陰性であるクローンを選び出し、これらのクローンについて、そのポリペゾチド構造、遺伝子構造と発現様式を検索し、性質を調べ、軟骨を誘導する機能を有するか否かを調べてきた。取得クローンについて:1)間葉系細胞mRNAと軟骨細胞系mRNAを用いたノザンプロット、2)データーベースによる既報の情報の入手、3)重複久ローン単離により翻訳部位のアミノ酸配列、4)鶏胚全身in situハイブリダイゼーションによる発現パターンの検索、を行ってきた。間葉系細胞と軟骨細胞RNAを抽出し、引算ハイブリダイゼーションPCR法によって、前者に陽性であって後者に陰性であるcDNAクローンを選び出した結果、このなかで興味ある発現パターンを示すいくつかのクローンについて重点的に、ポリペプチド構造と発現部位の同定、他の軟骨特異的遺伝子群との発現時期の比較、等の性質を詳細に検討してきた。得られた複数のクローンが間葉系細胞RNAに強くハイブリダイズし、これらのなかに間葉系細胞を軟骨へと分化を誘導する因子が含まれていることを示唆した。
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び慢性食道平滑筋腫の分子生物学的解明の試み
研究課題/領域番号:09671309 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 植木 靖好, 百田 龍輔, 二宮 善文, 吉岡 秀克
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
び慢性食道平滑筋腫の病因、平滑筋の分化増殖とIV型コラーゲンの関係を分子生物学的に解明することを目標として研究を行ってきた。
1. アルポート症候群合併び慢性食道平滑筋腫(DL+AS)患者遺伝子変異解析
我々はDL+AS患者においてCOL4A5/COL4A6遺伝子上流17kbに及ぶ欠失を同定し、その詳細な切断点を解析した。その結果、欠失にはトポイソメラーゼI型、II型の関与が考えられた。また、この患者は体細胞モザイクであった。この欠失は既に報告されている症例で最小のものであり、DL+ASの発症機序解明に有力な手がかりになると考えられる。
2. アルポート症候群合併び慢性食道平滑筋腫(DL+AS)患者平滑筋腫の免疫組織学的解析
上記DL+AS患者の食道平滑筋腫及び腎組織基底膜をIV型コラーゲンα鎖特異的モノクローナル抗体を用いて染色した。α5(IV),α6(IV)鎖は腫瘍組織の大部分において染色されなかった。このことはCOL4A5/COL4A6遺伝子の欠失した平滑筋が優位に増殖した事を意味する。
3. IV型コラーゲンα6(IV)鎖(col4a6)ノックアウトマウスの表現型解析
col4a6ノックアウトマウスマウスでは生後約1年後においても食道及び他の平滑筋臓器に平滑筋腫は見つかっていない。col4a6遺伝子のみの欠失ではDLが発症しない可能性を示唆している。
4. AS+DLモデルマウス作製および解析:ヒトAS+DL患者のCOL4A5/COL4A6遺伝子上流欠失ゲノムクローンのトランスジェニックマウスを作製し、col4a6ノックアウトマウスと掛け合わせる実験を行った。ヒトにみられた表現型が再現できるか注目した。第2イントロン中の第3の遺伝子の存在とそのdeletionによるドミナントネガティブな影響がみられる可能性がある。
5. ヒトCOL4A6第2イントロンに存在する遺伝子の検索:イントロン2をカバーするBACコンティグを作製しエキソントラップを行い新規エキソン6つを単離した。これらのクローンを用い、食道等のcDNAライブラリーのスクリーニング・ノザンプロット等を行い発現臓器の検討した。 -
軟骨・非軟骨細胞におけるV/XI型コラーゲンα鎖遺伝子の特異的発現機構の解析
研究課題/領域番号:09671497 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉岡 秀克, 松尾 哲孝, 調 恒明, 百田 龍介, 大橋 俊孝, 二宮 善文
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
in vivo及びin vitroでα1(XI)鎖コラーゲン遺伝子の転写調節機構を解析する目的で、マウスα1(XI)遺伝子の5'flanking領域のDNA断片を単離した。その結果、ヒトの場合と同様に複数の開始点が存在し、プロモーター領域にはTATAboxやCCAAT boxは認められず、複数のSp1結合部位が存在した。このDNA断片をルシフェラーゼ及びβ-gal遺伝子の上流につないだ。プロモーター領域のDNA断片は-5kbまでのもの(long form)と、-536bPまでのもの(Short form)の二種類を作製した。さらにこれらの四種類のコンストラクトを用いてレポーター遺伝子の下流に第一イントロンの三つのSma断片(上流より3.5kb、3.0kb、7.0kb)をつないだ。これらを用いて、ウシ大動脈平滑筋細胞及びヒト軟骨肉腫培養細胞にトランスフエクションを行いプロモーター活性をみた。その結果、平滑筋細胞においても、軟骨細胞においてもShort promoter(-536bp)の活性が、long Promoter(-5kb)の活性より高かった。又、第一イントロンの三つのSma断片はいづれの細胞においてもShort promoterの活性を抑制させる傾向にあった。
一方、このα1(XI)鎖遺伝子のN末酸性領域の機能を解析する目的で、この領域をコードする各エクソン欠損させたコンストラクトを作製した。このコンストラクトを横紋筋肉腫細胞(A204)、軟骨肉腫細胞(LTC)、腎由来細胞(293)にトランスフェクションし、そのスプライシングパターンをin vitroで調べた。その結果、腎由来細胞ではエクソン6A-7-8をとるパターンが主要なもので、エクソン6Bによりコードされる転写産物は見られなかった。横紋筋肉腫細胞ではエクソン6A-7-8の他にエクソン7-8のパターンも見られた。一方、軟骨肉腫細胞では五種類のパターンが見られた。このin vitroの実験と平行させてin vivoの実験を行うために、エクソン6A、6Bの各々を欠損させたマウスをhomologous recombination法で作製中である。 -
遺伝子破壊法によるIV型コラーゲンの機能解析に関する共同研究
研究課題/領域番号:09044308 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
二宮 善文, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, ラインハルト フェスラー, コルド ブラケブッシュ, アティラ アゾディ, ブラケブッシュ コード, アゾディ アティラ, フェスラー ラインハルト
配分額:5100000円 ( 直接経費:5100000円 )
Co14a6遺伝子ノックアウトマウスのヘテロ接合体およびホモ接合体を得ることができた。これらのマウスにおいてCo14a6遺伝子のRNA転写、タンパク翻訳活性について詳細に検索した。その結果、転写は認められず、遺伝子発現停止実験が成功したことを意味した。ノックアウトマウスと正常マウスの間の形質変化があるかどうかの検索を進めたところ、現在に顕著な差異は認めていない。
α鎖特異抗体を用いて、α1/α2、α3/α4/α5とα5/α6の三種の分子構成があることを特異抗体を用いた免疫二重染色法によって明らかにした。特に腎糸球体と肺胞基底膜はα3/α4/α5、皮膚および腎ボーマン嚢基底膜はα5/α6分子で構成され、これらの分子を含む超分子会合体でつくられる基底膜とその臓器における機能との関係がありそうである。さらに責任遺伝子がCOL4A5であるアルポート症候群の解析によって、ひとつのα鎖が変異を示すと他のα鎖が細胞内で分解されることから、上記のα3/α4/α5とα5/α6の構成分子が存在することが再確認された。
アルポート症候群に食道下部平滑筋症が合併する大変稀な症例を日本国内で見つけだし、詳細な解析を実施した。その結果、欠失部分はCOL4A5とCOL4A6上流域17kbに及ぶことがわかった。欠失周辺にはトポイソメラーゼコンセンサス配列が存在し、これらは大きな欠失の修復に関与したことが推定された。 -
基底膜新コラーゲン鎖の構成する分子,会合体及び生物学的機能
研究課題/領域番号:08457154 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 吉岡 秀克
配分額:8800000円 ( 直接経費:8800000円 )
マウスcol4a6遺伝子断片を単離するためにマウス129genomic libraryのスクリーニングを行った。その結果マウスcol4a6遺伝子断片TSg6(約18.3kb)を得た。これを詳細に解析すると、ヒトCOL4A6遺伝子に見られるようなalternative transcriptsは存在しないことがわかった。Col4a6遺伝子の発現停止マウスを作成するために、col4a6エクソン2のなかにNeoR遺伝子を挿入した形のvectorを作成し、ホモロガスリコンビネーションによって129Svマウス由来R1-ES細胞にトランスフェクションし、G418でスクリーニングしNeoR遺伝子陽性細胞を得た。ホモロガスリコンビネーションの判定はgenomic Southern-blottingによって行った。その細胞をC57BL/6胚盤胞に注入、DBF1擬妊娠マウス子宮に移入、キメラマウスの作成を行った。その後交配を繰り返し、heterozygote、homozygoteを得、現在その形質変化を観察する実験を行っている。また、col4a6遺伝子発現については特異抗体をもちいて免疫染色を行ったところ、陰性の結果を得ており、col4a6遺伝子の発現停止実験は成功した。
α鎖特異抗体を用いて、分子構成としてα1/α2とα3/α4/α5/とα5/α6の三種があることを特異抗体を用いた免疫二重染色法によつて明らかにした。
また、アルポート症候群に食道下部平滑筋症が合併する大変稀な症例を日本国内で見つけだし、詳細な解析を実施した。その結果、COL4A5遺伝子のイントロン1の一部、エクソン1、両遺伝子の遺伝子間部分、COL4A6遺伝子エクソン1'、イントロン1'、エクソン2、およびエクソン2、イントロン2の一部が欠失していることが判明した。また、その欠失部分は17kbに及ぶことがわかった。欠失の周辺にはトポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIコンセンサス配列が存在することが判明した。これらの配列は17kbにおよぶ大きな欠失が生じた際、それを修復するための機構と考えられる。 -
血液脳関門をマトリックスの分子構築として理解する試み
研究課題/領域番号:08877223 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
二宮 善文, 百田 龍輔, 大橋 俊孝
本研究は、選択的透過性を有する脳血液関門がアストロサイトから分泌されるシグナルによって、基底膜を産生する内皮細胞に影響を及ぼし、脳以外の毛細血管周囲基底膜と異なる分子構成による超分子会合体が作り上げられているという考えに基づいて、血液脳関門の本能が細胞外マトリックス分子と細胞間の相互作用で説明することにある。具体的に以下の結果を得た。
1)脳毛細血管と脳以外の毛細血管(腸間膜)よりRNAを抽出した。これを無細胞系のタンパク翻訳を行うと、多くのポリペプチドが共通のバンドとして認識されるが、一方で、確かにいくつかのペプチドが異なっていることがわかった。これらのバンドが異なる超分子会合体を構成している可能性がある。
2)ヒト脳毛細血管と脳以外の毛細血管について、α1(IV)-α6(IV)コラーゲン鎖に対する特異的モノクローン抗体を用いて蛍光染色すると、α1(IV)鎖とα2(IV)鎖の存在が明らかになった。脳毛細血管と脳以外の毛細血管について、α(IV)鎖の分布の差は特に認められなかったが、現在さらに詳細の解析を行っている。
3)脳毛細血管と脳以外の毛細血管より抽出したRNAを鋳型にして、種々のプライマーを用いてDifferential display法を行い、いくつかの異なるバンド認められたので、現在これらをクローニングしている。 -
肺胞基底膜のIV型コラーゲンの分子種と遺伝子発現
研究課題/領域番号:08877098 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
百田 龍輔, 吉岡 秀克, 大橋 俊孝
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
今年度、我々の研究は以下のような進展が見られた
1)IV型コラーゲンα4遺伝子転写産物の発現について
IV型コラーゲンα4の遺伝子転写産物に関して、我々のこれまでの結果から第1エキソンの異なる2つの転写産物(1と1')が存在することがわかっているが、Northern blot法と定量的RT-PCR法によって、これらの転写産物をそれぞれ独立に検出する系を確立することに成功した。
これによりIV型コラーゲンα4遺伝子転写産物の発現について、以下のような知見を得た。
i)2つの転写産物は、基底膜に富む様々な組織において発現している。
上皮細胞由来の細胞株、基底膜を多く含む組織中で発現が見られた。中でも特に発現が顕著なのは、肺胞の上皮細胞由来の細胞株であった。
ii)競争的PCR法により転写産物1と1'の転写産物の発現の差について比較を行ったところ、ある種の細胞についてこれらの発現量に100倍もの差が見られた。
こうした発現の差が、組織特異的プロモーターによるものと考え、更に検討を重ねている。
2)レポーター遺伝子による、IV型コラーゲンα4遺伝子のプロモーター領域の解析
α4の転写産物1と1'のそれぞれのプロモーターの活性を見るためのレポーター遺伝子の設計と作製を行った。当初の計画であるルシフェラーゼ遺伝子を用いた測定に先立ち、CAT遺伝子による解析も進行中である。エキソン1'、エキソン1それぞれの上流の2kbをカバーするゲノム断片をCAT遺伝子につないだコンストラクトを作製した。このコンストラクトに基づき、さらに他のコラーゲン遺伝子の例でも見られるようなイントロン1内の転写調節配列の存在の可能性も含めて、数種類のコンストラクトを現在作成中である。 -
基底膜の生物学的機能
研究課題/領域番号:07044268 1995年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
二宮 善文, オウ スーク・ポール, ウオルマン マット, アプラ スニール, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, オルセン ビヨン, スーク ポール・オウ, マット ウォルマン, スニール アプラ, ビヨン オルセン, マット ウオルマン
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
1)マウスライブラリーからα6(IV)cDNAの重複クローンを得、マウスα6(IV)鎖ポリペプチドの全アミノ酸の一次構造を決定することが出来た。その結果、以前に我々が決定したヒトα6(IV)鎖ポリペプチドの全アミノ酸の一次構造と類似であることがわかった。
2)マウスα6(IV)ポリペプチドのアミノ酸配列より特異抗体を作成し、マウスにおいてもヒトと同じようなα6(IV)ポリペプチドの組織分布を示すかどうかについて検索したところ、基本的にはヒトの分布と類似していた。但し局所においては、例えば腎糸球体基底膜等では多少の分布の相違が観察された。また、他のα鎖との対照的な発現の違いは顕著であった。さらには、対となる遺伝子col4A1/col4a2 col4A3/col4a4 col4A5/col4a6については、いくつかの臓器を除けば、各々同調的な発現様式が観察された。
(3)α鎖特異的モノクローン抗体を用いた組織分布より、6α鎖が構成する分子種を推定することが出来た。その結果、α1(IV)とα2(IV)、α3(IV)とα4(IV)とα5(IV)、α5(IV)とα6(IV)、そしてα4(IV)のホモトリマ-の四種類の分子種が存在すると思われる。このことは、α鎖特異抗体を用いた二重染色によって、また、アルポート症候群などの遺伝性の疾患の症例を用いて染色することによって確かめることが出来た。
4)マウスα6(IV)遺伝子の解析を進めたところ、エクソン31の択一的スプライシングが起こっていることを突き止めた。現在この択一的スプライシングが組織特異的に生じている現象か否かを検証している。
5)ヒトのアルポート症候群に合併する食道下部平滑筋症の症例において、20kb足らずの大きな塩基配列の欠損が検証された。詳細にこの塩基配列の欠損部位を検索すると、COL4A5遺伝子のイントロン1の一部、エクソン1、COL4A5とCOL4A6両遺伝子の上流部分、COL4A6遺伝子エクソン1'、イントロン1'、エクソン1、イントロン1、エクソン2そしてイントロン2の一部が欠失していることが判明した。さらに、イントロン2には、食道下部の平滑筋細胞増殖に関連のある遺伝子の存在が示唆された。現在この平滑筋細胞増殖に関連のある遺伝子の存在を究明しつつある。
6)ノックアウトマウス作成のため、マウス遺伝子断片よりエクソン2を除き、変りにNeo^R遺伝子を挿入したコンストラクトを構築した。ホモロガスリコンビネーションによってコンストラクトの導入された幹細胞を選択した。このような幹細胞を胚盤胞に注入することによりキメラマウスを作成することが出来た。現在、ヘテロ接合体およびホモ接合体の形質変化の検索を進めている。 -
腎糸球体基底膜におけるマトリックス分子構築と遺伝子発現
研究課題/領域番号:07671251 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
大橋 俊孝, 吉岡 秀克, 二宮 善文
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
1.マウスα6(IV)鎖遺伝子(col4a6)及びα5(IV)鎖遺伝子(col4a5)上流プロモーター領域遺伝子断片のクローニング
マウスα6(IV)鎖及びα5(IV)鎖cDNAをプローブとして129SVJマウスのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし、両遺伝子上流プロモーター領域を含むクローンTSg6を分離した。
2.col4a6及びcol4a5遺伝子発現調節機構の解析
上記クローンTSg6を解析したところ、col4a5のエキソン1とcol4a6のエキソン1,2が含まれてした。しかしながら、ヒトでみられた第一エキソンの択一的スプライシングはマウスα6(IV)鎖遺伝子ではみられなかった。現在、col4a6上流DNA断片をCAT遺伝子及びLacZ遺伝子に連結したconstructを作製し遺伝子発現調節機構解析を行なっているところである。
3.col4a6遺伝子のノックアウトマウスの作製
第1項で得られたcol4a6断片を利用して、col4a6のエキソン2部分にNeo^r遺伝子を挿入し、null mutationの改変を導入するターゲティングconstructを作成した。ES細胞ヘターゲティングconstruct DNAの注入後、サザンブロティングにより相補的遺伝子組換えの起こっているES細胞クローンを選別し、胚盤胞へ注入した。現在、キメラマウスの誕生を待っている段階である。
4.Alport症候群,(平滑筋腫との合併症),Goodpasture症候群の病因と各α(IV)鎖との関連を調べる。
ヒトα6(IV)鎖遺伝子の構造解析プロジェクトから決定されたエクソン・イントロン構造を基に、平滑筋腫との合併を伴ったAlport症候群患者の白血球DNAを用いて、α6(IV)鎖遺伝子及びα5(IV)鎖遺伝子の欠失領域の解析を行なっている。両遺伝子のイントロン1にまたがって欠失した症例が発見できた。さらに、細かい欠失部分解析を行なっている。これらの遺伝子解析によりこの症例の病因解析が進展すると期待される。 -
XI型コラーゲン分子の軟骨及び非軟骨細胞における特異的発現機構の解析
研究課題/領域番号:07671593 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
吉岡 秀克, 大橋 俊孝, 二宮 善文
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
私たちはヒトコラーゲンα1(XI)鎖のcDNAプローブを用いて、クロスハイブリダイゼーション法にて重視するマウスα1(XI)鎖をコードするcDNAを得て、その全一次構造を決定した。その結果、予想されるマウスproα1(XI)鎖のアミノ酸は1769個であり、そのN末に35個のシグナルペプチドが存在した。ヒトとのアミノ酸レベルのホモロジーは93%であり、N末、中央螺旋部及びC末の領域構造、N-及びC-プロペプチドのシステイン、及び架橋に関与するリジン等の重要な構造はすべて保持されていた。わずかにマウスのN-プロペプチドにおいてアミノ酸が一個少ないのみであった。
一方、このcDNAプローブを使用し、マウス胎児期における発現をノーザンブロット法、RT-PCR法及びin situ hybridization法で調べた。その結果、RT-PCR法を用いると11日目胎児にはすでにこの遺伝子の発現がみられた。ノーザンブロット法ではヒトと同様に7.3kb及び6.3kbの転写産物がみられ、18日目胎児では軟骨組織ばかりでなく、脳、皮膚、頭蓋骨の非軟骨組織でも発現していた。さらに、in situ hybridizationを行うと、これらの組織に発現が認められたばかりでなく、心臓弁部、舌骨格筋、大動脈平滑筋、腸管平滑筋、歯芽、耳小胞等にも発現がみられ、この遺伝子が軟骨組織ばかりでなく、広く非軟骨組織にも発現していることが証明された。
さらに、N-プロペプチド部分はヒト同様、塩基性、酸性及び短い螺旋領域よりなっていたが、酸性領域をコードするエクソンは胎児の軟骨や頭蓋骨においては複雑な選択的スプライシングを受けており、この現象が内軟骨性骨化或は膜性骨化過程に関与している可能性が示唆された。 -
基底膜に会合するIV型コラーゲン分子とそれをコードする遺伝子発現の特性
研究課題/領域番号:06454250 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
二宮 善文, 大橋 俊孝, 吉岡 秀克
配分額:7600000円 ( 直接経費:7600000円 )
本年度施行した研究によって、当初掲げた研究目的の大半を達成することができた.
1)ヒトα4(IV)鎖のアミノ酸一次構造を決定することができた.
α4(IV)鎖をコードするcDNAの重複クローンを単離し、ヒトα4(IV)鎖のアミノ酸一次構造を決定することができた.
2)α6(IV)鎖をコードする遺伝子の上流域の構造決定とα5(IV)遺伝子との関係を明かにした.
ヒトα6(IV)鎖のアミノ酸一次構造を決定し報告した.さらにこれらのcDNAをもとに遺伝子DNAの構造を決定しつつある.私どもはα6(IV)鎖をコードする遺伝子の上流域にα5(IV)鎖をコードする遺伝子が存在しており、しかもこれらの遺伝子が反対向きに並んでいることをつきとめた.さらに興味あることは、α6(IV)鎖をコードする遺伝子の発現は通常の遺伝子発現と異なって、二つのRNA転写産物が存在することがわかった.このことはおそらくは二つのプロモーターが存在しこれらが組織特異的な発現に関係しているであろうことが想像される.
3)α(IV)鎖特異的抗体の作製を行いIV型コラーゲン6遺伝子の発現様式を明かにした.
上述のα4(IV)鎖およびα6(IV)鎖の一次構造より推定される特異抗体を作製に適する部位を同定し合成ペプチドを作製、このペプチドに対するモノクローン抗体を作製した.抗体は各々特異的であり、ウェスタンブロット、各組織の免疫染色法でこれらの特異的なα(IV)鎖の存在部位を特定することができた.その結果α1(IV)およびα2(IV)鎖はすべての基底膜に存在すること、α3(IV)およびα4(IV)鎖は限定された部位にしか発現されないが常にこの二つの遺伝子は同時に発現することがわかった.さらにα5(IV)およびα6(IV)鎖は限定された部位に必ずしも同時には発現しないことがわかった.この部位特異的発現が上述の二プロモーターの存在と関連があることが想像される. -
遺伝性腎基底膜疾患に関するIV型コラーゲンの分子生物学的研究
研究課題/領域番号:06770869 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
大橋 俊孝
配分額:1100000円 ( 直接経費:1100000円 )
申請者は本研究の申請時の目的として、1)α6(IV)鎖,α4(IV)鎖遺伝子構造の決定2)遺伝性腎糸球体基底膜疾患の遺伝子変異の検索を掲げた。その結果、
1)α6(IV)鎖全遺伝子を含む重複クローンを単離し、全遺伝子構造を決定した(文献2,3参照)。さらに、その中の最上流の遺伝子断片の解析により、α6(IV)鎖遺伝子(COL4A6)とα5(IV)鎖遺伝子(COL4A5)はbidirectional promoterにより転写制御され、COL4A6はAlternativeなpromoterによって発現制御されることを初めて報告した(文献1参照)。この結果は、従来知られていたα1(IV)鎖遺伝子(COL4A1)とα2(IV)鎖遺伝子(COL4A2)と同様にその他α(IV)鎖遺伝子でもbidirectional promoterにより転写制御されていることを初めて示したものである。また、Alternativeなpromoterの存在はCOL4A6の組織特異的発現に関与すると推測される。
2) 1)の結果をもとに、まずα6(IV)鎖遺伝子およびα5(IV)鎖遺伝子の関与する遺伝性疾患の家系解析に有用なマーカーとして(CA)nマーカーを検索した。1)で単離したCOL4A6断片から(CA)n配列を発見し、3つがマーカーとして有効であると判断された(投稿準備中)。また、疾患検索の準備としてPCR-SSCP実験を行なうため、全エキソンをはさむようにプライマーを設計した。これらは遺伝性腎糸球体基底膜疾患のみならず、最近関連性が示唆されたびまん性平滑筋腫の責任遺伝子としてのα6(IV)鎖遺伝子の変異の検索に有効であると思われる。 -
VIII型コラーゲンの生物学的機能
研究課題/領域番号:06044154 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
二宮 善文, MATT Warman, O;ENA Jacenk, SUNEEL Apte, 大橋 俊孝, 村垣 泰光, BJORN Olsen
配分額:2500000円 ( 直接経費:2500000円 )
これまで私共はEC(Endothelial Cell)コラーゲンとして知られていたVIII型コラーゲンα1およびα2鎖の構造、ヒト染色体上の位置、発現細胞等について調べてきたが、今回は培養内皮細胞による発現様式、培養皮膚ケラチノサイトによる合成、さらにトランスジェーニックマウスによるVIII型コラーゲンのマウスin vivoにおける発現について検討したので報告する.
ヒト大動脈内皮細胞、帯内皮細胞を酵素処理により細胞を単離し、培養に供し、典型的な内皮細胞を得た.継代を繰り返し、10代程度になると細胞が偏平化する.この細胞を用いて全RNA中のα1(VIII)およびα2(VIII)鎖をコードするmRNAを調べると、生体から単離して培養に供し、細胞が偏平化するまで両遺伝子が発現していることがわかった.さらにI型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲンをコードするmRNAについても発現していることがわかった.またラット腹部大動脈より平滑筋細胞を単離し、培養して数継代目にヘパリンを投与し、平滑筋細胞の産生するコラーゲンを調べたところ、75kDaのサイズの、細菌性コラゲナーゼで消化されるコラゲナーゼ鎖が検出された.これがヘパリン投与することによってコラーゲン鎖の産生は20〜30倍増強される.このコラーゲン鎖の同定については、研究代表者らはVIII型コラーゲンではないかと推測しているが未だ照明はされていない.
以前の実験でマウスにおいてノザンプロット法でα1(VIII)およびα2(VIII)mRNAが存在することを示したが、今回ヒト皮膚由来のケラチノサイトを培養し、細胞から抽出した全RNAに対してヒトVIII型コラーゲンのプローブを反応させると明かに同じサイズのRNAに反応した.また、マウスの皮膚組織に対してin situハイブリダイゼーションを行うと、皮膚のケラチノサイトに対して強い陽性所見を得た.このことよりケラチノサイトがVIII型コラーゲンの産生細胞であることが判明した.
VIII型コラーゲン遺伝子がどの組織に発現するかを見極めるための実験としてマウスプロモーター領域をLac Z遺伝しをレポーター遺伝子として接続しトランスジェーニックを作成し、検討を繰り返したところ、いくつかのトランスジェーニックマウスの系統が得られた.系統によってレポーター遺伝子の発現が異なっていたので、今回は直接マウス胎児を用いてin situハイブリダイゼーションを行ったところ、基本的にレポーター遺伝子の発現していた臓器および組織にはすべて強い陽性所見が得られたので、VIII型コラーゲン遺伝子発現をねらったトランスジェーニックマウス実験の正当性が証明された. -
基底膜の組織特異的機能とマトリックス分子の多様性
研究課題/領域番号:04454564 1992年 - 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
二宮 善文, 大橋 俊孝, 吉岡 秀克
配分額:6900000円 ( 直接経費:6900000円 )
基底膜の組織特異的機能とマトリックス分子の多様性を知る目的で、私どもは基底膜の重要な構成成分であるIV型コラーゲンの分子とその構成鎖について新しい知見を得ることができた.申請時に述べた目的のうち、α4(IV)鎖ポリプペチドのアミノ酸一次構造はcDNAのクローニングによってほぼ全体が明らかに成りつつある.またこれをコードする遺伝子構造はC末のNC1をコードする4エクソンについては構造が明らかになった.その結果α2(IV)鎖をコードする遺伝子と酷似していることがわかった.この遺伝子の染色体上の位置は染色体2q35-37.1であることがわかった.さらにα4(IV)鎖ポリペプチドをコードするmRNAは他のα(IV)鎖をコードするmRNAと比べ、優位に大きいことが明らかになった.
特筆すべきことはこのα4(IV)鎖ポリペプチドをコードするcDNAのクローニングの過程で、未知のcDNAを得ることができたことである.つまり上記のα4(IV)cDNAの解析から偶数系列に属し、X染色体に存在するもう一つの遺伝子が存在するかも知れないことを予想していた私どもは、low stringencyの条件で、新しいα6(IV)鎖をコードするcDNAを単離することができた.しかもこの遺伝子がX染色体上に存在するだけでなく、面白いことに、α5(IV)鎖をコードする遺伝子と対になって同じ遺伝子座に、逆向きに存在していることがわかった.またα6(IV)鎖をコードする転写産物は二つ存在し、alternativeに発現開始されるプロモーターが存在することが明らかとなり、α6(IV)鎖とα5(IV)鎖をコードする遺伝子の発現部位と、コラーゲン分子としてどのような鎖構成なのか、さらにはこれらの分子が構築する超分子会合体がどのように組織特異的な基底膜を構成していくかという問題の糸口をつかむことができた.