共同研究・競争的資金等の研究 - 大橋 俊孝
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ペリニューロナルネットをディメンジョナルマーカーとした摂食障害モデルマウスの解析
研究課題/領域番号:24K10733 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 酒本 真次, 高木 学, 宮崎 晴子
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
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難治性潰瘍での変性コラーゲンの局在証明、再上皮化遅延の病態解明とその治療法開発
研究課題/領域番号:23K09079 2023年04月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
久保 美代子, 山本 健一, 米澤 朋子, 大橋 俊孝
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
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ペリニューロナルネットが制御するマウス聴覚系シナプス刈込み分子機構の解明
研究課題/領域番号:23H04235 2023年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)
大橋 俊孝
配分額:7280000円 ( 直接経費:5600000円 、 間接経費:1680000円 )
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分子生物学と情報生物学の融合による口蓋発生メカニズムの解明
研究課題/領域番号:22KF0265 2023年03月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
大橋 俊孝, WANG ZIYI
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分子生物学と情報生物学の融合による口蓋発生メカニズムの解明
研究課題/領域番号:22F22114 2022年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
大橋 俊孝, WANG ZIYI
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
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XVIII型コラーゲンの加齢性変化が肝臓・膵臓の機能に及ぼす影響
研究課題/領域番号:20K11556 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
百田 龍輔, 米澤 朋子, 大塚 愛二, 大橋 俊孝, 内藤 一郎
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
脂肪肝の症状がはっきりとみられるXVIII型コラーゲン欠損老齢マウスだけでなく、若い欠損マウスで”予兆”のような現象を改善することで脂肪肝、NAFLDへの進行を予防できるのではないかと考え、加齢マウスだけでなく2ヶ月齢の若いマウスを用いて改めて、網羅的に遺伝子発現と組織学的な検討を行った。若い欠損マウスは細胞内脂肪滴の蓄積では組織学的に大きな差は認められなかったが、血管周囲の構造について野生型と比較して若干違いが見られたのでその再現性について確認を行っている。
さらに、野生型、欠損の若いマウスについても、双方の肝臓からRNAを抽出し、RNA-seqにより全転写産物の解析を進めている。前年度の加齢マウスで行ったネットワーク解析、コンピューターによる代謝シミュレーションを行い、代謝経路・産物について経時的にどう変化するかについて検討する予定である。
また、新たにリピドミクスの系を立ち上げたので、マウスの血液中や肝臓に蓄積する脂質組成について比較検討を行っている。すなわち、上記のコンピューターシミュレーションの結果を生体で実際に起きているかどうか確認を進めている。
一方、上記のシミュレーション結果をもとに、ネットワーク解析などから中心的な役割を果たす複数の代謝経路、遺伝子産物、代謝産物を同定した。これらの候補遺伝子産物で薬理学的な調節が可能な候補を抽出した。また、その機能を調節できるような化合物検索をバーチャルに行う高性能GPU搭載コンピューターの解析環境を立ち上げた。現在これらの結果をもとに論文作成に取り掛かっている。 -
基底膜構成分子の誘導制御による低侵襲角化歯肉獲得療法の確立
研究課題/領域番号:19H03841 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
前川 賢治, 窪木 拓男, 冨田 秀太, ハラ エミリオ・サトシ, 大橋 俊孝, 大野 充昭
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
天然歯や口腔インプラント義歯が長期的に良好な予後を維持するためには,歯頚部や口腔インプラント周囲に十分な幅の「角化した付着歯肉」が必要であると考えられている。我々は,角化歯肉に特異的に高発現している基底膜分子(Ⅳ型コラーゲン556, ⅩⅧ型コラーゲン,ラミニン332)を世界で初めて同定した.また,これらは上皮細胞から分泌され,上皮細胞の角化をオートクライン的に促進していること,さらには,付着・角化歯肉より採取した間葉細胞と口腔粘膜上皮細胞を共培養した場合にのみ,口腔粘膜上皮細胞の角化が促進されることを明らかとした.これらの研究成果から,基底膜直下に存在する角化歯肉由来間葉細胞と非角化歯肉由来間葉細胞の遺伝子発現の相違を明らかにすることで,上皮細胞の角化に関わっている間葉細胞からのシグナル分子を抽出することが可能であると考えた.そこで,レーザーマイクロダイセクション (LMD)法とRNA-Seq を組み合わせて,候補因子の抽出を実施してきた.具体的には,マウスの口蓋粘膜(角化粘膜) と頬粘膜(非角化粘膜)の凍結組織切片を作製, LMDにより上皮組織直下の間葉組織を採取したうえでRNAを抽出し,cDNAライブラリーを作製,シークエンス解析を行った.そして,非角化粘膜と比較し,角化粘膜の間葉組織に高発現する遺伝子を抽出を行ってきた.2021年度は,発現量に有意差があった遺伝子を用いて,Ingenuity Pathway Analysis (IPA)にて上流解析を行い,粘膜の角化に関わる遺伝子を抽出した.そして,すでに確立している口腔粘膜を模倣した3次元培養モデルを用いて抽出された遺伝子の機能解析を実施した.その結果,候補遺伝子のリコンビナントタンパク質を培養液に添加することで上皮の角化が誘導されることが明らかとなった.次年度,in vivoにて候補遺伝子の機能解析を実施する予定である.
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生後の骨・軟骨発達におけるアグリカン新機能を新規Acan変異マウスにより解明する
研究課題/領域番号:19K09649 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 大野 充昭, 西田 圭一郎
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
生後発達および生体恒常性維持におけるAcanの役割を明らかにするため,Acanfl/flマウスを作製し,タモキシフェン(TAM)誘導性時期特異的Acan全身ノックアウトマウスを樹立した.アグリカンの欠損がECMネットワークの乱れがECMの硬さとTGFβスーパーファミリーの発現に影響し軟骨細胞の増殖分化に影響するという仮説を立て,これを同モデルで検証することを行っている.これまでの主な成果として,透過電子顕微鏡観察から上記ノックアウトマウス脛骨成長板の軟骨細胞の形態異常・カラム配列の乱れ・肥大軟骨層のアポトーシス亢進を認め,アグリカンが生後の骨成長に重要であることを明らかにした.成長板の軟骨細胞が増殖すべきところ、周囲のアグリカンが欠損することにより、異常な細胞接着を生じ,細胞分裂からの細胞形態の平坦化と層状化を阻害していると仮説を立て、そのメカニズムを検討中である.原子間力顕微鏡によるECMの硬さの解析を共同研究者Aszodi博士と引き続き共同研究中で在る.コロナ禍やウクライナ問題で渡航や国際学会発表が行いにくいがオンラインによる研究交流を進める.研究成果の一部は日本結合組織学会や日本軟骨代謝学会等で発表を行い、あるいは論文発表予定である.
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スクラップ&ビルドによるペリニューロナルネット機能の作動原理の解明
研究課題/領域番号:19H04754 2019年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
大橋 俊孝
配分額:9620000円 ( 直接経費:7400000円 、 間接経費:2220000円 )
ペリニューロナルネット(PNN)はパルブアルブミン陽性のGABA作動性介在ニューロン(PVI)などに最も顕著に存在する特殊な細胞外マトリックス(ECM)構造である。
我々は、ペリニューロナルなECM構造の安定化に重要な複数のリンクプロテイン分子(HAPLN)に注目し、それらの遺伝子ノックアウトマウス等を駆使して、HAPLNがPNNの高密度な会合体形成を通じて、神経可塑性の制御やその他の神経活動に重要なことを示すことを目的としている。本研究は、小脳や脳幹部(聴覚系神経核)に焦点を絞り、PNNの会合体形成を傷害する(PNNスクラップ)手法によりPNN機能(動作原理)を追求するものである。
初年度に、台形体核神経細胞のcalyx of Heldシナプスが複数入力することを電気生理学手法により明らかにした。複数入力が認められるシナプスにおいて自発的EPSCやシナプス短期可塑性の測定、発生に伴うシナプス後細胞のグルタミン酸受容体のサブタイプ変化を調べたが今のところコントロールマウスと統計的な有意差は認められていない。KOマウスで、シナプスのプレとポストのpair recordingで高頻度刺激に対する活動電位発生能力の追随性が低下することが発見された。二年度目には、複数入力を形態学的に確かめることやグリア細胞のシナプス刈込への関与を調べることに注力した。これまでのところ、シナプス刈込みに関与するとされるグリア細胞の挙動が野生型と異なることを見出している。
成果は日本神経科学会や日本結合組織学会で発表する予定である。 -
XVIII型コラーゲンの機能解析から皮膚創傷治癒への応用に向けた基礎研究
研究課題/領域番号:17K11540 2017年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
米澤 朋子, 大橋 俊孝, 稲川 喜一
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
細胞外マトリックスの働きは皮膚の創傷治癒に必須であると考えられているが、生物学的な役割はまだ未解明な点も多い。マウス皮膚創傷治癒において、XVIII型コラーゲンは再生する上皮下に早期に出現することが明らかとなった。また、発現するXVIII型コラーゲンのアイソフォームの種類は再上皮化が進むにつれて変化することが分かった。XVIII型コラーゲンは再生上皮の基底膜の形成や安定化、再上皮化の制御に働くと考えられた。
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XVIII型コラーゲンに注目した皮膚基底膜の老化機構の解明
研究課題/領域番号:17K01848 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
百田 龍輔, 大塚 愛二, 大橋 俊孝, 内藤 一郎
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
ヒトの皮膚で発現している遺伝子の中から、加齢と共に発現が有意に変化する遺伝子群を網羅的に解析し、影響が及ぶ生物学的経路(RNAの転写、スプライシング、膜貫通型糖タンパク、リボタンパク、ミトコンドリア、表皮の角化、微小管形成)を明らかにした。三次元皮膚培養系により、植物のある成分によりUVによるダメージを軽減できることがわかった。また、簡便な方法を用いて、皮膚のXVIII型コラーゲン、IV型コラーゲン、幼弱な上皮細胞を検出する方法と定量的に評価するスクリプトを確立することができた。皮膚の拡大画像とこれらの検出方法を組み合わせた人工知能のプロトタイプを作成した。
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BMP-2の環境選択的骨誘導/抑制メカニズムの解明・応用に基づく骨再生療法の開発
研究課題/領域番号:16H05524 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
大野 充昭, 窪木 拓男, 大島 正充, 大野 彩, 大橋 俊孝, 渡辺 亮, 秋山 謙太郎
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
BMP-2は骨形成を強力に誘導する成長因子として知られている.しかし,我々は,本研究において,骨形成を含むBMP-2の効果は骨髄内において著しく抑制され,本抑制効果は,骨髄細胞が直接骨芽細胞に作用することで生じていることを明らかにした.本研究成果は,BMP-2の臨床応用において,BMP-2の副作用その作用機序の一部を明らかにした大変重要な知見である.
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iPS細胞樹立技術を応用した象牙芽細胞マスター遺伝子の探索
研究課題/領域番号:16K15802 2016年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
大野 充昭, 窪木 拓男, 大島 正充, 前川 賢治, 大橋 俊孝, 渡辺 亮
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
象牙芽細胞分化の制御メカニズムのみならず,象牙芽細胞の分化に関わるマスター遺伝子は未だ不明である.そこで,我々は,象牙芽細胞分化に関わるマスター遺伝子の探索を目的に,組織学的・発生学的観点から網羅的解析を行った.その結果,いくつかの象牙芽細胞分化に関わる候補遺伝子を絞り込むことができた.今後,これらの遺伝子の機能解析を行っていく予定である.
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軟骨特異的プローブによる関節軟骨in vivo造影と定量評価システムの確立
研究課題/領域番号:15K15551 2015年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
大橋 俊孝, 廣畑 聡, 大月 孝志, アゾーディ アティラ, 西田 圭一郎, 加来田 博貴
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
Ke4-TIBに加えて新規軟骨イメージングプローブ2Ke2-TIBの創出とラット変形性関節症モデルによる、in vivo造影とCT撮像による定量評価を試みたが、理想的な条件設定は完了していない。Ke4-TIBについては特許が2017年3月24日に成立した。プローブ開発と並行して、将来マウス関節軟骨変性モデルが研究へ使用されることを想定して、新規関節軟骨変性モデルの作製にとりかかった。軟骨に豊富に発現している細胞外マトリックス遺伝子(A遺伝子)のFloxマウスをRosa26-cre ERTマウスと交配させた。生後1週よりタモキシフェン投与を開始し、未投与群に比べ、低身長と関節軟骨異常を認めた。
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メカニカルストレス による軟骨細胞の miRNA発現のエピジェネティック制御
研究課題/領域番号:26462299 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
西田 圭一郎, 大橋 俊孝, 川畑 智子
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
本研究では, ヒト軟骨細胞に力学的負荷をかけ, 発現が変化するマイクロRNAを網羅的に検討した。この中からmiR-29bに着目し, 標的遺伝子の一つであるADAM12の発現解析を行った。ADAM12は軟骨細胞の分化過程でX型コラーゲンに先立って発現が上昇し, 手術時に採取した変形性関節症(OA)患者の骨棘組織の増殖細胞層および肥大軟骨細胞層に高率に発現していた。OAの関節局所に生じる骨棘は生体の生理的反応である一方で, 痛みや神経障害の原因になる。miR-29あるいはADAM12の発現を人為的に制御することにより, OAの新しい治療法開発に繋がると考えられた。
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XV/XVIII型コラーゲンとミトコンドリア間の分子機構
研究課題/領域番号:26350892 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
百田 龍輔, 大橋 俊孝, 米澤 朋子, 小見山 高明, 楢崎 正博, 大塚 愛二, 内藤 一郎
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
大規模塩基配列計画のデータベースの検索より筋肉で発現している約千の遺伝子の中から候補となる受容体を数十に絞り込んだ。現在、その解析を進めている。また変異動物の組織学的な解析、細胞生物学的な解析により、XV/XVIII型コラーゲン変異個体では細胞骨格に大きな構造変化が起きていることがわかった。抗XV/XVIII型コラーゲン抗体の検索と反応条件の検討の結果、固定標本に対しても反応する条件を確立し、患者標本を用いて未知のXV/XVIII型コラーゲン関連ヒト疾患の検索を行った。現在、これらの結果をまとめている。
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プロテオグリカンによるシナプス伝達調節の分子メカニズム:Bral2欠損マウス解析
研究課題/領域番号:26110713 2014年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
大橋 俊孝
配分額:8320000円 ( 直接経費:6400000円 、 間接経費:1920000円 )
脳幹部神経核・小脳に特異的なペリニューロナルネット(PNN)が部位特異的に障害されたBral2/Hapln4 KOマウスを用いて、PNNによる神経活動制御機構を電気生理学的手法(パッチクランプ記録法)を用いて解析した。プルキンエ細胞の軸索を電気刺激して、小脳核細胞体より抑制性シナプス後電流を記録したところ、Bral2欠損マウスではその振幅が野生型に比べて減少した。興奮性シナプス後電流に変化はなかったことから、Bral2を含むPNNが抑制性シナプス伝達に特異的に関与していることが示唆された。また、反復刺激の間に観察される短期シナプス抑圧の減少が観察されたことから、短期可塑性の変化を示された。これらの結果はプルキンエ細胞と小脳核細胞体間のシナプスにおいて、Bral2が安定したシナプス結合のために不可欠であること、短期シナプス可塑性に関与していることを示す。
PNN関連プロテオグリカン遺伝子のfloxマウスが完成し、f/+のオスメスの交配により、f/fマウスが出産され、生育上の大きな問題は観察されていない。今後同遺伝子の中枢神経系条件的KOマウス作製に供される予定である。 -
軟骨特異的蛍光X線デュアルプローブを用いた中小動物関節軟骨画像評価システムの確立
研究課題/領域番号:25670648 2013年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
大橋 俊孝, 西田 圭一郎, 加来田 博貴
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
中小動物の関節軟骨病変の進行を鮮明に評価できるin vivo用蛍光・X線デュアルプローブの創出を目的として研究を行った。特に、X線プローブの要件としてヨウ素を含む化合物分子量がなるべく小さく、かつ軟骨プロテオグリカン結合性を担保させなければいけない。そのために、軟骨標的化部分をε‐リジンオリゴマーとした。同造影剤の軟骨造影能力をラット膝関節を用い、ex vivoマイクロCTにより評価した。その結果、Ke4-TIBがラットOAモデル膝関節軟骨基質の減少を高解像度で画像化し、X線密度低下として数値化することができた。軟骨のX線in vivoイメージングの可能性を示すことができた。
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アクティブターゲティングリポソームを用いたマイクロRNAの抗腫瘍効果
研究課題/領域番号:24659590 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
二宮 善文, 豊岡 伸一, 大橋 俊孝
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
肺癌、悪性胸膜中皮腫は治療抵抗性の疾患で、特に転移を認め手術不能の場合の予後改善のために、効果的な新規治療法の確立は急務である。
申請者らは、本疾患を抑制するマイクロRNA(miRNA)を発見しており、本研究では腫瘍細胞に選択的に集積する標的化リポソーム(lip)の確立を目指した。まず細胞やマウス腫瘍モデルでlip集積の、次にmiRNA内包での抗腫瘍効果の評価を計画した。
当初十分なlip集積が細胞・マウス共に得られなかったが、lip及び投与条件・モデル作成法の改善により集積は向上した。ただし本過程に研究期間の多くを費やしたので、細胞内へのlip取り込み評価とmiRNA内包は今後の課題である。 -
糖鎖拡散型ペリニューロナルネット障害マウスモデルによる神経機能解析
研究課題/領域番号:24110509 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
大橋 俊孝
配分額:9490000円 ( 直接経費:7300000円 、 間接経費:2190000円 )
我々は脳幹部神経核・小脳に特異的なPNNを部位特異的に形成障害するモデルとして、Bral2欠損マウスを用いて、PNN形成メカニズムの解析を行った。本モデルは、糖鎖合成や糖鎖ドメインの合成不全を起こすものではないが、本来ヒアルロン酸に依存してPG等が高密度に・秩序よく会合すべきPNNがdiffuseになる特徴をもつ(Bekku et al., J Comp Neurol 2012)。
Bral2が制御するPNNは聴覚神経系神経核に顕著な発現を示すこと、そのなかでも巨大神経終末を持つ内側台形体核(MNTB)に焦点を絞り研究を行った。
野生型マウスの内側台形体核(MNTB)においてaggrecanとbrevicanは分離独立(住み分け)した発現をしており、Bral2欠損マウスではbrevicanはaggrecanと共局在した。シナプス周囲・間隙近傍に存在するaggrecanとbrevicanの局所における「住み分け」を規定するのはLPであるBral2とCrtl1とのaffinityの差によると考え、ヒアルロン酸結合ドメイン(G1)のリコンビナントタンパク発現を行った。また、MNTBは聴覚系神経回路の代表的神経核であるので、上記PNN変化が聴覚機能にどの程度影響を与えているかについて、チェコ共和国Syka教授との国際共同研究を行い、聴力の低下を認めている。今後、このECMの変化が聴力低下をもたらすメカニズム解明を行う。 -
脳小血管障害における基底膜の役割
研究課題/領域番号:23390348 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 廣畑 聡, 大塚 愛二, 幡中 邦彦, 斎藤 健司, 百田 龍輔, 小川 弘子, 稲垣 純子
配分額:19240000円 ( 直接経費:14800000円 、 間接経費:4440000円 )
血液-脳関門の破綻や脳小血管の出血に基底膜の機能の異常が関与すること、及び、その分子機構を明らかにすることを目的とした。我々は、マウス静脈内に腫瘍壊死因子(TNFα)を投与し、血液-脳関門の破綻を誘導する脳炎モデルを作製した。そして血液-脳関門の破綻および基底膜の主成分であるIV型コラーゲンの変化についてWestern blot法および免疫組織染色法を用いて継時的に解析を行った。解析の結果、継時的にIV型コラーゲンは限定的に分解され、血液-脳関門の破綻と関連性のあることが示唆された。
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ヒストン脱アセチル化酵素1(HDAC1)siRNAの遺伝子導入による関節炎治療
研究課題/領域番号:23592215 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
西田 圭一郎, 大橋 俊孝, 川畑 智子
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
HDAC1に標的を絞り、siRNAの膝関節投与およびエレクトロポレーションを用いた遺伝子導入による局所治療を試みた。体重や関節炎の臨床評価には差は認めず、全身の関節炎に関する治療効果は認めなかったが、膝関節内のHdac1の発現は抑制され、滑膜増殖も抑制されていた。マウス滑膜組織から単離した滑膜線維芽細胞の炎症性サイトカイン産生能には治療群とコントロール群で差を認めなかった。HDAC1 siRNAの導入による関節破壊抑制効果はサイトカイン制御ではなく、滑膜増殖抑制に起因することが示唆された。HDAC1を標的としたin vivo遺伝子導入により局所関節において滑膜炎の制御が可能であることを示した。
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聴覚におけるペリニューロナルネットの役割ー聴覚伝導路特異的Bral2の機能解析ー
研究課題/領域番号:22591879 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
別宮 洋子, 大橋 俊孝, 大塚 愛二, 百田 龍輔
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
Bral2は、リンクプロテイン(LP)の一種で、ヒアルロン酸(HA)結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)およびHAとともに複合体を形成する。LPは、その複合体形成及び安定化に必須の分子であると考えられている。Bral2は、CSPGの中でもブレビカンと共局在する事がわかっている。これらは、成体脳ではペリニューロナルネット(PNN)と呼ばれる、神経細胞周囲の網目状構造に存在する。
本研究では、聴覚伝導路において、Bral2複合体のシナプス伝達への関わりを1)シナプスの固定、2)イオンプールとしての可能性、3)イオンチャネルとの分子間相互作用という観点から解析し、聴覚伝導のメカニズムの一端を解明する事を目的とした。
(I)Bral2欠損マウスにおける神経細胞体への影響(大塚・別宮)
Bral2欠損マウスにおいて、PNNを構成するCSPG複合体構成分子が小脳核では局在できないことがわかっている。この神経核においてシナプスの接着等に何らかの形態的変化がないかを、電子顕微鏡での観察によって詳細に調べた。その結果、Bral2の小脳核において、単位面積当たりにおけるシナプス数が有意に減少していることが確認された。
(II)Bral2タンパクの発現機構(百田・大橋)
Bral2は、in situ hybridization等の結果から、mRNA発現神経細胞が投射した先の神経周囲にタンパクを産出していることが示唆されている。この発現機構を調べるために、Bral2のリコンビナントタンパクを神経細胞に発現させ、軸索輸送により投射先にタンパクが発現されるのかを解析したところ、確かに軸策輸送が観察された。軸索輸送に関与していると予測された配列を欠くリコンビナントタンパクも発現させたが、その配列によるものではないという結果が得られた。
(III)Bral2欠損マウスにおけるCSPG複合体構成分子への影響(別宮)
Bral2欠損マウスにおいて、聴覚伝導路におけるCSPG複合体構成分子が、各神経核または神経のサブタイプで異なる変化を示すという結果を得た。ブレビカンは、Bral2欠損マウスにおいてPNNパターンを維持できないことから、その局在はBral2に依存していることがわかった。これらCSPGの構成に関して、解析が単純であるランビエ絞輪においてその不均一性を更に解析し、その結果を論文にまとめた。現在印刷中である。 -
変形性関節症の診断治療用の軟骨指向性多機能ナノプローブの開発
研究課題/領域番号:22591686 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 西田 圭一郎, 小松 直樹
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究は、少子高齢化により増加傾向にある変形性関節症などの関節変性疾患において、軟骨変性の早期診断と治療を目指すための、軟骨指向性ナノプローブ開発の研究である。ポリアルギニンペプチド(R8)にDOTA-Gdを付加したプローブの関節軟骨造影効果をex vivo, in vivoで確認した。R8に軟骨変性保護タンパクN-TIMP3を付加させ、リウマチ関節炎モデルマウスでその効果を試したが、in vitroでみられた効果程は明瞭な結果は得られなかった。導入タンパクの持続発現による効果の増強など改善の余地がある。
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リンパ管の可視化を用いたリンパ浮腫画像診断法の開発
研究課題/領域番号:22659323 2010年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
二宮 善文, 大橋 俊孝
配分額:3230000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:330000円 )
本研究は、リンパ管内皮を標的とした分子標的リポソーム技術を用いリポソーム内の蛍光指示薬によるリンパ管の特異的可視化を行い、これをリンパ浮腫の診断に役立てようとするものである。リンパ内皮細胞への結合、リンパ管の蛍光造影に成功したが、ラットリンパ浮腫モデルでの測定法の確立までは至らなかった。関連技術として、光学顕微鏡観察と電子顕微鏡観察に用いられる金コロイド内包リポソームが作製できた。
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関節炎におけるアグリカナーゼ制御機構と変形性関節症早期診断・関節保護治療への応用
研究課題/領域番号:20390399 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
廣畑 聡, 二宮 善文, 成瀬 恵治, 大橋 俊孝, 西田 圭一郎
配分額:19630000円 ( 直接経費:15100000円 、 間接経費:4530000円 )
同意が得られた関節炎患者におけるADAMTS9のSNPを解析した。ADAMTS9のプロモーター解析でNF-κBの結合を同定した。関節炎患者由来細胞に周期性伸張刺激を加えるとADAMTS1,4,5,9はいずれも異なる発現誘導パターンを示した。COL1A1の発現増強とともにインテグリンの関与を明らかにした。軟骨細胞にメカニカルストレス刺激を加えるとMMP-13およびADAMTS-5が増加し、RUNX-2とp38MAPKが関与していた。ラット変形性関節炎モデルを作成し解析を行った。
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軟骨基質イメージング用マルチモードプローブ開発による変形性関節症治療の新戦略
研究課題/領域番号:20659232 2008年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
大橋 俊孝, 西田 圭一郎, 二宮 善文
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
デュアルモードプローブの作製(二宮・大橋)
20年度の成果に基づき、CSBP(R8)ペプチドに付加するシグナル発生部分の大きさの検討を行なった。蛍光タンパクであるEGFPを付加したR8-EGFPが軟骨基質に浸透可能であったことから、タンパク質量にして30kDa以下のものが、軟骨基質浸透性が良いと判断した。
さらに、X線吸収性を持つ微小タンパクとして、メタロチオネインを候補とした。pETベクターにMT cDNAを組み込んだコンストラクトを構築し、BE21株に形質転換し、R8-MTタンパクを精製した。タンパク質の安定発現のため、GSTタンパク質との融合タンパクとして発現し、プレシジョンプロテアーゼにより切断後回収するほうが良い結果を得た。しかし、金含有タンパクの精製までには至らなかった。
MRI検出プローブ作製を同時に進行させた。CSBP(R8)ペプチドに金属器レート剤のDOTAを結合させ、そこにGdを配位させる方法をとった。精製し、マスによる分子量同定を行なった。R8-DOTA(Gd)溶液はTI短縮効果を認めた。
健常マウスと関節炎モデルマウス関節軟骨のイメージング(大橋・西田)
イヌ大腿骨頭を摘出し、0.4mM R8-DOTA(Gd)に浸漬させ、1.5T MRIによる造影を行なった。同造影剤を含まない溶液での対照では関節軟骨が造影されなかったが、同し撮影条件で軟骨部の造影ができた。 -
細胞膜透過ペプチドベクターを用いたsiRNA溶出ステントの開発
研究課題/領域番号:18500364 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 廣畑 聡, 松井 秀樹, 新留 琢朗, 森 浩二
配分額:4020000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:420000円 )
1.ラット血管平滑筋細胞を使ったコーティング法の最適化(大橋・新留)
モデルsiRNA薬剤(蛍光ラベルsiRNA,)導入のためのステント表面修飾用最適コーティング法の検討をおこなった。Tiの酸化膜に硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)を結合させるコーティングを選択した。さらに、硫酸化GAGに塩基性PTDペプチドが結合することを水晶発信子(QCM)法により定量した。さらに、細胞を播種し細胞内取り込み量を蛍光量にて定量して評価したが、コントロールと比して、取り込み量の差を十分に認められなかった。播種して接着する時間までのHeparinへの結合安定性・持続性が不十分であると想定された。
2.ラット血管平滑筋細胞を使ったsiRNA導入効果の確認(大橋・松井)
siRNA導入が機能的に十分発現・機能抑制に働いているかを確認する。サイトカイン誘導により、再狭窄時に増殖する内膜平滑筋細胞から様々な遺伝子が発現誘導されてくる。
ターゲットとしたのは、メタロプロテアーゼの一種のADAM-TS遺伝子である。IL-1刺激により発現が6時間後に上昇する。プローモーター上流域に転写因子NFAT結合部位が存在し、NFAT阻害剤(1 □M)で、ADAM-TS遺伝子発現が低下した。NFATの脱リン酸化と核内移行が再狭窄遺伝子発現に関与することがわかった。
3.ラット血管再狭窄モデルにおけるsiRNAステントによる治療 (廣畑・森)
Tiステントを入手しステントクリンプで工夫して折りたたみ、バルーンカテーテルに装着しラット総腸骨動脈への挿入実験を行った。このプロトタイプは極小化と動作柔軟性がまだ不十分であるため、血管障害を引き起こし、留置成績は大動脈より良くなかった。 -
びまん性平滑筋腫瘍を来す疾患の原因遺伝子の探索
研究課題/領域番号:17659412 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
二宮 善文, 大橋 俊孝, 猶本 良夫, 内藤 一郎
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
Alport-leiomyomataosis(AS-DL)症候群はAlport症候群にみられる諸病変と主に食道に発生する平滑筋病変を合併するX染色体性優性遺伝の疾患であり、その原因として、我々の報告を含めてCOL4A5,COL4A6上流の部分欠損との関連が論じられてきた。岡山大学医学部倫理委員会審査とAS-DL症候群の女性患者本人承諾のもと、患者および長男より末梢血DNAの提供を得、COL4A5,COL4A6遺伝子部分の変異および免疫組織学的解析を行った。昨年度194kbの欠失範囲を大まかに同定した。
本年度は
1.新しい症例での194kb deletionからbreak pointを同定した。Break point sequenceからnon-homologous recombinationであると判明したが、反復配列の一種であるLINE elementの関与が示唆された。
2.消化管基底膜でのCOL4A5,COL4A6発現:悪性腫瘍手術時に摘出される組織の正常部を用い食道、胃、小腸、大腸皮膚基底膜の免疫染色を行った。AS-DLの平滑筋肉腫の多発する食道、胃の平滑筋周囲基底膜には発現しているが、ほかでは陰性と判断した。COL4A5,COL4A6の発現と何らかの有意な関係が推測される。
3.発現メカニズムについて:本疾患はCOL4A5&6の発現している平滑筋において、その上流部が欠失すると、優性遺伝的に良性平滑筋腫瘍が発生。増殖する。また、多くのアルポート症候群にあるCOL4A5の変異により、α5鎖ペプチドの欠失とα5/a5/a6分子が欠失するにもかかわらず、平滑筋腫瘍は発生しない。これらから、本疾患はコラーゲン分子のLoss of Functionでなく何らかの遺伝子のGain of Function によると考える。本疾患を含めたCOL4A5&6共通欠失部分にインスレータ一結合部位を想定した。インスレーターであるCTCFの結合が推定される配列をその部分に認めた。 -
脳リンクプロテインによる脳実質ヒアルロン酸-CSPG複合体の機能制御
研究課題/領域番号:17046012 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
大橋 俊孝, 別宮 洋子
配分額:4400000円 ( 直接経費:4400000円 )
1.Bral2/Haln4ノックアウトマウスの神経周囲網マトリックス分子発現への影響:まず、Northern blottingと免疫組織学的方法でBral2/Hapln4遺伝子発現がないことを確認した。我々は先に発表した論文(Bekku et al.,Mol.Cell.Neurosci.,2003)で、Bral2/Hapln4の神経周囲網(PNN)へのタンパク質局在を報告し、ヒアルロン酸結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるbrevicanとの共局在を示した。Bral2/Hapln4ノックアウトマウスでは抗brevican抗体の神経核でのPNN様の染色性が大きく低下し、diffuseになっていることが確認できた。しかしながら、reticulotegmental nucleus of the pons (RtTg)ではBral2欠損マウスでbrevicanのPNN様の発現パターンが一部のみdiffuseになっていたことから、RtTgにおいてはBral2以外のLPが補償している可能性も考えられる。
2.PNN形成におけるBral2/Haln4の役割:我々はBral2/Hapln4ノックアウトマウスのBral2/Hapln4遺伝子のエキソンにtauLacZ遺伝子をノックインしている。すなわち、+/-マウスではBral2/Hapln4遺伝子の転写活性に従い、Bral2発現神経軸索をX-gal染色でき、同時にBral2タンパク質は免疫染色できる。脳の神経回路の中でも単純な回路を持つ小脳に焦点を当て発現細胞とタンパク質局在の関係についての情報収集を行った。X-galの染色はtauの発現に依存しており、本来軸索に染まるはずであるが、プルキンエ細胞においては樹状突起もX-galで染色されてしまい、関係を可視化することはできなかった。これは、もともとプルキンエ細胞では樹状突起でもtauが発現しているためであると考えられる。しかしながら、小脳核においてBral2タンパクのみの発現が見られる細胞と、Bral2mRNAとBral2タンパクの両方の発現が見られる神経細胞が存在していた。これはBral2発現神経細胞とBral2タンパクの局在が必ずしも一致していないことを示す。このことから、Bral2mRNAの発現部位とタンパク発現部位が異なっていることがわかり、Bral2mRNA発現細胞の終末でタンパクが発現することが更に強く示唆された。
またBral2/Hapln4欠損マウスにおいてはbrevicanのPNN様の発現パターンがdiffuseになるという結果を得ている。Bral2/Hapln4は一部の神経回路の神経核に特異的に発現している。Bral2の欠損により、brevican以外のプロテオグリカンのPNNの局在に影響する結果も観察できたが、その度合いは神経核ごとにより異なる。
Bral2の欠損により各々の会合体破壊がおこることから、ランビエ絞輪周囲あるいは神経周囲膜の細胞外微小環境において特異的会合体形成に必須であることがわかった。 -
新しい基底膜様構造フラクトンの機能と脳室下帯神経幹細胞の分化制御
研究課題/領域番号:16390048 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 廣畑 聡, 大塚 愛二, 内藤 一郎
配分額:14400000円 ( 直接経費:14400000円 )
脳実質内の毛細血管の連続した構造体fractoneを構成する分子の解析を行なった。また、マウス脳室下帯より神経幹細胞の同定と分離、さらにはその分化の制御機構を解析することを試みた。
[1]新しい基底膜様構造フラクトンの分子細胞生物学的解析
基底膜分子に特異的抗体を用いて免疫染色をすると、fractone構造にはラミニン、IV型コラーゲン等の分子が存在することが明らかとなった。しかし、それらの各鎖の分布には偏りが認められた。基底膜の周りに存在するfibronectinはfractone特有の染色像を示さなかった。脳や脊髄におけるfractoneの分布について調べたところ、脳室のほぼ全周に分布していたが、第三脳室の一部、第四脳室の一部では存在していなかった。また、このfractone構造は生後すぐの脳室周囲では観察されず、生後7日目から現れはじめ、生後14日目では脳室の外側壁に偏った分布を示した。さらに、特異抗体を用い免疫電子顕微鏡による解析を行ない、fractone構造に基底膜分子が存在することを認めた。
[2]マウス脳室下帯より神経幹細胞の同定と分離
成体マウス脳室下帯より神経幹細胞の分離を試みた。分離した神経幹細胞の基本的培養条件の設定を行い、bFGFなどのサイトカインを付加した接着性基質上での単層培養条件において、ニューロンへの分化誘導、アストロサイトへの分化誘導を試みた。さらに、マトリックス基質の調整のための基礎的な実験を行なった。
[3]in vitro細胞培養系を用いた細胞外マトリックスによる神経幹細胞の分化制御
成体マウスと胎児期マウスの側脳室壁神経幹細胞の分離を行い、安定したneurosphereを得ることができるようになった。また、増殖因子の除去を行ってから単層培養を行ない各種に基質上で細胞の分化誘導の解析の条件設定ができるようになった。 -
新規アグリカナーゼのリウマチ性関節炎における役割と診断的応用
研究課題/領域番号:15390459 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
廣畑 聡, 二宮 善文, 大橋 俊孝, 米澤 朋子, 西田 圭一郎
配分額:15000000円 ( 直接経費:15000000円 )
1 新しく発見したアグリカナーゼ遺伝子の発現検討
IL-1β刺激後した、培養軟骨肉腫細胞株・ヒト軟骨細胞・ヒト線維芽細胞よりそれぞれmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRにて、各アグリカナーゼの発現を定量的に比較検討を行った。線維芽細胞におけるADAMTS-9の発現増加と比較して、軟骨肉腫細胞株および軟骨細胞におけるADAMTS-9の発現増加は大であり、この新規アグリカナーゼは関節においてサイトカイン刺激で大きく誘導される遺伝子であることが明らかとなった。さらに、TNF-αとIL-1βの同時刺激により、ADAMTS9は相乗的に発現が増加することも明らかとなった。ADAMTS-9のmRNA発現レベルは他のどのADAMTSよりも強力であった。
2 アグリカナーゼに対する特異的抗体
ADAMTS-9に対するポリクローナル抗体を作成し、ウエスタンブロット法にて予想通りのサイズのバンドが得られた。IL-1β刺激後一過性にADAMTS-9タンパクが発現することが確認された。本抗体はWestern blotで利用可能であるが、免疫染色にはアフィニティカラムによる更なる精製などが必要と結論された。
3 アグリカナーゼノックアウトマウスの作製
海外共同研究にてES細胞への組み込みが終了しヘテロマウスの段階となった。
4 アグリカナーゼの誘導機構の解明
MAP kinase情報伝達経路の阻害剤(PD98059,SB203580)を添加し、IL-1β刺激による同経路のリン酸化がADAMTS-9の誘導にどう関与しているかを明らかにした。 -
視神経跳躍伝導におけるランビエ絞輪外マトリックスの役割
研究課題/領域番号:15591857 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 二宮 善文, 李 勝天
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
1.Bral1ノックアウトマウス視神経ランビエ絞輪の組織学的・形態学的検討
(1)ランビエ絞輪外マトリックス構造形成・維持への影響:光学および電子顕微鏡レベルでの観察により、ランビエ絞輪、側絞輪、髄鞘の構造およびアストロサイト突起のランビエ絞輪への接着には野生型と大きな変化は見られなかった。
(2)Naチャンネルの分布に与える影響について:側絞輪の分子(例えばcaspr等)が欠損すると側絞輪の構造異常だけでなく、絞輪のNaチャンネルの集積、発生過程でのNaチャンネルのアイソフォームの変化異常が観察される。絞輪のテネイシンR分子を介したNaチャンネルへの影響の可能性が考えられたが、Bral1ノックアウトマウスでは影響はなかった。しかしながら、電気生理学的伝導速度には優意な速度減少が生じた。
(3)新たな発見として、中枢神経の種類によってそのランビエ絞輪外マトリックスに局在するマトリックスタンパク質の種類が異なること、それらはBral1/Hapln2のノックアウトにより、ランビエ絞輪への局在が失われることを見つけた。
2.ランビエ絞輪外マトリックス形成機構の解明:上記Bral1/Hapln2ノックアウトマウスに加え、テネイシンRノックアウトマウスなどと比較し、ランビエ絞輪外マトリックス形成機構を検討した。総括すると、ランビエ絞輪外マトリックス分子は傍絞輪形成(特にセプテイトジャンクション)やNaチャンネルのクラスター化には影響を与えないが、絞輪外のマトリックス環境には大きな変化をもたらす。これらの形成分子はランビエ絞輪外に局在するヒアルロン酸に依存するものであり、それをさらに安定化するものとしてBral1/Hapln2が重要な役割をはたすものと考えられる。現在のところ、ランビエ絞輪外のイオン環境を制御しているという仮説を立てている。今後の課題として、この微小環境でのイオン濃度変化の計測・検出法の開発検討が考えられる。 -
脳リンクプロテインによる脳実質コンドロイチン硫酸プロテオグリカン複合体の機能制御
研究課題/領域番号:15040215 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
大橋 俊孝, 二宮 善文
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
1.Bral1/Hapln2ノックアウトマウス解析:ランビエ絞輪外マトリックス分子は傍絞輪形成やNaチャンネルのクラスター化には影響を与えないが、絞輪外のマトリックス環境には大きな変化をもたらす。これらの形成分子はランビエ絞輪外に局在するヒアルロン酸に依存するものであり、それをさらに安定化するものとしてBral1/Hapln2が重要な役割をはたす。
2.Hapln3/Lp3の脳実質での発現解析:Haplnの中で発現解析の最も遅れていたHapln3について、特異的抗体作製を行い、その抗体を用いてマウス成体脳での発現解析を行った。脳実質での発現は認められないが、ある程度の大きさの動静脈の平滑筋周囲にversicanと共発現しているものである。脳実質瘢痕形成時などの病態での発現は不明であるが、この結果、正常マウス成体脳実質での主なHapln遺伝子はHapln2,Hapln4となる。
3.Bral2/Hapln4ノックアウトマウス作製:前年度までに行った我々の実験からBral2/Hapln4は神経特異的で、神経細胞周膜とよばれるマトリックスを構成する分子の1つであることが明らかとなった。本年度の研究計画としてBral2/Hapln4ノックアウトES細胞の樹立とノックアウトマウス個体の作製を目標とした。ES細胞の樹立、キメラマウス個体の作製は順調に行われたが、野生型マウスとの交配による、生殖系列マウスの作製に時間をとり、なかなか生殖系列の完成が成功しなかった。現在、交配による複数の♀からF1世代マウスが出産したところである。+/-マウスの存在がこの中に期待される。
4.マウス以外のHapln遺伝子解析モデル動物解析について:前年度我々は、発生期におけるHapln遺伝子および関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン遺伝子の機能解析モデルとして、ゼブラフィッシュを用い遺伝子クローニングと発現解析、遺伝子停止(ノックダウン)実験をversican, dermacan, aggrecanを題材に行った。さらに、今年度はHapln1/Crtl1遺伝子クローニングと発現解析をおこない、Hapln1/Crtl1遺伝子はマウス等と同様に胎生期脳に発現していることを確認した。ゼブラフィッシュの特色を生かしたモデル動物になりうることを試行した。具体的には、モルフォリノによるノックダウンのほかに、トランスジェニックフィッシュ作製が有効手段となることを確認した。
以上のように、いくつかの遺伝子学的手法により、脳に発現するHapln遺伝子の機能解析が進んだ。 -
血液脳関門における血管内皮細胞下基底膜の役割
研究課題/領域番号:14370434 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 廣畑 聡, 大橋 俊孝, 米澤 朋子, 大塚 愛二
配分額:14100000円 ( 直接経費:14100000円 )
この2年間で私どもは、血液脳関門に関係すると思われる新規遺伝子リミトリンを同定し、これが血液脳関門と関係することを支持する結果を得た。私どもは、脳毛細血管系より脳以外血管系を引き算するという方法でcDNAsを単離し、ノーザンブロット法、シーケンス検索、等により脳毛細血管系に特異的cDNAsを選出した。さらに、数種類のクローンにつきアミノ酸配列を基に抗ペプチド抗体を作成し、その分布を調べると、ある抗体はマウス脳においてグリア境界膜に特異的に染まった。マウス脳の血管周囲グリア境界膜と脳表面グリア境界膜の両方のグリア境界膜に特異的に染まったため、私どもはこのcDNAが由来するタンパク質を、リミトリンと名付けた。このリミトリンは、膜貫通ドメインを有し、更にインムノグロブリンドメインを二つ持つため、インムノグロブリンスーパーファミリーに属することがわかった。In vivoでアストロサイトが産生することが予想され、免疫電子顕微鏡的観察によって、そのことが確認された。さらに、培養アストロサイトが大量にリミトリンを産生することも確認できた。生体脳では、血液脳関門が機能するのは脳実質内の毛細血管であるが、総ての毛細血管周囲で機能している訳ではなく、脳実質内の、いくつかの場所においては血液脳関門が機能していない場所がある。私どもはこれらの正中隆起やsubfornical organ等の場所においてリミトリンが発現しているかどうかを調べると、陰性であった。さらに、マウス脳実質損傷を作成し、その治癒過程でのリミトリン遺伝子の発現を観察すると、まず脳実質の損傷とともにリミトリンは発現停止し、その治癒過程では、損傷部位周辺の毛細血管新生とともにリミトリンが発現してくることを検知した。この現象は、リミトリンは血液脳関門の生理機能と直接関わっている可能性があるということが推測された。
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がん特異的遺伝子導入法を用いた血管新生阻害治療の試み
研究課題/領域番号:14030056 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
廣畑 聡, 大橋 俊孝
配分額:6400000円 ( 直接経費:6400000円 )
本研究の目的は、がん休眠療法の遺伝子治療の開発である。IV型コラーゲンα3鎖のNC1ドメインは、tumstatinとも呼ばれ、血管新生阻害作用を持つことが報告されている。しかしながらIV型コラーゲンα3鎖のNC1ドメインを治療に利用するにあたっては、同部位がGoodpasture症候群の自己抗原認識部位であることから、がん特異的な遺伝子発現が重要と考えられた。
そこでhTERT(ヒトテロメラーゼ遺伝子)のプロモーター領域を組み込んだベクターにIV型コラーゲンα3鎖のNC1ドメインを下流に位置することにより、がん細胞特異的遺伝子導入法を試みた。コントロールとして、LacZをいれたベクターによる検討では、hTERTの発現がない細胞である正常内皮細胞には、観察しえた限りではX-gal染色は見られなかった。内皮細胞の他に心臓由来線維芽細胞を用いた実験でも同様の結果が得られた。がん細胞(PC-3,DU145)においてのみ、LacZの発現が見られた。この結果は、CMVベクター下にLacZを挿入した(細胞特異性がない)ものを用いたものと比較して著しい差は認められなかった。
NC1ドメインの遺伝子発現効率は、LacZ細胞とほぼ同等であると考えられたが、タンパクレベルの発現は充分なものではなかった。血管新生阻害効果を治療応用するには、発現効率を高めることが必須であり、アデノウイルスを用いた新しい発現カセットを作成が重要と考えられた。 -
新アグリカナーゼの同定と特異的抗体・ノックアウトマウス作製-リウマチ性関節炎の早期診断へ-
研究課題/領域番号:13470312 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
廣畑 聡, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 二宮 善文, 百田 龍輔
配分額:14000000円 ( 直接経費:14000000円 )
1.リアルタイムPCR法によるADAMTS遺伝子の発現
岡山大学にて樹立されたヒト軟骨肉腫由来細胞株(OUMS-27)をインターロイキン(IL)-1β刺激下に培養し、ADAMTS遺伝子の発現を検討した。刺激後、6,12,24,48時間と経時的に細胞からmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRを行い、各ADAMTSの発現を定量的に比較した。内部標準コントロールとしてGAPDHを用いた。ADAMTS-1,2,3,4,5,6,7,8,9のプライマー設計及びリアルタイムPCRの条件設定を行った。アグリカナーゼとしては、ADAMTS-1,4,5が報告されているが、ADAMTS-1,4,5それぞれのOUMS-27細胞におけるIL-1βに対する反応は異なっていた。
また、細胞内情報伝達系の解析を行ったところ、MAPK-JNK pathwayが関与していることが明らかとなった。
2.特異的抗体の作製
ADAMTS-1に対する特異的抗体を2種類作成した。ADAMTS-1の2箇所のペプチドを抗原として家兎に免疫し、抗体を得た。特異性の評価は、IL-1β刺激していない培養OUMS-27細胞からタンパクを抽出し、ウエスタンブロッティングで行ったところ、約100kDaと70kDaのところに各一本ずつ明瞭なバンドを認めた。既報の通り、自己プロセッシングを受けているものと推察された。
3.ノックアウトマウス
海外共同研究者との間で、ノックアウトマウス作製を計画し、ES細胞への組み込みが完了した。 -
ADAMTSによるアミロイド前駆体蛋白のプロセッシングと細胞外基質への影響
研究課題/領域番号:13877097 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
廣畑 聡, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 二宮 善文, 百田 龍輔
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
ADAMファミリーのうち、ADM-10とADAM-17はαセクレターゼ機能を持つことが知られているが、ADAMTSが同様な機能を持つか検討した。
まず、基礎的実験としてADAMTS-1はその遺伝子発現がリポポリサッカライド刺激により、各臓器において発現が上昇することから炎症において何らかの役割を持つことが示唆されている。そこで、ラット実験的心筋梗塞モデルを用いてADAMTS-1の発現形式をノーザンブロット法にて検討した。ADAMTS-1は非梗塞心臓では弱い発現しか認めなかったが、梗塞心においては、梗塞後6時間でその発現が大きく上昇していた。
マウス脳におけるADAMTSの発現をADAMTS-1〜7において検討したが、いずれもそれほど強くなかった。海外共同研究として、アミロイド前駆体蛋白を強制発現し、恒常的に発現する細胞株を樹立している、アラバマ大学Fukuchi教授らと共同実験を開始した。同細胞株は、通常の神経系細胞よりも過剰にアミロイド前駆体蛋白を発現している。これまでの検討によって過剰なアミロイド蛋白前駆体が細胞表面及び培養上清中に存在することが確認された。この実験系において過剰なアミロイド前駆体の切断がαセクレターゼによって制御されているかどうかを検討する目的でこの細胞系におけるαセクレターゼ発現の検討を開始した。実験の条件検討が複雑であり、切断の確認は困難であった。今後は、In vivoの系における実験系の確立およびアルツハイマー脳におけるADAMTSの発現解析が重要と考えられた。 -
精神分裂病原因候補遺伝子としての脳特異的新規リンクモジュール遺伝子解析
研究課題/領域番号:13877151 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
大橋 俊孝, 氏家 寛, 二宮 善文
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
1.第1染色体に連鎖する精神分裂病患者家系の検索
本邦では遺伝子連鎖解析のための精神分裂病家系のDNAサンプル集めは実質的に困難であり、多くの家系を持つ海外の研究室との共同研究を試みた。Peltonenらの持つフィンランド人精神分裂病家系において第1染色体に連鎖する家系があるかどうか共同研究として検索を行ってもらった。その結果1番染色体長腕上に2つの遺伝子マーカーに連鎖する2家系を同定した。それらは染色体1q32-q42の範囲内に位置するため、本プロジェクトのBRAL1,BCAN両遺伝子は除外されたが、第1染色体上にも精神分裂病家系の連鎖する座位が複数存在することを示し、引き続き他の精神分裂病家系の連鎖解析を行うことの重要性を示唆している。
2.BRAL遺伝子の発現解析
マウスで相同遺伝子Bral1をクローニングし、さらにBral1特異的抗体を作成することによりその発現を詳細に調べた。その成果は論文化(Mol.Cell.Neurosci.)することが出来た。Bral1 mRNAは神経細胞が発現しており、そのタンパク質の発現は中枢神経ランビエ絞輪に局在していた。さらにその局在はヒアルロン酸(HA)結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのversican V2とcolocalizeすることを示した。ランビエ絞輪は神経の活動電位の発生と跳躍伝導に重要であることが知られている。我々はBral1が絞輪の細胞外部において、陰性に荷電したヒアルロン酸にversicanコアプロテインを固定し、電位依存性NaチャンネルによりNaイオンが細胞内外に出入りし活動電位を生ずるための細胞外環境を整えている役割をしていると考えている。以上の内容は学会・シンポジウムにも取り上げられ議論された。
リンクモジュール遺伝子に共通したモチーフを指標として、新規リンクモジュール遺伝子である脳リンクプロテインBral2遺伝子をクローニングした。マウスBral2のmRNA, proteinレベルの詳細な発現解析と免疫組織化学的解析より、Bral2は神経核においてbrevicanと共存し、その機能維持に重要であることを見い出した。これは本年度日本生化学会において報告された。 -
嗅覚神経回路におけるTen-m2遺伝子の役割に関する分子生物学的アプローチ
研究課題/領域番号:12470356 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
大橋 俊孝, 米澤 朋子, 二宮 善文
配分額:14700000円 ( 直接経費:14700000円 )
1)Ten-m2特異的抗体の作製:Ten-m2 C末のアミノ酸配列から合成されたペプチドを抗原としてポリクローナル抗体を作製した。他のTen-mの組み換え蛋白または組織切片染色により特異性は確認された。併せて他のTen-m蛋白に対するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体を作製し、脳での発現を調べた。胎生期のTen-m2の発現に関しては他Ten-m遺伝子の発現とwhole mount in situで比較検討
2)マウス脳におけるTen-m2リガンドの検出:申請書に記述したTen-m2細胞外ドメイン組み換え蛋白をHEK293細胞に発現させ、脳抽出液よりリガンドの検索を行った。Ten-m2細胞外ドメインに結合する蛋白のバンドをSDS-PAGEにて確認しているが、同定は行われていない。
3)ヒトTen-m2遺伝子染色体座マッピング:G3 RHパネルにより、Ten-m2,3,4各遺伝子はそれぞれ5,4,11番染色体に位置することを明らかにし、OMIM等によりその遺伝子座にマップされた遺伝性疾患があるかどうかを検索したが、重要な候補は存在しなかった。
4)Ten-m2ノックアウトマウスの表現型解析:(1)II型膜貫通蛋白であるTen-m2の膜貫通ドメインに相当するエキソンにネオマイシン遺伝子断片を挿入することによりTen-m2ノックアウトマウスを作製した。現在、関連Ten-m遺伝子の発現、組織レベルの異常、phenotypeについて観察中である。Ten-m2遺伝子は確かにノックアウトされていることはmRNAレベル、タンパク質レベル両方共に確認された。胎児期E10.5以降に頭部に発現していることから胎児期の頭部発達に異常が見られる可能性も考えられたが、組織レベルではその異常は見られていない。(2)生後脳の成熟に伴う組織上の異常があるか野生型と比較を行ったが明らかな違いは見られなかった。申請時に計画したMonbaertsらの匂い受容体遺伝子(P2)ノックインマウスとの交配に入る前に神経軸索特異的タンパク質MBPの抗体染色により検討を行った.(3)他Ten-mファミリー遺伝子の機能的代償の可能性について、研究初年度に作製した各遺伝子特異的ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体を使用して検討を行ったが有意な違いは認められなかった。
5)マウス脳におけるTen-m2リガンドの検出:(1)Ten-mファミリータンパクの細胞外ドメインは既存のタンパクのドメイン構造にホモロジーが少ない構造上ユニークなものと考えられ、その構造解析はリガンド検出に重要である。4メンバー全部をHEK293細胞で発現させ、電子顕微鏡観察すると全てジスルフィド結合を介した二量体を形成していることが分かった。論文作製中である。(2)匂上皮の投射には細胞外マトリックス分子が関与する可能性があるとされ、リガンド候補分子としてCSPG(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)を想定し発現解析関連遺伝子のクローニングを行った。その結果、ヒアルロン酸結合新規脳リンクプロテインをクローニングし、発現について論文化することができた。 -
基底膜コラーゲン遺伝子の機能解析に関する共同研究
研究課題/領域番号:11694280 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:8200000円 ( 直接経費:8200000円 )
基底膜の機能解析に関する三年間の研究結果として次のような研究結果が得られた。
1)Col4a遺伝子発現停止マウスの解析を行うことにより、α(IV)鎖の生体内における生物学的機能について推測することが出来た。col4a3遺伝子のノックアウトマウスを入手したのでこのマウスの解析を行なうことにより、IV型コラーゲン遺伝子の機能を解析する方法論を設定できた。また、他のcol4a遺伝子ノックアウトマウスの作成を新たに開始したので、IV型コラーゲン遺伝子の発現を完全に停止したマウスの表現系の解析が可能になった。
2)IV型コラーゲン分子の会合体様式の解析
新しい解析方法、コラーゲン部分を細菌コラゲナーゼで分解し、NC1ヘキサマー解析を、未変性コラーゲンを認識する特異的モノクローン抗体を用いた免疫沈降と、変性したコラーゲン鎖を認識する特異的モノクローン抗体を用いたウエスタンブロット解析により、生体内での高分子会合体様式の解析に成功した。その結果、腎糸球体ではα3α4α5鎖によるネットワークとα1α2によるネットワークが別々に構築されていることが分かった。他に平滑筋細胞周囲基底膜の解析も行ない、こちらはハイブリッドネットより構築されていることが分かった。
3)腎糸球体基底膜の解析によりその特異機能はα3α4α5鎖によるネットワークによることが明確になったが、同様のα3α4α5鎖会合体が脳脈絡叢基底膜にも存在することを明らかにした。これは上衣細胞が産生し、血液成分の濾過を行なうための基底膜のfiltration機能と大きく関わりあうことが判明した。 -
エンドスタチンの血管内皮細胞増殖抑制効果の機構
研究課題/領域番号:11470274 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:13900000円 ( 直接経費:13900000円 )
1)血管内皮細胞培養系での低酸素状態でのXVIII型コラーゲンの生合成変化
ヒト毛細血管内皮細胞および周辺細胞の培養系で、XVIII型コラーゲン遺伝子の発現を調べると、共に正常酸素濃度に比べて、低酸素状態ではXVIII型コラーゲン遺伝子の発現は、RNAでも蛋白レベルでも優位に低下していることが分かった。
2)In vivoにおけるエンドスタチン投与によりChondrosarcomaの縮小効果
ヌードマウスにヒトリコンビナントエンドスタチン(50μg/kg/day)を腫瘍周辺に三週間投与することによって、明らかにchondrosarcomaの増生が抑えられた。しかしながら、chondrosarcomaのcell lineであるOUMS-27の細胞培養系では、0-100ng/mlの濃度で投与したリコンビナントヒトエンドスタチンの増殖抑制効果、遊走活性に変化はなかった。bFGFおよびVEGFで活性化したHUVECの遊走活性は、エンドスタチンによって阻害された。エンドスタチンはI型コラーゲン上での血管内皮細胞の遊走活性、接着活性は阻害したが、増殖活性には影響がなかった。
3)XVIII型コラーゲンとXV型コラーゲンの血管基底膜上での発現部位の相違
XVIII型コラーゲン遺伝子の翻訳産物は、血管基底膜に認められた。アミノ酸配列、ドメイン構造が似ているXV型コラーゲンも同様に、血管基底膜に認められる。しかしながら、局在は微妙に違っていた。平滑筋細胞周囲基底膜にはどちらかもしくは両コラーゲンが存在したが、毛細血管周囲基底膜は、臓器組織によって、両方のコラーゲンもしくはXVIII型コラーゲンのみが存在した。このことは、両コラーゲン遺伝子の生理学的機能と関連があるかもしれない。 -
新生血管の構築と基底膜コラーゲンの新しい機能
研究課題/領域番号:11877121 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
1 血管系特に毛細血管全体におけるXVIIIコラーゲンおよびXVコラーゲン遺伝子の発現
両コラーゲンは内皮細胞直下基底膜と血管壁に存在する平滑筋細胞周囲の基底膜であることがわかった。毛細血管内皮細胞下基底膜ではXVIII型とXV型を共通に発現するものが認められる.即ち腎や小腸粘膜、皮膚の毛細血管の内皮細胞下基底膜はXVIII型/XV型両者が共存する.しかしこれは組織臓器により異なり、肺胞壁、肝類洞、糸球体基底膜はXVIII型が主であり、他方胎盤、心臓、骨格筋、小腸筋層ではXV型が主であった.しかし、XVIII型/XV型両者の発現のない毛細血管は認められなかった.このように、毛細血管内皮細胞下基底膜のXVIII型とXV型の発現には多様性がある、XVIII型とXV型ともに発現するものが基本だが、類洞や糸球体基底膜のように特殊化した毛細血管ではXVIII型が優位に発現された.
2 基底膜IV型コラーゲンの新しい機能
IV型コラーゲンのα鎖は6種類あり、中央にコラーゲン部分、N末(NC2ドメイン)とC末(NC1ドメイン)に非コラーゲンドメインを有する。私達は、これらの6種類のα鎖のNC1ドメインをリコンビナントで作製し、これらを用いて血管内皮細胞の接着性と走化性をみたところ、α2、α3、α6鎖NC1ドメインにそれを抑制する活性が認められた。さらに、血管内皮細胞の接着と走化性はインテグリンαvβ1依存性であることが分かった。鶏胚の系(CAMアッセイ)でbFGFによって誘導された血管新生が、明らかにコントロールとくらべて優位に、リコンビナントα2、α3、α6鎖NC1ドメインによって抑制されるという結果を得た。このことは初めての報告であり、IV型コラーゲンの断片に新しい機能があることが明らかになったという意味で意義のある発見である。 -
人工臓器作製を目指した基底膜再構築の基礎研究
研究課題/領域番号:10557113 1998年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 植木 靖好
配分額:12900000円 ( 直接経費:12900000円 )
私達は、上皮細胞/内皮細胞とマトリックスとの間に存在する基底膜を産生し、細胞とマトリックスとの間に挿入することによって、生体内と同じ構成の人工臓器を作製することを究極の目的とする。本研究では、IV型コラーゲンのα鎖構成分子作製のための基礎研究を行なってきた。
・平滑筋細胞周囲基底膜分子構成が臓器により異なる。臓器特有機能と相関する可能性がある。
・COL4A3とCOL4A4遺伝子の上流域の構造と発現制御の問題を、ヒトの遺伝子について解析し、二つの転写産物が二つのプロモーターから発現されていることを明らかにした。
・ウシ卵巣廬胞周囲の基底膜分子構成が発育段階によって異なってくることを示した。
・細胞培養系においてα1(IV)鎖とα2(IV)鎖の生合成を調べたところ、特にα2(IV)鎖がProMMP-9と相互作用していることをが明らかになった。
・正常乳腺上皮細胞と、癌化した上皮細胞下基底膜のIV型コラーゲン分子構成を見ると、正常ではα1/α2とα5/α6分子であるのが、癌化、浸潤度、悪性度によって分布が異なることが分かった。
・COL4A5遺伝子に変異が認められているイヌAlport症候群の例をを観察すると、mRNAレベルではα5(IV)鎖が減少しているのにα6(IV)鎖は正常と比べ変化がないが、タンパク質レベルでは両α鎖共に欠如している事が分かった。α6鎖産生が別の機序で行なわれ、α5/α6分子を形成している可能性を示していることが分かった。
・上皮細胞直下基底膜の分子構成が臓器により異なる。臓器特有機能と相関する可能性がある。
・複数のIV型コラーゲンのNC1ドメインには、血管新生を抑制する活性があり、腫瘍増生を抑えることを初めて示した。
・LMX1B遺伝子の変異で生じるNail patella症候群では腎糸球体基底膜に異常が起こるが、Lmxlb(-/-)マウスでは腎糸球体においてα3(IV)鎖とα4(IV)鎖が減少していることを突き止めた。さらにこの転写因子であるLMX1BがマウスとヒトのCOL4A4遺伝子の第一イントロンのエンハンサー様配列に結合するだけでなく、発現を上昇させることを明らかにした。 -
軟骨細胞分化を誘導する因子のクローニングに関する研究
研究課題/領域番号:10877227 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
二宮 善文, 植木 靖好, 百田 龍輔, 大橋 俊孝
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
本研究は、肢芽発生過程において、軟骨新生を誘導する分化機構を分子の変化として捉えるために、軟骨分化誘導因子をクローニングすることを目的として、現在までに鶏胚の肢芽Stagc20(間葉系細胞)とStage24(軟骨細胞系)からmRNAを抽出し、前者からcDNAライブラリーを作製、後者から引き算し、残りのcDNAをPCRで増幅することにより前者に陽性であって後者に陰性であるクローンを選び出し、これらのクローンについて、そのポリペゾチド構造、遺伝子構造と発現様式を検索し、性質を調べ、軟骨を誘導する機能を有するか否かを調べてきた。取得クローンについて:1)間葉系細胞mRNAと軟骨細胞系mRNAを用いたノザンプロット、2)データーベースによる既報の情報の入手、3)重複久ローン単離により翻訳部位のアミノ酸配列、4)鶏胚全身in situハイブリダイゼーションによる発現パターンの検索、を行ってきた。間葉系細胞と軟骨細胞RNAを抽出し、引算ハイブリダイゼーションPCR法によって、前者に陽性であって後者に陰性であるcDNAクローンを選び出した結果、このなかで興味ある発現パターンを示すいくつかのクローンについて重点的に、ポリペプチド構造と発現部位の同定、他の軟骨特異的遺伝子群との発現時期の比較、等の性質を詳細に検討してきた。得られた複数のクローンが間葉系細胞RNAに強くハイブリダイズし、これらのなかに間葉系細胞を軟骨へと分化を誘導する因子が含まれていることを示唆した。
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び慢性食道平滑筋腫の分子生物学的解明の試み
研究課題/領域番号:09671309 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 植木 靖好, 百田 龍輔, 二宮 善文, 吉岡 秀克
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
び慢性食道平滑筋腫の病因、平滑筋の分化増殖とIV型コラーゲンの関係を分子生物学的に解明することを目標として研究を行ってきた。
1. アルポート症候群合併び慢性食道平滑筋腫(DL+AS)患者遺伝子変異解析
我々はDL+AS患者においてCOL4A5/COL4A6遺伝子上流17kbに及ぶ欠失を同定し、その詳細な切断点を解析した。その結果、欠失にはトポイソメラーゼI型、II型の関与が考えられた。また、この患者は体細胞モザイクであった。この欠失は既に報告されている症例で最小のものであり、DL+ASの発症機序解明に有力な手がかりになると考えられる。
2. アルポート症候群合併び慢性食道平滑筋腫(DL+AS)患者平滑筋腫の免疫組織学的解析
上記DL+AS患者の食道平滑筋腫及び腎組織基底膜をIV型コラーゲンα鎖特異的モノクローナル抗体を用いて染色した。α5(IV),α6(IV)鎖は腫瘍組織の大部分において染色されなかった。このことはCOL4A5/COL4A6遺伝子の欠失した平滑筋が優位に増殖した事を意味する。
3. IV型コラーゲンα6(IV)鎖(col4a6)ノックアウトマウスの表現型解析
col4a6ノックアウトマウスマウスでは生後約1年後においても食道及び他の平滑筋臓器に平滑筋腫は見つかっていない。col4a6遺伝子のみの欠失ではDLが発症しない可能性を示唆している。
4. AS+DLモデルマウス作製および解析:ヒトAS+DL患者のCOL4A5/COL4A6遺伝子上流欠失ゲノムクローンのトランスジェニックマウスを作製し、col4a6ノックアウトマウスと掛け合わせる実験を行った。ヒトにみられた表現型が再現できるか注目した。第2イントロン中の第3の遺伝子の存在とそのdeletionによるドミナントネガティブな影響がみられる可能性がある。
5. ヒトCOL4A6第2イントロンに存在する遺伝子の検索:イントロン2をカバーするBACコンティグを作製しエキソントラップを行い新規エキソン6つを単離した。これらのクローンを用い、食道等のcDNAライブラリーのスクリーニング・ノザンプロット等を行い発現臓器の検討した。 -
軟骨・非軟骨細胞におけるV/XI型コラーゲンα鎖遺伝子の特異的発現機構の解析
研究課題/領域番号:09671497 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉岡 秀克, 松尾 哲孝, 調 恒明, 百田 龍介, 大橋 俊孝, 二宮 善文
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
in vivo及びin vitroでα1(XI)鎖コラーゲン遺伝子の転写調節機構を解析する目的で、マウスα1(XI)遺伝子の5'flanking領域のDNA断片を単離した。その結果、ヒトの場合と同様に複数の開始点が存在し、プロモーター領域にはTATAboxやCCAAT boxは認められず、複数のSp1結合部位が存在した。このDNA断片をルシフェラーゼ及びβ-gal遺伝子の上流につないだ。プロモーター領域のDNA断片は-5kbまでのもの(long form)と、-536bPまでのもの(Short form)の二種類を作製した。さらにこれらの四種類のコンストラクトを用いてレポーター遺伝子の下流に第一イントロンの三つのSma断片(上流より3.5kb、3.0kb、7.0kb)をつないだ。これらを用いて、ウシ大動脈平滑筋細胞及びヒト軟骨肉腫培養細胞にトランスフエクションを行いプロモーター活性をみた。その結果、平滑筋細胞においても、軟骨細胞においてもShort promoter(-536bp)の活性が、long Promoter(-5kb)の活性より高かった。又、第一イントロンの三つのSma断片はいづれの細胞においてもShort promoterの活性を抑制させる傾向にあった。
一方、このα1(XI)鎖遺伝子のN末酸性領域の機能を解析する目的で、この領域をコードする各エクソン欠損させたコンストラクトを作製した。このコンストラクトを横紋筋肉腫細胞(A204)、軟骨肉腫細胞(LTC)、腎由来細胞(293)にトランスフェクションし、そのスプライシングパターンをin vitroで調べた。その結果、腎由来細胞ではエクソン6A-7-8をとるパターンが主要なもので、エクソン6Bによりコードされる転写産物は見られなかった。横紋筋肉腫細胞ではエクソン6A-7-8の他にエクソン7-8のパターンも見られた。一方、軟骨肉腫細胞では五種類のパターンが見られた。このin vitroの実験と平行させてin vivoの実験を行うために、エクソン6A、6Bの各々を欠損させたマウスをhomologous recombination法で作製中である。 -
遺伝子破壊法によるIV型コラーゲンの機能解析に関する共同研究
研究課題/領域番号:09044308 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
二宮 善文, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, ラインハルト フェスラー, コルド ブラケブッシュ, アティラ アゾディ, ブラケブッシュ コード, アゾディ アティラ, フェスラー ラインハルト
配分額:5100000円 ( 直接経費:5100000円 )
Co14a6遺伝子ノックアウトマウスのヘテロ接合体およびホモ接合体を得ることができた。これらのマウスにおいてCo14a6遺伝子のRNA転写、タンパク翻訳活性について詳細に検索した。その結果、転写は認められず、遺伝子発現停止実験が成功したことを意味した。ノックアウトマウスと正常マウスの間の形質変化があるかどうかの検索を進めたところ、現在に顕著な差異は認めていない。
α鎖特異抗体を用いて、α1/α2、α3/α4/α5とα5/α6の三種の分子構成があることを特異抗体を用いた免疫二重染色法によって明らかにした。特に腎糸球体と肺胞基底膜はα3/α4/α5、皮膚および腎ボーマン嚢基底膜はα5/α6分子で構成され、これらの分子を含む超分子会合体でつくられる基底膜とその臓器における機能との関係がありそうである。さらに責任遺伝子がCOL4A5であるアルポート症候群の解析によって、ひとつのα鎖が変異を示すと他のα鎖が細胞内で分解されることから、上記のα3/α4/α5とα5/α6の構成分子が存在することが再確認された。
アルポート症候群に食道下部平滑筋症が合併する大変稀な症例を日本国内で見つけだし、詳細な解析を実施した。その結果、欠失部分はCOL4A5とCOL4A6上流域17kbに及ぶことがわかった。欠失周辺にはトポイソメラーゼコンセンサス配列が存在し、これらは大きな欠失の修復に関与したことが推定された。 -
基底膜新コラーゲン鎖の構成する分子,会合体及び生物学的機能
研究課題/領域番号:08457154 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, 吉岡 秀克
配分額:8800000円 ( 直接経費:8800000円 )
マウスcol4a6遺伝子断片を単離するためにマウス129genomic libraryのスクリーニングを行った。その結果マウスcol4a6遺伝子断片TSg6(約18.3kb)を得た。これを詳細に解析すると、ヒトCOL4A6遺伝子に見られるようなalternative transcriptsは存在しないことがわかった。Col4a6遺伝子の発現停止マウスを作成するために、col4a6エクソン2のなかにNeoR遺伝子を挿入した形のvectorを作成し、ホモロガスリコンビネーションによって129Svマウス由来R1-ES細胞にトランスフェクションし、G418でスクリーニングしNeoR遺伝子陽性細胞を得た。ホモロガスリコンビネーションの判定はgenomic Southern-blottingによって行った。その細胞をC57BL/6胚盤胞に注入、DBF1擬妊娠マウス子宮に移入、キメラマウスの作成を行った。その後交配を繰り返し、heterozygote、homozygoteを得、現在その形質変化を観察する実験を行っている。また、col4a6遺伝子発現については特異抗体をもちいて免疫染色を行ったところ、陰性の結果を得ており、col4a6遺伝子の発現停止実験は成功した。
α鎖特異抗体を用いて、分子構成としてα1/α2とα3/α4/α5/とα5/α6の三種があることを特異抗体を用いた免疫二重染色法によつて明らかにした。
また、アルポート症候群に食道下部平滑筋症が合併する大変稀な症例を日本国内で見つけだし、詳細な解析を実施した。その結果、COL4A5遺伝子のイントロン1の一部、エクソン1、両遺伝子の遺伝子間部分、COL4A6遺伝子エクソン1'、イントロン1'、エクソン2、およびエクソン2、イントロン2の一部が欠失していることが判明した。また、その欠失部分は17kbに及ぶことがわかった。欠失の周辺にはトポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIコンセンサス配列が存在することが判明した。これらの配列は17kbにおよぶ大きな欠失が生じた際、それを修復するための機構と考えられる。 -
血液脳関門をマトリックスの分子構築として理解する試み
研究課題/領域番号:08877223 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
二宮 善文, 百田 龍輔, 大橋 俊孝
本研究は、選択的透過性を有する脳血液関門がアストロサイトから分泌されるシグナルによって、基底膜を産生する内皮細胞に影響を及ぼし、脳以外の毛細血管周囲基底膜と異なる分子構成による超分子会合体が作り上げられているという考えに基づいて、血液脳関門の本能が細胞外マトリックス分子と細胞間の相互作用で説明することにある。具体的に以下の結果を得た。
1)脳毛細血管と脳以外の毛細血管(腸間膜)よりRNAを抽出した。これを無細胞系のタンパク翻訳を行うと、多くのポリペプチドが共通のバンドとして認識されるが、一方で、確かにいくつかのペプチドが異なっていることがわかった。これらのバンドが異なる超分子会合体を構成している可能性がある。
2)ヒト脳毛細血管と脳以外の毛細血管について、α1(IV)-α6(IV)コラーゲン鎖に対する特異的モノクローン抗体を用いて蛍光染色すると、α1(IV)鎖とα2(IV)鎖の存在が明らかになった。脳毛細血管と脳以外の毛細血管について、α(IV)鎖の分布の差は特に認められなかったが、現在さらに詳細の解析を行っている。
3)脳毛細血管と脳以外の毛細血管より抽出したRNAを鋳型にして、種々のプライマーを用いてDifferential display法を行い、いくつかの異なるバンド認められたので、現在これらをクローニングしている。 -
肺胞基底膜のIV型コラーゲンの分子種と遺伝子発現
研究課題/領域番号:08877098 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
百田 龍輔, 吉岡 秀克, 大橋 俊孝
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
今年度、我々の研究は以下のような進展が見られた
1)IV型コラーゲンα4遺伝子転写産物の発現について
IV型コラーゲンα4の遺伝子転写産物に関して、我々のこれまでの結果から第1エキソンの異なる2つの転写産物(1と1')が存在することがわかっているが、Northern blot法と定量的RT-PCR法によって、これらの転写産物をそれぞれ独立に検出する系を確立することに成功した。
これによりIV型コラーゲンα4遺伝子転写産物の発現について、以下のような知見を得た。
i)2つの転写産物は、基底膜に富む様々な組織において発現している。
上皮細胞由来の細胞株、基底膜を多く含む組織中で発現が見られた。中でも特に発現が顕著なのは、肺胞の上皮細胞由来の細胞株であった。
ii)競争的PCR法により転写産物1と1'の転写産物の発現の差について比較を行ったところ、ある種の細胞についてこれらの発現量に100倍もの差が見られた。
こうした発現の差が、組織特異的プロモーターによるものと考え、更に検討を重ねている。
2)レポーター遺伝子による、IV型コラーゲンα4遺伝子のプロモーター領域の解析
α4の転写産物1と1'のそれぞれのプロモーターの活性を見るためのレポーター遺伝子の設計と作製を行った。当初の計画であるルシフェラーゼ遺伝子を用いた測定に先立ち、CAT遺伝子による解析も進行中である。エキソン1'、エキソン1それぞれの上流の2kbをカバーするゲノム断片をCAT遺伝子につないだコンストラクトを作製した。このコンストラクトに基づき、さらに他のコラーゲン遺伝子の例でも見られるようなイントロン1内の転写調節配列の存在の可能性も含めて、数種類のコンストラクトを現在作成中である。 -
基底膜の生物学的機能
研究課題/領域番号:07044268 1995年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
二宮 善文, オウ スーク・ポール, ウオルマン マット, アプラ スニール, 百田 龍輔, 大橋 俊孝, オルセン ビヨン, スーク ポール・オウ, マット ウォルマン, スニール アプラ, ビヨン オルセン, マット ウオルマン
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
1)マウスライブラリーからα6(IV)cDNAの重複クローンを得、マウスα6(IV)鎖ポリペプチドの全アミノ酸の一次構造を決定することが出来た。その結果、以前に我々が決定したヒトα6(IV)鎖ポリペプチドの全アミノ酸の一次構造と類似であることがわかった。
2)マウスα6(IV)ポリペプチドのアミノ酸配列より特異抗体を作成し、マウスにおいてもヒトと同じようなα6(IV)ポリペプチドの組織分布を示すかどうかについて検索したところ、基本的にはヒトの分布と類似していた。但し局所においては、例えば腎糸球体基底膜等では多少の分布の相違が観察された。また、他のα鎖との対照的な発現の違いは顕著であった。さらには、対となる遺伝子col4A1/col4a2 col4A3/col4a4 col4A5/col4a6については、いくつかの臓器を除けば、各々同調的な発現様式が観察された。
(3)α鎖特異的モノクローン抗体を用いた組織分布より、6α鎖が構成する分子種を推定することが出来た。その結果、α1(IV)とα2(IV)、α3(IV)とα4(IV)とα5(IV)、α5(IV)とα6(IV)、そしてα4(IV)のホモトリマ-の四種類の分子種が存在すると思われる。このことは、α鎖特異抗体を用いた二重染色によって、また、アルポート症候群などの遺伝性の疾患の症例を用いて染色することによって確かめることが出来た。
4)マウスα6(IV)遺伝子の解析を進めたところ、エクソン31の択一的スプライシングが起こっていることを突き止めた。現在この択一的スプライシングが組織特異的に生じている現象か否かを検証している。
5)ヒトのアルポート症候群に合併する食道下部平滑筋症の症例において、20kb足らずの大きな塩基配列の欠損が検証された。詳細にこの塩基配列の欠損部位を検索すると、COL4A5遺伝子のイントロン1の一部、エクソン1、COL4A5とCOL4A6両遺伝子の上流部分、COL4A6遺伝子エクソン1'、イントロン1'、エクソン1、イントロン1、エクソン2そしてイントロン2の一部が欠失していることが判明した。さらに、イントロン2には、食道下部の平滑筋細胞増殖に関連のある遺伝子の存在が示唆された。現在この平滑筋細胞増殖に関連のある遺伝子の存在を究明しつつある。
6)ノックアウトマウス作成のため、マウス遺伝子断片よりエクソン2を除き、変りにNeo^R遺伝子を挿入したコンストラクトを構築した。ホモロガスリコンビネーションによってコンストラクトの導入された幹細胞を選択した。このような幹細胞を胚盤胞に注入することによりキメラマウスを作成することが出来た。現在、ヘテロ接合体およびホモ接合体の形質変化の検索を進めている。 -
腎糸球体基底膜におけるマトリックス分子構築と遺伝子発現
研究課題/領域番号:07671251 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
大橋 俊孝, 吉岡 秀克, 二宮 善文
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
1.マウスα6(IV)鎖遺伝子(col4a6)及びα5(IV)鎖遺伝子(col4a5)上流プロモーター領域遺伝子断片のクローニング
マウスα6(IV)鎖及びα5(IV)鎖cDNAをプローブとして129SVJマウスのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし、両遺伝子上流プロモーター領域を含むクローンTSg6を分離した。
2.col4a6及びcol4a5遺伝子発現調節機構の解析
上記クローンTSg6を解析したところ、col4a5のエキソン1とcol4a6のエキソン1,2が含まれてした。しかしながら、ヒトでみられた第一エキソンの択一的スプライシングはマウスα6(IV)鎖遺伝子ではみられなかった。現在、col4a6上流DNA断片をCAT遺伝子及びLacZ遺伝子に連結したconstructを作製し遺伝子発現調節機構解析を行なっているところである。
3.col4a6遺伝子のノックアウトマウスの作製
第1項で得られたcol4a6断片を利用して、col4a6のエキソン2部分にNeo^r遺伝子を挿入し、null mutationの改変を導入するターゲティングconstructを作成した。ES細胞ヘターゲティングconstruct DNAの注入後、サザンブロティングにより相補的遺伝子組換えの起こっているES細胞クローンを選別し、胚盤胞へ注入した。現在、キメラマウスの誕生を待っている段階である。
4.Alport症候群,(平滑筋腫との合併症),Goodpasture症候群の病因と各α(IV)鎖との関連を調べる。
ヒトα6(IV)鎖遺伝子の構造解析プロジェクトから決定されたエクソン・イントロン構造を基に、平滑筋腫との合併を伴ったAlport症候群患者の白血球DNAを用いて、α6(IV)鎖遺伝子及びα5(IV)鎖遺伝子の欠失領域の解析を行なっている。両遺伝子のイントロン1にまたがって欠失した症例が発見できた。さらに、細かい欠失部分解析を行なっている。これらの遺伝子解析によりこの症例の病因解析が進展すると期待される。 -
XI型コラーゲン分子の軟骨及び非軟骨細胞における特異的発現機構の解析
研究課題/領域番号:07671593 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
吉岡 秀克, 大橋 俊孝, 二宮 善文
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
私たちはヒトコラーゲンα1(XI)鎖のcDNAプローブを用いて、クロスハイブリダイゼーション法にて重視するマウスα1(XI)鎖をコードするcDNAを得て、その全一次構造を決定した。その結果、予想されるマウスproα1(XI)鎖のアミノ酸は1769個であり、そのN末に35個のシグナルペプチドが存在した。ヒトとのアミノ酸レベルのホモロジーは93%であり、N末、中央螺旋部及びC末の領域構造、N-及びC-プロペプチドのシステイン、及び架橋に関与するリジン等の重要な構造はすべて保持されていた。わずかにマウスのN-プロペプチドにおいてアミノ酸が一個少ないのみであった。
一方、このcDNAプローブを使用し、マウス胎児期における発現をノーザンブロット法、RT-PCR法及びin situ hybridization法で調べた。その結果、RT-PCR法を用いると11日目胎児にはすでにこの遺伝子の発現がみられた。ノーザンブロット法ではヒトと同様に7.3kb及び6.3kbの転写産物がみられ、18日目胎児では軟骨組織ばかりでなく、脳、皮膚、頭蓋骨の非軟骨組織でも発現していた。さらに、in situ hybridizationを行うと、これらの組織に発現が認められたばかりでなく、心臓弁部、舌骨格筋、大動脈平滑筋、腸管平滑筋、歯芽、耳小胞等にも発現がみられ、この遺伝子が軟骨組織ばかりでなく、広く非軟骨組織にも発現していることが証明された。
さらに、N-プロペプチド部分はヒト同様、塩基性、酸性及び短い螺旋領域よりなっていたが、酸性領域をコードするエクソンは胎児の軟骨や頭蓋骨においては複雑な選択的スプライシングを受けており、この現象が内軟骨性骨化或は膜性骨化過程に関与している可能性が示唆された。 -
基底膜に会合するIV型コラーゲン分子とそれをコードする遺伝子発現の特性
研究課題/領域番号:06454250 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
二宮 善文, 大橋 俊孝, 吉岡 秀克
配分額:7600000円 ( 直接経費:7600000円 )
本年度施行した研究によって、当初掲げた研究目的の大半を達成することができた.
1)ヒトα4(IV)鎖のアミノ酸一次構造を決定することができた.
α4(IV)鎖をコードするcDNAの重複クローンを単離し、ヒトα4(IV)鎖のアミノ酸一次構造を決定することができた.
2)α6(IV)鎖をコードする遺伝子の上流域の構造決定とα5(IV)遺伝子との関係を明かにした.
ヒトα6(IV)鎖のアミノ酸一次構造を決定し報告した.さらにこれらのcDNAをもとに遺伝子DNAの構造を決定しつつある.私どもはα6(IV)鎖をコードする遺伝子の上流域にα5(IV)鎖をコードする遺伝子が存在しており、しかもこれらの遺伝子が反対向きに並んでいることをつきとめた.さらに興味あることは、α6(IV)鎖をコードする遺伝子の発現は通常の遺伝子発現と異なって、二つのRNA転写産物が存在することがわかった.このことはおそらくは二つのプロモーターが存在しこれらが組織特異的な発現に関係しているであろうことが想像される.
3)α(IV)鎖特異的抗体の作製を行いIV型コラーゲン6遺伝子の発現様式を明かにした.
上述のα4(IV)鎖およびα6(IV)鎖の一次構造より推定される特異抗体を作製に適する部位を同定し合成ペプチドを作製、このペプチドに対するモノクローン抗体を作製した.抗体は各々特異的であり、ウェスタンブロット、各組織の免疫染色法でこれらの特異的なα(IV)鎖の存在部位を特定することができた.その結果α1(IV)およびα2(IV)鎖はすべての基底膜に存在すること、α3(IV)およびα4(IV)鎖は限定された部位にしか発現されないが常にこの二つの遺伝子は同時に発現することがわかった.さらにα5(IV)およびα6(IV)鎖は限定された部位に必ずしも同時には発現しないことがわかった.この部位特異的発現が上述の二プロモーターの存在と関連があることが想像される. -
遺伝性腎基底膜疾患に関するIV型コラーゲンの分子生物学的研究
研究課題/領域番号:06770869 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
大橋 俊孝
配分額:1100000円 ( 直接経費:1100000円 )
申請者は本研究の申請時の目的として、1)α6(IV)鎖,α4(IV)鎖遺伝子構造の決定2)遺伝性腎糸球体基底膜疾患の遺伝子変異の検索を掲げた。その結果、
1)α6(IV)鎖全遺伝子を含む重複クローンを単離し、全遺伝子構造を決定した(文献2,3参照)。さらに、その中の最上流の遺伝子断片の解析により、α6(IV)鎖遺伝子(COL4A6)とα5(IV)鎖遺伝子(COL4A5)はbidirectional promoterにより転写制御され、COL4A6はAlternativeなpromoterによって発現制御されることを初めて報告した(文献1参照)。この結果は、従来知られていたα1(IV)鎖遺伝子(COL4A1)とα2(IV)鎖遺伝子(COL4A2)と同様にその他α(IV)鎖遺伝子でもbidirectional promoterにより転写制御されていることを初めて示したものである。また、Alternativeなpromoterの存在はCOL4A6の組織特異的発現に関与すると推測される。
2) 1)の結果をもとに、まずα6(IV)鎖遺伝子およびα5(IV)鎖遺伝子の関与する遺伝性疾患の家系解析に有用なマーカーとして(CA)nマーカーを検索した。1)で単離したCOL4A6断片から(CA)n配列を発見し、3つがマーカーとして有効であると判断された(投稿準備中)。また、疾患検索の準備としてPCR-SSCP実験を行なうため、全エキソンをはさむようにプライマーを設計した。これらは遺伝性腎糸球体基底膜疾患のみならず、最近関連性が示唆されたびまん性平滑筋腫の責任遺伝子としてのα6(IV)鎖遺伝子の変異の検索に有効であると思われる。 -
VIII型コラーゲンの生物学的機能
研究課題/領域番号:06044154 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
二宮 善文, MATT Warman, O;ENA Jacenk, SUNEEL Apte, 大橋 俊孝, 村垣 泰光, BJORN Olsen
配分額:2500000円 ( 直接経費:2500000円 )
これまで私共はEC(Endothelial Cell)コラーゲンとして知られていたVIII型コラーゲンα1およびα2鎖の構造、ヒト染色体上の位置、発現細胞等について調べてきたが、今回は培養内皮細胞による発現様式、培養皮膚ケラチノサイトによる合成、さらにトランスジェーニックマウスによるVIII型コラーゲンのマウスin vivoにおける発現について検討したので報告する.
ヒト大動脈内皮細胞、帯内皮細胞を酵素処理により細胞を単離し、培養に供し、典型的な内皮細胞を得た.継代を繰り返し、10代程度になると細胞が偏平化する.この細胞を用いて全RNA中のα1(VIII)およびα2(VIII)鎖をコードするmRNAを調べると、生体から単離して培養に供し、細胞が偏平化するまで両遺伝子が発現していることがわかった.さらにI型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲンをコードするmRNAについても発現していることがわかった.またラット腹部大動脈より平滑筋細胞を単離し、培養して数継代目にヘパリンを投与し、平滑筋細胞の産生するコラーゲンを調べたところ、75kDaのサイズの、細菌性コラゲナーゼで消化されるコラゲナーゼ鎖が検出された.これがヘパリン投与することによってコラーゲン鎖の産生は20〜30倍増強される.このコラーゲン鎖の同定については、研究代表者らはVIII型コラーゲンではないかと推測しているが未だ照明はされていない.
以前の実験でマウスにおいてノザンプロット法でα1(VIII)およびα2(VIII)mRNAが存在することを示したが、今回ヒト皮膚由来のケラチノサイトを培養し、細胞から抽出した全RNAに対してヒトVIII型コラーゲンのプローブを反応させると明かに同じサイズのRNAに反応した.また、マウスの皮膚組織に対してin situハイブリダイゼーションを行うと、皮膚のケラチノサイトに対して強い陽性所見を得た.このことよりケラチノサイトがVIII型コラーゲンの産生細胞であることが判明した.
VIII型コラーゲン遺伝子がどの組織に発現するかを見極めるための実験としてマウスプロモーター領域をLac Z遺伝しをレポーター遺伝子として接続しトランスジェーニックを作成し、検討を繰り返したところ、いくつかのトランスジェーニックマウスの系統が得られた.系統によってレポーター遺伝子の発現が異なっていたので、今回は直接マウス胎児を用いてin situハイブリダイゼーションを行ったところ、基本的にレポーター遺伝子の発現していた臓器および組織にはすべて強い陽性所見が得られたので、VIII型コラーゲン遺伝子発現をねらったトランスジェーニックマウス実験の正当性が証明された. -
基底膜の組織特異的機能とマトリックス分子の多様性
研究課題/領域番号:04454564 1992年 - 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
二宮 善文, 大橋 俊孝, 吉岡 秀克
配分額:6900000円 ( 直接経費:6900000円 )
基底膜の組織特異的機能とマトリックス分子の多様性を知る目的で、私どもは基底膜の重要な構成成分であるIV型コラーゲンの分子とその構成鎖について新しい知見を得ることができた.申請時に述べた目的のうち、α4(IV)鎖ポリプペチドのアミノ酸一次構造はcDNAのクローニングによってほぼ全体が明らかに成りつつある.またこれをコードする遺伝子構造はC末のNC1をコードする4エクソンについては構造が明らかになった.その結果α2(IV)鎖をコードする遺伝子と酷似していることがわかった.この遺伝子の染色体上の位置は染色体2q35-37.1であることがわかった.さらにα4(IV)鎖ポリペプチドをコードするmRNAは他のα(IV)鎖をコードするmRNAと比べ、優位に大きいことが明らかになった.
特筆すべきことはこのα4(IV)鎖ポリペプチドをコードするcDNAのクローニングの過程で、未知のcDNAを得ることができたことである.つまり上記のα4(IV)cDNAの解析から偶数系列に属し、X染色体に存在するもう一つの遺伝子が存在するかも知れないことを予想していた私どもは、low stringencyの条件で、新しいα6(IV)鎖をコードするcDNAを単離することができた.しかもこの遺伝子がX染色体上に存在するだけでなく、面白いことに、α5(IV)鎖をコードする遺伝子と対になって同じ遺伝子座に、逆向きに存在していることがわかった.またα6(IV)鎖をコードする転写産物は二つ存在し、alternativeに発現開始されるプロモーターが存在することが明らかとなり、α6(IV)鎖とα5(IV)鎖をコードする遺伝子の発現部位と、コラーゲン分子としてどのような鎖構成なのか、さらにはこれらの分子が構築する超分子会合体がどのように組織特異的な基底膜を構成していくかという問題の糸口をつかむことができた.