共同研究・競争的資金等の研究 - 大橋 俊孝
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脳小血管障害における基底膜の役割
研究課題/領域番号:23390348 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 廣畑 聡, 大塚 愛二, 幡中 邦彦, 斎藤 健司, 百田 龍輔, 小川 弘子, 稲垣 純子
配分額:19240000円 ( 直接経費:14800000円 、 間接経費:4440000円 )
血液-脳関門の破綻や脳小血管の出血に基底膜の機能の異常が関与すること、及び、その分子機構を明らかにすることを目的とした。我々は、マウス静脈内に腫瘍壊死因子(TNFα)を投与し、血液-脳関門の破綻を誘導する脳炎モデルを作製した。そして血液-脳関門の破綻および基底膜の主成分であるIV型コラーゲンの変化についてWestern blot法および免疫組織染色法を用いて継時的に解析を行った。解析の結果、継時的にIV型コラーゲンは限定的に分解され、血液-脳関門の破綻と関連性のあることが示唆された。
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ヒストン脱アセチル化酵素1(HDAC1)siRNAの遺伝子導入による関節炎治療
研究課題/領域番号:23592215 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
西田 圭一郎, 大橋 俊孝, 川畑 智子
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
HDAC1に標的を絞り、siRNAの膝関節投与およびエレクトロポレーションを用いた遺伝子導入による局所治療を試みた。体重や関節炎の臨床評価には差は認めず、全身の関節炎に関する治療効果は認めなかったが、膝関節内のHdac1の発現は抑制され、滑膜増殖も抑制されていた。マウス滑膜組織から単離した滑膜線維芽細胞の炎症性サイトカイン産生能には治療群とコントロール群で差を認めなかった。HDAC1 siRNAの導入による関節破壊抑制効果はサイトカイン制御ではなく、滑膜増殖抑制に起因することが示唆された。HDAC1を標的としたin vivo遺伝子導入により局所関節において滑膜炎の制御が可能であることを示した。
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聴覚におけるペリニューロナルネットの役割ー聴覚伝導路特異的Bral2の機能解析ー
研究課題/領域番号:22591879 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
別宮 洋子, 大橋 俊孝, 大塚 愛二, 百田 龍輔
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
Bral2は、リンクプロテイン(LP)の一種で、ヒアルロン酸(HA)結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)およびHAとともに複合体を形成する。LPは、その複合体形成及び安定化に必須の分子であると考えられている。Bral2は、CSPGの中でもブレビカンと共局在する事がわかっている。これらは、成体脳ではペリニューロナルネット(PNN)と呼ばれる、神経細胞周囲の網目状構造に存在する。
本研究では、聴覚伝導路において、Bral2複合体のシナプス伝達への関わりを1)シナプスの固定、2)イオンプールとしての可能性、3)イオンチャネルとの分子間相互作用という観点から解析し、聴覚伝導のメカニズムの一端を解明する事を目的とした。
(I)Bral2欠損マウスにおける神経細胞体への影響(大塚・別宮)
Bral2欠損マウスにおいて、PNNを構成するCSPG複合体構成分子が小脳核では局在できないことがわかっている。この神経核においてシナプスの接着等に何らかの形態的変化がないかを、電子顕微鏡での観察によって詳細に調べた。その結果、Bral2の小脳核において、単位面積当たりにおけるシナプス数が有意に減少していることが確認された。
(II)Bral2タンパクの発現機構(百田・大橋)
Bral2は、in situ hybridization等の結果から、mRNA発現神経細胞が投射した先の神経周囲にタンパクを産出していることが示唆されている。この発現機構を調べるために、Bral2のリコンビナントタンパクを神経細胞に発現させ、軸索輸送により投射先にタンパクが発現されるのかを解析したところ、確かに軸策輸送が観察された。軸索輸送に関与していると予測された配列を欠くリコンビナントタンパクも発現させたが、その配列によるものではないという結果が得られた。
(III)Bral2欠損マウスにおけるCSPG複合体構成分子への影響(別宮)
Bral2欠損マウスにおいて、聴覚伝導路におけるCSPG複合体構成分子が、各神経核または神経のサブタイプで異なる変化を示すという結果を得た。ブレビカンは、Bral2欠損マウスにおいてPNNパターンを維持できないことから、その局在はBral2に依存していることがわかった。これらCSPGの構成に関して、解析が単純であるランビエ絞輪においてその不均一性を更に解析し、その結果を論文にまとめた。現在印刷中である。 -
変形性関節症の診断治療用の軟骨指向性多機能ナノプローブの開発
研究課題/領域番号:22591686 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 西田 圭一郎, 小松 直樹
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究は、少子高齢化により増加傾向にある変形性関節症などの関節変性疾患において、軟骨変性の早期診断と治療を目指すための、軟骨指向性ナノプローブ開発の研究である。ポリアルギニンペプチド(R8)にDOTA-Gdを付加したプローブの関節軟骨造影効果をex vivo, in vivoで確認した。R8に軟骨変性保護タンパクN-TIMP3を付加させ、リウマチ関節炎モデルマウスでその効果を試したが、in vitroでみられた効果程は明瞭な結果は得られなかった。導入タンパクの持続発現による効果の増強など改善の余地がある。
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リンパ管の可視化を用いたリンパ浮腫画像診断法の開発
研究課題/領域番号:22659323 2010年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
二宮 善文, 大橋 俊孝
配分額:3230000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:330000円 )
本研究は、リンパ管内皮を標的とした分子標的リポソーム技術を用いリポソーム内の蛍光指示薬によるリンパ管の特異的可視化を行い、これをリンパ浮腫の診断に役立てようとするものである。リンパ内皮細胞への結合、リンパ管の蛍光造影に成功したが、ラットリンパ浮腫モデルでの測定法の確立までは至らなかった。関連技術として、光学顕微鏡観察と電子顕微鏡観察に用いられる金コロイド内包リポソームが作製できた。
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関節炎におけるアグリカナーゼ制御機構と変形性関節症早期診断・関節保護治療への応用
研究課題/領域番号:20390399 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
廣畑 聡, 二宮 善文, 成瀬 恵治, 大橋 俊孝, 西田 圭一郎
配分額:19630000円 ( 直接経費:15100000円 、 間接経費:4530000円 )
同意が得られた関節炎患者におけるADAMTS9のSNPを解析した。ADAMTS9のプロモーター解析でNF-κBの結合を同定した。関節炎患者由来細胞に周期性伸張刺激を加えるとADAMTS1,4,5,9はいずれも異なる発現誘導パターンを示した。COL1A1の発現増強とともにインテグリンの関与を明らかにした。軟骨細胞にメカニカルストレス刺激を加えるとMMP-13およびADAMTS-5が増加し、RUNX-2とp38MAPKが関与していた。ラット変形性関節炎モデルを作成し解析を行った。
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軟骨基質イメージング用マルチモードプローブ開発による変形性関節症治療の新戦略
研究課題/領域番号:20659232 2008年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
大橋 俊孝, 西田 圭一郎, 二宮 善文
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
デュアルモードプローブの作製(二宮・大橋)
20年度の成果に基づき、CSBP(R8)ペプチドに付加するシグナル発生部分の大きさの検討を行なった。蛍光タンパクであるEGFPを付加したR8-EGFPが軟骨基質に浸透可能であったことから、タンパク質量にして30kDa以下のものが、軟骨基質浸透性が良いと判断した。
さらに、X線吸収性を持つ微小タンパクとして、メタロチオネインを候補とした。pETベクターにMT cDNAを組み込んだコンストラクトを構築し、BE21株に形質転換し、R8-MTタンパクを精製した。タンパク質の安定発現のため、GSTタンパク質との融合タンパクとして発現し、プレシジョンプロテアーゼにより切断後回収するほうが良い結果を得た。しかし、金含有タンパクの精製までには至らなかった。
MRI検出プローブ作製を同時に進行させた。CSBP(R8)ペプチドに金属器レート剤のDOTAを結合させ、そこにGdを配位させる方法をとった。精製し、マスによる分子量同定を行なった。R8-DOTA(Gd)溶液はTI短縮効果を認めた。
健常マウスと関節炎モデルマウス関節軟骨のイメージング(大橋・西田)
イヌ大腿骨頭を摘出し、0.4mM R8-DOTA(Gd)に浸漬させ、1.5T MRIによる造影を行なった。同造影剤を含まない溶液での対照では関節軟骨が造影されなかったが、同し撮影条件で軟骨部の造影ができた。 -
細胞膜透過ペプチドベクターを用いたsiRNA溶出ステントの開発
研究課題/領域番号:18500364 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 廣畑 聡, 松井 秀樹, 新留 琢朗, 森 浩二
配分額:4020000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:420000円 )
1.ラット血管平滑筋細胞を使ったコーティング法の最適化(大橋・新留)
モデルsiRNA薬剤(蛍光ラベルsiRNA,)導入のためのステント表面修飾用最適コーティング法の検討をおこなった。Tiの酸化膜に硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)を結合させるコーティングを選択した。さらに、硫酸化GAGに塩基性PTDペプチドが結合することを水晶発信子(QCM)法により定量した。さらに、細胞を播種し細胞内取り込み量を蛍光量にて定量して評価したが、コントロールと比して、取り込み量の差を十分に認められなかった。播種して接着する時間までのHeparinへの結合安定性・持続性が不十分であると想定された。
2.ラット血管平滑筋細胞を使ったsiRNA導入効果の確認(大橋・松井)
siRNA導入が機能的に十分発現・機能抑制に働いているかを確認する。サイトカイン誘導により、再狭窄時に増殖する内膜平滑筋細胞から様々な遺伝子が発現誘導されてくる。
ターゲットとしたのは、メタロプロテアーゼの一種のADAM-TS遺伝子である。IL-1刺激により発現が6時間後に上昇する。プローモーター上流域に転写因子NFAT結合部位が存在し、NFAT阻害剤(1 □M)で、ADAM-TS遺伝子発現が低下した。NFATの脱リン酸化と核内移行が再狭窄遺伝子発現に関与することがわかった。
3.ラット血管再狭窄モデルにおけるsiRNAステントによる治療 (廣畑・森)
Tiステントを入手しステントクリンプで工夫して折りたたみ、バルーンカテーテルに装着しラット総腸骨動脈への挿入実験を行った。このプロトタイプは極小化と動作柔軟性がまだ不十分であるため、血管障害を引き起こし、留置成績は大動脈より良くなかった。 -
びまん性平滑筋腫瘍を来す疾患の原因遺伝子の探索
研究課題/領域番号:17659412 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
二宮 善文, 大橋 俊孝, 猶本 良夫, 内藤 一郎
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
Alport-leiomyomataosis(AS-DL)症候群はAlport症候群にみられる諸病変と主に食道に発生する平滑筋病変を合併するX染色体性優性遺伝の疾患であり、その原因として、我々の報告を含めてCOL4A5,COL4A6上流の部分欠損との関連が論じられてきた。岡山大学医学部倫理委員会審査とAS-DL症候群の女性患者本人承諾のもと、患者および長男より末梢血DNAの提供を得、COL4A5,COL4A6遺伝子部分の変異および免疫組織学的解析を行った。昨年度194kbの欠失範囲を大まかに同定した。
本年度は
1.新しい症例での194kb deletionからbreak pointを同定した。Break point sequenceからnon-homologous recombinationであると判明したが、反復配列の一種であるLINE elementの関与が示唆された。
2.消化管基底膜でのCOL4A5,COL4A6発現:悪性腫瘍手術時に摘出される組織の正常部を用い食道、胃、小腸、大腸皮膚基底膜の免疫染色を行った。AS-DLの平滑筋肉腫の多発する食道、胃の平滑筋周囲基底膜には発現しているが、ほかでは陰性と判断した。COL4A5,COL4A6の発現と何らかの有意な関係が推測される。
3.発現メカニズムについて:本疾患はCOL4A5&6の発現している平滑筋において、その上流部が欠失すると、優性遺伝的に良性平滑筋腫瘍が発生。増殖する。また、多くのアルポート症候群にあるCOL4A5の変異により、α5鎖ペプチドの欠失とα5/a5/a6分子が欠失するにもかかわらず、平滑筋腫瘍は発生しない。これらから、本疾患はコラーゲン分子のLoss of Functionでなく何らかの遺伝子のGain of Function によると考える。本疾患を含めたCOL4A5&6共通欠失部分にインスレータ一結合部位を想定した。インスレーターであるCTCFの結合が推定される配列をその部分に認めた。 -
脳リンクプロテインによる脳実質ヒアルロン酸-CSPG複合体の機能制御
研究課題/領域番号:17046012 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
大橋 俊孝, 別宮 洋子
配分額:4400000円 ( 直接経費:4400000円 )
1.Bral2/Haln4ノックアウトマウスの神経周囲網マトリックス分子発現への影響:まず、Northern blottingと免疫組織学的方法でBral2/Hapln4遺伝子発現がないことを確認した。我々は先に発表した論文(Bekku et al.,Mol.Cell.Neurosci.,2003)で、Bral2/Hapln4の神経周囲網(PNN)へのタンパク質局在を報告し、ヒアルロン酸結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるbrevicanとの共局在を示した。Bral2/Hapln4ノックアウトマウスでは抗brevican抗体の神経核でのPNN様の染色性が大きく低下し、diffuseになっていることが確認できた。しかしながら、reticulotegmental nucleus of the pons (RtTg)ではBral2欠損マウスでbrevicanのPNN様の発現パターンが一部のみdiffuseになっていたことから、RtTgにおいてはBral2以外のLPが補償している可能性も考えられる。
2.PNN形成におけるBral2/Haln4の役割:我々はBral2/Hapln4ノックアウトマウスのBral2/Hapln4遺伝子のエキソンにtauLacZ遺伝子をノックインしている。すなわち、+/-マウスではBral2/Hapln4遺伝子の転写活性に従い、Bral2発現神経軸索をX-gal染色でき、同時にBral2タンパク質は免疫染色できる。脳の神経回路の中でも単純な回路を持つ小脳に焦点を当て発現細胞とタンパク質局在の関係についての情報収集を行った。X-galの染色はtauの発現に依存しており、本来軸索に染まるはずであるが、プルキンエ細胞においては樹状突起もX-galで染色されてしまい、関係を可視化することはできなかった。これは、もともとプルキンエ細胞では樹状突起でもtauが発現しているためであると考えられる。しかしながら、小脳核においてBral2タンパクのみの発現が見られる細胞と、Bral2mRNAとBral2タンパクの両方の発現が見られる神経細胞が存在していた。これはBral2発現神経細胞とBral2タンパクの局在が必ずしも一致していないことを示す。このことから、Bral2mRNAの発現部位とタンパク発現部位が異なっていることがわかり、Bral2mRNA発現細胞の終末でタンパクが発現することが更に強く示唆された。
またBral2/Hapln4欠損マウスにおいてはbrevicanのPNN様の発現パターンがdiffuseになるという結果を得ている。Bral2/Hapln4は一部の神経回路の神経核に特異的に発現している。Bral2の欠損により、brevican以外のプロテオグリカンのPNNの局在に影響する結果も観察できたが、その度合いは神経核ごとにより異なる。
Bral2の欠損により各々の会合体破壊がおこることから、ランビエ絞輪周囲あるいは神経周囲膜の細胞外微小環境において特異的会合体形成に必須であることがわかった。 -
新しい基底膜様構造フラクトンの機能と脳室下帯神経幹細胞の分化制御
研究課題/領域番号:16390048 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 廣畑 聡, 大塚 愛二, 内藤 一郎
配分額:14400000円 ( 直接経費:14400000円 )
脳実質内の毛細血管の連続した構造体fractoneを構成する分子の解析を行なった。また、マウス脳室下帯より神経幹細胞の同定と分離、さらにはその分化の制御機構を解析することを試みた。
[1]新しい基底膜様構造フラクトンの分子細胞生物学的解析
基底膜分子に特異的抗体を用いて免疫染色をすると、fractone構造にはラミニン、IV型コラーゲン等の分子が存在することが明らかとなった。しかし、それらの各鎖の分布には偏りが認められた。基底膜の周りに存在するfibronectinはfractone特有の染色像を示さなかった。脳や脊髄におけるfractoneの分布について調べたところ、脳室のほぼ全周に分布していたが、第三脳室の一部、第四脳室の一部では存在していなかった。また、このfractone構造は生後すぐの脳室周囲では観察されず、生後7日目から現れはじめ、生後14日目では脳室の外側壁に偏った分布を示した。さらに、特異抗体を用い免疫電子顕微鏡による解析を行ない、fractone構造に基底膜分子が存在することを認めた。
[2]マウス脳室下帯より神経幹細胞の同定と分離
成体マウス脳室下帯より神経幹細胞の分離を試みた。分離した神経幹細胞の基本的培養条件の設定を行い、bFGFなどのサイトカインを付加した接着性基質上での単層培養条件において、ニューロンへの分化誘導、アストロサイトへの分化誘導を試みた。さらに、マトリックス基質の調整のための基礎的な実験を行なった。
[3]in vitro細胞培養系を用いた細胞外マトリックスによる神経幹細胞の分化制御
成体マウスと胎児期マウスの側脳室壁神経幹細胞の分離を行い、安定したneurosphereを得ることができるようになった。また、増殖因子の除去を行ってから単層培養を行ない各種に基質上で細胞の分化誘導の解析の条件設定ができるようになった。 -
新規アグリカナーゼのリウマチ性関節炎における役割と診断的応用
研究課題/領域番号:15390459 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
廣畑 聡, 二宮 善文, 大橋 俊孝, 米澤 朋子, 西田 圭一郎
配分額:15000000円 ( 直接経費:15000000円 )
1 新しく発見したアグリカナーゼ遺伝子の発現検討
IL-1β刺激後した、培養軟骨肉腫細胞株・ヒト軟骨細胞・ヒト線維芽細胞よりそれぞれmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRにて、各アグリカナーゼの発現を定量的に比較検討を行った。線維芽細胞におけるADAMTS-9の発現増加と比較して、軟骨肉腫細胞株および軟骨細胞におけるADAMTS-9の発現増加は大であり、この新規アグリカナーゼは関節においてサイトカイン刺激で大きく誘導される遺伝子であることが明らかとなった。さらに、TNF-αとIL-1βの同時刺激により、ADAMTS9は相乗的に発現が増加することも明らかとなった。ADAMTS-9のmRNA発現レベルは他のどのADAMTSよりも強力であった。
2 アグリカナーゼに対する特異的抗体
ADAMTS-9に対するポリクローナル抗体を作成し、ウエスタンブロット法にて予想通りのサイズのバンドが得られた。IL-1β刺激後一過性にADAMTS-9タンパクが発現することが確認された。本抗体はWestern blotで利用可能であるが、免疫染色にはアフィニティカラムによる更なる精製などが必要と結論された。
3 アグリカナーゼノックアウトマウスの作製
海外共同研究にてES細胞への組み込みが終了しヘテロマウスの段階となった。
4 アグリカナーゼの誘導機構の解明
MAP kinase情報伝達経路の阻害剤(PD98059,SB203580)を添加し、IL-1β刺激による同経路のリン酸化がADAMTS-9の誘導にどう関与しているかを明らかにした。 -
視神経跳躍伝導におけるランビエ絞輪外マトリックスの役割
研究課題/領域番号:15591857 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大橋 俊孝, 二宮 善文, 李 勝天
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
1.Bral1ノックアウトマウス視神経ランビエ絞輪の組織学的・形態学的検討
(1)ランビエ絞輪外マトリックス構造形成・維持への影響:光学および電子顕微鏡レベルでの観察により、ランビエ絞輪、側絞輪、髄鞘の構造およびアストロサイト突起のランビエ絞輪への接着には野生型と大きな変化は見られなかった。
(2)Naチャンネルの分布に与える影響について:側絞輪の分子(例えばcaspr等)が欠損すると側絞輪の構造異常だけでなく、絞輪のNaチャンネルの集積、発生過程でのNaチャンネルのアイソフォームの変化異常が観察される。絞輪のテネイシンR分子を介したNaチャンネルへの影響の可能性が考えられたが、Bral1ノックアウトマウスでは影響はなかった。しかしながら、電気生理学的伝導速度には優意な速度減少が生じた。
(3)新たな発見として、中枢神経の種類によってそのランビエ絞輪外マトリックスに局在するマトリックスタンパク質の種類が異なること、それらはBral1/Hapln2のノックアウトにより、ランビエ絞輪への局在が失われることを見つけた。
2.ランビエ絞輪外マトリックス形成機構の解明:上記Bral1/Hapln2ノックアウトマウスに加え、テネイシンRノックアウトマウスなどと比較し、ランビエ絞輪外マトリックス形成機構を検討した。総括すると、ランビエ絞輪外マトリックス分子は傍絞輪形成(特にセプテイトジャンクション)やNaチャンネルのクラスター化には影響を与えないが、絞輪外のマトリックス環境には大きな変化をもたらす。これらの形成分子はランビエ絞輪外に局在するヒアルロン酸に依存するものであり、それをさらに安定化するものとしてBral1/Hapln2が重要な役割をはたすものと考えられる。現在のところ、ランビエ絞輪外のイオン環境を制御しているという仮説を立てている。今後の課題として、この微小環境でのイオン濃度変化の計測・検出法の開発検討が考えられる。 -
脳リンクプロテインによる脳実質コンドロイチン硫酸プロテオグリカン複合体の機能制御
研究課題/領域番号:15040215 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
大橋 俊孝, 二宮 善文
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
1.Bral1/Hapln2ノックアウトマウス解析:ランビエ絞輪外マトリックス分子は傍絞輪形成やNaチャンネルのクラスター化には影響を与えないが、絞輪外のマトリックス環境には大きな変化をもたらす。これらの形成分子はランビエ絞輪外に局在するヒアルロン酸に依存するものであり、それをさらに安定化するものとしてBral1/Hapln2が重要な役割をはたす。
2.Hapln3/Lp3の脳実質での発現解析:Haplnの中で発現解析の最も遅れていたHapln3について、特異的抗体作製を行い、その抗体を用いてマウス成体脳での発現解析を行った。脳実質での発現は認められないが、ある程度の大きさの動静脈の平滑筋周囲にversicanと共発現しているものである。脳実質瘢痕形成時などの病態での発現は不明であるが、この結果、正常マウス成体脳実質での主なHapln遺伝子はHapln2,Hapln4となる。
3.Bral2/Hapln4ノックアウトマウス作製:前年度までに行った我々の実験からBral2/Hapln4は神経特異的で、神経細胞周膜とよばれるマトリックスを構成する分子の1つであることが明らかとなった。本年度の研究計画としてBral2/Hapln4ノックアウトES細胞の樹立とノックアウトマウス個体の作製を目標とした。ES細胞の樹立、キメラマウス個体の作製は順調に行われたが、野生型マウスとの交配による、生殖系列マウスの作製に時間をとり、なかなか生殖系列の完成が成功しなかった。現在、交配による複数の♀からF1世代マウスが出産したところである。+/-マウスの存在がこの中に期待される。
4.マウス以外のHapln遺伝子解析モデル動物解析について:前年度我々は、発生期におけるHapln遺伝子および関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン遺伝子の機能解析モデルとして、ゼブラフィッシュを用い遺伝子クローニングと発現解析、遺伝子停止(ノックダウン)実験をversican, dermacan, aggrecanを題材に行った。さらに、今年度はHapln1/Crtl1遺伝子クローニングと発現解析をおこない、Hapln1/Crtl1遺伝子はマウス等と同様に胎生期脳に発現していることを確認した。ゼブラフィッシュの特色を生かしたモデル動物になりうることを試行した。具体的には、モルフォリノによるノックダウンのほかに、トランスジェニックフィッシュ作製が有効手段となることを確認した。
以上のように、いくつかの遺伝子学的手法により、脳に発現するHapln遺伝子の機能解析が進んだ。 -
血液脳関門における血管内皮細胞下基底膜の役割
研究課題/領域番号:14370434 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
二宮 善文, 廣畑 聡, 大橋 俊孝, 米澤 朋子, 大塚 愛二
配分額:14100000円 ( 直接経費:14100000円 )
この2年間で私どもは、血液脳関門に関係すると思われる新規遺伝子リミトリンを同定し、これが血液脳関門と関係することを支持する結果を得た。私どもは、脳毛細血管系より脳以外血管系を引き算するという方法でcDNAsを単離し、ノーザンブロット法、シーケンス検索、等により脳毛細血管系に特異的cDNAsを選出した。さらに、数種類のクローンにつきアミノ酸配列を基に抗ペプチド抗体を作成し、その分布を調べると、ある抗体はマウス脳においてグリア境界膜に特異的に染まった。マウス脳の血管周囲グリア境界膜と脳表面グリア境界膜の両方のグリア境界膜に特異的に染まったため、私どもはこのcDNAが由来するタンパク質を、リミトリンと名付けた。このリミトリンは、膜貫通ドメインを有し、更にインムノグロブリンドメインを二つ持つため、インムノグロブリンスーパーファミリーに属することがわかった。In vivoでアストロサイトが産生することが予想され、免疫電子顕微鏡的観察によって、そのことが確認された。さらに、培養アストロサイトが大量にリミトリンを産生することも確認できた。生体脳では、血液脳関門が機能するのは脳実質内の毛細血管であるが、総ての毛細血管周囲で機能している訳ではなく、脳実質内の、いくつかの場所においては血液脳関門が機能していない場所がある。私どもはこれらの正中隆起やsubfornical organ等の場所においてリミトリンが発現しているかどうかを調べると、陰性であった。さらに、マウス脳実質損傷を作成し、その治癒過程でのリミトリン遺伝子の発現を観察すると、まず脳実質の損傷とともにリミトリンは発現停止し、その治癒過程では、損傷部位周辺の毛細血管新生とともにリミトリンが発現してくることを検知した。この現象は、リミトリンは血液脳関門の生理機能と直接関わっている可能性があるということが推測された。
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がん特異的遺伝子導入法を用いた血管新生阻害治療の試み
研究課題/領域番号:14030056 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
廣畑 聡, 大橋 俊孝
配分額:6400000円 ( 直接経費:6400000円 )
本研究の目的は、がん休眠療法の遺伝子治療の開発である。IV型コラーゲンα3鎖のNC1ドメインは、tumstatinとも呼ばれ、血管新生阻害作用を持つことが報告されている。しかしながらIV型コラーゲンα3鎖のNC1ドメインを治療に利用するにあたっては、同部位がGoodpasture症候群の自己抗原認識部位であることから、がん特異的な遺伝子発現が重要と考えられた。
そこでhTERT(ヒトテロメラーゼ遺伝子)のプロモーター領域を組み込んだベクターにIV型コラーゲンα3鎖のNC1ドメインを下流に位置することにより、がん細胞特異的遺伝子導入法を試みた。コントロールとして、LacZをいれたベクターによる検討では、hTERTの発現がない細胞である正常内皮細胞には、観察しえた限りではX-gal染色は見られなかった。内皮細胞の他に心臓由来線維芽細胞を用いた実験でも同様の結果が得られた。がん細胞(PC-3,DU145)においてのみ、LacZの発現が見られた。この結果は、CMVベクター下にLacZを挿入した(細胞特異性がない)ものを用いたものと比較して著しい差は認められなかった。
NC1ドメインの遺伝子発現効率は、LacZ細胞とほぼ同等であると考えられたが、タンパクレベルの発現は充分なものではなかった。血管新生阻害効果を治療応用するには、発現効率を高めることが必須であり、アデノウイルスを用いた新しい発現カセットを作成が重要と考えられた。 -
新アグリカナーゼの同定と特異的抗体・ノックアウトマウス作製-リウマチ性関節炎の早期診断へ-
研究課題/領域番号:13470312 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
廣畑 聡, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 二宮 善文, 百田 龍輔
配分額:14000000円 ( 直接経費:14000000円 )
1.リアルタイムPCR法によるADAMTS遺伝子の発現
岡山大学にて樹立されたヒト軟骨肉腫由来細胞株(OUMS-27)をインターロイキン(IL)-1β刺激下に培養し、ADAMTS遺伝子の発現を検討した。刺激後、6,12,24,48時間と経時的に細胞からmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRを行い、各ADAMTSの発現を定量的に比較した。内部標準コントロールとしてGAPDHを用いた。ADAMTS-1,2,3,4,5,6,7,8,9のプライマー設計及びリアルタイムPCRの条件設定を行った。アグリカナーゼとしては、ADAMTS-1,4,5が報告されているが、ADAMTS-1,4,5それぞれのOUMS-27細胞におけるIL-1βに対する反応は異なっていた。
また、細胞内情報伝達系の解析を行ったところ、MAPK-JNK pathwayが関与していることが明らかとなった。
2.特異的抗体の作製
ADAMTS-1に対する特異的抗体を2種類作成した。ADAMTS-1の2箇所のペプチドを抗原として家兎に免疫し、抗体を得た。特異性の評価は、IL-1β刺激していない培養OUMS-27細胞からタンパクを抽出し、ウエスタンブロッティングで行ったところ、約100kDaと70kDaのところに各一本ずつ明瞭なバンドを認めた。既報の通り、自己プロセッシングを受けているものと推察された。
3.ノックアウトマウス
海外共同研究者との間で、ノックアウトマウス作製を計画し、ES細胞への組み込みが完了した。 -
ADAMTSによるアミロイド前駆体蛋白のプロセッシングと細胞外基質への影響
研究課題/領域番号:13877097 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
廣畑 聡, 米澤 朋子, 大橋 俊孝, 二宮 善文, 百田 龍輔
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
ADAMファミリーのうち、ADM-10とADAM-17はαセクレターゼ機能を持つことが知られているが、ADAMTSが同様な機能を持つか検討した。
まず、基礎的実験としてADAMTS-1はその遺伝子発現がリポポリサッカライド刺激により、各臓器において発現が上昇することから炎症において何らかの役割を持つことが示唆されている。そこで、ラット実験的心筋梗塞モデルを用いてADAMTS-1の発現形式をノーザンブロット法にて検討した。ADAMTS-1は非梗塞心臓では弱い発現しか認めなかったが、梗塞心においては、梗塞後6時間でその発現が大きく上昇していた。
マウス脳におけるADAMTSの発現をADAMTS-1〜7において検討したが、いずれもそれほど強くなかった。海外共同研究として、アミロイド前駆体蛋白を強制発現し、恒常的に発現する細胞株を樹立している、アラバマ大学Fukuchi教授らと共同実験を開始した。同細胞株は、通常の神経系細胞よりも過剰にアミロイド前駆体蛋白を発現している。これまでの検討によって過剰なアミロイド蛋白前駆体が細胞表面及び培養上清中に存在することが確認された。この実験系において過剰なアミロイド前駆体の切断がαセクレターゼによって制御されているかどうかを検討する目的でこの細胞系におけるαセクレターゼ発現の検討を開始した。実験の条件検討が複雑であり、切断の確認は困難であった。今後は、In vivoの系における実験系の確立およびアルツハイマー脳におけるADAMTSの発現解析が重要と考えられた。 -
精神分裂病原因候補遺伝子としての脳特異的新規リンクモジュール遺伝子解析
研究課題/領域番号:13877151 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
大橋 俊孝, 氏家 寛, 二宮 善文
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
1.第1染色体に連鎖する精神分裂病患者家系の検索
本邦では遺伝子連鎖解析のための精神分裂病家系のDNAサンプル集めは実質的に困難であり、多くの家系を持つ海外の研究室との共同研究を試みた。Peltonenらの持つフィンランド人精神分裂病家系において第1染色体に連鎖する家系があるかどうか共同研究として検索を行ってもらった。その結果1番染色体長腕上に2つの遺伝子マーカーに連鎖する2家系を同定した。それらは染色体1q32-q42の範囲内に位置するため、本プロジェクトのBRAL1,BCAN両遺伝子は除外されたが、第1染色体上にも精神分裂病家系の連鎖する座位が複数存在することを示し、引き続き他の精神分裂病家系の連鎖解析を行うことの重要性を示唆している。
2.BRAL遺伝子の発現解析
マウスで相同遺伝子Bral1をクローニングし、さらにBral1特異的抗体を作成することによりその発現を詳細に調べた。その成果は論文化(Mol.Cell.Neurosci.)することが出来た。Bral1 mRNAは神経細胞が発現しており、そのタンパク質の発現は中枢神経ランビエ絞輪に局在していた。さらにその局在はヒアルロン酸(HA)結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのversican V2とcolocalizeすることを示した。ランビエ絞輪は神経の活動電位の発生と跳躍伝導に重要であることが知られている。我々はBral1が絞輪の細胞外部において、陰性に荷電したヒアルロン酸にversicanコアプロテインを固定し、電位依存性NaチャンネルによりNaイオンが細胞内外に出入りし活動電位を生ずるための細胞外環境を整えている役割をしていると考えている。以上の内容は学会・シンポジウムにも取り上げられ議論された。
リンクモジュール遺伝子に共通したモチーフを指標として、新規リンクモジュール遺伝子である脳リンクプロテインBral2遺伝子をクローニングした。マウスBral2のmRNA, proteinレベルの詳細な発現解析と免疫組織化学的解析より、Bral2は神経核においてbrevicanと共存し、その機能維持に重要であることを見い出した。これは本年度日本生化学会において報告された。 -
嗅覚神経回路におけるTen-m2遺伝子の役割に関する分子生物学的アプローチ
研究課題/領域番号:12470356 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
大橋 俊孝, 米澤 朋子, 二宮 善文
配分額:14700000円 ( 直接経費:14700000円 )
1)Ten-m2特異的抗体の作製:Ten-m2 C末のアミノ酸配列から合成されたペプチドを抗原としてポリクローナル抗体を作製した。他のTen-mの組み換え蛋白または組織切片染色により特異性は確認された。併せて他のTen-m蛋白に対するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体を作製し、脳での発現を調べた。胎生期のTen-m2の発現に関しては他Ten-m遺伝子の発現とwhole mount in situで比較検討
2)マウス脳におけるTen-m2リガンドの検出:申請書に記述したTen-m2細胞外ドメイン組み換え蛋白をHEK293細胞に発現させ、脳抽出液よりリガンドの検索を行った。Ten-m2細胞外ドメインに結合する蛋白のバンドをSDS-PAGEにて確認しているが、同定は行われていない。
3)ヒトTen-m2遺伝子染色体座マッピング:G3 RHパネルにより、Ten-m2,3,4各遺伝子はそれぞれ5,4,11番染色体に位置することを明らかにし、OMIM等によりその遺伝子座にマップされた遺伝性疾患があるかどうかを検索したが、重要な候補は存在しなかった。
4)Ten-m2ノックアウトマウスの表現型解析:(1)II型膜貫通蛋白であるTen-m2の膜貫通ドメインに相当するエキソンにネオマイシン遺伝子断片を挿入することによりTen-m2ノックアウトマウスを作製した。現在、関連Ten-m遺伝子の発現、組織レベルの異常、phenotypeについて観察中である。Ten-m2遺伝子は確かにノックアウトされていることはmRNAレベル、タンパク質レベル両方共に確認された。胎児期E10.5以降に頭部に発現していることから胎児期の頭部発達に異常が見られる可能性も考えられたが、組織レベルではその異常は見られていない。(2)生後脳の成熟に伴う組織上の異常があるか野生型と比較を行ったが明らかな違いは見られなかった。申請時に計画したMonbaertsらの匂い受容体遺伝子(P2)ノックインマウスとの交配に入る前に神経軸索特異的タンパク質MBPの抗体染色により検討を行った.(3)他Ten-mファミリー遺伝子の機能的代償の可能性について、研究初年度に作製した各遺伝子特異的ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体を使用して検討を行ったが有意な違いは認められなかった。
5)マウス脳におけるTen-m2リガンドの検出:(1)Ten-mファミリータンパクの細胞外ドメインは既存のタンパクのドメイン構造にホモロジーが少ない構造上ユニークなものと考えられ、その構造解析はリガンド検出に重要である。4メンバー全部をHEK293細胞で発現させ、電子顕微鏡観察すると全てジスルフィド結合を介した二量体を形成していることが分かった。論文作製中である。(2)匂上皮の投射には細胞外マトリックス分子が関与する可能性があるとされ、リガンド候補分子としてCSPG(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)を想定し発現解析関連遺伝子のクローニングを行った。その結果、ヒアルロン酸結合新規脳リンクプロテインをクローニングし、発現について論文化することができた。