共同研究・競争的資金等の研究 - 服部 高子
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RNA干渉を用いたCCN遺伝子ファミリーの包括的機能解析とその応用
研究課題/領域番号:16659511 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
滝川 正春, 久保田 聡, 服部 高子, 椋代 義樹
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
・マウス15日胚の頸骨成長板軟骨におけるCCNファミリータンパク質の局在を免疫染色で調べたところ、成長板に6つのメンバーすべての分布がみられた。しかし、その分布には差異があり、CCN2/CTGFとCCN5は肥大軟骨細胞層全域で強染し、CCN1/Cyr61とCCN4/WISP1は前肥大化軟骨細胞層で強染し石灰化層では染色性が減弱した。一方、CCN3と6は前肥大化軟骨細胞層で強染し、肥大軟骨細胞層で一旦染色性が減弱したのち再び石灰化層で染色性が増強した。
・ヒト軟骨細胞様細胞株HCS2/8で、CCNファミリーのmRNAレベルをRT-PCRで調べたところ、すべてのメンバーが定量可能なレベルで発現していた。特に、CCN2が顕著に高く、続いてCCN1とCCN6が高発現していた。
・マウス軟骨細胞、骨芽細胞および線維芽細胞の3種の細胞でCCNファミリーの発現を比較したところ、CCN2は軟骨細胞にほぼ特異的に、CCN4と6は軟骨細胞と骨芽細胞とで強く発現しており、CCN4は線維芽細胞で強い発現が見られた。CCN1およびCCN5の発現は3種の細胞間で大差は無かった。
・軟骨培養細胞において、軟骨分化を促進させるデキサメサゾンにより、CCN2のみならずCCN1,4および5の発現も転写段階で亢進することを見出した。
・CCN2のノックアウトマウスから初代軟骨細胞を分離培養し、他のCCNファミリーメンバーの発現を調べたところ、CCN3は著明に上昇し、CCN6は著明に低下していた。また、線維芽細胞の場合ではCCN1,3,4および6で著明な低下が見られた。即ち、これらのCCNメンバーの発現がCCN2により調節されていること、またその調節機構には組織特異性が見られることが明らかになった。 -
新たな組織再生因子リジェネリンとしてのCTGFの役割解明と再生医歯工学的応用
研究課題/領域番号:15109010 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
滝川 正春, 久保田 聡, 服部 高子, 西田 崇, 山本 照子, 田畑 泰彦, 青山 絵理子, 山合 友一朗, 椋代 義樹, 小守 壽文, 中西 徹
配分額:103870000円 ( 直接経費:79900000円 、 間接経費:23970000円 )
1. 野生型あるいは遺伝子変異動物を用いCTGF/CCN2(以下CTGFと略す)が、成長板における内軟骨性骨化だけでなく、二次骨化中心の形成、膜性骨化、歯根膜、関節軟骨及び耳介軟骨の形成、骨延長術による骨形成、抜歯創治癒に重要な役割を果たすことを示した。また、ゼラチンハイドロゲルを併用してCTGFがin vivoにおいて関節軟骨や骨の再生作用を有すること、さらに、CTGFが血小板に多量に含まれることを見いだし、創傷後の組織再生、特に、各組織の元来の特性を再生させる"リジェネリンとして、CTGFが機能することを明らかにした。
2. 各ドメインに特異的なモノクローナル抗体を調製し、各ドメイン特異的ELISAシステムを開発した。また、各ドメインの作用や細胞内情報伝達経路が軟骨細胞と血管内皮細胞とで異なることを見いだした。さらに、CTGFのCTドメインが骨髄間葉系細胞のハイドロキシアパタイト(HA)への接着を促進することを見いだし、CTドメインとHAによる硬組織再生の実用化の可能性を示した。
3. CTGFの遺伝子発現制御機構として、3'-非翻訳領域(3'-UTR)のmRNA不安定化配列とこれに結合するタンパク質の存在を明らかにし、また、その結合量が軟骨分化過程でCTGF/CCN2の発現レベルと逆相関して変動することを見いだした。さらに、低酸素下で3'-UTRに結合してmRNAを安定化させるタンパクの存在も証明した。
4. CTGFがパールカン、アグリカン、フィブロネクチンに結合して細胞外基質に貯留されること、M-CSFと協調して作用すること、LRP1が軟骨で受容体の一つとして働くこと、さらに、軟骨細胞内情報伝達機構としてはp38MAPKとERKの上流にPKCが存在することを新たに見出した。また,増殖はJNK,石灰化促進作用は,PI3Kとそれに続くPKBが仲介することを明らかにした。 -
DNAマイクロアレイ(DNAチップ)を用いた軟骨細胞遺伝子発現プロファイルの解析
研究課題/領域番号:12671806 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
中西 徹, 大山 和美, 滝川 正春, 服部 高子
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
(1)マイクロアレイ法による軟骨分化関連遺伝子の解析
前軟骨細胞株ATDC5において、この細胞がインシュリン存在下、軟骨細胞へ分化する過程で細胞内で変化する遺伝子をcDNA発現アレイで解析した。その結果、発現が変動するケモカインあるいはその受容体(CCR2)などの数種の遺伝子を見い出した。
(2)マイクロアレイ法による軟骨疾患関連遺伝子の解析
cDNA発現アレイによって、軟骨疾患に関わる遺伝子の解析を行った。その結果、変形性関節症ではSTAT, PKC, caspase, IGFBP、慢性関節リウマチではCDC25,RHO, FGF7などを単離した。また、c-fos、c-junの発現も慢性関節リウマチにおいて若干上昇していた。その中で、アポトーシス関連遺伝子caspase-9は、特に変形性関節症の関節軟骨組織に多く発現しており、TUNEL染色陽性組織と相関していた。
(3)軟骨肉腫由来軟骨細胞株HCS-2/8に対する軟骨成長因子CTGFの作用解析
CTGFがHCS-2/8細胞の増殖、分化を促進することを見い出した。この際、細胞内遺伝子発現変化をcDNA発現アレイで解析した結果、ERKあるいはp38などのMAPキナーゼ系が活性化されていることが明らかとなった。実際にERKあるいはp38などのMAPキナーゼ阻害剤を用いて解析した結果、CTGFによる増殖促進作用はERKを介しており、分化促進作用はp38を介していることが明らかとなった。
(4)軟骨肉腫由来軟骨細胞株HCS-2/8より単離した軟骨成長因子CTGFの作用解析
軟骨成長因子CTGFを過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。II型コラーゲンのプロモター下流でCTGFを発現するトランスジェニックマウスは、正常マウスに比較して矮小であり、さらに、X線撮影の結果、骨密度が低下していることがわかった。 -
多機能成長因子CTGF/エコジェニンのドメイン別測定法の開発と臨床検査法への応用
研究課題/領域番号:12557154 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
滝川 正春, 西田 崇, 久保田 聡, 中西 徹, 椋代 義樹, 服部 高子
配分額:13200000円 ( 直接経費:13200000円 )
1)CTGF/エコジェニン(以下CTGFと略す)のIGF結合タンパク質様ドメイン(IGFBP)・フォンビルブランドファクター・タイプCリピートドメイン(VWC)、トロンボスポンジンタイプ1リピートドメイン(TSP1)、C末ドメイン(CT)の各ドメイン毎の発現ベクターを構築し、各組み換え体タンパク質の大量生産に成功した。現在、これらの各モジュールがCTGFの多面的作用のどれを担っているか解明しつつある。
2)CTGFの1ないし2ドメインを欠損させたタンパク質を真核細胞内で発現させる10種以上のプラスミドを作製した。それらを応用してIGFBP、TSPドメインをそれぞれ欠いたCTGFを産生するHeLa細胞株を樹立した。
3)上記のタンパク質を用いて、CTGFに対して調製した6種のモノクローナル抗体、及び2種の抗血清に対しエピトープがどのドメインにあるかを特定した。その結果、IGFBP、VWC、TSPおよびCTを特異的に認識する抗体をそれぞれ1種、3種、1種および1種得る事ができた。さらにそれらを組み合わせて応用し、(1)VWCとCTに対する抗体によるsandwich法で、全長CTGFを高感度で定量できる酵素抗体法(ELISA)。(2)GFBPとVWCを標的としたシステムで、N末前半断片を特異的に認識するELISA、2種の抗VWC抗体によりVWCドメインだけを認識し全長CTGFを認識しないELISA定量システムを確立した。
4)CTGFが産生されてから分泌される間にprocessingを受けることも見いだした。
5)CTGFが新たに低酸素状態や固形癌で誘導される血管新生因子であること、メカニカルストレスで誘導されることを見いだした。したがって、これらが関与する疾患における血中および組織液中CTGFを上記のELISA法で測定することは病態、病勢の把握に意義あるものと思われる。 -
ヒト軟骨由来多機能成長因子エコジェニン/CTGFの細胞内機能の探究
研究課題/領域番号:12671807 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
久保田 聡, 中西 徹, 滝川 正春, 服部 高子
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
1)細胞内CTGF過剰発現による細胞周期変調効果の検証:サル腎線維芽細胞株Cos-7に一過性にCTGFを高レベルで発現させた場合、遺伝子導入後12時間でCTGFタンパク質は細胞に集積し、この時CTGFは細胞核近傍の特定のスポットに集中した。α-tubulinとの共染色によればその場所は中心体の可能性がある。その後CTGFの蓄積は導入後24時間でより顕著となり、それに伴い細胞は培養シャーレ底面より浮き上がりを見せ、同時にDNA含量の著しい増加が見られた。これは細胞周期中G2-M期にある細胞の特徴と一致し、実際それは有糸分裂をM期で停止させるコルヒチンの作用に酷似していた。CTGF発現によって細胞増殖はむしろ鈍ったことから、それは細胞内で細胞周期をG2-M期で停止、遅延させる効果を持つと考えられる。そこでマウス成長板軟骨細胞内CTGFを免疫組織学的に詳細解析したところ、CTGFは増殖を停止した肥大軟骨細胞においても同様のスポットに集積していることがわかった。今後ヒト扁平上皮癌由来HSC-3細胞株にCTGF発現ベクターを導入し、CTGF発現クローンの遺伝子発現パターンをマクロアレイで解析する予定である。
2)CTGFモジュール構造と、細胞周期コントロール機能の構造-機能連関:上記の現象がCTGF分子を構成する4つのモジュールのどの作用によるかを解析するため、CTGF欠損変異体発現プラスミドが多数構築された。それによる解析で4つのモジュールのうち細胞周期変調には最N末のIGFBPモジュールは必要ではなく、細胞核近傍への局在にはそれに続くVWCモジュールが重要と分かってきた。また各モジュールタンパク質の生産にも成功した。
3)CTGFの細胞内作用点、レセプターの探索:CTGF分子を固定したアフィニティーカラムを用い、CTGFが細胞内で結合するタンパク質を細胞質抽出液から精製、部分アミノ酸配列を決定し、それが細胞骨格タンパク質であることを突き止めた。 -
ヒト軟骨成長因子エコジェニン/CTGF遺伝子発現調節機構の解析
研究課題/領域番号:11671841 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大山 和美, 服部 高子, 中西 徹, 滝川 正春, 久保田 聡, 大山 和美
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
1)転写レベルでの研究:エコジェニン/CTGFプロモーター及びその欠損変異体を蛍ルシファラーゼ遺伝子上流に組み込んだ一連のプラスミドを構築し、様々な細胞でそれぞれのプロモーター活性を比較解析した。その結果ヒト軟骨由来細胞株HCS-2/8細胞を用いた実験で、本細胞株におけるCTGFの構成的高発現を支えている領域には転写開始点から88塩基対上流の約110塩基対長の断片が重要と分った。さらにその研究を発展させ、当該領域内にHCS-2/8細胞で機能している転写活性シスエレメント二つを特定した。1つは既に報告されているTGF-β response elementであり、もう1つは本研究で初めて見い出されたエレメントである。それぞれに点変異を導入すると、HCS-2/8細胞におけるプロモータ活性は著しく低下した。特に後者には、結合する核内因子がHCS-2/8細胞に特異的に見られる点が非常に興味深い。
2)転写後レベルにおける研究:我々は約1kbのエコジェニン/CTGF遺伝子3'-非翻訳領域(3'-UTR)を蛍ルシファラーゼ遺伝子下流に直結し、発現、定量比較することで、その強力な遺伝子発現抑制作用を発見した。さらに欠損変異体解析にコンピュータ予測を援用し、我々は84塩基からなる抑制性シスエレメントを決定することに成功した。当該エレメントmRNAは水溶液中で二次構造体を形成し、変異体分析から抑制機能が二次構造に依存すると分り我々はcis-acting element for structure-anchored repression(CAESAR)と命名した。最近CAESARの機能を決定するのは複数stem-loopの連結構造であるとの結論も得られてきた。なおCAESARは転写領域外では活性を発揮せず、また細胞内で発現されたレポーターmRNAの細胞内分布がCAESARの有無で影響を受けなかった。よってCAESARはmRNAの核外輸出には影響を与えず、翻訳段階で抑制機能を発揮していると考えられる。 -
新規軟骨由来多機能成長因子エコジェニン/CTGFの作用機構に関する研究-受容体の分子クローニングと細胞間および細胞内情報伝達機構の解明-
研究課題/領域番号:10470389 1998年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
滝川 正春, 西田 崇, 服部 高子, 中西 徹
配分額:13300000円 ( 直接経費:13300000円 )
1)軟骨細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞にエコジェニン/CTGF受容体が存在することを明らかにした。また、その分子量が約240KDaであることを示唆する結果を得た。
2)ウサギ肋軟骨成長軟骨初代培養細胞増殖・分化系を用い、軟骨細胞が成熟し、肥大化し、石灰化するに伴い、エコジェニン/CTGFの発現量とは逆に^<125>I標識エコジェニン/CTGFの結合量は減少することを見いだした。
3)軟骨細胞においてはエコジェニン/CTGFは、分泌された後細胞周囲のヘパラン硫酸プロテオグリカンに結合して備蓄され、その後遊離してパラクリン的に作用する、いわゆるマトリクリン因子であることが判明した。
4)エコジェニン/CTGFは、軟骨細胞においてERKのリン酸化とp38MAPKのリン酸化を促進した。また、それぞれの選択的阻害剤を用いて、エコジェニン/CTGFの増殖促進作用はERKの経路を、分化促進作用はp38MAPK経路を介していることを明らかにした。
5)ヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8より、2種のエコジェニン/CTGF結合タンパク質を精製した。そのうちの一つの分子量42KDaのタンパクのN末端の部分アミノ酸配列はγ-アクチンのそれと一致した。また、50KDaのタンパクのN末端の部分アミノ酸配列はサイトケラチンのそれと一致した。
6)エコジェニン/CTGFをCos-7細胞に強制発現させると、細胞質に均等に分布せず中心体近傍に局在した。また、合成後の動態を調べると、C-末フラグメントが細胞内に存在することが判明した。
したがって、エコジェニン/CTGFの作用機構としてマトリクイン因子として働くだけでなく、分泌されずにγ-アクチン等に結合して細胞内で直接効果を発揮する経路も存在することが示唆された。 -
ヒト軟骨細胞のメカニカルストレスに関連した細胞内情報伝達機構-ストレスの多寡と細胞内情報伝達転換機構-
研究課題/領域番号:10470415 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
窪木 拓男, 服部 高子, 滝川 正春
配分額:11300000円 ( 直接経費:11300000円 )
本研究では,負荷と軟骨破壊との関係,さらにはその機序を明らかにすることを目的として,周期的な伸展負荷が軟骨細胞の増殖,基質合成,軟骨破壊因子の発現におよぼす影響について検討し,以下の知見が得られた。
1.DNA,タンパク質およびコラーゲン合成に対する影響
15kPaおよび5kPaのどちらの負荷でもDNA合成能,タンパク合成能およびコラーゲン合成能は高頻度のストレスによって有意に低下した。
2.プロテオグリカンの蓄積と合成に対する影響
ウロン酸量はどちらの負荷でも高頻度のストレスによって有意に減少した。また,15kPaの高頻度のストレスを加えると,プロテオグリカン合成は経時的に減少したのに対し,低頻度のストレスでは,負荷後初期にプロテオグリカン合成がわずかに減少したがその後はほとんど変化しなかった。さらに,15kPaの高頻度のストレスにおいて培養上清中にMMPインヒビターを添加すると,ストレス負荷後のプロテオグリカンの減少が抑制された。
3.軟骨破壊因子の遺伝子発現におよぼす影響
IL-1,MMP-2 mRNAについては,どちらの負荷群においても負荷後早期に一時的な増加が認められた後,24時間以内には元のレベルにまで戻った。これに対し,MMP-9 mRNAの発現は,15kPa負荷群では24時間まで増加し続けた。
4.ゼラチナーゼ分泌に対する影響
5kPa負荷群ではMMP-2,MMP-9の産生はともにストレスの影響をほとんど受けなかったが,15kPa負荷群では潜在型および活性型MMP-9さらには潜在型MMP-2の産生が,ストレス負荷後24時間で対照群と比較して明らかに増加した。
5.NO産生におよぼす影響
高頻度の条件で負荷を加えた場合,NO産生は負荷後48時間以降対照群と比較すると有意に上昇した。 -
新規軟骨由来血管新生因子(CTGF)に対する阻害剤の開発と血管新生病治療への応用
研究課題/領域番号:10557165 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
滝川 正春, 井上 美穂, 服部 高子, 中西 徹, 玉谷 卓也
配分額:13700000円 ( 直接経費:13700000円 )
1)合成ヒトCTGFペプチド断片およびリコンビナントCTGF(rCTGF)をウサギに免疫して、ポリクロナール特異抗体を調製した。また、多数のモノクローナル抗体を作製した。
2)鶏卵漿尿膜にrCTGFを投与するとbFGFに匹敵する著明な血管新生が見られた。また、マウス皮下に投与でも著明な血管新生がみられた。
3)rCTGFは血管内皮細胞の接着、増殖、遊走を促進し、また、管腔形成を誘導し、これらの作用はすべてポリクローナル抗CTGF抗体により阻害された。
4)血管内皮細胞にCTGF受容体が存在することをクロスリンク法により明らかにした。
5)ヌードマウス移植腫瘍の血管新生が強い順に乳癌細胞株(MDA231)、線維肉腫細胞株(HT1080)、扁平上皮癌細胞株(A431)を選びそのCTGF産生能をin vitroならびにin vivoで調べるとこの順序で強かった。一方、従来から血管新生因子として知られているVEGFやbFGFの産生能とこれらの腫瘍細胞の血管新生活性との間に相関はみられなかった。
6)鶏卵漿尿膜に上記の乳癌細胞を移植すると著明な血管新生がみられこの腫瘍による血管新生は抗CTGF抗体を同時投与することにより抑制された。
7)血管新生病の一つである慢性関節リウマチ患者の関節液中にCTGFが出現することを明らかにした。また、実験的心筋梗塞の修復期にCTGF遺伝子の発現が亢進することを見出した。
8)ヒト抗体産生トランスジェニックマウスを用いてヒト型CTGF抗体を作製しこの抗体がヌードマウス骨転移モデルで骨転移を阻害することを明らかにした。
以上の結果、CTGFが血管新生の全過程を促進する新規の血管新生因子であること、また、正常および病的な血管新生の両者に関与することが明らかになった。さらに、抗CTGF抗体がCTGF阻害剤として血管新生病の治療に応用できる可能性が示された。 -
軟骨肉腫由来軟骨成長因子エコジェニン/CTGFのレセプターの分子クローニング
研究課題/領域番号:09671893 1997年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
中西 徹, 大山 和美, 服部 高子, 滝川 正春, 井上 美穂
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
1)内軟骨性骨化過程に発現する結合組織成長因子(CTGF)をdifferential display法によリクローニングした。この遺伝子は肥大軟骨細胞で強く発現していた。
2)CTGF遺伝子を発現ベクターに接続してHeLa細胞に導入し、組換えCTGF蛋白(rCTGF)を生産した。
3)rCTGFは軟骨細胞の増殖、成熟、分化を促進した。
4)rCTGFを用いた結合試験の結果、軟骨細胞において親和性の異なる2種のCTGF受容体を同定した。またクロスリンクや免疫沈降によって、CTGF受容体の分子量が240kDaであることやこの受容体がPDGF受容体とは異なることを明らかにした。
5)CTGF刺激によりMAPキナーゼがリン酸化を受けることやMAPキナーゼ阻害剤の添加によってCTGFの作用が阻害されることから、CTGFの細胞内情報伝達にはMEK,ERKなどのMAPキナーゼ経路が関わっていると考えられた。
6)上記CTGF特異的受容体のうち低親和性のものはプロテオグリカンなどの細胞外基質であり、高親和性のものの一部はインテグリンなどの細胞接着因子であることが示唆された。
7)HCS-2/8細胞の細胞膜画分および細胞質画分からそれぞれCTGF結合蛋白質を、CTGFを固定化したアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。その結果、細胞膜画分からは34kDa,44kDa,66kDaの3種類、細胞膜画分からは50kDaの各CTGF結合蛋白質が精製された。これらの発現量はCTGFの細胞刺激により変動したことから、CTGFの生理的作用に関連するレセプターを含む蛋白質であると考えられた。
8)チロシンキナーゼ型受容体に共通する遺伝子塩基配列をもとに縮重プライマーを作製し、RT-PCR法によってHCS-2/8細胞からチロシンキナーゼ型受容体遺伝子断片をクローニングした。これらの塩基配列を調べた結果、既知のチロシンキナーゼ型受容体に似た新しい受容体をいくつか含んでいた。これらの遺伝子の一部の発現はCTGFの細胞刺激により変動し、さらにCTGF遺伝子を多く発現する細胞株にこれらの受容体も多く発現していた。これらの結果は、クローニングしたチロシンキナーゼ型受容体遺伝子断片にCTGF受容体遺伝子が含まれる可能性があることを示した。 -
顎関節疾患における熱ショック蛋白(HSP)47様蛋白の生理的・病理的意義
研究課題/領域番号:09771535 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
服部 高子
配分額:1600000円 ( 直接経費:1600000円 )
顎関節における特徴的な疾患である変形関節症(OA)や慢性関節リウマチ(RA)では,どちらも病理組織学的には顎関節を含む多くの関節軟骨が破壊されることが観察されており,関節液中に軟骨細胞の破壊成分が放出されると思われる。さらに自己免疫疾患の一つであるRAに関しては特にその破壊軟骨に対する抗体が出現すると報告されている。本申請課題では,前半の1年目で軟骨細胞様培養細胞株HCS-2/8細胞からのRA患者血清で特異的に認識される蛋白(RA-A47)の単離精製,そのN一末端アミノ酸配列の解析を行い,ヒトコラーゲン特異的分子シャペロンHSP47遺伝子であるcolliginホモローグであるcolligin-2遺伝子から推定されるアミノ酸配列と完全に一致すること,さらにRA-A47蛋白はコラーゲン結合能を有することを見い出し,これらの結果からRA-A47蛋白が未同定のcolligin-2遺伝子の翻訳産物ではないかと仮定した。そこで後半の本年度では,さらにこのRA-A47の構造を明らかにするため,HCS-2/8からra-a47 cDNAの蛋白コード領域を単離し,塩基配列を決定した。その結果,ra-a47 cDNAはcolligin-2 cDNAと3塩基,類推されるアミノ酸配列でも2残基異なっているが,それ以外は全て一致していることから,ra-a47とcolligin-2は同一の遺伝子であると結論付けた。同時にHeLa細胞からもra-a47 cDNAの単離番行い,HCS-2/8由来のra-a47 cDNAとの比較を行ったところ,1塩基HCS-2/8に特異的な部分が存在していたが,アミノ酸配列ではHCS-2/8由来,HeLa細胞由来のra-a47 cDNAに違いは見られなかった。なお,この配列はgenomic DNAでも一致していることが確かめられ,さらにcolligin geneはいずれの細胞でも単離できなかった。このra-a47 geneは42℃の培養で誘導を受けることも明らかとなったことから,RA-A47/Colligin-2はHSP47として機能していると考えられる。
また,HCS-2/8細胞に慢性関節リウマチにおいて関節液中への放出が報告されているTNFαを作用させるとn-a47/colligin-2mRNAの発現量は減少するがtype II collagen mRNAの発現量は変化せず,合成されるコラーゲンと分子シャペロンとの産生量に不均衡が生じることを昨年度報告したが,この条件下で抗体を用いた吸収実験から細胞表面にRA-A47が出現しており,また,培養上清中にもRA-A47が存在していることが確かめられ,TNFαなどの作用により本来細胞内にしか存在しないRA-A47の局在が変化するとともに細胞外に放出されたRA-A47が自己抗原として提示されるのではないかと考えている。 -
新たに単離した肥大軟骨細胞特異的遺伝子hcs-24の内軟骨性骨化における役割
研究課題/領域番号:08457490 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
滝川 正春, 服部 高子, 高橋 浩二郎, 中西 徹
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
1)肥大軟骨細胞特異的遺伝子hcs-24のcDNAのコード領域は結合組織増殖因子(CTGF)と完全に一致した。
2)ウサギ成長軟骨培養細胞増殖・分化系でhcs-24遺伝子の発現はin vivoと同様肥大化期に最大となった。また、軟骨細胞における発現は軟骨分化を促進するTGFβとBMPで増強した。
3)抗CTGFペプチド抗体を調製し、マウス肋軟骨骨軟骨移行部を免疫染色したところ肥大軟骨細胞と骨内の血管内皮細胞が強染した。また、関節炎の関節軟骨表層とクラスター形成部位が染まった。
4)マウス胎児の発育過程ではhcs-24/ctgfの遺伝子発現は胎生7日目で最大となりその後低下して17日で再び上昇した。
5)hcs-24遺伝子をHCS-2/8細胞に導入し過剰発現させると増殖能が亢進した。一方、血管内皮培養細胞にhcs-24のアンチセンス発現ベクターを導入すると増殖と遊走が著明に抑制された。
6)HCS-2/8細胞からCTGF/Hcs-24を精製し、また、HeLa細胞を用いて組み換え体CTGF(rCTGF)を作製した。これらCTGF/Hcs-24は軟骨細胞の増殖能、プロテオグリカン合成能およびアルカリホスファターゼ(ALP)活性と、骨芽細胞のALP活性を上昇させた。さらに、血管内皮細胞の増殖と遊走を促進した。また、抗CTGFペプチド抗体は上記の増殖促進効果を阻害した。
7)CTGF/Hcs-24を高感度で定量可能なサンドイッチELISA法を確立した。
8)rCTGFを^<125>Iで標識し、培養軟骨細胞に特異的なレセプターが存在することを見出した。また、ウサギ肋軟骨培養軟骨細胞増殖・分化系を用いてレセプターが増殖期に多く分化に伴って減少することを明らかにした。
9)hcs-24遺伝子のトランスジェニックスマウスを作成するのに成功した。
以上の結果、Hcs-24/CTGFは肥大軟骨細胞から産生され増殖軟骨細胞の増殖、成熟、肥大化を促進し、一方、骨軟骨移行部で骨側から軟骨への血管侵入を促進して内軟骨性骨化を促進すると共に、器官形成にも関与する重要な成長因子であることが示唆された。 -
軟骨肉腫由来軟骨細胞様細胞株HCS-2/8におけるIGF-2遺伝子の発現制御
研究課題/領域番号:08672124 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高橋 浩二郎, 滝川 正春, 服部 高子
配分額:2600000円 ( 直接経費:2600000円 )
血管のない軟骨組織の細胞の増殖分化においてオートクリン的成長因子であるIGF-2の役割は重要である。そのIGF-2の機能究明を目的として、ヒト軟骨肉腫由来軟骨細胞様細胞株HCS-2/8細胞におけるIGF-2遺伝子(IGF-2)の発現制御を調べた。ヒト軟骨細胞ではIGF-2の4個のプロモーターがすべて発現していて、塩基配列が未定の2番目プロモータを除いた残り3個のプロモータの転写制御領域上にはEGRI(Early Growth Response Gene Product 1)、SP-1(Specificity Protein-1)、WT1(Wilms Tumor Suppresor)に対する複数個のコンセンサスな結合部位が存在している。HCS-2/8細胞でのIGF-2発現に対するこれらの転写制御因子の効果を検討するために行ったRT-PCRの結果は、SP-1の発現は正常軟骨細胞でも肉腫由来細胞株でも同様にほんのわずかであったが、EGRIの発現では正常軟骨細胞より肉腫由来細胞株の方がやや高く、WT1の発現では逆に正常軟骨細胞の方が肉腫由来細胞株より少し高かった。これらのことから、肉腫由来株HCS-2/8細胞では初期培養相での増殖に対するEGR1のポジティブな作用増強とWT1のネガティブな作用減少との相乗効果によってその肉腫由来細胞株の異常増殖が誘起されているものと推察された。
また、軟骨細胞系の一種の分化因子であるアスコルビン酸の効果は、HCS-2/8細胞ではIGF-2、H19(Tumor Suppresor)、EGR1、SP-1、WT1の発現を増加し、軟骨細胞の分化マーカーの10型コラーゲンα1鎖、アグリカン、アルカリホスファターゼの遺伝子発現も増加したけれども、2型コラーゲンα1鎖の遺伝子発現は減少させていた。これらの結果は、アスコルビン酸は軟骨細胞系において分化因子であるとともにその初期増殖においても増殖因子的な機能も有している可能性を示している。
一方、HCS-2/8細胞でのIGF-2のインプリンティング状態はすべてのプロモータとも父親由来のアレル発現に対応し、その過剰発現とは直接的な関連性は存在していないようであった。また、ヒト染色体11p15.5領域のインプリンティング・クラスターの中のCDKNIC(p57^<KIP2>)においては、父親由来のアレルではそのPAPA領域に欠損が認められたが、発現は母親アレルの正常な長さの型であった。 -
骨芽細胞インスリン様増殖因子遺伝子の発現と使用プロモーターの変動
研究課題/領域番号:06671854 1994年 - 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
高橋 浩二郎, 滝川 正春, 服部 高子, 中西 徹
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
ヒトインスリン様増殖因子(IGFs)遺伝子の発現と使用プロモーターの変動に対するRNase保護アッセイ(RPA)法による定量解析法の開発が、マウス骨芽細胞株を用いる当初計画を一部変更して、ヒト軟骨肉腫由来軟骨様細胞株HCS-2/8で試みられた。当申請研究の主目的であるRPA用のプローブ作製は、IGF-2の4種のプロモーター(2P-1, 2P-2, 2P-3, 2P-4)のうち2P-2以外に対して、IGF-1の2種のプロモーターに対して、それぞれ成功した。現在、それらのプローブを用いたRPA法の適用範囲、限界を骨芽細胞、軟骨細胞等で調べている。また、転写産物の非常に少量であった2P-2のPCR産物を集積しており、クローニングに必要な量になり次第そのプローブ作製を行う予定である。今回の開発研究に関連した基礎的研究で以下の新事実を究明、発見し、現在それらの論文を作成中である。
1. IGF-2の4種のプロモーターの同時発現をHCS-2/8、ヒト正常軟骨細胞において初めて見いだした。
2. HCS-2/8のIGF-2の2P-4からの転写産物の複写開始点のすぐ上流の4塩基の欠損を見いだした。この欠損は染色体レベルでは起こっていなく、おそらくその肉腫由来細胞での特異的な選択的スプライシングに起因した欠損であるものと思われる。
3. HCS-2/8とヒト正常軟骨細胞の比較において、ともにインプリンティング遺伝子であるIGF-2とH19(癌抑制遺伝子)のそれぞれの発現量の間にパラレルな相関関係が存在していた。
4. HCS-2/8のIGF-2の制限酵素断片長多型の研究は、インプリティング型母親アレルはなく、父親由来のアレルだけの存在を示していた。このことが、軟骨肉腫形成に関連していると思われる。 -
ヒト軟骨細胞様細胞株を用いた新規軟骨分化関連遺伝子のクローニングと機能解析
研究課題/領域番号:06454521 1994年 - 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
滝川 正春, 服部 高子, 中西 徹, 高橋 浩二郎
配分額:7100000円 ( 直接経費:7100000円 )
1。まず、新規軟骨分化関連遺伝子のクローニングと機能解析のための細胞培養系の特徴を把握するためヒト軟骨細胞様細胞株(HCS)の性状解析とウサギ肋軟骨in vitro増殖・分化系の詳細な解析をおこなった。
2。ついで、これらの軟骨系の細胞と骨芽細胞系の細胞との間に,differential display法を適用し、7個の未知遺伝子と数個の既知遺伝子と相同性を有する遺伝子を得た。その内、今まで軟骨細胞での報告がなかったヒト結合組織増殖因子(human connective tissue growth factor ; CTGF)と相同性を有するヒト軟骨肉腫細胞株HCS由来の遺伝子のcDNAのクローニングを行った結果,この遺伝子hcs24はCTGF蛋白をコードしており,ctgfと同一の染色体DNAに由来することが判明した。その発現は培養細胞ではHCS-2/8細胞とウサギ肋軟骨成長軟骨細胞に特に強く、上記ウサギ肋軟骨成長軟骨細胞in vitro増殖・分化系では肥大化期に最大となった。また、HCS-2/8細胞における発現は内軟骨性骨形成に重要な役割を果たすTGF-βやBMP-2により著明な誘導を受けた。
3。17日齢マウス胎仔のin situハイブリダイゼーションの結果そのmRNAの発現は軟骨細胞特に肥大軟骨細胞に強かった。
4。抗PDGF抗体がCTGFを認識することを利用し、ウエスタンブロットでHCS-2/8細胞CTGF蛋白を産生していること確認した。
5。アンチセンスDNAをHCS-2/8細胞in vitro増殖・分化系に添加するとそのプロテオグリカン合成が増加し、一方、その増殖は著明に抑制された。さらに、ウサギ成長軟骨細胞増殖・分化系ではアルカリホスファターゼ活性を増加させた。したがって、ctgf/hcs24の遺伝子産物すなわちCTGFは増殖期の軟骨細胞が分化、成熟するのを抑え、一方、その増殖を促進する作用を有することが判明した。 -
口腔内常在通性嫌気性菌の酸素センサー兼転写調節蛋白およびその遺伝子構造の比較解析
研究課題/領域番号:06771628 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
服部 高子
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
大腸菌の環境応答のうち、分子状酸素濃度の低下に応答した好気的から嫌気的への呼吸系転換には、酸素センサーであると同時にDNA結合性調節蛋白であるFNRの関与が必須である。FNRはC末端のDNA結合領域の類似性からCRP(cAMP receptor protein)とCRP-FNR familyを形成しており、このfamily間ではFNRの方がN末端領域に分子状酸素を感知すると考えられるシステインクラスターを保持していることで区別されている。最近、DNA結合領域とシステインクラスター領域の両方においてFNRと同様な特徴を持つ蛋白(HlyX:Haemolysin合成における転写調節蛋白)がActinobacillus pleuropneumoniaeに存在することが報告され、FNR-HlyX familyの存在も示唆されている。このことよりFNRの機能的側面において、嫌気的呼吸系遺伝子群のactivatorに加えて病原細菌の毒素産生に対する調節蛋白としての可能性が推察されている。
種々の代謝様式を持つ5種の代表的な口腔内常在細菌でのFNR様蛋白の存在の有無を確かめる前年度までの予備的な実験で、抗FNR血清との反応性と分子量の類似性から通性嫌気性細菌で嫌気的呼吸系を持ち、かつ白血球毒素産生能を持つActinobacillus actiinomycetemcomitansにのみ有意なFNR様蛋白の産出が認められた。さらに、フルクトース制限下のケモスタット培養における増殖パターンの変動実験から、A.actinomycetemcomitansのFNR様蛋白と大腸菌FNRとの間に産生量変動パターンにおける相関性が観測された。
本年度は、上記のA.actinomycetemcomitansに加えてHaemophilus aphrophilus、Capnocytophaga gingivalis、Capnocytophaga ochraceaの4種の口腔内常在通性嫌気性細菌におけるFNR様蛋白およびfnr様遺伝子の検出を試みた。その結果の要点は、下記の通りである。
(1)抗FNR血清と反応する分子量約30Kの蛋白は、A.actinomycetemcomitansに加えてH.aphrophilusも産出することが確認された。
(2)FNR-HlyX family間でのコンセンサスなアミノ酸領域より設計した混合プライマーを用いたPCR法でも、fnr様遺伝子の増幅産物がA.actinomycetemcomitansとH.aphrophilusに検出された。これらの増幅産物のシークエンシングの結果、fnr様遺伝子はfur遺伝子およびhlyX遺伝子と非常に高い相同性があることが確認され(約75%)、FNR-HlyX familyに属すると思われる。
以上の事実より、A.actinomycetemcomitansおよびH.aphrophilusのFNR様蛋白は大腸菌FNRとの構造的、機能的な類似性だけでなく、毒素産生調節蛋白との構造的類似性も有することを初めて見い出した。(投稿準備中) -
口腔内常在細菌のDNA結合性酵素センサー蛋白質の同定と一次構造の解析
研究課題/領域番号:05857203 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
服部 高子
配分額:800000円 ( 直接経費:800000円 )
大腸菌では、環境の分子状酸素濃度の低下に応答した好気的呼吸系から嫌気的呼吸系への転換には、酸素センサーであると同時にDNA結合性転写調節蛋白であるFNRを介する1成分調節系の関与が必須である。嫌気条件下で活性化されるFNR蛋白は、嫌気的呼吸系遺伝子群の発現を誘導するだけでなく、自己をコードする遺伝子の転写を抑制する独自のautorepression機構によりその転写レベルが自己調節されていることが、in vitro の転写活性測定系で代表者らにより実証された(FEBS Lett.,1994,in press)。
口腔内常在細菌におけるこのような転写調節系の作動の有無を確かめるため、種々のredox代謝様式を持つ代表的な5種の細菌株を選び、FNR様蛋白の産生の有無を抗FNR血清との反応性と分子量の類似性より検索したところ、通性嫌気性細菌で嫌気的呼吸系の存在が報告されているActinobacillus actinomycetemcomitans にのみ、FNR様蛋白の産生が有意に認められた。さらに、フルクトース制限下のケモスタット培養における増殖パラメータの変動実験から、FNR様蛋白の産生量変動パターンにおいて大腸菌FNRとの相関が示唆された。そこで、本研究では、FNR様蛋白と大腸菌FNR蛋白との相同性を立証することを試みた。その結果の要点は、下記の通りであ。(投稿準備中)。
(1)A.actinomycetemcomitans より単離精製されたFNR様蛋白のアミノ酸N-末端配列には、大腸菌FNR蛋白との有意な相同性はみられなかった。しかし、大腸菌FNR蛋白との相同性をアミノ酸レベルで高度に保存しているPseudomonus属のANR蛋白やActinobacillus属のHlyX蛋白のN-末端領域に関しても有意な相同性は見られないことより、N-末端領域にはFNR-family 間でコンセンサスな領域が含まれず、FNRとの相同性はさらに内部領域のアミノ酸配列の解析から実証されるべきであると思われた。
(2)FNR-family間でコンセンサスなアミノ酸領域より設計した混合プライマーを用いたPCR法により、fnr様遺伝子の増幅産物がA.actinomycetemcomitans に検出されており、遺伝子DNAレベルにおいても大腸菌fnrとの相同性が明らかにされた。
以上の事実より、A.actinomycetemcomitans のFNR様蛋白は構造的、機能的に大腸菌のFNRと類似している可能性が強く示唆された。 -
二制御因子(NarL・FNR)系によるnarオペロンの協同的転写制御
研究課題/領域番号:04254212 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
高橋 浩二郎, 谷口 茂彦, 服部 高子, 中西 徹
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
大腸菌硝酸呼吸遺伝子オペロンの嫌気的条件下での発現制御には,各サブオペロンのプロモーター上流の調節領域にそれぞれ独立に作用する2つの転写促進因子が不可欠である。1つは,分子状酸素センサーであると同時に嫌気呼吸系遺伝子群の転写活性化因子であるFNRであり,他は硝酸イオンに対する二成分調節系:NarX/Lにおける転写調節因子であるNarLタンパクである。それら両調節タンパクからなる二成分系によるnarオペロンの転写調節の分子機構と,両因子のそれぞれが認識するDNA部域の高次構造の基本骨格の推定とを目標とした平成4年度の研究成果は以下の通りである。
1.家兎抗血清を用いたウエスタンブロット法で,口腔内細菌群の中で硝酸呼吸を営む通性嫌気性菌,Actinobacillus actinomysetemomitans(若年性歯周病原因菌)にFNR様タンパクが作動する事実を見出した(論文(1,3))。
2.硝酸イオンに対するセンサータンパクであるNarXを含む膜標品を用いて,その目己リン酸化と調節タンパクNarLへのリン酸基転移の両反応が,他の二成分調節系と同様のモードで起こることを^<31>P-NMRにより示した(論文(4))
3.ゲルシフト法によるFNRのDNA結合部域(いわゆるanaero-box配列)との反応の解析では,調節領域を含むnarX,narCHJI,fnrの各プロモーター・フラグメントに対するFNR単独での特異的な結合は認められなかったが,RNAポリメラーゼのホロ酵素あるいはコア酵素との共存下では結合し,かつポリメラーゼの結合親和性を一桁高める事実を解明した(論文(2))。
4.FNRによる転写自己抑制をテストしたin vitro転写実験で,fnrのプロモーター域では約100塩基間隔で2つのFNR結合部位が,narX/Kのプロモーター域では約210塩基間に3つのFNR結合部位が設定されるときに,抑制的な効果が説明可能で,DNAの誘導湾曲構造の形成が不可欠であると示唆された(論文(2))。 -
硝酸還元酵素系遺伝子群を協同的に転写制御するDNA結合 蛋白質:NarL・Fnr
研究課題/領域番号:03259210 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
高橋 浩二郎, 服部 高子, 谷口 茂彦, 野地 澄晴
配分額:1800000円 ( 直接経費:1800000円 )
嫌気的条件での大腸菌硝酸呼吸系遺伝子群(nark:硝酸輸送蛋白質をコ-ド)とnarCHJI(硝酸還元酵素複合体をコ-ド)の発現には,各プロモ-タ-上流にある制御領域にそれぞれ作用する二つの転写促進因子が必要である.一つは,分子状酸素センサ-であると同時に嫌気呼吸系遺伝子群の活性化因子であるFNR蛋白質である.他の一つは,硝酸イオンに対する二成分制御系:NarxーLでの制御因子としてのNarL蛋白質である.それら両制御蛋白質からなる二制御因子系(Two Regulator System)によるnarオペロンの転写制御機構の究明と,両制御蛋白質のそれぞれが認識するDNAの高次構造の決定とを目的とした本研究において,平成3年度には次のような研究成果を得た.
1.平成2年度に確立していたNarLとFNRの大量発現系を利用して,それら両制御蛋白質の精製を検討した.FNRに対してはその精製法を確立するとともに,その家兎抗血清を作製した.一方,NarLの方は,最終精製段階におけるその蛋白質の大半が沈澱するという問題点を残しており,現在,その解決策を検討中である.
2.精製FNRは,単独では,narオペロンへの特異的な結合を起こさなかったが,RNAポリメラ-ゼのホロ酵素およびコア酵素の存在下では結合するとともに,その酵素の結合能を増加させた。一方,シグマ因子との共存下では,FNRは結合しなかった.
3.NarL非存在下でのin vitro転写実験において,narCHJI・narKの両プロモ-タ-からの転写は起こらなかった。しかし,narX(硝酸センサ-をコ-ド)のプロモ-タ-を含むそのnarKのフラグメントではnarXの方に対応した転写が観測され,その転写活性はFNRによって抑制されていた.
4.現在,narオペロンに対する精製FNRと部分精製NarLとの協同的な転写制御のin vitro実験を進行中である(平成4年2月)