共同研究・競争的資金等の研究 - 大槻 高史
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2007年04月 - 2008年03月
JST 研究成果展開事業 シーズ発掘試験
大槻 高史
担当区分:研究代表者
蛋白質の特定部位に非天然のアミノ酸を導入することができれば、創薬および蛋白質研究に対して多大な貢献が見込まれる。既存の非天然アミノ酸導入システムでは、蛋白質への導入が不可能な非天然アミノ酸が多数存在する。その原因の一つは非天然アミノ酸がEF-Tuという因子と適合しないことであった。本研究では、多様な非天然アミノ酸の蛋白質への導入を可能にすることを目的とし、EF-Tuを改変して非天然アミノ酸の導入を検討する。
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非天然アミノ酸含有タンパク質の無細胞及び細胞モデル系での発現
研究課題/領域番号:18048031 2006年04月 - 2008年03月
科研費 特定領域研究(バイオ操作)
大槻 高史
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
生命機能の再構成という目において、蛋白質生合成系の役割は大きい。本研究では、蛋白質へ非天然アミノ酸を導入する技術の開発を通じて、蛋白質合成の分子基盤の理解と、人工的な細胞機能の再構築を目指す。具体的には、非天然アミノ酸含有蛋白質合成系をtRNAや翻訳因子の改良により更に効率化し、無細胞系及びモデル細胞系で利用することを目的とする。本年度は、以下の項目に取り組んだ。
(1)改良した合成システムによる新規な人工蛋白質の創製
前年度に改変を行ったEF-Tu、及び、開発した4塩基コドン用tRNAにより、以下の(i).(ii)を試みた。
(i)従来取り込み効率の低かった非天然アミノ酸の蛋白質への導入:改変EF-Tuを用いることにより これまでほとんど蛋白質へ導入できなかった1-pyrenylalanineの導入が可能になったという結果を前年度に得ている。このような例を更に数例調べ、導入効率の極めて低かった2-anthraquinonylalanineおよび1-pyrenylalanineの効率的な導入が可能になったことを明らかにした。これらの結果および前年度の結果は本年度11月にJ.Am. Chem.Soc誌に掲載された。
(ii)蛋白質への複数種の非天然アミノ酸の同時導入:4塩基コドン用に開発した高性能なtRNAを用いて1つの蛋白質に複数種の非天然アミノ酸の同時導入を試みた。その結果、3種類の非天然アミノ酸の同時導入が可能になった。
(2)細胞中での非天然アミノ酸含有蛋白質発現
上の高効率非天然蛋白質発現系を細胞内に導入し、その中で蛍光ラベル蛋白質を合成させることを目指した。細胞としては哺乳動物細胞を用いた。現在のところ、細胞内への蛍光アミノアシルtRNAの導入法の開発途上であり、わずかながら導入できることが認められた。今後さらに導入法を最適化し、蛍光アミノアシル化tRNAが細胞内翻訳系で用いられて蛍光ラベル蛋白質の産生に結びつくことを確認したい。 -
2006年04月 - 2007年03月
JST 研究成果展開事業 シーズ発掘試験
大槻 高史
担当区分:研究代表者
近年miRNA と呼ばれる小さなRNA が広範な生命機能を制御していることが明らかになり、様々な状態における生体内のmiRNA 発現量を調べることがライフサイエンス研究における重要課題となってきた。本課題では、ペプチド核酸(PNA)の RNA に特異的に強く結合する特性を生かし、miRNA を高感度に検出するためのPNA アレイの開発を行う。先行技術であるDNA アレイと比較して、PNA アレイがmiRNA の検出感度や特異性の上で優れていることが証明できればmiRNA 解析チップとして実用化が可能になる。
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RNAの新規細胞内導入法の開発と応用
2006年01月 - 2008年12月
NEDO 産業技術研究助成事業
大槻 高史
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生細胞中での蛋白質の部位特異的蛍光標識法の開発
研究課題/領域番号:17750162 2005年04月 - 2007年03月
科研費 若手研究(B)
大槻 高史
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
細胞内の生体分子の動態や局在などのネットワークを調べることはポストゲノム時代の最重要課題の1つである。この課題を網羅的・効率的に進めるためには、生体分子を可視化させる蛍光標識技術の開発が必要である。蛋白質分子の蛍光標識法としては、目的蛋白質の末端にGFPなど蛍光蛋白質を結合させる方法が現在一般的であるが、大きな蛍光蛋白質を融合することにより目的蛋白質の本来の性質が損なわれる可能性も高い。そこで、蛋白質の機能に極力影響を与えない小さな蛍光基の導入が望まれる。本課題では、細胞内で蛋白質中の望んだ部位に蛍光基を導入する方法を開発することを試みた。本方法は細胞内の蛋白質合成装置を利用し、蛍光基をもつアミノ酸を直交化tRNAに結合させ、mRNA上のコドン特異的に蛋白質に導入するというものである。この方法では、蛍光部位は小さな蛍光基としてアミノ酸一残基分のスペースに導入するため、蛋白質の機能を損なう可能性は少ない。
本年度は、細胞内翻訳装置により蛍光アミノ酸を蛋白質に組み込む方法を検討した。蛍光アミノ酸に対応するコドンとしてアンバーコドンを用い、アンバーコドンを含む蛋白質遺伝子(ここではDsRed遺伝子)を発現ベクターに組み込んで、哺乳動物細胞(ここではCHO細胞)に導入した。その細胞に細胞内のARSによりアミノアシル化されるようなサプレッサーtRNAをリポフェクション法により導入したところ、DsRedの赤色蛍光によりアンバーコドンのサプレッションが観測された。細胞外で蛍光アミノ酸(Bodipy-FL-AF)を結合させたサプレッサーtRNAを用いた場合も、アミノアシルtRNAのエンドソーム経由での細胞内導入が確認された。主にエンドソーム内にアミノアシルtRNAが固まって強い蛍光を放っていたため、これを改善するような導入法を今後さらに検討する。 -
寄生虫ミトコンドリアに見られる、縮小化した機能性RNAを持つ翻訳系の解析
研究課題/領域番号:17590368 2005年04月 - 2007年03月
Japan Society for the Promotion of Science 科研費 基盤研究(C)
渡邊 洋一, 大槻 高史
担当区分:研究分担者
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
多細胞動物のミトコンドリアのタンパク質合成系は、様々な点で真核生物の細胞質や原核生物のタンパク質合成系と異なる特徴を持つ事が明らかになってきた。その中で、線形動物ミトコンドリアのタンパク質合成系は、多細胞生物の中で最短のtRNAセットと最小クラスのリボソームRNAを持つ事が、その遺伝子配列から予測されていた。そこで、タンパク質合成系の機能性RNAが縮小化した際、どのような影響が生じるのかという点が明らかにするため、われわれは寄生性線虫および自由性生活性線虫のミトコンドリアタンパク質合成系を解析してきた。本研究では、これをさらに発展させると共に、このような機能性RNAの縮小化がなぜ起きるのかにも迫った。2年間の主な成果は以下のとおりである。
1.細胞内に微量しか存在すしないミトコンドリアリボソームを、効率よく、高純度に調製するために、タグ付きミトコンドリアリボソームタンパク質を発現する組換え線虫を作製した。この線虫内ではタグつきタンパク質がミトコンドリアに移行し、リボソームに取り込まれていることが示唆された。しかし、現在用いているタグ配列に対するアフィニティ精製では高純度のリボソームを得ることができなかった。複数種のタンパク質とタグ配列の組み合わせを検討する必要があると考えられる。
2.自由生活性線虫Caenorhabditid elegansミトコンドリアEF-Tu2のアミノアシル基特異性をもたらす領域を、高度好熱性細菌のEF-TuにEF-Tu2の配列を移植していくことで明らかにした。
3.旋毛虫ミトコンドリアEF-TuのアミノアシルtRNAに対する結合能を明らかにした。
4.節足動物ミトコンドリアEF-TuのアミノアシルtRNAに対する結合能を明らかにした。
5.新規tRNAメチル基転位酵素候補を同定した。 -
2005年04月 - 2006年03月
JST 研究成果展開事業 シーズ発掘試験
大槻 高史
担当区分:研究代表者
蛋白質の働きは、種々の翻訳後修飾により制御されており、その中でもリン酸化修飾はシグナル伝達や転写制御において非常に重要な役割をしている。様々なリン酸化蛋白質は、それぞれについて異なるリン酸化酵素により翻訳後修飾されることが知られている。しかしながら、様々なリン酸化蛋白質の生化学的解析やそれらを用いた臨床研究のためには、個別なリン酸化方法をとるのは煩わしく、一般的な作製方法の開発が望まれる。2005年、古細菌においてリン酸化セリンをtRNAに結合させる酵素(SepRS)が発見されたことに基づき、本研究では、翻訳後修飾ではなく、翻訳中にリン酸化セリンを直接蛋白質に導入する方法(左図参照)を開発する。現在、平成17~18年度の科研費若手Bの助成を受けているが、本課題とは異なる内容である。
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蛋白質生合成系の有機化学的拡張と合成生命体の創成
研究課題/領域番号:15101008 2003年04月 - 2008年03月
Japan Society for the Promotion of Science 科研費 基盤研究(S)
宍戸 昌彦, 大槻 高史, 瀧 真清
担当区分:研究分担者
配分額:103610000円 ( 直接経費:79700000円 、 間接経費:23910000円 )
蛋白質生合成系を構成する分子群、すなわちアミノ酸、核酸、酵素などを有機化学的に拡張し、人工機能を持つ蛋白質を作製する。さらにこの拡張生合成系を生きた細胞に導入し、人工機能を発現する「合成生命体」を作成することが、本研究の目的である。平成19年度は以下の研究を行った。(1)大腸菌中で直交するtRNAとそれにアミノ酸を結合する酵素ARSとの対を用いて、いくつかの非天然アミノ酸をtRNAに結合させ、それらを大腸菌細胞外生合成系で発現させた。また、細胞外でアミノアシル化したtRNAを改変EF-Tuを介して哺乳類細胞(CHO)に導入し、細胞内で蛋白質が合成できることを確認した。さらに、あるtRNAに相補的な配列をもつペプチド核酸に非天然アミノ酸を結合させ、それを当該tRNAを発現させているCHO細胞に導入すると、細胞中で非天然アミノ酸が導入された蛋白質の発現が、極微量ではあるが、観測された。
一方、リボソームを使用せずに蛋白質に非天然アミノ酸を導入する新方法として、酵素L/F-transferaseを使う方法が提案された。とくにこれを変異ARSとともに使うことにより、1段階、10-20分程度で蛋白質のN末端に非天然アミノ酸を導入できることが示された。
非天然アミノ酸の蛋白質やペプチドへの導入技術は、蛍光標識蛋白質ライブラリーやペプチドライブラリー作製に使用できる。そのさきがけとして、合成ペプチドライブラリーを作製し、種々の蛍光性非天然アミノ酸を導入することによるがん細胞特異的結合ペプチドの探索を行った。現在までの準備的な結果では特異的ペプチドへの道筋が確認できている。 -
寄生性線虫を用いた線形動物のミトコンドリア蛋白質合成系の解析
研究課題/領域番号:15590365 2003年04月 - 2005年03月
Japan Society for the Promotion of Science 科研費 基盤研究(C)
渡邊 洋一, 大槻 高史, 北 潔, 神谷 晴夫
担当区分:研究分担者
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
線形動物のミトコンドリア(mt)には、他の多細胞動物mtにも存在するDアームのないtRNAに加え、TアームのないtRNAも存在する。一方、翻訳伸長因子EF-Tuは、バクテリアではアミノアシルtRNAとの結合に、tRNAのTアームを要求する。我々は、線形動物ミトコンドリアのEF-TuがTアームのないtRNAとどうして結合できるのかを明らかにするため、各種の線形動物のEF-TuのcDNAをクローニングした。その結果、これらの線形動物は2種の異なるEF-Tuを持ち、これらは、バクテリアのEF-Tuと比べて、それぞれ40ないし60アミノ酸のC末端延長を持つEF-Tu1と約15アミノ酸のC末端延長を持つEF-Tu2の2つのグループに分類できた。Caenorhabditis elegansおよびTrichinella britoviのEF-Tuの各種のtRNAに対する結合能を解析したところ、EF-Tu1はTアームのないtRNAに、EF-Tu2はDアームのないtRNAにそれぞれ結合した。また、C.elegansの2種のEF-TuおよびT.britoviのEF-Tu2はクローバーリーフ型二次構造を形成できる通常のtRNAとは結合できなかったのに対して、T.britovi EF-Tu1は通常のtRNAとも結合出来た。このことは、C.elegansのmtには通常型のtRNAが存在しないのに対して、T.britoviのmtには通常型のtRNAが存在する事と、よく対応していた。また、C.elegansのEF-TuはC末端延長をわずか10数アミノ酸残基失っただけで、tRNAの結合能を失う事が分かった。以上の結果より、線形動物ミトコンドリアでは、EF-Tuの遺伝子重複とEF-TuのC末端延長による新たなtRNA結合領域の獲得により、tRNAの大きな短縮化に対応している事が分かった。
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動物ミトコンドリアの特殊性を活用した遺伝情報翻訳システムの基盤原理の解明
研究課題/領域番号:14208077 2002年04月 - 2004年03月
Japan Society for the Promotion of Science 科研費 基盤研究(A)
渡辺 公綱, 鈴木 勉, 大槻 高史
担当区分:研究分担者
配分額:48880000円 ( 直接経費:37600000円 、 間接経費:11280000円 )
本研究の目標は、翻訳過程における未解決の根本問題を、動物ミトコンドリア(mt)翻訳システムの特殊性を活用して解明することである。それは良く研究されてきた大腸菌の翻訳系をベースにして、それに特殊な動物ミトコンドリアの翻訳装置を組み合わせて行う。
(1)tRNAの最小必須構造:現存する生物の中で最短のtRNAである、線虫mtのセリンtRNA(tRNA^<Ser>_<UCU>:54残基からなり、Dアームはなく、Tアームは3塩基対と4塩基のループからなる)の高次構造をNMRによって検討し、クローバ葉型の2次構造から予測される塩基対は殆ど水溶液中でも存在すること、短縮されたDループとエクストラループからなる連結領域は柔軟な構造をとることが判った。この自由度は、3'末端とアンチコドン間の相対距離を通常のtRNAと同様に保つための調整に不可欠のものである。(2)リボソームの最小必須構造:mtリボソームは大腸菌リボソームに比べ、リボソームRNA(rRNA)が約半減している代わりに、蛋白質が倍増している。rRNAの機能部位は中央部に厳密に保存され、周辺部で欠けたrRNA領域はすべて蛋白質で補填されており、これらRNAの周辺領域に位置するステム・ループ領域がかなり削除可能であることが判明した。
(3)翻訳系のエネルギー源であるGTPの加水分解反応のtriggerは何か:EF-GのGTPase活性がリボソーム蛋白質L7/L12で活性化されることからGTPの加水分解反応のtriggerはL7/L12蛋白質であることが示唆されていたが、我々は、大腸菌EF-Gはmt・リボソームでは機能しないが、EF-GのGTPase活性化因子であるL7/L12蛋白質のみを大腸菌由来のものに置換したmt・リボソームでは機能することを見出し、GTPの加水分解反応のtriggerがL7/L12蛋白質中に存在することを突き止めた。 -
異常tRNAを用いた翻訳系
2002年04月 - 2003年10月
科学技術振興調整費
大槻 高史
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伸長因子EF-TuによるTアームを欠くtRNAの認識機構
研究課題/領域番号:13780481 2001年04月 - 2002年03月
科研費 若手研究(B)
大槻 高史
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
細菌のEF-Tuの研究から、EF-TuはアミノアシルtRNAのアクセプターアームとTアームを認識していることが知られている。線形動物ミトコンドリアにおいてはEF-Tuとの相互作用に必要と思われるTアームを欠失したtRNAが存在している。線形動物ミトコンドリアでは22種類存在するtRNAのうち、20種類がTアームの欠けたtRNAで、残る2種類はDアームを欠失したtRNAであり、それぞれEF-Tu1とEF-Tu2という2種類のEF-Tuにより認識されることが分かっている。本研究では、これらのtRNAのEF-Tuによる認識機構を調べることにより、RNA構造の短縮化が蛋白質によってどのように補われているかを考察することを目的としている。前年度は、EF-Tu1によるTアームを欠いたtRNAの認識機構の解明に取り組み、EF-Tu1は通常と異なるC末端延長部分により、標準的なEF-Tuが結合する部位以外にtRNAL字構造の内側部分を認識していることを明らかにした。本年度は、以上をふまえて、更に研究を進めた。
1)EF-Tu1とtRNAの相互作用を分子レベルで明らかにするため、EF-Tu1のC-末端部分(約150残基)のNMRによる立体構造解析に取り組み、解析に必要なスペクトルを揃えるところまで到達した。
2)EF-Tu2によるDアームの欠けたtRNAの認識について調べた。全く同じtRNA部分を持つセリルtRNA、アラニルtRNA、バリルtRNAを用意し、これらに対する結合を調べたところ、EF-Tu2はセリルtRNAのみを認識することがわかった。通常のEF-Tuは全てのアミノアシルtRNAと結合するため、セリン特異的な認識は極めて珍しい例である。線形動物ミトコンドリアではDアームの欠けたtRNAはセリンtRNAのみであるため、EF-Tu2はこれに対応したものと思われる。
以上のように、Tアームの欠けたtRNAには、新しいtRNA認識部位をもつEF-Tuが対応し、Dアームの欠けたtRNAには、アミノ酸特異的認識を行うEF-Tuが対応していることが明らかになった。動物ミトコンドリアには通常のtRNAと異なる多様なtRNAが存在し、それらがどのように機能しているかは謎であったが、本研究で明らかにしたようにEF-Tuが共進化してtRNA構造の欠損を補っていることが、一つの答えだと考えられる。 -
構造生物学によるミトコンドリア翻訳装置の構築原理の解明
研究課題/領域番号:11308024 1999年04月 - 2002年03月
Japan Society for the Promotion of Science 科研費 基盤研究(A)
渡辺 公綱, 大槻 高史, 鈴木 勉
担当区分:研究分担者
配分額:34720000円 ( 直接経費:32800000円 、 間接経費:1920000円 )
本研究の目標は、現存する生物のうちでもっとも単純と思われる、動物ミトコンドリアの特異な翻訳システムにおける個々の装置の機能特性と構造的な異常性に焦点を当て、それらの機能構造の詳細な解析と実行可能なものからその立体構造を解明し、機能発現に必要な構造を探ることをにより、ミトコンドリア翻訳システムの構築原理を解明することである。主たる研究成果は以下の通りである。(1)ウシ・ミトコンドリアのin vitro翻訳システムを構築し、系の最適化を計った結果、ポリ(U)依存ポリ(Phe)合成で大腸菌のものと比肩し得る活性を示す系を確立した。(2)tRNAと翻訳因子をセットにする限り、またL7/L12蛋白質のみ大腸菌由来のものを使う限り、大腸菌とミトコンドリア・リボソームに互換性があるので、本質的にリボソーム機能は両者で等価である。(3)異常な2次構造をもつ2種類のセリンtRNAが低いながらも翻訳機能をもつことを実証した。特に片腕を欠くtRNAの効率の低さはA部位への結合に欠陥のあるためであった。(4)これら2種類のセリンtRNAは単一のセリルtRNAシンテターゼ(SeRRS)でアミノアシル化されることを明らかにし、その認識部位を特定した。(5)線虫ミトコンドリアに存在する大部分のTアーム欠損tRNAを認識する特殊なEF-Tuを発見した。それはC末端に57アミノ酸の延長部をもち、それが欠けたTアーム部分を補完していた。また2種類のDアーム欠損セリンtRNAに対応する別のEF-Tuはアミノ酸部分をも認識していた。(6)これらの翻訳因子の結晶化を行い、SerRSでは針状結晶を得た。tRNA-EF-Tu複合体の結晶化とともに、これらのX線解析を行う。
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NMRによるミトコンドリアtRNAの立体構造解析
研究課題/領域番号:97J07014 1998年04月 - 1998年12月
日本学術振興会 科研費 特別研究員奨励費
大槻 高史
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )