共同研究・競争的資金等の研究 - 尾﨑 敏文
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新規p53発現腫瘍融解アデノウイルスがもたらす化学療法・放射線療法ブースト効果
研究課題/領域番号:25293323 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
尾崎 敏文, 国定 俊之, 藤原 俊義, 古松 毅之, 武田 健
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
骨・軟部肉腫に対する治療は大きな進歩を遂げているが、化学療法や放射線療法に抵抗性で予後不良となる症例が存在する。我々はp53発現腫瘍融解アデノウイルス製剤(OBP-702)が骨肉腫に対して強力な抗腫瘍効果を示すことを既に明らかにした。本研究では、骨・軟部肉腫に対するOBP-702と化学療法・放射線療法との併用効果を評価した。OBP-702を化学療法・放射線療法と併用することにより抗腫瘍効果の増強を示した。
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可視光硬化型ゼラチンを用いた革新的軟骨再生療法
研究課題/領域番号:25462334 2013年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
山根 健太郎, 尾崎 敏文, 吉田 靖弘
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
軟骨再生に必要な細胞や成長因子を患部へ効果的に集積させる方法として、可視光硬化型ゼラチンと細胞、結合性改変成長因子を用いた併用療法を検討した。成長因子としてコラーゲンへの強い結合能を有する結合改変成長因子を開発し、可視光硬化型ゼラチンからの徐放能を検討した結果、結合改変成長因子はゼラチンへの優れた結合能を有し、より長期間ゼラチン内に留まることがわかった。また、骨髄間質細胞(BMSC)を用いたゼラチン内での細胞培養で、使用組成における同ゼラチンの毒性はなく、長期間にわたり細胞が生存できることを確認した。以上のin vitro実験の結果を踏まえ、可視光硬化型ゼラチンと細胞、結合性改変成長因子併用療法の有効性についてウサギ大腿骨内側顆骨軟骨欠損モデルを用いて検討した。ウサギ大腿骨内側顆に径3mmの骨軟骨欠損を作成し、同部位に結合性改変成長因子(本研究ではBMP4を使用)を混和したゼラチンを充填し、可視光によって硬化させた。4週後に同部位でのmRNA発現量(type-2 collagen、aggrecan、SOX9)をRT-PCRにて定量した結果、併用群で有意な上昇を認めた。12週後の同部位の組織学的検討では、併用群で欠損部に硝子軟骨様細胞の増生を認め、Wayne scoreでも有意に優れた結果が得られた。今後は、ゼラチンに細胞(BMSC)を含有させた併用療法を検討し、最終的にはゼラチンに細胞と成長因子を同時に含有させた併用療法を検討する予定である。これらにおいて良好な結果が得られることは、再生医療において可視光硬化型ゼラチンが優れたscaffoldとなりうることを証明するものである。
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超微細手術のための汎用プラットフォーム開発とそれを支える超精密テクノロジーの追求
研究課題/領域番号:23226006 2011年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
光石 衛, 藤原 一夫, 鈴木 昌彦, 尾崎 敏文, 中島 義和, 森田 明夫, 杉田 直彦, 阿部 信寛, 原田 香奈子, 岩中 督, 上田 高志, 玉置 泰裕
配分額:215540000円 ( 直接経費:165800000円 、 間接経費:49740000円 )
従来の手術では達成できない高度治療を実現するため,超低侵襲・超微細・超精密手術を可能にするスーパー・マイクロ・サージェリ支援技術に関する研究を行った.具体的には,(1)軟組織対応手術ロボットとスーパー・マイクロ技術の確立,(2)硬組織対応手術ロボットとスーパー・マイクロ技術の確立,(3)血管内治療用マイクロロボットについて研究を行った.複数の手術分野に共通な汎用的な要素技術の開発を行い,実際のロボットに実装して評価した.
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CCN2のメタボリックサポーターとしての機能解明とその臨床応用研究
研究課題/領域番号:23592216 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
三宅 由晃, 青山 絵理子, 古松 毅之, 久保田 聡, 尾崎 敏文, 滝川 正春
配分額:5330000円 ( 直接経費:4100000円 、 間接経費:1230000円 )
CCN2は軟骨細胞の増殖と分化をともに促進するが、この一見矛盾する分子機能を可能とするメカニズムは明らかではなかった。本研究では、CCN2が軟骨細胞における代謝全般、特にエネルギー産生に与える影響、ならびにその背景にある分子基盤を解明することを目的とした。
その結果、CCN2欠損により軟骨細胞内ATP量が低下し、その原因が解糖系の抑制にあることが解明され、CCN2は軟骨細胞のATP産生を支えるメタボリック・サポーターであることが示された。また動物OAモデルにおいて関節軟骨再生効果が確認できたことからOA軟骨治療への応用が期待される。 -
骨肉腫におけるオミックス解析技術を用いた新たな抗分子標的療法の開発
研究課題/領域番号:23659724 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
尾崎 敏文, 川井 章, 伊藤 達男
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
骨分化に必須かつ特異的転写因子である RUNX2とアルギニンメチル化酵素の相互作用の可能性を in vitro で検討し RUNX2 の PRMT4 及び5によるアルギニンメチル化を確認した。このメチル化修飾は骨肉腫細胞の細胞周期依存性であった。また、RUNX2 の同蛋白修飾を骨肉腫検体にて発現をみたところ、予後との関連も有る事が確認できた。RUNX2 の発現は組織特異的であるため将来の分子特異的治療のターゲットとして期待できる研究成果を示す事ができた。
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進化分子工学と先端接着技術の応用による骨粗鬆症の新しい骨折予防法・治療法の開発
研究課題/領域番号:23592187 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
塩崎 泰之, 尾崎 敏文, 松川 昭博
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
進化分子工学の手法を用いて創製する結合性改変成長因子Collagen Binding Domain (CBD)等の新規生体材料を効果的に用いることにより,骨粗鬆症患者の骨折予防や骨折治療に有効な新しい骨組織再生・再建技術を開発する。
CBDの遺伝子配列と,骨形成促進蛋白-4(BMP4)の遺伝子配列を連結した融合遺伝子をベクターにいれ,蚕の卵に導入することによりトランスジェニックカイコを作製する。この時,遺伝子は選択的に絹糸腺で働くようにしおく。絹タンパク質と同時に繭に吐き出されたCBD-BMPは,できた繭から精製することにより得られた。
ウエスタンブロット法を用いて、作製したタンパク質を測定すると55kDaであった。
続いて、このCBD-BMPと通常のrhBMPとの効果の比較をマウス大腿骨へ投与する事で検討した。まず、蛍光標識を行ったそれぞれの成長因子を投与後1,3,7日でマウスを屠殺後に非脱灰凍結切片を作成し蛍光顕微鏡で評価した。CBD-BMPに関しては7日後であってもマウス大腿骨内への残存が確認できた。
続いて、投与後4週後に屠殺し、両群をμCTで撮影し骨密度を比較した。これも2群間で有意にCBD-BMP群が優れていた。(P=0.0489)
また、これらの大腿骨骨髄からRNAを抽出しRT-PCRを用いて両者を比較した。(CBD-BMP,BMP,生理食塩水の3群)HPRTをハウスキーピング遺伝子としALP,Osteocalcin,Osterixを計測し、P=0.035,0.0599,0.0126とCBD群が優れていた。
これらの結果よりCBD-BMPは、成長因子の効果を発現するために必要な標的組織への定着が確認できた。また、その効果に関しても放射線学的、遺伝子学的にも確認できた。これらを用いる事で効果的な骨形成が得られ,骨粗鬆症患者の骨折予防や骨折治療に有効である。 -
骨再生に優れた新しい生体吸収性骨セメントの開発
研究課題/領域番号:22591635 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高畑 智宏, 尾崎 敏文, 吉田 靖弘, 塩崎 泰之, 馬崎 哲朗, 山根 健太郎
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
独自に開発した骨接着性リン酸系多糖誘導体を用い、生体吸収性骨セメントを創製し、物性と骨再生に関する実験データを集積した。本セメントは既存の骨セメントよりも優れた骨接着性を認めた。動物実験モデルでは骨欠損部に本セメントを充填することで本セメントは徐々に吸収され、骨へと置換された。新規骨セメントとして今後臨床応用ができるようさらなる研究を継続していく予定である。
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間葉系幹細胞を用いた軟骨細胞が分泌する新規骨芽細胞分化調節タンパク質の同定
研究課題/領域番号:21591945 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
佐々木 順造, 尾崎 敏文, 藤田 洋史, 三木 友香理, 森本 裕樹
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
私たちは、骨髄間葉系幹細胞を用いて、骨芽細胞分化の指標である石灰化を、調整する分子を検索した。その結果、軟骨細胞から分泌される分子というよりもむしろ、その元となる間葉系幹細胞の死細胞が石灰化に重要であることを見いだした。私たちの結果は、in vitroで骨芽細胞による石灰化に、間葉系幹細胞のアポトーシスとネクローシス細胞が関与し、石灰化の核形成過程に死細胞の膜が関与することを示唆した。
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骨肉腫における年齢や部位別遺伝子異常の検出と機能的ゲノム解析
研究課題/領域番号:20390400 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
尾崎 敏文, 国定 俊之, 杉原 進介, 森本 裕樹
配分額:9750000円 ( 直接経費:7500000円 、 間接経費:2250000円 )
骨肉腫は、原発悪性骨腫瘍の中で最も頻度の多い腫瘍であり、染色体不安定性を多く示し、治療抵抗性の腫瘍も存在する。本研究では、骨肉腫の発生部位・病理組織学的所見の違いおよび臨床経過に影響を及ぼす因子についてDNA構造異常と異常領域の遺伝子について検討した。その中で染色体不安定性を示す領域で腫瘍に関連するゲノムDNAのコピー数の異常が腫瘍化に関与していると考え、アレイCGH法を用いて年齢、部位別に検討を行った。体幹発生例より四肢発生例の方でDNA欠失を多く認めた。また、若年例で染色体異常が多い傾向にあった。若年者と高齢者の生物学的な腫瘍化過程の違いを示す可能性を持つ複数の遺伝子領域を検出した。
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変形性関節症軟骨におけるアグリカン分解機構の解明とエビジェネティック制御法の開発
研究課題/領域番号:20591780 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
西田 圭一郎, 鉄永 智紀, 古松 毅之, 吉田 晶, 尾崎 敏文, 成瀬 恵治
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
軟骨マトリックスの破壊に重要であるMMP-13,あるいはADAMTS-4,-5,-9といったアグリカナーゼが軟骨細胞においてメカニカルストレスによって遺伝子発現が調節される遺伝子であること、メカニカルストレスによる基質破壊に転写因子RUNX2が深く関与し、変形性関節症発症(OA)の治療ターゲットとなることを示した。さらに、HDAC阻害剤がRUNX2発現に抑制的に働くことも判明した。HDAC阻害剤によるエピジェネティックな制御が、OA早期のアグリカン分解に関わるアグリカナーゼの発現を阻害することで新たな治療法の一つとなる可能性がある。
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上皮間葉移行における腫瘍浸潤能獲得の解明とヒストン修飾と腫瘍悪性化の関連性
研究課題/領域番号:19659379 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
尾崎 敏文, 国定 俊之, 古松 毅之
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
今回の研究では、我々が確立した腫瘍組織浸潤モデルマウスを使用し、軟部腫瘍におけるヒストン修飾と腫浸潤能獲得との関連性をEpithelial-Mesenchymal Transition (EMT;上皮間葉移行)の理論のもと、HDAC複合体関連因子によるE-Cadherinの発現調節の解析を目的とする。
21年度 に、ヒストン修飾とEMT関連遺伝子の発現、SYO-1細胞の初代培養細胞からの新たな細胞株の樹立(SYO-1e細胞)を行った。アセチル化ヒストンH4に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降法(ChIP assay ; Chromatin Immunoprecipitation Assay)により,p21プロモーター領域の結合について検討を行った。
HDAC阻害剤添加により、RT-PCR法では,p21mRNAはHDAC阻害剤添加により継時的に発現が増強された。また,Western blotによりp21の蛋白発現においても継時的に発現が増強された。また、ChIP assayではHDAC阻害剤添加によりp21プロモーター領域のp53結合ドメインへの結合を認め、p21蛋白発現を制御すると考えられた。
分離されたSYO-1e細胞はin vitroにおいて、上皮様形態を示し、上皮系マーカーの発現を認めたが、HDAC阻害剤によるE-cadherin遺伝子の発現変化に差を認めなかった。現在In vivoにおける滑膜肉腫細胞株の細胞間接着能について検討している。今後さらに条件を検討しHDAC関連因子におけるE-cadherin発現調整を検討し軟部腫瘍におけるヒストン修飾と腫瘍浸潤能獲得について研究を続ける。 -
コンパクト型手術ロボットと最小侵襲手術とを統合する医用CAD/CAMシステム
研究課題/領域番号:18106005 2006年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
光石 衛, 中島 義和, 杉田 直彦, 小泉 憲裕, 森田 明夫, 尾崎 敏文, 割澤 伸一
配分額:113750000円 ( 直接経費:87500000円 、 間接経費:26250000円 )
本研究では,医師の経験と勘をロボット動作データに反映させる方法として,(1)CTやMRIの医用画像で構成される患部モデルをもとに低侵襲手術計画から動作データを生成する医用CAD/CAMシステム,(2)術中に手術計画の遂行を促す手術ロボット用ナビゲーションシステム,(3)低侵襲手術を支援する手術ロボットの開発を行った.
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マイクロアレイCGH法を用いた軟骨性腫瘍における遺伝子・染色体変異の解析
研究課題/領域番号:18390417 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
尾崎 敏文, 国定 俊之
配分額:5970000円 ( 直接経費:5400000円 、 間接経費:570000円 )
目的:アレイCGH法を用いてDNAコピー数異常の検出を行い、内軟骨腫、低悪性軟骨肉腫の分類可能か検討した。
方法:内軟骨腫9例、低悪性軟骨肉腫(grade 1)8例を用いてメタファーゼCGH、アレイCGHを行った。2倍以上のコピー数の変化をgain、lossとし、それぞれの疾患のうち半数以上の症例で見られた領域で発現差のあるスポットについて検討を行った。
結果:内軟骨腫で20箇所のgain、14箇所のloss、軟骨肉腫で41箇所のgain、16箇所のlossを認めた。両方の腫瘍で共通に認められた領域は、gainが2q12.1-2(60%),6p22(60%),7q11.2(53%)、15q13.2(53%)、21q22.1(60%)、22q13.3(60%)、lossが1q21.3(87%)、6p21.3(73%)、7q22.1(60%)、19q13.2(67%)、20q11.2(93%)、20q13.1-2(80%)であった。腫瘍特異的な領域は、gainが内軟骨腫で9q34、軟骨肉腫で11p15.4、12q13.2、17q12、lossが内軟骨腫で13q12、軟骨肉腫で13q14であった。標的遺伝子としては、低悪性軟骨肉腫では、CHK2,RARA、DTX3、内軟骨腫では、WDR5のgain等の特異的な変異がみられた。定量RT-PCRでは、mRNA発現量に有意差は見られなかった。
考察:メタファーゼCGHでは、内軟骨腫、低悪性軟骨肉腫の間に明らかなコピー数の変化を認めなかった。しかし、アレイCGHを用いた検討では、個々の遺伝子のコピー数の差が検出可能であり、内軟骨腫、低悪性軟骨肉腫に特異的な領域を検出した。今回の検討では症例数が少なく、DNAコピー数とmRNAの発現レベルに相関を認めなかった。
まとめ:アレイCGHを用いて内軟骨腫と低悪性軟骨肉腫のDNAコピー数の異常を検出可能であった。アレイCGHはメタファーゼCGHでは検出できないレベルのDNAコピー数を検出するための有用な手段であった。アレイCGHによって検出された染色体領域から良性軟骨腫瘍、低悪性軟骨肉腫に特異的なDNAコピー数異常を検出した。今回の検討では症例数が少なく、DNAコピー数とmRNAの発現には有意な相関は見られなかった。しかし、検出された候補遺伝子は、軟骨性腫瘍の悪性化に関与するゲノム異常領域の同定や、腫瘍化・進展メカニズムの解明、新たな分子標的治療へのターゲットの同定などの研究対象としても有用であると考えられる。 -
ChIP-CGH法の開発、骨軟部肉腫におけるクロマチン修飾の網羅的解析
研究課題/領域番号:17659469 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
尾崎 敏文, 国定 俊之
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
昨年度はChIp(Chromatin Immuno-Precipitation)-CGH(comparative genomic hybridization)法の条件を元に、ChIp-CGHの条件および精度を確認するため、滑膜肉腫細胞株SYO-1を用いて実験を行った。SYO-1細胞にヒストンアセチル化阻害剤FK228を投与し、ヒストンのアセチル化を誘導し、ChIp-CGH法でヒストンアセチル化の検出を行えるか検証した。
本年度は、ヒストンのアセチル化の状態をより詳細に検出するためにマイクロアレイを用いて、アレイCGHを行った。ChIp-CGH法で用いたDNAを用いて、DOP-PCR法を用いてDNAの増幅を行った後、Cydyeにて蛍光標識し(ChIp DNA とInput DNA)、Operon社製OpArrayにハイブリダイズさせた。その後Agilent DNA Microarray Scannerで取り込み後、Feature Extraction Softwareを用いて数値化した。Log ratio+/-2.0以上をgain(高アセチル化)、loss(低アセチル化)と判定した。
アレイCGHでの結果は、ChIp-CGH法の結果と異なる傾向にあった。ChIp-CGH法ではメタファーゼ上で全染色体を網羅的に検索可能であるが、アレイCGHではすべての領域を網羅していないためと考えられる。そのため、ChIp-CGH法で検出された領域を選択したカスタムアレイを選択するべきである。
ChIp-CGH法を用いてヒストンアセチル化領域の検出が可能であった、しかし検出感度の問題があり、遺伝子を特定するには至らない。そのため、より詳細に遺伝子を検出するためには、特定した領域のデレイCGHを行うべきである。 -
骨軟部肉腫における人種差と染色体不安定性の研究
研究課題/領域番号:14370464 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
尾崎 敏文
配分額:13600000円 ( 直接経費:13600000円 )
Ewing腫瘍(ET)18例を用いて、CGH法によりDNAコピー数の変化を検討した。それらの結果をヨーロッパ症例での結果と比較検討した。まず、13例中12例のEwing肉腫でEWSexon7とFLIlexon6の融合遺伝子が検出されたが、ヨーロッパ症例では62例中31例が同タイプの融合遺伝子を有していた(p=0.005)。CGHで検出できた変異数の中央値は日欧の症例間で差は無かった。日本症例でgainは8q、8p、12qに多く、ヨーロッパ症例でも同じ傾向が認められた。日本症例でlossは19q、19p、17pに多く、ヨーロッパ症例でも16q、19q、17qに多かった。日本症例のatypical ET1例にのみ、1p33-34(L-MYC)に著明な遺伝子増幅が認められた。滑膜肉腫14症例に対しCGH法を行い、その染色体不安定性を解析した。14例中10例(71%)に遺伝子変異が認められ、更にgain(平均4.4個)はloss(平均0.9個)よりも頻繁に認められた。高頻度に認められたgainは12q15(5例)、12q22(5例)、12q24.3(5例)に存在し、lossは3p14(2例)、6q(2例)にあった。High-level gainは12q15、12q22、12q24.3に認められた。12q15(p=0.021)、12q22(p=0.021)gainは、二相型よりも単相型に有意に多く認められた。単相型は二相型と比較して、平均変異数とhigh-level gain数ともに多く、予後も不良であった。3q32、4q26-qter、5p、5q14-q23、11pのgainと1p33-pter、3p21、11q12、16p、17p、22qのlossがヨーロッパ症例群に多く、12q15と12q22のgainが日本症例群に多く認められた。
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自己硬化型細胞制御膜による骨組織再生と癒着防止に関する検討
研究課題/領域番号:12470310 2000年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
井上 一, 尾崎 敏文, 原田 良昭, 石川 邦夫, 川井 章, 竹内 一裕
配分額:14200000円 ( 直接経費:14200000円 )
本研究は、アルジネート膜が、癒着防止作用を有する細胞遮断膜の機能としての有用性を検討したものである。
まず、in vivoの実験として、ラットの背側の傍脊柱筋挫滅創における癒着防止効果について検討した。アルジネート膜は十分な創の被覆がなされ、創治癒期間における炎症は軽度であり、異物巨細胞による吸収を経て、良好な創のremodellingが確認された。アルジネート膜の吸収のコントロールを想定し、ステロイドの添加を試みると、急性期の炎症細胞浸潤については、ステロイド添加群では、やや軽減されているようである。次に、ビーグル犬での椎弓切除による神経周囲の癒着防止効果を検討した。短期の経過観察結果は、先の実験結果と同様であったが、長期の観察によると、アルジネート膜群では、癒着が少なく良好な結果を示したものが多かったものの、対照群と大差ない例もあった。当初アルジネート膜吸収期間の差による影響を考えていたが、ステロイド添加効果についても、中長期ではあまり明瞭な違いは認めていない
in vitro実験のLynda F. Bonewaldより提供された骨細胞cell line (MLO-Y4)に対するアルジネート膜の影響は、アルジネート膜上に播種した細胞では、顕微鏡下には骨細胞樹状突起の伸展は少なく細胞遮断膜効果を支持する。また骨特異蛋白(ALPおよびオステオカルシン)合成には、対照群との有意な変化を認めず、アルジネート膜による細胞障害性は認めていない。
以上、アルジネート膜は優れた空間占拠能を有しており、創修復機転において癒着防止作用を有する細胞遮断膜として有用性が確かめられた。将来的には臨床応用可能な人工材料のひとつと考える。アルジネート膜の細胞障害性についても、他分野での応用例のあることや本研究での細胞レベルでの評価では認められていない。