共同研究・競争的資金等の研究 - 石野 宏和
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B中間子のFCNC崩壊過程における混合に起因するCP非保存の研究
研究課題/領域番号:16340069 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
渡邊 靖志, 石野 宏和
配分額:16400000円 ( 直接経費:16400000円 )
本研究の目的は、B中間子のFCNC(Flavor Changing Neutral Current)崩壊過程に注目し、いろいろな崩壊モードにおいてCP非対称性を測定し、標準理論の予言値と比較することによって標準理論を超える理論に迫ることであった。FCNC崩壊過程ではループダイヤグラムが支配的であることから、標準理論を超える粒子等の寄与に敏感であり、その寄与はCP非保存パラメータを大きく変える可能性が高い。その比較のためには、まずCP非保存パラメータを標準崩壊モードで精度良く測定しておく必要がある。本研究では、まずCP非保存パラメータφ2をB→π+π-、ρπ、ρρの崩壊モードを解析して精度よく測定することに集中した。そして約10%の精度で求めることに成功した。95%信頼度で決定したその値(97±11)°は、標準理論の小林・益川機構によるものと矛盾しないものだった。しかしながら、FCNC崩壊過程での測定については、本研究グループとしては十分解析できるまでには至れなかったことは残念である。しかしながら、Belleグループの他の研究グループと共同でそれらの解析に間接的に関わり、議論や論文化を通じて貢献した。
素粒子物理学における標準理論は1970年代半ばに定式化された。自然界に存在する4つの力のうち重力を除く3つの力を記述する強力で美しい理論である。CP非保存については、1973年に提唱された小林・益川機構により自然に標準理論の枠組みに組み込まれた。しかし、その実験的検証は困難であった。1999年から稼働を始めたKEKB加速器は世界一の輝度を誇り、Belle実験は現在まで順調にルミノシティを溜めて800fb-1に達し本研究のような検証を可能にした。 -
Bファクトリーを用いた質量起源の探求
研究課題/領域番号:14046101 2002年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
相原 博昭, 羽澄 昌史, 石野 宏和, 角野 秀一, 岩崎 昌子, 幅 淳二
配分額:200900000円 ( 直接経費:200900000円 )
1)bクォークのsクォークを含む終状態へ崩壊する過程である、3億8千6百万のB・反B中間子対から、B中間子がファイ中間子とKs6中間子、およびイータプライム中間子とKs中間子とに崩壊する反応を選び出し、それらのCP非対称を測定した。その結果、それらのCP非対称度の値が標準理論から期待される値からずれている可能性を得た。この結果は、標準理論を超える新しい物理につながる可能性があり、より一層の統計精度の向上が望まれる。
2)B中間子が荷電パイ中間子対に崩壊する過程のCP非対称の測定の統計精度を高め、直接的CP対称性の破れについての信頼度を高めた。2億7千5百万のB・反B中間子対の解析から得られた直接的CP非対称の大きさA=0.56+-0.12+-0.06は、この反応における直接的CPの破れを4σの統計的有意さで示している。
3)B中間子がストレンジネスを含むハドロンとレプトン対(電子・陽電子またはミューオン・反ミューオン)へ崩壊する電弱崩壊の精密測定を進めた。1億5千2百万のB・反B中間子対を解析することによって、その分岐比を(4.11+-0.83+0.85-0.81)×10^<-6>と決定した。この値を使って、いくつかの超対称性モデルに制限を与えることができる。さらに、B中間子がK*中間子とレプトン対に崩壊する反応のレプトンの角分布を測定し、角分布に前方後方非対称があることを世界で初めて示した。また、反応のWilson係数を決定し、新物理のモデルにも制限を与えた。 -
研究課題/領域番号:13740148 2001年04月 - 2003年03月
日本学術振興会 科学研究費 若手研究(B)
石野 宏和
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
B中間子を用いて物質と反物質の非対称性(CP非保存)を研究する実験(Belle実験)において、バックグランドをより多く落しB中間子のデータを効率良く取得するトリガーを開発中である。
平成15年度夏にBelle実験では新しいシリコンバーテックス検出器(SVD)を導入する予定である。新しいSVDは現行SVDに比べてシリコン検出器ストリップからのシグナルを直接波高弁別器にいれる機能を持っている。B中間子はある特定の位置範囲(4cm程度)のみに生成されるが、バックグランドは広範な範囲(20cm程度)から生成されるので、波高弁別器のアウトプットと検出器の位置の組合せにより、ある事象の生成位置を精度良く(2,3cm程度)しかも事象発生直後(長くても1μ秒以下)に求めることができる。
今年度は、次期SVDの組み立て、読みだし回路の開発をほぼ終えて、トリガーシグナルを生成するチップ(VA1TAチップ)の性能評価を行なった。VA1TAチップは内部に多数のパラメータ(プリアンプのシェーピングタイム、シェイパーバイアス、グローバル閾値等約10種類)を持っている。我々はそれらのパラメータを動かしてトリガー生成に最適な条件を見つけ出すのに多大な時間を費やした。思考錯誤の上、安定に動作できる閾値を約8000電子強(シリコン検出器を荷電粒子が通り抜けるときに生成する電子・ホールペアー数の平均の約1/3に相当する)まで下げることができた。この閾値はトリガー生成には十分に低い値である。また、β線をシリコン検出器にあててトリガー効率の測定を行なった。その結果期待通り90%以上の効率を得る事がわかった。今後はこれらのトリガー信号を組み合わせて事象位置を素早く求めるロジックの開発を行なう。 -
CP非保存パラメータφ_2の測定
研究課題/領域番号:13440074 2001年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
渡邊 靖志, 石野 宏和, 鈴木 聡
配分額:13200000円 ( 直接経費:13200000円 )
本研究では,CP非保存パラメータφ_2の測定を目指していろいろな崩壊モードを解析した。実験は,つくばのBファクトリー加速器KEKBとBelle粒子検出器を用いて行った。KEKB加速器はデザインルミノシティ10^<34>cm^<-2>s^<-1>を2003年5月に達成し、その後も順調に記録を塗り替え、現在も世界一のルミノシティを誇っている。Belle実験は、2003年夏にシリコンバーテックス検出器を無事アップグレードし、現在さらにデータを蓄積中である。
本研究課題であるφ_2測定については、B^0(反B^0)中間子がπ^+π^-に崩壊するモードの統計を、2002年夏までの78fb^<-1>からほぼ4倍の253fb^<-1>(2004年夏現在)に増やし、CP非対称パラメータであるA_<ππ>とS_<ππ>について、次の結果を得た。
A_<ππ>=+0.56±0.12(統計)±0.06(系統)、S_<ππ>=-0.67±0.16(統計)±0.06(系統)
すなわち、J/ψK崩壊モードでのCP非保存の発見に続いてこの崩壊モードでもCP非保存を確認するとともに、A_<ππ>が有意に0から離れていることから、初めて直接的CPの破れを強く示唆する重要な結果を得た(>4σ)。同時に所期の目的φ_2の測定についても、アイソスピンの関係などを用いてその領域を制限することができた。この結果が他の間接的な総合結果と一致することから、標準理論の要めである小林・益川機構の正しさを支持する結果であると言える。
当グループは、上記の解析を主体的に行うとともに、φ_2の測定に向けてa_1πの崩壊モードを探索し,まずは分岐比を測定することができた。また,購入した計算機ファームをフル回転して大量のモンテカルロデータを分担生成した。さらに,崩壊粒子の親がB^0中間子なのか,それとも反B^0中間子なのかを高い効率で判定する方法,および,コンティニュームをさらに効率よく抑制するさらに改善された方法を考案するなど、全体の解析にも貢献した。ハード面では、アップグレードされたバーテックス検出器において、初めてその信号をトリガーに組み込む作業、および,その性能向上等でも大きく貢献した。 -
つくば・神岡間長基線ニュートリノ振動実験におけるニュートリノの質量の研究
研究課題/領域番号:99J00222 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
石野 宏和
配分額:1500000円 ( 直接経費:1500000円 )
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スーパー神岡実験における過去の超新星爆発で生じた残在ニュートリノの研究
研究課題/領域番号:97J07355 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
石野 宏和
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )