共同研究・競争的資金等の研究 - 鵜殿 平一郎
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メトホルミンとファスティング併用による腫瘍微小環境改変に関する研究
研究課題/領域番号:21K19409 2021年07月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
鵜殿 平一郎
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
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心血管メカノセンサーTRPV2の低酸素誘発性肺高血圧症への関与解明と治療法開発
研究課題/領域番号:21K08108 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
中村 一文, 鵜殿 平一郎, 片野坂 友紀, 赤木 達
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
持続的な低酸素症は肺血管収縮を引き起こし、肺血管リモデリングや肺高血圧症(PH)の原因となる。しかし、血管収縮が血管リモデリングにつながる正確なメカニズムはまだ解明されていない。TRPV2は、Ca2+透過性カチオンチャネルであり、血管平滑筋の膜伸張に応答するメカノセンサーである。本研究の目的は、低酸素誘発性PHの発症における血管平滑筋のTRPV2の役割を明らかにすることである。血管平滑筋特異的 TRPV2 欠損マウス(smTRPV2-/-)を作製したところ、定量的PCRにより、smTRPV2-/-マウスから分離した肺動脈平滑筋細胞においてTRPV2が欠損していることが明らかとなった。フロックスコントロール(smTRPV2flox/flox)マウスとsmTRPV2-/-マウスを低酸素および正常酸素に5週間曝露したところ、低酸素によるPHはsmTRPV2-/-マウスではsmTRPV2flox/floxマウスと比較して有意に改善された。低酸素による肺動脈の完全筋肉化の割合は、smTRPV2-/-マウスはsmTRPV2flox/floxマウスに比べ有意に低かった。MTTアッセイにより、低酸素はsmTRPV2flox/floxマウスおよびsmTRPV2-/-マウスの両方の培養肺動脈平滑筋細胞の増殖を促進することが明らかになった。しかし、smTRPV2-/-PASMCsの低酸素による増殖率は、smTRPV2 flox/flox -肺動脈平滑筋細胞のそれよりも有意に小さかった。上記よりTRPV2は、肺動脈平滑筋細胞の不適切な増加とともに、低酸素によるPHの発症に重要な役割を担っていることがわかった(本結果を2021年、2022年日本循環器学術集会において発表した)。
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腫瘍と免疫細胞の対峙を代謝で読み解く腫瘍微小環境研究
研究課題/領域番号:18H04033 2018年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
鵜殿 平一郎, 城口 克之, 菱木 貴子, 久保 亜紀子
配分額:43810000円 ( 直接経費:33700000円 、 間接経費:10110000円 )
腫瘍が退縮する際のCD8TILsとがん細胞の代謝バランス変動と、シグナル分子変動をさらに解析するために以下のように実験を行った。
A)メトホルミンあるいは抗PD-1抗体との併用における腫瘍免疫応答に際し、Nrf2 コンデイショナルKOマウス及びp62コンデイショナルKOマウスにおけるCD8TILsのmTORC1活性化の有無、オートファジーとの関係、解糖系(Glut-1発現)との関係につき、明らかにした。上記2種類の遺伝子改変マウスでは、CD8TILsにおいてmTORC1活性化の消失(pS6リン低下)、オートファジー機能の消失(LC3B発現低下)、細胞増殖の消失(Ki67発現低下)が認められた。また、Glut-1の発現は、p62KOのCD8TILsにおいてのみ観察された。
B)腫瘍とそれを取り巻く細胞の代謝・レドックスバランスの解析。In situ 代謝解析を用いた腫瘍微小環境のレドックスおよび代謝状態の解析で本番の実験を行う。マウス腫瘍片、リンパ節、脾臓、肝臓の試料は岡山大学で作成しスライド切片にした後に、研究分担者の久保と菱木(慶應義塾大学)に送付して質量分析解析とイメージングを行った。各種代謝産物(解糖系、TCAサイクル、酸化的リン酸化)およびメトホルミン濃度を測定することができた。
C)RNAseqによる遺伝子発現解析とそれを基にしたトランスクリプトーム解析を行った。未治療、メトホルミン単独、抗PD-1抗体単独、両者の併用の4群でそれぞれCD8TILsおよび腫瘍細胞をFACSソート回収しそれらの遺伝子発現を RNAseq 法を用いて解析した。その結果、メトホルミンと抗PD-1抗体の併用により生まれる相乗効果のメカニズムについて明らかにすることができた。 -
研究課題/領域番号:17K19598 2017年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
鵜殿 平一郎
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
2型糖尿病治療薬メトホルミン(Met)と抗PD-1抗体の併用効果のメカニズムについて解析を行った。Met投与によりCD8TILsはROS依存性に解糖系が亢進し、さらにNrf2依存性にmTORC1が活性化されて細胞増殖を起こすことを明らかにした。抗PD-1抗体はさらに解糖系を亢進させ、Nrf2とmTORC1をさらに上昇させて細胞増殖を促し、抗腫瘍免疫応答を底上げする。Nrf2コンディショナルKOマウスではMetおよびMetと抗PD-1抗体の併用効果は消失する。一方、IFNg等のサイトカイン産生は、解糖系のみに依存し、Nrf2とmTORC1の阻害剤ではキャンセルされないことがわかった。
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2型糖尿病薬メトホルミンによる腫瘍内制御性T細胞の機能調節と抗腫瘍効果の解析
研究課題/領域番号:17K15025 2017年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
國定 勇希, 鵜殿 平一郎, 榮川 慎吾
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
2型糖尿病薬メトホルミンが免疫細胞を介した抗腫瘍作用を有することを先行研究で明らかとしていた。本研究により、腫瘍の増大に寄与するといわれている免疫抑制能を持つ制御性T細胞(Regulatory T cell: Treg)への作用を解析した。
マウス腫瘍移植モデルにおいてメトホルミン投与群では腫瘍局所のみのTregの細胞死を誘導し、Tregの機能抑制を生じていることを明らかとした。また、non Treg細胞からTregへの分化・誘導時に、本来であれば脂質代謝優位といわれているTregの代謝を解糖代謝優位に変化させていることを明らかとした。 -
代謝調節薬によるγδT細胞依存的抗マラリア免疫亢進の機構解析
研究課題/領域番号:16K08762 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
都田 真奈, 由井 克之, 鵜殿 平一郎
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
世界三大感染症の一つあるマラリア感染症では免疫が減弱され、免疫記憶ができにくいことが知られている。今のところ、抗マラリア免疫を増強する手段は明らかではない。本研究では、経口糖尿病治療薬メトホルミンの新たな効能として抗寄生虫防御免疫増強作用を発見し、その機序を解析した。マウスモデルを用いた研究により、メトホルミンはγδT細胞の糖代謝に影響を及ぼさないが、S6蛋白質のリン酸化を維持し、その増殖を促すことを明らかにした。これにより、メトホルミンの免疫細胞に対する新規の作用機序を示すことができた。
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骨軟部肉腫における新規免疫機能解析システムと新規免疫治療の開発
研究課題/領域番号:16K15666 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
尾崎 敏文, 榮川 伸吾, 長谷井 嬢, 上原 健敬, 鵜殿 平一郎, 藤原 智洋
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
本研究ではマウス骨肉腫モデルにおいて,CD11b陽性の免疫細胞主体の抗腫瘍免疫機構の存在が明らかとなった.また,CD8TILs, Tregと同様に骨髄球系細胞においてもメトホルミンが細胞内代謝を制御することで抗腫瘍効果を惹起することが示され,それは細胞内における嫌気的解糖の促進によるものであった.先行研究と合わせると腫瘍微小環境においてメトホルミンがT cells, CD11b陽性細胞の双方で同様に嫌気的解糖を促進しており,腫瘍微小環境におけるglucoseの代謝制御が抗腫瘍免疫と密接に関連していることが示唆された.
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レジオネラ肺炎の感染ステージ別にみたIL-17Fの分子動態解析
研究課題/領域番号:26860618 2014年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
梶原 千晶, 鵜殿 平一郎
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
野生型マウス、IL-17A欠損マウス、IL-17F欠損マウス、IL-17AF欠損マウスでレジオネラ感染における生存率を比較したところ、野生型マウス群に比べてIL-17AF欠損マウス群で有意に生存率が低下した。
この時IL-17A欠損マウスにおいて、感染後IL-17Fが過剰産生されることから、IL-17Aと同様にIL-17Fもレジオネラ感染防御に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、IL-17Fは感染急性期において、自然リンパ球であるガンマデルタ(γδ)T細胞から主に産生されることがわかった。 -
研究課題/領域番号:26290056 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
鵜殿 平一郎, 榮川 伸吾
配分額:16640000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:3840000円 )
2型糖尿病薬メトホルミンの服用により、発癌率・癌死亡率が低下するという報告があるが、そのメカニズムは不明であった。本研究では、メトホルミンの抗腫瘍効果が免疫、特にCD8T細胞(キラーT細胞)を介して行われることを明らかにした。通常、腫瘍内のキラーT細胞は疲弊し、その機能は消失している。メトホルミンはキラーT細胞の代謝、特に解糖系を高めて癌細胞を殺傷する機能を復活させることにより抗癌作用を付与していた。
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研究課題/領域番号:26670237 2014年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
鵜殿 平一郎
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
CD8TILの解糖系の亢進が判明した。また、ナイーヴCD8T細胞のin vitro刺激誘導系において、メトホルミン処理により解糖系及び酸化的リン酸化の双方が亢進した。一方で腸内フローラはメトホルミン服用で大きく変動しなかった。腫瘍浸潤Tregの数の優位な減少を認めた。ナイーヴCD4T細胞のin vitro 刺激によるiTreg誘導実験でメトホルミン処理により誘導効率が低下した。さらに、腫瘍浸潤MDSCの数の優位な減少、とりわけG-タイプMDSCの減少が顕著であった。また、マクロファージではM1/M2比の上昇が認められた。以上、メトホルミンによる腫瘍微小環境の改変が明確になった。
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研究課題/領域番号:22501027 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
鵜殿 平一郎, 今井 孝
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
クロスプレゼンテーションにおける Hsp90α研究 がん抗原やウイルス抗原をキラーT 細胞が認識するためには、樹状細胞がウイルス感染細胞などの抗原を貪食し、エンドソーム内の抗原が細胞質へ引き出され、プロテアソームで分解されて抗原ペプチドになることが重要である。しかし、抗原が細胞質へ移動する機構は不明である。我々は、Hsp90α欠損マウスを作製し、熱ショックタンパク質 Hsp90がエンドソーム中の抗原を細胞質へ移動させるのに必須であることを明らかにした。
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シヤペロンによる再構築されたプロテアソームの構造機能解析
研究課題/領域番号:17659143 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
鵜殿 平一郎
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
分子シャペロンhsp90αを用いて、任意の細胞抽出液より26Sプロテアソームをin vitro構築することが可能である事を明らかにし、その構造及び機能の解析を行った。その結果以下の事が明らかになった。
1、ヒスチジンタグ-hsp90αをATP存在下の細胞抽出液に加えイミダゾールで回収する事により、26Sプロテアソーム及びハイブリッドプロテアソームが得られた。これらのプロテアソームは特異的基質であるsuc-LLVY-amcを加水分解した。またこの分子複合体は、hsp90の特異的阻害剤であるゲルダナマイシン処理により構造が破壊された。即ち、これらのプロテアソームの構築とその維持にhsp90αが重要な役割を果たしていることが推察された。
2、ヒスチジンタグ-hsp90αをATP非存在下の細胞抽出液に加える事により、hsp90α-20Sプロテアソームを構築する事ができた。このプロテアソーム複合体は、特異的基質であるsuc-LLVY-amcに対する加水分解活性を示さないが、MHCクラスIペプチドをフランキングを含む合成ペプチドから切り出す事ができた。また、この分子複合体の中には、hsc70,hsp40,p23,CHIPなどのシャペロン或はコシャペロン分子が会合していた。この分子複合体をさらにATP処理するとhsp40,p23,CHIPは遊離し最後にhsp90α/hsc70/20Sのみからなる複合体が得られた。hsp90α/hsc70/20Sは同様に合成ペプチドを切断する事ができた。一方、シャペロンの会合しない20Sのみの構造ではMHCクラスIペプチドを切り出す事は出来なかった。この結果は新規のプロテアソームの存在を示唆するが、生理学的にそのような構造のプロテアソームが細胞内に存在するか否かについてはさらなる検討が必要と考えられた。 -
ヒト癌組織における抗原ペプチド産生能に関する基礎的研究
研究課題/領域番号:17016081 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
鵜殿 平一郎
配分額:7800000円 ( 直接経費:7800000円 )
微量のヒト癌組織からオーダーメイドにプロテアソームを分離精製する事を可能にした。
1,リコンビナント-ヒトhsp90α、の発現・精製を行った。
2,2例のヒト癌組織からのライセートの調整およびプロテアソームのin vitroアッセンブリ;大腸癌及び周囲の正常組織約0.1〜0.6cm^3から細胞ライセートを作製し、hsp90αを加えて、プロテアソームのアッセンブリを行った。
3,アッセンブリされたプロテアソームの精製系の確立;1、におけるリコンビナント蛋白は全て6xヒスチジンタグをそのN末側にもつ。Ni^<2+>アガロースでpull downし、これをnative-PAGEで分離しsuc-LLVY-amc及びboc-LRR-amcの加水分解活性を指標に活性を検出した(In-Gel hydrolysis assay)。
4,native-PAGEゲルをニトロセルロース膜に転写し、特異的抗体を用いてプロテアソームの構造解析を行った。
結果)0.1cm^3ほどのヒト癌組織又はその周囲の正常組織より酵素活性を有したプロテアソームを再構成し、分離精製できた。得られたプロテアソームはハイブリッド型とホモPA28型が主体であり、キモトリプシン様活性を有していた。しかし、トリプシン様活性は正常組織より回収したホモPA28型プロテアソームで極めて高いのに対し、癌からの活性は微弱であった。また、品質管理E3ユビキチンリガーゼと呼ばれるCHIPが両方の組織のホモPA28型プロテアソームに会合していた。20Sコアについては、正常組織ではXタイプ優位のスタンダード型が、癌組織では免疫プロテアソームのタイプが優位であった。以上より極微量(〜0.1cm^3)の凍結癌組織からhsp90αを用いてプロテアソーム再構成を促し、精製分離できることが明らかにされた。これらのプロテアソームを用いて癌ペプチド前駆体の切断実験が可能と判断された。 -
ストレス蛋白によるエピトープ型癌ワクチンの増強効果
研究課題/領域番号:16591263 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
永田 康浩, 鵜殿 平一郎, 兼松 隆之, 松尾 光敏
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
ストレス蛋白は、内在性ペプチドを効率よく抗原提示細胞のHLAクラスI上に提示することで抗腫瘍効果を示すと考えられている。本研究では、癌抗原ペプチドがストレス蛋白によって効率良く樹状細胞のHLAクラスI上に提示されるメカニズムを明らかにし,さらに特異的T細胞を誘導することで新たな癌ワクチンの開発基盤を築く。
1.NY-ESO-1抗原決定基とhsc70の融合蛋白の作製
健常人末梢血からtotal RNAを抽出した。RNAからRT-PCRによりhsc70のcDNAを得た。5'末端および3'末端のどちらか一方にNY-ESO-1の抗原決定基を含むプライマーを用いてcDNAを増幅し、NY-ESO-1とhsc70の融合遺伝子を作成した。融合遺伝子を発現ベクター(pQE31)に組み込み、さらに大腸菌に導入しNY-ESO-1とhsc70の融合蛋白を発現させた。融合蛋白は菌体を破砕して抽出した後、さらに核酸・エンドトキシン除去剤を用いて精製を行った。
2.抗原提示細胞(樹状細胞)の誘導
樹状細胞は、健常人末梢血単核球から単球を分離し、IL-4、GM-CSF存在下で5日間培養して誘導した。誘導された樹状細胞はフローサイトメトリーにより未成熟であることを確認した。
3.抗原提示能の確認
NY-ESO-1とhsc70の融合蛋白を用いて樹状細胞を感作した。さらに、感作された樹状細胞をNY-ESO-1抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)と培養し、CTLからのIFNγ産生をELISPOT assayにより確認した。
4.樹状細胞の性状についての検討
各健常人末梢血単核球から分離・培養された樹状細胞をNY-ESO-1とhsc70の融合蛋白で刺激し、産生されるサイトカイン(IL-10,12)濃度をELISA法にて測定した。この結果、免疫治療においてどのような樹状細胞が抗原提示細胞に適しているかを検討した。 -
癌免疫におけるプロテアソーム活性化分子群の研究
研究課題/領域番号:16023250 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
鵜殿 平一郎
配分額:5900000円 ( 直接経費:5900000円 )
MHCクラスI抗原プロセシングにおける、PA28,hsp90,hsp70の機能を解析した。まず、PA28 hsp90,hsp70とプロテアソームがどのような関係にあるのかを構造解析を通して検討した。Hsp90,hsp70はプロテアソームと複合体を形成しうるが、その際のATP濃度がどちらのシャペロンが結合するかを決定しているらしい事実を見つけた。また、PA28はATP濃度が低いときにはフットボール型プロテアソーム或はhsp70結合型ハイブリッドプロテアソームとして存在するが、ATP濃度が高いときにはhsp90結合型ハイブリッドプロテアソームとして存在しうるらしい事を明らかにした。即ちプロテアソーム複合体の存在様式は同一細胞内であっても非常に動的である。また、リコンビナントhsp90及びPA28αによりプロテアソーム複合体を細胞ライセートからプルダウンすることに成功した。ATP存在下でHsp90によりプルダウンされるプロテアソームは26Sタイプとハイブリッドプロテアソームであり、一方、PA28αによるプロテアソームではATP非存在下ではフットボール型が主であり、ATP存在下ではハイブリッドプロテアソームが得られる。これらの複合体のSuc-LLVY-amc加水分解活性を確認後、合成ペプチドTRP2180-193(TRP2180-188がエピトープ),CSP277-294(CSP281-289がエピトープ)とインキュベーションし、ペプチドの切断実験を行った。その結果、TRP2180-188産生にはPA28が必須であり、CSP281-289の産生にはhsp90が必須であった。これは、我々が以前にin vivoの実験で明らかにしてきた現象の分子機構を説明したものと解釈できる。
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パーフォリン遺伝子の細胞系列特異的発現機構の解析
研究課題/領域番号:15591013 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
宮崎 泰司, 鵜殿 平一郎
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
MEFは、ETSファミリーに属する転写因子で、遺伝子破壊マウスの実験よりNK細胞におけるパーフォリン遺伝子発現に必須であるが、T細胞ではMEFを欠いていてもパーフォリン遺伝子が発現することがわかっている。これを解明するためにMEFと結合する蛋白質を同定すべくTandem Affinity Purification (TAP)法に引き続いて質量分析法を実施した。293T細胞にTAPベクターに組み込んだMEFを導入し、角蛋白質を抽出した後、アフィニティーカラムを用いて2段階の精製を行った。繰り返しの実験でSDS-PAGE上、同じパターンの蛋白質が得られ、還元・アルキル化の条件の下でそれらを質量分析によって解析した。その結果以下の蛋白質がMEF結合蛋白質として同定された。すなわち、(1)Myb binding protein1,(2)nucleolin,(3)MEF,(4)RNA helicase,(5)vimentin, (6)nucleophosminである。この中で(1)は転写制御蛋白との相互作用が報告されており、また(2)、(6)はいずれも核-細胞質間の蛋白輸送に関与すると報告され、幾つかの転写因子の活性を制御することが知られている。又、(6)は白血病での異常が報告され、化学療法感受性とも関連も指摘された。さらに、MEF結合蛋白質の対象としてMEF自身が同定されていることより、二量体としてのMEFの転写活性作用も予想される。現在、これらのcDNAをPCR法を用いてクローニングし、個々の蛋白質についてMEFとの相互作用を検討中である。
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MHC多様性と抗原提示における分子シャペロンの機能解析に基づく癌免疫治療研究
研究課題/領域番号:15025259 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
鵜殿 平一郎
配分額:5900000円 ( 直接経費:5900000円 )
細胞内シャペロン分子、とりわけストレス蛋白Hsp90、hsp70、hsp40の内在性抗原プロセッシングにおける機能について解析を行った。また、プロテアソーム活性化分子PA28α分子の機能もそのドミナントーネガテイブ分子を用いて解析を行った。同研究は現在も進行中であるが、期問内に明らかになった事項を下に列記する。
1、Hsp90はPA28分子と同様、MHCクラスI抗原ペプチドのCOOH末flanking部位を、20Sプロテアソームを活性化することにより促進している。
2、Hsp70はhsp40の存在下に20Sプロテアソームを活性化し、hsp90と同様にMHCクラスII抗原ペプチドのプロセッシングに関与することが明らかになった。
3、PA28分子は、多くの場合MHCクラスI抗原ペプチドのプロセッシングを促進するが、マウスではK^d, D^d結合性ペプチドの産生にはむしろネガテイブに作用することが明らかになった。これはヒト、特に日本人に多いHLA-A2結合性ペプチドにも当てはまると考えられる。この理由は、これらのMHCクラスI分子結合ペプチドのアンカーアミノ酸の存在により、ペプチドが20Sプロテアソームによりエピトープ内で切断されやすくなるためと推測された。一方hsp90による抗原ペプチドのプロセッシングはMHCアレルとの相関関係は認められなかった。
4、Hsp90,hsp70/hsp40が20Sプロテアソームを直接活性化できるのかどうかが今後in vitroの実験系で確認しなければならない事項と考えられる。 -
抗原プロセッシングにおけるhsp90、PA28の機能解析
研究課題/領域番号:14657058 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
鵜殿 平一郎, 由井 克之
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
細胞内シャペロン分子、とりわけストレス蛋白Hsp90、hsp70、hsp40の内在性抗原プロセッシングにおける機能について解析を行った。また、プロテアソーム活性化分子PA28α分子の機能もそのドミナントーネガテイブ分子を用いて解析を行った。同研究は現在も進行中であるが、期間内に明らかになった事項を下に列記する。
1、Hsp90はPA28分子と同様、MHCクラスI抗原ペプチドのC00H末flanking部位を、20Sプロテアソームを活性化することにより促進している。
2、Hsp70はhsp40の存在下に20Sプロテアソームを活性化し、hsp90と同様にMHCクラスI抗原ペプチドのプロセッシングに関与することが明らかになった。また、Hsp40ドミナントーネガテイブ分子は内在性抗原プロセッシングを抑制する。
3、PA28分子は、多くの場合MHCクラスI抗原ペプチドのプロセッシングを促進するが、マウスではK^d,D^d結合性ペプチドの産生にはむしろネガテイブに作用することが明らかになった。これはヒト、特に日本人に多いHLA-A2結合性ペプチドにも当てはまると考えられる。一方hsp90による抗原ペプチドのプロセッシングはMHCアレルとの相関関係は認められなかった。
4、Hsp90,hsp70/hsp40が20Sプロテアソームを直接活性化できるのかどうかが今後in vitroの実験系で確認しなければならない事項と考えられる。 -
ストレス蛋白-ヒト癌抗原ペプチド融合蛋白を用いた癌ワクチンの開発
研究課題/領域番号:14571146 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
永田 康浩, 兼松 隆之, 鵜殿 平一郎
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
ストレス蛋白hsc70の抗腫瘍効果についてはこれまで須藤,鵜殿,Srivastavaらにより動物モデル(マウス)において示されてきた.近年,hsc70特異的受容体が同定され,hsc70に関わる抗原提示のメカニズムが明らかにされつつある.それにともないhsc70を用いた癌ワクチンの臨床応用に対する期待が高まっている.しかしこれまでの研究の多くがマウスにおけるものであり,ヒトの癌抗原システムにおける詳細な解析は行われていない.今回,我々はヒト癌抗原として同定されたNY-ESO-1抗原決定基とhsc70の融合蛋白で抗原提示細胞(樹状細胞)を感作し、NY-ESO-1抗原決定基が樹状細胞のMHC class I上へ提示されることをNY-ESO-1特異的細胞傷害性T細胞によって証明した.
1.癌抗原とhsc70の融合蛋白の作製
健常人末梢血からtotal RNAを抽出した.RNAからRT-PCRによりhsc70のcDNAを得た.5'末端および3'末端のどちらか一方にNY-ESO-1の抗原決定基を含むプライマーを用いてcDNAを増幅し,NY-ESO-1とhsc70の融合遺伝子を作製した.融合遺伝子を発現ベクター(pQE31)に組み込み.さらに大腸菌(M15株)に導入しNY-ESO-1とhsc70の融合蛋白を発現させた.融合蛋白は菌体を破砕して抽出した後,さらに核酸・エンドトキシン除去(Kurimover)も併用して精製を行った.
2.抗原提示細胞(樹状細胞)の誘導
樹状細胞は,健常人末梢血単核球から単球を分離し,IL-4,GM-CSF存在下(各々1000U/ml)で5日間培養して誘導した.誘導された樹状細胞の細胞表面マーカーはFlow cytometryにより確認した.
3.融合蛋白由来抗原エピトープの提示
NY-ESO-1とhsc70の融合蛋白を用いて抗原提示細胞(樹状細胞)を感作した.さらに,感作された樹状細胞をNY-ESO-1抗原特異的細胞傷害性T細胞(Clone5)と共培養し,Clone5からのIFN-γ産生をELISPOT assayにより確認した.
今後は,樹状細胞上のhsc70特異的受容体の同定を含めた抗原提示経路の解明が必要である. -
ストレス蛋白hsp90,PA28の分子生物学的特性に基づく癌免疫治療研究
研究課題/領域番号:14030067 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
鵜殿 平一郎, 由井 克之
配分額:5500000円 ( 直接経費:5500000円 )
プロテアソーム調節分子PA28は20Sプロテアソームのペプチド分解活性を促進し、癌抗原を初めとする多くの抗原ペプチドのプロセシングを促進すると考えられている。一方、相当数の抗原ペプチドのプロセシングはPA28により促進されないことも報告されている。我々の研究結果はさらに踏み込み、MHCクラスI結合ペプチドのアンカーモチーフ構造がPA28依存性のプロセシングに影響を与える可能性を示唆した。さらには、hsp90がPA28に類似の機能を有することを明らかにし、MHCクラスI抗原のプロセシングがPA28とhsp90のそれぞれ異なる経路に支配されていることが明らかになった。即ち、抗原ペプチドはPA28-、hsp90-、或いはこの両者によってプロセシングされるものに分類され、その大原則にペプチドのアンカーモチーフが関与している。
またPA28α鎖のドミナント-ネガティブ分子(PA28αΔC5)を発見した。PA28αΔC5を含むハイブリッドプロテアソームの酵素活性は完全に消失する。本来PA28-プロテアソーム分子は蛋白分解の酵素であり、抗原提示専門の酵素ではないため、非常にバラエティに富む働きを行っていると考えるのが当然であり、事実、細胞周期及びアポトーシスの制御に関与があることがPA28αΔC5を用いた実験で初めて明らかになった。これらの原因は即ちPA28-プロテアソーム分子により、ある程度選択的に細胞周期関連分子の分解が行われているためであり、その結果アポトーシス制御にも影響を及ぼすということである。
以上の結果は、抗原提示のみならず、癌細胞の増殖、死滅においてもPA28分子が非常に重要な機能を果たす可能性を示唆しており、今後PA28の機能をうまくコントロールすることにより癌治療に大いに貢献できる可能性があると考えられる。