共同研究・競争的資金等の研究 - 小汐 由介
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InP太陽ニュートリノプロトタイプ測定器を用いた制動輻射バックグラウンドの研究
研究課題/領域番号:17340065 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
福田 善之, 森山 茂栄, 塩澤 真人, 小汐 由介
配分額:15980000円 ( 直接経費:15500000円 、 間接経費:480000円 )
住友電気工業製のVCZ法で結晶成長させた半絶縁性InP基板を用いて、7mm×7mm×200μmおよび10mm×10mm×200μmのペルチェ冷却型並びに冷媒冷却型検出器を試作した。ペルチェ型では冷却温度が不安定であったが、ドライアイス冷却では安定し、バイアス電圧500Vにおいて^<57>Coからの122keV、^<133>Baからの81keV、^<241>Amからの60keVのガンマ線を高検出効率で観測可能であった。
その結果、観測電荷量とシミュレーションの比較から、電荷収集効率が100%の光電ピークとともに空乏層外からキャリアがドリフトして電荷収集されたと思われるピークが観測され、後者が圧倒的な観測量となった。エネルギー分解能は、空乏層による100%電荷収集では5%@122keVの性能を得たが、ドリフトして収集したピークでは20%程度であった。また、電子・ホールの生成エネルギーは3.5eVという結果になり、従来の4.2eVより小さい値であることがわかった。また、本検出器を用いて^<115>Inの自然β崩壊スペクトルと、その制動輻射バックグラウンド測定実験を行なった。InP検出器とCsI検出器を対面で配置し、鉛と無酸素銅の遮蔽体内に設置した。InP検出器では10時間の測定より想定数以上の事象が観測され、β事象以外に低エネルギー側に振動によるノイズと10^<-10>g/gという微量ながら^<60>Feによるβ事象が含まれる事がわかった。一方、CsI検出器では100keV以下に50事象程度が観測された。この事象は、CsI中に含まれるU/Th系列の崩壊核がβ線とγ線を同時放出し、γ線はInPでβ線はCsIで観測するシミュレーションが実験結果を再現した。従って、InPからの制動輻射事象は2事象程度と予測する計算結果と合致する結果を得て、制動輻射が影響しないことを確認することができた。 -
キセノンを用いた2重ベータ崩壊探索実験
研究課題/領域番号:16340066 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
森山 茂栄, 小汐 由介, 福田 善幸, 竹内 康雄
配分額:16400000円 ( 直接経費:16400000円 )
ニュートリノが出ない二重ベータ崩壊を観測することにより、ニュートリノの性質を決定するとともに、ニュートリノの絶対質量を測定することが期待されている。本研究の目的は、そのための基礎原理及び技術を開発することにある。本研究では、キセノンに含まれる136Xeが二重ベータ崩壊可能な原子核であるとともに、液体キセノンが良いシンチレーターであることを利用する。特にバックグラウンドを低減するために、常温高圧の液体キセノンを透明な容器にいれ、特殊な光学系で測定することにより、感度の向上を図るものである。ここに含まれる研究開発は、1耐圧アクリル容器の開発、2波長変換材の開発、3常温液体キセノンの発光量測定、4ダブルフォーカス型検出器の開発、5バックグラウンドの見積もり、6プラスチックシンチレータを用いた容器の開発である。
本研究で最も重要であったのが、2の波長変換材および3の常温液体キセノンの発光量である。1については、アクリル容器からの水の放出が問題となるため、(2)で開発する波長変換材等の膜により保護することとなった。2については、興味ある一定の成果が得られた。ポリスチレンの母材に、TPB(テトラフェニルブタジエン)を4%混合させることで、49±4%の変換効率が得られた。この効率とは、液体キセノンの発光である175nmの真空紫外線が入射した場合に、可視光として放出される光子の数の比である。この変換は、液体キセノンの発光よりも早く、発光の信号の時定数は、液体キセノンの発光の時定数との違いは見られなかった。残念ながら、この波長変換材を液体キセノンにいれて測定した場合、波長変換材が液体キセノンにより浸食されることがわかり、効率として20%程度に下がってしまうことがわかった。アクリルの保護の役割や、長期安定性などを含めて、今後研究が必要である。3常温液体キセノンの発光量については、大変面白い結果が得られた。圧力5.57MPaG、摂氏3度における発光量と、圧力0.06MPaG,摂氏-100度における発光量とを比較すると、前者が後者の0.85倍という結果が得られた。両者で光の収集効率が異なる可能性がありその効果を現在見積もり中であるが、常温高圧での液体キセノンの発光量を測定するのはこれまでに無く、重要な進展である。4については、装置を作成したところ、検出器内面の反射率が低いことがわかった。今後測定・改良を続けていく予定である。5、6については、4までの成果の延長上にあるため、今後の課題となった。 -
スーパーカミオカンデ太陽ニュートリノの精密測定によるニュートリノ振動の解の特定
2002年04月 - 2005年03月
若手研究B
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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スーパーカミオカンデ太陽ニュートリノの精密測定によるニュートリノ振動解の特定
研究課題/領域番号:14740152 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
小汐 由介
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
本研究は大型水チェレンコフ検出器スーパーカミオカンデにおいて、太陽ニュートリノを精密に測定し振動解を特定することである。最終年にあたる本年度では、スーパーカミオカンデ検出器のセカンドフェーズのデータを用いた太陽ニュートリノ観測を行った。その結果、478日の稼働時間での^8B太陽ニュートリノフラックスは2.45+(0.08-0.07)x10^6/cm^2/sec、昼夜でのフラックスの違いは0.4+-6.3%で、誤差内での違いは見られなかった。さらに季節変動、ニュートリノスペクトルの理論予想からの歪みに関しても誤差内で見られなかった。これらの結果はファーストフェーズにおける観測結果と一致している。また太陽ニュートリノ振動解の特定において特に重要になるのは、エネルギースペクトルとフラックスの昼夜変動の精密測定である。精度よくそれらを測定するための検出器較正を行った。まずニッケルに中性子を吸わせて出てくるガンマ線を用いた測定を行った。これは特に光電子増倍管の量子効率の光電子増倍管毎の依存性を求めるものである。定期的に同データを取得することにより依存性の時間変動を確認できるが、特に大きな時間変動は見られなかった。またこの線源を用いて発生点較正も行った。その結果、発生点再構成の精度はファーストフェーズと同様であることを示した。さらに、別の光源としてゼノン光源を検出器内に設置し、光電子増倍管の増幅率を継続的なモニタを行った。このモニタにより不調な光電子増倍管を抽出し、データ解析において使用しないようにした。
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インジウムを用いた陽子・陽子核融合反応からの太陽ニュートリノ観測装置の開発
研究課題/領域番号:13440066 2001年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
福田 善之, 森山 茂栄, 太田 忠之, 千葉 芳明, 塩澤 真人, 小汐 由介, 竹内 康雄
配分額:14500000円 ( 直接経費:14500000円 )
平成13年度において米国AXT社よりFeをドープした直径5cmの半絶縁型InP基板を購入し、浜松ホトニクス(株)にプロトタイプ検出器の製作を依頼した。素子の大きさは7mm×7mm×0.5mmで、Cr-AuとAu-Ge/Ni/Auの電極をオーミック接合した。リーク電流特性では、バイアス電圧の正負に拘わらず常温で500Vに対し約40μA、-40℃では100Vに対し0.018μAであった。一方、半導体基板に含有するU/Th系列による放射性バックグランドを評価するため、神岡坑内に設置された低BG用Ge検出器で測定を行い、それぞれ5×10^<-11>および3×10^<-11>g/gの上限値を得た。平成14年度では放射線応答性能を評価するために、α線およびγ線を照射した。バイアス電圧を1kVまで印可した結果、α線の信号は観測されて電荷収集効率(CCE)が約37%を得たが、γ線に関しては信号が得られなかった。そこで、低温による検出器の改善性を測定するために、ペルチェ冷却素子に設置したプロトタイプ検出器を製作した。しかし、冷却時に結露が原因となってスパイク状にノイズが発生し、いずれの放射線も観測できなかった。平成15年においてCCEの改善性を計るために更に高電圧のバイアスを印可するための電源と高ゲイン型の電荷増幅器を購入し、常温型のプロトタイプについて研究した。バイアス電圧を3kVまで印可した結果、γ線に信号を観測することが可能になり、放射線測定器としての性能評価を行った。^<133>Baの356keVの光電ピークや、^<137>Csの662keVγ線のコンプトン分布、更に^<57>Coの122keVγ線の光電ピークの片が観測した結果、キャリアを生成するエネルギーが0.4eVとなり、文献によるInPの電子・ホール対生成エネルギー4.2eVに比べて1/10で電荷が生成している事実を突き止めた。また、この事実はα線の観測でも得ている。プロトタイプ検出器では電離作用による発生した電荷を電場により収集していると考えられ、CCEは80%を達成している。但し、この性能が検出器全面に及んでいないことから、更に研究する必要がある。また、低温時の研究を行うため真空ポンプおよびチャンバーを購入し、開発を継続している。
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太陽ニュートリノの昼夜変動およびエネルギースペクトルの精密測定
2000年04月 - 2002年03月
奨励研究A
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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太陽ニュートリノ振動の精密研究
研究課題/領域番号:12047207 2000年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
鈴木 洋一郎, 小汐 由介, 竹内 康雄, 中畑 雅行, 西嶋 恭司, 宮野 和政
配分額:209400000円 ( 直接経費:209400000円 )
本計画は、^8B太陽ニュートリノを精密に測定することにより、太陽ニュートリノ振動の確実な証拠を捕らえることである。2001年に、スーパーカミオカンデによる太陽ニュートリノ強度による測定とSNOによる測定を比較することにより太陽ニュートリノが確実に振動している証拠が得られた。これにより、本計画の目標のひとつは達成されている。現在、大混合角度解とされている太陽ニュートリノ振動解から予想される昼夜の強度差、そして、わずかなスペクトルの歪みを観測する努力を行っている。スペクトルの歪みを観測するには、観測可能なエネルギー閾値をできる限り下げることである。我々は、当初目標とした4.5MeVまでの太陽ニュートリノ信号の検出に成功した。今後、スペクトル測定の観測感度をあげることにより大角度解であることの確認を行いたい。2%であるといわれている昼夜の強度差に関しては、1.8±1.6%が得られた。これは、振動解から期待される値とコンシステントであるが、まだ、統計的には十分でない。
さて、この重要な太陽ニュートリノ振動を最終決着するには太陽ニュートリノの90%以上を占める低エネルギーのpp-7Be-ニュートリノでニュートリノ振動が確認され、パラメータが精密決定されることが必要である。本研究の第二の目標は、pp-7Be-ニュートリノ観測の測定器の開発を行いその実現可能性を示してゆくことである。これまでの研究結果にもとづき、液体キセノン検出器の開発を行っている。10トンのキセノンを用いることで1日15事象のPP-7Be-ニュートリノが観測できる。本年度は100kgのプロトタイプを製作し、テスト実験を行った。低エネルギー太陽ニュートリノの検出に必要な自己遮蔽能力を実証した。また、別途、キセノン純化装置を製作し、稼動させ、バックグラウンドであるクリプトンを1000分の1にすることに成功した。目的とした開発研究目標はほぼ達成している。総合的に考え、液体キセノン検出器は、低エネルギー太陽ニュートリノの検出装置として使える可能性が十分あるとおもわれる。 -
太陽ニュートリノの昼夜変動及びエネルギースペクトルの精密測定
研究課題/領域番号:12740141 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
小汐 由介
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
本研究は大型水チェレンコフ検出器・スーパーカミオカンデを用いて太陽ニュートリノの観測、特にエネルギースペクトルおよび昼夜変動の精密測定を行う。本年度は新たに計1258日分のスーパーカミオカンデの解析を行った。昨年度に引き続き、本研究の目的である事象の方向を用いた太陽ニュートリノ事象セレクションプログラムを含め、解析精度の向上をおこなった。本解析においては、エネルギー敷居値は5MeV、昼夜変動については特に地球のコア領域を通過したニュートリノを選択的に抽出した。また、電子銃およびγ線源を用いた検出器較正により系統誤差を押さえることができた。太陽ニュートリノのうち、スーパーカミオカンデにおいて一般的に検出される^8Bneutrinoのみならず、高いエネルギー領域のhep neutrinoのフラックスを精密に求めた。以上の結果は、Physical Review Letter誌に発表した。さらに本結果を用いてニュートリノ振動の解析を行った。有力な太陽ニュートリノ振動解のうち、小角度解は95%の信頼度で排除され、さらにLOW解についても、その大部分が排除された。他の太陽ニュートリノ実験の結果を組み合わせて解析を行うと、大角度解が有力となった。以上の結果についても同誌に発表した。
本実験の系統誤差を押さえるためには、特に水の透過率の場所依存性、方向依存性を精度良く求める必要がある。そのために、今年度の検出器メンテナンスの時期に検出器の様々な場所にレーザーシステムを設置した。スーパーカミオカンデが再開した後に装置較正を行う予定である。