共同研究・競争的資金等の研究 - 小汐 由介
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最高強度ビームと精密測定で目指すニュートリノCP対称性の破れの発見
研究課題/領域番号:22H04943 2022年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
坂下 健, 久世 正弘, 中桐 洸太, 松原 綱之, 市川 温子, 木河 達也, 小汐 由介
配分額:190710000円 ( 直接経費:146700000円 、 間接経費:44010000円 )
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スーパーカミオカンデ超新星爆発ニュートリノ観測による爆発天体の早期特定
研究課題/領域番号:21H04989 2021年07月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
中畑 雅行
配分額:198900000円 ( 直接経費:153000000円 、 間接経費:45900000円 )
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超大型水チェレンコフ測定器で挑む超新星背景ニュートリノの発見と宇宙の進化の解明
研究課題/領域番号:20H00162 2020年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
小汐 由介, 中島 康博
配分額:44460000円 ( 直接経費:34200000円 、 間接経費:10260000円 )
大質量の恒星はその一生の最後に超新星爆発を起こす。その際、爆発の99%以上のエネルギーはニュートリノによって宇宙空間にばらまかれる。宇宙に最初の星ができて以来、超新星爆発は約1秒に1回の頻度で絶えず起きており、その都度ニュートリノが宇宙にまき散らされていると考えられている。このニュートリノは超新星背景ニュートリノ(SRN)と呼ばれ、世界中で探索が進められているが、未だ発見には至っていない。世界最大のニュートリノ検出器スーパーカミオカンデ(SK)でSRNを発見するのが本研究の目的である。
2020年度の成果としてはしては、まず13トンの硫酸ガドリニウムをスーパーカミオカンデに導入したことである。ガドリニウムの導入により、SRN解析に対する背景事象を効果的に削減し、感度が劇的に向上する。導入は順調に行われ、約1ヶ月で完了した。導入後のデータから、期待通りの信号が確認でき、検出器も安定して稼働している。
本研究ではSKのデータ解析に加え、加速器を用いた素粒子・原子核反応の精密測定で、SRN発見に最も重要な大気ニュートリノによる背景事象の理解を進める。大気ニュートリノ反応の中でも、ニュートリノと水中の酸素原子核との中性カレント準弾性散乱(NCQE)と呼ばれる反応がSRNによる反応と全く区別がつかないため、この反応を精密に理解することが鍵となる。そこでNCQE 反応を、素性のよくわかったニュートリノビームを同じSK検出器で捉えるT2K実験で測定する。2020年度末からはT2K実験のデータ取得にも成功した。
さらにT2K実験における NCQE反応の精度を上げるために、ニュートリノビームの不定性を削減する NA61/SHINE実験と、酸素原子核を標的としたビーム実験を行う。前者では、我々が提案した実験が正式に採用され、2021年度に行うことが決定した。 -
Studying supernova explosions via their neutrino emissions
研究課題/領域番号:17H06365 2017年06月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
ヴァギンズ マーク, 松古 栄夫, 住吉 光介, 小汐 由介, 原田 了
配分額:156650000円 ( 直接経費:120500000円 、 間接経費:36150000円 )
One of the primary sources of near-field gravitational waves [GW] are core collapse supernova [SN] explosion. SN neutrinos, famously observed from SN1987A, provide a unique and vital probe into the inner dynamics of these dramatic events. Released together with GW during the initial stellar collapse, neutrinos and GW are both certain to travel through any obscuring dust or gas and remain undiminished upon their arrival at Earth. Neutrinos also carry information regarding the end state of the star: for explosions within our galaxy, collapses into neutron stars or black holes, the eventual sources of far-field GW, can be differentiated via observations of neutrino emissions.
During FY2018, we began upgrading the existing Super-Kamiokande [SK] detector to be an advanced-technology, gadolinium-loaded SN neutrino detector. This was the first time SK was drained and serviced since 2006.
There were four main tasks: 1) fix a longstanding water leak in the SK tank; 2) clean up the interior of the detector; 3) replace failed photomultiplier tubes, and; 4) install additional piping for better circulation of Gd-loaded water.
On the theory side, SN simulations by 6D Boltzmann equation were performed on the K-computer to clarify the effects of SN core rotation in neutrino emission and transport. Moreover, the properties of SN dynamics and neutrino bursts for different progenitors and sets of the equation of state were explored as an evaluation of uncertainty in neutrino signals. We developed numerical codes for supernovae suitable for use on GPU systems. -
Studying supernova explosions via their neutrino emission
2017年04月 - 2022年03月
新学術領域研究
Mark Vagins
資金種別:競争的資金
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研究課題/領域番号:26104006 2014年07月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
作田 誠, 高久 雄一, 井上 睦夫, 鈴木 英之, 池田 一得, 中里 健一郎, 小汐 由介, 伊藤 慎太郎, 関谷 洋之, 中畑 雅行, 富樫 甫, 古澤 駿
配分額:167050000円 ( 直接経費:128500000円 、 間接経費:38550000円 )
1987年カミオカンデにより超新星爆発のニュートリノが世界で初めて発見されたが、それ以後発見されない。本研究目標は、過去に起こった超新星爆発ニュートリノの発見のために、スーパーカミオカンデ(SK)にガドリニウム(Gd)添加し、ニュートリノ反応で生成される中性子の遅延同時計測を可能にするSK-Gd計画を期間内に開始させることであった。本研究の成果として、Gd原料そのものと、SKに0.2%添加した際の水循環装置内でのU、Th、Rn、Ra等の放射線不純物除去を達成し、SK-Gd実験は開始できた。さらに実験に必要となる超新星爆発ニュートリノ検出の実験・理論的な基礎的開発も進展し、目標は達成された。
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研究課題/領域番号:26000003 2014年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 特別推進研究 特別推進研究
中畑雅行
資金種別:競争的資金
本研究では、スーパーカミオカンデ(SK)にガドリニウム(Gd)を導入して中性子を同時計測することにより、宇宙の初期から起きてきた超新星爆発によって蓄積されたニュートリノ(超新星背景ニュートリノ)の世界初観測を目指す。そのために、2018年度にSKタンクを改修してタンクの水漏れを止めるとともに、Gd溶解装置及びGdを含んだ水を循環・純化する装置を製作・設置した。また、放射性不純物の少ないGd_2(SO_4)_3の製造もおこなった。これらにより、2020年春より0.01%の濃度でGdを導入し、50%の中性子捕獲効率で観測を開始することができるようになった。
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研究課題/領域番号:26400292 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 基盤研究C 基盤研究(C)
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
本研究はT2K実験におけるニュートリノの酸素原子核との反応で発生する脱励起ガンマ線の測定により、これまで測定されていなかった中性カレント準弾性散乱反応を高精度で測定することである。初年度にはこの反応を世界で初めて測定することに成功した。しかしその測定誤差は大きく、本研究では最も大きな中性子の水中での反応による誤差を低減するために、中性子ビームを用いた全く新たな実験を提案し、遂行した。これまで中性子と水との反応は系統的に理解されていなかったが、本研究により反応断面積や発生するガンマ線のエネルギーの測定に成功し、その理解が格段に進んだ。
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研究課題/領域番号:24103004 2012年06月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
ヴァギンズ マーク, 小汐 由介
配分額:119990000円 ( 直接経費:92300000円 、 間接経費:27690000円 )
超新星爆発は宇宙で最も劇的で重要な出来事である。本研究は超新星爆発によるニュートリノと重力波の相関の研究であり、調査研究のために開発された200トンガドリニウム水チェレンコフ検出器 EGADSを最先端の超新星ニュートリノ検出器への改造を目的とした。2015年4月には0.2%硫酸ガドリニウムを添加し、新たな電子回路および計算機を搭載し、世界初の高い効率で中性子捕獲が可能な水チェレンコフ検出器として運用を開始した。加えて、近傍超新星が発生した時にニュートリノと重力波の信号相関の予測に関する研究を行った。
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超新星爆発によるニュートリノ信号と重力波信号の相関の研究
2012年04月 - 2017年03月
新学術領域研究
Mark Vagins
資金種別:競争的資金
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世界に先駆けた電子ニュートリノ振動検出を可能にするための遠方検出器についての研究
研究課題/領域番号:23340062 2011年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 基盤研究B 基盤研究(B)
大林由尚
資金種別:競争的資金
本研究では長基線ニュートリノ振動実験T2Kの最も重要な検出器であるスーパーカミオカンデについて、検出器ハードウェアの安定運用による稼働率向上、ニュートリノ事象の時刻決定の安定運用、検出器の反応点再構成とエネルギー測定の系統誤差の低減のため、ハードウェアおよび解析ソフトウェアの改良を行った。これらの成果が大きく生かされ、T2K実験グループは2011年の震災、2013年の事故による2度の実験中断を乗り越え、世界に先駆けてニュートリノ振動による電子ニュートリノ出現を検出し、公表した。
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研究課題/領域番号:23540345 2011年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
汲田 哲郎, 小汐 由介
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
スーパーカミオカンデ等の検出器較正に使用できる、プラズマ航跡場加速による電子ビーム発生についてスタディを行った。コンピューター・シミュレーションの結果、通常より高密度のプラズマを利用して、電子ビームのバンチサイズよりもプラズマ波の波長がはるかに小さい領域でプラズマ航跡場加速を行うことにより、エネルギー広がりは大きくなるが、加速エネルギーの最高値は大きくなることが確認できた。しかし、検出器較正に使用するエネルギーには到達しないことが分かった。研究の副産物として、炭酸ガスレーザーと電子ビームのコンプトン散乱γ線の高次非線形効果が観測できた。
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イタリア・グランサッソ地下実験施設における素粒子ニュートリノの研究
2010年01月 - 2010年12月
優秀若手研究者海外派遣事業
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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太陽ニュートリノの精密観測およびニュートリノ振動現象の研究
2009年07月 - 2009年12月
東京大学 長期派遣経費助成事業
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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研究課題/領域番号:21224004 2009年05月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
中畑 雅行, 作田 誠, 石野 宏和, ヴァギンズ マーク, 竹内 康雄, 小汐 由介, 竹田 敦, 関谷 洋之
配分額:207870000円 ( 直接経費:159900000円 、 間接経費:47970000円 )
本研究の目的は、宇宙の初めから起きてきた超新星爆発からのニュートリノ(Supernova Relic Neutrino(SRN))を捉えるための開発研究である。SRNを捉えるにはスーパーカミオカンデ(SK)にガドリニウムを溶解させて反ニュートリノが反応した際に放出される陽電子と中性子を同時計測する必要がある。本研究ではSKを模擬したテストタンクを建設し、ガドリニウムを溶解し、水の透過率の測定、ガドリニウムを保持したまま水を純化させる方法の開発、放射性不純物の測定とその除去方法の開発をおこなった。
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プラズマ電子加速技術を応用したスーパーカミオカンデ検出器較正の研究
2009年04月 - 2011年03月
挑戦的萌芽研究
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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プラズマ電子加速技術を応用したスーパーカミオカンデ検出器較正の研究
研究課題/領域番号:21654032 2009年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
小汐 由介
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
本研究は、第一に電子ビームをプラズマ中に入射した際に励起される大振幅プラズマ波により加速された電子を用いた新たな検出器較正装置の開発を目的とする。本年度は、前年度に引き続きプラズマ発生装置の開発研究を行なった。ここではまず、前年度における議論の結果採用したポリプロピレン製Capillary(細管)に高電圧をかけることにより表面を溶解しプラズマを生成するCapillary放電方法の試験、および、使用する真空チェンバの組み立てを、連携研究者と協力して行った。本装置における重要な点は、安定した運転が可能であること、電子ビームの導入が容易であること、Capillaryの設置および調整が容易であること、プラズマ発生の確認や電流値や真空度の測定などの様々なモニタが正しく作動することである。それらの点に留意して試運転を行った。同時にシミュレーションを行い、電子が加速されるための条件の調査も行った。予定していた電子ビームラインへの装着については、今年度中に行うことができなかったが、必要な実験装置はすでに揃っており準備も完了しているので、今後も引き続き研究を行なう予定である。本研究における第二の目的は、将来的なレーザーによるプラズマ加速技術を用いた検出器較正装置の基礎的研究であるが、どのような設計が現実的に可能であるか、また実際の装置の配置などについても連携研究者と議論を行った。さらに関連する国際会議に参加し、外部研究者と議論を行うことで、様々な助言を得ることもできた。
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研究課題/領域番号:19GS0204 2007年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術創成研究費 学術創成研究費
鈴木 洋一郎, 森山 茂栄, 中畑 雅行, 小汐 由介, 中村 正吾, 竹内 康雄, 岸本 康宏, 竹田 敦, 安部 航, 関谷 洋之, 山下 雅樹, 小川 洋, 小林 兼好, 平出 克樹
配分額:590590000円 ( 直接経費:454300000円 、 間接経費:136290000円 )
宇宙の暗黒物質が実験室の標的に衝突する事象を高感度で検出するための世界最大の液体キセノン検出器(800kg)の建設に成功した。検出器の性能を確認するための微小較正源による較正データは検出器が大きい発光量を持つこと、すなわち、暗黒物質への高い感度を証明した。また、最大のバックグラウンド源であるKrの低減は成功し、世界最高の2. 7ppt以下を実現した。観測されたバックグラウンド源もほぼ同定し、暗黒物質探索の準備ができた。
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スーパーカミオカンデ検出器較正用線源開発および太陽ニュートリノスペクトル精密測定
2005年04月 - 2008年03月
若手研究B
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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スーパーカミオカンデ検出器較正用線源開発および太陽ニュートリノスペクトル精密測定
研究課題/領域番号:17740133 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
小汐 由介
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
本年度は、まず昨年度から引き続き、スーパーカミオカンデにおいて線源および光源による検出器較正を行った。本年度は特に水質の時期変動を正確に求め、シミュレーションプログラムに反映させた。次に、ここで得られた検出器較正の結果をふまえ、新たなニッケル線源装置の開発を行った。この装置の原理は、これまでと同様カリフォルニウム中性子線源をニッケル金属内に設置するというものだが、大きな特色として比例計数管を使用することにより中性子の発生タイミングを独自に測定できるというものである。この装置の製作を行い、確実に中性子が発生していることを確認できた。また、電子LINACおよびDT中性子発生装置による検出器較正を行い、本研究で重要なエネルギー決定の位置依存性を精度良く測定し、それらの結果をシミュレーションプログラムに反映させた。合わせて取得データの解析をおこない、エネルギー敷居値は5MeV、また短期間のデータはあったが、太陽ニュートリノフラックス、エネルギースペクトルが期待通りの結果であることを示した。さらに、これまでの検出器較正結果、および取得データを考慮して、今後のスーパーカミオカンデにおける太陽ニュートリノ振動パラメータの決定感度を調べた。その結果、現在のニュートリノ振動パラメータが解としたときに、3年のデータで95%の信頼度でエネルギースペクトルの歪みが観測できることを示した
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InP太陽ニュートリノプロトタイプ測定器を用いた制動輻射バックグラウンドの研究
研究課題/領域番号:17340065 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
福田 善之, 森山 茂栄, 塩澤 真人, 小汐 由介
配分額:15980000円 ( 直接経費:15500000円 、 間接経費:480000円 )
住友電気工業製のVCZ法で結晶成長させた半絶縁性InP基板を用いて、7mm×7mm×200μmおよび10mm×10mm×200μmのペルチェ冷却型並びに冷媒冷却型検出器を試作した。ペルチェ型では冷却温度が不安定であったが、ドライアイス冷却では安定し、バイアス電圧500Vにおいて^<57>Coからの122keV、^<133>Baからの81keV、^<241>Amからの60keVのガンマ線を高検出効率で観測可能であった。
その結果、観測電荷量とシミュレーションの比較から、電荷収集効率が100%の光電ピークとともに空乏層外からキャリアがドリフトして電荷収集されたと思われるピークが観測され、後者が圧倒的な観測量となった。エネルギー分解能は、空乏層による100%電荷収集では5%@122keVの性能を得たが、ドリフトして収集したピークでは20%程度であった。また、電子・ホールの生成エネルギーは3.5eVという結果になり、従来の4.2eVより小さい値であることがわかった。また、本検出器を用いて^<115>Inの自然β崩壊スペクトルと、その制動輻射バックグラウンド測定実験を行なった。InP検出器とCsI検出器を対面で配置し、鉛と無酸素銅の遮蔽体内に設置した。InP検出器では10時間の測定より想定数以上の事象が観測され、β事象以外に低エネルギー側に振動によるノイズと10^<-10>g/gという微量ながら^<60>Feによるβ事象が含まれる事がわかった。一方、CsI検出器では100keV以下に50事象程度が観測された。この事象は、CsI中に含まれるU/Th系列の崩壊核がβ線とγ線を同時放出し、γ線はInPでβ線はCsIで観測するシミュレーションが実験結果を再現した。従って、InPからの制動輻射事象は2事象程度と予測する計算結果と合致する結果を得て、制動輻射が影響しないことを確認することができた。 -
キセノンを用いた2重ベータ崩壊探索実験
研究課題/領域番号:16340066 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
森山 茂栄, 小汐 由介, 福田 善幸, 竹内 康雄
配分額:16400000円 ( 直接経費:16400000円 )
ニュートリノが出ない二重ベータ崩壊を観測することにより、ニュートリノの性質を決定するとともに、ニュートリノの絶対質量を測定することが期待されている。本研究の目的は、そのための基礎原理及び技術を開発することにある。本研究では、キセノンに含まれる136Xeが二重ベータ崩壊可能な原子核であるとともに、液体キセノンが良いシンチレーターであることを利用する。特にバックグラウンドを低減するために、常温高圧の液体キセノンを透明な容器にいれ、特殊な光学系で測定することにより、感度の向上を図るものである。ここに含まれる研究開発は、1耐圧アクリル容器の開発、2波長変換材の開発、3常温液体キセノンの発光量測定、4ダブルフォーカス型検出器の開発、5バックグラウンドの見積もり、6プラスチックシンチレータを用いた容器の開発である。
本研究で最も重要であったのが、2の波長変換材および3の常温液体キセノンの発光量である。1については、アクリル容器からの水の放出が問題となるため、(2)で開発する波長変換材等の膜により保護することとなった。2については、興味ある一定の成果が得られた。ポリスチレンの母材に、TPB(テトラフェニルブタジエン)を4%混合させることで、49±4%の変換効率が得られた。この効率とは、液体キセノンの発光である175nmの真空紫外線が入射した場合に、可視光として放出される光子の数の比である。この変換は、液体キセノンの発光よりも早く、発光の信号の時定数は、液体キセノンの発光の時定数との違いは見られなかった。残念ながら、この波長変換材を液体キセノンにいれて測定した場合、波長変換材が液体キセノンにより浸食されることがわかり、効率として20%程度に下がってしまうことがわかった。アクリルの保護の役割や、長期安定性などを含めて、今後研究が必要である。3常温液体キセノンの発光量については、大変面白い結果が得られた。圧力5.57MPaG、摂氏3度における発光量と、圧力0.06MPaG,摂氏-100度における発光量とを比較すると、前者が後者の0.85倍という結果が得られた。両者で光の収集効率が異なる可能性がありその効果を現在見積もり中であるが、常温高圧での液体キセノンの発光量を測定するのはこれまでに無く、重要な進展である。4については、装置を作成したところ、検出器内面の反射率が低いことがわかった。今後測定・改良を続けていく予定である。5、6については、4までの成果の延長上にあるため、今後の課題となった。 -
スーパーカミオカンデ太陽ニュートリノの精密測定によるニュートリノ振動の解の特定
2002年04月 - 2005年03月
若手研究B
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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スーパーカミオカンデ太陽ニュートリノの精密測定によるニュートリノ振動解の特定
研究課題/領域番号:14740152 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
小汐 由介
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
本研究は大型水チェレンコフ検出器スーパーカミオカンデにおいて、太陽ニュートリノを精密に測定し振動解を特定することである。最終年にあたる本年度では、スーパーカミオカンデ検出器のセカンドフェーズのデータを用いた太陽ニュートリノ観測を行った。その結果、478日の稼働時間での^8B太陽ニュートリノフラックスは2.45+(0.08-0.07)x10^6/cm^2/sec、昼夜でのフラックスの違いは0.4+-6.3%で、誤差内での違いは見られなかった。さらに季節変動、ニュートリノスペクトルの理論予想からの歪みに関しても誤差内で見られなかった。これらの結果はファーストフェーズにおける観測結果と一致している。また太陽ニュートリノ振動解の特定において特に重要になるのは、エネルギースペクトルとフラックスの昼夜変動の精密測定である。精度よくそれらを測定するための検出器較正を行った。まずニッケルに中性子を吸わせて出てくるガンマ線を用いた測定を行った。これは特に光電子増倍管の量子効率の光電子増倍管毎の依存性を求めるものである。定期的に同データを取得することにより依存性の時間変動を確認できるが、特に大きな時間変動は見られなかった。またこの線源を用いて発生点較正も行った。その結果、発生点再構成の精度はファーストフェーズと同様であることを示した。さらに、別の光源としてゼノン光源を検出器内に設置し、光電子増倍管の増幅率を継続的なモニタを行った。このモニタにより不調な光電子増倍管を抽出し、データ解析において使用しないようにした。
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インジウムを用いた陽子・陽子核融合反応からの太陽ニュートリノ観測装置の開発
研究課題/領域番号:13440066 2001年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
福田 善之, 森山 茂栄, 太田 忠之, 千葉 芳明, 塩澤 真人, 小汐 由介, 竹内 康雄
配分額:14500000円 ( 直接経費:14500000円 )
平成13年度において米国AXT社よりFeをドープした直径5cmの半絶縁型InP基板を購入し、浜松ホトニクス(株)にプロトタイプ検出器の製作を依頼した。素子の大きさは7mm×7mm×0.5mmで、Cr-AuとAu-Ge/Ni/Auの電極をオーミック接合した。リーク電流特性では、バイアス電圧の正負に拘わらず常温で500Vに対し約40μA、-40℃では100Vに対し0.018μAであった。一方、半導体基板に含有するU/Th系列による放射性バックグランドを評価するため、神岡坑内に設置された低BG用Ge検出器で測定を行い、それぞれ5×10^<-11>および3×10^<-11>g/gの上限値を得た。平成14年度では放射線応答性能を評価するために、α線およびγ線を照射した。バイアス電圧を1kVまで印可した結果、α線の信号は観測されて電荷収集効率(CCE)が約37%を得たが、γ線に関しては信号が得られなかった。そこで、低温による検出器の改善性を測定するために、ペルチェ冷却素子に設置したプロトタイプ検出器を製作した。しかし、冷却時に結露が原因となってスパイク状にノイズが発生し、いずれの放射線も観測できなかった。平成15年においてCCEの改善性を計るために更に高電圧のバイアスを印可するための電源と高ゲイン型の電荷増幅器を購入し、常温型のプロトタイプについて研究した。バイアス電圧を3kVまで印可した結果、γ線に信号を観測することが可能になり、放射線測定器としての性能評価を行った。^<133>Baの356keVの光電ピークや、^<137>Csの662keVγ線のコンプトン分布、更に^<57>Coの122keVγ線の光電ピークの片が観測した結果、キャリアを生成するエネルギーが0.4eVとなり、文献によるInPの電子・ホール対生成エネルギー4.2eVに比べて1/10で電荷が生成している事実を突き止めた。また、この事実はα線の観測でも得ている。プロトタイプ検出器では電離作用による発生した電荷を電場により収集していると考えられ、CCEは80%を達成している。但し、この性能が検出器全面に及んでいないことから、更に研究する必要がある。また、低温時の研究を行うため真空ポンプおよびチャンバーを購入し、開発を継続している。
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太陽ニュートリノの昼夜変動およびエネルギースペクトルの精密測定
2000年04月 - 2002年03月
奨励研究A
小汐由介
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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太陽ニュートリノ振動の精密研究
研究課題/領域番号:12047207 2000年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
鈴木 洋一郎, 小汐 由介, 竹内 康雄, 中畑 雅行, 西嶋 恭司, 宮野 和政
配分額:209400000円 ( 直接経費:209400000円 )
本計画は、^8B太陽ニュートリノを精密に測定することにより、太陽ニュートリノ振動の確実な証拠を捕らえることである。2001年に、スーパーカミオカンデによる太陽ニュートリノ強度による測定とSNOによる測定を比較することにより太陽ニュートリノが確実に振動している証拠が得られた。これにより、本計画の目標のひとつは達成されている。現在、大混合角度解とされている太陽ニュートリノ振動解から予想される昼夜の強度差、そして、わずかなスペクトルの歪みを観測する努力を行っている。スペクトルの歪みを観測するには、観測可能なエネルギー閾値をできる限り下げることである。我々は、当初目標とした4.5MeVまでの太陽ニュートリノ信号の検出に成功した。今後、スペクトル測定の観測感度をあげることにより大角度解であることの確認を行いたい。2%であるといわれている昼夜の強度差に関しては、1.8±1.6%が得られた。これは、振動解から期待される値とコンシステントであるが、まだ、統計的には十分でない。
さて、この重要な太陽ニュートリノ振動を最終決着するには太陽ニュートリノの90%以上を占める低エネルギーのpp-7Be-ニュートリノでニュートリノ振動が確認され、パラメータが精密決定されることが必要である。本研究の第二の目標は、pp-7Be-ニュートリノ観測の測定器の開発を行いその実現可能性を示してゆくことである。これまでの研究結果にもとづき、液体キセノン検出器の開発を行っている。10トンのキセノンを用いることで1日15事象のPP-7Be-ニュートリノが観測できる。本年度は100kgのプロトタイプを製作し、テスト実験を行った。低エネルギー太陽ニュートリノの検出に必要な自己遮蔽能力を実証した。また、別途、キセノン純化装置を製作し、稼動させ、バックグラウンドであるクリプトンを1000分の1にすることに成功した。目的とした開発研究目標はほぼ達成している。総合的に考え、液体キセノン検出器は、低エネルギー太陽ニュートリノの検出装置として使える可能性が十分あるとおもわれる。 -
太陽ニュートリノの昼夜変動及びエネルギースペクトルの精密測定
研究課題/領域番号:12740141 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
小汐 由介
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
本研究は大型水チェレンコフ検出器・スーパーカミオカンデを用いて太陽ニュートリノの観測、特にエネルギースペクトルおよび昼夜変動の精密測定を行う。本年度は新たに計1258日分のスーパーカミオカンデの解析を行った。昨年度に引き続き、本研究の目的である事象の方向を用いた太陽ニュートリノ事象セレクションプログラムを含め、解析精度の向上をおこなった。本解析においては、エネルギー敷居値は5MeV、昼夜変動については特に地球のコア領域を通過したニュートリノを選択的に抽出した。また、電子銃およびγ線源を用いた検出器較正により系統誤差を押さえることができた。太陽ニュートリノのうち、スーパーカミオカンデにおいて一般的に検出される^8Bneutrinoのみならず、高いエネルギー領域のhep neutrinoのフラックスを精密に求めた。以上の結果は、Physical Review Letter誌に発表した。さらに本結果を用いてニュートリノ振動の解析を行った。有力な太陽ニュートリノ振動解のうち、小角度解は95%の信頼度で排除され、さらにLOW解についても、その大部分が排除された。他の太陽ニュートリノ実験の結果を組み合わせて解析を行うと、大角度解が有力となった。以上の結果についても同誌に発表した。
本実験の系統誤差を押さえるためには、特に水の透過率の場所依存性、方向依存性を精度良く求める必要がある。そのために、今年度の検出器メンテナンスの時期に検出器の様々な場所にレーザーシステムを設置した。スーパーカミオカンデが再開した後に装置較正を行う予定である。