共同研究・競争的資金等の研究 - 池田 直
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三角格子希土類鉄複酸化物の電荷秩序強誘電性とその融解と非線形現象
研究課題/領域番号:18340094 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
池田 直, 森 茂生, 吉井 賢資
配分額:15710000円 ( 直接経費:15200000円 、 間接経費:510000円 )
RFe204は電子の密度分布で実現する誘電体(電子誘電体)であり既知の誘電体とその発現原理が異なる。またその特性が室温に置いても実現しているため、応用面においても新機能発現の期待が持たれている。本研究は発見されたばかりの物性を精査するため、RFe204試料について化学当量比と酸素欠損量をパラメータとして調整しながら試料合成を行い,強誘電特性発現条件を明確化し、さらに電子秩序強誘電性崩壊条件近傍にある非線形電気伝導特性を探索・解明することを研究実施目標に定めた。
本研究の結果,気密天秤炉を用いることで,高品質なRFe204結晶作成に必要とされるパラメータが解明された。また高品位単結晶を作成するための溶融帯或法の様々な条件が解明され発見された。新たに開拓した手法で作成された単結晶は,電気抵抗率が著しく高くなる。
さらにまた"不完全な電子強誘電性"とも言うべき電子相が存在していることを確かめた。この電子相は,電気電導率が非線形特性を示し,さらに結晶方位に対して異方的であることを発見した。さらに可視光照射に伴い電気電導率が向上し、同時に誘電率が低下する現象を発見した。
室温における光照射に伴う誘電性と電導性の異常応答
今までに見いだされている物質と光の相互作用の理解は,イオンに存在する核に束縛された一つの電子が,光から運動エネルギーを受け渡され,その束縛順位から開放される過程として記述されている。一方ここに発見された現象は,本来金属状態にある電子系が電子相関効果で形成する極性な電子集団の光応答であり、新現象である。
電荷秩序状態の非線形融解現象の異方性
本物質の電流電圧特性は非線形であることを見いだした。この現象の起源は,物質の中に内在する電気集団が電流により融解し,また自発的に電気分極を持つ状態に再凝縮するためにおこる。これは室温にみられる集団電子の融解と再凝集の新しい現象である -
混合原子価酸化物Fe_2BO_4の電荷秩序配列
研究課題/領域番号:18540356 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
中村 真一, 池田 直, 下村 晋, 及川 健一, 森 茂夫
配分額:3850000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:150000円 )
放射光X線回折,中性子回折,および電子線回折による結晶構造解析とメスバウアー分光の与える四重極分裂を相補的に用いる事で,混合原子価酸化物Fe_2BO_4低温相(317K以下)の結晶構造および電荷秩序配列を調べた。主な研究結果を以下の4項目にまとめる。
(1)良質結晶の合成:多結晶試料,中性子回折用の^<11>Bを用いた多結晶試料,およびFZ法により単結晶を合成した。
(2)メスバウアー分光による電荷秩序配列および磁気構造の評価;Fe核の感じる四重極分裂により電荷秩序配列を検討した。既存モデルでは測定値を説明出来ず,電荷秩序配列パターン,あるいは構造パラメーターに問題がある事が分かった。また,低温・磁場中での測定により,磁気モーメントの向きを調べた。キャント磁性,あるいはらせん磁性と考えられる。
(3)多結晶粉末を用いた回折実験:放射光X線回折では,超格子反射は見つからなかったが,室温から転移点近傍で格子定数の温度変化に異常を見いだした。一方,中性子回折では,超格子反射と思われる弱い反射が観測され,α軸方向に2倍周期を持った空間群を仮定して構造解析を行った。その結果,平均ボンド距離の違いにより,電荷秩序配列を示唆する結果が得られた。更に,酸素の熱振動因子がα軸方向に伸びた形である事も判明した。
(4)単結晶試料の電子顕微鏡観察:室温においてα軸方向への2倍周期を示す超格子反射が明瞭に観察され,温度上昇に伴い,その超格子構造が不整合構造になり,その後消失する事が判明した。
今後は,空間群の決定,電荷秩序配列パターンの決定を行うことがテーマとなる。また,磁気構造に関しても検討を行う事が課題として残っている。 -
分子性導体の電荷配列の極低温及び強磁場下X線による観測
研究課題/領域番号:15073217 2003年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
野上 由夫, 大嶋 孝吉, 神戸 高志, 池田 直
配分額:66100000円 ( 直接経費:66100000円 )
世界で初めてとなる,超高感度10T磁場下回折装置と磁場中散漫散乱カメラを用いて,磁場下で量子ホール効果示す低次元物質η-Mo4011のX線散漫散乱写真を撮影した。6Kの極低温下では,二種類の電荷密度波転移の内,比較的振幅の大きなCDW1形成に伴う衛星反射だけではなく,特に微弱なCDW2形成に伴う衛星反射を観測する事に成功した。同一の写真に10ヶ以上の反射の撮影に成功しており,これは低温用X線カメラとしても世界最高性能であることを示している。更に8T以上の強磁場でCDW2の衛星反射位置が一次元方向b*成分に大きく変化することを観測した。この磁場領域では磁気輸送や磁場下光学特性にも異常があらわれることと考えあわせると,磁場による電子状態の変化が引き起こされていると考えられる。この装置は低次元分子性導体のような,様々な波数,つまり予測不能な波数の変調構造が現れ,それが電子状態に大きな影響を及ぼす系の構造科学研究にとって不可欠である。更に,EuO. 6SrO. 4MnO3の絶縁体-金属転移に関連し,同じく世界初となる高感度磁場中回転カメラ用いて磁場中冷却の金属相では,磁場なし冷却の絶縁相とくらべ,格子が明瞭に変化していることを観測した。つまり,磁場により格子の歪みが少ない金属相が安定となることを示した。これはこの系の物性が基本的に二重交換相互作用に支配されていることを示している。極低温で2種類の電荷秩序が競合するθ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4では,高電場下で巨大な非線形伝導やサイリスタ動作と関連し,3倍の電荷変調は変化しないが,2倍の電荷変調が減少すること,さらにその電荷変調の消長に格子定数の変化が同期していることを見いだした。
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三角格子イットリウム鉄複酸化物YFe_2O_4におけるポーラロン逐次相転移の研究
研究課題/領域番号:15540324 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
池田 直, 森 茂生
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
二次元三角格子鉄複電荷酸化物、RFe_2O_4において、電荷フラストレーションを起源とした、逐次電荷秩序相転移と、電荷秩序型誘電性に関する研究を行った。本研究ではYFe_2O_4に見いだされた逐次相転移の解明を目的として以下の研究を行った。
1)精密試料合成
YFe_2O_4に見いだされる逐次電荷秩序相転移は、酸素欠損量に著しく依存することが判明した。このため酸素分圧制御可能な電気炉を整備し、酸素分圧10^<-9>〜10^<-11>atm、1200Cでの試料焼成を行い,酸素欠損量を制御した粉末試料を合成した。
2)逐次電荷秩序相転移
上記1により作成した一連の試料について,電子線回折、放射光X線回折実験、誘電率、磁化測定などを行った。これによりYFe_2O_4に見いだされる逐次相転移は、三角格子上に配置された鉄イオン間で第一、第二近接クーロン相互作用が拮抗することが起源となり、デビルステアー型の逐次相転移を示すことが解明されつつある。現在、低温で出現する相の相互関係に対応する、三角格子上の相互作用競合に起源を持ったデビルステア型の相転移モデルの理論構築を行っている。
3)電荷秩序の発生に伴う各種物性の発現の解明。
共鳴X線散乱と焦電気測定の結果と合わせて、RFe_2O_4に発現する誘電性は電荷秩序に起源がある、電子誘電体であることが明らかになった。これは間もなく発表する。
RFe_2O_4では、鉄イオン間の電子揺らぎが誘電分域の揺らぎになっている。このため誘電分散の結晶異方性が存在するが、この異方性と逆格子空間中に見られる特徴的な散漫散乱図形'Fish Born Pattern'の対応関係が明らかになりつつある。この事実は散漫散乱が持つ時間揺らぎ情報と格子歪みの揺らぎ情報の良い一致を示す希有な例となることが判った。現在この事実関係を整理し公表準備中である。
これらの他に、二次元系の相転移現象としての液面上の高分子単分子膜の相転移、トポロジカル結晶の結晶構造解析、遷移金属複電荷酸化物の相転移現象の研究を、主にマンガン系と銅系酸化物について行った -
三角格子上に発現する電荷秩序構造と新しい誘電性
研究課題/領域番号:09740251 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
池田 直
配分額:2500000円 ( 直接経費:2500000円 )
今年度,LuFe_2O_4について,中性子線散乱並びに,放射光を用いたX線異常分散による解析を行った.その結果判明した事柄を列記する.
(i)RFe_2O_4の電荷秩序構造は自発分極を持っており,この物質は誘電体として振る舞う.誘電率は10^4のオーダーと大きく,鉄イオン間の電子移動に伴い分極の反転が起こる.
(ii)この物質は,電荷の秩序に関して高温から,無秩序状態→二次元電荷密度波(CDW)状態→三次元CDW状態と逐次転移をする.
(iii)約500K以下で現れる二次元CDW状態は,三角格子の面内で波数(1/3 1/3)で伝播する電荷の波で記述される.誘電的見地から見ると電荷移動の性質からこの相は二次元強誘電相のランダムな積層状態と見ることができる.
(iv)350K以下に現れる三次元CDW状態では層間の位相が逆位相,したがって全体として反強誘電相となっている可能性がある.これに加えて面内の秩序も長周期の変調を受けた不整合相となる.
現在,放射光を用いた鉄イオンK殻吸収端近傍でのX線異常分散による結晶構造解析により,室温で存在している鉄イオンの電荷秩序配列の電子密度分布を求めることを試みている. -
酸化希土類鉄(II,III)の電荷-スピン秩序とその緩和
研究課題/領域番号:08640469 1996年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
近 桂一郎, 池田 直
配分額:2400000円 ( 直接経費:2400000円 )
前年度に引き続いて,Fe^<2+>,Fe^<3+>の電荷秩序とその緩和に関する知見を得るねらいで,LuFe_2O_4の誘電緩和の精密測定を行った.とくに装置を改良して,測定周波数を10Hz域に拡張するとともに,3次応答の測定を可能にした.あわせて,焦電気効果による自発分極の測定を始めた.また,池田は山田安定(早大理工総研)らと協力して,X線の異常分散を利用する回析実験を行い,3次元電荷秩序についての直接的な証拠を得た.また,3次元電荷秩序による自発分極を巨視的な測定で確認した.
これらの結果とこれまでの結果をまとめて,以下の結論に達した.
1)150-200Kに特徴的に現れる誘導分散は,3次元電荷秩序相内の長周期構造間の境界の移動で説明できる.
2)320K移転の直上では誘電率の極大が現れる.その温度と測定周波数の間の関係は緩和時間の広い分布を特徴とする.
3)2)に加えて,転移温度領域に非線型誘電率の極大が現れる.
4)2,3)は転移温度よりも高温の領域から存在する,局所的な分極の凍結で説明できる.以上について,論文を執筆し,J.Phys.Soc.Jpn.に投稿した. -
酸化希土類マンガン(III、IV)の強誘電性-反強磁性同時相転移
研究課題/領域番号:04452046 1992年 - 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
近 桂一郎, 池田 直
配分額:6100000円 ( 直接経費:6100000円 )
1.同形の構造を持つ希土類マンガン酸化物RMn_2O_5(R=Sm-Luの希土類,Y,またはBi)の低温相転移を詳しく調べ,この系の酸化物が約40K以下の領域で一連の逐次相転移をすることを明らかにした.一般に,それらは以下の順序で起こる.(a)らせん磁気秩序の形成,(b)強誘電性自発分極の出現,(c)らせん磁気秩序の変形(スピン再配列),(d)希土類イオンの磁気モーメントの整列.
2.当初,EuMn_2O_5で予想した,(a)と(b)とが同時に起こる相転移の存在はまだ確認していない.しかし,二つの相転移のが近接した二つの温度に存在するようである.Euに次いでこのような転移の可能性が高いと考えていたYMn_2O_5では,二つの別の転移の存在することを確認した.
3.R=Gdの場合を除いて,自発分極の温度変化は複雑であり,その起因は,複数個の副格子のイオン変位によるフェリ誘電性であると考えている.
4.YbMn_2O_5の6Kの相転移では,Yb^<3+>の磁気モーメントの整列と付加的な自発分極の出現が同時に起こっていることを示した.この系では,きわめて異方的なYb^<3+>イオンの磁気モーメントの整列が,格子の変形とそれにともなう新たな分極を誘導すると考えている.
以上の結果は,印刷中を含め6編の論文で公表した.さらに2編の論文を準備中である.
この研究の結果は,微視的な構造の解析によって,より直接的に検証する必要がある.目下,TbMn_2O_5単結品の中性子回折および精密なX線回折の実験を準備している. -
位相補償型複素磁化率測定によるスピングラスの非線形応答パワースペクトル
研究課題/領域番号:04740179 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
池田 直
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )