共同研究・競争的資金等の研究 - 池田 直
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希土類複合酸化物における電子強誘電性の電界・光・磁場による分極制御とイメージング
研究課題/領域番号:22H01153 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
沖本 洋一, 池田 直
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
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電子強誘電体の逐次電荷秩序相転移の研究
研究課題/領域番号:22H01942 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
池田 直, 藤井 達生, 沖本 洋一, 藤原 孝将
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
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負の磁性を示す希土類-遷移金属酸化物の新規相探索による素子応用可能性
研究課題/領域番号:20H02829 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
吉井 賢資, 池田 直, 矢板 毅
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
前年度の結果を踏まえ、主に、室温近傍で負の磁性が見られたスピネル系の探索を行った。放射光吸収データを用いた局所構造は確定していないため、他のアプローチで研究を行った。応用的見地から、ニッケルよりもクラーク数の大きいマンガンに一部置換するなどの合成を試みたが、現状では負の磁性は観測されていない。さらには、リチウム鉄スピネルなどアルカリ金属を含む系についても探索を行った。負の磁性は見られたものの、負の磁性が発現する温度(補償温度)は最高で280K近傍であり、室温には到達していない。
別のアプローチとして、過去の論文から、ペロブスカイトクロム酸化物を還元雰囲気中で加熱すると磁気転移温度が上昇するという報告があるため、この手法を試行した。負の磁性を示す(La,Pr)CrO3およびGdCrO3について、CO-CO2混合ガス雰囲気中で1000℃近傍での加熱を行った。COとCO2の流量比は3:1程度で試行した。(La,Pr)CrO3およびGdCrO3の磁気転移温度はそれぞれ250Kおよび170K近傍であり、還元雰囲気での加熱においては1Kほどの上昇傾向が見られたものの、大幅な上昇は観測されなかった。
以上と並行し、派生的な研究を報告した。磁気冷凍物質の可能性が指摘されている上記GdCrO3について、5%程度Biを置換して合成すると、固相反応における合成温度が1100℃から900℃近辺まで下がることを学会にて報告した。また、クロム酸化物の新規物性の探索を行い、190KにおいてCrとCuの電荷秩序転移と磁気転移が同時に起こるBiCu3Cr4O12において、2つの秩序を同時に用いて効率的な冷凍が行えるマルチ熱量効果を論文発表した。また、電子誘電体RFe2O4について、イオン半径の異なる2つの系の電子線回折測定を行い、鉄三角格子間の距離によって電荷秩序構造の次元性が変化することを論文で報告した。 -
酸化鉄系電子誘電体の精密合成と精密光・誘電応答の研究
研究課題/領域番号:19H01827 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
池田 直, 沖本 洋一
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
本研究によって、電子強誘電体物質が常温に安定に実在することを、世界で初めて示すことができた。更に研究の進展により、この電子相は薄膜試料に存在することも世界で初めて示すことができた。電子強誘電体の電子分布だけで構成される電気分極は、今まで知られている変位型強誘電体のそれに比べ、著しく高速に応答することが期待されていたが、本研究により世界で初めて超高速応答を見出すことができた。
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三角格子系希土類鉄酸化物による常温マルチフェロ材料の創製
研究課題/領域番号:18H02057 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
藤井 達生, 池田 直, 狩野 旬
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
次世代のマルチフェロイック材料として期待されているRFe2O4について、スパッタ法による単結晶薄膜の合成を試みた。その結果、Fe3O4バッファ層を介することでサファイア基板上のRFe2O4層の面内配向が30°回転すること、また、Fe3O4とRFe2O4を積層した場合も、同様に積層の順番に依存して、面内配向が回転することを見出した。くわえて、YSZ単結晶基板を使用した場合は、双晶ドメインを持たない、ほぼ完全にシングルドメインとなるRFe2O4薄膜を得ることができた。
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電子強誘電体の特徴を活かした新規セシウム除染材料の開発
研究課題/領域番号:17K19090 2017年06月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
吉井 賢資, 池田 直, 林 直顕, 辻 卓也
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
研究代表者らが発見した強誘電体RFe2O4(R:希土類)が低い温度で強誘電性を示すことなどに着目し、簡便に水溶液中のセシウムを吸脱着できる材料の開発を目指して研究を行った。当初目的は達成できなかったが、カーボンナノウォール(CNW)と呼ばれる新規吸着材料を見出した。この材料は、電子レンジなどを用いて簡便に合成できるため応用的に有利であるなどの利点を持つ。セシウム吸着試料に対し、放射光光電子分光測定を行ったところ、セシウムイオンは炭素との化学結合を生成していることなどが分かった。さらに、誘電体などの基礎物性研究として数報の査読付論文を報告した。
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新規熱サイクルと電子強誘電体で実現する高効率低温排熱回収
研究課題/領域番号:17H03102 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
吉井 賢資, 池田 直, 林 直顕, 福田 竜生
配分額:14040000円 ( 直接経費:10800000円 、 間接経費:3240000円 )
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フラーレン磁性・誘電性共存物質における相関現象の解明
研究課題/領域番号:15H03529 2015年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
神戸 高志, 池田 直, 福田 崇人
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
本研究ではC60分子性物質における、磁性・誘電性の相関現象の解明、誘電性の長距離秩序相を探索、電気磁気効果の存在を明らかにすることが目的であった。これらの実現のため、広帯域磁場下誘電率測定装置の開発を行い、従来観測できなかった低周波領域での誘電応答の観測に成功した。主な成果は、強磁性体TDAE-C60における低温での誘電率挙動の観測と反強磁性体(NH3)K3C60における誘電性の観測と新たな磁性状態の発見、である。現状では両物質ともに誘電性の長距離秩序の観測に至らなかったが、C60物質において誘電性という新機能を付加する可能性と磁性・誘電性の共存現象の存在が普遍的に存在することを明らかにした。
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放射光を用いた核共鳴散乱回折装置の開発
研究課題/領域番号:26400338 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
中村 真一, 下村 晋, 小林 康浩, 黒葛 真行, 藤原 孝将, 池田 直, 三井 隆也
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
高輝度放射光施設SPring-8,BL11XUに設置されている鉄の核共鳴散乱装置に,新たに2軸回折計を組み込み,核共鳴散乱回折装置(放射光メスバウアー回折装置)を開発した。これにより,試料からの特定の反射指数の回折γ線のみを用いることで,結晶サイト選択的メスバウアースペクトルの測定が可能となった。核共鳴散乱のみを取り出すために,45度法,偏光アナライザー法,および純核ブラッグ散乱法の3手法を確立し,典型的な複鉄サイト酸化物であるFe3O4とFe3BO6を試料として用い,結晶サイト選択的メスバウアースペクトルの測定に成功した。
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電子型誘電体における新奇な誘電性の探索と発現機構の解明
研究課題/領域番号:26287070 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
石原 純夫, 山内 邦彦, 妹尾 仁嗣, 中 惇, 岩井 伸一郎, 佐々木 孝彦, 池田 直, 松枝 宏明, 松本 宗久, 渡邉 努
配分額:15470000円 ( 直接経費:11900000円 、 間接経費:3570000円 )
電子の電荷分布が空間の反転対称性を破ることで電気分極が発生する新しいタイプの強誘電体「電子型強誘電体」において、時間的・空間的に大きな分極揺らぎ、ならびに磁気双極子と電気双極子との相関に焦点を当て、通常の誘電体との異なる新しい物性を理論的に明らかにした。特に、幾何学的フラストレーションのある系における大きな電荷揺らぎ、分子ダイマー構造を持つ系における電気磁気効果、電気分極揺らぎに起因する磁気秩序の不安定性について明らかにした。
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電子強誘電体鉄酸化物は超伝導体となりうるか
研究課題/領域番号:25620071 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
吉井 賢資, 小林 達生, 米田 安宏, 齋藤 寛之, 福田 竜生, 松村 大樹, 池田 直
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
申請者らが発見した電子強誘電体RFe2O4(R:Y, Ho-Lu)につき、超伝導相の可能性を探索した。鉄イオン間の電子間相互作用を増強するため、圧力下での電気抵抗測定を行ったところ、数GPaまでの圧力では、本系は半導体的性質を保つことが分かった。ただし、一部の系では圧力により活性化エネルギーが減少する傾向が見られ、本系の新規相を探索する目的で研究を継続する。同じく相互作用を変化させる目的で、Rサイト置換を行ったところ、大きい希土類Dy3+を導入すると、250K程度である磁気転移温度が5-10Kほど上昇することも分かった。本結果は、室温マルチフェロイック相の探索の点でも興味深い結果である。
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マルチフェロイック鉄酸化物電子強誘電体の応用へ向けた新規相探索
研究課題/領域番号:23350071 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
吉井 賢資, 齋藤 寛之, 池田 直, 松村 大樹, 村岡 祐治, 森茂 生, 米田 安宏, 西畑 保雄
配分額:11180000円 ( 直接経費:8600000円 、 間接経費:2580000円 )
代表者らが発見した電子強誘電体RFe2O4(R:希土類)につき、室温でのマルチフェロイック性の発現を目指して研究を行った。元素置換等では、本系の磁気転移温度は250Kから大きくは変動しなかった。しかし、関連物質R2Fe3O7を合成したところ、転移温度が20K高い270Kであることが判明し、更なる転移温度上昇へのヒントが得られた。また、磁化の安定化である交換バイアスや、電流印加による磁気異方性の増大など、応用可能性を示唆する結果も得られた。
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軟エックス線発光過程における非局所発光の研究
研究課題/領域番号:23540382 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
安居院 あかね, 池田 直
配分額:5460000円 ( 直接経費:4200000円 、 間接経費:1260000円 )
軟X線領域の発光は励起された内殻電子が属するイオン内で光学過程が完結する局所発光モデルで説明されてきた。本研究は電荷秩序状態でFe2+とFe3+が交互に配列するLuFe2O4においてFe3d-2p発光分光スペクトルを測定し、スペクトル構造がFe2+及びFe3+に起因する構造だけでは説明できず、両イオンが光学過程に参加する非局所発光があることを検証した。電荷秩序系物質の示すさまざまな物性を引き起こす電子相関も非局所発光過程の観測から議論できると期待される。
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時分割計測による有機誘電体の電荷秩序観察
研究課題/領域番号:21540323 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
野上 由夫, 池田 直
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
直流を交流に変換する有機サイリスタの原因となる非線形伝導効果と電子が一定間隔で並ぶ電荷秩序との関連は,電子移動が主役となる有機誘電体の形成および消失メカニズムを研究する上で重要である。放射光回折を用いた時分割測定およびk空間同時測定により,この物質では複数の電荷秩序が空間的に競合しており,電流による電荷秩序融解および再凍結過程の時定数はかなり長く数十msec以上であることを明らかにした。
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希土類-遷移金属酸化物で見られる特異な誘電性に関する研究
研究課題/領域番号:20550134 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉井 賢資, 池田 直, 米田 安宏
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
電子強誘電体RFe_2O_4(R:希土類)のサイト置換物質およびペロブスカイトマンガン酸化物等において、通常のイオン変位型と異なり、電子の秩序化と移動が重要である誘電性について報告した。この誘電性はイオン変位に由来する劣化が少ないため、長寿命素子開発に用いられる可能性がある。また、これらの物質群の中には、高い誘電性を示し空気中で簡便に合成できるものがあるため応用的にも興味深い。
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キラル一次元金属錯体に基づく強磁性強誘電体の創出
研究課題/領域番号:20550130 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
満身 稔, 池田 直
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
本研究では,強磁性強誘電体の創出を目指して,不斉炭素を導入した四つの新規キラル一次元ロジウム(I)-セミキノナト錯体1から4を開発した.錯体1と2では,鎖内で隣接する分子がトリプレットダイマーを形成し,200K付近でダイマー間での磁気的相互作用が反強磁性的から強磁性的へと変化するとともに,交流磁化率において8K以下の低温で2段階の磁気異常を示すことを明らかにした.
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磁気・誘電リラクサーの創製と機能開拓
研究課題/領域番号:20340078 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
森 茂生, 池田 直
配分額:19370000円 ( 直接経費:14900000円 、 間接経費:4470000円 )
本研究では (1-x)BiFeO_3-xBaTiO_3固溶体に着目し、磁気・誘電特性および結晶構造や強誘電分域等の微細構造について調べた。その結果本物質系は、x>0.33組成で存在する立方晶構造は、立方晶構造中にナノスケールサイズで強誘電性を有する菱面体構造が存在する2相共存状態として特徴づけられるとともに、強誘電分域が微細化され、x>0.33組成では、約20~30nm程度の大きさで強誘電ドメインと強磁性ドメインが共存し、磁気誘電リラクサー物質であることが明らかとなった。
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分子性物質における誘電性と磁性の交差相関
研究課題/領域番号:19540341 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
花咲 徳亮, 池田 直, 野上 由夫, 野上 由夫, 池田 直
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
フタロシアニン分子を主な研究対象として、π電子系の電荷自由度と遷移金属のd電子系の電子スピン自由度に着目した新しい誘電物性を開拓することを目的とした。本研究において、フタロシアニン分子系物質で磁場印加による誘電率の急激な上昇を観測することに成功した。さらに、格子定数に対して2倍の周期を有するπ電子系の電荷秩序構造をX線回折で発見し、本物質の絶縁化が電子相関効果に起因することを明らかにした。
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強相関有機誘電体の電荷秩序の直接観測
研究課題/領域番号:18654055 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
野上 由夫, 池田 直
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
本年度は,有機伝導体θ-(BEDT-TTF) 2CsM (SCN) 4 (M=Co, Zn)の巨大非線形伝導と電荷秩序の局所構造との関係を精密構造解析によって明らかにした。この物質は,3桁におよぶ巨大な非線形伝導と,ダイオードを2個連結したサイリスタ素子と同じ電流-電圧特性を示すため,我々は有機サイリスタと呼んだ(Nature 437 (2005) 522)。これは本質的な電流によって引き起こされた,非平衡現象であるとともに,全く新しいデバイス物理の芽を提案している。
有機サイリスタ結晶にパルス電流を通電しつつ,ミリ秒オーダーの時間分解X線回折を行い,電荷秩序融解のダイナミクスを明らかにすることを試みた。この結果電荷秩序の融解は約50msec,再凍結は100msec以上で起こっており,これは有機サイリスタとしての発振周波数40Hzと整合する。またこの系の場合はBEDT-TTF分子がわずかに回転することによってクーロン斥力を減らそうとする(J. Phys. Soc. Jpn. 74 (2005) 2011)。したがって,電荷秩序が融解すれば分子の回転ももとに戻るはずである。このような電流-格子結合が実際にこの系で観測された。ブラッグ反射の電流依存性を詳細に測定することによって,格子は電流に比例して変化することがわかった。格子の変形は数mA(1V以下の電圧)で0.01%に達する。このときピエゾ定数(歪み量を電圧で割った量)は圧電材料PZTの1000倍以上に達する。この効果は電流によって電荷秩序が融解する効果であるから,歪みは電流の向きによらない。 -
フラストレーションを有する希土類-鉄酸化物のマルチフェロイック状態に関する研究
研究課題/領域番号:18550136 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉井 賢資, 池田 直, 森 茂生, 米田 安宏
配分額:4120000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:420000円 )
本研究の対象物質RFe_2O_4(R : 希土類) のうち、誘電性の知られていないYbFe_2O_4の物性を測定し、論文で報告した。鉄スピンの磁気転移温度は250K付近で、他のRfe_2O_4と近い。また、誘電率は室温で10000程度であり、含まれる希土類が比較的安価なYbであるため、応用に有利である。
また、LuFe_2O_4につき、作成条件を変えながら多結晶を作成し、最も良質な試料が得られる条件を探索した。現在、磁化測定を行っており、最適条件が求まりつつある。
また、物性報告例の少ないRFe_2O_4の鉄サイト置換体の研究も行い、RFe_2O_4,RFeCoO_4,RFeCuO_4,RGaCuO_4の順に誘電率が下がることを見出した。磁性測定の結果と合わせ、この傾向を鉄サイトの電子移動と関連付けて説明した。すなわち、RFe_2O_4およびそれと同構造物質の誘電性は、よく知られているイオン変位機構とは別の機構で起こっていることが示唆された。なお、RFeCoO_4は、誘電率が1000程度と比較的高く、空気中で簡便に合成されることから、応用に有望と提言した。
電子移動が重要と考えられる誘電性は、マンガンやルテニウムを含む酸化物においても観測した。特に、希土類-マンガン酸化物R_0.5Ca_0.5MnO_3において、誘電ドメインの反転エネルギーと、マンガン3d電子の移動に必要な活性化エネルギーが近いことなどを報告した。この結果は、誘電応答とマンガン電子の移動が密接に関連していることを強く示唆する。
さらに、以上の系の特徴として、誘電応答と格子との結合が弱いことを見出した。このことは、格子歪みによる結晶の劣化が少ないことを意味し、長寿命な素子の開発が行える可能性を示す。