共同研究・競争的資金等の研究 - 成瀬 恵治
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重力を介すメカノトランスダクションが心筋細胞カルシウムハンドリングへ及ぼす影響
研究課題/領域番号:24K15698 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
貝原 恵子, 成瀬 恵治, 松浦 宏治
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運動機能の増進から健康長寿を高めるシーズとモダリティ開発
2024年04月 - 2025年03月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業インキュベートタイプ(LEAP LEAP )
淺原弘嗣, 一條秀憲, 関矢一郎, 岸田晶夫, 関 和彦, 成瀬恵治
担当区分:研究分担者
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新規メカニカル負荷装置の開発を通した次世代メカノメディスンへの挑戦
研究課題/領域番号:21H04960 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
成瀬 恵治, 西山 雅祥, 高橋 賢, 片野坂 友紀, 森松 賢順, 入部 玄太郎
担当区分:研究代表者
配分額:43290000円 ( 直接経費:33300000円 、 間接経費:9990000円 )
1. ストレッチ・静水圧負荷装置の開発:バルク型および顕微鏡型の開発を行った。基本設計は終了しており、微調整を行っている。
2. 軟骨に対するマルチメカニカルストレスへの応答解析:高圧受容応答メカニズムの解明を最終目的とし、高静水圧刺激による細胞及び、細胞内分子の挙動計測を実施した。定常圧力20 MPa以上の圧力を1時間負荷した際、シグナル伝達物質に関わるSmad 3タンパク質の細胞質から細胞核内への核移行が観察された。この圧力に依存したSmad 3の核内移行過程には、TGF-β receptor の活性化やImportin bとの結合が必要であることが分かり、高静水圧に依存したSmad 3核内移行メカニズムの提案が可能となった。
3. 心筋細胞に対するマルチメカニカルストレスへの応答解析:循環器における機械感受性イオンチャネルTRPV2の役割を、組織特異的TRPV2ノックアウトマウスを用いて、明らかにしてきた。その過程で、TRPV2は、心臓への圧負荷依存的肥大や心不全、血管の筋原性緊張や肥厚などに大きく関与する因子であることが明らかとなった。
4. 剪断応力・ストレッチチャンバーでのiPS心筋細胞3次元培養:剪断応力とストレッチの同時刺激が可能な臓器チップを用い、血管内皮細胞を播種した状態で、血管収縮の調節因子である一酸化窒素(NO)のライブイメージングを行った。その結果、ストレッチ刺激および圧力刺激に応じたNOの放出が確認された。
5. 心筋細胞標本の機能評価:心筋細胞のメカニカルストレスとそれに対する応答及び応答伝播の相互関係を観察するため、細胞を直列に配列させる培養法の開発を行った。フォトエッチング技術により描画した直線状パターンを鋳型としたPDMS製のマイクロ流路を作製し、これをイオンボンバーダーで親水処理した。これを用いてマウス幼若心筋細胞を播種することで、細胞を一次元的に配向させた状態で培養することに成功した。 -
微小重力下では細胞はどのような挙動をするのか?
研究課題/領域番号:20K21896 2020年07月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
成瀬 恵治
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
宇宙空間においては宇宙線・微小重力といった地球上とは異なる環境下であり、様々な身体変化が報告されその分子メカニズムに関して多く研究されているが、肝心の重力センシングメカニズムに関しては不明な点が多い。現在までに、我々は、重力感知機構に関する研究より、過重力負荷時の細胞構造、特に核・ミトコンドリアなどの密度の大きいものと細胞骨格との相互作用が重要であることを明らかにしてきた。その上で、「微重力下ではどのような細胞挙動をするのか?」と疑問に感じ、過重力とは反対の微重力下での細胞挙動のリアルタイム観察が喫緊の課題であることを痛感した。現在地球上において擬似微小重力環境を提供するクリノスタットにて細胞挙動(細胞運動・細胞形態変化・細胞内情報伝達等)を測定する試みが行われているが、リアルタイムでの細胞挙動を見ることは現在の技術では困難である。そこで、微小重力下では細胞はどのような挙動をするのかを観察したいという強いモティベーションの下、リアルタイム測定系クリノスタット搭載型蛍光顕微鏡の構築を本研究の目的とし研究に着手した。
まず、疑似微小重力装置搭載型顕微鏡システムの作製とし三次元光造形装置を用いて既存のクリノスタットに搭乗させられる蛍光顕微鏡のプロトタイピングを作成した。この顕微鏡を用いて高速回転させ、染色した核を観測することは可能であった。最終的には、アルミ材にて成型しクリノスタットに搭載する予定である。これと並行し2軸回転での培養に耐えうる特殊チャンバーの開発を行った。 -
機械感受性チャネルPiezo1とメカノセンサーを標的とした呼吸器疾患の病態解明
研究課題/領域番号:20K08554 2020年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
伊藤 理, 成瀬 恵治, 佐藤 光夫
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
圧縮、ずり応力、ストレッチ、基質硬度など、機械的刺激や環境(メカニカルストレス)は、呼吸器の発達、生理機能と恒常性の維持に必要不可欠である。一方で、過剰なメカニカルストレスやメカニカルストレスに対する呼吸器の応答の不具合は、気管支喘息、COPD、肺線維症、人工呼吸器関連肺損傷、肺癌を含む多くの呼吸器疾患の病態機序につながる因子となると考えられ、近年注目されている。
2010年Patapoutian博士らにより、機械感受性Ca2+チャネルとしてPiezo1, Piezo2が発見され(Coste B, et al., Science 2010;335:55-60)た。メカノセンサー分子を発見した功績に対して、TRPV1発見者のJulius博士とともに、Patapoutian博士に対して2021年ノーベル生理学・医学賞が授与された。
研究代表者は、これまでメカノバイオロジーを行う中で、これらPiezoおよびTRPVファミリーに着目し、「呼吸器細胞のメカノセンサーとして働く」、更には「喘息や肺線維症など、メカニカルストレスが関与する病態との関連がある」、との仮説を立てて研究を行ってきた(Ito S, Curr Opin Physiol 2021;21:65-70)。
まずは細胞レベルの実験において、培養ヒト気道平滑筋細胞および肺線維芽細胞にはPiezo遺伝子、特にPiezo1のmRNA発現が発現していることを確認し、siRNA導入によりmRNA発現レベルが抑制されることを確かめた。Piezoによる気道平滑筋細胞や肺線維芽細胞の機能における制御機構について、検討を行っている。 -
NOX4が及ぼす心不全移行へのメカノトランスダクションの解明
研究課題/領域番号:20K12598 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
貝原 恵子, 成瀬 恵治, 入部 玄太郎
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
全身へのポンプ機能を有する心臓は常に収縮弛緩を繰り返しており、心臓生理を解明する上でメカノトランスダクション(力学刺激を細胞が生理反応に転換する過程の分子機構)を理解することは非常に重要である。一方、疾患や老化等の負のイメージが強い活性酸素( ROS: Reactive oxygen species )であるが、実は細胞分化や 免疫などに関与する生命にとって非常に重要な生理活性物質である。現在、我々は独自の単離心筋細胞伸展刺激システムを用いて、細胞伸展負荷時にNOX4( NADPH Oxidase 4 )由来のROSが産生され収縮力を上げることを明らかにしているが、そのメカニズムは不明である。また、慢性的なメカニカルストレスに対するNOX4由来のROSが、心疾患へどの様に影響を及ぼしているかも明らかでない。そこで、本研究においては慢性的なメカニカルストレス応答で産生されたNOX4由来のROSが心不全移行に関与しているとの仮説のもと、NOX4を介したメカニカルストレスがカルシウムハンドリングへ及ぼす影響を明らかにするとともに、NOX4由来ROSによる心不全への影響を解明することを目的とし、研究に着手している。 今年度は、NOX4由来ROSの関与が疑われるイオンチャネルTRPV1 ( Transient Receptor Potential Vanilloid 1 ) 経路について阻害剤やノックアウトマウス等を用いて、単一細胞での発生張力の測定を行ったところ、有意な収縮力の低下が明らかとなった。つまり、伸展によって産生されたNOX4由来のROSがTRPV1を活性化し伸展時の収縮力増強に関与している可能性が高いことが示唆されたが、詳細は不明であり、今後の更なる研究が期待される。
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がん組織に分布する感覚神経に着目した、がんの新規バイオマーカーと新規がん神経治療の開発
2020年
特別電源所在県科学技術振興事業
担当区分:研究分担者
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がん組織に分布する感覚神経に着目した、がんの新規バイオマーカーと新規がん神経治療の開発
2020年
特別電源所在県科学技術振興事業
担当区分:研究分担者
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メカニカルストレス負荷システムの開発
2018年10月 - 2021年02月
安全保障技術研究推進制度
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研究課題/領域番号:17K20108 2017年06月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
成瀬 恵治, 藤田 彩乃, 松浦 宏治
配分額:6110000円 ( 直接経費:4700000円 、 間接経費:1410000円 )
我々のからだは常に外界から物理的刺激を受け適切に反応しているが、機械刺激である静水圧は重要であるにもかかわらず、研究の進捗が遅れていた。そこで、静水圧負荷・解析システムの構築を行うことにより細胞内情報伝達機構の解明、更には再生医療・不妊治療への応用技術の開発を目的とした。まず初めに、高圧リアルタイム計測システムの構築に成功した.その結果、歯根膜細胞、軟骨細胞、精子の圧力負荷応答の計測が可能となり、圧力感受閾値や運動能の定量を実施した.本計測システムは、生体組織における恒常性メカニズムの解明及び、生殖医療への知見創出に繋がることが今後期待される。
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宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解
研究課題/領域番号:15H05935 2015年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
古川 聡, 根井 充, 松崎 一葉, 日出間 純, 東端 晃, 東谷 篤志, 成瀬 恵治, 瀬原 淳子, 高橋 昭久, 井上 夏彦, 長瀬 博, 森田 啓之, 岩崎 賢一, 那須 正夫, 村井 正, 嶋津 徹, 村上 敬司
配分額:72410000円 ( 直接経費:55700000円 、 間接経費:16710000円 )
長期宇宙滞在時、無重力の物理ストレスは筋萎縮や骨密度低下を、閉鎖環境の精神的ストレスは体内リズム不調を、放射線被ばく等の環境リスクはDNA 変異等をきたす。有人宇宙探査での超長期宇宙滞在に挑戦する時代にあって、これらは今解決すべき課題である。同時にこれら課題への深い理解は、地上の高齢化・ストレス社会における生命維持・恒常性の担保に貢献し、健康長寿社会につながる。
本領域では[A01~03]に横断・補完的研究[B01]を加えた11の計画研究と30の公募研究の相乗的展開により、上記目的達成を目指している。H30年度は新たに78本の論文が発行された。
これまで[A01]宇宙からひも解かれる生命分子基盤の理解では、細胞の重力応答をリアルタイム観察できる遠心蛍光顕微鏡システム開発(成瀬)、微小重力下で線虫TGF-β/DBL-1の発現低下(東谷)、神経筋接合部の維持因子活性化の検出プローブを開発(瀬原)、骨代謝における重力応答機構の発見(茶谷)、視床下部摂食中枢活動のライブイメージ化(川上)等、[A02]生命体個体の高次恒常性・適応機構と生命医学への展開では、重力負荷による脳血流量の低下(岩崎)、宇宙飛行で前庭系を介した血圧調節機能低下(森田)、オレキシン1型受容体特異的拮抗薬リード化合物の発見、睡眠を制御する2遺伝子を世界に先駆け発見(長瀬)、閉鎖環境によるストレスマーカー候補の検出(古川)、宇宙長期飼育マウスの破骨細胞による骨破壊が亢進(篠原)等、[A03]宇宙環境によるリスク因子研究では、模擬無重力装置に放射線同期照射システムを構築 (高橋)、国際宇宙ステーションでの微生物モニタリング(那須)等、[B01]では、クマムシの放射線耐性メカニズム解明(國枝)、放射線被ばくによる細胞ダメージの可視化(沢野)等があり、宇宙滞在はじめ極限的環境での生体維持機構やその基盤的研究が進んでいる。 -
研究課題/領域番号:15H05936 2015年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
成瀬 恵治, 曽我部 正博, 小林 剛, 高橋 賢
配分額:95030000円 ( 直接経費:73100000円 、 間接経費:21930000円 )
本研究は、細胞の重力応答をリアルタイムで観察できる遠心蛍光顕微鏡システムを開発した。これにより、数十分間の回転刺激に対する細胞形態変化のライブイメージングに成功した。
また細胞の重力感知に関する新たなメカニズムを発見した。宇宙では宇宙飛行士の骨密度が低下するが、これに一致するように模擬微小重力は間葉系幹細胞の骨分化に抑制的に働く。これは、模擬微小重力環境下で機械感受性イオンチャネルTRPV4の活動が低下し、続いてプロテインキナーゼCの活性が低下することにより、転写共役因子YAPの核内移行が抑制されることによることが示唆された。さらに、異種動物間の遺伝子発現量を統一的に解析する統計手法も開発した。 -
メカノメディスン:メカノ医工学を駆使した再生医療・生殖医療への展開
研究課題/領域番号:26220203 2014年05月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
成瀬 恵治, 王 英正, 高橋 賢, 松浦 宏治, 入部 玄太郎
配分額:201760000円 ( 直接経費:155200000円 、 間接経費:46560000円 )
メカノ心臓再生医療に関し、ヒトiPS細胞から自発的に収縮する心筋細胞への分化誘導を行った。この分化誘導は周期的伸展刺激により早期化し、ヒト線維芽細胞との共培養により促進された。小児拡張型心筋症に対する心臓内幹細胞の自家移植療法に関し、TICAP-DCM第1相臨床研究を3症例に対し行い、細胞移植を無事に実施した。
メカノ生殖補助医療に関し、マウス受精卵を用いてメカニカルストレスの有無による遺伝子発現の違いを網羅的解析したところ、胚発育、細胞死、環境ストレス等に関する遺伝子発現に有意差が見られた。また従来のマウス用チャンバーに対し、ヒト受精卵に利用可能な高純度シリコン樹脂製チャンバーを完成させた。 -
ストレッチ刺激が培養皮膚に及ぼす影響の解析~オーダーメイド皮膚の作成を目指して~
研究課題/領域番号:26462732 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
長谷川 健二郎, 高橋 賢, 成瀬 恵治, 徳山 英二郎
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
我々は、世界初の3次元全層培養皮膚の伸展培養が可能なシステムを開発しており、今回このシステムを用いて伸展刺激が3次元全層培養皮膚に及ぼす影響の解析を行った。伸展刺激を加えた群で表皮層の厚みが増し、表皮分化マーカーであるinvolucrinの発現が増加しており、伸展刺激が表皮細胞の分化・増殖を促進することが示唆された。さらに基底膜構成タンパクであるLaminin 5, Collagen IV/ VIIの合成および基底層への沈着が増加し、基底膜におけるLamina densaの長さとヘミデスモゾームの数も有意に増加しており、伸展刺激により、より発達した基底膜を形成することが分かった。
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関節破壊を制御するマイクロRNAの統合的解析と軟骨における機能解析
研究課題/領域番号:26293338 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
廣畑 聡, 伊藤 佐智夫, 成瀬 恵治, 西田 圭一郎, 大月 孝志, 二宮 善文
配分額:16250000円 ( 直接経費:12500000円 、 間接経費:3750000円 )
本研究は変形性関節症の細胞外マトリックス分解に中心的役割を持つアグリカナーゼの遺伝子発現レベルがmicroRNAによってどう制御されるかを統合的に解析し、その作用メカニズムを明らかにした。microRNAの標的遺伝子を探索するために、複数のデータベースを使い候補となる遺伝子を絞り込んだ。今回の研究によって、変形性関節症の細胞外マトリックス破壊に役割を持つ可能性のある新たなmicroRNAを同定し、機能を明らかにすることができた。
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心疾患治療に向けた革新的次世代メカノ組織工学・再生医療の創生
研究課題/領域番号:26242042 2014年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
成瀬 恵治, 王 英正, 高橋 賢, 入部 玄太郎
配分額:23270000円 ( 直接経費:17900000円 、 間接経費:5370000円 )
心臓再生医療において、力学的・機械的刺激(メカニカルストレス)を用いた新しい技術を開発するために研究活動を行った。まず、心臓機能障害の動物モデルを作出するためにin vivoでECGを記録しつつラット冠状動脈左前下行枝(LAD)を結紮する実験を行った。組織学的解析の結果、LAD支配領域に心筋壊死による梗塞巣が形成されていることが確認された。計画段階において、心機能障害のモデルとして心筋梗塞モデルと右心不全モデルの作出を想定していたが、心筋梗塞モデルの作出は達成された。
細胞培養による移植細胞の作出実験に関しては、3次元培養用の培養装置の開発を行い、これを用いた細胞培養を開始した。新生児ラットの単離心筋細胞およびラット心筋細胞株を用いた実験により、ゲルを足場にして細胞が3次元的に生育あるいは増殖することを確認した。この成果により、ずり応力およびストレッチによる機械的刺激を細胞に負荷する環境が確立された。
またOxford大学客員教授のPeter Kohlを招聘し、メカニカルストレスによる心臓再生医療の開発に関しディスカッションを行った。さらにメカノバイオロジーの世界的な権威が集う国際学会International Symposium on Mechanobiology 2014に研究者を参加させ、関連研究領域の情報収集を行った。また3次元プリンタのワークショップにも研究者を参加させ、細胞培養用の培養器開発の実務的知見を取得させた。
本研究の内容を包括する基盤研究(S)「メカノメディスン:メカノ医工学を駆使した再生医療・生殖医療への展開」の交付決定に伴い、本研究課題を終了しこれに引き継ぐこととした。 -
研究課題/領域番号:25560199 2013年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
成瀬 恵治
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
我々の体は、歩行時の膝にかかる荷重など、常に機械的な刺激を受けている。これらの刺激は細胞機能の活性化に役立っていると考えられている。本研究では、機械刺激と細胞機能の関係を明らかにし、機械刺激の作用を利用するため、実験的に軟骨(肉腫)細胞を自己集合性ペプチドゲルと呼ばれるゲルの中で培養した後、引っ張り刺激を繰り返し与えた。その結果、細胞からのコラーゲンとその他のタンパク質の産生量が低くなることを確認した。
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新しい自己集合性ペプチドゲルを用いた3次元全層皮膚ストレッチ培養に関する研究
研究課題/領域番号:24592713 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳山 英二郎, 成瀬 恵治, 高橋 賢, 永井 祐介
配分額:5330000円 ( 直接経費:4100000円 、 間接経費:1230000円 )
我々は、本研究において新しい自己集合成ペプチドゲルを用いて3次元全層培養皮膚の作成を試みたが、強度的に伸展培養が困難であった。そこで、1型コラーゲンゲルを用いる方法に変更することで強度が安定し、世界初の3次元全層培養皮膚ストレッチシステムを構築することに成功した。これを用いて、伸展刺激を加えた皮膚を解析したところ、伸展刺激を加えなかった皮膚に比べ、表皮層の肥厚、基底膜タンパクの増加が認められ、電子顕微鏡による観察では基底層におけるヘミデスモゾーム及びlamina densaが増加する所見が得られた。このシステムを用いることにより、より生体に近い条件での実験が可能になったと考える。
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機械刺激受容体を介したSOX9発現増加による培養軟骨細胞の脱分化抑制法の開発
研究課題/領域番号:24659671 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
石黒 直樹, 鬼頭 浩史, 酒井 忠博, 金子 浩史, 三島 健一, 成瀬 恵治
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
ATDC5細胞の軟骨分化ではTRPV4mRNA発現がSOX9mRNA発現に先行して上昇、プロテオグリカン、II型コラーゲンも増加し軟骨分化作用との関わりを示した。機械刺激を負荷する実験系では、TRPV4活性化と、SOX9遺伝子発現の上昇、更にII型コラーゲン、プロテオグリカン産生亢進を確認した。TRPV4をRNA干渉によって抑制するとSOX9、II型コラーゲン、アグリカンのmRNA発現量は低下した。機械的刺激はTRPV4を介して、軟骨細胞分化促進効果を発揮していることを示した。TRPV4は軟骨分化に重要な働きを持つと共に、最適化した機械的刺激はTRPV4活性化を介して軟骨細胞分化に働くと結論した。
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自己集合性ペプチドゲルによる神経再生の有用性
研究課題/領域番号:24791907 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
妹尾 貴矢, 長谷川 健二郎, 成瀬 恵治, 永井 祐介
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
神経修復に用いる人工神経の新たな素材として、100%化学合成されたゲル状素材である自己集合性ペプチドゲルを充填し実験を行った。人工神経に用いられるその他先行品と比較したところ、神経再生においてほぼ同等の効果を確認した。自家神経に比較すれば及ばないものの、ゲルを使用しない場合に比較して良好な神経再生が得られることを確認した。同素材は今後の100%合成での人工神経作成を目指すにあたり有用と思われる。
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関節破壊を制御する転写因子とマイクロRNAの誘導機構とその治療応用
研究課題/領域番号:23390366 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
廣畑 聡, 二宮 善文, 成瀬 恵治, 西田 圭一郎, 大月 孝志, 小川 弘子
配分額:19110000円 ( 直接経費:14700000円 、 間接経費:4410000円 )
本研究の目的は変形性関節炎(OA)の細胞外マトリックス分解に中心的な役割を果たす切断酵素アグリカナーゼの遺伝子発現を制御するmicroRNAと転写因子群の発現制御を明らかにすることである。細胞伸展刺激装置を用いた軟骨様細胞実験系において、メカニカルストレスによる転写因子の発現誘導を解析した。転写因子においてはHIF-2は刺激によってそれほど上昇顕著ではなく他の転写因子の関与が大きいと考えられた。microRNAに関しては、サイトカイン刺激とメカニカルストレス刺激による反応性を網羅的に解析した。既報のmiR-140を含め、microRNA変動が層別化できることが初めて明らかとなった。
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心機能制御における心肥大・心室形態調節の分子基盤と臓器機能連関のフィジオーム解析
研究課題/領域番号:23300171 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
毛利 聡, 橋本 謙, 氏原 嘉洋, 成瀬 恵治, 宮坂 武寛
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
心臓の血液ポンプ機能は心筋の量と性質、心室形態によって決まり、その制御は外界からの情報を感知して、変化に適応する形で行われる。その例として出生時における心筋分裂の停止と肥大への移行について検討した。胎児心筋細胞を3%酸素下と20%酸素下で培養したところ低酸素下では分裂が継続したが、高濃度酸素では分裂が停止した。それぞれの条件で発現が変化した遺伝子を検索して、分裂を停止している心筋細胞を再び分裂させるために有用な知見が得られた。また、心筋細胞の機械的受容を司る分子のについて検討し、TRPV2と呼ばれる介在版のイオンチャネルが心臓機能や構造の維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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心筋細胞内小器官の機械感受性と動的心筋バイオメカニクスの関係
研究課題/領域番号:23300167 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
入部 玄太郎, 脇元 修一, 成瀬 恵治
配分額:18720000円 ( 直接経費:14400000円 、 間接経費:4320000円 )
我々はこれまで心筋細胞の伸展刺激によってカルシウムスパーク(筋小胞体カルシウム放出チャネルであるリアノジン受容体からの局所的で自発的なカルシウム放出現象)頻度が増加することを報告してきた。これまでこの現象には細胞膜上のNADPHオキシダーゼ由来の活性酸素が関わっているとされてきたが、今回の研究により、この現象は伸展刺激によるミトコンドリアからの活性酸素産生上昇がリアノジン受容体を刺激することによるものであることが明らかとなった。
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細胞外マトリックスによるがん血管新生、リンパ管新生制御のメカノバイオロジー
研究課題/領域番号:23612004 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
稲垣 純子, 廣畑 聡, 二宮 善文, 成瀬 恵治
配分額:5460000円 ( 直接経費:4200000円 、 間接経費:1260000円 )
ADAMTS1はマトリックス分解酵素であり強力な血管新生抑制作用を持つ。ADAMTS1のリンパ管新生への効果と、担がんマウスモデルにおけるがん組織中の内圧と腫瘍増殖、リンパ管新生の関係について検討した。リンパ管内皮細胞に強制発現させたADAMTS1は、VEGFCと複合体を形成しVEGFR3のシグナル伝達を阻害することでリンパ管新生を抑制することが明らかになった。また、内圧の増大する腫瘍にVEGFCを投与しリンパ管を形成させると、腫瘍の増大が抑制された。さらに、伸展刺激がADAMTS1やリンパ管新生関連遺伝子の発現に影響を与えている可能性が示唆された。
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自己集合性ペプチドゲルを用いた3次元培養ストレッチシステムの開発
研究課題/領域番号:23650264 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
成瀬 恵治, 貝原 恵子, 永井 祐介
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
効率的な組織再生を行うために、3次元培養組織に機械刺激を加えることができるシステムの開発を行った。独自に開発した自己集合性ペプチドゲルおよび伸展培養容器を組み合わせたシステムを用い、3次元培養したマウス筋芽細胞に伸展刺激を加えたところ、細胞内ERKのリン酸化や細胞増殖率の向上が確認された。これらの結果から、本システムが3次元培養細胞に機械刺激を与え、増殖などを制御できることが証明された。
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医工学的解析に基づく生体機械受容システムの分子的基盤と生理学的意義の解明
研究課題/領域番号:22240056 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
成瀬 恵治, 毛利 聡, 中村 一文, 竹居 孝二, 山田 浩司, 入部 玄太郎, 片野坂 友紀
配分額:50570000円 ( 直接経費:38900000円 、 間接経費:11670000円 )
生体内では至るところで、重力・伸展や剪断応力といった物理的な機械刺激が生じている。細胞の機械受容システムを介して伝達されるこのような刺激は、単に生体にとって不利益なストレスではなく、発生過程や臓器機能発現に不可欠な生体情報であることが次第に明らかになってきた。本研究では、独自のメカニカルストレス負荷システムおよび評価系の開発を通して生体での機械受容環境を再現し、生体の巧みなメカニカルストレス応答機構を明らかにする。
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マルチレベル医工学評価法に基づく心筋メカノセンサーの作動機序と病態生理的役割
研究課題/領域番号:21300166 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
片野坂 友紀, 成瀬 恵治, 毛利 聡, 金川 基, 片野坂 公明
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
心不全に至る原因や過程は一様ではないが、唯一、高血圧などの血行力学負荷は共通の引き金である。
本研究では、臨床で経験されるような多様な血行力学負荷が、どのような機構で心肥大・心不全の発症および重症化を招くのかを明らかにするために、心筋メカノセンサーの作動機序と心不全発症への役割を解明することを核とした分子・細胞・生体を網羅するマルチレベル医工学的評価法に基づいたトランスレーショナルリサーチを展開する。この結果、心臓ポンプ機能を長期にわたって維持する分子的基盤を得ることを目的としている。
昨年度に引き続き、心筋細胞の興奮収縮連関に大きく関わるCa2+輸送体に関するトランスジェニックマウスを作製することを通して、血行動態負荷(メカニカルストレス)に対する臓器応答、心筋細胞応答を解析した。具体的には、特定の輸送体の発現レベルを調節したときのみに、特定の臓器形態的変化、機能変化が見られることが明らかとなった。また、新生児培養心筋細胞応答の解析からは、それぞれのトランスジェニックマウスにおける肥大応答能力を解析することが可能であった。これらの結果を総合して判断すると、心筋細胞の興奮収縮連関に大きく関わるCa2+輸送体には、それぞれ適切な分子発現量が存在し、その範囲内で可能な適応現象も、その範囲を超えることで適応不能へ陥ることが明らかとなった。得られた知見から、心肥大から不全への進行におけるCa2+輸送体の役割を、より詳細に議論することが可能となった。さらに、本年度は、生体メカノセンサーの病態生理学的な役割を明らかにするために、様々な血行動態負荷(メカニカルストレス)によって引き起こされる細胞内リモデリングを分子レベルで明らかにした。この結果、血行動態負荷(メカニカルストレス)のかかりかたによって、細胞応答が大きく異なることが明らかとなってきたところである。 -
細胞膜を破壊する蛋白質・ペプチドと膜の相互作用の単一巨大リポソーム法による研究
研究課題/領域番号:21310080 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山崎 昌一, 岡 俊彦, 丹波 之宏, 宇理須 恒雄, 成瀬 恵治
配分額:19630000円 ( 直接経費:15100000円 、 間接経費:4530000円 )
直径10μm以上の巨大リポソーム(GUV)を用いた単一GUV法を利用して、細胞膜に障害を与える蛋白質/ペプチドと脂質膜との相互作用を研究した。抗菌ペプチド・マガイニン2による膜中のポア(小さな孔)形成の速度定数がペプチドの膜表面濃度により決定されることや、蛍光プローブの膜透過速度定数の測定より、ポア形成時にポアの大きさが時間的に変化することを見出した。また、スフィンゴミエリンに特異的に結合する蛋白質毒素ライセニンの膜中でのポア形成やポアにおける蛍光プローブの膜透過係数などを解明した。
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医工学的解析に基づく肺ストレッチセンサーを介した肺癌発症機構の解明
研究課題/領域番号:21650113 2009年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
片野坂 友紀, 成瀬 恵治, 毛利 聡
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
我々の体を構成するほぼすべての細胞は、生命活動において常に機械刺激(メカニカルストレス)を受けているが、細胞の機械受容については未だ不明な点が多い。
肺は、我々が呼吸のたびに受動的にストレッチされる組織である。肺胞内部は、サーファクタントという脂質で覆われており、これが機能しないと直ちに肺が広がらなくなり呼吸不全に陥る。サーファクタントは、ストレッチ依存的に肺胞上皮から分泌されることが知られているが、肺のストレッチセンサーが未だ不明であるため、その分泌メカニズムは明らかにされていない。本研究では、生体の肺の膨張を再現する細胞伸展装置を開発し、肺ストレッチセンサーが、肺癌発症において重要な役割を持つことを証明することを目的とする。
本年度は、ストレッチセンサー分子と細胞増殖や分化の関係を明らかにするために、肺の膨張を再現するようなin vitro実験装置を開発した。具体的には、呼吸における肺の膨張を再現するようなin vitro実験系を確立するために、我々が既存に開発しているストレッチ装置を改良し、肺胞上皮細胞の初代培養細胞単離技術を確立した。また、数種類の肺癌由来細胞株を用いて、メカノセンサー分子類の発現や局在を詳細に解析し、肺癌発症におけるメカノセンサーの生理的役割を検討した。 -
冠循環・心臓メカニクス連関:分子進化から心機能、心不全発症機構までの医工学的解析
研究課題/領域番号:20300160 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
毛利 聡, 成瀬 恵治, 片野坂 友紀, 中村 一文, 宮坂 武寛, 入部 源太郎, 橋本 謙
配分額:18460000円 ( 直接経費:14200000円 、 間接経費:4260000円 )
脊椎動物の心臓は大別して冠循環を有するものと、心室内腔から直接血液が流入するタイプがある。冠循環心臓(ラット)と非冠循環心臓(カエル)の心機能を可変弾性の概念で評価すると、冠循環心臓は拡張期優位の血流を維持するために心室の拡張を制限して収縮性優位の構造を実現していた。また、心肥大・心不全時における心室形態制御を検討するために薬物投与によりNa-Ca交換体を心臓に強発現できるモデルマウスを作成し、内腔拡大を伴わない求心性肥大と拡張性の低下を確認した。
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ヒト心筋細胞の興奮収縮連関制御における機械的負荷の役割
研究課題/領域番号:20300159 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
入部 玄太郎, 成瀬 恵治, 毛利 聡, 片野坂 友紀, 佐野 俊二, 大島 祐
配分額:16900000円 ( 直接経費:13000000円 、 間接経費:3900000円 )
正常な心臓の心拍はたくさんの細胞が協調、影響しあって行われている。そこに伸展や衝撃といった物理的な外乱が加わるとその調和が乱れ、不整脈などの原因となるが、そのような物理的なな刺激の心臓への影響はよくわかっていなかった。今回の研究では細胞が急激に伸展されたときに起こる細胞内外でおこるさまざまなイオンの流入や流出の変化を詳細に調べ、そのときに起こる不整脈の発生メカニズムを明らかにすることができた。
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関節炎におけるアグリカナーゼ制御機構と変形性関節症早期診断・関節保護治療への応用
研究課題/領域番号:20390399 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
廣畑 聡, 二宮 善文, 成瀬 恵治, 大橋 俊孝, 西田 圭一郎
配分額:19630000円 ( 直接経費:15100000円 、 間接経費:4530000円 )
同意が得られた関節炎患者におけるADAMTS9のSNPを解析した。ADAMTS9のプロモーター解析でNF-κBの結合を同定した。関節炎患者由来細胞に周期性伸張刺激を加えるとADAMTS1,4,5,9はいずれも異なる発現誘導パターンを示した。COL1A1の発現増強とともにインテグリンの関与を明らかにした。軟骨細胞にメカニカルストレス刺激を加えるとMMP-13およびADAMTS-5が増加し、RUNX-2とp38MAPKが関与していた。ラット変形性関節炎モデルを作成し解析を行った。
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心不全発症における機械負荷様式の多様性~機械受容分子応答機構と新規治療開発
研究課題/領域番号:19200037 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
成瀬 恵治, 毛利 聡, 松井 秀樹, 富澤 一仁, 片野坂 友紀, 入部 玄太郎, 中村 一文, 草野 研吾, 大江 透
配分額:49400000円 ( 直接経費:38000000円 、 間接経費:11400000円 )
近年、肥大の分子メカニズムが解明されつつあるが、臨床的に経験される肥大は、心負荷の機械的・時間的特性に依存した多様な応答であり、一元的な現象ではない。本研究では、心不全発症における筋形質膜のCa^<2+>輸送体の制御機構を解明するトランスレーショナルリサーチを展開して、実際の臨床で見られる機械負荷様式が多様な心不全に適用できるCa^<2+>ハンドリング是正治療を新規治療として開発することを目的とする。
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ムスカリン受容体作動性陽イオンチャネルとその調節系の分子実体解明
研究課題/領域番号:19590202 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
高井 章, 吉田 晃敏, 成瀬 恵治, 大日向 浩, 宮津 基, 高井 佳子
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
副交感神経支配の効果器の典型である毛様体筋において、受容体作動性非選択性陽イオンチャネル(NSCC)の分子候補としてのTRPC(4種)とOrai1、およびそれらの調節に関与する可能性のある分子としてのG_(q/11)、STIM1、RhoA/kinase、rianodine受容体などの存在と細胞内局在を明らかにした。さらに、それらの機能的意義を検討した。
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生体血管膜モデルを用いた血管新生・消退機構の統合的解析
研究課題/領域番号:19659450 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
高畠 隆, 大月 洋, 成瀬 恵治, 毛利 聡, 森實 祐基
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
本研究は、1)瞳孔膜消退過程のメカニズムの詳細に対する分子生物学的検討、2)瞳孔膜の消退が眼球全体の発達に及ぼす影響についての検討を目的とした。1)我々はこれまでに虹彩の動きが瞳孔膜血管の血流の停止再開を誘導し、それによる虚血再還流障害によって瞳孔膜を構成する血管内皮細胞のアポトーシスが誘導されることを明らかにした。今回我々は虚血再還流障害以降の過程でどのような因子が機能しているか検討を行った。我々は血管内皮細胞のアポトーシスに関与するとサイトカインの中で、血管内皮細胞増殖因子と骨形成因子、また虚血再還流障害による細胞死において重要な役割を果たす活性酸素に注目しこれらの因子について瞳孔膜の消退時期における産生量について検討した。具体的には眼球の前房水中の血管内皮細胞増殖因子、骨形成因子、活性酸素の産生量を経時的に定量した。血管内皮細胞増殖因子および骨形成因子については瞳孔膜消退の前後で産生量に有為な変化を認めなかった。また活性酸素の産生量については計測が困難で有為なデータを得ることが出来なかった。2)瞳孔膜の消退が関与する他の眼球発達過程として我々は水晶体におけるナトリウム/カルシウム交換体の発現と硝子体動脈の消退に着目した。我々は虹彩の動きを抑制し瞳孔膜の消退を抑制し瞳孔膜を残存させた。そしてナトリウム/カルシウム交換体の発現をwesternblot法で検討した。また水晶体後方に存在する硝子体動脈の消退をその血管分岐点数を定量し検討した。瞳孔膜消退時期においてはナトリウム/カルシウム交換体の同位体1の発現を認めたが、その他の同位体の発現は認めなかった。同位体1の発現と瞳孔膜消退との間に因果関係を認めなかった。虹彩の動きを抑制すると瞳孔膜の残存がみられたが硝子体動脈の消退に影響はみられなかった。硝子体動脈の消退には虹彩の動きは関与していない可能性が高いと考えられた。
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心不全におけるCa2+ハンドリング機構解明と是正治療の開発
研究課題/領域番号:19790529 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
片野坂 友紀, 成瀬 恵治, 毛利 聡, 竹内 崇, 岩崎 慶一朗
配分額:3690000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:390000円 )
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に充分な血液を送りだせなくなる状態である。最近の研究から、心不全の発症と進展には、心筋細胞内Ca2+調節破綻が大きく関わっていることが知られてきたが、そのメカニズムは未だ不明な点が多い。本研究の目的は、心不全発症に大きく関わるCa2+輸送体を同定し、この病態生理的意義を明らかにすることを通して、新規治療法開発の分子的基盤を得ることである。
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未熟児網膜症におけるヘモグロビン変換の関与
研究課題/領域番号:19659451 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
毛利 聡, 成瀬 恵治, 片野坂 友紀, 宮坂 武寛, 森実 祐基
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
未熟児網膜症は低体重出生児への過剰な酸素投与を中止した際に網膜の相対的低酸素状態が惹起され、病的な血管新生によって起こる網膜剥離が原因とされる。酸素運搬体であるヘモグロビンは生後胎児型(高酸素親和度)から成人型に変化酸素を容易に放出する成人型に変換されていくが、この変換が進んでいる症例では末梢組織(網膜)での酸素放出量が多く、酸素中止時の相対的低酸素が顕著になり未熟児網膜症を発症し易いという仮説を検証するために高速液体クロマトグラフィーを用いてカラムや溶離液の作成、グラディエント条件を検討して計測システムを構成した。また、赤血球の特性としてヘモグロビンによる一酸化窒素(NO)の結合や酸化による微小循環制御の解明のため、NO標準液を溶解させた生理食塩水(NO:190nM)50mlにヘパリンによる抗凝固を施した全血を0.3ml懸濁させてNO濃度の変化をNOセンサを用いて計測した。この実験系では成人型ヘモグロビンを含む赤血球が190nMのNOを90%減少させた。胎児型ヘモグロビン比率の計測には、赤血球による陽イオン交換カラムを用いて検出波長は415nm、流量は2ml/minとして、新生児の臨床検査のために採血した血液の廃棄分を用いて計測した。測定方法の妥当性を確認するために出生後週齢と胎児型ヘモグロビン比率について検討し、ロジスティック関数によるカーブフィティングから約8週齢で50%が成人型に変換されていた。今後これらの確立された実験系を用いて未熟児網膜症症例との関連を検討するとともに、胎児ヘモグロビン比率とNOの関係を検討する。
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新規アグリカナーゼの関節炎早期における誘導メカニズムとその役割・診断的応用
研究課題/領域番号:18390416 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
廣畑 聡, 二宮 善文, 西田 圭一郎, 成瀬 恵治, 小川 弘子
配分額:17180000円 ( 直接経費:15500000円 、 間接経費:1680000円 )
1:アグリカナーゼ誘導に関わる細胞内分子メカニズム
Wister系胎児ラットの膝関節から軟骨細胞を分離培養し、メカニカルストレスを加え、ストレス刺激時のアグリカナーゼ発現誘導を調べた。最終的に7%伸展(0.33または0.5Hz)で刺激後、0.5,2,6,12時間後にRNAを抽出し、各アグリカナーゼ発現の変化を検討したところ、アグリカナーゼ-2であるADAMTS 5は殆ど発現レベルに変化を生じないのに対して、ADAMTS1,4,9はいずれも発現が上昇している結果が得られた。
次にADAMTS9の発現誘導に関わる細胞内転写因子およびその結合部位に関する研究を行った。まず、ヒトADAMTS9のプロモーター部位をgenomic PCRにて得ることに成功した。異なった長さのDNAをルシフェラーゼアッセイ用のベクターに組み込んでコンストラクトを作成しルシフェラーゼアッセイを行い最もプロモーター活性の強いコンストラクトを決定した。
2:ラットOAモデルおよびマウス成長軟骨におけるADAMTS9発現動態の解析
雄性Wisterラット(200-300g)を用いて変形性関節炎モデルを作成し免疫染色を行った。関節破壊が進行しているステージではADAMTS9陽性細胞を多数認めたが、一方進行した時期ではむしろADAMTS9陽性細胞は減少していた。
次に、0週,7週,14週齢雄ICRマウスにおけるADAMTS-9のmRNA発現の検討を行った。マウス脛骨成長軟骨において、ADAMTS-9は成熟軟骨細胞層で一部陽性、肥大軟骨細胞においては、mRNAレベルで強く発現していた。成長軟骨における軟骨分化過程において、軟骨細胞が肥大化する際に、周辺のマトリックスを分解する手段の一つとしてADAMTS-9が関与する可能性があると考えられた。 -
研究課題/領域番号:17076006 2005年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
成瀬 恵治, 高井 章, 宮津 基, 毛利 聡, 片野坂 友紀, 入部 玄太郎, 片野坂 友紀, 入部 玄太郎
配分額:101500000円 ( 直接経費:101500000円 )
本研究では、私たちの体の"力"を感じるメカニズムの解明に向けて研究を行ってきた。具体的には、細胞の伸展刺激や薬物刺激に対する応答解析のための方法論をソフトリソグラフィーという微細加工技術に着目して開発し、これを用いて刺激応答の解析を行ってきた。また、高速原子間力顕微鏡という液中で分子の動きを観察する方法により、高い時間空間分解能で分子動態の観察を行い、体内における分子動態を解明してきた。
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新規微量プロテインフォスファターゼ群の分子クローニングと機能解析
研究課題/領域番号:17659059 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
高井 章, 大日向 浩, 宮津 基, 成瀬 恵治
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
ウサギの脳、心臓、腎臓、肝臓、骨格筋などの臓器をホモゲナイズして得られた抽出液を、それぞれ1型および2A型プロテインフォスファターゼ(PP1とPP2A)の高親和性阻害剤の一つであるミクロシスチンLR(MCLR)をリガンドとしたアフィニティカラム(現有)に通し、PP 1/PP2Aを除去したのち、液体クロマトグラフィ (LQ)(イオン交換LQ,疎水性LQ,ゲル濾過)にかけ、得られた分画についてPP活性を測定した。基質としては32P・燐酸化蛋白(カゼイン、ミオシン軽鎖、フォスフォリラーゼ、ピストンなど)の他、人工の発色基質(ρ-ニトロフェニル燐酸)などを試みた。
検出された酵素活性について、陽イオン要求性、阻害剤感受性[酒石酸、プロモテトラミゾール、アントラセン-9-カルボン酸(9AC)など]に基づいて新規PPを含む分画の同定を試みた。特に、9AC感受性分画を中心に二次元電気泳動や分取用等電点電気泳動装置を用いた酵素蛋白の精製を進め、目的とする酵素蛋白が二次元電気泳動により単一スポットとして泳動される程度に精製した。さらに、そのような試料についてN末のアミノ酸分析を行い、その配列情報をもとにdegenerated primerを設計してPCRを行い、全cDNA配列の決定に努めている。
今後、9AC感受性PPのcDNA全配列の決定とそれに基づいた発現系の確立を目指す。また、9AC感受性PP以外のPP活性を持つ分画に関しても同様の分析を進める。
なお、上記と並行してこれまで成功した例のない、大腸菌におけるPP2Aの大量発現系の構築を試みた。まだフォスファターゼ活性のある酵素の発現には至っていないが、2つの調節性サブユニットや分子シャペロンとの共発現により、従来より格段に多いPP2A蛋白の発現をおこすことができるようになった。 -
長期継代培養細胞を用いた視細胞イオンチャネル異常疾患研究のための実験系構築
研究課題/領域番号:17659539 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
大日向 浩, 吉田 晃敏, 高井 章, 成瀬 恵治, 宮津 基, 高井 佳子
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
ヒト網膜芽細胞腫(Y79株とWERI-Rb-1株)においてnystaatin法による全細胞電位固定実験をおこない、イオンチャネルの同定を試みた。その結果、tetraetahylammonium (TEA)や4-anminopyridineに感受性を示す少なくとも2種類のK^+チャネル、テトロドトキシン(TTX)に感受性を示すNa^+チャネルnifedipineに比較的弱い感受性を示すCa^<2+>チャネルなど、いずれも膜電位依存性のイオンチャネルの存在が示唆された。
RT-PCR法により、先天性停止性夜盲症(FSNB)における遺伝子変異が報告されているL型Caチャネルα「サブユニットの網膜アイソフォーム遺伝子(CACNAIF)が、少なくともmRNAレベルではヒト網膜芽細胞腫培養細胞にも発現していることを確認した。現在さらにα_2-、β_1-、β_2-、γ-およびδ-サブユニットの発現を検討中である。今後は、抗体をもちいたWestern blotの実験を進め、タンパクレベルでの発現も検討する。
現在、CACNAIFについてsiRNAをいくつか作成し、そのノックダウンを試みている。十分な発現抑制を起すsiRNAが得られたら、特に上記のCa^<2+>チャネル電流の変化に注目した電気生理学的実験を進める予定である。さらに、CACNAIFをノックダウンしたのち、 FSNBにみられるいくつかの点突然変異を人為的に組込んだものを発現させ、電気生理学的特性を調べる。
上記と並行して、同一の実験装置を用いウシ毛様体筋の単離細胞を短期培養したものにおいて、先に本研究グループの発見したムスカリン受容体刺激により開口する2種類の非選択性陽イオンチャネルおよびその開口調節に関わる信号伝達系の性質を詳細に検討した。その結果、これらのチャネルはM3型ムスカリン受容体からG_<q/11>を経て送られる信号に応じて開口することを示す見を得た。 -
光駆動ナノメカトロニクスの提案開発
研究課題/領域番号:17206023 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
生田 幸士, 加藤 大香士, 太田 祐介, 池内 真志, 長谷川 忠大, 成瀬 恵治, 山田 章
配分額:50700000円 ( 直接経費:39000000円 、 間接経費:11700000円 )
従来のマイクロアクチュエータと根本的に異なる,光エネルギだけで駆動制御する、新たな「光駆動ナノメカトロニクス」の世界を開拓するための研究を行った.
1)基本概念の構築
従来のマイクロアクチュエータは,可動素子とエネルギ伝達用のリード線の両者のマイクロ化が不可欠であった.しかし,光駆動の場合,単に透明な材質でマイクロ,ナノスケールの可動部品があれば,可視,赤外レーザの照射により,レーザトラッピングの原理で,外部から遠隔駆動できる.さらに,透明ビーズの光トラップなど従来の光駆動では,運動の自由度は1/2に限定されていた.1/2とは,単に物体を押す作用だけで,物体を引っ張る方向の自由度はないからである.他方,本研究で提案している光駆動ナノマシンは,ロボットハンドのように,押す方向と引く方向に加え,ひねるなど,完全な6自由度を実現できる大きなメリットを持つ.細胞操作など微細作業に完全な6自由度をもたらすことができる.
2)製作手法
本研究室の独自開発のマイクロ光造形法の一つである「高速2光子ナノ光造形法」を用いて,軸付きギアなど可動メカニズムを100ナノメータの分解能で製作できた.ロボットマニピュレータと同様,多自由度を持つ10ミクロンのサイズのナノマニピュレータの試作に成功した.
3)基本特性の実証
YAGレーザをナノマニュピレータ内に焦点を合わせ,十分な早さで遠隔駆動することに成功した.10Hz以上の応答性も確認した.
4)遠隔操縦システムの構築
把持,リスト,アームの3自由度を持つ光駆動ナノマニピュレータと操縦用マスターハンドを開発した.リアルタイムでの操縦実験で,光学顕微鏡下のスライドグラス上の水滴内で数ミクロン径の細胞を操作し、画像認識により、細胞の反力を計測する系を開発した.
以上のように、「光駆動ナノメカトロニクス」の将来の応用をめざし、非バイオ系とバイオ系の双方にわたる、広範なナノ操作の可能性を実証した。 -
機械受容チャネルを核としたメカノバイオロジーの創成
研究課題/領域番号:16GS0308 2004年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術創成研究費
曽我部 正博, 辰巳 仁史, 成瀬 恵治, 吉村 建二郎, 吉村 建二郎, 成瀬 恵治
配分額:497640000円 ( 直接経費:382800000円 、 間接経費:114840000円 )
細胞の機械刺激受容・応答能は生命現象を支える根幹機能であるが、その分子機構は全く未解明であった。本研究では、(1)変異体を用いた実験とシミュレーションにより、機械刺激受容チャネルである細菌Mscの張力感知部位を同定し、活性化過程における膜脂質との相互作用・張力感知とチャネル開閉の連関の詳細を明らかにした。(2)細胞骨格であるストレス繊維が、チャネルや接着斑と分子複合体を形成し機械刺激の伝達・収斂といった役割を担うこと、さらに、それ自体が機械刺激感知のセンサーであること、を見出した。(3)応用研究として新規機械刺激受容チャネルブロッカーの探索を行い、心臓の不整脈治療薬の候補を見出した。
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軟骨細胞に最適化したバイオリアクターの開発
研究課題/領域番号:16659406 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
石黒 直樹, 西田 佳弘, 成瀬 恵治
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
目的:軟骨細胞移植の臨床研究に向けて均質で高品質な培養軟骨細胞を短時間に多量に供給可能な培養装置(バイオリアクター)の開発とその最適な培養条件を検討する。
研究方法及び結果
(1)ウサギ軟骨細胞を大腿骨、頸骨より採取し、SOX9遺伝子発現を指標に単層培養にて細胞増殖能を検討した。増殖した細胞を再びアガロースゲルを使用した3次元培養法にて培養、細胞増殖と基質合成能、SOX9遺伝子発現を調べた。SOX9,Type II collagen, Aggrecan遺伝子の発現をRT-PCRにて定量的に確認した。これら軟骨形質に関わる遺伝子は単層培養では培養早期から低下を示した。単層培養を継代することにより失われた軟骨細胞の形質はSOX9遺伝子の導入のみでは困難であった。又3次元培養に戻しても部分的な回復に止まった。現状の単層培養による細胞増殖では培養期間に限度があることが判明した。
(2)機械的刺激下培養条件での軟骨細胞培養 ヒト軟骨細胞様細胞株HCS2/8に3次元下に機械的刺激を加える装置を作成した。細胞をコラーゲン内に3次元培養しこれに変形力を加えて細胞に圧縮と伸張変形を起こすことができた。3次元培養で各種力学的刺激を軟骨細胞に加えることにより軟骨細胞の代謝に変化が起こることを示した。特にII型コラーゲンとアグリカン合成能は条件により大きく影響を受けることが明らかとなった。
考案:本研究により単層培養の軟骨細胞増殖に限界があることが確認された。これは遺伝子導入では回復困難であるため、脱分化させない培養条件が必須である。3次元培養下での機械的刺激によって基質合成活性を高め、軟骨細胞形質の維持が可能であることが明らかとなった。今後は装置の最適化と大型化を図る。軟骨細胞単層培養による増殖から、3次元培養、大型バイオリアクターによる形質維持と基質合成により適切な軟骨擬似組織が臨床研究材料として提供できるように更に研究を進める予定である。 -
チャネル病としての緑内障への分子生物学的アプローチ
研究課題/領域番号:15659407 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
高井 章, 吉田 晃敏, 三宅 養三, 成瀬 恵治, 大日向 浩, 内海 計
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
1.本研究では、房水流出路として重要な働きをする毛様体平滑筋の張力維持に必要なCa^<2+>イオン流入経路として機能するイオンチャネルをコードしていると考えられているtransient receptor potenrial canonical(trpc) geneの異常が緑内障の発症に関与する可能性につき検討した。これまで動物における緑内障は、ぶどう膜炎などによる続発性のものがイヌやウマで数例報告されているに過ぎない。今回、実験動物のtrpc遺伝子を変化させることにより緑内障の実験モデル作成するために役立つと思われる、下記のようなデータを得た。
2.ヒトおよびマウスについて現在までに報告されている7種の哺乳類型trpc遺伝子の既知配列をもとにいろいろなプライマペアを合成、RT-PCRによりウシおよびヒト毛様体筋において発現しているtrp遺伝子を定量的に検索し、trpc1,3,4および6に対応するmRNAの存在を確認した。
3.上記trpcの大半について全cDNA配列を決定するとともに、蛍光抗体染色法により、これらによりコードされる蛋白質が、毛様体筋細胞膜に発現していることを確認した。。
4.得られたcDNAを発現ベクトルに組み込んだものを単独、またはM_3型ムスカリン受容体遺伝子と同時に、培養細胞の細胞内に導入、発現してくるチャネルの性質を電気生理学的に検討する段階に漕着けた。現在、trpc遺伝子のpore-forming regionに相当する部分を改変し、培養細胞に発現させ、チャネル活性への影響を調べる実験を進めている。
5.今後、これまでに得られたデータに基づき、各種trpc遺伝子をノックアウトしたマウスを作成を試みる計画である。そのような実験動物から採取した組織を用い、収縮実験や、パッチクランプ法を用いた電気生理学的実験を行うことにより緑内障の発生メカニズムを分子レベルで検討することを目指す。 -
バイオ化学ICを基盤とする次世代医療ナノデバイス群の開発
研究課題/領域番号:15206027 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
生田 幸士, 加藤 大香士, 成瀬 恵治, 長倉 俊明, 長谷川 忠大, 森島 昭男, 丸尾 昭二
配分額:50310000円 ( 直接経費:38700000円 、 間接経費:11610000円 )
生化学分野における多種多用な合成と分析を全工程マイクロ領域で行うことができる新概念デバイス「バイオ化学ICチップ」の多様化とバイオ応用を目的とし、チップ素材から細胞チップへの適用まで、組織的な研究開発を行った。
2001年に世界初の無細胞タンパク合成用化学ICチップを、当初の蛍の発光酵素ルシファラーゼから、バイオマーカとして有名なGFP(緑色蛍光蛋白)の長時間連続合成系まで発展させた。これにより、我々の「無細胞蛋白合成用化学ICチップ群」の有効性と汎用性が実証された。
「細胞内蔵型バイオ化学IC」の基盤技術として、細胞適合性を有する光硬化樹脂の探索と、表面修飾、表面構造、マイクロ構造製作法等を研究し、所定の時間細胞が培養可能な条件を見出した。一般に光硬化樹脂は開始剤の毒性が細胞に悪影響を与えるため、このような基礎研究が不可欠となる。
各種マイクロ光造形法の中で、化学ICのハイブリッド構造の製作に不可欠な自由液面方式のマイクロ光造形法を、10ミクロン以下の加工分解能を達成することにも成功した。液状樹脂をならすスキージの角度と素材を最適化した。その結果、マイクロ流路径を10ミクロン以下にするだけでなく、細胞接着面の平坦性の改善にも大きく貢献した。
顕微鏡下における細胞操作を高度化するため、独自開発の高速2光子ナノ光造形法で作製した可動機構を持つナノマシンをレーザトラッピングで遠隔駆動する「光駆動ナノマシン」を提案・開発した。数ミクロンのナノピンセット、並進回転が可能なナノニードル、細胞膜の力学特性を計測するナノムーバー、10ミクロン長の3自由度光駆動ナノマニピュレータ等を作製し、有効性を実証した。
さらに将来、化学ICを体内に埋め込み薬物や抗がん剤などを放出するための基礎研究としてポリ乳酸など生分解性樹脂を用いた3次元マイクロ造形法を考案、開発した。本装置の分解能は50ミクロンであるが、従来のような毒性溶媒を一切用いないため、細胞培養も可能であることが実証された。 -
SAチャネルの構造機能連関と生理機能の解明
研究課題/領域番号:13480216 2001年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
曽我部 正博, 飯田 秀利, 成瀬 恵治, 辰巳 仁史
配分額:14500000円 ( 直接経費:14500000円 )
本研究の目的は、1)既同定SAチャネルの構造活性連関の解明、2)新規高等生物SAチャネルの同定と解析、および3)機械刺激依存性細胞応答のシグナル機構に挙けるSAチャネルと細胞骨格の役割解析である。研究機関中に得られた主要な結果を以下の通りである。(1)細菌SAチャネルMscLの機械感知ドメインの同定:唯一高次構造が判明しているMscLの開閉機構を知る目的で機械刺激感知ドメインの探索を行い、それが脂質膜の細胞外側境界近傍に位置する疎水性アミノ酸残基であることを発見した。その位置は力学的に最も硬く相互作用しているリン脂質グリセロール基と一致しており、膜張力を感知するには合理的な仕組みであることが分かった。(2)心筋SAチャネルSAKCAり遺伝子同定と活性化機構:我々はトリ心筋から伸展感受性BigKcaチャネルSAKCAを新規クローニングし、C末端中の59アミン酸残基からなるSTREXが機械刺激感知ドメインであることを同定した。またこれと連結して膜張力をSTREXに伝達するアクチン結合性の補助蛋白質を同定した。(3)S4チャネル活性化における細胞骨格の役割:高等生物SAチャネルでは細胞骨格(ストレス線維)がSAチャネルへの力伝達媒体であることを証明した。(4)細胞応答とSAチャネルの関係:転写因子NF-KBの活性化を対象にして機械刺激の時間モードとシグナル系の関係を解析した。周期的あるいは一過的機械刺激に対する細胞応答では、SAチャネルが細胞の主要な機械センサーとなり下流シグナル系を賦活するが、持続的機械刺激では、むしろインテグリンシグナル系が主要になることを発見した。.
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新規クローニングした心筋機械受容チャネルの解析
研究課題/領域番号:13470009 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
成瀬 恵治
配分額:9500000円 ( 直接経費:9500000円 )
SAチャネルの機械受容機構は多くの研究があるのにもかかわらず不明な点が多い。これまでの研究により、トリ心筋細胞に存在する数種類の機械受容チャネルのうち、特に約280pSのコンダクタンスをもつSAチャネルについて詳しい解析を行なった。パッチクランプ法による解析の結果、SA-K_<Ca,ATP>チャネルであることが判明した。このチャネルはガドリニウムによりブロックされるというSAチャネルの一般的性質を持つとともに、細胞質側のカルシウム濃度によって制御されるBK(Big K)チャネルであった。BKチャネルの遺伝子配列を基に幾つかのdegenerate primersを作成し、トリ心筋細胞から作成したcDNAライボラリーに対してPCRを試みたところPCR産物が得られ、それをプローブとしてライブラリーをスクリーニングしたところ、約3.5kbpのクローンを得ることが出来た。このクローンを発現ベクターに組込み、パッチクランプ法にて解析を行なった結果、膜伸展刺激に応じて開確率を上昇させる機械受容チャネルであることが判明した。この機械受容チャネルをSAKCAと命名し、その構造-機能連関を解析したところ、STREX配列とよばれる59アミノ酸からなるalternative splicingが重要であることが判明した。この配列を除去したミュータントでは機械受容活性はまったく消失した。しかし、他種(マウス・ウサギ)のSTREX配列を持つvariantで機械受容活性はまったく報告されていないことから、トリSTREX配列に特異的な部位が機械受容活性に重要な役割を果たしていることが示唆された。その配列に基づきミュータントAla^<674> to Thr^<674>を作成したところ、完全に機械受容活性を抑制することに成功した。STREX-GFPをSAKCAと共発現したところ細胞膜にGFPが検出され、機械感受性をブロックすることが出来た。
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バイオ化学ICの創製
研究課題/領域番号:13305017 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
生田 幸士, 長倉 俊明, 成瀬 恵治, 丸尾 昭二, 長谷川 忠大, 野方 誠
配分額:56290000円 ( 直接経費:43300000円 、 間接経費:12990000円 )
我々が独自開発してきた「化学IC」の内部に、各種細胞を内包したバイオ化学ICを開発するために下記の基礎研究を行った。1.高耐久性マイクロポンプの開発と無細胞蛋白合成への応用密着性の高い新型バルブを提案・開発し、耐久性の高い高性能マイクロポンプチップを作製した。本マイクロポンプを用いて、マイクロチップ内で7時間にわたり無細胞蛋白合成を行うことに初めて成功した。ポンプもマイクロ化することにより、蛋白合成用化学ICを、テーラーメード医療や体内埋込型デバイスへ応用することが可能となった。2.マイクロホモジナイザー化学ICの開発生化学や細胞生物学において必要不可欠な前処理操作であるホモジナイズ処理を行うための化学ICを開発した。本チップでは、圧電素子の振幅をホーンで拡大して、チップ内でキャビテーションを誘起する。これによりチャンバー内の細胞を破砕する。試作チップでは、わずか3秒間のホモジナイズにより、100%の効率で細胞(PC12)を破砕することに成功した。このチップによって、バイオ化学IC内部で培養した細胞を破砕し、有用タンパクなどを精製することが可能となる。3.光硬化樹脂材料の生体適合性検証長期間安定して細胞を培養するバイオチップを作製するには、生体適合性の高い光硬化性樹脂材料が必要不可欠である。我々は、複数種の医療用光硬化性樹脂を用いて、実際に細胞培養試験を行った。その結果、高い生体適合性を有する光硬化性樹脂を見いだした。さらに光硬化性樹脂製マイクロチャンバーの生体適合性を高めるために各種コーティング手法の検討を行い、有効なコーティング剤を決定した。その結果、96時間以上にわたって細胞を長期培養することに成功した。以上の基礎実験から、バイオ化学ICの実現に向けての基礎を築いた。
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毛様体筋収縮調節メカニズムへの分子生物学的アプローチ
研究課題/領域番号:13470365 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高井 章, 上村 大輔, 磯部 稔, 吉田 晃敏, 成瀬 恵治, 三宅 養三
配分額:13300000円 ( 直接経費:13300000円 )
毛様体筋は、視覚遠近調節、眼圧調節に与る重要な眼内平滑筋組織である。この筋は、副交感神経支配下にあって、迅速に一定レベルの張力を発生し(初期相)、そのレベルを安定に保持する(保持相)という特徴を示し、これが速やかな焦点合わせと保持とを可能にしている。いずれの相においても細胞内Ca^<2+>イオンが最終的な調節因子であることは疑いないが、Ca^<2+>の動員経路には違いがあり、初期相では細胞内からの迅速な遊離が、保持相では細胞外からの流入が重要とされる。2年間にわたり、従来ほとんど不明であった保持相におけるCa^<2+>イオン流入経路の本体の同定を目指した研究を展開し、つぎの様な成果を得た。
a.伝達物質作動性チャネルを形成する可能性が注目されている非選択性陽イオンチャネルの毛様体筋における発現を調べるために、ヒトおよびマウスについて現在までに報告されている7種の哺乳類型trp遺伝子の既知配列をもとに種々のプライマペアを合成、RT-PCRにより、ウシ、モルモットおよびヒト毛様体筋において発現しているtrp遺伝子を定量的に検索した。その結果、いずれの種においても、trp1,trp3,trp4,trp6がかなり多く発現していることが確かめられたが、trp2,trp5については各々5種類以上のプライマペアを用いて検討したにもかかわらずPCRによる増幅が見られなかった。
b.これまで決定されていなかった、ウシ、モルモットのtrpの全cDNA配列を決定した。
c.得られたcDNAを発現ベクトルに組み込んだものを単独、またはM_3型ムスカリン受容体遺伝子と同時に、培養細胞の細胞内に導入、発現してくるチャネルの性質を電気生理学的に検討することができる段階に漕着けた。
d.現在、trp遺伝子のpore-foming regionに相当する部分を改変し、培養細胞に発現させ、チャネル活性への影響を調べる実験を進めつつある。
e.ある種のNSCCを強く活性化する作用を持つことで知られる神経性海産魚食中毒の原因物質の一つマイトトキシンなどの毛様体筋細胞への作用について電気生理学的検討を行った。 -
チャネル病としての緑内障への分子生物学的研究法導入
研究課題/領域番号:13877287 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
高井 章, 成瀬 恵治, 三宅 養三
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
1.従来、緑内障の原因遺伝子としては、trabecular meshwork glucocorticoid response(TIGR)gene等の変異が知られているのみである。本研究では、房水流出路として重要な働きをする毛様体平滑筋の張力維持に必要なCa^<2+>イオン流入経路として機能するイオンチャネルを発現すると考えられているtransient receptor potenrial(trp)geneの異常が緑内障の発症に関与する可能性につき検討した。これまで動物における緑内障は、ぶどう膜炎などによる続発性のものがイヌやウマで数例報告されているに過ぎない。今回、実験動物のtrp遺伝子を変化させることにより緑内障の実験モデル作成するために役立つと思われる、下記のようなデータを得た。
2.ヒトおよびマウスについて現在までに報告されている7種の哺乳類型trp遺伝子の既知配列をもとにいろいろなプライマペアを合成、RT-PCRによりウシおよびヒト毛様体筋において発現しているtrp遺伝子を定量的に検索した。
3.PCR産物の塩基配列を決定、さらに、その大半について全cDNA配列を決定した。
4.得られたcDNAを発現ベクトルに組み込んだものを単独、またはM_3型ムスカリン受容体遺伝子と同時に、培養細胞の細胞内に導入、発現してくるチャネルの性質を電気生理学的に検討する段階に漕着けた。現在、trp遺伝子のpore-forming regionに相当する部分を改変し、培養細胞に発現させ、チャネル活性への影響を調べる実験を進めている。
5.今後、これまでに得られたデータに基づき、各種trp遺伝子をノックアウトしたマウスを作成を試みる計画である。そのような実験動物から採取した組織を用い、収縮実験や、パッチクランプ法を用いた電気生理学的実験を行うことにより緑内障の発生メカニズムを分子レベルで検討することを目指す。 -
高速単一細胞伸展装置の開発
研究課題/領域番号:13878134 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
曽我部 正博, 成瀬 恵治
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
あらゆる細胞が伸展刺激に応答することが明らかになりつつある。その分子機構を知るには機械センサーの同定が一義的に重要である。これまでにCa^<2+>透過性SA(Stretch activated)チャネルが伸展センサーとして同定され、その活性化が細胞内Ca^<2+>レベルの上昇を導くことが分かっている。しかしCa^<2+>が細胞のどの場所からどのような時間経過で上昇するのかは全く分かっていない。これを知るには単一細胞を顕微鏡の視野内で移動させずに定量的かつ高速に伸展する技術が必要である。
本申請では伸展刺激依存性Caトランジェントの高時空間分解能測定を実現する高速単一細胞伸展装置を開発した。
【単一細胞伸展装置の原理と方法】厚さ00番のプラズマコートしたカバーグラス2枚を200μmの間隔でシリコンチャンバーの底面に機械的に密着させることができた。したがって、チャンバーを伸展すれば伸展される部分は2枚のカバーグラスにはさまれた200μmの部分だけである。血管内皮細胞ならば200μmの間隔には1-3個の細胞が存在する。一方のカバーグラスをステージ上に固定し、もう一方のカバーグラスを引っ張り、固定されているカバーグラスの端に近い細胞を観察すれば60倍の対物レンズを用いても決して視野から外れることはなく、細胞が引っ張られた方向に伸展する様子が、焦点もずれることなく観察することができた。可動側のカバーグラスはピエゾ素子を用いて高速に駆動することができた。
【本装置でおこなった実験】
・40μm(全長の20%相当)を伸展するのに約15msecの速さで伸展することが可能であった。
・単一血管内皮細胞の伸展様子を解析することができた。
・細胞内Caトランジェントの時空間挙動を解析することができた。 -
機械受容機構の解明―メカノリセプターの分子実体は何か―
研究課題/領域番号:11670037 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
成瀬 恵治
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
<HUVECのSAチャネルのクローニング>
HUVECよりcDNAライボラリーを作成し、発現ベクター(pcDNA3.1)に組込んだ.あらかじめ伸展依存性Caトランジェントがないことを確認したHEK細胞に25グループに分けた上記ライボラリーを遺伝子導入した。伸展可能シリコンチャンバー上に培養した遺伝子導入細胞にカルシウム蛍光色素FURA2を負荷し伸展刺激を与え、カルシウム上昇がある群を選んだ.現在、数群の伸展依存性Caトランジェントを起こすグループを同定した。
くトリ心筋SAチャネルのクローニング>
培養鶏胚心筋細胞には数種類のSAチャネルが存在する。このうちCa依存性Kチャネルの特徴を備えたSAチャネルがあるので、degenerate primerを作り、PCR産物を得,これを用いて12日鶏胚心筋細胞より得られたファージライボラリーをスクリーニングしたところORFが約3kbpのクローンを得た.これを発現ベクターに組込みCHO細胞に発現させたところ、培養鶏胚心筋細胞にパッチクランプをしたときに観察されたものと同じ性質のSAチャネルを観察する事が出来た。これは既知のイオンチャネルと数アミノ酸の相違があった。現在種々のミューテーションを加える事により機能-構造連関を解析しているところである。 -
血管内皮細胞の機械刺激受容機構の解明
研究課題/領域番号:09770025 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
成瀬 恵治
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
機樋受容リセプターである機械受容チャネルのクローニングを目指した。研究実施計画に従い、いくつかのチャネルの種を通して保存されている領域に対するdegenerate primerを作製し血管内皮細胞および心筋細胞に対してスクリーニングを行った。これまでのところ心筋細胞においてカルシウム依存性・ATP感受性の機械受容チャネルの部分的なシークエンスを確認した。
電気生理学的解析:トリ培養心筋細胞には5種類の機械受容チャネルが存在することを確認した。特に、コンダクタンスが200pSの機械受容チャネルについて解析を進めたところ、細胞内カルシウムに感受性を持ちサソリ毒キャリブドトキシンにより阻害される巨大コンダクタンス型カルシウム依存性カリウムチャネル(BK channel)であることが判明した(Am.J.Physiol.印刷中)。
分子生物学的解析:上記の機械受容チャネルのクローニングを行った。(1)BK channelの保存領域に対するdegenerate primerを作製た。(2)PCRを行ったところ予想される分子量にPCR産物が増幅された。(3)PCR産物をTAクローニングしシークエンスを行ったところ既知の塩基配列と高い相同性を持つ部分を得ることができた。(4)培養心筋細胞からmRNAを抽出しcDNAライボラリーを作製した。(5)cCDNAライボラリーをλファージベクターに組込んだ。(6)上記配列をプローブとしプラークハイブリダイゼーションを行った。
(7)3種類の陽性クローンが取れた。(2)これまで確認されているトリBK channelと高い相同性があることが確認できた。(9)発現ベクターを構築した。(10)パッチクランプにて解析中である。 -
SAチャネルの分子生物学と生理学の展開に関する共同研究
研究課題/領域番号:09044283 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
曽我部 正博, SACHS Freder, FREDERICK Sa, 成瀬 恵治, SOCHS Freder
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
SAチャネルはあらゆる細胞に発現しており、細胞の基本機能に関わる重要なチャネルであると考えられている。ところがこのチャネルの生理機能は未だにつまびらかではなく、また大腸菌のそれを除いてはその蛋白質も遺伝子も同定されていない。この2つの問題を解決することがSAチャネルを巡る最大の課題である。本研究の目的は、日米双方の努力と協力によってこの二つの課題の突破口を探ることにある。第一の課題については、SAチャネルCa^<2+>透過性を利用して、伸展刺激によるCa^<2+>流入量の測定からSAチャネル活動度を評価するという方法が開発され、これを応用して低浸透圧刺激時の細胞体積調節にSAチャネルが重要な役割を果たすことが明らかとなった(日本側)。また血管内皮細胞の伸展依存性形態変化においてもSAチャネルの生理的役割が解明された(日本側)。一方米国側では原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーを使った培養心筋細胞への定量的機械刺激法を開発し、全細胞電流との同時記録に成功して伸展誘発性の心筋活動を説明することに成功した。
第二の課題については、線虫の機械受容ミュータントから分離された仮想のチャネル遺伝子mecの配列を元に、そのホモログをショウジョウバエからRTPCR法で単離する試みがなされたが、事実上失敗に終わった(日本側)。一方米国側では多種類の天然蜘蛛毒をスクリーニングし、ある種の蜘蛛毒中にSAチャネルの特異的ブロッカーとなるペプチド成分を発見したが、未だに安定した単一標品を得るには至っていない。しかしながら、ごく最近我々は、酵母から真核生物としては初めてのCa^<2+>透過性SAチャネルの遺伝子(mi d-1)のクローニングに成功した(論文投稿中)。この遺伝子が同定されたことによって、なすべき研究の範囲が大きく広がった。この国際学術研究で築いてきた日米のパートナーシップを生かして、SAチャネルの次なる発展に向けた共同研究を進める予定である。 -
伸展刺激による血管内皮細胞リモデリングの分子機構
研究課題/領域番号:09281213 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
曽我部 正博, 成瀬 恵治
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
血管内皮細胞は、紡錘形を呈し血管走行に対してその長軸を平行に配列している。この形態や配列は血流に対する機械的抵抗を激弱し、内皮細胞の血管壁からの剥離を防ぐという大切な意義がある。本研究の最終目的は、培養内皮細胞を用いて伸展刺激による形態配列応答の分子機構の全容を明らかにすることにある。これまでに伸展受容体(SAチャネル)とセカンドメッセンジャー(Ca^<2+>)の同定、形態変化に伴うストレスファイバーの動態、および接着斑会合蛋白質(接着斑キナーゼ、FAK)のチロシン燐酸化について解析してきた。本年度は主としてFAKの分子生物学的解析とその上流に位置するチロシンキナーゼ(src)の生化学的解析、およびキナーゼ活性化と細胞内Ca^<2+>増加の関連について解析し、以下の結果を得た。1)FAKアンチセンスの効果:アンチセンス処理後48時間でFAKの発現抑制のピークが観察され、その時点での処理細胞のFAK発現量はセンス処理細胞の10%以下であった。アンチセンス処理細胞の外観には特に変化はみられず、フィブロネクチン処理のシコリン膜にも安定に生着した。しかしこれに所定の伸展刺激を加えても形態反応は誘起されなかった。FAKとそのチロシン燐酸化が形態応答に極めて重要であることが強く示唆された。2)伸展刺激によるsrcの活性化:FAKの上流に位置する可能性の高いチロシンキナーゼとしてsrcに注目し、その活性の伸展刺激依存性を解析した。その結果、伸展刺激開始直後から活性が上昇し続け、約20分でピークを迎えることが分かった。その時間経過パタンは、やや先行する形で、FAKのチロシン燐酸化の時間経過パタンとよく一致した。またこの活性上昇は、細胞外Ca^<2+>に依存し、ガドリニウム(Gd^<3+>)で抑制されたので、<SAチャネル→細胞内Ca^<2+>上昇>の下流に位置することが強く示唆された。
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血管内皮細胞の機械刺激受容応答機構の研究
研究課題/領域番号:08770033 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
成瀬 恵治
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
本年度の研究目的は(1)細胞内カルシウムの空間的動態の解析(濃度上昇の空間的不均一性が生じるか否か)と(2)接着斑蛋白質チロシンリン酸化の空間的不均一性の解析を行い、血管内皮細胞における形態および細胞骨格の空間的不均一応答との関連を解明することにあった。
結果
(1)細胞内カルシウム空間的動態
外液カルシウム濃度が100uMでは伸展刺激による形態変化が起こることを示しているが細胞内カルシウムを均一に上昇させる目的でionomycinを加え細胞内カルシウム濃度も100uMにした。これはFura2を用いたカルシウム蛍光測光にて確認している。細胞内カルシウム濃度をこのようにして均一に100uMにしたとき(かなり高い濃度で、伸展刺激によるカルシウム濃度上昇よりもはるかに高い濃度)でも伸展刺激により形態変化を惹起することができた。この実験結果は細胞内カルシウムの空間的分布に局所性がなくてもよいことを示唆している。しかし、細胞内カルシウムの上昇がないと形態変化は起こらないことから細胞内カルシウムの上昇は必要条件ではあるが十分条件ではない。現在、細胞内カルシウムイメージングを行い確認を行っている。
(2)接着斑蛋白質チロシンリン酸化の空間的不均一性
細胞に伸展刺激を与え固定後、抗リン酸化チロシン抗体にてチロシンリン酸化蛋白を検出した。我々の研究から接着斑蛋白が強くチロシンリン酸化を受けることを示している。今回免疫染色により、接着斑に一致して抗リン酸化チロシン抗体に染色される部位が認められた。面白いことにその部位は伸展方向とは垂直方向、すなわち細胞が伸びていく方向の接着斑に強く認められた。 -
血管内皮細胞における機械受容チャネルの研究
研究課題/領域番号:07770030 1995年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
成瀬 恵治
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
血管内皮細胞は血管内では紡錘形を呈し、その長軸を血管軸に平行に向けて配向しているが、培養系ではこのような特徴的形態を示さない。前年度までの研究により周期的伸展刺激を与えることにより伸展方向に垂直な方向へ細胞が配向し、それが機械受容チャネルのブロッカーで阻害されることを確認した。本年度は機械的な刺激を与えたときの形態学的反応を特に、細胞骨格(actin)・細胞接着班(vinculin)に着目して解明をめざした。研究計画に従い、下記の成果を得た。
細胞骨格関連蛋白質であるactin及びvinculinの精製を行い、かつ機能を失うことなく蛍光色素によりラベルすることができた。SDSーPAGEにて色素が蛋白と共有結合していることを確認した。マイクロインジェクションシステムを用いて、蛍光色素標識蛋白を細胞内へ導入した。数分後、細胞内においてストレスフアイバーに一致して蛍光像が得られた。これはストレスファイバーにactinが組み込まれたことを意味する。vinculinに関しては、弱いながらも接着班に一致して蛍光像が得られた。
シリコン膜上に培養した細胞内へ注入後、周期的伸展刺激を与えながらストレスファイバーの経時的変化をSITカメラにて撮影しビデオに記録した。周期的伸展刺激によりストレスファイバーが変化していく様子を記録することが出来た。細胞接着班に関しては現在、解析中である。 -
血管内皮細胞における機械受容チャネルの研究
研究課題/領域番号:06770029 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
成瀬 恵治
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
本研究によって下記の結果を得た。
1・低浸透圧による機械刺激
低浸透圧処理による機械刺激を期待する場合、細胞膜伸展の度合いを評価しなければならない。接着細胞において体積増加による細胞膜の伸展の度合いを定量するために膜に蛍光色素を取り込ませ標識しリアルタイム共焦点レーザー顕微鏡を用いて縦断層面の経時的変化(z-t)の観察をした。その結果、低浸透圧刺激による膜伸展の時間経過を定量的に測定することができた。また従来、浮遊細胞系で報告されている調節性体積減少を確認することができた。
2・シリコン膜による機械刺激
従来の方式では伸展刺激時に焦点面がずれ、振動が大きい等のデメリットがあり、顕微鏡観察・電気生理学的手法は困難であった。本研究では従来法に改良を加え伸展時に焦点面がずれたり振動が少ない装置を開発した。
現在、1・2の方法を駆使して定量的に機械刺激を与え機械受容チャネルを活性化し、生じる電気生理学的現象をパッチクランプ法にて記録している。