共同研究・競争的資金等の研究 - 森 也寸志
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乾燥地の潅漑農地における不攪乱土壌の塩分動態と下方浸透量の計測技術の開発
研究課題/領域番号:16380159 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
井上 光弘, 山本 定博, 猪迫 耕二, 森 也寸志, 取手 伸夫, 東 直子
配分額:15300000円 ( 直接経費:15300000円 )
除塩のため,リーチングに伴う下方浸透量の正確な計測技術の開発が必要である。研究結果をまとめると,次のようになる。
1.誘電率水分計と4極塩分センサーによる測定精度を検討し,水分と塩分の同時測定の新たな校正手法を提案し,灌漑農地の水収支・塩収支を明らかにした。また,塩の影響が少ないTDRセンサーを開発し,塩水点滴灌漑における不撹乱状態の水分・塩分濃度変化の測定から根群域内の塩分動態の特徴を明らかにした。
2.圃場の不撹乱土壌カラム採集器を開発した。団粒構造を持つ黒ボクのコアサンプルを対象に,飽和流および不飽和流の溶質分散長を測定した結果,不撹乱土の飽和分散長は,撹乱土と比べて格段に大きいことを明らかにし,土の構造に基づく水分と溶質流れの特徴を明らかにした。
3.砂丘ラッキョ畑でモノリスライシメータを用いて硝酸態窒素の溶脱試験を行い,圃場の不撹乱状態の土壌構造の違いによる硝酸溶脱の影響を明らかにした。
4.根群域からの下方浸透量をリアルタイムに計測するために,ウィックライシメータと下方浸透水採取装置を開発した。砂地圃場に埋設して,下方への浸透水量と溶液の電気伝導度を測定した結果,浸透水の電気伝導度を自動記録できる下方浸透水採取装置は高い採水効率と有用性を確認した。
5.砂丘圃場でウィックサンプラーの採水試験を行い,採水量,水収支,土壌水分環境に関する長期測定データを解析して,先行降雨,土壌水分プロファイルの初期状態,降雨強度が,ウィックサンプラーの採取に与える影響について検討し,過剰採水の原因と対策を明らかにした。
6.多機能熱パルスセンサーで土壌水分量,電気伝導度,浸透速度を測定して,その適用範囲や限界を明らかにし,有用な土壌環境モニタリング技術を構築した。 -
宍道湖及び中海圏域における農業水管理の変遷と水文・水質環境への影響評価
研究課題/領域番号:09556048 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
福島 晟, 森 也寸志, 武田 育郎
配分額:12900000円 ( 直接経費:12900000円 )
本研究は、斐伊川水系における農業水管理と本地域の今後の水環境の在り方に関し、有用な水文・水質学的情報を提供しうる手法を展開することを基本目的とする。研究実績の概要は以下のとおりである。1.(1)オーダーの異なる流出モデル定数の有効桁を設定した上で、一定の刻み幅でモデル定数を探索する手法を提示し、3種の流出モデルで、その有用性を示した。(2)舗装道路面積や水路網の具備の効果、あるいは地表条件の面積的な分布の効果を貯留型流出モデルに取り入れた流出解析法をUNIX計算機システムで開発した。(2)しかし、洪水氾濫時の流出特性及び取水等の農業水管理状況を組み込んだ解析については、なお流出モデル及び同定手法の改良・検討が必要である。2.(1)斐伊川下流域の循環潅漑水田流域において、水質汚濁物質のフラックスを定量評価した。その結果、流域内での循環水に伴う水質汚濁物質の挙動が、流域内の水質環境に多大な影響を及ぼしうること、また、水田地域の農業水管理の一環として行われている水生植物の水系外への除去や河川底質の浚渫が、流域内の水質環境の改善に寄与する可能性があることを示した。(2)中山間地域の傾斜畑地からの水質汚濁物質に関する基礎的知見を得るため、傾斜ライシメーターを用いた計測を行った。その結果、窒素負荷の削減には慣行性肥料がある程度有効であるが、栽培条件によっては必ずしも負荷削減に寄与しないことを示した。3.(1)水田・畑地・森林から非破壊土壌を採取し,軟X線を用いて土壌の排水過程を解析した。水田・畑地土ともに根成孔隙を中心に迅速な排水が始まり,次いでマトリックスへと排水は進んだ。森林土では,はじめから土壌基質からの排水が卓越した。(2)逆解析によって求めた不飽和透水係数は,飽和から不飽和への移行時に不連続点を生じており,飽和時には粗間隙が水みちとして機能し,次いで土壌基質が排水を担うものと考えられた。
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画像処理による農山村地域の流域数値モデルの表現と洪水流出予測への応用
研究課題/領域番号:08456118 1996年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
福島 晟, 森 也寸志, 武田 育郎
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
本研究は、流域地形情報をワークステーションを介して流出予測への応用を図ることを基本目的とする。特に、山陰地方の農山村主体の中山間地に視点を置いた議論を展開するため、益田農地造成域、斐伊川流域及び島根大学付属演習林に試験流域を設定した。研究実績の概要は以下のとおりである。1.(1)長短期流出両用モデル及びKiWSモデルを活用して、流域地形効果、不浸透面積率を考慮した解析が可能な流出解析法を提示し、その適用性を試験流域で検討した。(2)UNIXワークステーションによる流出解析プログラムの開発を行い、データ入力から流出解析及びハイドログラフ出力までの一連の解析・図形出力が可能な流出計算システムを構築することができた。2.(1)斐伊川下流の循環潅漑水田流域において、水文循環と溶質の挙動を解析した。そして、水田潅漑期における他の排水系統から導入される水移動量や循環水量、それにその水移動によって移動する物質循環量を、河川底質や水性植物の水質浄化機能などと関連させながら、流域環境の保全の観点から定量評価した。(2)中山間地域の傾斜畑における降水-流出系の特性を把握するための基礎実験として、傾斜ライシメーターによる水文動態を計測した。その結果、浸透流出量は降水量の約60%に相当し、また、積算降水量がある程度まで達しないと地表流出が生じないことを明らかにした。3.(1)水田・畑地・森林で非破壊土壌を採取し,軟X線を用いて土壌中の水移動を解析した。その結果,水田では鉛直方向に卓越した管状孔隙内を,畑地ではネットワークを組んだ管状孔隙内を水が選択的に流れ,レイノルズ数が数十になっており,流れは層流から乱流への遷移状態にあることがわかった。すなわち乱流モデルを取り込んだ新しいモデルが必要であることが示唆された。一方森林では選択的な流れは少ないことが明らかになった。
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トレーサ法を用いた土壌水分移動特性の定量解析
研究課題/領域番号:07760231 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
森 也寸志
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
本研究は,飽和土壌に高圧を加え,そこから排水される水の量の変化から土壌の不飽和透水性を解析する「One-Step Outflow法」と水みちを染色し水移動の経路を明らかにする「メチレンブルートレーサ法」を用いて,土壌中の水移動傾向を調べた。
水田,畑地,森林から非破壊土壌を採取し,トレーサを用いた透水・排水試験を行った。透水試験においては水みちが透水性に優れたマクロポアに限られること,さらにそのマクロポアも全土壌マクロポアの中のごく一部であることが明らかになった。従来バイパス流として土壌体の一部を水が優先的に流れる現象の報告はあったが,それが通水性に優れるマクロポアの中でもごく一部に限定されることを初めて示すことができた。
排水試験においても土壌からの排水は土壌間隙構造に影響された形態をもつことが明らかになった。水田土壌においてはまず鉛直に,次いで水平方向のマクロポアより排水が進み,最終的に土壌マトリックスから排水が進んだ。畑地も同様にマクロポアからマトリックスへという排水順序が存在した。土壌団粒の発達した森林土壌では両者の区別はほとんどつかなかった。
土壌中の水移動そのものに焦点を当てる研究手法により土壌内部で複雑な水移動が行われていることが明らかになった。今後水分測定するセンサー部をさらに小さくするなどの工夫をすることで,より精度の高い実験ができるものと考えられる。 -
低平水田地帯の農業水利再編計画に関わる水文・水質環境の診断モデル
研究課題/領域番号:07556106 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 試験研究(B) 試験研究(B)
福島 晟, 森 也寸志, 武田 育郎
複雑な水田用排水系統が形成されている斐伊川下流域では、農業水利再編計画が検討されている。本研究はこうした農村地域の水文・水質環境の定量的・工業的な診断手法の検討を基本目的とする。そして、実態観測を踏まえつつ、潅漑排水計画に関わる雨水流出システムモデル、斐伊川水系の水源部から下流部までの水質環境についての調査診断、圃場レベルでの水質環境と水循環機構との関連を中心に検討した。研究実績の概要は以下のとおりである。1.(1)丘陵山地部をも包含した複数地目から構成される農村地域からの雨水流出システムに対し、KiWSモデルを活用したFORTRAN77による流出計算プログラムの作成、及び(2)流域地形効果を反映して発生させた遅延降雨系列を長短期流出両用モデルに利用するという流出解析法を提示し、その有用性を検証した。2.排水河川水のみを循環潅漑している水田地域を対象として行った水文水質調査に基づき、汚濁物質の収支及び流域のもつ水質浄化機能についての考察、また水生植物群落による浄化量を検討した。その結果、年間の流出量あるいは浄化量は、窒素は16.3kg/ha/yの流出、リンは1.14kg/ha/yの浄化、CODは26kg/ha/yの浄化となった。水生植物群落内の浄化量は、負荷量のフラックスに比べて小さかった。この理由として、河川の面積が流域面積の約1%しかないことが考えられた。3.TDR土壌水分測定装置を用い土壌中の水移動を測定した結果、土性、密度、温度、塩分濃度、プローブのタイプなどによらず一つのキャリブレーションカーブで水分量を測定できることが確認された。また、本測定装置は土壌中に埋設された金属に瞬間的に与えられた電気パルスの伝達速度や波形の衰弱から土壌の電気伝導度を測定するため測定時間が短く、かつ土壌体を破壊することなく水分量が測定可能であることから、圃場レベルでの水・物質移動に着眼した水循環機構に関する実用的な実態調査が可能と判断した。
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軟X線を用いた土壌の間隙構造・透水現象の可視化システム開発に関する研究
研究課題/領域番号:04556033 1992年 - 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 試験研究(B) 試験研究(B)
丸山 利輔, 森 也寸志, 堀野 治彦, 渡邉 紹裕, 久馬 一剛
配分額:18100000円 ( 直接経費:18100000円 )
本研究は、土壌中の水や物質の移動を支配すると思われる粗間隙に注目し、間隙構造の把握とそれが水の透水性や保水性に及ぼす影響の定量的評価を目的として進めた。とくに、従来、十分な知見が得られていなかった土壌内部の間隙構造を、軟X線を用いた非破壊検査技術を応用して写真撮影し、ステレオ撮影及び画像処理によって、その3次元構造を可視化し、またその3次元座標を同定し構造を定量評価するシステムを開発した。また、こうした間隙構造の把握とともに、間隙における透水現象や排水現象を、同様に可視化し、さらに間隙構造との関係を評価するシステムを構築した。当初計画したシステムの基本部分は構築でき、それによって土壌粗間隙の構造とそこでの透水現象について、新しい知見が得られたと考える。
主要な具体的成果を整理すると以下のようになる。土壌粗間隙中の水移動過程では、根成孔隙に沿った速いバイパス流が発生し、その経路は動水勾配によって変化することがわかった。また、土壌からの排水は土壌間隙構造に対応した順序があることがわかった。FTTによって土壌粗間隙の方向性・周期性を定量的に評価した。さらに、間隙構造の3次元表示に及ぼす撮影システムの条件を検討した上で、ステレオフィルム影像から、土壌孔隙の三次元座標を計算するシステムを試作し、針金を孔隙に代用した疑似孔隙のステレオ影像に適用して、開発したシステムの精度と有用性を確認した。そして、土壌の間隙構造を3次元表示するシステムを開発し、3次元構造を定量評価し、この数値情報を用いて、土壌孔隙径の頻度分布と土壌孔隙の方向別分布を求めて、土壌間隙構造を定量的に扱うことが可能となることを示した。