共同研究・競争的資金等の研究 - 須藤 雄気
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バイオマス増産を実現するロドプシンによる藻類成長促進技術の社会実装
2023年 - 2024年
科学技術振興機構
須藤 雄気
担当区分:研究代表者
ロドプシンは、動物・微生物に広く分布し、主に緑色光を吸収する光受容タンパク質である。本課題は、藻類クラミドモナスの細胞密度がロドプシン導入により2倍程度に上昇(成長促進)する効果を基礎に、バイオマス(燃料・化粧品等)増産の実証と、成長因子同定から他の藻類への展開と起業の可能性を検証することを目的とする。
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ロドプシン基底関数の理解と利用
研究課題/領域番号:21H02446 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
須藤 雄気
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
ロドプシンは、多様な生物に存在する光受容膜タンパク質の総称で、生命における光依存的機能を司るとともに、人為的な光操作(オプトジェネティクス)分子として利用されている。
本研究は、ロドプシンとは何か?という根源的な問いに答えるため、「ロドプシン基底関数(x1a1 + x2a2 + … xiai)の理解と利用」を目的とした。
本年度は、これまでに培ってきた技術(生物物理学,遺伝子工学,タンパク質科学,分光学,光遺伝学,生化学,神経科学,細胞生物学)と人的資源(研究協力者)を総動員し、「①探索、②解析、③操作」の3項目の研究に取り組んだ。
具体的には、数百種類の未解析ロドプシンの発現・精製(①探索)と精密解析(②解析)を行い、既知情報とあわせて、ロドプシン間の機能や物性を定量的かつ様々な観点から比較した。これにより、基底ベクトル:x1, x2, … xi を算出し、ロドプシンを定義する素因子を明らかにした【例:x1 = 波長、x2 = 機能、x3 = 発色団、.... 】(理解)。ここでは、係数を表す a1, a2, …ai もあわせて算出した。以上より、ロドプシンとは何かの理解と分類に成功した。これにより、ロドプシンの拡張要素を炙り出すことに成功し、その情報からロドプシン分子の合理的分子設計と新奇光操作ツール開発および開発したツールによる生命機能の光操作を実現した(③操作)【例:a1 = 青・緑・赤(色パレット)、a2 = イオン輸送・走光性能、a3 = レチナール+第二発色団カロテノイド、.... 】(利用)。 -
ロドプシンを起動分子とした「化学・力学・光」エネルギー発動機構の理解と利用
研究課題/領域番号:21H00404 2021年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
須藤 雄気
配分額:5980000円 ( 直接経費:4600000円 、 間接経費:1380000円 )
ロドプシンは光エネルギーを吸収し、レチナールの異性化を介して化学エネルギーへと変換する。化学エネルギーは、タンパク質の構造変化として力学エネルギーに変換され、分子機能が発現する。また、ロドプシンは、蛍光を発する特性を有し、光エネルギーにも変換可能である。このように、本領域における『発動分子』の定義(外部エネルギーを別エネルギーへ変えるもの)から、ロドプシンはまさに“発動分子”そのものと言える。このような背景のもと、本研究では、ロドプシンによる『光-->化学・力学・光』エネルギーへの変換機構の理解と光遺伝学的利用を行うことで、ロドプシン型『発動分子』の基礎学理構築を行うことを目的とした。
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本年度は以下の成果を得た。
(1)『光→化学変換』:ここでは、特に色(吸収波長)と反応速度に着目し、その改変体を作成した。色の変化は励起可能な波長域を拡げ、光操作に新たなツールを提供することとなった。また、反応が早い分子は、分子機能の高速制御が可能となり、遅いものは、活性型中間体の滞留時間の延長により、1光子あたりの分子機能活性が大きくなることが期待される。
(2)『光→力学変換』:ここでは、タンパク質の力学的構造変化が生理応答に直結していることに着目し、これまでの成果を基盤に、ロドプシンで多様な力学変換分子の創成と生命機能操作(細胞死、神経制御など)を行った。
(3)『光→光変換』:一部のロドプシンが、高発光性を示すことを明らかにし、さらに網羅的変異導入による高発光化にも成功した。さらに、動物個体において閾値以下かつ高速(ms)の膜電位センサーとして利用可能であることを実証した。これらのロドプシンは、従来のCa2+インディケーター型膜電位センサーに代わるツールとなることが期待される。 -
光誘起崩壊リポソーム(LiDL)の開発による新奇薬物送達手法の確立
研究課題/領域番号:20K21482 2020年07月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
須藤 雄気, 山田 勇磨
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
【目的】物理化学(代表者)と薬剤学(分担者・協力者)の融合による光誘起崩壊リポソーム:Light-induced Disruption of Liposomes(LiDL)の開発と、それに基づく新奇薬物送達手法の確立すること。【背景】狙った時間と場所に薬物を届け・働かせることは、薬学における大きな『夢』である。【計画】光受容タンパク質・ロドプシンとpH感受性ポリマーおよび任意の化合物(薬物)を内封させたリポソームを開発することで、時空間制御性に優れた『光』により、狙った時間・場所で薬物を放出させる新奇手法を確立する。【意義】薬学における『夢』の一つを叶える手法となり、大きな波及効果をもたらす。
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具体的には、光受容タンパク質「(1) ロドプシン(H+ポンプ・チャネル)」と「(2) pH 感受性ポリマー」を含む「(3) リポソーム」を作成する。その際、「(4)化合物 (薬物)」を内封させる。このリポソームに「(5) 光」を照射すると、ロドプシンが活性化され、リポソーム内外のpH が大きく(> 5 ユニット)変化する。これにより、pH 感受性ポリマーの物理的形状が変化し、リポソームが崩壊し、化合物が「(6) 放出」される。LiDL と命名するこの手法は、時空間分解能に優れた「光」により薬物を放出させるという、新奇かつ独創性・汎用性の高い薬物送達(DDS)手法になる。昨年度までは、ロドプシンを組み込んだリポソームの作成と、光によるpH変化を定量的に測定し、ロドプシン組み込みリポソームが狙い通りに機能することを明らかにした。さらに、このリポソームにpH感受性分子を組み込むとともに、光により崩壊することを内部に導入する蛍光分子の蛍光変化により確認した。これにより、LiDLの開発は概ね終了した。今年度は、これを生体系(in cell、ex-vivo)で実証する。 -
ロドプシンによる葉緑体プロトン勾配制御システムの確立と植物応答解析への展開
研究課題/領域番号:19H04727 2019年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
須藤 雄気
配分額:7540000円 ( 直接経費:5800000円 、 間接経費:1740000円 )
植物による光合成は、水と二酸化炭素から炭素固定・酸素発生・ATP産生を行う反応であある。ここで、生物のエネルギー通貨とも呼ばれるATPは、光合成タンパク質における細胞内から細胞外にプロトン(H+)の輸送により実現している。また、植物には光強度にあわせて余剰なエネルギーを熱として放出する機構(Non Photochemical Quenching:NPQ)が備わっており、効率的な光合成を実現している。これらは光合成に伴う葉緑体ルーメン側の酸性化(プロトン濃度上昇)が引き金になることがわかっているが、その制御機構の詳細は不明である。
本研究では、光合成色素クロロフィルがほとんど吸収しない緑色光で働くロドプシンを緑藻(クラミドモナス)および陸上植物(シロイヌナズナ)の葉緑体に異種発現させる組み換え体を創出する。次に、ロドプシンを光により励起し、人為的に膜を介したプロトン移動を誘起する。これにより、擬似的に強・弱光条件を作り出し、その際に起こる植物応答(ATP合成、NPQ制御、成長、形態、その他)を光で制御し、それらのメカニズムの解明を目指す。
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本年度は、以下の生化学的・細胞生物学的解析を行った。
①生化学的解析:クラミドモナスおよびシロイヌナズナにおけるロドプシンの発現を検討する。加えて、葉緑体への局在を中心に確認する。具体的には、確認用の抗体の検討および細かな実験条件の設定を行った。クラミドモナスおよびシロイヌナズナともに、ロドプシンの葉緑体への局在を示唆する結果が得られ、計画は順調に進んでいる。
②細胞生物学的解析:NPQをはじめとした応答解析を進めた。(1)クラミドモナスについては、NPQ誘導の確認に加え、細胞形態や生育などへのロドプシンおよび光の影響を検討した。(2)シロイヌナズナについては、上記に加えレチナールの添加法の検討と、レチナールが及ぼす細胞毒性について検討した。 -
ロドプシンを起動分子とした「化学・力学・光」エネルギー発動機構の理解と利用
研究課題/領域番号:19H05396 2019年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
須藤 雄気
配分額:5850000円 ( 直接経費:4500000円 、 間接経費:1350000円 )
ロドプシンは光エネルギーを吸収し、レチナールの異性化を介して化学エネルギーへと変換する。化学エネルギーは、タンパク質の構造変化として力学エネルギーに変換され、分子機能が発現する。また、ロドプシンは、蛍光を発する特性を有し、光エネルギーにも変換可能である。このように、本領域における『発動分子』の定義(外部エネルギーを別エネルギーに変えるもの)から、ロドプシンはまさに“発動分子”そのものと言える。このような背景のもと、本研究では、ロドプシンによる『光-->化学・力学・光』エネルギーへの変換機構の理解と光遺伝学的利用を行うことで、ロドプシン型『発動分子』の基礎学理構築を行うことを目的とした。
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本年度は、以下に示す多様なロドプシンのマルチ『光-->化学・力学・光』発動機構(エネルギー変換)の理解を進めた。 さらに、これらを基盤に、分子機能(速度,収率,構造変化,生理応答,発光)の合理的改変の試みと光遺伝学への展開を行った。
1)『光-->化学』:多様なロドプシンに対し、“時間”分解測定(過渡吸収,ラマン・赤外)及び“空間”分解測定(ラマン・赤外,X線結晶構造,NMR)を行い異性化速度,量子収率,異性化に伴うレチナール及びタンパク質の構造変化を調べた。得られた定量的な数値とその比較から、『光-->化学』エネルギー変換の分子機構の理解を進めた。
(2)『光-->(化学)-->力学』:レチナールの異性化を引き金するロドプシンの構造変化,他分子との相互作用とその変化を、“時間”分解及び“空間”分解測定により明らかにした。加えて、生化学的・細胞生物学的解析を行い、構造と機能に関わる『化学-->力学』エネルギー変換機構を明らかにした。
(3)『光-->光』:定常蛍光分光法と各種時間分解分光法を組み合わせ、多様なロドプシンの蛍光特性の定量的比較解析と発光機構の解明を行った。 -
ロドプシンの多様性の探求と可能性の追求
研究課題/領域番号:18H02411 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
須藤 雄気
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
ロドプシンは、生物の三大ドメイン(真核生物・真正細菌・古細菌)に分布する光受容膜タンパク質の総称で、光エネルギー・情報変換を介し生命機能の根幹を司る:基礎的重要性。また、光遺伝学:オプトジェネティクスを生み出した分子として知られ、脳神経科学に利用されている:応用的重要性。このような重要性にもかかわらず、研究が行われているロドプシンはわずかであり、大部分は手つかずのまま残されている。そこで本研究は「ロドプシンの多様性の探究と可能性の追求」を目的とした。すなわち未解析ロドプシンの発現・精製(1. 探索)と精密解析(2. 解析)で多様性を探求し、基礎を強化する。さらに、それらの機能・特性を利用した新奇オプトジェネティクス(3. 操作)を実現し応用の可能性を追求することを目的とした。
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本年度は、昨年度に引き続き以下の3項目に取り組んだ。
1.探索:(1)公開および未公開遺伝子情報から、様々な推定新規ロドプシン遺伝子を絞り込んだ。(2)これらの情報から分子系統樹を作成し、グループに分類した。(3)各グループ中央に位置する数種類と末端に位置する数種類を選抜した。(4)絞り込んだ遺伝子について、組み換え生物(大腸菌,古細菌,酵母,動物細胞)のコドンに最適化した遺伝子を合成し、発現プラスミドを作成した。タンパク質発現は宿主細胞の色により確認し、新奇ロドプシンの発現・精製系を構築した。
2.解析:探索により発現・精製系を構築した新規ロドプシンの分子機能を様々な時空間領域「フェムト秒-ペタ秒・Å-ミリメートル」で、解析した。
3.操作:解析が終了したロドプシンについて、その新奇機能や特性を生かした新しい光操作を実現した。特に4つのロドプシン(RmXeR,ACR2,SyHR, AR3)について、その特性を生かした新奇オプトジェネティクスを実現した。 -
ロドプシンによる葉緑体プロトン勾配制御システムの確立と植物応答解析への展開
研究課題/領域番号:17H05726 2017年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
須藤 雄気
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
植物による光合成は、水と二酸化炭素から、炭素固定・酸素発生・ATP産生を行う反応で、生命活動の源でもある。植物には、光強度にあわせて余剰なエネルギーを熱として放出する機構(Non photochemical quenching:NPQ)が備わっており、効率的な光合成を実現している。これらは、光合成に伴うルーメン側の酸性化(プロトン濃度上昇)が引き金になることがわかっているが、その制御機構はわかっていない。本研究では、光合成色素クロロフィルがほとんど吸収しない緑色光で働くロドプシンを植物の葉緑体に異種発現させ、人為的に膜を介したプロトン移動を誘起する。これにより、擬似的に強・弱光条件を再現し、その際に起こる植物応答を解析することで、NPQ制御メカニズムを解明することを目的としている。
本年(H30年度)は、(1)内向きプロトンポンプロドプシンと外向きプロトンポンプロドプシンを植物モデルとしてのクラミドモナスおよびシロイヌナズナへの遺伝子導入を行い、その組み換え体においてそれぞれのロドプシン発現を確認した。植物細胞における異種ロドプシンの発現は世界初となる成果である。(2)クラミドモナスについては、NPQ測定を行い内向きプロトンポンプを発現した際に狙い通り光照射によりNPQが有意に増大することを確認した。外向きプロトンポンプでは若干の低下がみられた。このようにロドプシンを用いてNPQを制御することに世界で初めて成功した。シロイヌナズナについては、内向きプロトンポンプの発現は確認できたが、外向きプロトンポンプの発現は確認できなかった。
以上のように、植物にロドプシンを発現させその生理応答(NPQ)を調節するという当初の目的は達成された。 -
ファイバーレス光遺伝学による高次脳機能を支える本能機能の解明
2016年 - 2021年
科学技術振興機構 戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 CREST
須藤 雄気
担当区分:研究代表者
睡眠覚醒などの本能機能は、記憶や意志決定などの高次脳機能にも影響を及ぼしています。従来の光遺伝学では、侵襲や行動制限のために、この機能連関の研究には不十分でした。新開発するファイバーレス光遺伝学では、光ファイバーを刺入せずに脳深部の神経活動を体外から照射した近赤外光で操作可能になります。これを応用することで睡眠覚醒と記憶との関係の解明に迫れるだけでなく、様々な生体機能の解明に大幅な進展が期待されます。
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カロテノイドを光捕集系とするレチナールタンパク質の創出と展開
研究課題/領域番号:15H00878 2015年06月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
須藤 雄気
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
ロドプシン(レチナールタンパク質)は、動物から微生物まで幅広い生物が共通にもっている光受容体タンパク質であり、アポタンパク質を構成する7本の膜貫通αヘリックスの中央部に、アルデヒド型ビタミンAである発色団レチナールが結合した構造を持つ。ロドプシンは、クロロフィルの吸収がほとんどない領域の光(450-600 nm)を吸収することで機能する。具体的には、光吸収によりレチナールの異性化が起こり、続いて様々な特徴を持った光中間体(活性型)となることで、多彩な機能(視覚、ATP合成、膜電位の調節など)が発現する。本研究では、ロドプシンの反応を生物の光応答のモデルと捉え、新規分子の探索・解析とその高機能化を実現することで、人工光合成の可能性を拡げることを目的とした研究を行い、以下の3つの成果をあげた。
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[1] ロドプシンは一般に熱に不安定で、その不安定性は高機能化を行う上で支障になる。そこで、安定な分子の探索と解析を行い、安定化分子の取得に成功した。またそれらの高分解能構造を明らかにし、安定化機構の解明に成功した。
[2] 新しい機能を持ったロドプシンの発見や創成は、新しい光生物応答制御を可能とする。そこで、新規ロドプシンの単離・取得・創成を行った。その結果、二価アニオン・SO42-を輸送する新規分子の発見・解析と輸送方向・基質の変換に成功した。
[3] ロドプシンの光反応素子および光遺伝学ツールとしての有用性を高めるため、その高機能化を試みた。アミノ酸変異によるイオン輸送力の10倍の向上、カロテノイドアンテナ結合型分子の創成に成功した。
これらの成果は、JACS誌2報、Sci. Rep.誌2報を含む原著論文として報告するなど、H27-28年の公募期間2年間の間に、当初想定した予想を超える成果をあげることが出来たと自負している。 -
固体NMRによる光受容蛋白質ロドプシンのレチナール結合部位の精密構造解析法の開発
研究課題/領域番号:15H04336 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
川村 出, 五東 弘昭, 須藤 雄気, 内藤 晶, 重田 安里寿, 槇野 義輝
配分額:16380000円 ( 直接経費:12600000円 、 間接経費:3780000円 )
本研究では、微生物型タンパク質であるロドプシンの発色団レチナールの結合部位の精密構造解析のために、レチナールオキシム体からアルデヒドへの変換反応の探索と高度好塩菌由来のバクテリオロドプシンから13C標識レチナールの抽出および固体NMRを用いたレチナール結合部位の構造解析を行った。その結果、オキシム体からレチナールへの効率的な変換反応の構築を達成し、13Cセグメント標識レチナールの生成に成功した。また、固体NMRを用いてセンサリーロドプシンIIやクロキノバクターロドプシン2などのレチナール結合部位の構造を明らかにした。さらに、光照射固体NMRによるセンサリーロドプシンIIの光中間体を観測した。
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研究課題/領域番号:15H04363 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
須藤 雄気, 塚本 卓
配分額:16380000円 ( 直接経費:12600000円 、 間接経費:3780000円 )
ビタミンAのアルデヒド型であるレチナールを発色団とするタンパク質は、総称してレチナールタンパク質と呼ばれる。生物の三大ドメイン(動物・細菌・古細菌)に万を越える分子が広く分布し、様々な光依存性機能を担っている。このような生物学的興味に加え、近年レチナールタンパク質を利用し、細胞や個体の機能を光で操作する技術(光遺伝学)が確立してきた。本研究では、これまでの研究を礎に、レチナールタンパク質を様々な手法により根源的に理解し(知る)、その知見に基づいた分子機能の改変・創成を行い(変える)、さらには様々な生命科学研究に利用できる光操作ツールを開発する(役立てる)ことを目的とした研究を行い成果を挙げた。
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光照射固体NMRによる細菌型センサリーロドプシンの光活性構造変化の解明
研究課題/領域番号:15K06963 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
内藤 晶, 川村 出, 須藤 雄気, 加茂 直樹, 和田 昭盛
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
細菌型光受容膜タンパク質は物質輸送や信号伝達に重要な役割を果たしている。発色団レチナールが光サイクルを回る間に光受容体としての機能が発現する。本研究では光サイクル中に生成する光中間体を固体NMRによって観測するため、光照射固体NMR装置の開発を行った。この装置を用いて、プロトン輸送活性をもつバクテリオロドプシンの変異体Y185F-bRを用いて、光サイクル中に生成するO-中間体やCS*-中間体のNMR信号の観測に成功した。次に負の光走性を示すppR/pHtrII複合体について光照射を行った結果、M-中間体からO-中間体が生成し、N’-中間体がO-中間体から平衡反応で生成することが判明した。
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先端的な超高速分光と非線形分光による多自由度複雑分子系の研究
研究課題/領域番号:25104005 2013年06月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
田原 太平, 竹内 佐年, 石井 邦彦, 山口 祥一, 須藤 雄気, 二本柳 聡史, 倉持 光
配分額:141050000円 ( 直接経費:108500000円 、 間接経費:32550000円 )
最高の分光計測を開発・駆使して多自由度複雑分子系の研究を行った。領域の研究者との共同研究を強力に進めながら多くの研究成果をあげた。特に(1)超高速分光では独自の時間分解インパルシブ誘導ラマン分光法の極限化を推し進めるとともに、種々の生体分子、超分子、機能性分子の超高速過程を解明した。(2)界面選択的非線形分光では、我々が開発したヘテロダイン検出振動和周波発生分光法を駆使して界面水構造を解明し、また二次元分光法や紫外励起時間分解測定に発展させて界面のダイナミクス研究を実現した。(3)単分子分光では、独自の二次元蛍光寿命相関分光法を開発してタンパク質の折り畳み過程を研究し、新しい重要な知見を得た。
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光応答性タンパク質の機能転換が明らかにする柔らかな構造機能相関
研究課題/領域番号:25104009 2013年06月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
神取 秀樹, 須藤 雄気, 井上 圭一, 岩田 達也, 片山 耕大, 山田 大智
配分額:131300000円 ( 直接経費:101000000円 、 間接経費:30300000円 )
多くの生体分子は共通の構造をもとに多彩な機能を演出している。本課題で我々は、ロドプシンやフラビンタンパク質などを対象として機能の発見・転換・創成をテーマに柔らかさと機能との関わりを研究した。その結果、内向きプロトンポンプや新規チャネルロドプシン、環状ヌクレオチドを光で分解する酵素ロドプシンなどの発見を報告した。一方、機能転換については、ロドプシンやDNA光回復酵素に対して限られた変異導入により機能転換に成功したが逆方向は成功せず、非対称な機能転換が明らかになった。機能の創成に関しては、光駆動ナトリウムポンプの構造基盤に基づき、カリウムやセシウムをポンプするタンパク質を創成することができた。
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レチナールタンパク質の生物物理化学的解析
研究課題/領域番号:13F03076 2013年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
阿波賀 邦夫, 須藤 雄気, REISSIG Louisa, REISISIG Louisa
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
これまでの研究により超好熱菌から新しいレチナールタンパク質を発見し、サーモフィリックロドプシン・TRと命名している。この分子は、これまで見つかっているレチナールタンパク質の中で最も熱に対して安定な分子であった。この分子について、構造および構造変化を過渡吸収スペクトル(可視、赤外、ラマン、蛍光)によって追跡し、さらにNMR分光法を用いた発色団構造の決定に成功した。さらに今年度は、過渡光電流の発生が期待される [電極1(M)|電荷分離層(S)|絶縁分極層(I)|電極2(M’)] なる構造をもつ光学セルにおいて、その安定作動の最適化を行った後に、電荷分離層を光活性生体物質とすることによってより、環境応答型の光応答を求めた。
[金属(M)|電荷分離層(S)|絶縁分極層(I)|金属(M’)]光電セルにおいて、絶縁分極層としてイオン液体(IL)を用いた系において、実用化に向けた検討を行った。この光電セルでは、界面電気二重層の形成による巨大電場によって電荷分離が促進されることが期待されている。近赤外外部に吸収をもつVOナフタロシアニンとC60の固溶体膜を電荷分離層とし、二つの電極を平行に同一基板上に配置したIL-MSIM光電セルの特性を調べところ、電気二重層の生成が電極間距離に依存しないことを利用し、電極間距離を7 mmに広げても過渡光電流を取り出せることが分かった。このように、透明電極を必要とせず、また電極の位置を厭わない柔軟性は、IL-MISM光電セル光検出器としての実用性を保証する。さらに、[M|S|I|M’]光電セルのM’電極を光ファイバーのジャケットとすることによって、On-tip型の光センサー構造を実現し、S層に生体物質を用い過渡光電流の検出に成功した。 -
振動分光法による過渡的膜タンパク質複合体の解析
研究課題/領域番号:24121712 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
須藤 雄気
配分額:11310000円 ( 直接経費:8700000円 、 間接経費:2610000円 )
細胞内外の情報や物質のやり取りを行う”膜タンパク質”は、全タンパク質分子の約20%を占め、生命活動に必須である。一方で、細胞膜中で機能するため取り扱いが難しい、発現量が少ないなどの理由からそのメカニズムの理解は遅れている。我々は、光受容体・ロドプシンと伝達膜タンパク質の“膜分子複合体の過渡的変化”を様々な手法により解析している。このうち、赤外分光(FTIR) 法やラマン分光法に代表される振動分光法は、分子振動を鋭敏に捉える手法で、側鎖, 主鎖, 低分子(イオンや水など)の微細構造変化を捉えることができ、X線結晶構造解析やNMR解析では得ることが難しい情報を取得することができる。本研究では以下の4点について研究を行い、成果を得た。本研究を通じて、膜蛋白質解析のボトルネックである、試料調製法や解析手法を確立できたと考えている。
(1) 試料調製法の確立 [Sudo et al. 2013, J. Biol. Chem., Tsukamoto et al., 2013, J. Biol. Chem.], (2) 時間分解FTIR法による分子構造変化 [Furutani et al. 2013, J. Phys. Chem. B], (3) 時間分解ラマン分光法による分子構造変化 [Sudo et al. 2014, J. Phys. Chem. B], (4) 光照射固体NMR分光法による発色団構造変化 [Yomoda et al., 2014, Angew. Chem. Int. Ed.], (5) 全反射型FTIR法による2次構造測定 [東京大学船津研究室との共同研究]。 -
研究課題/領域番号:23687019 2011年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(A) 若手研究(A)
須藤 雄気, 塚本 卓
配分額:27300000円 ( 直接経費:21000000円 、 間接経費:6300000円 )
生体中に存在するタンパク質分子は、時々刻々とその形を変化させることで、様々な生理機能を担っている。そのため、タンパク質分子の本質的な理解には、「時々刻々=時間」・「形=空間」の2つの側面からの理解が重要となる。本研究では、光受容体の1種であるレチナールタンパク質による光情報伝達を、様々な「時間」および「空間」分解能で理解することを目的とした。
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研究課題/領域番号:23657100 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
須藤 雄気, 林 重彦
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
本研究は、実験及び理論の両面から、光受容レチナールタンパク質の発色機構を探り、得られた知見を基盤に、様々な色を呈する分子を創成することを目的とした。主な成果は以下の通りである。(1) 発色機構の実験的解明(4報)、(2) 発色機構の理論的解明(2報)、(3)様々な色を呈する分子の創成(2報)。このように実験と理論の融合により、色素タンパク質の新しい発色機構の解明とそれをもとにした分子創成は、様々な分野の研究者に取って有用な情報を提供するだろう。
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センサー型ロドプシンの分子科学:機能と構造変化の連関性
研究課題/領域番号:22018010 2010年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
須藤 雄気
配分額:4200000円 ( 直接経費:4200000円 )
ロドプシン類は、光で反応のオン・オフを容易に調節できる点から、現在の生命科学研究の主題である構造-機能相関を分子論的に理解できる有用なツールである。本研究では微生物の光センサー型ロドプシンに着目し、機能と構造変化の連関性を明らかにすることを目的とした。当該年度の主な研究成果は以下の通りである。
[1]新しいロドプシン類の単離・同定・発現・精製
不安定で解析が困難だった誘因光受容体・センサリーロドプシンI(SRI)について、安定な分子を見いだした。また、新規ロドプシン分子を見いだしミドルロドプシン(MR)と名付けた。さらに、これら光センサータンパク質の下流分子(情報伝達に関わる分子群)についても単離・同定に成功し、発現・精製系を構築した。これにより、これまで困難であった測定が可能となった。
[2]構造・構造変化・機能解析
SRIや忌避光受容体・センサリーロドプシンII(SRH)を中心に、種々の分光法や生化学的・生物物理学的・分子生理学的手法を駆使して、タンパク質分子の形(構造)、やその変化(構造変化)を明らかにし、機能との連関性をアミノ酸レベルで明らかにした。SRHのTyr174の構造変化、SRIの体積変化など、物理化学的性質から、細菌運動解析など細胞生物学的解析までをうまく融合することができた。MRについては、光反応が極めて特徴的であることを見いだし、さらに光反応中における構造変化を時間分解分光法により明らかにした。