共同研究・競争的資金等の研究 - 坂本 亘
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チラコスタシスの解明に基づく葉緑体生物学の再構成
研究課題/領域番号:24K02044 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
坂本 亘
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
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チラコイド膜リモデリング因子の構造に基づく光合成環境適応原理
研究課題/領域番号:23H04959 2023年04月 - 2028年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)
坂本 亘, 小澤 真一郎
配分額:111540000円 ( 直接経費:85800000円 、 間接経費:25740000円 )
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光合成ユビキティ:あらゆる地球環境で光合成を可能とする超分子構造制御
研究課題/領域番号:23H04957 2023年04月 - 2028年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)
栗栖 源嗣, 斉藤 圭亮, 山本 大輔, 白井 剛, 坂本 亘, 日原 由香子, 広瀬 侑, 丸山 真一朗, 田中 亮一, 皆川 純, 吉田 啓亮, 桶川 友季
配分額:111280000円 ( 直接経費:85600000円 、 間接経費:25680000円 )
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チラコイド膜リモデリングと光合成の環境適応
研究課題/領域番号:21H02508 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
坂本 亘
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
今年度は、シアノバクテリアで構造が決定されたVIPP1のin vivoでの機能をシロイヌナズナVIPP1で検証するためのin vitroとin vivoの機能解析を行った。まずin vitro実験では、大腸菌で発現して精製したVIPP1-Hisタンパク質を用いたNTPase活性部位の解析と複合体構造の変化について、点突然変異を導入して検討した。シアノバクテリアでは、構造から明らかになったヌクレオチド結合部位に変異(E126Q/E179Q二重変異)を導入したところATPおよびGTPの加水分解活性が完全に失活していたが、シロイヌナズナに同じ変異を導入したところ、これらの加水分解活性が失活せず、むしろ野生型よりも高い活性を示すことが明らかになった。一方で、N末端側のαヘリックス内のアミノ酸、特に11番目のバリン残基にアミノ酸置換を加えたVIPP1タンパク質では活性が低下する変異が得られた。次にin vivoの実験では、シロイヌナズナvipp1ノックアウト変異(vipp1-ko)をVIPP1-GFPで相補する実験系を用いて、同様のアミノ酸変異を導入することとした。今年度は上述した変異を導入したVIPP1-GFP遺伝子を作成してvipp1-ko変異体ヘテロ個体を形質転換する実験が全て完了した。来年度以降、ホモ個体を選抜しin vitroでの結果を検証する。さらに、チラコイド膜内におけるリモデリング分子VIPP1, CURT1およびFZLの膜内局在を調べたところ、VIPP1はストロマチラコイドに主局在する一方、VIPP1とCURT1はグラナマージンに局在することが確認された。
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葉のステイグリーンと植物環境適応のミッシングリンク解明
研究課題/領域番号:18K19343 2018年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
坂本 亘
配分額:6240000円 ( 直接経費:4800000円 、 間接経費:1440000円 )
本研究では、大型の作物ソルガムが持つ、早枯れ性とステイグリーン性を決定する量的形質遺伝子(QTL)を様々な手法を用いて同定し、野外環境における葉のライフスパンと環境応答の新たな相互作用を遺伝素因として明らかにするための研究を進める。
これまでの研究で、グレインソルガムBTx623とたかきびNOGの交雑後代による組換え自殖系統 (RIL)約200個体の集団を維持している。さらに、F6世代でRIL252個体のNGS解析により約4,000のSNPマーカーによる高密度のジェノタイピングを完了している。本研究ではまず、このたかきびRIL集団を用いてステイグリーン形質の分離を調べた。今年度は網室で栽培したF10集団のステイグリーンを目視により調べ、QTL解析に用いたところ、5番染色体の大きなQTLを検出することができた。一方で、幼苗や圃場栽培でのステイグリーン測定におけるQTLでは同じピークが観察されなかったので、このQTL遺伝子とステイグリーンには何らかの環境要因が関係する可能性が考えられた。
興味深いことに、今回得られたQTLは、圃場栽培において代表者が見出した有機リン系殺虫剤(スミチオン)にNOGが感受性、BTx623が抵抗性であることを用いたQTL解析で検出されるピークとほぼ同じ位置にあることがわかった。これらの結果より、スミチオンで誘導される細胞死と網室栽培で検出されるステイグリーンが同じ機構で何らかの環境シグナルを認識していることが推測された。
本研究により検出されたQTLについて、BTx623の全ゲノム情報と、NOGのリシーケンスにより得られた配列を比較して該当するDNA領域を調べたところ、NOGで欠失した領域が存在することが明らかになった。来年度以降、これらの領域を詳しく調べて原因遺伝子を特定する予定である。 -
葉緑体が獲得したプロセッシブな蛋白質・核酸分解と機能分化の統合理解
研究課題/領域番号:17H03699 2017年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
坂本 亘, 高見 常明
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
本研究では、シアノバクテリアの細胞内共生により生じた葉緑体が、前駆体であるプロプラスチドから葉緑体に分化し維持されるために必須なプロセッシブ分解の調節機構を明らかにするとともに、分解産物であるペプチド・ヌクレオチドの葉緑体外輸送など、その生理機能についても着目し、葉緑体のホメオスタシス・機能転換と生体高分子分解の関係を統合的に理解する。以下の3つの項目について研究を進めた。
(1)プロセッシブなタンパク質分解酵素FtsHの制御機構:FtsHはチラコイド膜の主要プロセッシブタンパク質分解酵素である。H30年度はFtsH2のリン酸化部位についてS212, T337, S380, S393のセリンおよびスレオニン残基がリン酸化されていることを推定した。それぞれの残基をアラニンに置換したFtsH2を発現する遺伝子をFtsH2欠損変異体に導入したところ、S212Aの変異ではFtsHの蓄積が低下していた。
(2)プロセッシブな核酸分解酵素DPD1の制御機構:昨年度までに作製した、エストラジオール誘導系により変異型および野生型DPD1を発現するシロイヌナズナトランスジェニック個体について、ホモ化した系統を用いてDPD1の誘導を確認した。転写レベルでの発現誘導は確認されたが、ウエスタン解析によるDPD1タンパク質の発現が確認できなかった。これまでDPD1恒常的発現系でもDPD1の発現に成功しておらず、DPD1発現の毒性あるいは他の影響が考えられたので、本実験の続行は再検討することにした。
(3)分解産物の葉緑体排出の解析:内包膜に局在するABCトランスポーターTAP1によるペプチド排出機構があることを明らかにした。tap1変異体でのペプチド残存には優位な増加は検出されなかった。TAP1の欠損が葉緑体機能にどのような影響を及ぼすかをRNAseq等で検討した。 -
プロトン駆動力による電子伝達のフィードバック制御
研究課題/領域番号:16H06554 2016年06月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
高橋 裕一郎, 坂本 亘, 田中 亮一, 伊福 健太郎
配分額:158600000円 ( 直接経費:122000000円 、 間接経費:36600000円 )
変動する光環境下での光合成電子伝達活性の制御機構を解明するため、チラコイド・ルーメン酸性化によるフィードバック制御、光エネルギーの捕集の制御、および光化学系の光損傷・修復・構造に着目して研究を進めた。
(1)ルーメン酸性化機構の理解のため、光化学系II (PSII)酸素発生系のプロトン輸送チャネルの同定を進めた。構造から推定されたプロトン輸送に関与するPsbA、PsbB、PsbC、PsbDサブユニットのアミノ酸を置換した葉緑体変異体を作出し、機能解析した。また、PSII表在性タンパク質 PsbPのアミノ酸の機能解析も進めた。
(2) 構造からルーメン酸性化に伴いプロトン化すると予想されるシトクロムb6f複合体のPetA、PetC、PetD、PetGサブユニットの残基を置換した形質転換系を作出した。強光下での光合成電子伝達反応への影響を解析中である。
(3)光化学系の光損傷・修復機構の解明のため、光化学系I(PSI)複合体の構造および分子集合因子Ycf3、Ycf4、Y3IP1を解明した。さらに、CGL71とPSA2の機能解析も進行中である。
(4)PSII複合体の合成・光損傷・修復の機構を解析した。D1のW14残基の酸化修飾に関連して、Fに置換した変異体W14Fを作成した結果、強光感受性となりD1分解が促進された。この分解がFtsHに起因するかどうかを検証するため、W14Fをftsh変異体に導入した株を作成した。W14はPsbIとの相互作用が構造モデルで予測されたので、PsbIに変異を導入した株の作成も進めた。また、PSIIの構築に関わると考えられている因子の精製を行い、この因子の発現を一過的に抑制するRNAi株を作成し、 PSIIへ与える影響を調べた。また、PsbPとPsbQホモログの分子集合における機能を明らかにした。 -
新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化
研究課題/領域番号:16H06552 2016年06月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
皆川 純, 清水 浩, 坂本 亘, 園池 公毅, 宗景 ゆり, 久堀 徹, 魚住 信之, 高橋 裕一郎, 鹿内 利治, 栗栖 源嗣, 矢守 航
配分額:174200000円 ( 直接経費:134000000円 、 間接経費:40200000円 )
光合成センターの運営 ― 光合成機能解析センター、光合成リソースセンターは、当初予定通り運営されている。
領域研究の活性化 ― 毎月の月初めのSkypeによる総括班会議において、さまざまな領域運営の議論を行い、領域活動の支援と活性化を行った。また、全計画班、全公募班による年2回の領域会議を行い、領域活動の活発化を進め、多数の共同研究を推進した。領域の主催、共催による、シンポジウム、技術講習会等を多数開催した。
広報活動 ― ニュースレターを2回発刊した。
中間評価とりまとめ ― 本年度は中間評価を行う3年目にあたっていたため、過去2年間の領域活動のとりまとめ作業を、総括班が中心となって行った。 -
被子植物に共通する誘導型オルガネラDNA分解とサルベージ機能の解明
研究課題/領域番号:25291063 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
坂本 亘, 高見 常明
配分額:17940000円 ( 直接経費:13800000円 、 間接経費:4140000円 )
葉緑体とミトコンドリアには細胞内共生の痕跡としてオルガネラゲノムが存在する。これらのDNAが有する遺伝情報はごく限られている一方で、コピー数が高くかつ変動すること知られている。また葉緑体DNAが花粉や葉の老化など、組織特異的に分解される現象は20年以上前からいくつかの植物で報告されているものの、統一的な見解は得られておらず意見が分かれており、分子機構も未解明である。
本研究では、代表者らが最近発見したオルガネラヌクレアーゼDPD1の解析を通じて、被子植物に共通するDNA分解機構を分子レベルで明らかにし、DPD1が関与するサルベージ作用を証明する研究を行った。 -
研究課題/領域番号:22380007 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
坂本 亘, 中園 幹生
配分額:19370000円 ( 直接経費:14900000円 、 間接経費:4470000円 )
作物での葉緑体への遺伝子導入は、花粉による遺伝子拡散防止、大量のタンパク質発現、相同組換えによる遺伝子ターゲティングなどに有効な技術であるが、イネなどの主要穀物では効率的な導入法の確立に至っていない。効率的な遺伝子導入へのポイントとしては、ターゲットとなる葉緑体サイズがイネでは小さいことが挙げられる。本研究では、イネで葉緑体形質転換を可能にする方策の1つとして、葉緑体が巨大化する変異体を用いることを試みた。そこでまず、葉緑体が巨大化するイネ変異体を単離してこの変異を詳しく調べるとともに、葉緑体形質転換への利用と効率化のための研究を試みた。
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植物のアロ認証に伴う雄側ミトコンドリアの排除とゲノム分解システムの普遍性
研究課題/領域番号:22112516 2010年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
坂本 亘
配分額:8710000円 ( 直接経費:6700000円 、 間接経費:2010000円 )
有性生殖では、雌雄のゲノムが融合して遺伝的多様性を生じること(すなわちアロ認証)が種の維持にとって有利に働くが、これは核ゲノムにおける有利性であり、細胞内共生に由来するミトコンドリアゲノムおよびプラスチドゲノム(植物のみ)では多様性が逆に不利になるため、片親のみから遺伝する。片親遺伝の多くは母性遺伝であり、雄性配偶子におけるオルガネラの挙動が鍵となる。本研究ではモデル植物シロイヌナズナを用いて、申請者らが最近明らかにした植物の雄側配偶子におけるオルガネラゲノム分解システムに関する研究を行った。これまでの研究で花粉特異的に発現するDPD1エキソヌクレアーゼを同定し、DPD1が被子植物で進化した雄側DNA分解の主動因子であることを明らかにした。今年度は、DPD1の花粉特異的発現が転写後制御による可能性について検討し、制御因子として機能未知のマイクロRNAであるmiR420が関与する可能性を示すデータを得た。さらに、分子遺伝学的な解析により、オルガネラDNA分解に関わる別の因子としてDPD2を同定した。DPD2は核酸合成の律速段階であるリボヌクレオチドを還元する酵素のサブユニットをコードしており、より詳細な解析により、ヌクレオチドレベルがDPD1の活性に影響を与えることを示唆するデータを得た。以上の結果は、DPD1の重要性を強く示唆する一方で、母性遺伝への直接的関与を指示する結果ではない。そこで本年度は、DPD1の発現により母性遺伝をコントロールできるかどうかをプラスチド両性遺伝型の植物であるタルウマゴヤシを用いて調べる実験系を構築して解析を進めた。
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チラコイド膜プロテアーゼFtsHの安定性とTHF1との相互作用
研究課題/領域番号:09F09310 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
坂本 亘, ZHANG L.
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
本研究では、葉緑体の分化と光合成機能維持に関わる鍵因子としてFtsHとTHF1に着目し、それらの相互作用について解析を進めた。前年度までの研究で、FtsHとTHF1の直接的な相互作用は否定されたので、THF1が光化学系IIの周辺、特にアンテナタンパク質LHCIIと相互作用する可能性について検討した。その結果in vivoあるいはin vitroの実験ともにTHF1がLhcb1,2,3と直接結合することが示された。したがって、THF1はLHCIIと結合することでアンテナ分解の制御に関与し、一方でFtsHはチラコイド膜結合方プロテアーゼとしてLHCIIタンパク質を分解し、それらが間接的に作用することでチラコイド膜の維持に関わっていることが推察された。
本研究では更に、新たなチラコイド膜形成因子としてVIPP1タンパク質に着目し、それらの詳細を調べる研究を22年度の後半より行った。これまでの知見から、VIPP1は膜小胞によりチラコイド膜の形成に関わると推論されてきたが、本研究により、VIPP1の多くが包膜にも局在しており、葉緑体包膜の維持に関わる可能性が強く示唆された。今年度は大腸菌で同様の膜維持機能が推定されるpspAタンパク質の欠損株を用いたVIPP1での相補実験を行い、VIPP1が実際にPspAタンパク質と同様の機能をすることを明らかにした。以上の結果より、葉緑体維持に関わる因子としてFtsH,THF1,VIPP1の新たな機能を明らかにした。 -
配偶子形成におけるプラスチドの役割と葉緑体への分化・維持に関する研究
研究課題/領域番号:16085207 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
坂本 亘, 松島 良, 富田 祐子, 加藤 裕介, 三浦 栄子, 蘇都 莫日根
配分額:74900000円 ( 直接経費:74900000円 )
植物に固有の細胞内小器官(オルガネラ)であるプラスチドは、原核生物型の分裂様式により細胞内で増殖しながらダイナミックに形態や機能を変化させ、植物の器官形成・環境変動などに対応する。本研究では、(1)花粉(雄性配偶体)におけるプラスチドの役割と、(2)葉緑体におけるチラコイド分化、に関わる突然変異体の解析をモデル植物により進め、プラスチド機能に関わる未知の分子機構を明らかにする研究を行った。
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植物の葉における斑入りと環境適応
研究課題/領域番号:19657017 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
坂本 亘, 一瀬 勇規
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
本研究では、植物における斑入り突然変異が個体レベルでの光合成としては負に働くか、環境適応に有利に働く場合があることを実証する実験をモデル植物で試みた。特に、環境適応の1つとして斑入りが「病害抵抗性」を示す可能性について萌芽的研究を行った。これまでの研究で、代表者らが解析を進めているシロイヌナズナの斑入り変異var2では光化学系IIの維持に必要な葉緑体プロテアーゼが欠損しており、その結果として葉緑体に高レベルの活性酸素を蓄積することを明らかにしている。昨年度は、これらの活性酸素が病原細菌への抵抗性に関与するかどうかをP. syringae pv tomato DC3000を用いて調べ、野生型に比べ、病原細菌の増殖が抑制されることが明らかとなった。今年度は、これらの抵抗性の原因として斑入り変異では自然免疫の活性化が起きている可能性、葉緑体の活性酸素自身がDC3000への抵抗性に寄与する可能性について調べた。自然免疫活性化の指標となるPR1遣伝子の発現上昇がvar2の葉で観察されず、またこれらの活性化に関わるシグナル因子であるサリチル酸の上昇も見られなかった。他の遺伝子発現の変化もマイクロアレイ等で解析したところ、やはり自然免疫活性化に関する遺伝子発現上昇を支持する結果は得られなかったが、var2の斑入り葉では活性酸素消去系に関わる遺伝子発現が上昇していることが明らかとなった。特に斑入りの白色組織でSODなどの消去系酵素が働いており、抵抗性に寄与する可能性も示唆された。一方で、斑入りを示さない光化学系II酸素発生系複合体に関する突然変異体でも活性酸素が蓄積し、var2よりは弱いがDC3000に抵抗性を示す結果が得られたことから、葉緑体の活性酸素が自然免疫系を活性化するよりもむしろ、葉緑体で蓄積する活性酸素が直接病原細菌に毒性を示す可能性が示唆された。
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光合成・光エネルギー変換装置のダイナミクスとその分子基盤の解明
研究課題/領域番号:18GS0318 2006年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術創成研究費 学術創成研究費
高橋 裕一郎, 沈 建仁, 皆川 純, 坂本 亘, 菓子野 康浩, 山本 泰
配分額:331760000円 ( 直接経費:255200000円 、 間接経費:76560000円 )
酸素発生型光合成電子伝達系で機能する光エネルギー変換装置を高度に精製し、そのサブユニットとコファクター組成の詳細を明らかにし、結晶化を進めた。その結果、構成サブユニットの役割を明らかにし、立体構造解析を進展させた。また、複雑な構造をもつ光エネルギー変換装置生合成の分子機構を明らかにし、分子集合モデルを提出した。さらに、異なる光環境下で光エネルギー変換装置の構造と機能の再構築の分子機構を解明した。
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花粉の核性を支配する分子機構の解明
研究課題/領域番号:17658005 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
坂本 亘
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
本研究では、作物における花粉形成の分子機構を明らかにするため、分子遺伝学的手法により成熟花粉の形成に関わる遺伝子を単離して解析する。特に本研究では、花粉形成の中でも核分裂とDNAの代謝を制御するメカニズムに着目し、(1)なぜ成熟花粉には生殖核数に多様性があるかと、(2)オルガネラDNAが片親遺伝する制御機構、について分子機構を解明して育種へ応用するための基盤的研究を行った。(1)については昨年度までに花粉第2分裂に異常を示すシロイヌナズナ変異体nikakuを単離して原因遺伝子を同定した。この遺伝子は雄原細胞特異的に発現するmyb転写因子をコードすることが明らかとなった。この遺伝子プロモーターにより緑色蛍光タンパク質GFPを発現させると、精細胞特異的にGFPが局在することを確認した。
今年度は、上記の変異体の他に成熟花粉でオルガネラDNAが残存する変異体について解析を進めた。通常の野生型成熟花粉では栄養細胞にはオルガネラDNAがDAPIなどのDNA特異的蛍光色素では染色されないが、得られた変異体ではこれらが細かい顆粒状に観察される。1411では、花粉の変異に加えて、葉に若干の斑入りを生じるため、多面的な作用をすると予想された。今年度は、単離された変異体(#1411)についてさらに解析を進め、マップベースクローニングに必要なF2個体の育成と解析を行った。その結果、遺伝子領域を第2染色体の約700kb領域に特定することができた。上記の1411変異体の他にも同様の形質を示す変異体を得ており、これらの解析も同時に行った。 -
高等植物ミトコンドリアの分裂・融合機構の解明と形質転換系の確立
研究課題/領域番号:15208001 2003年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
堤 伸浩, 中園 幹生, 門脇 光一, 坂本 亘
配分額:52260000円 ( 直接経費:40200000円 、 間接経費:12060000円 )
【ミトコンドリア分裂因子の同定】
すでに同定していたミトコンドリア分裂因子DRP3b以外に,DRP3aもミトコンドリアの分裂に関与していることを明らかにした.DRP3aは,ペルオキシソームの分裂にも関与していることが知られているが,新たにミトコンドリア分裂にも機能していることが分かった。また,酵母のミトコンドリア分裂因子Fis1の配列をもとに,シロイヌナズナの全ゲノム中より2つのFis1ホモログを同定し,それぞれAtFIS1a,AtFIS1bと命名した.AtFIS1aは,そのC末端側の疎水領域により植物のミトコンドリア外膜に局在することが分かった.さらに,このタンパク質がペルオキシソームと葉緑体にも局在することが分かった.
【ミトコンドリア形質転換】
同定したミトコンドリア分裂因子DRP3Bの優性変異遺伝子を高発現するような形質転換植物体を作製したところ,細胞内でミトコンドリアが変形し巨大化した.この形質転換体を標的としてパーティクルボンバードメント法によりミトコンドリアの形質転換を試みたが,目的の形質転換体は得られなかった.
【高等植物におけるミトコンドリア融合現象の発見】
研究の過程でミトコンドリア分裂抑制による形態の変化が,細胞分裂に伴うことなく予想以上に速やかに長大化することがわかってきた.この結果は,植物ミトコンドリアが頻繁に融合していることを示唆していた.そこで,新規蛍光タンパク質Kaedeを利用して,以下の実験をおこなった.Kaedeは,緑色蛍光をもつタンパク質でありながら,紫外線を当てると赤色に変わる性質がある.1個の細胞内のミトコンドリアの一部を緑色に,また一部を赤色に蛍光ラベルし,啓示的に細胞を観察したところ,赤と緑のミトコンドリアが融合して黄色(赤+緑)に変色する様子(融合する様子)を動画でとらえることに成功した,2時間以内に細胞内のすべてのミトコンドリアが少なくとも1回は融合することが確認され,植物細胞内で頻繁にミトコンドリアが融合していることを初めて明らかにした. -
植物の葉が斑入りを起こす分子メカニズム
研究課題/領域番号:15657011 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
坂本 亘
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
本年度は、これまでにシロイヌナズナで単離した斑入り突然変異yellow variegated2(var2)における斑入りセクター形成を遺伝学的に解明する目的で、var2から斑入りが回復するサプレッサー突然変異をスクリーニングし、それらの解析を行った。昨年度までに得たvar2のEMS突然変異処理M2世代種子を、ショ糖を含むMS培地に播種し、斑入りが抑制される系統を単離した。約10000種子を用いた実験から、斑入りが回復する系統を約20系統ほど得た。さらにこれらの中で次代種子(M3)が得られた系統約10系統についてそれらの遺伝解析を行った。
得られた系統のうち、最も強く斑が回復した系統(sv2.48)は遺伝分析により野生型VAR2アリルの混入によるものと想定された。これら以外に今年度は2つの系統、sv2.39及びsv2.52について遺伝解析を行った。Sv2.39では野生型(Ler)との交雑後代における分離にゆがみが生じ、突然変異のマッピングが不可能であったが、sv2.52についてはマッピングにより、第1染色体上腕の約5Mb〜10Mb領域に原因遺伝子が存在することを明らかにした。
上記研究に用いた斑入り変異var2の原因遺伝子VAR2は葉緑体型メタロプロテアーゼFtsHをコードする。FtSHは光化学系IIの反応中心タンパク質D1の分解に関与することが示唆されているため、var2変異体でD1の分解に野生型と比べて差異が見られるかを調べた。野生型とvar2の葉からチラコイド膜をパーコール密度勾配遠心分離により単離し、in vitroでの強光照射後にウエスタンブロットでD1の蓄積を調べたが、本年度の実験では優位な差は検出できなかったため、今後も引き続き解析を行うこととした。 -
イネアントシアニン着色に関する制御遺伝子群の解析と分子育種
研究課題/領域番号:13660008 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
坂本 亘, 福岡 浩之, 村田 稔
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
これまでに申請者らは、イネアントシアニン着色に関するPlw遺伝子を持つ同質遺伝子系統より2つのcDNA(OSB1,OSB2)を単離している。これらのcDNAは、bHLHドメインをもったc-myc型の転写因子をコードしており、トウモロコシのR及びB遺伝子とも相同性が高い。13年度はまずゲノミック配列のクローニングによりそのゲノム構造を明らかにした。その結果、OSB1遺伝子の下流にはOSB2の一部と全く同じ配列が存在することが明らかになり、Plw遺伝子座はこれらの遺伝子によるコンプレックスを形成していることが示唆された。
次に、両遺伝子をC及びA遺伝子を持つイネ系統に導入したトランスジェニックイネを作成して調べたところ、アントシアニンによる着色が生じることが明らかとなり、両遺伝子がアントシアニンの組織特異的な蓄積に関与することを明らかにした。14年度は、特に、得られたトランスジェニック植物で、種子組織で着色が見られるかどうかを確認したところ、頴花の外頴及び内頴、ふ先、には着色があり、さらに種皮及び果皮にも着色が見られたが、胚乳及び胚には着色が見られなかった。これらの原因は不明であるが、胚乳でアントシアニンを発現するには、組織特異性の高いプロモータなどを用いる必要性が考えられた。
さらに、Pl遺伝子以外にもイネのアントシアニン着色に関係する遺伝子として知られている、A及びC遺伝子を同定することも試みた。A遺伝子はトウモロコシとのシンテニーからはDER遺伝子に相当すると考えられるので、ムラサキイネから単離したDFR遺伝子をOSB1,OSB2と共にCのみを持つイネ系統に我々が開発したトランジェントアッセイで糊粉層に導入したところ、アントシアニンの着色が生じた。この結果、A遺伝子はDFRをコードする可能性が強く示唆された。 -
マイクロダイセクションによるライムギ由来小型染色体の分子的解析
研究課題/領域番号:13660007 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
村田 稔, 小倉 豊, 坂本 亘
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
本研究では、ライムギの細胞質を有する六倍性コムギ(cereale)-Chinese Spring(CS)に特異的に存在する小型染色体(midget)の分子構造をマイクロダイセクション法により詳細に解析し、座乗する遺伝子群を同定、解析することを目的としている。我々はまず、PALM装置(カールツアイス社)を用いて、試験的にコムギのダイテロソーミックスを用いて、特異的なテロ染色体1BSをマイクロダイセクションすることを試みた。その結果、掻き取った1BS染色体10本からDNAを増幅することに成功した。これまでは、ギムザ染色した染色体標本を用いていたが、コンタミネーションなどの問題も生じたため、無染色の標本を用いた。また、DNAの増幅は、DOP-PCRキット(ロシュ社製)を用いて行ったが、十分な増幅が得られなかったため、Fast Taq DNAポリメラーゼ(ロシュ社製)を添加する必要があった。この方法により、小型染色体9本を掻き取り、DOP-PCRにより増幅した。この増幅断片をディゴキシゲニンでラベルし、FISHを行ったところ、小型染色体に特異的なシグナルが現れた。このことから、本研究で開発したマイクロダイセクション法の有効性が示された。さらに、増幅した配列を調べるため、TAベクターにクローン化したものの塩基配列を決定した。その結果、ライムギに特異的に存在する反復配列(R173ファミリー)が同定された。又、これ以外にもコムギのESTクローンと高い相同性を示す配列が見つかり、これらが小型染色体から由来した可能性が高い。しかしながら、ヒトDNAと高い相同性を示す配列も多く見つかり、コンタミしたDNAがDOP-PCRによって増幅することも示された。今後は、これらのコンタミを極力抑えるために、カタパルト法などの回収法も検討する必要があろう。