共同研究・競争的資金等の研究 - 松川 昭博
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進化分子工学と先端接着技術による脆弱性骨折の治療法の開発と実用化に向けた検討
研究課題/領域番号:15K10445 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
渡邉 典行, 尾崎 敏文, 松川 昭博
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
新規生体材料であるチタン結合性BMPの有用性について検討した。チタン結合性BMPを付与したチタンワイヤーと付与していないチタンワイヤーをそれぞれラット大腿骨に埋植したところ、チタン結合性BMP群の方がワイヤー周囲の骨新生が有意に増加していた。また引き抜き強度も有意に増加しており、チタン結合性BMPはインプラント周囲の固定力を早期に増加させる可能性がある。以上よりチタン結合性BMPは粗鬆骨に対する治療において有用であることが示唆された。
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重症インフルエンザ肺炎における抗HMGB-1抗体の治療効果の検討
研究課題/領域番号:15K21184 2015年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
野坂 宜之, 森島 恒雄, 西堀 正洋, 塚原 宏一, 松川 昭博, 劉 克約, 八代 将登, 山田 睦子, 畑山 一貴
配分額:2600000円 ( 直接経費:2000000円 、 間接経費:600000円 )
近い将来発生しうるインフルエンザ・パンデミックに向け、新たな治療戦略の選択肢の確立が必要だ。我々はHigh Mobility Group Box-1(以下、HMGB1)という炎症物質に注目し、重症インフルエンザ肺炎モデルに対する抗HMGB1抗体の治療効果を検討した。抗HMGB1モノクローナル抗体単独でマウス重症インフルエンザ肺炎を軽症化させ致死率を改善させた。抗ウイルス薬単独では50%救命できない重症インフルエンザ肺炎モデルでも、抗HMGB1抗体併用により致死率が有意に改善した。なお、本抗体による有害事象は認められなかった。
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感染防御機能を有する革新的骨スクリューの開発
2014年04月 - 2017年03月
経済産業省 医工連携事業化推進事業
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:200000000円
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研究課題/領域番号:26462298 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
香川 洋平, 尾崎 敏文, 松川 昭博
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
整形外科領域の手術においてはインプラントと骨との早期固定が重要である。セメントレスのインプラント表面にはハイドロキシアパタイト(以下HA)がコーティングされることが多いが、コーティング方法は様々で確立されたひとつの方法があるわけではない。本研究においては多糖誘導体リン酸化プルラン(以下PP)を基材として、HAをインプラントにコーティングし骨新生の促進を得た。力学強度試験、元素分析および組織学的評価のいずれの実験結果においてもPP+HA群において有意に優れた結果が得られた。
HAを添加することでより優れた骨伝導を期待でき、PPはインプラントをコーティングする基材として有用であると考えられた。 -
先端生体材料を用いた転移性骨腫瘍の低侵襲かつ機能温存手術治療法の開発
研究課題/領域番号:25462335 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
篠原 健介, 尾崎 敏文, 松川 昭博
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
リン酸化プルランを用いた転移性骨悪性腫瘍治療薬との併用時における有用性について検討した。転移性骨腫瘍の原発巣として頻度の高い乳癌細胞株(MDA-MB231)をヌードマウス大腿骨の遠位果部に24G針を用いて作成した骨孔に注入し、担癌腫瘍を作成した。これらを、無治療群、抗がん剤単独群、抗がん剤+リン酸化プルラン群、リン酸化プルラン群に分類し、腫瘍抑制効果を継時的に評価した。抗がん剤はドセタキセルを使用した。抗がん剤単独群と抗がん剤+リン酸化プルラン群で腫瘍抑制効果が認められた。以上より、リン酸化プルランは抗がん剤含有セメントとして有用であることが示唆された。
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Ras-Raf-ERK/MAPK経路抑制による炎症・がん制御の分子機構
研究課題/領域番号:25293095 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
松川 昭博, 伊藤 利洋, 高橋 索真, 伏見 聡一郎, 平 麻子, 板倉 淳哉, 渡邊 治之, 佐藤 美和
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
本研究課題では、Ras-Raf-ERK/MAPKとその内因性抑制因子Spred-2に焦点をあて各種動物モデルを用いて、ERK経路抑制による炎症とがんの制御機構を明らかにした。検討結果から、Spred-2は種々のモデルで炎症制御に中心的な役割を担うことが明らかとなり、抗炎症の新規ターゲットになると考えられた。また、ヒトがん組織に発現するSpred-2は、細胞のがん化とがん進展に密接に関係する事が示唆された。さらに、炎症反応を制御するSpred-2は、がん細胞及び間質細胞の共存する微小炎症環境で、がんの増殖・進展に関わる可能性を見いだした。
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リン酸化プルランを用いた世界初の多目的接着性人工骨の開発
2012年04月 - 2015年03月
研究成果最適展開支援プログラム A-STEP 起業挑戦タイプ
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:150000000円
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インフェクションコントロール型チタン骨プレートの開発
2012年04月 - 2014年03月
研究成果最適展開支援プログラム A-STEP A-STEP 復興促進プログラム シーズ顕在化タイプ
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:7997000円
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2012年 - 2013年
産学が連携した研究開発成果の展開 復興促進プログラム A-STEP シーズ顕在化タイプ
松川 昭博
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可視光硬化型ゼラチンを用いた新規歯周病治療用接着材の開発
2011年04月 - 2013年03月
研究成果最適展開支援プログラム A-STEP 起業検証タイプ
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:8000000円
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可視光硬化型ゼラチンを用いた新規歯周病治療用接着材の開発
2011年04月 - 2013年03月
研究成果最適展開支援プログラム A-STEP 探索タイプ
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:1700000円
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直接覆髄・断髄・歯周病治療に応用可能な薬剤徐放型多目的生体接着システムの開発
研究課題/領域番号:23592822 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
中村 真理子, 吉田 靖弘, 松川 昭博, 伊藤 嘉浩
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
本研究の目的は可視光硬化型ゼラチン,リン酸化プルランにより,多目的生体接着システムを開発することである。本研究結果から以下のことが確認された。すなわちリン酸化プルランは歯質に接着しなおかつ生体親和性の高い材料であること,また可視光硬化型ゼラチンは歯質に接着し,なおかつ細胞毒性が低いことである。このことから可視光硬化型ゼラチンならびにリン酸化プルランは骨ならびに歯に対する生体接着材料として有用であることが示唆された。
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進化分子工学と先端接着技術の応用による骨粗鬆症の新しい骨折予防法・治療法の開発
研究課題/領域番号:23592187 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
塩崎 泰之, 尾崎 敏文, 松川 昭博
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
進化分子工学の手法を用いて創製する結合性改変成長因子Collagen Binding Domain (CBD)等の新規生体材料を効果的に用いることにより,骨粗鬆症患者の骨折予防や骨折治療に有効な新しい骨組織再生・再建技術を開発する。
CBDの遺伝子配列と,骨形成促進蛋白-4(BMP4)の遺伝子配列を連結した融合遺伝子をベクターにいれ,蚕の卵に導入することによりトランスジェニックカイコを作製する。この時,遺伝子は選択的に絹糸腺で働くようにしおく。絹タンパク質と同時に繭に吐き出されたCBD-BMPは,できた繭から精製することにより得られた。
ウエスタンブロット法を用いて、作製したタンパク質を測定すると55kDaであった。
続いて、このCBD-BMPと通常のrhBMPとの効果の比較をマウス大腿骨へ投与する事で検討した。まず、蛍光標識を行ったそれぞれの成長因子を投与後1,3,7日でマウスを屠殺後に非脱灰凍結切片を作成し蛍光顕微鏡で評価した。CBD-BMPに関しては7日後であってもマウス大腿骨内への残存が確認できた。
続いて、投与後4週後に屠殺し、両群をμCTで撮影し骨密度を比較した。これも2群間で有意にCBD-BMP群が優れていた。(P=0.0489)
また、これらの大腿骨骨髄からRNAを抽出しRT-PCRを用いて両者を比較した。(CBD-BMP,BMP,生理食塩水の3群)HPRTをハウスキーピング遺伝子としALP,Osteocalcin,Osterixを計測し、P=0.035,0.0599,0.0126とCBD群が優れていた。
これらの結果よりCBD-BMPは、成長因子の効果を発現するために必要な標的組織への定着が確認できた。また、その効果に関しても放射線学的、遺伝子学的にも確認できた。これらを用いる事で効果的な骨形成が得られ,骨粗鬆症患者の骨折予防や骨折治療に有効である。 -
研究課題/領域番号:22220009 2010年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
伊藤 嘉浩, 多田 誠一, 鵜澤 尊規, 上田 一樹, 松川 昭博, 吉田 靖弘, 櫻木 誠, 北嶋 隆
配分額:217880000円 ( 直接経費:167600000円 、 間接経費:50280000円 )
日本発の成長因子固定化材料の概念を、化学的固定化だけでなく、成長因子に結合性を付与することで広く捉え直し、有機材料、生体組織、金属、無機材料への固定化も可能にした。結合性成長因子の創成のために、従来のタンパク質工学に加え、バイオ直交化学、進化分子工学、さらにこれらを融合した方法論を編み出した。調製した結合性成長因子は、直接あるいは基材に結合させて実験動物に投与し、それらが有効に作用することを見出し、再生医療分野で広く応用できる可能性を示した。同時に、新しい編み出した方法論は、これにまでにない全く新しい機能性分子の創出法として応用展開できることも示すことができた。
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研究課題/領域番号:20390111 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
松川 昭博, 岡崎 泰昌, 飛田 陽, 久保 雅人
配分額:11960000円 ( 直接経費:9200000円 、 間接経費:2760000円 )
マウス腹腔内には未処置でも多くのT細胞が存在し、感染とともにその数は増加した。RAG-2欠損マウスは感染性腹膜炎に高感受性を示し、T細胞移入により抵抗性を示した。T細胞特異的にSOCS5を過剰に発現したマウスでは感染局所のTh1反応が増強され、SOCS3の過剰発現では全身性炎症反応は軽減して、いずれも敗血症抵抗性を示した。以上より、T細胞は自然免疫賦活に働き、SOCS因子発現で調整される。他にも、複数の炎症モデルで炎症発動時のT細胞の役割を明らかにした。
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急性脳炎・脳症の病態解明及びそれに基づく治療法・予防方法の確立に関する研究
研究課題/領域番号:20249053 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
森島 恒雄, 岡部 信彦, 中込 治, 布井 博幸, 近藤 一博, 細矢 光亮, 松川 昭博, 木村 宏, 吉川 哲史, 市山 高志, 奥村 彰久
配分額:49400000円 ( 直接経費:38000000円 、 間接経費:11400000円 )
小児の急性脳炎・脳症の病原ウィルス別の臨床像および病態の差異について多面的に研究した。疫学的にはインフルエンザ,HHV-6,ロタウィルスが主なもので、致死率は7.7%と高かった。病態としてHHV-6では、突発性発疹(初感染)に伴う脳障害の機序として、脳内でのウィルスの増殖を認められない「脳症」であることを示した。これら「急性脳症」の治療薬としてチオレドキシン(TRX)の可能性が示唆された。
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サイトカインシグナル伝達を基盤にした敗血症時の生体防御機構の解明
研究課題/領域番号:17590352 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松川 昭博
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
STAT因子を介したサイトカインのシグナル伝達はSOCS因子によって制御される。本研究では、STAT3/4/6を負に制御するSOCS3/5に着目し、これらのトランスジェニックマウスを用いて敗血症の分子基盤を解析した。T細胞特異的なSOCS5トランスジェニックマウス(SOCS5Tg)では、T細胞SOCS5高発現により腹腔内マクロファージの自然免疫応答能が細菌排除に有効なTh1応答にシフトし炎症が全身に波及せず、マウスは敗血症に対し抵抗性を示すことを明らかにした。敗血症時のTh1応答増加による細菌排除能の亢進はCCR8欠損でも生じることも見いだした。また、腹膜炎の局所における炎症反応は、腹腔常在マクロファージに発現するStat3によって負に制御されることを初めて示した。STAT3欠損マクロファージでのFcγR・CR1の発現は低下し、逆にSOCS3欠損マクロファージでの発現は亢進した。蛍光標識大腸菌の取り込みはSTAT3欠損マクロファージで低下し、SOCS3欠損マクロファージで亢進した。これにより、STAT3-SOCS3による食細胞貪食能の調節機構を示した。さらに、食細胞特異的STAT3欠損マウスにおける獲得免疫反応は、抗原提示細胞によるMHCclassII発現の亢進るTh1・Th2サイトカイン産生増加により、いずれも有意に増悪することを見いだした。一方、T細胞特異的なSOCS3トランスジェニックマウス(SOCS3Tg)も敗血症に対し抵抗性を示した。これは、腎臓でのSTAT4活性化・Th1サイトカイン産生が低下し臓器傷害が回避されたことが原因と考えられた。また、SOCS3Tgでの薬剤性肝傷害は有意に悪化した。これは、肝細胞でのSTAT1活性化の増加、STAT3活性化の低下により肝細胞アポトーシスの増加、再生能の低下が原因であった。
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プロテオミクス的解析から見た肺癌の神経内分泌分化機構とその生物学的な意義
研究課題/領域番号:16590318 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
伊藤 隆明, 宇高 直子, 松川 昭博, 荒木 令江
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
本研究の目的は、1)肺の神経内分泌分化のマスター遺伝子であるhASH1遺伝子の肺癌細胞培養株への導入実験を行い、神経内分泌分化関連mRNAおよび蛋白質の変化を網羅的に明らかにする。2)非小細胞癌の神経内分泌分化獲得、あるいは小細胞癌の神経内分泌形質消失時に見られる細胞分化、増殖、細胞形態の変化について観察し、神経内分泌分化の生物学的な意義を明らかにする。3)網羅的な発現変化解析から、神経内分泌分化の鍵になると思われる新たな候補分子を見出し、その機能を明らかにする。
hASH1遺伝子導入肺腺癌、扁平上皮癌株、Notch1遺伝子導入およびhASH1アンチセンス遺伝子導入肺小細胞癌を樹立した。hASH1遺伝子導入非小細胞肺癌培養細胞は、神経内分泌形質を示すが、細胞増殖能、ヌードマウス皮下移植による腫瘍形成能、転移能には対照細胞と相違が認められなかった。一方、Notch1遺伝子導入小細胞肺癌培養細胞は、神経内分泌形質の失い、浮遊系形態から固着性形態へと形態変化を示した。また、Affymetrix社のhuman genome U133A arrayによりDNA microarray解析をした。また、肺上皮の分化決定におけるNotch1→Hes1〓Mash1経路と他のシグナル伝達経路(特にJAK/STAT経路)との関係について検討した。hASH1およびHes1蛋白と結合する関連する分子の同定や機能解析のために、FLAG-HA-hASH1遺伝子導入肺腺癌(A549)培養細胞を樹立した。今後、この研究テーマについて更に詳細に質量分析も含め解析し、肺の上皮細胞の分化決定機構のより詳細な分子機構を明らかにしていきたい。 -
敗血症時の自然免疫におけるシグナル伝達の分子機構の解明
研究課題/領域番号:15590349 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松川 昭博
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
IL-10は炎症性サイトカイン産生抑制を通して敗血症時の局所および全身性の炎症反応を抑制する。IL-10のシグナル伝達因子はStat3である。まず、IL-10の抗炎症作用が自然免疫担当細胞であるマクロファージ・好中球(食細胞)のStat3によって支配されるかを知るべく、Stat3を食細胞特異的に欠失したマウスに実験的に感染性腹膜炎を誘導し、その後の生体反応を観察した。その結果、マクロファージ・好中球特異的にStat3が欠失したマウスは、過剰なサイトカイン産生による全身性炎症症候群のため敗血症に対し致死性であることが明らかとなり、食細胞に発現するStat3が敗血症時の全身性炎症の制御に中心的な役割を担うことを初めて示した。次に、食細胞による炎症制御機構の詳細を解析した。腹膜炎に関与する食細胞としては、腹腔常在マクロファージと末梢血から動員される浸潤好中球・マクロファージがある。Stat3改変マウスの末梢血白血球を枯渇させた状態でも、炎症局所で高サイトカインを示すことから、炎症制御に関わる細胞は腹腔常在マクロファージである可能性が考えられた。そこで、Stat3欠損常在マクロファージを野生型マウスの腹腔内に移入した状態での炎症反応を観察した。その結果、Stat3+/+腹腔常在マクロファージを移入されたマウスに比べ、Stat3欠損常在マクロファージを移入されたマウスでは、局所の炎症性サイトカインおよび炎症細胞浸潤は有意に増加した。この結果より、炎症反応は腹腔常在マクロファージに発現するStat3によって負に制御されることが初めて示された(投稿中)。
従来、マウス種差間での免疫反応の違いが示唆されてきた。そこで、Balb/cマウスとC57BL6マウスに感染性敗血症を誘導し、自然免疫に対する反応を観察した。その結果、C57BL6マウスの免疫反応は細菌排除に働くTh1型有意であること、これにより敗血症抵抗性であることを見いだした。Balb/cマウスはTh2型有意で、敗血症に対し致死性であった。この免疫反応の違いは、食細胞のStat因子活性化の違いによることが示唆された。一方、獲得免疫の観点からTh2ケモカインとされるC10が、自然免疫の局面では食細胞の動員に働くことも示した。 -
敗血症におけるTh1/Th2サイトカインの作用と調節機構の解明
研究課題/領域番号:13670222 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松川 昭博
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
平成13年度の研究により、Th1サイトカインあるいはTh2サイトカインのシグナル伝達にかかわるStat4およびStat6の敗血症における役割をそれぞれの遺伝子欠損マウスを用いて明らかにした。敗血症による生存率は、Stat4及びStat6欠損マウスとも有意に改善した。メカニズムの解析から、Stat4欠損マウスでは、肝・腎でのサイトカイン反応が抗炎症に有効なTh2タイプにシフトし(IL-13上昇、MIP-2およびKC低下)、そのため臓器傷害が回避されて、Stat6欠損マウスでは、局所のサイトカイン反応が炎症誘導に都合のよいTh1タイプにシフトし(IL-12,TNFα,MDC, C10の上昇)、そのため細菌排除が促進されて敗血症に対し抵抗性を示すことを明らかにした。すなわち、Th1/Th2サイトカインバランスが敗血症時の自然免疫に極めて重要であることを初めて明らかにした。
平成14年度は、まず、Th2型の慢性炎症に関わるとされるケモカインMDC及びC10に着目した。野生型腹腔マクロファージによるMDC・C10産生は、Th2サイトカインIL-4やIL-13により誘導されたが、Stat6欠損マクロファージの場合、その産生量は野生型にくらべ有意に低下した。しかし、IL-1の刺激によるMDC・C10産生量はStat6欠損マクロファージで有意に増加した。このモデルの腹腔局所にはIL-4やIL-13は検出されず、一方、IL-1は大量に検出される。したがって、Stat6欠損マウスの腹腔でみられたMDC・C10の上昇の一因は、局所に存在するIL-1によると考えられた。
敗血症により胸腺細胞にはアポトーシスが誘導される。そこで、この実験系での胸腺細胞のアポトーシスを検討すると、その程度は野生型にくらべStat4あるいはStat6欠損マウスで有意に改善していた。敗血症時の胸腺細胞のアポトーシスはマウスの生存に不利益であることを考えると、Stat4およびStat6欠損マウス胸腺細胞にみられたアポトーシスの減少が、これら遺伝子欠損マウスの生存率改善に寄与した可能性も考えられた。このとき、いずれの遺伝子欠損マウスの胸腺細胞にもCD4(+)CD8(+)T細胞の減少、CD4(-)CD8(+)T細胞の増加が観察され、敗血症後の胸腺細胞の構成にはダイナミックな変化が生じていることも判明した。