共同研究・競争的資金等の研究 - 一瀬 勇規
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フェニールプロパノイド合成系鍵酵素遺伝子の器官特異的発現と環境シグナル応答
研究課題/領域番号:07270216 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
山田 哲治, 一瀬 勇規
配分額:2700000円 ( 直接経費:2700000円 )
植物のフェニールプロパノイド二次代謝経路はアントシアニン色素、リグニンを中心とする細胞外皮の構築、紫外線毒の吸収、あるいは病原菌の攻撃に対するファイトアレキシン合成など、多岐にわたる機能を果たしている。エンドウ・フェニールプロパノイド合成系の重要な鍵酵素、フェニールアラニンアンモニア・リアーゼ(PAL)およびカルコン合成酵素(CHS)をコードする遺伝子は多重遺伝子ファミリーを形成しているが、それぞれのメンバーの植物各器官および組織特異的発現、あるいは外的環境要因による遺伝子発現調節機構に関しては未知の部分が多い。本研究では、色素生産やストレス応答において特に重要な役割を担うフェニールプロパノイド二次代謝合成系の鍵酵素をコードするPAL遺伝子、およびCHS遺伝子をモデルとして、多重遺伝子ファミリーの各メンバーの植物各器官・組織特異的発現に関わる制御領域を同定するとともに、鍵となる制御タンパク質をコードする遺伝子を単離して、フェニールプロパノイド二次代謝経路を支配する遺伝的制御プログラムを分子生物学的に解析することを目的としている。以下に成果の概要を列記する。
1. 遺伝子改変プロモータを用いたLoss of functionの実験結果から、PSPAL1遺伝子5′-プロモータ領域に含まれるエリシターによる発現誘導応答に必要なシス因子として、box1 (L-box) ,box2 (P-box) ,box4 (AT-box)があげられた。このことはbox2とbox4を2-4ユニット繰り返し配列で繋いだキメラ・プロモータを用いたGain of function実験からも更に裏付けられた。これらのシス因子は単独ではプロモータ活性化に及ぼす効果が少なく、協調的に働いていると予想された.
2. 上記トランジエントアッセイの解析に加え、box1 (L-box) ,box2 (P-box) ,box4 (AT-box)各ボックスシークエンスを除去した遺伝子改変プロモータをGUSレポータ遺伝子に連結したpBI系遺伝子組換えプラスミドをタバコに導入し、トランスジェニックタバコにおけるin planta loss of function実験を行った.その結果、これらのボックスシークエンスは、エリシターやUV照射による発現誘導応答に必要であるばかりでなく、basalなPSPAL1,PSPAL2プロモータの発現にも影響を及ぼすことが明らかとなった.現在、これらのボックスシークエンスの器官・組織特異的発現に果たす役割を検討している。 -
病原菌シグナル伝達と植物防御遺伝子応答におけるブラックボックスの分子生物学的解明
研究課題/領域番号:06404008 1994年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
白石 友紀, 一瀬 勇規, 山田 哲治
配分額:29300000円 ( 直接経費:29300000円 )
エンドウ褐紋病菌の生産するエリシターとサプレッサーは防御応答のスイッチのon-offを行うシグナル分子である。これらの受容から遺伝子応答に至る流れの解明を目指し研究を行った。原形質膜における情報伝達解析と並行して、細胞壁画分から、エリシター・サプレッサー感応性の酵素群を検索した結果、ATPase(NTPase)、パーオキシデ-ス(POX)、アスコルビン酸オキシデ-スがエリシターによって活性が増高し、サプレッサーによって種特異的に阻害を受けた。分離細胞壁におけるスーパーオキサイドと感染阻害物質の生産には連携が認められ、病原菌シグナルで制御される事も明らかとなった。さらに、細胞壁にはヴィトロネクチン様蛋白分子が存在し、原形質膜蛋白質とRGD配列を介して連携しており、ファイトアレキシン生産のシグナル伝達を担うことが判ってきた。このように植物細胞壁は病原菌シグナルの認識・受容と変換・増幅の場であると同時に防御応答の最前線であり、細胞壁が種特異性決定に重要な役割を果たす可能性が示唆された。
病原菌シグナル因子による植物防御遺伝子の発現調節に必要なシス・トランス因子の割り出しを進めた。PAL,CHS遺伝子プロモータにGUSを連結した遺伝子を導入したトランスジェニック植物やトランジェントアッセイにより以下の結果を得た。1)PSPAL1,PSPAL2各遺伝子5′-プロモータ領域のエリシターやUV応答に必要なシス因子の候補はbox1(L-box),box2(P-box),box4(AT-box)である。2)PSPAL1,2、およびPSCHS1,2のすべてのプロモータ領域のAT-rich配列はDNA/タンパク質複合体を形成し、結合には核タンパク質のリン酸化が必要である。3)エリシター応答のカルコン合成酵素遺伝子のプロモータにはBox-1,G-Box,Box-2配列が重要である。 -
植物の病原菌に対する防御反応応答と遺伝子発現制御に関する研究
研究課題/領域番号:06454063 1994年 - 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B) 一般研究(B)
山田 哲治, 一瀬 勇規
配分額:7200000円 ( 直接経費:7200000円 )
植物と微生物の総合作用における初期認識には、植物の防御反応を誘導する物質、エリシターと、エリシターに拮抗的に働くサブレッサーなどの、菌由来シグナル因子が、病原性・非病原性を決定する要因として非常に重要な役割を担っている。本研究では、これらの病原菌由来シグナル因子による植物防御応答遺伝子の同調した発現調節に必要なシス・トランス因子の割り出し行うため、生化学的・分子遺伝学的手法を用いて解析したものである.以下に実験結果を列記する。
1.PSPAL1. 2、および PSCHS1, 2のプロモータ領域に存在するATリッチシークエンスはアクテイベータ-として機能し、本ATリッチシークエンスに結合する共通のタンパク質はHMG-I/Yに類似するDNAペンデイングに関与するタンパク質である可能性が大きい。
2.PSPAL1. PSPAL2遺伝子5'-プロモータ領域に含まれるエリシターによる発現誘導応答に必要なシス因子の候補として特に、box 2 (P-box), box 4 (AT box)が必要であり、さらにbox 1との共存下でその効果が増幅されることが明らかとなった。
3.トランスジェニックタバコにおけるキメラ遺伝子の発現様式からPSPAL1, PSPAL2プロモータはともに、根・下位茎における組織特異的発現に関与していることが示唆された。また、PSPAL1プロモータは、さらに花弁の色素沈着部における特異的発現に関与していることが明らかとなった。GUSレポーター遺伝子との連結で、非転写融合型(-1,394から-27まで)、転写融合型(-1,394から+5まで、並びに二つのタイプ(type A, -1,394から+115 ; type B, -1,394から+140)の翻訳融合型を構築しGUSの発現レベルを調べたところ、翻訳融合型タイプBで最も発現が高く、続いて翻訳融合型タイプBであったが、転写融合型、非転写融合型では、活性はほとんど認められなかったことから、エキソニックな領域にPSPAL1プロモータの活性化因子が存在するものと考えられる. -
エンドウカルコン合成酵素遺伝子の病原菌シグナルによる発現制御機構
研究課題/領域番号:06760050 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
一瀬 勇規
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
エリシターによりエンドウCHS遺伝子の転写誘導に必要なDNAシス領域を同定するために、まず、様々な長さのPSCHS1、PSCHS2遺伝子5´上流域をレポーター遺伝子であるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子に結合させてキメラ遺伝子を構築した。次に、これらのキメラ遺伝子をエンドウ培養細胞由来のプロトプラストにエレクトロポレーション法で導入して、一時的なCATの活性を測定した。この時エレクトロポレーション後にエリシター処理を行う区と行わない区を設けてエリシター処理による影響も解析した。その結果、PSCHS1では少なくとも-242から下流に、PSCHS2では-377から下流にエリシター応答性転写活性領域が存在することが明らかとなった。更にCaMVの35Sミニマルプロモーターを用いたgain of function実験からPSCHS1の-242から-181までの61塩基だけでエリシターに応答してレポーター遺伝子の発現を増高させることが明らかになった。次に、両遺伝子の転写制御に関わる核内タンパク質因子について、ゲルシフトアッセイ法により解析した。その結果、PSCHS1の-242から-181の61塩基の断片やPSCHS2の-347から-158までの189塩基の断片はエリシター処理エンドウ組織から調製された核タンパク質と強く結合して移動度の遅い複合体(LMC)を形成することが明らかとなった。LMCの形成は核タンパク質を予めアルカリフォスファターゼで前処理することによって阻害されたことから、LMCの形成にはリン酸化が必要であると考えられる。また、エリシターで転写が誘導されるエンドウのPSPAL1とPSPAL2のプロモーターにも同様なLMCを形成する領域が存在しており、それぞれのLMCの形成は互いにLMCを形成するDNA断片により競合することが明らかにされた。以上の結果から、エリシターによる防御遺伝子の転写誘導にはLMCを形成する共通因子が関与している可能性が示唆された。
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フェニールプロパノイド合成系鍵酵素遺伝子の器官特異的発現と環境シグナル応答
研究課題/領域番号:06278214 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
山田 哲治, 一瀬 勇規
配分額:2400000円 ( 直接経費:2400000円 )
植物のフェニールプロパノイド二次代謝経路はアントシアニン色素、リグニンを中心とする細胞外皮の構築、紫外線毒の吸収、あるいは病原菌の攻撃に対するファイトアレキシン合成など、多岐にわたる機能を果たしている。エンドウ・フェニールプロパノイド合成系の重要な鍵酵素、フェニールアラニンアンモニア・リアーゼ(PAL)およびカルコン合成酵素(CHS)をコードする遺伝子は多重遺伝子ファミリーを形成しているが、それぞれのメンバーの植物各器官および組織特異的発現、あるいは外的環境要因による遺伝子発現調節機構に関しては未知の部分が多い。本研究では、色素生産やストレス応答において特に重要な役割を担うフェニールプロパノイド二次代謝合成系の鍵酵素をコードするPAL遺伝子、およびCHS遺伝子をモデルとして、多重遺伝子ファミリーの各メンバーの植物各器官・組織特異的発現に関わる制御領域を同定するとともに、鍵となる制御タンパク質をコードする遺伝子を単離して、フェニールプロパノイド二次代謝経路を支配する遺伝的制御プログラムを分子生物学的に解析することを目的としている。以下に成果の概要を列記する。
1.Loss of function実験からPSPAL1,PSPAL2各遺伝子5′-プロモータ領域に含まれるエリシターあるいはUV照射による発現誘導応答に必要なシス因子の候補としてbox1(L-box),box2(P-box),box4(AT-box)があげられた。このことはゲル・モビリテイー・シフトアッセイやDNase I-,OP-Cu footprinting analysisによっても確かめられた。
2.トランスジェニックタバコにおけるキメラ遺伝子の発現様式からPSPAL1,PSPAL2プロモータはともに、根.下位茎における組織特異的発現に関与していることが示唆された。また、PSPAL1プロモータは、さらに花弁の色素沈着部における特異的発現に関与していることが明らかとなった。
3.PSPAL1,2、およびPSCHS1,2のすべてのプロモータ領域のATリッチシークエンスに結合する共通のタンパク質はHMG-I/Yに類似するDNAベンデイングに関与するタンパク質である可能性が大きい。 -
植物低抗性遺伝子の発現制御
研究課題/領域番号:03044100 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究 国際学術研究
山田 哲治, KADO Clarenc, 一瀬 勇規, 白石 友紀, 奥 八郎
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
植物の病害低抗性の中でもファイトアレキシン合成経路の鍵酵素として特に重要な役割を担うフェニルアラニンアンモニアリア-ゼ(PAL)をコ-ドする遺伝子とカルコン合成酵素(CHS)をコ-ドする遺伝子について構造解析を行うとともに、各々の遺伝子にレポ-タ-遺伝子を融合させたキメラ遺伝子を作成し、植物細胞に導入した後、植物病原菌由来のエリシタ-を処理してレポ-タ-遺伝子発現に対する影響を解析した。更にGUSをレポ-タ-遺伝子としたキメラ遺伝子をタバコあるいはエンドウ細胞に導入したトランスジェニック植物体における遺伝子発現様式を調べた。
1.PAL遺伝子に関する研究
PAL遺伝子のプロモ-タ-配列にレポ-タ-遺伝子として発光遺伝子(Lux)、βーグルクロニダ-ゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコ-ルアセチルトランスフェラ-ゼ(CAT)遺伝子を融合したキメラ遺伝子の作成を行った。このうちpBI101をベ-スとしたPALーGUSのキメラ遺伝子はタバコ及びエンドウにバイナリ-ベクタ-法を用いて導入し、形質転換されたトランスジェニックタバコ及びトランスジェニックエンドウカルスを得たが、一部のトランスジェニック植物体でエンドウ褐紋病菌由来エリシタ-や病原菌接種によってGUS活性の増高が見られた。現在顕著なGUS活性を示した個体におけるキメラ遺伝子の染色体DNAへの挿入部位を調べている。一方、カリフォルニア大学デ-ヴィス校においてデュポン社製パ-ティクルガンを用い、各種のキメラ遺伝子を導入し、トランジェットなLux、あるいはGUSの発現を組織レベルで観察したところ、コントロ-ル実験での35SCaMVプロモ-タ-を有するキメラ遺伝子では顕著な活性が一部の細胞で見られたが、PALプロモ-タ-を連絡したキメラ遺伝子の導入ではエリシタ-処理によっても顕著な発現が観察されなかった。また、CAT遺伝子をレポ-タ-遺伝子とした系においては、キメラ遺伝子を主にエンドウの培養細胞由来のプロトプラストにエレクトロポレ-ション法を用いて導入し、トランジェントなCATの発現を測定することによってgPALー1遺伝子の転写調節に必要なシスエレメントの検索を行った。その結果、-340から-140までの上流領域にエリシタ-によって転写誘導を受け、エリシタ-による低抗性の誘導を阻害するオルトバナジン酸(原形質膜ATPア-ゼの阻害剤)により抑制されるエンドウgPALー1遺伝子の発現調節領域が存在することが明らかとなった。
2.CHS遺伝子に関する解析
エンドウのCHS遺伝子についてはエリシタ-処理を施したcDNAライブラリ-から、多数のcDNAのクロ-ニングを行い構造の解析によって3種の主要な2種のCHS遺伝子がゲノム上にタンデムに並んで存在していることを明かにし、上述のCAT遺伝子を用いたトランジェントアッセイによってこの2つのCHS遺伝子(PsCHS1,PsCHS2)はエリシタ-の処理を施さなくてもCATの活性を増高させるシスエレメントを各々の上流(PsCHS1:-1493〜+80;PsCHS2:-1889〜+83)にもつことが明らかにされた。
3.植物病原菌が生産するシグナル物質の単離調製法と情報伝達機構の解析手法の研究調査
平成3年12月にカリフォルニア大学カド教授を招へいし、岡山大学において長年進められてきた植物病原菌が生産するシグナル物質に関する研究を中心に調査を行った。カド教授は植物病原糸状菌の生産するエリシタ-・サプレッサ-の単離調製を行った。更にエリシタ-・サプレッサ-による植物細胞の初期情報伝達系に対する影響を解析するために岡山大学で研究されているATPア-ゼを始めとする種々の情報伝達系に関与する酵素活性の測定法や解析法について視察並びに討議を行った。 -
宿主ー病原菌の特異性と動的抵抗性遺伝子群の発現調節
研究課題/領域番号:02404012 1990年 - 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(A) 一般研究(A)
奥 八郎, 一瀬 勇規, 山田 哲治, 白石 友紀
配分額:19100000円 ( 直接経費:19100000円 )
エンドウ褐紋病菌の生産するエリシタ-及びサプレッサ-の宿主エンドウの防御応答におけるシグナル伝達とファイトアレキシン合成経路の鍵酵素PAL並びにCHS遺伝子の発現制御に対する影響ついて解析を進めたところ、以下の概要を得た。
1 原形質膜ATPaseに対する作用 サプレッサ-はエンドウを含めた非宿主植物から調製した原形質膜ATPaseを阻害するが、組織化学的に調べるとエンドウのATPase活性だけを特異的に阻害した。また、バナジン酸(非特異的P型ATPase阻害剤)はサプレッサ-と同様、エリシタ-によるPAL、CHSの発現誘導を遅延した。
2 原形質膜におけるポリホスホイノシチド(PI)代謝に及ぼす影響 エリシタ-処理区ではリピド・キナ-ゼの活性化によりPIP,PIP2がリン酸化されるが、サプレッサ-共存下ではこのリン酸化が顕著に抑制された。
3 PAL遺伝子の構造と発現調節 エンドウPAL遺伝子マルチジ-ンファミリ-のうち、二つのメンバ-のゲノム遺伝子の構造決定を行ない、それぞれの遺伝子PSPAL1,PSPAL2の組織特異的な発現量を調べたところ、根と下部茎での発現が非常に高く、他の器官での発現は低かったことから、根特異的発現に関与する調節領域が含まれることが示唆された。また、エンドウ・プロトプラストへ、種々の長さのプロモ-タ-領域を挿入したレポ-タ-遺伝子発現用ベクタ-を導入し、エリシタ-による発現誘導はバナジン酸による発現抑制を調べたところ、PSPAL1の _ー340^〜 _ー100の領域の発現制御に必要なシス因子が存在すると考えられる。
4 カルコン合成酵素(CHS)遺伝子の構造 エンドウCHS遺伝子(PCHS1,PCHS2)はゲノミックロ-ン上にスペ-サ-領域を挟んでタンデムにクラスタ-を形成し、TATAボックスの上流には31塩基からなる同一配列が存在していた。