共同研究・競争的資金等の研究 - 一瀬 勇規
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植物シグナルによる植物病原細菌の感染行動と病原力遺伝子の発現制御機構
研究課題/領域番号:22H0234814 2022年04月 - 2026年03月
日本学術振興会 科研費 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
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植物シグナルによる植物病原細菌の感染行動と病原力遺伝子の発現制御機構
研究課題/領域番号:22H02348 2022年04月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
一瀬 勇規, 松井 英譲
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
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植物病原細菌のGac/Rsm菌体密度感知機構による病原性関連遺伝子の発現制御機構
研究課題/領域番号:19H02956 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
一瀬 勇規, 松井 英譲
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
Pseudomonas syringaeなど多くの植物病原細菌では菌体密度感知分子としてN-アシルホモセリンラクトン(AHL)を生産し、AHLの濃度により細菌密度を検知し、病原力関連遺伝子を発現すると言われているが、本研究代表者は、P. syringae pv. tomato DC3000 (PtoDC3000) など多くのP. syringae分離株のAHL合成酵素遺伝子やAHL結合性転写因子遺伝子が変異しておりAHLを生産しないことから、AHLを介しない新たな菌体密度感知システムが存在していると推察した。これまでに高菌体密度のPtoDC3000はタンパク質をコードしないsmall RNAであるrsmXやrsmYの発現を高めること、これらの発現はGacS/GacA二成分制御系の支配下にあることを明らかにした。PtoDC3000のrsmX1, rsmX2, rsmX3, rsmX4, rsmX5, rsmY, rsmZのそれぞれを欠損したシングル変異株を作出して運動能、病原力などを比較解析した。その結果、rsmX3, rsmX4, rsmX5の各変異株ではswimming運動能、バイオフィルム形性能、GABA利用能、病原力について若干低下する傾向が見られた。また、AHLを生産するPtoDC3000を作出したが、シロイヌナズナに対する病原力の低下は観察されなかった。また、GacS/GacA二成分制御系の制御に関わることが知られているretS, ladSの欠損変異株を作出したので、その表現型を解析しているところである。rsmX2のプロモーターにレポーター遺伝子を連結させたトランスポゾンを転移させてrsmX2の発現が低下する変異株のスクリーニングを行なったが、これまでのところ明確に低下した変異株は得られていない。
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研究課題/領域番号:16K14861 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
一瀬 勇規, 松井 英譲
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
Pseudomonas syringae pv. tabaci (Pta) 6605の主要な多剤排出ポンプトランスポーターMexAB-OprMとMexEF-OprNの病原力としての役割を解析した。mexB変異株,mexF変異株,mexBmexFの2重変異株はアセトバニロン,カテコール,クマリンにより増殖が抑制され,タバコに対する病原力が低下した。これらの結果は,MexAB-OprMとMexEF-OprNがアセトバニロン,カテコール,クマリンを排出し,Pta6605の病原力発現において重要な役割を担っていることを示している。
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研究課題/領域番号:15H04458 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
一瀬 勇規
配分額:16640000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:3840000円 )
タバコ野火病菌(Pta)の菌体密度感知機構転写因子(PsyR)の組換えタンパク質はアシルホモセリンラクトン(AHL)不在下でAHL合成酵素遺伝子プロモーターに結合し、AHL存在下で転写を増高させる正の転写制御因子であることを明らかにした。また、PsyRはタイプIII 分泌機構の転写制御遺伝子であるhrpL遺伝子プロモーターに存在する非完全逆方向反復配列に結合することを明らかにした。Pta及びAHL を生産しないトマト斑葉細菌病菌では、高菌体密度でnoncoding small RNAであるrsmX, rsmYが高発現し、Gac/Rsmシグナル経路の重要性が推察された。
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研究課題/領域番号:26660035 2014年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
一瀬 勇規
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
植物病原細菌Pseudmonas syringaeには45前後の走化性センサータンパク質(mcp)遺伝子が存在しており、多くの化合物に対して走化性応答を示す可能性が高い。まず、高い運動能を有するP. s. pv. tabaci 6605がカイネチンなど10の化合物に対し正の走化性を示すことを明らかにした。次に植物病原性Pseudomonadに特有な27mcp遺伝子について、各欠損変異株を作出したところ、mcp4, mcp15b, mcp24の欠損変異株ではカイネチンに対する応答性が低下した。これらの遺伝子のコードするMCPはカイネチンに対するセンサータンパク質である可能性が示唆された。
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植物病原細菌における病原性遺伝子発現制御機構のグローバルネットワークの解明
研究課題/領域番号:24380028 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
一瀬 勇規
配分額:19240000円 ( 直接経費:14800000円 、 間接経費:4440000円 )
Pseudomonas syringaeの運動能を担うべん毛とタイプIV線毛はそれぞれ菌体密度感知分子であるアシルホモセリンラクトン(AHL)とcAMPの合成に必要であり、AHLの合成には転写因子AefRとPsyRが、cAMPの合成には転写因子Vfrを必要とした。前者の欠損は多剤排出ポンプ遺伝子mexEF/oprNの、後者の欠損はmexAB/oprMの発現を増高させ、薬剤耐性能が高まった。PsyRとVfrはhrp遺伝子の発現制御にも関わることが判明した。
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青枯病菌のタンパク質分解酵素エフェクターによる過敏感反応誘導と罹病化機構の解明
研究課題/領域番号:24658042 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
一瀬 勇規, 向原 隆文
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
ナス科植物青枯病菌が分泌する病原性因子エフェクターの中から,本菌の非宿主で台木ナスのトルバムビガーに細胞死を伴う激しい防御応答(HR)を誘導するRip36を同定した.Rip36はZnプロテアーゼモチーフを有するが,このモチーフに変異を導入するとHR誘導能を失ったことから,Rip36はトルバムビガーの標的タンパク質を分解することでHRを誘導したと考えられた.一方,rip36欠損変異株の宿主ナスにおける増殖能は野生株と変わらず,ナスに対する病原性に必須の因子ではないことが判明した.
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MAMP認識に関わるシロイヌナズナ受容体様キナーゼの網羅的解析
研究課題/領域番号:21380030 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
一瀬 勇規, 稲垣 善茂
配分額:18850000円 ( 直接経費:14500000円 、 間接経費:4350000円 )
微生物(あるいは病原体)由来特有分子パターンとして、細菌の非メチル化DNAを同定した。病原体由来分子パターンとしてはハーピンの認識機構に取り組み、タバコ野火病菌は、タバコが獲得した高度なハーピン応答性防御機構を回避すべく、ハーピン遺伝子に内部欠損を加え、タバコの認識と防御応答を避けることにより病原性を発揮することを逆遺伝学的に明らかにしたが、シロイヌナズナにおける細菌DNAやハーピンの受容体分子の同定には至らなかった。
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植物病原細菌の病原性糖タンパク質糖鎖の構造解析と病害防除への利用
2007年 - 2011年
新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業
資金種別:競争的資金
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植物の葉における斑入りと環境適応
研究課題/領域番号:19657017 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
坂本 亘, 一瀬 勇規
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
本研究では、植物における斑入り突然変異が個体レベルでの光合成としては負に働くか、環境適応に有利に働く場合があることを実証する実験をモデル植物で試みた。特に、環境適応の1つとして斑入りが「病害抵抗性」を示す可能性について萌芽的研究を行った。これまでの研究で、代表者らが解析を進めているシロイヌナズナの斑入り変異var2では光化学系IIの維持に必要な葉緑体プロテアーゼが欠損しており、その結果として葉緑体に高レベルの活性酸素を蓄積することを明らかにしている。昨年度は、これらの活性酸素が病原細菌への抵抗性に関与するかどうかをP. syringae pv tomato DC3000を用いて調べ、野生型に比べ、病原細菌の増殖が抑制されることが明らかとなった。今年度は、これらの抵抗性の原因として斑入り変異では自然免疫の活性化が起きている可能性、葉緑体の活性酸素自身がDC3000への抵抗性に寄与する可能性について調べた。自然免疫活性化の指標となるPR1遣伝子の発現上昇がvar2の葉で観察されず、またこれらの活性化に関わるシグナル因子であるサリチル酸の上昇も見られなかった。他の遺伝子発現の変化もマイクロアレイ等で解析したところ、やはり自然免疫活性化に関する遺伝子発現上昇を支持する結果は得られなかったが、var2の斑入り葉では活性酸素消去系に関わる遺伝子発現が上昇していることが明らかとなった。特に斑入りの白色組織でSODなどの消去系酵素が働いており、抵抗性に寄与する可能性も示唆された。一方で、斑入りを示さない光化学系II酸素発生系複合体に関する突然変異体でも活性酸素が蓄積し、var2よりは弱いがDC3000に抵抗性を示す結果が得られたことから、葉緑体の活性酸素が自然免疫系を活性化するよりもむしろ、葉緑体で蓄積する活性酸素が直接病原細菌に毒性を示す可能性が示唆された。
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植物病原細菌のフラジェリンによる植物免疫の活性化と病原菌によるその回避機構
研究課題/領域番号:18380035 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
一瀬 勇規
配分額:17920000円 ( 直接経費:15100000円 、 間接経費:2820000円 )
植物病原細菌Pseudomonas syringae pv. tabaci(Pta)の鞭毛構成タンパク質フラジェリンは非宿主植物に対し激しい防御応答(HR)を誘導するが、宿主タバコには顕著には誘導しない。本研究ではフラジェリン分子中のHR誘導ドメインがアミノ末端側の保存配列(flg22)に存在することを見出した。また、フラジェリンに結合するラムノースや修飾ビオサミンなどの糖鎖は、鞭毛の安定性を高めた。従って、糖鎖にはflg22の露出を防ぐことで防御応答を回避する機能が推測された
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植物オルガネラ間相互作用による異物認識機構に関する分子解析
研究課題/領域番号:15108001 2003年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
白石 友紀, 一瀬 勇規, 稲垣 善茂, 豊田 和弘
配分額:109720000円 ( 直接経費:84400000円 、 間接経費:25320000円 )
感染サイクルの大半を細胞外(植物表面や細胞間隙)で営む病原糸状菌や細菌をモデルとして、分子パターン認識と病原性エフェクターの作用機構について解析してきた(H15〜18年度)。今年度は、糸状菌由来エフェクター(サプレッサー)の分子標的である宿主植物の細胞壁アピラーゼの相互作用分子の解析を進め、TOF/MS解析から複数の情報伝達や酸化還元関連分子の存在を示した。また、アピラーゼで生成するリン酸は細胞壁に構成的に存在するペルオキシダーゼ(POX)依存性の活性酸素生成を亢進し、さらに一群の細胞外POX遺伝子を転写レベルから活性化することを示した。一方、表層でのパターン認識に続く過敏感細胞死の分子機構について、エリシチンをモデルに解析した結果、細胞周期(M期)制御系の構成因子NbCdc27Bは過敏感細胞死には直接関与しないが、抵抗性機能発現にそのC末端領域が必要である可能性が示唆された。また、細菌由来分子パターン(フラジェリン)による下流の情報伝達・遺伝子応答についてマイクロアレーで解析し、植物固有の転写因子WRKY41を同定した。WRKY41はフラジェリン処理で急速に発現が誘導されるが、エフェクターにより発現が抑えられる。さらに、WRKY41高発現体ではPseudomonas syringaeに対する抵抗性が増高したが、逆にErwinia carotovoraに対する感受性は高まった。この結果は、WRKY41はSA系に対して正に作用していることを示す。しかし、アピラーゼ高発現体の解析から、SA経路やJA経路とは異なる情報伝達系の存在も示されている。以上から、細胞壁には植物独自の異物認識機構が存在し、細胞壁始発のシグナルは感染防御を担う様々な細胞小器官へ情報伝達され、固有の細胞内因子の活性化あるいはフィードバック機構(増幅)を介して、最終応答(抵抗性発現)が制御されているものと考察した。
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植物の罹病時特異的発現遺伝子の制御機構の解析とその利用に関わる基礎研究
研究課題/領域番号:14656019 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
一瀬 勇規, 稲垣 善茂
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
エンドウ褐紋病菌の生産するサプレッサーは、エリシターによって誘導されるエンドウの防御応答を特異的に抑制あるいは遅延させる。本病原性因子サプレッサーの親和性確立における機能を解析するために、エンドウにおけるサプレッサー応答性遺伝子のcDNAの単離を行い、クローンS64が既に同定されている。S64の遺伝子産物はジャスモン酸合成経路の12-oxophytodienoic acid reductase(OPR)と高い相同性を示す。そこでジャスモン酸合成系の他の酵素であるallene oxide synthase(AOS)とallene oxide cyclase(AOC)をコードする遺伝子のcDNAを単離し、ノーザン法、RT-PCR法によりエリシター・サプレッサー応答、病原菌・非病原菌に対する応答を解析した。その結果、AOSの遺伝子発現はサプレッサー処理や病原菌接種により誘導されることが明らかとなった。一方、S64の遺伝子を単離するためにエンドウゲノムDNAライブラリーよりハイブリダイゼーションによりスクリーニングを行うと、S64以外にOPRと推定される遺伝子が計5個単離され、OPRは遺伝子ファミリーを形成していることが明らかにされた。更に対応するcDNAを単離する試みにおいて新たに6個目のOPR cDNAを同定した。合計6種のエンドウOPR遺伝子について、個々の発現解析を行うとともに、個々の組換えタンパク質を生産し、モデル基質である2-cyclohexen-1-one(CyHE)に対する還元活性を解析した。その結果、S64に相当するPsOPR2遺伝子の発現が最も強くサプレッサー処理・病原菌接種に応答し、その組換えタンパク質が最も高いCyHE還元活性を示した。これらのことより6種のエンドウOPRはそれぞれ異なる基質・発現特性を有していると推測された。現在PsORP2の高発現タバコ、シロイヌナズナ並びにPsOPR2のプロモーターをレポーター遺伝子に繋いだ形質転換植物体を作出している。
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植物の感染応答に伴うプログラム細胞死の制御機構
研究課題/領域番号:12052215 2000年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
眞山 滋志, 朴 杓允, 一瀬 勇規, 秋光 和也
配分額:68200000円 ( 直接経費:68200000円 )
本年度の研究成果の主要なものは下記の通りである。
1)セルフリー系を用いた植物アポトーシスの分子機構解析
単離核を用いたセルフリー系によるエンバクのアポトーシス様細胞死の分子機構の解析を行い、エンバクのDNAラダー化に関与すると考えられるDNaseII様のヌクレアーゼP28を同定した。また、これに関与するプロテアーゼは、カスペースおよびグランザイム特異的な阻害剤によって活性が阻害されない、システインプロテアーゼであることが示された。また、エンバクのアポトーシス様細胞死の過程で、細胞質、ミトコンドリア、葉緑体由来の各種rRNAが分解されることを植物細胞で初めて明らかとした。
2)過敏感反応のシグナル伝達系の解析
植物に過敏感細胞死を誘導する複数種の病原菌由来タンパク質性エリシターを用い、過敏感反応シグナル伝達系を解析した。また、新規過敏感反応誘導性エリシターとしてP.syringaeのべん毛繊維タンパク質であるフラジェリンを同定した。更に、植物の防御応答の抑制に関わることが予想される遺伝子としてオクタデカノイド代謝系のOPR遺伝子を単離し、その機能を解析した
3)宿主特異的毒素,ACR毒素の作用機序の解明
本研究者らは、宿主特異的ACR毒素の第一次作用点は宿主細胞ミトコンドリアにあり、この毒素のレセプター探索を進め、ドーパミン、グルタミン酸、黄体形成ホルモンレセプター等と部分的配列類似性を示すミトコンドリアゲノム遺伝子ACRSを単離した。さらに、ACRS遺伝子を介した宿主特異性決定機構の解析を進展させ、毒素への感受性/抵抗性は本遺伝子転写物へのプロセッシングの有無により制御されることを明らかにした。 -
植物防御応答遺伝子の発現を誘導する転写因子の解析
研究課題/領域番号:12460023 2000年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
一瀬 勇規, 豊田 和弘
配分額:13200000円 ( 直接経費:13200000円 )
本研究ではエリシター処理エンドウから単離された新規転写因子E84(ERDP)について解析を進めた。E84の遺伝子産物はアミノ末端付近に植物特有のDof DNA結合タンパク質ドメインを有する転写因子である。大腸菌で発現させたE84組換えタンパク質はAAAG配列を有するDNA断片に結合することがランダム結合選別法により明らかにされた。また、E84結合配列の一つBS4/37(TCATTTAAAGTGTTTT)をモデルとしてAAAG前後の配列に変異を導入して結合実駿を行ってみるとAAAGの3'側のTGT配列も高い結合親和性のために必要な配列であることが明らかとなった。また、エリシター応答性のPsCHS1遺伝子のプロモーターとの結合実験を行ってみたところ、AAAG配列を有する断片に結合した。一方、E84結合配列BS4/37を4つ直列に連結し、CAMV 35Sプロモーターの最小単位に連結させ、エンドウプロトプラストを用いたトランジェントトランスフェクションアッセイを行った。その結果、エリシター処理によりレポーターの活性が高まり、AAAG配列の直列繰り返し配列がエリシターによる転写活性化に関与することが示された。また、E84タンパク質はE84遺伝子自身のプロモーター配列にも結合することより、正のオートレギュレーションを行っている可能性も示唆された。以上のことはE84タンパク質及びその結合配列がエリシターによる転写活性化に貢献している可能性を示している。また、E84以外にDofドメインをアミノ末端付近に有する新規Dof遺伝子を6種単離し、エンドウでDof遺伝子がファミリーを形成していることが示された。これらの知見は植物防御応答時における様々な防御遺伝子の転写活性化の解明に繋がるものと考えている。
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植物病原菌由来のシグナル物質により発現が変動する宿主遺伝子の解析
研究課題/領域番号:09660051 1997年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
一瀬 勇規, 白石 友紀
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
本研究では、植物病原菌由来のシグナル物質(エリシター・サプレッサー)によって発現が変動する植物遺伝子を数多く単離し、発現のカイネティクスを解析するとともに、遺伝子産物の宿主-病原菌相互作用における機能を解明することを目的とした。
その結果、エリシター応答性遺伝子として、既知のPRタンパク質遺伝子や細胞壁の強化に関わる遺伝子、ファイトアレキシン合成系酵素遺伝子のcDNAの他、転写因子のcDNAを始め、ポリアミン合成系酵素のcDNA、HRに関連すると報告されているタンパク質のcDNAなど多数の新規遺伝子が単離された。これらのうちいくつかの遺伝子については更に遺伝子産物の機能解析を進めている。特にエリシター応答性の転写因子についてはそのDNA結合配列を明らかにし、本結合配列が既知の防御遺伝子プロモーターに存在することを見い出した。本転写因子はエリシターによりその発現が誘導されることから、病原菌シグナルの受容から防御遺伝子発現に至るカスケードにおいて極めて重要な分子であると考えている。
また、サプレッサーによって発現が誘導される遺伝子としては、細胞壁の分解酵素遺伝子、根粒形成初期に発現されるノジュリン遺伝子、ジャスモン酸合成系酵素のホモログなどが単離された。これら遺伝子の中でジャスモン酸合成系酵素のホモログは実際に病原菌接種の場においても特異的に発現が誘導されることが明らかにされた。植物が罹病化していく過程で発現が誘導される遺伝子の同定は、植物罹病化の分子機構解明に繋がるもの重要な成果と考えている。 -
リゾチーム遺伝子を導入した青枯れ病抵抗性トランスジェニック・ナス科作物の育種
研究課題/領域番号:09356002 1997年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
山田 哲治, 一瀬 勇規, 田原 誠, 小澤 英徳, 田中 博
配分額:17600000円 ( 直接経費:17600000円 )
ナス科植物の青枯れ病・立枯病の防除には、化学的な方法、耕種的な方法および抵抗性品種の導入などが用いられてきたが、被害を皆無にするような防除方法は確立されていない。そこで本研究では、タバコ立枯病細菌感染ファージP4282からリゾチーム遺伝子を同定・単離し、さらに申請者らが長年に渡って研究してきた根組織特異的に発現するエンドウ・PAL(フェニールアラニンアンモニアリアーゼ)遺伝子のプロモータを利用し、ファージ・リゾチーム遺伝子とPALプロモータを連結したキメラ遺伝子をトマト・タバコ植物体に導入して、青枯れ・立枯れ病抵抗性トランスジェニック植物体を作出することを目的としたものである。
本研究の成果として特に以下の内容は意義が大きいものと考えている。
1.タバコ立枯病細菌に感染するファージP4282からリゾチームタンパク質を単離精製し、対応する遺伝子の単離、構造解析を行った。
2.エンドウのPAL1プロモーター中の発現制御シスエレメント(Box I,Box II,Box IV)をタンデムにリピートさせた高発現型強力プロモーターを開発した。本プロモーターは特に根にでCaMV35Sプロモーターの6.5倍の高い発現を示した。
3.恒常的に高発現するCaMVの35Sプロモーター、エンドウPAL1プロモーター及び上記リピートプロモーターとリゾチーム遺伝子を融合し、タバコに導入して形質転換体を作出した。
4.上記のリゾチーム遺伝子を発現させた形質転換タバコでは高い溶菌活性を確認した。
5.PAL1プロモーターとGUS遺伝子の融合遺伝子を組込んだ形質転換タバコに、LUX遺伝子を導入した青枯れ病菌を接種することにより病原菌の挙動と植物の防御応答を同時に解析できるモニタリングシステムを確立した。 -
ストレス応答遺伝子とアポトーシス関連遺伝子の器官特異的発現と環境シグナル応答
研究課題/領域番号:09251211 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
山田 哲治, 一ノ瀬 勇規
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
色素生産やストレス応答において、特に重要な役割を担うフェニールプロパイド二次代謝合成系の鍵酵素をコードするPALおよびCHS遺伝子をモデルとして、多重遺伝子ファミリーの各メンバーの植物各器官・組織特異的発現に関わる制御領域を同定するとともに、鍵となる制御タンパク質をコードする遺伝子を単離して、フェニールプロパイド二次代謝経路を支配する遺伝的制御プログラムを分子生物学的に解析すること、また、植物の病原体攻撃に対する植物の典型的な防御機構に、過敏感細胞死(Hypersensitive Cell Death:HR)において物のアポトーシス現象を正および負に調節する遺伝子を探索し、これらの調節因子が、植物の器官形成にどのような役割を果たしているのかを明らかにすることを狙いとしている。
環境シグナル及び器官特異的発現に関与するシス領域のLM-PCRによる解析
病原菌エリシター,あるいはサプレッサーによる遺伝子発現誘導応答に必要と考えられる重要なシス因子の候補に関して、PSPAL-1,-2およびPSCHS-1,-2を中心にLM(Ligation mediated)-PCR footprinting解析を行ったところ、エリシター処理によるこれらの遺伝子のプロモータの活性化にはACに富むシ-クネンスボックス(Box l)が関与していることを示す顕著なfootprintが確認された。現在、器官特異的に発現に関与する特異的なfootprintおよびサプレッサー処理による遺伝子発現抑制に関与するfootprint解析を行っている。
アポトーシス関連遺伝子のクローニング
タバコBY-2細胞を用いて、Activation taggingを行い、エリシター処理に対して過敏感細胞死を遅延したり、起こさなくなった変異体細胞を得た。これらの細胞からplasmid rescueを行い、タバコ・ゲノミックDNAの挿入を確認したところ、ひとつのカルス集団には約5種類のタバコ・ゲノミックDNAが挿入されていた。そこでDNA断片を再度、組換えプラスミドに挿入し、タバコBY-2細胞に遺伝子挿入したところ、一つのラインでエリシター処理しても細胞死を起こさない変異体が出現した。現在本DNAの塩基配列決定を行っている。 -
フェニールプロパノイド合成系鍵酵素遺伝子の器官特異的発現と環境シグナル応答
研究課題/領域番号:08262215 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
山田 哲治, 一瀬 勇規
配分額:2500000円 ( 直接経費:2500000円 )
1.遺伝子改変プロモータを用いたLoss of functionの実験結果から、PSPAL1遺伝子5′-プロモータ領域に含まれるエリシターよる発現誘導応答に必要なシス因子として、box 1(L-box)およびbox 2(P-box)があげられる.このことはbox 2とbox4を4-8ユニット繰り返し配列で繋いだキメラ・プロモータを用いたGain function実験からも更に裏付けられた.トランジェントアッセイの解析に加え、box 1(L-box),box 2(P-box),box 4(AT-box)各ボックスシークエンスを除去した遺伝子改変プロモータをGUSレポーター遺伝子に連結したpBI系遺伝子組換えプラスミドをタバコに導入し、トランスジェニックタバコにおけるin planta loss of function実験を行った.その結果、これらのボックスシークエンスは、エリシターやUV照射による発現誘導応答に必要であるばかりでなく、basalなPSPAL1のプロモータの発現にも影響を及ぼすことが明らかとなった.これらのシス因子は単独ではプロモータの活性化に及ぼす効果が少なく、これらのボックスに結合する調節タンパク質が協調的に働いていると考えられる.
2.エンドウカルコン合成酵素(CHS)遺伝子は少なくとも8つのメンバーからなる遺伝子ファミリーを形成していることが明らかとなり、各々のメンバーの組織特異的・環境刺激特異的発現パターンを調べたところ、CHS遺伝子ファミリーの8つのメンバーは少なくとも3つのサブファミリーにグループ分けすることができることが明らかとなった。これらのうち2つのエリシター応答性グループのプロモータにはBox-1,G-Box,Box-2配列が保存されており、これらの配列がエリシター応答に重要であることが、塩基置換を導入したプロモータのトランジェント・トランスフェクション・アッセイによっても確認された。また、エリシター等のシグナルによる急激なCHS活性の増加は転写の活性化のみならず、遺伝子ファミリーの各メンバーの協調的な活性化、並びに転写後の調節機構にも基因することが推察された。