共同研究・競争的資金等の研究 - 藤井 達生
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酸化物人工格子の作製と磁気・光学的性質
研究課題/領域番号:05453079 1993年 - 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
三浦 嘉也, 藤井 達生, 尾坂 明義
配分額:7100000円 ( 直接経費:7100000円 )
多元活性化反応蒸着でFe_3O_4/MO(M=Mg,Co)酸化物人工格子の作製を試み、MgO(001)基板上には(001)配向を、またα-Al_2O_3(0001)基板上には(111)配向を示す結晶性に優れたFe_3O_4/MO人工格子を作製できた。XRD及びTEMの結果、得られた薄膜は設計通りスピネル型格子と岩塩型格子が交互に積層した人工格子となっていることが確認された。
強磁性Fe_3O_4層と非磁性MgO層を組み合わせたFe_3O_4/MO人工格子の場合、MgO層はFe_3O_4層間の磁気交換相互作用を遮断し、その保磁力を減少させた。一方、Fe_3O_4層と反強磁性CoO層を組み合わせたFe_3O_4/CoO人工格子の場合、CoO層を介在したFe_3O_4層間の磁気交換相互作用の存在と、Coイオンの持つ1イオン異方性のため保磁力は増加した。また、Fe_3O_4/CoO界面での格子のミスフィットによる磁歪の影響で(100)配向膜では面内方向の、(111)配向膜では積層方向の磁気異方性が生じた。
Fe_3O_4/MO界面の拡散の程度は、蒸着時の基板温度に大きく依存しており、基板温度の上昇とともに急激に増加した。Fe_3O_4/MO界面において、拡散によりFe_3O_4強磁性層が時期的に希釈され、MFe_3O_4拡散層が形成されると仮定すると、基板温度300℃における拡散層の厚さは約30Åとなり、飽和磁化ならびにメスバウアースペクトルの変化をうまく説明することができた。
一方、α-Al_2O_3(0001)基板上に酸素分圧を制御することによってTiO_2またはTi_2O_3のエピタキシャル膜を作製することができた。Ti_2O_3は400Kで電気抵抗に急変が現れ金属・半導体転移を示した。 -
スパッタ法による歪み酸化鉄薄膜の磁気光学特性
研究課題/領域番号:05855130 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
藤井 達生
配分額:1200000円 ( 直接経費:1200000円 )
rfマグネトロンスパッタ法を用い、サファイア(alpha-Al_2O_3)単結晶基板上に酸化鉄(alpha-Fe_2O_3)薄膜を作製した。酸化鉄(alpha-Fe_2O_3)は約250Kにモ-リン転移と呼ばれるスピン相転移を持ち、その前後でスピン軸がc面内からc軸方向へと90°変化することが知られている。しかし、単結晶基板上に成長した酸化鉄薄膜の場合は、基板界面におけるミスフィットが結晶格子に歪みを与える結果、スピン相転移はそのスピン軸、転移温度ともバルクに比べ、異なった振舞を示すことが期待される。
alpha-Al_2O_3(102)単結晶基板上にエピタキシャル成長したalpha-Fe_2O_3(102)について、メスバウアー分光測定を行なった結果、スピン転移温度は400Kへと大きく上昇しており、しかもスピン軸はc軸から<102>方向へと変化していた。そこで4軸回折計による薄膜のX線構造解析を試みた結果、a軸長は約0.5%減少し、一方、c軸長は約0.2%増加していた。一方、alpha-Al_2O_3(001)単結晶基板上にエピタキシャル成長したalpha-Fe_2O_3(001)について、メスバウアー分光測定及びX線構造解析を行なった結果、スピン相転移は極低温(2K)に至まで観測されず、逆にa軸長が約0.3%増加し、c軸長が約0.5%減少していた。従って、得られた酸化鉄薄膜のスピン相転移の変化は、異方的な歪みが原因で生じたものと推論できる。得られた薄膜の磁気光学特性については、現在まだ検討中である。 -
高イオン伝導性薄膜のナノサイズ電池用電解質への応用
研究課題/領域番号:04650705 1992年 - 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
尾坂 明義, 藤井 達生, 難波 徳郎
配分額:1870000円 ( 直接経費:1870000円 )
微小全固体式電池系電解質および光メモリへ材料開発の基礎研究として,(1)F-O-Si-Pb系および(2)CuI-MoO_4-P_2O_5系アモルファス薄膜を作成し,微細構造,伝導性およびレーザー照射による相変化とに関し検討した。
1.F-O-Si-Pb系アモルファス薄膜
RFスパッタ装置により放電ガス圧;0.06〜0.07Torr,スパッタ時間;45分の条件でアモルファス膜を作製した。本系アモルファス膜のXPSスペクトルより,Fイオンの濃度は深さ方向に対して一様であったが,比Si-F/Pb-Fは膜表面から内部に向かってわずかに減少しており,Si-O-Si→Si-O^-+F-Si反応による非架橋酸素の増加に帰着できた。3mW He-Neレーザー(λ=632.8nm)を1/500秒照射すると,全ての膜で11μm径の領域でα-SiO_2の結晶化が見られ,所期の高伝導相PbF_2は析出しなかった。一方,Arrheniusの式に従うイオン伝導性を示し,500Kでの伝導率は1.1x10^<-5>S/cmでバルクガラスの約2桁倍であり,活性化エネルギーは106.5kj/molであった。
2.CuI-MoO_4-P_2O_5系アモルファス薄膜
高Cuイオン伝導性を有する本系ガラス組成25CuI・25Cu_20・25MoO_4・25Cu_3(PO_4)_3のターゲットを,Arガス圧0.01Torr・rf出力100Wでスパッタリングして得られたアモルファス薄膜は,きめの粗い微粒子構造で,550K以下では伝導率は10^<-8>S/cm程度でほぼ絶縁体であった。また,rf出力を上げるに従いγ-CuIの立方体粒子が発達してきたが,膜中ではCuは2価イオンとして存在している。100Wでスパッタリングした膜をHe-Neレーザー(3mW)で照射すると,F-O-Si-Pb系と異なり1/500秒ですでに8μm径の穿孔が見られ,1秒の照射では12μm径となったが,いずれの場合も結晶相の析出は見られなかった。