共同研究・競争的資金等の研究 - 藤井 達生
-
電子強誘電体の逐次電荷秩序相転移の研究
研究課題/領域番号:22H01942 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
池田 直, 藤井 達生, 沖本 洋一, 藤原 孝将
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
-
非平衡電子構造解析に基づく蓄電池カソード配位子電荷移動の安定化
研究課題/領域番号:18H03929 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
内本 喜晴, 田中 優実, 藤井 達生, 折笠 有基, 大石 昌嗣
配分額:43030000円 ( 直接経費:33100000円 、 間接経費:9930000円 )
リチウムイオンの挿入・脱離時に酸化物イオンの電荷補償が起こるリチウム過剰系酸化物正極材料について、遷移金属カチオンではなく、アニオンの電荷補償に着目し、operando軟X線吸収分光法と高エネルギーX線コンプトン散乱法を用いて、その機構解明を行うことで、アニオン制御による材料の設計指針を確立した。遷移金属カチオンと酸化物イオンとの共有結合性またはイオン結合性のいずれかが極端に強い場合に、酸化物イオンが可逆的に電荷補償に寄与できることを見出した。従来酸化物を中心に研究開発されてきた、リチウム過剰系材料の分野において、酸化物イオンの一部を窒化物イオンに置換することにより高容量が発現した。
-
三角格子系希土類鉄酸化物による常温マルチフェロ材料の創製
研究課題/領域番号:18H02057 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
藤井 達生, 池田 直, 狩野 旬
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
次世代のマルチフェロイック材料として期待されているRFe2O4について、スパッタ法による単結晶薄膜の合成を試みた。その結果、Fe3O4バッファ層を介することでサファイア基板上のRFe2O4層の面内配向が30°回転すること、また、Fe3O4とRFe2O4を積層した場合も、同様に積層の順番に依存して、面内配向が回転することを見出した。くわえて、YSZ単結晶基板を使用した場合は、双晶ドメインを持たない、ほぼ完全にシングルドメインとなるRFe2O4薄膜を得ることができた。
-
表面構造緩和を活用した非磁性ナノ粒子への磁性付与
研究課題/領域番号:26630319 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
藤井 達生, 竹村 大樹, 安藤 大生, 狩野 旬, 中西 真
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
我々はバルクでは、磁化をほとんど示さないLaFeO3が、ナノ粒子化により非常に大きな磁化を持つことを見出した。これは、ナノ粒子化により、結晶の並進対称性が消失するとともに構造緩和が生じ、強磁性的相互作用が発現したためだと考えられる。そこで本研究では、LaFeO3ナノ粒子の構造及び磁気特性を系統的に評価することで、ナノ粒子化によるLaFeO3の巨大磁化発現機構を解明することを目的としている。その第一歩として、塩添加噴霧熱分解法を用いることで、均一な粒子径分布を持つLaFeO3ナノ粒子の合成条件を確立し、ナノ粒子の合成条件と構造、磁性との相関を明らかにした。
-
細菌が酸性環境で作る酸化鉄の制御と特徴解明、機能開拓と鉱山廃水処理への応用の試み
研究課題/領域番号:26289261 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高田 潤, 藤井 達生, 宮田 直幸, 草野 圭弘
配分額:16250000円 ( 直接経費:12500000円 、 間接経費:3750000円 )
特異な鉄酸化細菌を利用して行う新しい廃水処理方法の開発とその処理により形成する酸化鉄の機能開拓を目指して研究を展開した。得られた主な結果は次の通りである。(1)好酸性鉄酸化細菌単離菌”E10”を合成培地で培養し、種々の培養条件(pHと温度)で形成する酸化鉄(S相とG相)の種類とその量比、さらにそれらの酸化鉄、特にS相の特徴を明らかにした。(2)好酸性鉄酸化細菌単離菌” E10”を用いることにより、合成培地と同様に実鉱山坑廃水からFe2+イオンを効果的に除去できることを示した。(3)形成するオキシ酸化鉄は優れた重金属吸着機能(As(Ⅴ), Se(Ⅵ), Mo(Ⅵ))を持つことを明らかにした。
-
原子価制御による機能性鉄チタン複合酸化物薄膜の開拓
研究課題/領域番号:23350092 2011年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
藤井 達生, 中西 真, 市川 和典, 高田 潤, 中西 真
配分額:20150000円 ( 直接経費:15500000円 、 間接経費:4650000円 )
本研究では、ヘマタイト-イルメナイト固溶体を中心とする混合原子価酸化物について単相試料を合成し、その磁性や電子状態を明らかにするとともに、それら酸化物の単結晶状薄膜を作製し、結晶配向性や格子歪みがその構造や電荷移動に及ぼす影響を解明・制御することを試みた。その結果、ヘマタイト-イルメナイト固溶体薄膜の微細構造や電気輸送特性は、薄膜の配向面により大きく異なることが明らかとなり、その原因として、結晶構造そのものが持つ異方性に加えて、薄膜と基板と間のミスフィットが大きく影響することを明らかにした。
-
微生物由来非晶質ナノサイズ・バイオ酸化鉄のLiイオン電池革新的正極活物質への展開
研究課題/領域番号:23360309 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高田 潤, 藤井 達生, 中西 真, 草野 圭弘, 菅野 了次
配分額:18980000円 ( 直接経費:14600000円 、 間接経費:4380000円 )
次世代のLiイオン二次電池で求められている高性能化および大幅な低コスト化の実現を目指して、自然界の溝などに生息する鉄酸化細菌が作る非晶質のナノサイズのバイオ酸化鉄に注目して、その特徴の解明とLi充放電特性の評価、および充放電機構について検討した。その結果、このバイオ酸化鉄は人工作製が困難な新しい材料であり、高容量でサイクル特性の優れた正極活物質であることを見出した。さらに、この微生物由来酸化鉄のLiの充放電機構は、Fe3+ ⇔ Fe2+ の可逆反応によるものであることを明らかにした。
-
バクテリアが作るナノ・バイオ酸化鉄のキャラクタリゼーションとLiイオン充放電挙動
研究課題/領域番号:19360300 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高田 潤, 藤井 達生, 中西 真, 菅野 了次, 草野 圭弘
配分額:20670000円 ( 直接経費:15900000円 、 間接経費:4770000円 )
バクテリア(鉄細菌)が作るチューブ状酸化鉄の特徴を詳細に検討した結果、非常にユニークな酸化鉄材料であることを明らかにした。即ち、直径が約1μmの中空チューブ状の形状で、非晶質構造を有し、3nmの1次粒子から成り、化学組成も特徴ある。さらに、この微生物由来バイオ酸化鉄はLiイオンについて優れた充放電特性を示すことを見出した。
-
状態図的研究に基づく六方晶フェライト系GHz帯対応高周波デバイス材料の創製
研究課題/領域番号:17360326 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高田 潤, 藤井 達生, 和田 修己, 中西 真, 草野 圭弘
配分額:15400000円 ( 直接経費:15400000円 )
本研究では、現在も不明な点の多い一連のフェロックスプラナー型フェライトの本質(合成条件・固溶組成・元素置換効果や基本的電磁気特性とその支配因子)の解明研究と、これらを基礎として新規なGHz帯域電磁波用磁性薄膜材料および広帯域GHz帯域複合型電磁波吸収焼結体材料の創製の基礎研究を行うことを目的とした。
まず、様々なフェロックスプラナー型フェライト相の単相試料の合成条件を検討し、状態図的検討を行った。その結果、1000℃および1200℃での各相の固溶組成域を明らかにした。その過程で、Y型およびZ型の生成機構メカニズムをX線回折測定により検討し、そのモデルを提案した。更に、六方晶フェライトの構造や透磁率などの電磁気特性と組成との関係を明らかにした。
これらの結果を基に、錯体重合法によるフェロックスプラナー型フェライトの高配向磁性薄膜の作製条件を検討し、微量元素の影響と生成メカニズムを検討した。また、磁性材料であるY型フェライトと誘電材料であるSiCを複合化することにより、磁性損失と誘電損失を兼備した広帯域GHz帯電磁波吸収材料の作製を試みた。その結果、複合化条件を最適化することで、3.5〜6.5GHzという広い周波数範囲で-20dBより大きな吸収量を示す材料の作製に成功した。従来はトレードオフの関係にあると見られた吸収量と帯域幅の両者を共に満足させており、また周波数域が現在利用の盛んな5GHzを中心としたGHz帯域に制御できたことは大きな成果である。 -
微生物が常温で作るナノサイズ酸化鉄のキャラクタリゼーションとその応用の試み
研究課題/領域番号:17651071 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
高田 潤, 藤井 達生, 中西 真
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
近年鉄細菌を用いた「バイオ浄水法」は、地下水の浄水法として実際に採用され、環境に優しい浄水法と注目されていて、今後急速に全国に広がると予想されている。このバイオ浄水法では、レプトシリックス鉄細菌が地下水中のFeイオンを体内に取込んで、細菌の体の周りにパイプ状酸化鉄鞘などの無機化合物を常温で生成し、濾過槽上部に褐色沈殿物を形成する。しかし、現在この酸化鉄鞘の詳細が全く不明かつ分離・回収が困難であるため、沈殿物を埋立廃棄しているのが現状であり、バイオ浄水法の利点が十分に活かされていない。
そこで本研究では、先ず、鉄細菌が常温で作るパイプ状鉄細菌鞘酸化鉄やそれを構成する微細な酸化鉄微粒子を詳細に検討し、酸化鉄の種類、化学組成、微細構造を調査した。次に、浄水沈殿物からの分離・回収方法と鞘の増殖条件を検討した。更にパイプ状鉄細菌鞘酸化鉄の特性と再利用を検討した。その結果、欧文誌への論文1件と特許出願1件の成果を得た。
得られた結果を要約すると以下の通りである。
(1)パイプ状酸化鉄鞘は中空円柱状のマイクロチューブの形態を呈し、その内径と外径の平均値はそれぞれ1.1および1.4μm、長さは50〜200μmであることが明らかとなった。鞘の壁の厚さは平均0.15μmと非常に薄い。
(2)このパイプ状酸化鉄の結晶構造は、21-ferrihydriteの構造に似ているが、より結晶性が低いことが判明した。
(3)パイプ状酸化鉄鞘の壁は100nm以下の超微粒子から構成されており、それぞれの微粒子の組はほぼFe:Si:P=80:15:5であることを見出した。
(4)このパイプ状酸化鉄はspin-glass的な磁気特性を示すことが明らかになった。
(5)バイオ浄水沈殿物からの分離・回収方法を確立し、高純度サンプルを得ることに成功した。
(6)このパイプ状酸化鉄鞘を加熱することによって、ヘマタイトへの変化と赤色顔料としての利用の可能性を見出した。 -
酸化鉄をベースとする循環型新規ナノデバイスの開発
研究課題/領域番号:14350353 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
藤井 達生, 高田 潤, 中西 真
配分額:14900000円 ( 直接経費:14900000円 )
本研究では、環境に優しいスピントロニクス材料の実現をめざし、まず、α-Fe_2O_3-FeTiO_3固溶体の中でも最も高い飽和磁化を示すFe_<1.2>Ti_<0.8>O_3組成の薄膜化を実施した。薄膜作製は、FeTi合金ターゲットを出発原料とする反応性スパッタ法により行なった。フェリ磁性を示す固溶体薄膜の実現には、結晶格子中でc軸方向にFe-rich層とTi-rich層が交互に積層した秩序相(空間群R3)の生成が必須であり、そのためには、成膜時の基板温度ならびに酸素分圧を厳密に制御する必要があることを明らかにした。
次に、Fe_<1.2>Ti_<0.8>O_3薄膜の強磁性転移温度(T_C)を向上させることを目的に、高い反強磁性転移温度(T_N)をもつα-Fe_2O_3層をFe_<1.2>Ti_<0.8>O_3層と積層させた二層膜を作製し、層間の交換結合がFe_<1.2>Ti_<0.8>O_3層のT_Cに及ぼす影響を検討した。作製した二層膜は、基板温度550℃と高温であるにもかかわらず、非常にシャープな界面構造を有していた。また、二層膜のT_Cは約220Kであり、単相膜のT_C=約210Kと比較して、約10Kほど上昇させることに成功した。
ところでFeTiO_3中の金属イオンは、Fe^<2+>とTi^<4+>の化学状態にあると考えられてきた。しかし、高分解能蛍光X線分析を実施したところ、FeTiO_3中のTiイオンの特性X線は、Ti^<3+>のものと非常に近いピーク形状を示しており、Ti^<3+>に近い化学状態にあることを明らかにした。また、XPSスペクトルからも、FeTiO_3は価電子帯のフェルミ端近傍に小さな状態密度を持っており、局在化したTi3d電子が存在する可能性を示した。よってα-Fe_2O_3-FeTiO_3固溶体の電子状態を正しく理解し、その磁性半導体として特質を明らかにするためには、より詳細な分光学的研究が必要であることを示した。 -
磁性単層膜と磁性2層膜における磁気異方性と磁気相互作用の研究
研究課題/領域番号:13650761 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
河本 修, 藤井 達生
配分額:2400000円 ( 直接経費:2400000円 )
1.強磁性共鳴(FMR)の理論的研究を行った.FMRの理論式は古く知られていて,(1)SmitとBeljerによる厳密解と(2)Kittelによる近似解がある.有名なKittel式に用いる実効的反磁場係数を求める式が,彼の論文では正しくはないということが判明したので,正しい式を導出した.この新しい式によって,薄膜試料について,静磁場を膜面内に印加した次の6つの場合について共鳴式を求めた.それらは,(1)垂直一軸異方性,(2)面内一軸異方性,(3)立方晶(001)面,(4)立方晶(011)面,(5)立方晶(111)面,(6)斜め異方性である.
2.実験としては,スパッタ法による単層膜(NiとCo)と2種類の結晶方位をもつエピタキシャルNiOによる2層膜(Ni/NiOとNiFe/NiO)の研究を行った
(1)単層膜Niについて,(1)垂直異方性磁界H_<up>は,30mTorrの高Ar圧側で最も大きく,500Åで3.2kOeである.(2)低Ar圧側では,垂直磁気異方性は小さくなり,面内異方性が大きくなる.(3)残留磁化比M_r/M_sは,30mTorr以上の高Ar圧下で成膜中の印加磁界の平行方向,直角方向とも小さい値となり,面内異方性はみられなくなる.
(2)単層膜Coについては,垂直異方性磁場(Hk)は,膜厚の減少伴い増加した.
(3)2層膜Ni(500Å)/NiO(2000Å)とNiFe(500Å)/NiO(2000Å)について,(1)交換結合磁界H_<ex>は,NiO(100)面で最も大きく,Ni/NiO(100)で15.3 Oeである.(2)磁気抵抗効果Δρ/ρは,横効果(H⊥I)と縦効果(H//I)で値が大きく異なる.Ni/NiOでは,NiO(110)面で最も大きく,横効果(H⊥I)が0.22%,縦効果(H//I)が0.61%である.NiFe/NiOでは,NiO(100)面で最も大きく,横効果(H⊥I)が0.77%,縦効果(H//I)が0.81%である. -
インテグレーション超高周波デバイス用新規プラナ型フェライト薄膜の開発
研究課題/領域番号:13025231 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究(A)
藤井 達生, 中西 真, 高田 潤
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
電子通信機器の小型化・高性能化にともない、高い周波数帯域で優れた高周波磁気特性を有する磁性薄膜の開発が切望されている。しかし、スピネル型フェライトに代表される従来の磁性材料は、高周波で透磁率が急激に低下し使用できない。我々の研究グループでは、理論的に優れた高周波磁気特性を持つことが期待されるプラナ型フェライトに注目し、その薄膜の作製に世界ではじめて成功した。その特徴は、金属イオンが均一に分散固定される錯体重合法を用いて原料溶液を調製し、コーティング法により薄膜を作製した点である。そこで本研究では、プラナ型フェライト薄膜のグローバルインテグレーションを目標に、1.薄膜の膜質向上(平滑性・クラック等)を目的として、原料溶液組成の検討2.薄膜の焼成温度の低温化を目的として、基板材料の検討を行った。
その結果、平滑かつクラックの無いプラナ型フェライト薄膜の作製のためには、原料溶液の混合比を、金属:クエン酸:エチレングリコール=1:4:12とすること、溶液のpHはpH<1とすること、そして粘度については10mPa・s以下とすることを明らかにした。また、種々の貴金属基板上に成膜した結果、プラナ型フェライト(Y型六方晶フェライト)の結晶化には、一般的に1000℃以上の高温焼成が必要とされるが、Ag基板を用いたときのみ特異的に結晶化温度が低下し、800℃の低温においてプラナ型フェライト薄膜が成長することを見出した。
得られたプラナ型フェライト薄膜の高周波磁気特性を評価し、改善することが今後の課題である。 -
液相法による電磁環境対策用Ba系電波吸収フェライト材料の合成
研究課題/領域番号:12450269 2000年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
吉尾 哲夫, 藤井 達生, 高田 潤, 長江 正寛
配分額:14900000円 ( 直接経費:14900000円 )
本研究では,近年の各種情報通信機器の発達に伴い社会環境問題となりつつある有害電波によって引き起こされる電波障害対策用としてのBa系電波吸収フェライト材料の合成法としてガラスセラミック法を適用し,従来のスピネル型フェライトに比べ,より高周波帯域で使用可能な六方晶Y型Baフェライト(Ba_2M_2Fe_<12>O_<22>)をガラスマトリックス中へ析出させる条件を新規に確立することを目的とした.主な結果を以下に示す.
12年度は,主として溶融-急冷法により作製した各種組成のガラスマトリックスの結晶化条件を詳細に検討し,希塩酸によってガラスマトリックスを除去することにより,自形を有したY型Baフェライト(Ba_2Me_2Fe_<12>O_<22>)微粒子を取り出すことが可能であることを明らかにした.13年度には,Y型Baフェライトの析出機構の詳細な検討を行い,Y型Baフェライトは低温で生成するM型Baフェライトを核として析出することを見い出した.14年度には,Me=Zn, Co系でのY型Baフェライト固溶体(Ba_2Zn_<(2-X)>Co_XFe_<12>O_<22>)の合成を試み,X=0〜2の全ての組成範囲で目的とする固溶体が得られることを明らかにした.これらのY型Baフェライト固溶体粉末の電波吸収特性の測定からは,約8〜9GHzの高周波帯域での吸収が確認され,置換量Xの変化によって連続的に吸収周波数がシフトすることを明らかにした. -
交換結合を利用したヘマタイト-イルメナイト系磁性半導体薄膜のスピン電子伝導制御
研究課題/領域番号:11650697 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
藤井 達生, 中西 真, 高田 潤
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
次世代のエレクトロニクス材料(スピントロニクス材料)として期待されている磁性半導体について,磁性半導体のスピン伝導を精密に制御する新規な手法を提案し,実現することを目標に研究を実施した。そこでまず,室温で高いスピン偏極をもつ磁性半導体として酸化物に注目し,新規な酸化物磁性半導体としてヘマタイト-イルメナイト固溶体薄膜の可能性を検討した。ヘマタイト-イルメナイト固溶体には,秩序無秩序転移やFe^<2+>/Fe^<3+>の混合原子価状態など制御すべき因子が多く,優れた磁性半導体特性を示す固溶体薄膜を再現性良く得ることは非常に困難であった。しかし,ヘリコンスパッタ法により成膜時の酸素分圧および基板温度を厳密に制御することで,固溶体薄膜が再現性良く成長する条件を見出し,室温での磁気抵抗効果など磁性半導体としての特徴的な物性をはじめて観測することに成功した。さらに,反強磁性体であるエピタキシャルヘマタイト薄膜が特異的に持りスピンフリップ転移を利用し,強磁性体の磁気構造を制御することを試みた。すなわちヘマタイトを反強磁性体層とする反強磁性体/強磁性体の二層膜を作製し,スピンフリップ転移に伴う磁気構造変化をメスバウアー分光法等で解析した。その結果,二層膜ではスピンフリップ転移が消失することを示し,酸化物磁性体間においても,反強磁性体/強磁性体間に強い交換結合が存在することを初めて明らかにした。残念ながら当初の目標である交換結合を利用した磁性半導体のスピンコントロールは実現できなかったが,鉄系酸化物磁性体の詳細な成膜条件や薄膜の構造や磁性・電子状態など,膨大な基礎的成果を本研究で得ることができた。
-
積層磁性膜における磁性層間の磁気相互作用の研究
研究課題/領域番号:10650691 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
河本 修, 藤井 達生
配分額:1100000円 ( 直接経費:1100000円 )
1.単層Ni膜:
膜厚100nmと300nmのNi膜を作成し,飽和磁化,保磁力,垂直異方性,残留磁化比等の磁気特性のAr圧依存性を明らかにした.
2.O_2を含むAr雰囲気中で作成したNi-O膜:
(1)O_2分圧を変化させると,O_2/(Ar+O_2)=9%という値を境にして,生成される膜の結晶構造はNiからNiOに変化し,単相であった.(2)格子定数はバルクの値と比べて,Niで0.3%,NiOで0.5%大きかった.(3)Niの飽和磁化はバルクの90%であり,NiOの磁化率は成膜中に磁場を印加した方向とそれに直角に方向で異なるという磁場中スパッタ効果がみられたが,平均するとバルクの値にほぼ等しい.(4)Niの保磁力はO_2が0%のとき,容易方向で1.1kA/mで,困難方向で0.9kA/mであるが,O_2分圧の増加に伴い増加する傾向にある.(5)抵抗率はNi膜ではO_2比の増加に伴い僅か増加する傾向にあり,NiO膜ではNiに比べて僅かぼ4桁のみ増加しバルクのNiOより5桁小さく半導体の性質を示した.このNiO膜は化学量論組成ではなく,Ni欠損型のNi_<1-γ>膜が得られたといえる.
3.2層Ni/NiO膜:
(1)NiO層の増加に伴い,結合磁界(H_<ex>),保磁力(H_c),磁気抵抗効果(Δp(H//I)/P)は大きくなる.(2)H_<ex>は,Ni層厚を小さくするのに伴い,大きくなる.(3)NiO層が大きくなる程,H_<ex>が生じるNi層厚が大きくなる.(4)H_cは,Ni層厚の減少に伴い増加する傾向にある.(5)Δp(H//I)/P)は,Ni層厚が大きい膜ほど大きい.
4.4層Ni/Cu/Ni/NiO膜膜:
結合磁界と保磁力はCu層が厚くなるに伴い増加する傾向にある. -
電磁環境対策用新規SiC-フェライト系ハイブリッド広帯域電波吸収体の創製
研究課題/領域番号:10450250 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高田 潤, 冨井 洋一, 中西 真, 藤井 達生, 山本 恵久
配分額:13700000円 ( 直接経費:13700000円 )
本研究では、平成10年度に同軸管法による電波吸収特性の測定評価技術の確立を行い、次にSiC前駆体のPCSとフェライト(スピネル型)粉末を混合し、成形焼結する材料作製プロセスの検討を行い、二段階熱処理法の最適条件を把握し、焼結体材料の電波吸収特性の作製条件およびPCS量依存性の解明が図られた。平成11年度には、材料作製条件の更なる検討が深められ、酸素圧制御一段熱処理法を見出すとともに、GHz帯域で電波吸収特性を示す新規材料の創製を試みた。得られた結果を要約すると以下の通りである.
1.電磁波吸収特性の同軸管法による高精度測定・評価技術の確立:ネットーワークアナライザーを用いて同軸管法によって測定した複素透磁率および複素誘電より計算によって吸収量を評価する技術を100MHz〜10GHzの周波数帯域で確立した.
2.二段熱処理法によるPCSを用いた新規SiC-スピネルフェライト系電磁波吸収体の開発:(1)不融化処理と熱処理を最適化することによって、本系ハイブリッド電磁波吸収焼結体の作製に初めて成功した。(2)不融化温度によって生成相および電波吸収特性が著しく影響されることを明らかにした。(3)本ハイブリッドセラミックス焼結体の電波吸収特性の整合周波数は、PCS量の増加に伴い約2GHzの高周波側にシフトし、最高約2GHzまで高くなることを見出した。この結果は従来のスピネルフェライトのスネークの限界を超える値であり、SiCのハイブリッド化による大きな効果である。
3.酸素分圧制御一段熱処理によるPCSを用いた新規SiC-スピネルフェライト系電磁波吸収体の開発:酸素分圧を制御した一段階の熱処理によって、PCSの無機化反応と焼結反応を同時進行させ、ハイブリッド電磁波吸収焼結体の作成に初めて成功した。さらに、このハイブリッド焼結体では、試料厚さによって整合周波数が約900MHzと約9GHzの二種類の電磁波吸収特性を示すことを初めて見出した。 -
Bi系高温超伝導酸化物のLiのインターカレーションと二次電池正極材への応用の試み
研究課題/領域番号:09875172 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
高田 潤, 武田 保雄, 中西 真, 藤井 達生
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
Bi系高温超伝導酸化物(Bi-2212相など)は層状構造を有する化合物であり、これまで電極反応によるLiのインターカレーションの可能性が期待されていたが、現在まで殆ど報告例がない。
本研究は、Bi-2212相へ電気化学的にLiを導入することを試み、得られたBi-2212相の超伝導特性、構造及び酸素量と構成イオンの価数変化を明らかにするとともに、固相反応法によるLi導入の結果と比較検討することにより、Liのインタカレーションの特徴を明らかにし、更にLiディインターカレーションを試みることによって、Bi-2212相がLi二次電池の正極材として応用できる可能性を検討することを目的とした。得られた結果を要約すると以下の通りである。
1. 電気化学的手法を用いれば、LiをBi-2212相に常温・常圧でインターカレートすることが可能であり、Li量の制御は極めて容易であることを明らかにした。
2. Liを電気化学的に導入したBi-2212相の超伝導特性Toは、Li量によって大巾に変化することを初めて見い出した。すなわち、少量のLi導入でTcは85Kから93Kまで上昇した後、急激に低下し、X≧0.3(Li_X Bi_2Sr_<1.6> Ca_<1.5> Cu_2O_zの表記に対して)のLi量で非超伝導体となる。
3. 電気化学的Li導入では固相反応の場合とは全く異なり、酸素量は全く変化せず、Biの平均価数が減少する結果、Cuの平均価数がX≧0.3.で+2.0まで減少し、これがTcの著しい変化の原因であることを明らかにした。
4.予め導入したLiは電気化学的な逆反応(放電反応)によって、Bi-2212相より放出できる、すなわちディインターカレーションが可能であることを初めて見い出した。このディインターカレーションによって、Bi-2212相の構造、超伝導特性、酸素量とBiとCuの平均価数は可逆的に変化することを明らかにした。
5. 以上の結果より、Bi-2212相へのLi二次電池の正極材への応用の可能性は極めて高いことを示した。 -
In situ Raman分光法による酸化鉄薄膜の構造解析とスピン構造
研究課題/領域番号:09740524 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
藤井 達生
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
本研究者は、数年前、α-Al_2O_3単結晶基板上に成長したエピタキシャルα-Fe_2O_3薄膜のスピン構造が、バルク結晶のものと大きく異なっており、温度により膜面内から垂直方向へと興味あるスピンフリップ転移を示すことを見出し、注目された。この原因として、α-Fe_2O_3薄膜の成長過程に由来する格子歪みの発生が考えられる。本研究では成摸時にin situ Raman分光測定を行い、エピタキシャルα-Fe_2O_3薄膜の薄膜成長過程における構造変化を、連続的にとらえることを試みた。しかし、昨年度に引き続きRaman分光装置の光学系の改善を試みたが、膜厚が数原子層程度しかない超薄膜のRamanスペクトルを測定することはできず、薄膜成長初期の構造変化をとらえることには残念ながら成功しなかった。
またその研究と並行して、活性化反応性蒸着法によりα-Al_2O_3(001)単結晶基板上にFeTiO_3-α-Fe_2O_3固溶体のエピタキシャル薄膜を作製した。基板温度500℃の低温で成膜した薄膜は、FeイオンとTiイオンが陽イオンサイトをランダムに占有したコランダム構造であった。一方、基板温度700℃で成膜したFe_<2-x>Ti_xO_3膜は、x≧0.4の組成範囲でFeイオンとTiイオンが規則的に配列したイルメナイト構造をとった。FeイオンとTiイオンか規則配列した薄膜のみかフェリ磁性を示した、しかしその自発磁化はイオンが完全に規則配列した場合に期待される値の半分以下であった。さらに、固溶体薄膜の比抵抗は、Fe^<2+>-Fe^<3+>イオンの混合原子価状態をとることにより10^<-1>Ωcmまで低下した。よって本系固溶体薄膜は、新しい酸化物磁性半導体薄膜の有力な候補となることを明らかにした。 -
ナノメータサイズ窒化物粒子分散強化型新規Mo合金単結晶複合材料の作製と物性
研究課題/領域番号:08455311 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高田 潤, 中西 真, 藤井 達生, 平岡 裕
配分額:7400000円 ( 直接経費:7400000円 )
高融点金属の1つであるMo材料は、熱源ヒ-タ、熱処理トレイ、X線管球など耐熱材料として利用されているが、さらに広範囲に用いられるためには高強度化が強く望まれている。
本研究は、窒化処理によって形成する表面Mo窒化物層での高硬度化と、Mo-Ti合金の優先窒化を利用したMoマトリックス中への微細TiN粒子の分散析出による高強度化を狙ったものである。特に、我々の25年に及ぶ合金の優先酸化・窒化の研究から、従来の窒化温度よりもはるかに低い温度で窒化することによって、ナノスケールの超微細TiN粒子の分散析出した新しいMo系複合材料を基礎的かつ系統的研究に基づいて創製を試みた。その結果幸運にも、従来材料よりも驚異的に高強度な新規Mo系複合材料の開発に成功した。以下に具体的成果を示す。
純MoとMo-0.5および1.0wt%Ti合金を従来(1300℃以上)より低い1100℃でNH_3ガス窒化し、窒化挙動、硬さ分布、透過電子顕微鏡による微細構造と結晶学的関係を検討した。
1.試料表面に形成するMo窒化物層の成長機構を明らかにし、その硬さが最高Hv=1800に達することを示した。更に、このMo窒化物表面層は二層構造を呈し、表面近傍でγ-Mo_2N層、その内部にβ-Mo_2N層が形成すること、および各相で異なる双晶が形成されることを初めて明らかにした。特にβ-Mo_2N層では新しいマクロ双晶の生成を見い出した。
2.Mo-Ti合金ではMo_2N表面層の内側に純Moには認められない高強度な内部窒化層が形成されることを明らかにした。この層において従来材料の最高硬さ(Hv〜500)の約2倍のHv〜1000を示す飛躍的高強度を達成することに初めて成功した。さらに、この内部窒化層では厚さ約0.45nm(TiNの1ユニット長)、巾2〜4nmの超微細TiN粒子がMoマトリックスと一定の結晶方位関係を有し析出分散することを世界で初めて見い出し、この粒子の超微細分散が著しい強度増加をもたらしたことを明らかにした。