共同研究・競争的資金等の研究 - 寺井 直樹
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グレブナー基底の理論的有効性と実践的有効性についての国際研究集会の企画調査
研究課題/領域番号:15634001 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
日比 孝之, 松井 泰子, 大杉 英史, 齊藤 睦, 寺井 直樹, 高山 幸秀
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
当該企画調査では,Oberwoltach型の中規模準備会議を開催し,当該分野の研究の動向を詳細に分析し,研究目的に列挙した研究領域(トーリックイデアルとグレブナー基底,整数計画とGomory relaxation,0次元ラティスイデアルの普遍グレブナー基底,単項式イデアルの極小自由分解,幾何学的なBuchbergerアルゴリズムの高速化)の妥当性を慎重に審議した。その準備会議の概要を列挙する。[1]可換代数におけるアルゴリズム的手法(責任者:寺井直樹/於:大阪大学/平成15年7月)斉次代数の極小自由分解とベッチ数列,トーリック環の正則度と重複度などを題材とし,可換代数におけるアルゴリズム的手法を議論した。[2]有限グラフと0次元ラティスイデアル(責任者:大杉英史/於:立教大学/平成15年11月)有限グラフの隣接行列から生起する0次元ラティスイデアルを可換代数と組合せ論の両面から具象的に探求し,未解決問題を集約した。[3]グレブナー基底と応用数学(責任者:大杉英史/於:立教大学/平成16年1月)整数計画における代数的手法の有効性,Gomory relaxationと算術次数,符号理論と統計数学におけるトーリックイデアルとグレブナー基底の有効性について研究した。[4]可換代数と代数幾何(責任者:日比隆之/於:大阪大学/平成16年3月)いわゆるaffine algebraic geometryとその周辺領域,多項式環の組合せ論についての国際会議である。海外からの参加者はJurgen Herzogら7名であった。
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代数関数体から構成される誤り訂正符号の最小距離
研究課題/領域番号:14540127 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
上原 健, 寺井 直樹, 市川 尚志, 中原 徹, 田中 達治
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
代数関数体を用いて構成される誤り訂正符号である代数幾何符号の研究と、代数的整数論、数論的代数幾何学、代数幾何学、代数的組合せ理論のそれぞれの分野での関連する研究を行った。研究目的は、代数幾何符号を具体的に構成し、その符号の誤り訂正能力を測る重要な量である最小距離を特定することである。
符号構成と最小距離特定の研究では、初年度に、一点代数幾何符号と呼ばれるタイプの代数幾何符号について、符号Cの最小距離d(C)の特定を行った。詳しく言えば、一点代数幾何符号Cがある条件を満たせばd(C)がそのFeng-Rao下限d'(C)に一致することを証明した。2年目には、一点型以外の代数幾何符号構成し、そのFeng-Rao下限を計算した。その結果、Feng-Rao下限が一点型に比較して大きい符号が存在することを発見した。
代数的整数論の研究では、低次代数体、特にクンマー型のアーベル4次体の類数及び単数群の構造を解明した。また、アーベル8次体のについて、整数環が巾底を持つかどうかという問題を研究した。
数論的代数幾何の研究では、タイヒミュラー基本亜群の数論幾何的な構成を行い、タイヒミュラー基本亜群に関するガロア作用と(共形場理論に付随して定まる)モノドロミー表現の記述を与えた。アーベル多様体内の既約な代数曲線が楕円曲線と同型でないとき、その代数的点の集合がネロン・テイト高さに関して一様に疎に分布すること(ボゴモロフ予想)を証明した。
代数幾何学の研究では、n次元射影空間におけるd-1次サイクルの作るチャウ多様体の次数を評価する問題に関して、射影的不変量である終結式と関係するヒルベルト多項式との関連を調べた。
代数的組合せ理論については、単体的複体に対応するスタンレー・ライスナー環の極小自由分解について研究した。特に、線形分解を持つブックスバウム・スタンレー・ライスナー環のただ一つある非消滅ホモロジー群の次元の上限を与えた。 -
凸多面体を巡る組合せ数学の代数的諸相についての国際研究集会の企画調査
研究課題/領域番号:14604002 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
日比 孝之, 枡田 幹也, 松井 泰子, 齋藤 睦, 大杉 英史, 寺井 直樹
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
現在研究代表者らは国際研究集会「凸多面体を巡る組合せ数学の代数的諸相」を平成16年7月に札幌で開催する準備を進めているが,根幹となる研究領域を(1)グレブナー基底と組合せ数学(2)凸多面体の三角形分割と整数計画(3)外積代数とalgebraic shifting(4)単項式イデアルの極小自由分解(5)斉次整域の正則度と重複度,とする原案が有力である.当該企画調査では,当該分野の昨今の研究動向などに関する周到な調査を遂行し,上記項目を研究集会の研究領域の根幹とすることの妥当性を吟味するため,Oberwolfach型の中規模国内準備会議を2回開催した.すなわち,「グレブナー基底の理論的有効性と実践的有効性」(責任者:大杉英史/於:京都大学/平成14年7月)と「ジェネリックイニシャルイデアルの研究」(責任者:寺井直樹/於:大阪大学/平成14年12月)である.前者においては凸多面体の三角形分割と整数計画問題,符号理論と暗号理論などにおけるグレブナー基底の果たす役割について多角的に研究した.後者においては多項式環と外積代数のジェネリックイニシャルイデアルの相互関係を可換代数と組合せ論の両面から具象的に探究した.その他,平成14年6月にイタリアで開催された研究集会「可換代数の昨今の潮流」に研究代表者と研究分担者の一部が参加し,当該分野の研究の進展状況を把握した.当該企画調査の結論として,上記の根幹となる研究領域はすべて妥当であると判断され,個々の研究領域において当該国際研究集会に相応しい話題を選別する作業を推進した.
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タイヒミュラー基本亜群と共形場理論のモノドロミー
研究課題/領域番号:13640031 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
市川 尚志, 上原 健, 三苫 至, 中原 徹, 廣瀬 進, 寺井 直樹, 田中 達治
配分額:3900000円 ( 直接経費:3900000円 )
・共形場理論から導かれるタイヒミュラー基本亜群のモノドロミー表現を記述した。
・ボゴモロフ予想についてのウルモ・張の結果を拡張し、アーベル多様体の部分代数多様体が(別の)アーベル多様体と同型になるための必要十分条件を、ネロン・テイト高さ関数の値分布の言葉で与えた。
・吉田正章氏(九大)と共同して、純虚数の指数を持つ超幾何方程式のモノドロミー表現から定まるリーマン面の構造を決定した。
・双2次体のハッセの単数指数、及びその三つの部分体との類数関係を明示的に与えた。
・ある種のアーベル体の無限族の整数環についてハッセの問題を解明した。虚2次部分体を持つアーベル体の整数基が巾底をもたない場合及び巾底を持つ場合の双方について、新しい無限族の特徴付けを与えた。
・摂動型チャーン・サイモンズ理論を無限次元確率解析を通した漸近展開理論に訴えて、数学的正当化を試みた。簡単なホンフリー多項式の導出を得た。
・ある型の代数幾何符号について、その最小距離がフェンラオ限界と呼ばれる下限に一致することが知られているが、この事実の一般化を提示した。またこの型以外の代数幾何符号について同様の結果が成立することを発見した。
・スタンレー・ライズナー環の極小自由分解を用いて、単体的多面体のグラフの誘導部分グラフの平均連結成分数の上限を、次元と頂点数を固定したときに与えた。またある種のスタンレー・ライズナーイデアルに対して、射影次元と算術的階数が等しいことを示した。
・4次元球面内に自明に埋め込まれた曲面上の可微分同相写像が、4次元球面に拡張できるための必要十分条件は、ロホリンの二次形式を保つことであることを示した。
・ハンドル体の写像類群の仮想的ホモロジー次元と、オイラー数を求めた。
・トーラス結び目の4次元アナロジーについて、その標準形を求めた。
・ハンドル体の写像類群のホモロジー的アナロジーの生成系を求めた。 -
Stanley-Reisner環のBetti数に関する研究
研究課題/領域番号:12740020 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
寺井 直樹
配分額:1800000円 ( 直接経費:1800000円 )
本研究調査の目的は、スタンレーライスナー環のBetti数についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察することであり、そこからグラフ理論・組合せ論的応用を導くことであった。
本年度は、スタンレーライスナー環の極小自由分解の中でも特に2線形部分と呼ばれる部分のBetti数について重点を置いて研究した。Betti数に対する基本的な問題は、他の環論的不変量でその上限を評価することである。
報告者は、単体的凸多面体に付随するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数の上限をその凸多面体の次元と頂点数を用いて与えた。また、上の評価において、ちょうど上限を与えるものはスタック多面体に付随するスタンレーライスナー環であることも示した。
一方、純で強連結な単体的複体に付随するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数についてもその上限をその単体的複体の次元と頂点数を用いて与えた。また、上の評価において、ちょうど上限を与えるものは高次元木に付随するスタンレーライスナー環であることも示した。
グラフ理論における応用として、誘導部分グラフの平均連結成分数という概念を導入し、対応するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数との関係を研究した。そして、その結果として、単体的凸多面体の辺グラフ及び、純で強連結な単体的複体の1骨格について誘導部分グラフの平均連結成分数の上限を与えた。 -
Stanley-Reisner環のBetti数に関する研究
研究課題/領域番号:09740034 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
寺井 直樹
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
本研究調査の目的は、Stanley-Reisner環のBetti数についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察し、また、一般の次数つき環のBetti数との関係を探ることにあった。本年度も昨年度に引き続きBetti数を研究する上で重要な不変量であるregurarityについて重点を置いて研究した。
このregurarityに対して、次のニつの概念を用いて研究した。一つはGroebner基底である。Groebner基底は、計算機における数式処理において基本的な役割を果してきた。それは、連立方程式の解などを実用のレベルで求めるのに画期的なアルゴリズムを与えているし、さらに最近は図形処理にも大きな役割を果たしている。したがって、環のヒルベルト関数を求めることは、近年、Groebner基底の理論を用いることにより、計算機によって、計算できる様になってきた。ここでは、generic Groebner基底の理論を用いて、一般の次数つき環とスタンレーライスナー環の間の不変量の関係を調べた。
もう一つは、アレクサンダー双対複体である。Eagon氏とReiner氏によって、アクレサンダー双対複体を用いて、スタンレーライスナー環におけるCohen-Macaulay性と線形な極小自由分解をもつということの間の関係が明らかにされたのが、その出発点であった。本研究においては、それをさらに一般化し、スタンレーライスナー環のdepthとそのアレクサンダー双対複体のスタンレーライスナー環のregularityの間の関係を定式化した。そのことにより、regularityの問題をdepthの問題に帰着させて研究することが可能になった。そのことを利用して、Eisenbud-Goto予想のモノミアル版について肯定的に解いた。 -
代数曲線から生成される誤り訂正符号の研究
研究課題/領域番号:08640050 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
上原 健, 寺井 直樹, 田中 達治, 町頭 義朗, 市川 尚志, 中原 徹
配分額:1800000円 ( 直接経費:1800000円 )
本研究の課題である代数幾何符号については、Feng-Raoによって単項式列による構成法が提唱されているが、この方法に従ってある種の代数曲線から生成される誤り訂正符号(代数幾何符号)を構成し、その最小距離の下からの評価を行った。これは、Feng-Raoの結果を補正し部分的に精密化したものである。この研究結果は国際シンポジウムで発表し、論文は報告集に掲載予定である。さらに、単項式列による構成法を用いて、一般の代数的集合より代数幾何符号を構成することを試み、その際の単項式列の特定方法を開発し、大きい最小距離を得るための単項式列の並べ方について実験を行った。さらにエルミート符号の最小距離の特定に関して簡単な証明法を発見した。また、代数幾何符号に対するFeng-Raoの設定最小距離と行変換と多数決原理を用いた復号法の理論が一般の線形符号にも適用できることを示した。これらの研究結果は、目下論文として整理するため準備中である。さらに、2進L関数の整数点での値に関する合同関係式の一般化に関する研究を行い、国際シンポジウムで発表した。
一方、研究分担者の研究課題については次の成果があった。1)実2次体の類群の3部分群の構造を決定した。2)ソリトン(KdV,KP)方程式の普遍テ-タ関数解及びp進テ-タ関数解を構成した。3)アレクサンドロフ空間上のラプラシアンの理論を確立した。4)テ-タ関数を用いて3次元射影空間に埋め込まれた正規楕円4次曲線のチャウ形式をテ-タ定数を用いて具体的に表した。5)スタンレーライスナ-環の極小自由分解に現れるベッチ数の組合せ論における応用について研究した。これらの研究は、殆どが口頭発表を行い論文がそれぞれの雑誌に掲載済みか掲載予定である。 -
ASLについての研究
研究課題/領域番号:07740044 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
寺井 直樹
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
多項式環を、square-freeな単項式たちによって生成されるイデアルで割った環は、Stanley-Reisner環と呼ばれる。この環は、環論的手法からだけでなく、トポロジカルな、あるいは、組合せ論な手法を用いて研究され、その環論的性質が、組合せ論にも様々に応用されてきている。Buchsbaum Stanley-Reisner環に現われるh-vectorの特徴づけに関する問題も位相多様体の三角形分割に関連して興味深い。これについて、h-vectorであるための一つの必要条件を与えた。また、低次元の場合には、その十分性についても考察した。
与えられた加群に対して、その極小自由分解を構成し、Betti数列を調べることは、大切な問題である。というのは、それは、Cohen-Macaulay性、Gorenstein性等の重要な環論的情報を含んでいるからである。しかし、Betti数列を計算することは難しく、Hilbert関数からわかる例以外はほとんど知られていなかった。そこで、巡回多面体およびstacked多面体に付随するStanley-Reisner環のBetti数列を具体的に与えた。
また、Betti数列がStanley-Reisner環の係数体に依存するかどうかは、それを組合せ論的な公式で表そうとするさい重要な問題となる。そこで、Stanley-Reisner環の第2Betti数が係数体に依存しないことを示した。これは、Bruns-Herzogによって、最初に環論的に示されたが、Alexander双対定理を用いてトポロジカルな短い証明を与えた。
一般には第3Betti数は係数体に依存するのであるが、イデアルが次数2の単項式で生成されているならば、第3及び第4Betti数も係数体に依存しないことを示した。