共同研究・競争的資金等の研究 - 寺井 直樹
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Stanley-Reisner イデアルの算術階数とその記号的べきの射影次元
研究課題/領域番号:18K03244 2018年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
寺井 直樹, 木村 杏子, 吉田 健一, 宮崎 誓
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
本研究の目的は、Stanley-Reisner イデアルのべきについてその可換環論的、ホモロジー代数的性質を考察し、組合せ論的応用を探ることにある。可換環の満たす最も重要な性質のひとつとしてCohen-Macaulay性がある。したがって、Cohen-Macaulay性を判定する条件を与えることや、そのような環を分類することは極めて意義深い。本年度発表の結果として、次が挙げられる。良被覆グラフの辺イデアルの高さは不定元の個数の半分以上であることが知られており、エッジイデアルの高さが丁度、不定元の個数の半分である良被覆グラフは強良被覆グラフと呼ばれている。強良被覆グラフのCohen-Macaulay性については過去の共同研究において調べた(M.Crupi, G.Rinaldo, N.Terai, Cohen-Macaulay edge ideal whose height is half of the number of vertices, Nagoya Mathematical Journal 201(2011), 117-131)。今回はその拡張として辺重み付き強良被覆グラフの辺イデアルについて考察した。Cohen-Macaulay辺重み付き強良被覆グラフの辺イデアルの非混合性とCohen-Macaulayが同値であることを示し、またその条件を辺の重みの条件で記述した。また、頂点重み付き有向グラフにおいて底グラフがCohen-Macaulayであるとき、非混合性とCohen-Macaulay性が同値であることが予想されていたのであるが、その予想に対して反例を構成した。
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射影多様体のカステルヌボー・マンフォード正則量とシジジーに関連した話題の研究
研究課題/領域番号:26400048 2014年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
宮崎 誓, 岡田 拓三, 寺井 直樹
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
カステルヌボー・マンフォード正則量は射影多様体の定義多項式のシジジーを制御する重要な代数的不変量の一つである。本研究においては、正則量を多様体の次元、次数、余次元および線形k-ブックスバウム性で制御する結果を得た。また、正則量の手法を多重射影空間上のベクトル束の問題に応用し、ホロックス型のベクトル束の分裂判定法を得た。
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Stanley-Reisner イデアルの算術階数とそのべきの射影次元
研究課題/領域番号:26400049 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
寺井 直樹, 吉田 健一, 柳川 浩二, 木村 杏子, 庄田 敏宏, 岡田 拓三, 宮崎 誓, 青山 崇洋
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
多項式環の被約単項式イデアルの記号的べきの射影次元に関して研究した。強良被覆グラフの辺イデアルの場合に記号的べきの射影次元に関して広義単調増加であることを示した。良被覆である2部グラフは強良被覆グラフであり、2部グラフの辺イデアルの記号的べきは通常べきに等しいことから、良被覆である2部グラフの辺イデアルの通常べきの射影次元はべきの大きさに関して広義単調増加であることも示せたことになる。さらに、次数1の頂点をもつグラフの辺イデアルに対しても記号的べきの射影次元に関して広義単調増加であることを示した。
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モジュラー群の巾零完備化のモチーフ的構造
研究課題/領域番号:23540021 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
市川 尚志, 上原 健, 宮崎 誓, 寺井 直樹, 廣瀬 進
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
代数曲線やアーベル多様体のモジュライ空間の数論幾何的研究を進めて、次の成果を得た。1.楕円モジュラーモチーフにおけるヘッケ作用素の理論を構成し、その応用として多重モジュラーL値の代数性を示した。2.リジッド解析を用いて、アーベル多様体がヤコビ多様体になるための条件、すなわちショットキー問題の解を与えた。3.p進ベクトル値ジーゲルモジュラー形式の基礎理論を構成し、志村による概正則ベクトル値ジーゲルモジュラー形式のp進版を与えて、そのCM点における代数性を示した。4.数論的ショットキー一意化理論を用い、3次元双曲多様体の幾何的ゼータ関数について、その特殊値の数論性を示した。
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Stanley-Reisnerイデアルの極小自由分解と算術階数
研究課題/領域番号:23540053 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
寺井 直樹, 上原 健, 市川 尚志, 宮崎 誓, 河合 茂生, 吉田 健一, 柳川 浩二, 木村 杏子, 村井 聡
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
多項式環の被約単項式イデアルであるStanley-Reisner イデアルの算術階数について研究した。Stanley-Reisner イデアルに関してはその算術階数はその剰余環の極小自由分解の長さ、つまり、その剰余環の射影次元以上であることが知られている。林の辺イデアルの算術階数はその剰余環の射影次元に等しいとBarileにより予想されていたのであるが、それに対して肯定的な答えを与えた。また高さ3のGorenstein Stanley-Reisner イデアルに関してもその算術階数はその剰余環の射影次元3となることを示した。
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イデアルのべきに付随する環論的不変量の研究
研究課題/領域番号:22540047 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉田 健一, 橋本 光靖, 伊山 修, 寺井 直樹
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
二項式で定義された超曲面の対角的F閾値の計算方法を与えた。標準的次数付きアフィントーリック環のF(純)閾値と後藤・渡辺による不変量との間の不等式を証明した。グラフの辺イデアルのべき及び形式的べきのコーエン・マコーレー性を議論し、3次以上のべきがコーエン・マコーレーになるようなグラフを特徴づけた。また、2次のべきについても同様の成果を得た。正標数の理論(スコダの定理)を応用して、後藤数に関するワン型の定理を証明した。
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射影多様体のカステルヌボー・マンフォード量とその周辺の話題についての研究
研究課題/領域番号:21540044 2009年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
宮崎 誓, 市川 尚志, 岡田 拓三, 寺井 直樹, 野間 淳, 尼崎 睦実, 尾形 庄悦
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
射影多様体の極小自由分解は定義イデアルの代数的な複雑さを表す重要な不変量である。マンフォードにより導入されたカステルヌボー・マンフォード正則量は定義イデアルの複雑さを表す量である。ブックスバウム多様体のカステルヌボー・マンフォード正則量は次数および余次元で表されるカステルヌボー型の上限を持つことが知られていた。本研究においては、ブックスバウム多様体の正則量がカステルヌボー型の上限もしくは2番目の上限を満たすときは、有理線織射多様体もしくはデル・ペッツォ多様体の因子となることを示した。さらに、正則量の応用として、多重射影空間上のベクトル束のホロックス型の分裂判定法を求めた。
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Stanley-Reisner環の重複度と極小自由分解に関する研究
研究課題/領域番号:20540047 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
寺井 直樹, 上原 健, 市川 尚志, 宮崎 誓, 河合 茂生
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
多項式環の被約単項式イデアルであるStanley-Reisnerイデアルのべきについて研究した。その結果、その3乗以上のあるべき乗がCohen-Macaulay性をもつならば、任意のべき乗もCohen-Macaulay性をもつことがわかった。また、そのとき、もとのイデアルは完全交差となる。このことはCowsik-Noriの定理に対して単項式イデアルの場合に精密化を与えていることになる。
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整数論及びその離散数理領域への展開
研究課題/領域番号:20540019 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
中原 徹, 上原 健, 宮崎 誓, 寺井 直樹, 片山 眞一, 田口 雄一郎, クロード ルベック, 金 賢光
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究課題の主体をなす整数論,とくにアーベル体に関するHasseの問題[A],数論幾何,代数幾何[B]並びにその離散分野への応用[C]に関して,パキスタン・イスラム共和国NUCES[先端科技大]と佐賀大学大学院工学系研究科とのWorkshop on NumberTheory in Sagaを2008~2010年度の各1月及び8月に両国の先端的若手及び中堅研究者を中心に計5回佐賀大学にて実施した.先行して研究代表者はNUCESに延べ2年半滞在し,Peshawar,Lahore 両Campus PhD大学院生,ポストドク及び国内研究者との共同研究を行った.
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モジュラー多様体の幾何とジーゲル保型形式の合同、P進理論
研究課題/領域番号:20540018 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
市川 尚志, 長岡 昇勇, 上原 健, 宮崎 誓, 寺井 直樹
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
ジーゲルモジュラー多様体の数論幾何的性質を調べることにより、ジーゲルモジュラー形式の合同問題を解決し、p進ジーゲルモジュラー形式の重さがp進数として定まることを示した。またベクトル値ジーゲルモジュラー形式の数論的理論と、ベクトル値p進ジーゲルモジュラー形式の理論の基礎付けを与え、p進作用素の自然な構成を与えた。さらに環上のジーゲルモジュラー形式のなす環(保型形式環)の構造を調べ、6を逆元として持つ環上において、次数2のジーゲルモジュラー形式のなす環の構造を決定した。
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乗数イデアルと密着閉包の可換代数及び計算代数の視点からの研究
研究課題/領域番号:19340005 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
吉田 健一, 橋本 光靖, 伊山 修, 藤野 修, 寺井 直樹, 寺井 直樹
配分額:8450000円 ( 直接経費:6500000円 、 間接経費:1950000円 )
研究代表者は、以前の研究で原伸生氏と共に、一般化された密着閉包の概念を導入し、乗数イデアルを可換環論の言葉で定義することに成功した。具体的には、乗数イデアルは、密着閉包のテストイデアルの標数に関する極限として得られる。本研究では、小さな標数のテストイデアルの振る舞いと乗数イデアルの振る舞いとの違いを明らかにした。さらに、可換環論におけるさまざまな不変量の研究を行うために、密着閉包の理論を整備した。
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Koszul双対性の可換環論への応用
研究課題/領域番号:19540028 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
柳川 浩二, 寺井 直樹, 和久井 道久, 毛利 出, 若松 隆義, 和久井 道久, 毛利 出, 寺井 直樹, 若松 隆義
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
代表者は以前より、「Koszul双対性」など導来圏の理論を、組合せ論的可換代数の問題に応用してきた。その手法を、一般の可換環の研究に活かすことが当初の目的であった。この方向で、環の連接性等と関連した成果を得て、2009年に学術誌に発表した。2008年頃からは、若干方針を転換し、組合せ論的可換代数の対象ではあるが、やや定義が緩く(一般の環に近く)従来の手法が使えないものの研究に移行した。この方向では、数本の論文を書き、一部は出版済である。
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整数論及びその離散数理領域への応用と展開
研究課題/領域番号:18540040 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
中原 徹, 上原 健, 市川 尚志, 寺井 直樹, 片山 真一, 田口 雄一郎
配分額:3880000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:480000円 )
本研究課題の中核をなす整数論,とくにHasseの問題及び特殊線形群の作用による実2次無理数の軌道計算[A07],代数幾何[B07]並びに低密度パリティ検査符号とその復号能力の探索[C07]に関して,パキスタン・イスラム共和国先端科学技術大学[NUCES,Peshawar Campus],大韓民国,浦項工科大学校と佐賀大学大学院工学系研究科との拡大国際パートナーシッププログラムを2008年2月から3月初めに実施した.研究代表者はパキスタン・イスラム共和国先端科学技術大学に一ケ月滞在し,Shah Syed Inayat Ali氏と2008年2月にはKhan Hamid氏[NUCES,Peshawar Campus]を佐賀大に招聘し共同研究を行った.
分野A07.有理数体Q上,4次巡回体Kの整数環Z_Kにおけるハッセの問題について研究した.体Kが合成数導手の場合は素数導手のときと異なり,或る無限族の4次巡回体に対しZ_Kが巾底を持つことを証明した[研究代表者].Binary recurrence sequencesに伴う不定方程式の研究とその応用,すなわち類群のp-rankが2以上のp-1次巡回拡大の無限族の構成問題について研究を行った[片山].
分野B07.文賢淑氏と共同で保型形式の1-進的な性質を調べ,さらにいくつかの二次体に対し,2の外不分岐なmod2表現の非存在や有限性を証明した[田口].局所的完全交叉であるStanley-Reisner環について研究した[寺井].
分野C07.エルミート曲線から構成された誤り訂正符号であるエルミート符号の新しい構成方法について研究した.従来の一点型符号と別の符号を構成し、その最小距離の下からの限界を計算した,その結果,作られた符号が従来のエルミート符号より優れていることを示した[上原]. -
リーマン面上のベクトル束の新しい構成法とフェアリンデ公式
研究課題/領域番号:18540039 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
市川 尚志, 中原 徹, 三苫 至, 上原 健, 寺井 直樹, 広瀬 進
配分額:4010000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:510000円 )
・Riemenn面を一意化するSchottky群の線形表現空間とRiemann面上のベクトル束のモジュライ空間との関係を、Abel-Jacobiの定理とVbrlindeの公式を用いて記述した。
・Igusaの結果を拡張し、1/6を持つ環上の次数2のSiegel保型形式の環構造を記述した。
・楕円保型形式の合同・p進的性質に関するSwinnerton-Dyer,Serre,Katzの結果をSiegel保型形式の場合に拡張した。
・代数体の整数環における巾底の存在に関するHasseの問題を研究し、特別な場合にそのような巾低が存在しないことを示した。
・摂動型Chern-Simons積分の1ループ近似を、Wiener空間の枠組みで数学として正当化し、その漸近展開をMalliavin-Taniguchiの変数変換定理に訴えて導いた。
・Hermite曲線から構成された誤り訂正符号であるHermite符号の新しい構成法について研究し、その最小距離の下界を計算することによって、新しい構成法の有用性を示した。
・局所的完全交叉であるStanley-Reisner環の性質を研究し、対応する単体的複体が連結で2以上の次元を持つ場合、その環の完全交叉性を示した。
・種数4以下の有向閉曲面上の周期的写像のDehn twistによる表示を求め、その応用として、Lefschetz fiber空間でnon-holomorphicなものや極小でないものの例を構成した。 -
Stanley-Reisner環の極小自由分解の研究
研究課題/領域番号:18540041 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
寺井 直樹, 中原 徹, 上原 健, 市川 尚志, 吉田 健一, 柳川 浩二
配分額:4010000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:510000円 )
本研究の目的は、Stanley-Reisner環の極小自由分解についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察し、その応用を探ることにあった。Stanley-Reisner環の重複度と正則度の関係について重点的に研究した。
平成17年度以前の研究において、Stanley-Reisner環の次元をdとするとき、そのStanley-Reisnerイデアルの全ての生成元の次数がd以下でありそのStanley-Reisner環の重複度が2d-1以下ならば、その正則度はd以下であることを示した。それを受けて平成18年度にはStanley-Reisnerイデアルの第1シジジー加群の全ての生成元の次数がd+1以下であるとするとき、そのStanley-Reisner環の重複度が3d-2以下ならば、その正則度はd以下であることを示した。そのことから一般にStanley-Reisnerイデアルの第pシジジー加群の全ての生成元の次数がd+p以下であるとするとき、そのStanley-Reisner環の重複度が(p+2)d-(p+1)以下ならば、その正則度はd以下であることが予想される。平成19年度は、この予想に対して、Stanley-Reisner環の次元dが2、3のときにそれが成立することを示した。また、この予想は凸多面体論において有名な下限定理(次元と頂点数を固定したとき、stacked多面体の各次元の面の数が単体的多面体の中で極小値を与えるという定理)の極大面の場合のもっと一般的な図形への拡張に相当することがわかった。 -
代数幾何符号の明示的構成
研究課題/領域番号:18540038 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
上原 健, 中原 徹, 市川 尚志, 寺井 直樹
配分額:3450000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:450000円 )
1.エルミート曲線から構成された誤り訂正符号であるエルミート符号の構成について研究を行い,新しい構成方法を開発した.開発した方法で,従来の一点型符号と別の符号を構成し,その符号の最小距離の下からの限界を計算した。その結果,構成した符号が従来の一点型エルミート符号より優れていることを示した.
2.優良な符号列を生成するトレース・ノルム符号について,基底の具体形を求める研究を実行し,変数が3個以下の場合に,基底の具体形を求めた.
3.誤り訂正能力が注目されている低密度パリティ検査符号の代数的構成方法について研究し,有限体上のベクトル空間から構成する方法,非可換有限群から構成する方法を示した.
4.代数体の整数環の基底構造について研究し,拡大次数が8以上の2-基本アーベル体の中で整数環が単一の整数のべきが基底となるのは1例だけであることを示した.
5.Siegel保型形式について研究し,1/6を持つ環上の次数2のSiegel保型形式の環構造を記述した.
6.Stanley-Reisner環について研究し,対応する単体的複体が2以上の次元を持ち,連結であれば,局所的完全交叉であるStanley-Reisner環は完全交叉であることを示した. -
射影多様体のCastelnuovo-Mumford量についての研究
研究課題/領域番号:17540035 2005年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
宮崎 誓, 寺井 直樹, 前田 高士, 尼崎 睦実, 尾形 庄悦, 野間 淳, 前田 高士, 尼崎 睦実, 尾形 庄悦, 野間 淳
配分額:3880000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:480000円 )
射影空間内において有限個の斉次多項式の零点として定義された射影多様体の定義イデアルの次数、極小自由分解の複雑さを表す重要な不変量として、Castelnuovo-Mumford 量がある。Castelnuovo-Mumford 量の上限を射影多様体の次数、余次元などで記述する問題はこの分野の重要なテーマであり、いくつかの上限が知られている。本研究において、射影曲線のCastelnuovo-Mumford 量がCastelnuovo 型の上限、次の上限を満たすときに、最小次数の射影曲面もしくは正規Del Pezzo 曲面の因子となることを示した。
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Stanley-Reisner環の極小自由分解に関する研究
研究課題/領域番号:16540028 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
寺井 直樹, 田中 達治, 中原 徹, 市川 尚志, 吉田 健一, 柳川 浩二
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
本研究の目的は、Stanley-Reisner環の極小自由分解についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察し、組合せ論的応用を探ることにあった。
平成16年度は線形自由分解を持つBuchsbaum Stanley-Reisner環について研究した。Buchsbaum Stanley-Reisner環の重複度の下限を求め、それが、ちょうど下限の値をとるとき、線形自由分解を持つことを示した。また、Buchsbaum Stanley-Reisner環が線形自由分解をもつ必要十分条件を対応する単体的複体および、そのまつわり複体の被約ホモロジー群の言葉であたえた。
平成17年度は主にStanley-Reisner環の重複度とCastelnuovo-Mumford正則度の関係について研究した。Stanley-Reisner環の次元をdとするとき、その重複度がd以下ならばそのStanley-Reisner環のCastelnuovo-Mumford正則度はd以下であることを示した。さらにそのStanley-Reisnerイデアルの全ての生成元の次数がd以下であるときにはそのStanley-Reisner環の重複度が2d-1以下ならばそのCastelnuovo-Mumford正則度はd以下であることを示した。
さらに、線形自由分解をもつStanley-Reisner環のなかで、特にd線形自由分解をもつものについて重点的に調べた。上の結果からStanley-Reisnerイデアルの全ての生成元の次数がd以上であるときにはそのStanley-Reisner環の重複度がd以下ならばそのStanley-Reisner環はd線形自由分解をもつことがわかった。さらに、Stanley-Reisnerイデアルの全ての生成元の次数がdであるときにはそのStanley-Reisner環の重複度が2d-1以下ならばそのStanley-Reisner環はd線形自由分解をもつことがわかった。また、アレクサンダー双対複体を用いて、重複度が十分大きいならば、Stanley-Reisner環はCohen-Hacaulay環であることを示した。 -
〇次元ラティスイデアルの普遍グレブナー基底の探究
研究課題/領域番号:15340007 2003年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
日比 孝之, 齋藤 睦, 大杉 英史, 松井 泰子, 高山 幸秀, 寺井 直樹
配分額:8600000円 ( 直接経費:8600000円 )
純粋数学と応用数学の両者に深く拘わる0次元ラティスイデアルの普遍グレブナー基底について、その代数的基礎理論を構築し、可換代数と代数幾何への理論的有効性とともに、整数計画、符号理論、統計数学などへの実践的有効性を多角的に探究することが当該基盤研究の申請書類作成段階における目的であった。当該基盤研究の研究成果を列挙する。第1に、有限グラフに付随するトーリックイデアルから得られる0次元ラティスイデアルの普遍グレブナー基底の具象的研究を展開し、その構造を有限グラフの言葉で記述することに成功した。第2に、有限グラフの整数計画問題にいわゆるGomoryのrelaxationと呼ばれる整数計画の技巧を使うことが可能なとき、最適解を探すための計算量を有限グラフの組合せ論を使って決定する研究を推進した。第3に、0次元ラティスイデアルのcorner polyhedronを有界な凸多面体と凸錐のMinkowski和として表示する研究を推進し、その多面体的諸性質についての顕著な結果が得られた。第4に、統計数学における分割表のマルコフ基底に関する代数的研究を展開し、完全多重グラフのトーリックイデアルに付随する統計モデルを提唱し、その統計学的な解析を遂行した。以上の研究成果は、整数計画問題の代数的な分析の展開に十分な貢献をする。他方、当該基盤研究においては、海外から著名な研究者を招聘し、2件の国際会議を開催した。それらは(1)可換代数と代数幾何(於、大阪大学)平成16年3月、(2)グレブナー基底の理論的有効性と実践的有効性(於、立教大学)平成17年8月、である。
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頂点作用素代数と代数曲線のモジュライ空間
研究課題/領域番号:15540036 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
市川 尚志, 田中 達治, 中原 徹, 三苫 至, 寺井 直樹, 廣瀬 進
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
1.代数曲線とそのモジュライ空間に関する数論幾何と数理物理について研究し、タイヒミュラー基本亜群の数論幾何的構成を行って、ガロア表現に関するグロタンディーク予想の部分的解決、及び共形場理論に付随するモノドロミー表現の記述を与えた。
2.ボゴモロフ予想に関するウルモ・張の結果を拡張し、代数体上定義されたアーベル多様体の部分代数多様体が、アーベル多様体の構造を持つための条件を、ネロン・テイト高さ関数の値分布の言葉で与えた。
3.純虚数の指数を持つ超幾何微分方程式のモノドロミー表現から定まるリーマン面の構造を決定した(吉田正章との共同研究)。
4.射影空間内の1-サイクルのなすチャウ多様体の次元を、定義に基づいて計算している。
5.低次代数体、特にクンマー型のアーベル4次体の類群及び単数群の構造を解明した(片山真一及びClaude Levesqueとの共同研究)。
6.ハッセの問題について研究し、ガロア群が2-基本群であるアーベル16次体以上はその極大整還が巾底を持たないこと、8次体では、ある条件の下で、巾底をもつものは円周24等分体のみであることを証明した(元田康夫との共同研究)。
7.確率的ホロノミー作用素を定義し、ゲージ不変なウィルソン・ループ観測変数の積に対するChern-Simons積分の1-ループ近似を、ウイナー空間を使って数学的に定義した。
8.線型自由分解を持つBuchsbaum Stanley-Reisner環について研究し、重複度による特徴付けを与えた。
9.モノミアルイデアルの算術階数について研究し、偏差が2のモノミアルイデアルの算術階数を決定した。
10.単連結4次元多様体に埋め込まれた曲面で、その上の任意の同相写像が4次元多様体に拡張できるものをflexible surfaceとよぶ。Flexible surfaceが存在するために4次元多様体が満たすべき十分条件を調べ、4次元球面を除く多くの単連結4次元多様体内にflexible surfaceが存在することを示し、さらに任意の単連結4次元多様体内の曲面をflexibleに改変する操作の存在を示した。 -
グレブナー基底の理論的有効性と実践的有効性についての国際研究集会の企画調査
研究課題/領域番号:15634001 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
日比 孝之, 松井 泰子, 大杉 英史, 齊藤 睦, 寺井 直樹, 高山 幸秀
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
当該企画調査では,Oberwoltach型の中規模準備会議を開催し,当該分野の研究の動向を詳細に分析し,研究目的に列挙した研究領域(トーリックイデアルとグレブナー基底,整数計画とGomory relaxation,0次元ラティスイデアルの普遍グレブナー基底,単項式イデアルの極小自由分解,幾何学的なBuchbergerアルゴリズムの高速化)の妥当性を慎重に審議した。その準備会議の概要を列挙する。[1]可換代数におけるアルゴリズム的手法(責任者:寺井直樹/於:大阪大学/平成15年7月)斉次代数の極小自由分解とベッチ数列,トーリック環の正則度と重複度などを題材とし,可換代数におけるアルゴリズム的手法を議論した。[2]有限グラフと0次元ラティスイデアル(責任者:大杉英史/於:立教大学/平成15年11月)有限グラフの隣接行列から生起する0次元ラティスイデアルを可換代数と組合せ論の両面から具象的に探求し,未解決問題を集約した。[3]グレブナー基底と応用数学(責任者:大杉英史/於:立教大学/平成16年1月)整数計画における代数的手法の有効性,Gomory relaxationと算術次数,符号理論と統計数学におけるトーリックイデアルとグレブナー基底の有効性について研究した。[4]可換代数と代数幾何(責任者:日比隆之/於:大阪大学/平成16年3月)いわゆるaffine algebraic geometryとその周辺領域,多項式環の組合せ論についての国際会議である。海外からの参加者はJurgen Herzogら7名であった。
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代数関数体から構成される誤り訂正符号の最小距離
研究課題/領域番号:14540127 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
上原 健, 寺井 直樹, 市川 尚志, 中原 徹, 田中 達治
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
代数関数体を用いて構成される誤り訂正符号である代数幾何符号の研究と、代数的整数論、数論的代数幾何学、代数幾何学、代数的組合せ理論のそれぞれの分野での関連する研究を行った。研究目的は、代数幾何符号を具体的に構成し、その符号の誤り訂正能力を測る重要な量である最小距離を特定することである。
符号構成と最小距離特定の研究では、初年度に、一点代数幾何符号と呼ばれるタイプの代数幾何符号について、符号Cの最小距離d(C)の特定を行った。詳しく言えば、一点代数幾何符号Cがある条件を満たせばd(C)がそのFeng-Rao下限d'(C)に一致することを証明した。2年目には、一点型以外の代数幾何符号構成し、そのFeng-Rao下限を計算した。その結果、Feng-Rao下限が一点型に比較して大きい符号が存在することを発見した。
代数的整数論の研究では、低次代数体、特にクンマー型のアーベル4次体の類数及び単数群の構造を解明した。また、アーベル8次体のについて、整数環が巾底を持つかどうかという問題を研究した。
数論的代数幾何の研究では、タイヒミュラー基本亜群の数論幾何的な構成を行い、タイヒミュラー基本亜群に関するガロア作用と(共形場理論に付随して定まる)モノドロミー表現の記述を与えた。アーベル多様体内の既約な代数曲線が楕円曲線と同型でないとき、その代数的点の集合がネロン・テイト高さに関して一様に疎に分布すること(ボゴモロフ予想)を証明した。
代数幾何学の研究では、n次元射影空間におけるd-1次サイクルの作るチャウ多様体の次数を評価する問題に関して、射影的不変量である終結式と関係するヒルベルト多項式との関連を調べた。
代数的組合せ理論については、単体的複体に対応するスタンレー・ライスナー環の極小自由分解について研究した。特に、線形分解を持つブックスバウム・スタンレー・ライスナー環のただ一つある非消滅ホモロジー群の次元の上限を与えた。 -
凸多面体を巡る組合せ数学の代数的諸相についての国際研究集会の企画調査
研究課題/領域番号:14604002 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
日比 孝之, 枡田 幹也, 松井 泰子, 齋藤 睦, 大杉 英史, 寺井 直樹
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
現在研究代表者らは国際研究集会「凸多面体を巡る組合せ数学の代数的諸相」を平成16年7月に札幌で開催する準備を進めているが,根幹となる研究領域を(1)グレブナー基底と組合せ数学(2)凸多面体の三角形分割と整数計画(3)外積代数とalgebraic shifting(4)単項式イデアルの極小自由分解(5)斉次整域の正則度と重複度,とする原案が有力である.当該企画調査では,当該分野の昨今の研究動向などに関する周到な調査を遂行し,上記項目を研究集会の研究領域の根幹とすることの妥当性を吟味するため,Oberwolfach型の中規模国内準備会議を2回開催した.すなわち,「グレブナー基底の理論的有効性と実践的有効性」(責任者:大杉英史/於:京都大学/平成14年7月)と「ジェネリックイニシャルイデアルの研究」(責任者:寺井直樹/於:大阪大学/平成14年12月)である.前者においては凸多面体の三角形分割と整数計画問題,符号理論と暗号理論などにおけるグレブナー基底の果たす役割について多角的に研究した.後者においては多項式環と外積代数のジェネリックイニシャルイデアルの相互関係を可換代数と組合せ論の両面から具象的に探究した.その他,平成14年6月にイタリアで開催された研究集会「可換代数の昨今の潮流」に研究代表者と研究分担者の一部が参加し,当該分野の研究の進展状況を把握した.当該企画調査の結論として,上記の根幹となる研究領域はすべて妥当であると判断され,個々の研究領域において当該国際研究集会に相応しい話題を選別する作業を推進した.
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タイヒミュラー基本亜群と共形場理論のモノドロミー
研究課題/領域番号:13640031 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
市川 尚志, 上原 健, 三苫 至, 中原 徹, 廣瀬 進, 寺井 直樹, 田中 達治
配分額:3900000円 ( 直接経費:3900000円 )
・共形場理論から導かれるタイヒミュラー基本亜群のモノドロミー表現を記述した。
・ボゴモロフ予想についてのウルモ・張の結果を拡張し、アーベル多様体の部分代数多様体が(別の)アーベル多様体と同型になるための必要十分条件を、ネロン・テイト高さ関数の値分布の言葉で与えた。
・吉田正章氏(九大)と共同して、純虚数の指数を持つ超幾何方程式のモノドロミー表現から定まるリーマン面の構造を決定した。
・双2次体のハッセの単数指数、及びその三つの部分体との類数関係を明示的に与えた。
・ある種のアーベル体の無限族の整数環についてハッセの問題を解明した。虚2次部分体を持つアーベル体の整数基が巾底をもたない場合及び巾底を持つ場合の双方について、新しい無限族の特徴付けを与えた。
・摂動型チャーン・サイモンズ理論を無限次元確率解析を通した漸近展開理論に訴えて、数学的正当化を試みた。簡単なホンフリー多項式の導出を得た。
・ある型の代数幾何符号について、その最小距離がフェンラオ限界と呼ばれる下限に一致することが知られているが、この事実の一般化を提示した。またこの型以外の代数幾何符号について同様の結果が成立することを発見した。
・スタンレー・ライズナー環の極小自由分解を用いて、単体的多面体のグラフの誘導部分グラフの平均連結成分数の上限を、次元と頂点数を固定したときに与えた。またある種のスタンレー・ライズナーイデアルに対して、射影次元と算術的階数が等しいことを示した。
・4次元球面内に自明に埋め込まれた曲面上の可微分同相写像が、4次元球面に拡張できるための必要十分条件は、ロホリンの二次形式を保つことであることを示した。
・ハンドル体の写像類群の仮想的ホモロジー次元と、オイラー数を求めた。
・トーラス結び目の4次元アナロジーについて、その標準形を求めた。
・ハンドル体の写像類群のホモロジー的アナロジーの生成系を求めた。 -
Stanley-Reisner環のBetti数に関する研究
研究課題/領域番号:12740020 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
寺井 直樹
配分額:1800000円 ( 直接経費:1800000円 )
本研究調査の目的は、スタンレーライスナー環のBetti数についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察することであり、そこからグラフ理論・組合せ論的応用を導くことであった。
本年度は、スタンレーライスナー環の極小自由分解の中でも特に2線形部分と呼ばれる部分のBetti数について重点を置いて研究した。Betti数に対する基本的な問題は、他の環論的不変量でその上限を評価することである。
報告者は、単体的凸多面体に付随するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数の上限をその凸多面体の次元と頂点数を用いて与えた。また、上の評価において、ちょうど上限を与えるものはスタック多面体に付随するスタンレーライスナー環であることも示した。
一方、純で強連結な単体的複体に付随するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数についてもその上限をその単体的複体の次元と頂点数を用いて与えた。また、上の評価において、ちょうど上限を与えるものは高次元木に付随するスタンレーライスナー環であることも示した。
グラフ理論における応用として、誘導部分グラフの平均連結成分数という概念を導入し、対応するスタンレーライスナー環の2線形部分のBetti数との関係を研究した。そして、その結果として、単体的凸多面体の辺グラフ及び、純で強連結な単体的複体の1骨格について誘導部分グラフの平均連結成分数の上限を与えた。 -
Stanley-Reisner環のBetti数に関する研究
研究課題/領域番号:09740034 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
寺井 直樹
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
本研究調査の目的は、Stanley-Reisner環のBetti数についてその可換環論的、組合せ論的性質を考察し、また、一般の次数つき環のBetti数との関係を探ることにあった。本年度も昨年度に引き続きBetti数を研究する上で重要な不変量であるregurarityについて重点を置いて研究した。
このregurarityに対して、次のニつの概念を用いて研究した。一つはGroebner基底である。Groebner基底は、計算機における数式処理において基本的な役割を果してきた。それは、連立方程式の解などを実用のレベルで求めるのに画期的なアルゴリズムを与えているし、さらに最近は図形処理にも大きな役割を果たしている。したがって、環のヒルベルト関数を求めることは、近年、Groebner基底の理論を用いることにより、計算機によって、計算できる様になってきた。ここでは、generic Groebner基底の理論を用いて、一般の次数つき環とスタンレーライスナー環の間の不変量の関係を調べた。
もう一つは、アレクサンダー双対複体である。Eagon氏とReiner氏によって、アクレサンダー双対複体を用いて、スタンレーライスナー環におけるCohen-Macaulay性と線形な極小自由分解をもつということの間の関係が明らかにされたのが、その出発点であった。本研究においては、それをさらに一般化し、スタンレーライスナー環のdepthとそのアレクサンダー双対複体のスタンレーライスナー環のregularityの間の関係を定式化した。そのことにより、regularityの問題をdepthの問題に帰着させて研究することが可能になった。そのことを利用して、Eisenbud-Goto予想のモノミアル版について肯定的に解いた。 -
代数曲線から生成される誤り訂正符号の研究
研究課題/領域番号:08640050 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
上原 健, 寺井 直樹, 田中 達治, 町頭 義朗, 市川 尚志, 中原 徹
配分額:1800000円 ( 直接経費:1800000円 )
本研究の課題である代数幾何符号については、Feng-Raoによって単項式列による構成法が提唱されているが、この方法に従ってある種の代数曲線から生成される誤り訂正符号(代数幾何符号)を構成し、その最小距離の下からの評価を行った。これは、Feng-Raoの結果を補正し部分的に精密化したものである。この研究結果は国際シンポジウムで発表し、論文は報告集に掲載予定である。さらに、単項式列による構成法を用いて、一般の代数的集合より代数幾何符号を構成することを試み、その際の単項式列の特定方法を開発し、大きい最小距離を得るための単項式列の並べ方について実験を行った。さらにエルミート符号の最小距離の特定に関して簡単な証明法を発見した。また、代数幾何符号に対するFeng-Raoの設定最小距離と行変換と多数決原理を用いた復号法の理論が一般の線形符号にも適用できることを示した。これらの研究結果は、目下論文として整理するため準備中である。さらに、2進L関数の整数点での値に関する合同関係式の一般化に関する研究を行い、国際シンポジウムで発表した。
一方、研究分担者の研究課題については次の成果があった。1)実2次体の類群の3部分群の構造を決定した。2)ソリトン(KdV,KP)方程式の普遍テ-タ関数解及びp進テ-タ関数解を構成した。3)アレクサンドロフ空間上のラプラシアンの理論を確立した。4)テ-タ関数を用いて3次元射影空間に埋め込まれた正規楕円4次曲線のチャウ形式をテ-タ定数を用いて具体的に表した。5)スタンレーライスナ-環の極小自由分解に現れるベッチ数の組合せ論における応用について研究した。これらの研究は、殆どが口頭発表を行い論文がそれぞれの雑誌に掲載済みか掲載予定である。 -
ASLについての研究
研究課題/領域番号:07740044 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
寺井 直樹
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
多項式環を、square-freeな単項式たちによって生成されるイデアルで割った環は、Stanley-Reisner環と呼ばれる。この環は、環論的手法からだけでなく、トポロジカルな、あるいは、組合せ論な手法を用いて研究され、その環論的性質が、組合せ論にも様々に応用されてきている。Buchsbaum Stanley-Reisner環に現われるh-vectorの特徴づけに関する問題も位相多様体の三角形分割に関連して興味深い。これについて、h-vectorであるための一つの必要条件を与えた。また、低次元の場合には、その十分性についても考察した。
与えられた加群に対して、その極小自由分解を構成し、Betti数列を調べることは、大切な問題である。というのは、それは、Cohen-Macaulay性、Gorenstein性等の重要な環論的情報を含んでいるからである。しかし、Betti数列を計算することは難しく、Hilbert関数からわかる例以外はほとんど知られていなかった。そこで、巡回多面体およびstacked多面体に付随するStanley-Reisner環のBetti数列を具体的に与えた。
また、Betti数列がStanley-Reisner環の係数体に依存するかどうかは、それを組合せ論的な公式で表そうとするさい重要な問題となる。そこで、Stanley-Reisner環の第2Betti数が係数体に依存しないことを示した。これは、Bruns-Herzogによって、最初に環論的に示されたが、Alexander双対定理を用いてトポロジカルな短い証明を与えた。
一般には第3Betti数は係数体に依存するのであるが、イデアルが次数2の単項式で生成されているならば、第3及び第4Betti数も係数体に依存しないことを示した。