共同研究・競争的資金等の研究 - 横谷 尚睦
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超秩序構造物質のマクロスケール物性と局所電子状態の計測
研究課題/領域番号:20H05882 2020年11月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A) 学術変革領域研究(A)
石川 毅彦, 橋本 由介, 横谷 尚睦, 室 隆桂之
配分額:189800000円 ( 直接経費:146000000円 、 間接経費:43800000円 )
微小重力環境を用いた酸化物融体の熱物性計測においては、国際宇宙ステーションに搭載した静電浮遊炉を用いてMgO-SiO系およびLa2O3-Nb2O5系について、組成を変えて融体の密度、表面張力、粘性係数の測定に成功した。また、2400℃以上の融点を持つ希土類酸化物(Tm2O3、Lu2O3及びYb2O3)について融体密度の測定に成功した。
軟X線光電子ホログラフィー分光装置を用いて、BiS2系超伝導体を中心に機能性材料の局所構造研究を進めた。エキゾティック超伝導体候補物質であるLa(O,F)BiSe2超伝導体の研究では、SnおよびPb置換により超伝導特性の向上した試料の光電子ホログラフィー実験とその解析を行った。Sn置換試料については、SnがBiサイトに置換することに加え、その価数が+2価であることを突き止めた。これらのデータは、超伝導特性向上の理由を考える上で基礎データとなる。Pb置換試料については、光電子ホログラフィー実験を行い、全ての構成元素についてホログラムを得ることに成功した。加えて、RE(O,F)BiSe2のEXAFS研究からは、BiS2層の強誘電的歪みのRE依存性を明らかにした。更にSPrin-8実験の効率化のため、試料の事前評価のための装置のアップグレードを進めた。
硬X線対応の光電子ホログラフィー分光装置の開発については、装置の設計、部品の購入等の準備作業を計画通り進めている。次年度以降組み立て及び性能評価を進め、次々年度に予定しているSPring-8搬入に向けて予定通り作業を進めている。 -
高性能計算統計による物性実験データからの情報抽出と計測デザイン
研究課題/領域番号:20K20522 2020年07月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓) 挑戦的研究(開拓)
大槻 純也, 中西 義典, 吉見 一慶, 横谷 尚睦
配分額:25870000円 ( 直接経費:19900000円 、 間接経費:5970000円 )
本研究の目的は、物性実験から物理情報を抽出するため、高性能計算統計の方法論に基づく新しい解析手法を確立すること、また、その解析結果を実験にフィードバックさせた高効率な実験計画法を提案することである。この目的の達成に向けて、本年度は以下の研究を実施した。
(1) X線を物質に照射した際に起こるコンプトン散乱のデータは、物質中の電子の運動量分布の情報を持っている。このデータは運動量分布を散乱軸に射影したものに対応するため、運動量分布そのものを得るには、コンピュータ画像診断法(CT)と同様の再構成が必要となる。しかし、測定で得られる情報が十分でないため、1次元データから3次元の運動量分布を再構成することは困難である。この問題に対して圧縮センシングを応用することで、新しい運動量分布再構成法を考案した。リチウム金属に対する第一原理計算データを用いた検証を行い、この新しい方法により、これまでよりも精度よく運動量分布を再構成できることを確認した。この成果は、電子のフェルミ面測定としてはそれほど応用されてこなかったコンプトン散乱の応用を広げるものである。
(2) 成果(1)の方法論を実際の実験データに応用してその有用性を検証するため、実験研究者と議論を進めている。計算プログラムをより広範な実験データに応用するため、プログラムのインターフェースとマニュアルの整備を行った。
(3) 角度分解光電子分光(ARPES)の実験データから計算統計の方法によって情報を抽出する新しい方法論について、前年度に引き続き議論を行った。ARPESスペクトルからバンド計算等の結果を使わずにエネルギー分散を導く「エネルギー分散決定法」の定式化について、より詳細な検証を行った。 -
バルク敏感・高分解能スピン分解光電子分光によるハーフメタルにおける多体効果の研究
研究課題/領域番号:20H01853 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
横谷 尚睦
配分額:10530000円 ( 直接経費:8100000円 、 間接経費:2430000円 )
本研究課題では、我々が世界に先駆けて成功したハーフメタルにおける多体効果の観測をさらに推し進め、ハーフメタルの特異な多体電子状態の解明を目指して、バルク敏感・高分解能スピン分解光電子分光を主たる実験手法として、ハーフメタルおよびハーフメタル候補物質のスピン分解電子状態を実験的に明らかにすることを研究目的とする。
2021年度は、CoS2においてスピン分解角度分解光電子分光により実験的に観測されたスピン状態に依存したバンドリノーマリゼーション効果に対して、バンド計算およびDMFT計算との比較をさらに進め、論文として投稿した。
ハーフメタルにおける特徴的な多体効果の結果として現れるNQP状態に対する理解を深めるためには、NQP状態の運動量依存性を観測することが重要である。角度積分スピン分解光電子分光測定からNQP状態が観測されたCrO2において、NQP状態の運動量依存性を測定するための準備を進めた。エネルギー分解能の高い真空紫外角度分解光電子分光での準粒子バンドの観測を可能にするために、グローブボックスを立ち上げるとともに試料移送用真空槽を作製し、合成試料を大気に曝すことなく光電子分光測定ができるような環境を整えた。これにより、真空紫外角度分解光電子分光により明瞭なバンド分散を観測することに成功した。これらを用いて真空紫外線ARPESにより運動量分解した電子構造の温度依存を測定する予定である。
ハーフメタル物質であるマンガン酸化物に対するスピン分解光電子分光測定を開始した。 -
第三世代放射光先端顕微分光によるエキゾティック超伝導候補物質の電子/局所構造研究
2018年10月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費補助金
横谷 尚睦
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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転移温度向上を目指したダイヤモンド超伝導体の三次元ドーパント構造解明
2017年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費補助金
横谷 尚睦
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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複数モード光電子分光による新規BiS2系層状超伝導体の電子構造の研究
2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費補助金
横谷 尚睦
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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Ce近藤半導体の特異な磁気秩序とリフシッツ転移
研究課題/領域番号:26400363 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
高畠 敏郎, 梅尾 和則, 木村 真一, 横谷 尚睦, 浴野 稔一
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
なぜ近藤半導体CeT2Al10 (T=Ru,Os)は28 Kという異常に高い温度で反強磁性秩序するのかを解明するために,T=Osの系に4f正孔,5d正孔,5d電子をドープした三種類の試料を作製して,電子状態の変化をバルク測定,トンネル分光,光反射分光,光電子分光,中性子散乱で調べた。その結果,ドープによる4f電子状態の変化は三者三様であったが,共通点が見出された。即ち,温度低下とともに混成ギャップが形成され,フェルミ準位での電子状態密度の減少する割合が急激になった後に,磁気秩序が起きる事であった。そこで,フェルミ面の一部消失が特異な磁気秩序を誘起するというリフシッツ機構によるモデルを提案した。
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正逆光電子分光による芳香族炭化水素超伝導体の電子構造研究
2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費補助金
横谷 尚睦
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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固体中の化学結合の生成と切断を利用した格子コラプス型アクチュエータの創製
研究課題/領域番号:24654106 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
野原 実, 工藤 一貴, 横谷 尚睦
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
鉄系超伝導の基本物質CaFe2As2における格子コラプス転移、すなわち結晶のc軸方向へのヒ素の化学結合形成に伴う急激かつ巨大な軸長の収縮を利用したアクチュエータの創製に取り組んだ。様々な化学種をドープした単結晶試料における格子コラプス転移を調べた結果、Rhをドープした場合に300 Kで格子コラプス転移が生じ、温度を制御パラメータとしたアクチュエータ動作が可能であることが明らかになった。
副産物として3つの超伝導体を発見した。LaとPをコドープしたCaFe2As2、Ca10(Ir4As8)(Fe2As2)5、LaをドープしたCaFeAs2である。 -
ピセン超伝導体の超伝導機構の解明
研究課題/領域番号:23340104 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
神戸 高志, 久保園 芳博, 横谷 尚睦
配分額:18980000円 ( 直接経費:14600000円 、 間接経費:4380000円 )
アルカリ金属をドープしたピセン超伝導体の物性研究を中心に進めた。2つの超伝導相において、(1)c軸方向の格子定数が異なること、(2)転移温度の圧力変化が異なることを見いだした。超伝導に最適な組成比はK3piceneであることがわかった。また、超伝導試料の電気抵抗測定から超伝導転移とゼロ抵抗の観測に成功し、バルクの超伝導体であることを示した。分子内電子格子相互作用の計算では、この系の超伝導が分子由来のフォノン機構で説明可能であることを示した。
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ミクロな分子とマクロな固体での反磁性超電流の関連性の解明と室温超伝導実現への応用
研究課題/領域番号:23540482 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
加藤 貴, 久保園 芳博, 神戸 高志, 横谷 尚睦
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
最近、ドイツ、ライプチヒ大で水中撹拌グラファイトの室温超伝導発現の兆候が報告された。この物質の室温超伝導発現は我々のグループにより2008年に理論予測されていた。この現象は我々が提唱した理論で説明出来る事を改めて示した。また、一方で、一分子内ベンゼン内でクーパー対発見の報告が、スイス、Paul Scherrer研究所、アメリカ、ウィスコンシン大からあった。この現象は、我々が2007以降、提案していたメカニズムで説明出来ることを示した。上記、2つの研究を組み合わせて、固体室温超伝導は「夢」ではなく「後、1歩の工夫で届く範疇」にまでくるところまで進展させた。
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強相関電子物性が制御可能な光キャリア注入法の確立
研究課題/領域番号:23540410 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
村岡 祐治, 横谷 尚睦
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
研究成果の概要(和文):遷移金属酸化物薄膜への光キャリア注入および対象薄膜の電子状態の研究を行った。軟X線照射によって生じるVO2薄膜の絶縁体-金属転移では、V3dへの電子キャリア注入を見出し、酸素脱離による金属化という転移モデルを提案した。VO2薄膜のARPESにより表面の金属相フェルミ面マッピングに成功し、ネスティングの存在を示した。密封系CVD法により作製したCrO2薄膜では、再表面近傍まで金属的であることを明らかにした。単一相TaO2薄膜やスピノーダル分解した(V,Ti)O2薄膜などの物質開発にも成功した。
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空間反転対称性を破る電子流体の新奇現象
研究課題/領域番号:22103004 2010年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
鄭 国慶, 上野 和紀, 瀬川 耕司, 野島 勉, 稲田 佳彦, 獅子堂 達也, 安藤 陽一, 永長 直人, 岩佐 義宏, 花栗 哲郎, 長田 俊人, 俣野 和明, 横谷 尚睦, 安藤 陽一
配分額:246870000円 ( 直接経費:189900000円 、 間接経費:56970000円 )
空間反転対称性の破れとスピン軌道相互作用が協奏した系において、様々なトポロジカル量子現象を観測・解明し、以下のような成果を得た。空間反転対称性の破れた超伝導体において、スピン三重項成分を増大させる要因を突き止めた。新種のトポロジカル絶縁体を発見し、また、ドープしたトポロジカル絶縁体CuxBi2Se3がスピン三重項超伝導状態にあることを明らかにした。さらに、化学ドープの手法では超伝導転移を示さないKTaO3おいて電場誘起法により超伝導を発見した。
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重い電子系の形成と秩序化の総括
研究課題/領域番号:20102001 2008年11月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
上田 和夫, 堀田 貴嗣, 榊原 俊郎, 三宅 和正, 播磨 尚朝, 横谷 尚睦, 籐 秀樹, 石田 憲二
配分額:89960000円 ( 直接経費:69200000円 、 間接経費:20760000円 )
新学術領域研究「重い電子系の形成と秩序化」(平成20年度から平成24年度)の最終年度の研究成果について、公表された論文リストおよび国内学会あるいは国際学会等における発表について取りまとめを行った。これらの基礎データに加え、研究活動報告、特許出願状況などを加え、冊子体の成果報告書をまとめ印刷した。この成果報告書は当新学術領域研究の計画研究代表者、研究分担者、公募研究代表者に配布したほか、関連研究分野の有識者にも見ていただけるよう送付した。この冊子体については正式の成果報告書として6月に文科省に提出する予定である。
当新学術領域研究のホームページhttp://www.heavy-electrons.jpに関しては、上記の論文リスト、学会発表等のデータを含むよう更新した。重い電子系に関する研究は今後もさらに発展していくことが期待される。それに資することが出来るように、研究期間終了後もホームページを閲覧できる状態にして研究成果の公開を継続する体制を整えた。
当新学術領域研究の研究テーマと密接に関連する強相関電子系国際会議は平成25年8月5日から9日まで東京大学伊藤国際研究センターにおいて開催された。この会議の参加者は809名に上った。4つの基調報告を含む46件の招待講演、52件の口頭発表が伊藤謝恩ホールを主会場とし経済学部赤門総合研究棟の大講義室を第二会場として、パラレルセッションで講演が行われた。口頭発表のほか、639件のポスター発表が行われた。当新学術領域研究での研究成果が多数報告された。 -
先端光電子分光によるf電子系化合物の高精度バルクフェルミオロジー
2008年10月 - 2012年03月
文部科学省 科学研究費補助金
横谷 尚睦
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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ダイヤモンド超伝導体とその関連物質の電子状態:バンド半導体-金属転移と超伝導
2008年04月 - 2011年03月
日本学術振興会 科学研究費補助金
横谷 尚睦
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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光キャリア注入による金属酸化物の物性制御
研究課題/領域番号:20540356 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
村岡 祐治, 横谷 尚睦, 辛 埴
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
光キャリア注入法による、金属酸化物薄膜の物性制御を目指した。VO_2/TiO_2(001)では、光電子分光を用いた電子状態の研究から、界面に固溶体が生成していること、物性制御には界面構造の制御が重要であることがわかった。SnO_2では紫外線照射により、伝導度の大きな変化を観測した。光キャリア注入法の対象物質の開発も行った。密封系化学気相成長法を開発し、高品質なCrO_2強磁性金属膜を作製した。また、ホランダイト型チタン酸化物を作製し、室温強磁性的な振る舞いを発見した。
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炭素系化合物の物質探索
研究課題/領域番号:19051014 2007年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
高野 義彦, 長尾 雅則, 川江 健, 水口 佳一, 山口 尚秀, 津田 俊輔, 横谷 尚睦
配分額:41700000円 ( 直接経費:41700000円 )
ダイヤモンドやカーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素化合物や配列ナノ空間を有する鉄カルコゲナイド化合物について、試料合成およびキャリア制御等を施し、絶縁体から金属へ、金属から超伝導へと劇的な物性の変化を実現した。
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超伝導ボロンドープダイヤモンドにおける金属-非金属転移と超伝導
研究課題/領域番号:19014018 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
高野 義彦, 山口 尚秀, 津田 俊輔, 西嵜 照和, 横谷 尚睦, 中村 仁
配分額:6600000円 ( 直接経費:6600000円 )
ダイヤモンドの超伝導は半導体に起こる珍しい超伝導体である。マイクロ波CVD法でホウ素濃度を制御した薄膜試料を作製し、そのホウ素濃度と金属絶縁体転移の関係を検討した。これまでの実験で、超伝導転移温が超薄膜の場合低くなってしまい、Tcの不均一性があった。そのため金属絶縁体転移の濃度を決定することが難しかった。最近、40nmの超薄膜でもバルク並みのTcが得られるようになり、均一な膜による金属絶縁体転移を3He冷凍機で検討した。ホウ素濃度にして3e20cm-3から金属的伝導が現れ、ほぼ同時に超伝導転移が発現することが分かった。Tcは膜厚と共に増加し、膜厚が約100nmを超えるとTcはバルク並になり一定になることを見出した。超薄膜でTcが下がる理由社、基板による圧力効果や超伝導の薄膜効果があるものと考えられるが詳しいことは検討中である。3He冷凍機を用いた低温、超高真空走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、最低温度T=0.35Kにおいて走査トンネル分光(STS)測定を行った。Tc=5K程度の(110)配向エピタキシャル薄膜を中心に実験を行った結果、コヒーレンスピークが鋭い明瞭な超伝導スペクトルを得た。また、磁場中でSTS測定を行うことやボロンドープダイヤモンドにおける渦糸量子の観測に成功し、渦糸グラス状態が実現していることを明らかにした。
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超伝導ボロンドープダイアモンドにおける電子状態の研究
研究課題/領域番号:17038010 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
山田 修義, 阿部 浩二, 高野 義彦, 横谷 尚睦
配分額:4800000円 ( 直接経費:4800000円 )
本研究では、MPCVD試料を使い、1:超伝導転移温度のボロン濃度依存性の研究。2:軟X線を利用した電子構造の研究。3:ラマン実験による、格子のソフト化の評価を行い、超伝導発現機構について研究した。
1:(111)と(100)の2種類のダイアモンド基板でのホモエピタキシャル試料を作製した。(100)基板では、高濃度に入れた試料でも、Tcは4K以上にはならない。一方、(111)基板に成長させた試料では、TcがOnsetで、114Kで、0(ゼロ)抵抗のTcが7.4Kの試料の作製に成功した。(111)基板に成長させた試料は、(100)基板に作製した試料に比べ、高いTcを持つことがわかった。
2:BDDの超伝導の起源には、二つの理論が提出された。一つは、強い電子格子相互作用が、超伝導の起源であるとするもの。もう一方は、不純物状態でのRVB機構が、超伝導の起源であるとするものである。軟X線による、吸収・発光分光実験を行った。非超伝導試料では、不純物状態Iと価電子帯とは、分離していると考えられるが、超伝導試料では、スペクトルの半値半幅は0.8eVで、不純物準位Iと価電子帯最高エネルギーとの差0.37eVより大きく、不純物状態は価電子帯と混成していて、孤立しているとは考えられない。次に、軟X線角度分解光電子分光(SXARPES)を行った。ボロン濃度が濃くなるにつれて、フェルミ準位が価電子帯の中に入り込み、価電子帯にホールが形成されることが、示された。以上2つの軟X線分光実験による電子構造の研究から、超伝導の起源は、強い電子格子相互作用であると考えられる。
3:ラマン散乱を測定した。Bの濃度が増すにつれ、価電子帯のホールの対称性と同じ対称性の格子振動が強くソフト化することが、わかった。しかし、第一原理計算による予測に比べて、ソフト化の程度は少なかった。ラマンの結果は、Hoesch等による放射光を利用した格子振動のソフト化を測定した実験結果と一致している。超伝導が、強い電子格子相互作用によるものであることを示している。