共同研究・競争的資金等の研究 - 吉村 浩司
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2024年 - 2029年
科学技術振興機構 戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 CREST
吉村 浩司
本研究ではレーザー励起が可能な唯一の原子核トリウム229を用いて、原子核時計の開発とその応用を目指します。外場の影響を受けにくいという特徴を活かした、2つの方式、固体原子核時計とイオントラップ原子核時計の実現を、国内の幅広い分野の研究力を結集・融合することで達成します。これにより、原子核時計という新しい量子計測技術を確立し、革新的な応用を目指します。
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レーザーによるコヒーレントな原子核操作の実現ー原子核時計の創成と応用に向けて
研究課題/領域番号:21H04473 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
吉村 浩司, 北尾 真司, 菊永 英寿, 重河 優大, 笠松 良崇, 山口 敦史
配分額:42250000円 ( 直接経費:32500000円 、 間接経費:9750000円 )
本研究では、以下のような研究項目に対して、段階的かつ相互に連携しながら研究をすすめることにより、世界に先駆けてレーザー励起を達成し、コヒーレントな原子核操作を実現し、研究目的の達成を目指す。以下にそれぞれの研究内容について本年度の研究成果を述べる。
【能動的アイソマーの生成法の進化による真空紫外光の観測】 理論で予測されるアイソマーのエネルギー、寿命に対して、バンドパスフィルターの波長選択特性、測定時間を変化させることにより、系統的に真空紫外光の探索を行った。これまで探索した領域では真空紫外光は観測されておらず、今後さらに測定範囲を拡大するために、測定装置、光学系の改良を行った。放物面鏡を用いた光学系を開発して、真空紫外光を伝送することにより照射中にも測定を行い、アイソマーが極めて短寿命の場合にも観測できるようにした。また、X線のエネルギ-を単色化するモノクロメータについて、窒素冷却により高精度化したものを開発し、X線のエネルギー幅を従来の1/10に狭めて、バックグランドを減少させることに成功した。
【化学状態に支配された229mTh 核壊変の解明】 能動的アイソマー生成法で用いる核共鳴散乱観測をより効率よく進めるための、Th標的を開発した。作成に使用した手法は「沈殿法」および「インクジェット法」で、従来の3倍程度の標的密度を有し、より効率よく、高精度で共鳴エネルギーを決定することが可能になった
【イオントラップを用いた229Th 原子核時計基盤技術の確立】 イオントラップ用の波長1088 nm, 690 nm, 984 nm の半導体レーザーの開発およびイオントラップに必要な装置の開発を行った。これまでにTh-229の同位体であるTh-232を用いたトラップ実験には成功しており、その結果をもとに、Th-229のトラップを進めていく -
Electron electric dipole moment search by using polarized ultracold molecule s
研究課題/領域番号:21H01113 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
DOYLE JOHN, 吉村 浩司, 増田 孝彦
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
As for the photodetector development, we have procured various items for mass production. For example, we procured photosensors (Silicon photomultiplier: SiPM) which are the most important part of the detector. We got relatively low-dark count individual sensors. Since suppressing the dark count is one of the crucial points in the development, we plan to cool the SiPMs below the dew point, the low-dark count individuals mitigate the cooling requirements of the detectors.
In order to mitigate stray light from the readout laser scattering, we procured 2 pieces of custom-made interference bandpass filters, which have a great extinction ratio between ~510nm (signal wavelength) and longer than 700 nm (background wavelength) for a prototype test. Based on the test, we confirmed that the stray light suppression ratio is high enough while keeping over 90% transmission for the signal wavelength.
We also prepared various peripheral hardware such as parts of preamplifier boards and assemblies, and vacuum feedthrough assemblies.
Mass production has already been launched in this period and will be finished probably at the beginning of the next fiscal year. We are also constructing operating software and hardware in parallel. -
冷却極性分子の量子操作による電子の永久電気双極子モーメント探索
研究課題/領域番号:20KK0068 2020年10月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
増田 孝彦, 吉村 浩司, 植竹 智
配分額:18720000円 ( 直接経費:14400000円 、 間接経費:4320000円 )
冷却ThO分子を用いた電気双極子能率探索の感度向上のための光検出器の開発では、基礎設計が完了し量産プロセスを開始することができた。以下に主だった進展を述べる。
1. 16channelをアナログサムする回路系の設計が完了した。2. 真空チェンバの温度サイクルによる光学窓接着部の剥離が確認された。この解決のため、接着部の設計変更、および接着剤の再選定を行い、60度程度までの温度上昇では剥離しないよう改善した。さらにインターロック機構の導入で、そもそもチェンバに温度サイクルが起こらないように対策した。3. 本実験ではミリ秒程度のパルス信号が頻度50Hzで発生するが、それによるバイアス電圧の変動と信号ベースラインの変動が確認された。バイアス印加に用いる電源を再選定しバイアス電圧の変動を抑制、バイアス回路を読み出し回路の調整で信号ベースラインの変動を緩和し問題ないレベルまで抑え込むことができた。4. 線形性、ノイズ、ダークカウント、冷却性能などはこれまでの設計で問題ないことを確認しており、本年度もそれを再確認している。5. 2021年8-9月に米国に試作機を持参し、実際に冷却ThO分子ビームの蛍光観測を実施した。従来用いていた光電子増倍管に比べ検出光量が2.7~3倍程度に増加しており、本研究開発の動機である検出光量の増加を確認した。
以上のプロセスを経て基礎設計開発は終了し、2021年末から量産体制に移行することができた。量産プロセスは次年度まで継続する予定である。 -
研究課題/領域番号:20H05634 2020年08月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
清家 章, 鈴木 茂之, 山口 雄治, 居島 薫, 白木 一郎, 光本 順, 野崎 貴博, 永嶺 謙忠, 福永 伸哉, 吉村 浩司, 南 健太郎, 三宅 康博, 野坂 俊夫, 鳥養 映子
配分額:195650000円 ( 直接経費:150500000円 、 間接経費:45150000円 )
研究開始時点では想定できなかった長期にわたる新型コロナウィルスのパンデミックの影響を受けて、フィールド調査のいくつかは計画の順番変更を余儀なくされたが、困難を乗り越えておおむね順調、一部計画を先行して進めることができた。本研究はミュオン班・墳丘班・埴輪班の3つの班によって実施されている。それぞれの班ごとに研究経過を報告する。
ミュオン班:2020 年度は、古墳研究に適用するミュオン検出器の設計を検討し、検出器製作の基本方針を定め、製作を開始した。
墳丘班:墳丘班による三次元計測は、岡山市造山古墳周辺、総社市作山古墳で実施している。総社市鳶尾塚古墳の三次元計測も完了している。赤磐市両宮山古墳については、赤磐市教育委員会から三次元データを提供していただき、当初予定していた吉備三大古墳の墳丘三次元データを初年度で入手したことになる。次いでそれぞれのデータ整理を開始している。また、鳶尾塚古墳では墳丘の発掘調査を実施し、直径23mの円墳であることが推定されるに至っている。
埴輪班:造山古墳、両宮山周辺古墳(赤磐市森山古墳、同・宮山 4 号墳、同・岩田 3 号墳)と倉敷市二万大塚古墳出土埴輪の資料を所蔵機関から入手し、光学・電子顕微鏡による微細組織観察、X 線回折装置による鉱物同定、および電子線マイクロアナライザ・蛍光 X 線分析装置による化学分析を実施した。その結果、胎土には主に風化花崗岩起源の鉱物粒子と広域テフラ起源のガラス粒子が含まれており、それらの組成から生産地を特定できる可能性が示された。また、鉱物の熱変成と融解の程度により、野焼きと窖窯における焼成温度が見積もられた。埴輪の考古学的観察も並行して進め、造山古墳と畿内王陵系埴輪の比較研究を実施している。 -
ミュオンラジオグラフィを用いた巨大古墳調査法の開発にかかる研究
研究課題/領域番号:20H00027 2020年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
清家 章, 鈴木 茂之, 居島 薫, 白木 一郎, 光本 順, 永嶺 謙忠, 福永 伸哉, 吉村 浩司, 南 健太郎, 三宅 康博
配分額:45370000円 ( 直接経費:34900000円 、 間接経費:10470000円 )
考古班は、岡山大学が作成した岡山市造山古墳3次元測量データ3種類と赤磐市が作成した両宮山古墳の3次元測量データを入手し、それぞれの古墳の測量データがミュオンラジオグラフィにおける解析とシミュレーションに適切な精度を有しているか検討を進めた。造山古墳では3種のデータのうち、より適切なデータを選択した。両宮山古墳では座標データから等高線を復元し、ミュオンラジオグラフィの解析に備えている。岡山市造山古墳のミュオンラジオグラフィ調査に備え、岡山市教育委員会ならびに地元保存会と協議を実施し、基本的に協力を取り付けている。
ミュオン班の今年度の課題は、3段構造を持つ古墳の中段まで人力で運搬可能なコンパクト可搬型ミュオン検出器の開発である。(1)波長変換ファイバー入りプラスチックシンチレータと光半導体デバイス(MPPC)の組合せによるカウンターの効率と実装法を確認するため、技術的に確立している光電子増倍管と比較してカウンター単体の予備実験を実施し、部品と材料の調達を開始した。(2)露天の測定環境に耐え得る防水、防砂、温調機能を持つ検出器の構造・構成を検討するため、文献調査、福島原発等の検出器開発者らとの情報交換、予備実験を繰り返し、基本設計を進めた。(3)考古班からの詳細情報に基づくシミュレーション解析を進めた。
本研究費で購入した光電子増倍管、波長変換ファイバー、データ解析用パソコン等を予備実験に活用した。検出器筐体の構造や設置場所の検討に必要な現地環境調査は、所属部署の県外出張自粛要請のために断念した。
検出器の開発ならびに考古班の作業は基盤Sに引き継いで実施中である。 -
トリウム229極低エネルギーアイソマーの解明と基礎物理への応用
研究課題/領域番号:18H01230 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
吉村 浩司, 笠松 良崇
配分額:17290000円 ( 直接経費:13300000円 、 間接経費:3990000円 )
高性能標的と改良したX線計測システムを用いて,高輝度放射光施設SPring-8において実験を遂行し,第二励起準位の核共鳴散乱を観測し,トリウム229を基底状態から能動的に励起することに成功した。これにより,第一励起状態(アイソマー状態)への遷移を能動的に制御することが可能になり,アイソマーからの真空脱励起光観測への大きなステップが達成された。
【X線エネルギーモニタ】シリコン標準結晶を用いてX線のエネルギーを精密にモニタする装置(ボンド法)を産業総合研究所,理化学研究所と共同で開発し,共鳴エネルギー探索の際のエネルギースキャンにおけるX線エネルギーの不定性を0.07 eV以下に減らすことに成功した。
【トリウム229の能動的な核励起に成功】9個のAPD(アバランシュフォトダイオード)をアレイ状に配置したセンサを用いて,優れた高速応答性を確保しつつ立体角を増加させたシステム,および大阪大,理研と共同で開発したトリウム標的,および高精度エネルギーモニターを用いてSPring-8で実験を行い,第二励起準位の核共鳴散乱を観測し,その寿命を求めることに成功した。トリウム229を基底状態からX線により能動的に励起したのは世界でも初である。
【真空紫外光の観測の予備テスト】共鳴エネルギーに合わせたX線を照射することで,能動的に生成されたアイソマー状態(第一励起状態)から放出する真空紫外光の観測を開始した。標的としは真空紫外光に対して透過性のある光学結晶(トリウムをドープしたCaF2)を用いて,微小な光を集光する光学系を構築して,予備テストを行い十分な性能を発揮していることを確認した。 -
トリウム229アイソマー極低エネルギー準位の決定とその特異性の究明
研究課題/領域番号:15H03661 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
吉村 浩司, 吉見 彰洋, 笹尾 登, 山口 敦史, 瀬戸 誠
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
原子核としては異常に小さい eV オーダーのトリウム-229アイソマー準位を,高輝度放射光 X 線および高速検出器系による核共鳴散乱を用いた新しい手法で探索した。そのための高時間分解能高速応答X線計測システム,高性能標的システム,X線集光システムを開発し,従来では困難であった1 ns以下の短い寿命の高精度な核共鳴データを取得することに成功した。
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研究課題/領域番号:15H02093 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
笹尾 登, 吉村 浩司, 吉村 太彦, 田中 実
配分額:42510000円 ( 直接経費:32700000円 、 間接経費:9810000円 )
本研究の最終目標は原子を用いるという世界に先駆けた方法により、ニュートリノの未確定重要パラメータを包括的に決定することにある。そのため原子や分子の励起準位からの光を伴うニュートリノ対放出過程に注目する。実験で鍵を握るポイントは量子干渉効果によるレートの増幅である。本研究では水素分子振動励起準位からの二光子対超放射過程を用いて、当該増幅機構の詳細を実験的に研究した。その結果、通常のラマン型励起による対超放射過程に加え、対向型励起等によっても当該過程を観測することに成功した。これらの結果は理論予想と概ね一致する。また理論面では背景過程除去法や初期位相印加により実験感度が向上することを発見した。
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大強度ビームの2次元プロファイルとビームハローの超高感度同時計測装置の開発
研究課題/領域番号:24310079 2012年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
橋本 義徳, 外山 毅, 堀 洋一郎, 吉村 浩司, 武藤 豪
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
J-PARCメインリングの大強度ビームのための測定装置の具体的設計と部分的製作を行った.内容は次の5点に要約される.(1) ビーム条件の検討及びバックグラウンドの測定から,十分な信号対ノイズ比を確認した.(2) 真空内で使うアルミ製主光学系を開発した.(3) リングの真空環境を悪化させない真空機器とインターロックの設計を行った.(4)ビームから見た装置のインピーダンスの計算を行い,ビームへ悪影響を及ぼす因子のないことを確認した.(5) 測定系を他のプロファイルモニターに使用しその有効性を実証した.真空容器の製作をH28年度中に行い,大強度ビームの測定を開始する予定である.
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研究課題/領域番号:22340061 2010年04月 - 2013年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
西嶋 恭司, 櫛田 淳子, 吉村 浩司, 梶野 文義, 佐々木 修, 中家 剛
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
3mm×3mm(50μm)MPPCの基礎特性を調べた結果、温度特性として-3.1×10^4/℃,が得られた。また、ダークノイズを主とするノイズレートは,超過電圧,温度に依存していること,クロストーク発生確率の超過電圧特性は指数関数と一次直線の和で表せること,クロストークとアフターパルスの和の発生確率の超過電圧特性は温度に依存しないことなどが確かめられた。3mm×3 mm(50μm)MPPCを4×4並べたディスクリートアレイ4個でプロトタイプカメラを作成し、小型の大気チェレンコフ望遠鏡で観測を試みたが、チェレンコフ光を検出することに成功しなかった。理由として、MPPC信号のパルス幅に比べてトリガーレートが高過ぎたことが上げられる。
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長時間気球観測データを用いた宇宙線反重陽子・反ヘリウムの精密探索
研究課題/領域番号:22540322 2010年04月 - 2013年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
吉村 浩司, 長谷川 雅也, 山本 明, 坂井 賢一, 佐々木 誠
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究では、BESS-Polar IIの観測データを用いて反重陽子および反ヘリウムの探索を行った。南極から回収した測定器を用いた検証を行うことにより、実験中に生じた様々な問題について知見を得て、新たな較正により測定器性能を向上させることができた。従来に比べ1桁上の感度での探索を行った結果、観測データ中には反重陽子、反ヘリウムは観測されなかった。反ヘリウムに関しては、過去のBESS実験のデータと合わせる事により、BESS以前の結果にくらべ、1000倍の精度での探査結果となり、我々の周りに反物質優勢の世界がないことの最も直接的な証拠をあたえることとなった。
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大強度パルス化ミューオンビームの開発によるレプトンフレーバー物理の新展開
研究課題/領域番号:22340065 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
三原 智, 西口 創, 青木 正治, 吉村 浩司
配分額:7410000円 ( 直接経費:5700000円 、 間接経費:1710000円 )
2008 年度より供用運転が開始された大強度陽子加速器施設(J-PARC)において、高純度大強度パルス化ミューオン源の開発を推進し、素粒子物理学の新たな領域を開拓するための基礎研究を推進した。本研究で行ったパルス化ミューオン源の開発にあたっては、隣り合う2つのパルス間にビーム粒子の漏れ出しがないことが重要である。このため、本研究では独創的な方法によるパルス形成方法の開拓とビーム診断方法の開発を行った。
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研究課題/領域番号:21104002 2009年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
笹尾 登, 中野 逸夫, 吉村 太彦, 福見 敦, 若林 知成, 田中 実, 桂川 眞幸, 南條 創, 川口 建太郎, 唐 健, 久保園 芳博, 谷垣 勝己, 中嶋 亨, 吉村 浩司, 吉見 彰洋, 植竹 智, 久間 晋, 谷口 敬, 南條 創
配分額:411840000円 ( 直接経費:316800000円 、 間接経費:95040000円 )
「マクロコヒーランス増幅」は原子を用いたニュートリノ質量分光計画にと極めて重要な増幅機構である。本研究の最大の成果は、水素分子振動励起状態(v=1)からの二光子放射過程を用いて原理検証実験を行い、期待通りの結果を得たことにある。具体的には、断熱ラマン過程を用いて振動励起準位に励起し、二光子コヒーラント放射が観測された。この結果自然放射過程に比較し、15桁以上の巨大な増幅効果が確認された。これにより原子を用いたニュートリノ質量分光の道を大きく切り開くことが出来た。この他、多様な原子分子を用い超放射過程の詳細研究や位相緩和の研究などニュートリノ質量分光に対する基礎研究を行った。
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長時間飛翔観測による一次宇宙線スペクトルの短期過渡変動の研究
研究課題/領域番号:19340070 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
吉村 浩司, 長谷川 雅也, 山本 明, 槇田 康博
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
BESS-PolarII測定器の中で飛跡検出器のガス制御システム、圧力センサーについて改良を施し、2007年12月~2008年1月にかけて、南極周回飛翔実験を実施した。24.5日間の気球飛翔観測により、約47億事象の宇宙線を観測することに成功した。測定器全般の較正を行って宇宙線事象の選別を行い、較正された温度、圧力センサ等のデータを用いて補正を行った後、一次宇宙線(陽子)のスペクトルを求め、短期的な日々のスペクトルの強度変化と太陽風との相関を精度よく求めることができた。
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南極周回飛翔超伝導スペクトロメータによる太陽活動極小期の宇宙起源反粒子探査
研究課題/領域番号:18104006 2006年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
山本 明, 吉村 浩司, 槙田 康博, 野崎 光昭, 長谷川 雅也, 吉田 哲也
配分額:104260000円 ( 直接経費:80200000円 、 間接経費:24060000円 )
南極周回飛翔超伝導スペクトロメータを用いた太陽活動極小期(2007-2008年)の宇宙線観測の成功により、宇宙線反粒子、反物質に関する研究が飛躍的に発展した。(1)宇宙線反陽子(<1GeV)二次粒子として整合性を持ち、(2)S.Hawkingによって予言された原始ブラックホール(PBH)及びその蒸発を起源とする宇宙線反陽子を示唆する観測はされず、偏差、7シグマ以上の分離レベルで、その存在上限を下げ、(3)宇宙における物質・反物質存在比の非対称性の検証を進め、反ヘリウム/ヘリウム存在上限比として、<7x10E-8を得た。BESS実験を通して、二桁以上探索感度を高める成果を得た。
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研究課題/領域番号:18340065 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
佐藤 朗, 石元 茂, 鈴木 祥二, 久野 良孝, 森 義治, 吉村 浩司, 板橋 隆久, 吉田 誠, 大木 俊征
配分額:17790000円 ( 直接経費:15000000円 、 間接経費:2790000円 )
次世代の大型加速器計画であるニュートリノ・ファクトリーやミューオン・コライダーを実現するためには、ミューオン・ビームのイオン化冷却技術確立が重要である。本研究では、円形加速器を用いた効率の良いビーム冷却を目指し、現実的なビーム冷却リングの設計を検討した。このなかで、ビーム冷却やビームの入出射に必要な長いストレートセクションを持つレーストラック型FFAGを新しく提案し、それをビーム冷却リングへ応用することを検討し、また、くさび型超流動ヘリウム減速材の開発を進めた。
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ミューオン物理学の新展開を狙うスーパー・ミューオン・ビームの研究
研究課題/領域番号:15GS0211 2003年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術創成研究費 学術創成研究費
久野 良孝, 青木 正治, 佐藤 朗, 吉村 浩司, 大森 千広, 中野 貴志, 能町 正治, 菅谷 頼仁, 大木 俊征, 二宮 史郎
配分額:513500000円 ( 直接経費:395000000円 、 間接経費:118500000円 )
現在利用できるミューオン・ビームでは、その強度や性質はともに不十分であり、実験条件に厳しい制約を課している。そこで、我々は、ミューオン科学を飛躍的に発展させるために、ミューオン・ビームの強度を従来の約1万倍程度に増加し、かつ位相空間回転法という高輝度化の手法を施すことで、元々広いエネルギー分布を持つミューオン・ビームをエネルギーの揃った、いわゆる「スーパー・ミューオン・ビーム」という夢のミューオン・ビームを実現することを目指している。特に、大阪大学グループは、ミューオンを用いた素粒子物理学の研究を推進しており、本研究で開発されるスーパー・ミューオン・ビームを使って、荷電レプトンのレプトンフレーバー保存の破れを現在の実験精度を10^6倍ほど上回る精度で探索するPRISM/PRIME実験などを計画している。
本学術創成研究では、位相空間回転法という新しい高輝度化手法に必要な要素技術開発と同手法の原理検証を目的とした。まず、本手法に不可欠である超高電場勾配高周波加速システム、及び大口径固定磁場強収束型ミューオン蓄積リングの開発に成功した。さらに、これらを組み合わせた位相空間回転試験用リングを建設し、位相空間回転の原理実証実験を行った。これにより位相空間回転法に必要な基礎技術の開発が完了し、このリングでの試験により設計通りに荷電粒子が高輝度化されることを実証された。
これにより、次世代ミューオン科学の計画が大きく推進した。また、新しく考案したα線によるビーム光学評価手法も、加速器性能を簡便に正確に調べる新しい手法として高い評価を得た。これらの研究開発は、ミューオン科学の発展のみならず、将来の加速器計画(たとえば、ニュートリノ・ファクトリ計画やミューオン・コライダ計画など)への波及効果も大きく、多大な技術的貢献をなすものであり、本研究計画の成功は広く賞賛されている。 -
大強度高輝度ミューオン源のための電流収束型標的の開発
研究課題/領域番号:14204028 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
吉村 浩司, 小林 隆, 五十嵐 洋一, 西川 公一郎, 岩下 芳久, 西川 公一郎
配分額:55510000円 ( 直接経費:42700000円 、 間接経費:12810000円 )
本研究では、パイオン生成標的にパルス電流を流すことにより、生成した二次粒子を標的内部に収束し、エミッタンスの小さいビームを得るという「電流収束型標的」の実現を目指して以下のような技術開発を行った。
1,PRISM実験での要求を満たすパラメータを設定し、水銀を標的材料に用いた場合の基本設計を行った。原理実証を行うために必要な仕様を決定し、水銀循環装置、大電流パルス電源、大容量パルストランス等の装置を開発した。
2.大強度の陽子ビーム標的をデザインする際には、ビームによる標的への入熱量が重要なパラメータとなる。新たに開発したCryogenicカロリーメータを用いて,実際に標的にビームを当てた状況で入熱量を直接測定して、計算コードの有効性・精度を確かめた。
3.大強度ビーム、大パルス電流に耐えうる材料の選定は、標的開発におけるもっとも重要な課題の一つである。標的および標的容器の材料として有望な性質を持つ候補について、材料物性の測定と陽子ビームを照射することによる変化を測定した。
4.収束作用を確認するための手段として、二次粒子の位置・運動量をシンチレーティングファイバー測定器と超伝導磁石によって測定し、様々な運動量の粒子が混在するビームのエミッタンスを測定する方法を確立した。
以上のように、「電流収束型標的」の実現のために必要な技術的課題に取り組んだ。それぞれにおいて、シミュレーション/計算に頼るのではなく、可能なかぎり実験を行って直接検証を行った。これにより、「電流収束型標的」のみならず、一般的な標的技術、ビーム技術に対しても、知見を得ることができた。残念ながら、当初の目的であったビーム実験による収束作用の確認については、時間的な制約および加速器のシャットダウンもあり、3年間のスコープからは実現することができなかったが、ここで得られた成果をもとに早期実現を目指したい。 -
BESS測定器による宇宙線μ粒子絶対流束高度変化の精密測定
研究課題/領域番号:12047206 2000年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
佐貫 智行, 吉村 浩司, 笠原 克昌, 吉村 浩司, 野崎 光昭, 上田 郁夫, 佐貫 智行, 森下 伊三男
配分額:98700000円 ( 直接経費:98700000円 )
気球上昇中に超伝導スペクトロメータ(BESS)を用いて観測した宇宙線のデータを解析し、残留大気圧にして5〜800g/cm2に於ける大気μ粒子のスペクトルを精密に求め、μ粒子の強度が高度と共に変化する様子(いわゆる発達曲線)を得た。この発達曲線から、大気の上層ではμ粒子が生成され、高度が低くなるに従って崩壊していく様子を克明に捉えることができた。他の実験で得られた同種のデータと比較して、本研究で得たデータは、統計誤差が小さく、また、系統誤差も小さく押さえ込むことに成功した。また、地上で観測した様々のμ粒子スペクトルを解析し、μ粒子の強度は季節や緯度等、様々な環境の影響を受けることを示した。
また、大気μ粒子・大気ニュートリノのモンテカルロ計算に最適化したクラスタ計算機のハードとソフトの調整を進め、計算速度を向上させた。計算コードの最適化を進め、観測データとの詳細な比較を行った。モンテカルロ計算に組み込む相互作用モデルとして様々なモデルを用い、任意の高度に於いてそれぞれのモデルが予言する大気μ粒子のスペクトルを得た。気球高度(残留大気圧にして5〜30g/cm2)に於ける大気μ粒子のスペクトルと、モンテカルロ計算の詳細な比較から、宇宙線と大気分子の相互作用モデルとしてはDPMJET-IIIモデルが最適であると分かった。次に、入力データとしてBESSが測定した一次宇宙線のエネルギースペクトルを、また、相互作用モデルとしてDPMJET-IIIモデルを組み込んだ上で、詳細な大気構造を再現したモンテカルロ計算を行った。この結果、1GeV/c以下と数十GeV以上の領域ではBESSが測定した結果と、計算結果に有意な食い違いが見られ、相互作用モデルに修正が必要であると分かった。