共同研究・競争的資金等の研究 - 杉生 憲志
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グリオーマにおける免疫微小環境関連germlineバリアントの解析
研究課題/領域番号:21K09100 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
杉生 憲志, 黒住 和彦, 畝田 篤仁, 藤井 謙太郎, 石田 穣治, 大谷 理浩
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
グリオーマは予後不良な脳腫瘍である。近年、体細胞遺伝子変異の解析が進んでいるが、germline(生殖細胞系列)バリアントについては不明な点が多い。免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする免疫療法の有効性を決定する要素として、腫瘍の免疫微小環境が注目されているが、体内の全細胞に存在するgermlineバリアントは免疫微小環境に影響する可能性がある。しかし、germlineバリアントとグリオーマの予後や免疫微小環境との関連については未だ不明である。本研究では、新規germlineバリアントであるPIK3R1 Met326Ileがグリオーマの発生率、予後、免疫微小環境に与える影響について解析する。
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免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体との併用効果について検証
研究課題/領域番号:18K08968 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
杉生 憲志, 黒住 和彦
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
原発性脳腫瘍の約30%を占めるグリオーマの予後は極めて不良であり、手術療法、化学療法、放射線療法を併用しても平均生存期間は約1年である。近年、日本のグリオーマ治療において使用が開始された抗VEGF抗体bevacizumabは、世界規模の臨床試験において、無増悪生存期間は延長したが全生存期間では有意な延長効果は認められなかった。 Programmed cell death 1 (PD-1) と、そのリガンドである programmed cell death ligand 1 (PD-L1) はT細胞のapoptosisを促進させ、Treg(免疫寛容を司るT細胞)を誘導する。2014年には米国で免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体の臨床試験が開始された。免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体との併用療法については、以前、転移性悪性黒色腫に対する有効性が報告されたが、脳腫瘍については今まで有効性を検証した報告はない。今回我々は免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体との併用効果について検証し、そのメカニズムを調べる。
平成30年度は、分子標的薬bevacizumab、PD-1阻害剤などについて、本研究のセットアップを行った。同種移植モデルへの効果を得るためにマウス抗VEGF抗体も準備した。また同種移植脳腫瘍モデルを作製した。平成31年度は無治療群、抗VEGF抗体単独治療群、PD-1抗体単独治療群、抗VEGF抗体及びPD-1抗体併用群で比較し、免疫チェックポイント阻害薬による治療効果について検討した。今後、免疫組織染色を行い、腫瘍細胞及び白血球の形態、分布、機能を検討する。腫瘍内に浸潤する白血球についてはフローサイトメトリーで評価する。また、bevacizumab誘導浸潤に対して浸潤抑制がなされるのか、否かについて検討する。 -
JSNET・JSRT合同頭部IVR診断参考レベル策定プロジェクト
研究課題/領域番号:16K09028 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松原 俊二, 盛武 敬, 杉生 憲志
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
IVRの診断参考レベルはIVR基準点での透視線量率20mGy/分と公表されたが、臨床的要素が加味されていないことから、日本脳神経血管内治療学会(JSNET)に働きかけ、放射線防護委員会を設置、さらに日本放射線技術学会(JSRT)との共同研究として、積算線量値と面積線量値の疾患別線量情報の収集と活用プロジェクトを発足させた。ラジレックの改良が進み、線量ファイルを簡便に2D-mappingとDICOMへ変換する機能が完成した。H30年には、このラジレックを用いた全国多施設での被ばく線量測定データの収集と解析をすすめ、新たな診断参考レベル策定を行った。
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グリオーマのBevacizumab治療における血管新生因子CYR61の発現影響
研究課題/領域番号:15K10303 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
杉生 憲志, 黒住 和彦, 伊達 勲
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
原発性脳腫瘍においてグリオーマは約30%を占める。CYR61は脳腫瘍の血管新生や増殖に関連しているとされ、脳腫瘍の悪性度に関与している。我々はCYR61 の発現と抗VEGF 抗体bevacizumab の治療抵抗性について検討した。CYR61は予後陰性因子マーカーであった。CYR61を強発現または抑制することで、bevacizumab処理時にグリオーマ細胞に対して影響があたえられるかについて検討した。またCYR61とgermline variantについての検討を行いPIK3R1のgermline mutation がCYR61と予後とに相関することがわかった。
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脳神経血管内治療における患者体表面および術者水晶体の被ばく線量実測調査
2015年04月 - 2016年03月
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会 助成研究
杉生憲志, 松丸祐司, 盛武 敬, 川内 覚
担当区分:研究代表者
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
近年の脳神経血管内治療技術の進歩と普及により、確定的影響の閾知を超える患者被ばくや特定術者への症例集中による法定限度を超す術者被ばくの発生が懸念される。医療被ばくにおける確率的影響については診断参考レベルを設定することで防護の最適化を図るよう国際放射線防護委員会から強く勧告されている。いっぽう、職業被ばくには法令による厳密な線量限度が設けられている。そこで本研究では全国の基幹施設での患者体表面被ばく線量と術者水晶体被ばく線量の実態を実測により把握することで、より効果的な被ばく低減方法を確立することを目的とした。
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Bevacizumab誘導性脳腫瘍浸潤に対する新規治療法の開発
研究課題/領域番号:26670644 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
伊達 勲, 黒住 和彦, 杉生 憲志, 安原 隆雄
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
近年悪性神経膠腫に対して抗VEGF抗体(bevacizumab) が用いられるようになり、その治療効果が報告されている。しかし、血管新生抑制により治療効果をもたらす一方で、腫瘍細胞の浸潤が誘発されるともいわれる。我々は、bevacizumab投与により誘発された脳腫瘍の浸潤性変化に対するintegrin阻害剤 (cilengitide) の併用効果について検討した。Bevacizumab、cilengitide併用治療群ではbevacizumab単独治療群と比較し、脳腫瘍浸潤性変化が減少し、浸潤関連因子の発現が抑制された。
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Gliomaの新規予後因子CYR61及びMGMTに関する分子生物学的検討
研究課題/領域番号:24592128 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
杉生 憲志, 黒住 和彦, 伊達 勲
配分額:5330000円 ( 直接経費:4100000円 、 間接経費:1230000円 )
悪性グリオーマは手術療法,化学療法,放射線療法を併用しても予後は極めて不良である。インテグリンのリガンドであるCysteine-rich protein 61 (CYR61)は脳腫瘍の血管新生や増殖に関連しているとされる。今回我々はグリオーマ症例を対象にCYR61の発現解析を行い、CYR61とMGMTのbiomarkerとしての有用性を示すことができた。
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パーキンソン病に対するカプセル化神経幹細胞移植:post-DBS時代を見据えて
研究課題/領域番号:23390349 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
伊達 勲, 上利 崇, 亀田 雅博, 小野 成紀, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 市川 智継, 黒住 和彦, 菱川 朋人, 眞鍋 博明, 菊池 陽一郎
配分額:17940000円 ( 直接経費:13800000円 、 間接経費:4140000円 )
カプセルから効率よく栄養因子を分泌させるには、カプセルに封入する細胞の生存効率を上げる必要があると考え、GDNF pre-treatmentが神経幹細胞の生存効率を上げるか検討した。in vitroでは、虚血環境下において、GDNF pre-treatmentはアポトーシス細胞数の有意な減少をもたらした。また、パーキンソン病モデルラットを作成しGDNF pre-treatmentを行った神経幹細胞を移植したところ、有意に良好な移植細胞の生存が確認できた。以上よりGDNF pre-treatmentはアポトーシスを抑制し神経幹細胞の生存効率の向上をもたらすと考えられた。
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脳血管障害研究の新展開【脳血管障害とCCNファミリー分子CYR61】
研究課題/領域番号:23659686 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
伊達 勲, 黒住 和彦, 杉生 憲志
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
脳血管障害に対し、分泌蛋白CYR61の発現変化について検討し、分泌蛋白CYR61療法による血管新生などの治療を行う。CYR61プラスミドはコラボレーターから供与をうけ、CYR61に対する効果的なshRNAを選別し、CYR61蛋白の至適濃度を確認した。脳血管障害研究の前段階として、脳腫瘍による発現解析も行った。CYR61は成人膠芽腫及び小児悪性神経膠腫いずれにおいても予後と相関し、悪性神経膠腫の予後を示す重要なマーカーとなる可能性が示唆された。現在、脳血管攣縮モデル、動脈硬化ウサギモデル、もやもや病モデルにおける、分泌蛋白CYR61の発現解析を行っている。
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グリオーマに対する腫瘍溶解ウイルス療法における血管新生因子CYR61の発現影響
研究課題/領域番号:21591841 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
杉生 憲志, 黒住 和彦, 伊達 勲
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
我々は悪性グリオーマに対する腫瘍溶解ウイルス(OV)療法についての研究を行ってきた。OV療法をより効果的な治療戦略とするため、腫瘍におけるアンジオトームに関する検討を行ってきたが、血管新生因子cysteine-rich protein 61(CYR61)の有意な発現上昇を確認した。CYR61を代表とするアンジオトームのOVに対する影響について検討しながら、現在、新規OVの作製をつづけている。
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もやもや病に対するVEGF遺伝子導入と骨髄幹細胞移植のダブル治療
研究課題/領域番号:21591840 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳永 浩司, 菱川 朋人, 亀田 雅博, 安原 隆雄, 伊達 勲, 杉生 憲志, 黒住 和彦, 上利 崇
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
もやもや病モデルラットに対して、血行再建術と骨髄幹細胞移植が行動学的改善をもたらすことを確認した。しかし、血行再建術に加えてVEGF遺伝子を導入しても、新生血管の有意な増加を認めるのみで、その有無による有意な行動学的改善は認められなかった。そのため血管新生因子導入と骨髄幹細胞移植のダブル治療に関しては、VEGFを超える可能性をもつ血管新生因子を探索した。その過程でapelin-APJシステムが慢性脳虚血によって惹起されることを確認した。加えて、サルを用いた血管内手技による低侵襲な脳虚血モデルの開発を行った。
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研究課題/領域番号:20390386 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
伊達 勲, 三好 康之, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 小野 成紀, 市川 智継, 亀田 雅博
配分額:19240000円 ( 直接経費:14800000円 、 間接経費:4440000円 )
I型コラーゲンによる足場を形成して、神経幹細胞をカプセル化したところ、カプセル内での幹細胞の生存を確認できた。また、腫瘍形成は認めなかった。カプセル化した神経幹細胞を中大脳動脈閉塞モデルへ移植したところ、行動学的改善を認め、組織学的には、脳梗塞体積の縮小を認めた。また、移植操作に伴う、ドナー細胞への虚血負荷を減らすには、Glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)による前処置が有効であることを確認した。
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研究課題/領域番号:19591677 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
小野 成紀, 徳永 浩司, 伊達 勲, 杉生 憲志, 市川 智継, 松井 秀樹, 市川 智継, 伊達 勲, 杉生 憲志, 松井 秀樹
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
小野、徳永、伊達により11R蛋白とヘムオキシゲナーゼ-1、superoxide-dismutase、TGF-beta、low-density lipoprotein receptor、endothelial NOS、あるいはsuperoxide-dismutaseのfusion蛋白質をcDNAより作成した。endothelial NOS-11R蛋白に関しては、ラット2回くも膜下出血モデルでの攣縮脳血管を、本蛋白投与により、拡張せしめることに成功した。(Stroke. 38 : 1354-61,2007)。小野、伊達により培養脳血管平滑筋、内皮細胞に、上述のfusion蛋白質を投与し、細胞内移行について検討した。血管外腔投与では血管壁のすべての層に蛋白質は導入可能であった。また、100kD以上の大きな蛋白質も血管壁細胞内へ導入が可能であることを確認した。さらに、これらは脳組織には導入されず血管のみに親和性が高いことも見い出した。11R蛋白とヘムオキシゲナーゼ-1、superoxide-dismutase、TGF-beta、low-density lipoprotein receptor、およびsuperoxide-dismutaseのfusion蛋白質を現在プラスミドから蛋白生成の段階で製作中である。
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研究課題/領域番号:19591678 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
杉生 憲志, 西田 あゆみ, 徳永 浩司, 三好 康之, 上利 崇, 伊達 勲, 新郷 哲郎, 徳永 浩司, 三好 康之, 新郷 哲郎, 上利 崇
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
in vitroでは、培養神経幹細胞に対して低頻度電気刺激を行うことにより、神経幹細胞は陰極に遊走する傾向があり、神経系への分化を示し、脳由来神経栄養因子の分泌が増加していた。in vivoでも、脳梗塞モデルラットに対し電気刺激により脳梗塞体積が減少し、内在性の神経幹細胞の遊走が促進されることが示された。パーキンソン病モデルラットに対しては、神経幹細胞移植+電気刺激療法を施行したところ、より強い治療効果が得られ、広い範囲に移植細胞が生存していたが、ドパミン神経への分化については影響を与えなかった。
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ヒト臍帯血細胞を用いたパーキンソン病に対する細胞移植療法に関する研究
研究課題/領域番号:18659420 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
伊達 勲, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 三好 康之, 小野 成紀, 市川 智継, 小野田 惠介, 松井 利浩
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
平成18年度に骨髄由来幹細胞静脈内投与のパーキンソン病モデルラットに対する治療効果を確認していたが、その機序として損傷細胞の置換というよりもむしろ分泌されている血管内皮成長因子(VEGF)やグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)などが重要であることが明らかとなった。静脈内投与された細胞の脳内への生着率は0.01%未満であり、神経細胞への分化も見られなかったが、有意な行動学的改善と組織学的なドパミン細胞の損傷軽減が示された。細胞培養上清からはVEGFや微量ではあるがGDNFも検出することができた。臍帯血細胞を用いた細胞療法についても、同様に移植細胞から分泌される栄養因子などによる神経保護修復作用の重要性が示唆されている。ラットの臍帯血を採取し培養を行いまず、in vitroで増殖することに成功した。この細胞を用いて神経細胞への分化誘導を図ると、非常に低率であるがいくつかの細胞は神経系のマーカーを発現していた。また、培養上清からはVEGFだけでなく、グリア・脳由来神経栄養因子(GDNF・BDNF)が骨髄幹細胞よりも高い濃度で分泌されているのが確認できた。本細胞を骨髄由来幹細胞と同様にパーキンソン病モデルラットに対して静脈内投与したところ、やはり有意な行動学的改善とドパミンニューロンの残存を認めた。一方、移植された細胞はごく少数脳内に生着していたが、神経細胞への分化を示していなかった。また、脳実質を取り出して栄養因子を測定したところ、VEGF・BDNFの増加を認め、線条体のドパミン量も有意に保たれていた。
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脳神経血管内治療における、血管モデルを使用した手術機器の開発と術者トレーニング
2005年06月 - 2006年03月
岡山大学 学長裁量経費 教育研究プロジェクト経費
杉生憲志, 伊達勲, 徳永浩司
担当区分:研究代表者
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
欧米ではすでに脳動脈瘤に対して従来の開頭術よりも塞栓術を選択することが多くなってきているが、本邦では専門医が少なく(200人程度)、未だ発展途上の段階である。その原因の一つとして、適切なトレーニングが十分なされていないことがあげられる。当科には全国で70人の指導医のうち2人が在籍し人的教育環境は整っているが、トレーニング器材に欠けている。本モデルは、カテーテル操作等臨床前トレーニングに応用することが可能で、研修医や学生の教育器材として非常に有用となる。
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カプセル化した幹細胞の脳内移植による神経疾患の治療
研究課題/領域番号:17390400 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
伊達 勲, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 三好 康之, 小野 成紀, 市川 智継, 小野田 恵介, 松井 利浩
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:16910000円 ( 直接経費:15500000円 、 間接経費:1410000円 )
パーキンソン病への移植療法を念頭に置き、ES細胞をドパミンニューロンに分化誘導してマイクロカプセル内に封入しin vitroで長期間安定してドパミンを産生することを確認した。パーキンソン病モデルラットに対する治療効果を3ケ月間行動学的評価で確認し、免疫組織学的にもドパミンの産生を確認した。カプセル化細胞の腫瘍形成は見られなかった。また、NT2細胞を我々の研究室で用いている中空糸内にカプセル化して脳梗塞モデルラットやパーキンソン病モデルラットに移植したところ、良好な治療効果が認められた。
引き続きラット成体由来神経幹・前駆細胞を用いた研究に進み、未分化なままでも、神経系への分化誘導を行った後でも、1型コラーゲンと共にカプセル化すると、腫瘍形成せず生存することを確認した。成体サル脳室下帯・海馬からも神経幹細胞を分離培養した。増殖スピードはラットの細胞より遅く、移植に必要な量まで増幅させるのに1.5ケ月を要した。カプセル化には1型コラーゲンを要し、1ケ月間の生存率はラットを用いた研究と比較して遜色なかった。分化誘導を行わずにカプセル化を行うと、ニューロンへの分化を示すものはごく少数であり、グリア細胞への分化を示すものが多数であった。ドパミンニューロンへの分化を図った後にカプセル化した細胞からはドパミンの分泌がHPLCにより確認された。パーキンソン病モデルサルを作成し、亜急性期にカプセル化未分化サル神経幹・前駆細胞を移植すると、1ケ月間細胞は生存したが、有意な行動学的改善を示さなかった。それに対して、ドパミンニューロンに分化したカプセル化神経前駆細胞を移植すると、パーキンソン病モデルサルは行動学的改善を示した。パーキンソン病に対して、ドパミンニューロンに分化誘導したカプセル化細胞は治療効果を有し、腫瘍化という大きなハードルを越えることができるため、臨床応用が現実となる可能性を有すると思われる。 -
頚髄症モデルに対する神経栄養因子産生成体神経幹細胞の移植に関する研究
研究課題/領域番号:17591514 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
三好 康之, 伊達 勲, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 小野 成紀, 市川 智継, 小野田 惠介, 松井 利浩
配分額:3670000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:270000円 )
慢性頚髄症モデルフット作成において、アガロースビーズの脱転が問題点であると考えられたので、確実に局所脊髄に圧迫を長期間加えることが出来るように、GoreTexを用いてアガロースビーズの脱転を防ぎ、かつ局所に止まらせるように工夫した。さらに、やや技術的に困難だが可能な限り椎弓を切除し外側からもアガロースビーズが圧迫するようにした。硬膜外のスペースに留置されたアガロースビーズの背側にフィブリン糊を塗布しGoreTexのシートを固着させた。この方法により屠殺時にアガロースビーズが脱転しているラットは全く見られなくなった。本方法により、慢性頚髄症モデルラットにおいて有意なBBBスコアー低下と組織学的にも有意な損傷を示すことが出来た。本頚髄症モデルラットに対するGDNF産生神経幹細胞移植研究を引き続き行い、移植によって、行動学的にBBBスコアーは改善したが、有意差を示すには至らなかった。移植されたGDNF産生神経幹細胞は、GDNFを脊髄局所に供給することができ、移植した周囲では、正常の組織に比べて約5倍の濃度のGDNFを供給することができ、この発現が少なくとも1ヶ月が持続していることを確認した。組織学的には、有意に損傷面積を減少することは出来ず、18年度の研究結果同様、1ヶ月後に取り出された脊髄を免度染色すると、移植した細胞はほとんどグリアに分化しており、ニューロンへの分化はわずかであった。移植細胞周囲の宿主脊髄では、コントロール群と比べて有意に、炎症細胞増加を認めた。GDNF産生神経幹細胞は本モデルに対して、有意な治療効果を示さなかったが、増強される炎症細胞浸潤を防ぐことで治療効果を改善することが可能かもしれない。
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くも膜下出血後脳血管攣縮に対する蛋白セラピー
研究課題/領域番号:16659388 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
小野 成紀, 伊達 勲, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 三好 康之, 松井 利浩, 松井 秀樹
配分額:2500000円 ( 直接経費:2500000円 )
11R蛋白による脳血管壁細胞外から細胞内への蛋白質導入に関する研究成果として、今回、我々は、11Rに緑色螢光色素であるEGFP(enhanced green fluorescent protein)を融合させて、脳血管壁への導入をex vivo, in vivoで検討した。生理食塩水でラットの脳を灌流後脳幹を摘出し、11R-EGFP+DMEM(12.5μM)およびEGFP+DMEM(12.5μM)に静置した。凍結切片を作成し螢光顕微鏡で脳底動脈を観察したところ、11R-EGFP群で脳血管壁への著明な導入を認めたが、EGFP群では殆ど導入を認めなかった。次に、11R-EGFPおよびEGFPをそれぞれ最終濃度12.5μMとなるようにラット大槽内注入した。注入後、生理食塩水で灌流し脳幹を摘出、凍結切片を螢光顕微鏡で観察した。11R-EGFP注入群では、2時間後には既に、脳血管壁全層への著明な導入を認めた。しかし、EGFP注入群では脳血管壁への導入は認めなかった。血管の部位別導入効率に関しては11R-EGFP注入群は、EGFP及び生食注入群と比較し、中膜に高い螢光強度を示した。以上のように脳血管壁へ11Rによる蛋白質導入が可能であることを確認した後、われわれは、一酸化窒素合成酵素と11Rの合成蛋白を作成し、脳血管壁へのくも膜下出血モデルに対する導入実験にも成功した。くも膜下腔への同蛋白質注入2時間後、くも膜下血腫存在下においても本合成蛋白は脳血管壁に導入可能であった。現在、この蛋白により産生される一酸化窒素による、くも膜下出血後惹起される脳血管攣縮の抑制効果について研究を進めている。また、これらのデータは第21、22回スパズムシンポジウム、第64回日本脳神経外科学会総会、第5、6回日本分子脳神経外科学会等において発表した。
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パーキンソン病に対する神経幹細胞を用いた細胞移植に関する研究
研究課題/領域番号:15591525 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
杉生 憲志, 伊達 勲, 徳永 浩司, 三好 康之, 小野田 惠介, 松井 利浩, 新郷 哲郎, 西尾 晋作
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
パーキンソン病に対して、神経幹細胞を用いた脳内移植療法を実現するためには、自家の神経幹細胞を用いることが最も安全で有用な治療法の一つと考え、成体由来神経幹細胞を用いた研究を行った。まず、齧歯類や霊長類の成体脳から神経幹細胞の培養を行うことができ、移植に必要な細胞数まで増殖させ、チロシン水酸化酵素誘導因子(TH誘導因子)を用いることにより、高率にドパミンニューロンへ分化させることが可能であることを示した。
はじめに、成体由来神経幹細胞を分化させることなくパーキンソン病モデル動物に脳内移植を行ったところ、神経保護効果(行動学的および組織学的改善)を示した。移植した神経幹細胞からGDNFやerythropoietinなどの神経栄養因子が産生されていることから、この効果はこれらのカクテルにより宿主ドパミンニューロンが生存したと考えられた。
次に、成体由来神経幹細胞にGDNF遺伝子を導入してGDNF産生神経幹細胞を作製し、この細胞をパーキンソン病モデルラットに脳内移植を行ったところ、神経保護効果を示した。GDNFは、移植した細胞の生存および遊走も促進した。この機序として、宿主脳の微小環境の変化や、GDNFにより集積する宿主由来グリアより産生される神経栄養因子の関与が示唆された。
最後に、成体由来神経幹細胞をドパミンニユーロンへ分化誘導後、パーキンソン病モデル動物に脳内移植することにより、パーキンソン病症状の改善を示した。移植された神経幹細胞由来ドパミンニューロンの脳内への生着はわずかであったが、宿主由来ニューロンとシナプスを形成し、局所的にBDNFの上昇やCREBのリン酸化がシナプス形成の増強に関与していた。
このように成体由来神経幹細胞の脳内移植はパーキンソン病に対して有用であることが判明した。 -
虚血脳に対する神経幹細胞移植に関する研究
研究課題/領域番号:15591524 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳永 浩司, 伊達 勲, 杉生 憲志, 三好 康之, 小野田 惠介, 松井 利浩, 新郷 哲郎, 西尾 晋作
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
脳虚血に対して、神経幹細胞を用いた脳内移植療法を実現するためには、自家の神経幹細胞を用いることが最も安全で有用な治療法の一つと考え、成体由来神経幹細胞を用いた研究を行った。まず、齧歯類や霊長類の成体脳から神経幹細胞の培養を行うことができ、移植に必要な細胞数まで増殖させ、ニューロンへ分化させることが可能であることを示した。
この成体由来神経幹細胞を用いて急性期脳虚血モデル動物に対して脳内移植を行ったところ、神経保護効果を持つことを画像的(臨床機である1.5TMRIを使用)、行動学的および組織学的に示した。このメカニズムとして、移植した神経幹細胞より産生される神経栄養因子やサイトカインの組み合わせによる効果が考えられる。
次に、成体由来神経幹細胞に強い神経保護効果を有するGDNF遺伝子を導入して、GDNF産生神経幹細胞を作製し、この細胞を脳虚血モデルラットに脳内移植を行ったところ、強い神経保護効果を持つことを画像的(MRIを使用)、行動学的および組織学的に示した。GDNF産生神経幹細胞は、より多くのニューロンへ分化する傾向を示し、さらに移植した中心よりより遠方まで遊走する傾向を示した。
最後に、成体由来神経幹細胞を慢性期脳虚血モデル動物に脳内移植することにより、神経症状の改善および梗塞巣の修復作用を示した。この機序として、移植した神経幹細胞がニューロンへ分化し宿主ニューロンとシナプスを形成するだけではなく、移植による宿主内の微小環境の変化や分化したグリアかち産生される神経栄養因子の関与が示唆された。
このように成体由来神経幹細胞の脳内移植は脳虚血に対して有用であることが判明した。 -
ウイルスベクターを用いた悪性脳腫瘍の研究
研究課題/領域番号:14571312 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
小野 恭裕, 小野 成紀, 徳永 浩司, 杉生 憲志, 富田 享, 田宮 隆
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
我々は遺伝子導入効率の高いアデノウィルスをベクターとしてHSV-tkやcytosine deaminase遺伝子などの薬剤変換酵素遺伝子を用いた悪性脳腫瘍遺伝子治療の基礎研究を行ってきた。これらの治療法の有効性や副作用については、動物脳腫瘍モデルを用いて研究を行い、その成果を学会および雑誌で発表してきた。本研究では、治療後の再発の原因となる浸潤脳腫瘍細胞をより選択的かつ効率的に殺傷することを目標として、神経幹細胞を用いた新しい遺伝子治療の可能性について検討した。まず実験に用いる幹細胞として、神経幹細胞と骨髄幹細胞を用いて培養実験を行った。神経幹細胞に比べ骨髄幹細胞は採取・培養が容易であり、骨髄幹細胞も神経、グリアに分化する能力を持っていた。動物脳腫瘍モデルにおいては、神経幹細胞または骨髄幹細胞を、腫瘍内あるいは腫瘍外に移植すると、腫瘍内に拡散し、腫瘍の辺縁へ向かって腫瘍細胞を追尾することを確認した。幹細胞への遺伝子導入にはアデノウィルスを利用したが、遺伝子の導入効率を挙げるために、その他のウィルスベクターについても検討中である。ウィルスベクターによりHSV-tkやcytosine deaminase遺伝子などの薬剤変換酵素遺伝子を導入した幹細胞の治療効果をみるために、遺伝子導入幹細胞を腫瘍細胞と混合して培養細胞にprodrugを投与したところ、強いbystander effectによる抗腫瘍効果を認めた。そして遺伝子導入幹細胞を動物腫瘍モデルに注入する実験では、遺伝子導入幹細胞が、腫瘍細胞を追尾することは確認されたが、十分な治療効果を得るには相当数の幹細胞の移植が必用と考えられた。この点については、幹細胞の増殖速度を増すようp21の発現をribozymeにより抑制した幹細胞を作成し、その治療効果について検討中である。
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HSV/EBVハイブリッドアンプリコンを用いた悪性脳腫瘍の遺伝子治療の研究
研究課題/領域番号:14370433 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
田宮 隆, 小野 恭裕, 松本 義人, 河井 信行, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 富田 享
配分額:10500000円 ( 直接経費:10500000円 )
我々は以前より、種々のウィルスベクターの開発と悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療の研究を行ってきた。より臨床応用に近づく遺伝子治療法の開発を行うことを目的として、今回HSV/EBVハイブリッドアンプリコンによる遺伝子導入法の開発、導入遺伝子発現のMRIによる画像化システムの開発、そして最も効果的な治療遺伝子の選択等について検討している。
まず、以前からのアデノウイルスベクターを用いた悪性脳腫瘍の遺伝子治療の研究の続きとして、薬剤感受性遺伝子治療と放射線療法の併用療法の効果を検討し、培養細胞のみならずラットの脳腫瘍モデルにおいても、明らかとした(Cancer Gene Therapy 9:840-845, 2002)。また、Cytosine deaminase遺伝子と5-Fluorocytosineを用いた薬剤感受性遺伝子治療の抗腫瘍効果の機序が、主にアポトーシスを介してであることを、分子レベルで明らかとした(J of Neuro-Oncology 66:117-127, 2004)。
現在、新たなヘルペスウィルスI型を基礎とするアンプリコンベクターにEBウィルス遺伝子を組み込み、HSV/EBVハイブリッドベクターとすることにより、標的細胞内での遺伝子発現が上昇、延長するベクターを開発中である。また、生体での遺伝子の発現とその分布を非侵襲的にモニターするために、MRIを用いた画像化システムを開発中である。さらに、HSV/EBVハイブリッドアンプリコンベクターを用いて、薬剤感受性遺伝子治療や免疫遺伝子治療を組み合わせることにより、悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療の効果的な方法を確立する。 -
カプセル化神経伝達物質・神経栄養因子産生細胞脳内移植によるパーキンソン病の治療
研究課題/領域番号:13671436 2001年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
伊達 勲, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 三好 康之, 小野 成紀, 松井 利浩, 西尾 晋作, 富田 享, 大本 堯史
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
パーキンソン病の治療を目指して再生医学の立場から種々の療法が検討されている。脳内に神経伝達物質や神経栄養因子産生細胞株を移植する方法もその一つの方法であり、分子生物学的手法の発達により注目を集めている方法である。ドパミンを産生する細胞株やglial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)を産生する細胞株などが用いられるが、これらの細胞株を脳内移植する際、免疫学的拒絶反応や腫瘍化を制御することが重要である。我々は、高分子半透膜製の中空糸にこれらの細胞株を封入して移植するカプセル化細胞の脳内移植を開発し、本研究ではこの手法を用いて、パーキンソン病の治療を目指した種々の検討を行った。パーキンソン病モデルとしては、1側の黒質線条体ドパミン神経系を6-hydroxydopamine(6-OHDA)で破壊した片側パーキンソン病モデルを用い、分析は、組織学的にはtyrosine hydroxylase (TH)に対する抗体を用いた免疫組織化学で黒質のドパミン細胞数、線条体のドパミン線維の密度を検討、生化学的には高速液体クロマトグラフィーで線条体のドパミン濃度を測定、行動学的には、アポモルフィンおよびアンフェタミン注入による薬物誘発回転運動を検討した。
本研究期間に以下の点が明らかとなった。
1.ドパミン産生細胞株であるPC12細胞、GDNF産生細胞株であるBHK-GDNF細胞ともカプセル内で12カ月の長期にわたって生存し、ドパミンGDNFを持続的に産生した。
2.パーキンソン病モデルラットの改善効果が、組織学的、生化学的、機能的に認められた。
3.PC12細胞にGDNF遺伝子を導入したPC12-GDNF細胞は、ドパミンとGDNFの両者を長期にわたって産生した。
4.GDNF産生細胞株とBDNF産生細胞株を同時に移植するとより効果的であった。
これらの結果からカプセル化した神経伝達物質、神経栄養因子産生細胞株の脳内移植は、パーキンソン病の治療法として有用であることが期待される。 -
パーキンソン病に対する神経伝達物質及び神経栄養因子の遺伝子導入に関する研究
研究課題/領域番号:13470294 2001年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
小野 成紀, 大本 尭史, 伊達 勲, 杉生 憲志, 徳永 浩司, 三好 康之, 松井 利浩, 西尾 晋作, 富田 享, 小野 成紀
配分額:10700000円 ( 直接経費:10700000円 )
パーキンソン病は黒質線条体ドパミン神経系の進行性変性疾患であり、線条体に欠落したドパミンを供給したり、線条体にglial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)等を供給し、ドパミン神経系への保護修復効果を期待する方法がある。これらの因子の供給に遺伝子導入法は有用であると考えられる。遺伝子導入法として我々はプラスミドベクターとリポソームの複合体を1週間持続注入する方法で線条体の主にグリアに遺伝子を導入する手法を開発し、本研究ではこの方法を応用して、パーキンソン病の治療をめざした種々の検討を行った。パーキンソン病モデルとしては、1側の黒質線条体ドパミン神経系を6-hydroxydopamine(6-OHDA)で破壊した片側パーキンソン病モデルを用い、分析は、組織学的にはtyrosine hydroxylase (TH)に対する抗体を用いた免疫組織化学で黒質のドパミン細胞数、線条体のドパミン線維の密度を検討、生化学的には高速液体クロマトグラフィーで線条体のドパミン濃度を測定、行動学的には、アポモルフィンおよびアンフェタミン注入による薬物誘発回転運動を検討した。
本研究期間に以下の点が明らかとなった。
1.GDNF遺伝子、TH遺伝子など導入遺伝子は本法により効率よく主に線条体のグリアに導入された。
2.6-OHDA注入後遺伝子導入を行う時期は、早いほうがより機能的改善が得られた。
3.GDNF遺伝子とTH遺伝子の両者を導入する方がより効果的であった。
4.神経栄養因子に関しても、GDNF遺伝子とBDNF遺伝子の両者を導入する方が相乗効果があった。
5.遺伝子発現は6カ月後にはかなり減少しており、今後長期発現の維持が重要であると考えられた。
神経伝達物質、神経栄養因子の遺伝子を線条体に導入する方法は、パーキンソン病の治療法として有用と考えられた。 -
酢酸セルロースポリマーによる脳動脈瘤閉塞に関する実験的研究
研究課題/領域番号:07457318 1995年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
中嶋 裕之, 徳永 浩司, 杉生 憲志
配分額:6400000円 ( 直接経費:6400000円 )
我々の施設で開発した酢酸セルロースポリマー(CAP)を用いて、実験的動脈瘤に対して種々の基礎的実験を行った。まずイヌの頸動脈に静脈片を吻合しlateral aneurysm modelを作成し、CAPにて塞栓術を行い、放射線学的・組織学的観察を行った。その結果、塞栓術後わずか2週間で動脈瘤の開口部に新生内膜の形成をみとめた。また長期の観察で良好な塞栓状態が永く保持されることが示された。さらに血管内視鏡を用いて動脈瘤が塞栓される経過を観察した。
次に、イヌの頸部にbifurcation aneurysm modelを作成し、意図的に部分塞栓術を行った。その結果、動脈瘤とCAPの間に三日月状の間隙を残さないように塞栓することによって塞栓直後の状態が持続し、一方三日月状の間隙を残した場合には動脈瘤の増大・破裂を招くことが示された。
さらに最近は特に塞栓の難しい頸部の面積の広い動脈瘤モデルに対してCAPと離脱式コイルを併用して塞栓術を行った。両者の併用により、離脱式コイルがCAPの親血管への迷入を防ぐ効果を持ち、また長期的な観察によりコイル単独ではみられやすいコイルの圧縮現象が併用例ではみられなかった。この実験により治療困難な動脈瘤に対しても安全かつ効果的に塞栓できる可能性が示唆された。
以上の実験により動脈瘤に対するCAP塞栓術の有用性が示されたが、いずれの実験も対象としてイヌの動脈壁に静脈片を縫着したモデルを使用しており、実際の脳動脈瘤とは組織学的・血行力学的に異なる。現在我々は動脈壁自身から発生する動脈瘤モデルの作成を試みており、可能となればそのモデルを用いて塞栓実験を行う所存である。