共同研究・競争的資金等の研究 - 芳野 極
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下部マントル深部までの含水ペリドタイトの精密相平衡関係決定とマントル水分布の解明
研究課題/領域番号:24K00735 2024年04月 - 2028年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
石井 貴之, 芳野 極, 大谷 栄治, 山崎 大輔
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
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最下部マントル物質の粘性率の決定
研究課題/領域番号:22H00180 2022年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
山崎 大輔, 辻野 典秀, 芳野 極, 坂本 直哉
配分額:43420000円 ( 直接経費:33400000円 、 間接経費:10020000円 )
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川井型マルチアンビル装置による深部マントル研究の新展開
研究課題/領域番号:21H04996 2021年07月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
芳野 極, 桑原 秀治, 増野 いづみ, 山崎 大輔, 石井 貴之, 辻野 典秀
配分額:193570000円 ( 直接経費:148900000円 、 間接経費:44670000円 )
大容量川井型マルチアンビル装置(KMA)の最近の技術革新により、今まで困難であった圧力、温度での高圧実験を展開できるようになったことを背景に、KMAの特性を最大限に活かすことでマントルの未解決の諸問題に様々な角度から取り組む研究課題である。マントルの強親鉄元素の高濃度異常の原因として提唱されているレイトベニア仮説論争の検証、下部マントルに存在するとされる始原的リザーバーの起源を解明するために、超高圧下における分配実験、変形実験、熱電測定といった新しい視点の実験から制約する。これらの結果を整合的に説明できる統合的なマントル進化モデルを創出することが本研究の目的となる。
本年度は、本研究の多角的アプローチのうち以下の3つの研究において成果を得ることができた。1)レイトベニア仮説を検証するために高圧下での溶融鉄とケイ酸塩メルト間の強親鉄元素の分配実験を圧力25GPaで行い、回収試料の分析を東京大学平田研究室のレーザーアブレーションICP-MSで行った。先行研究における川井型マルチアンビル装置での最高圧力実験である18GPaの圧力の結果と異なり、強親鉄元素はケイ酸塩メルトにより分配される結果が得られた。2)始原的リザーバーの存在がBEAMSモデルで説明できるかを検証するための試験的に低歪量の高圧変形実験を行った。ブリッジマナイトとポストスピネルを直列に接した一軸圧縮実験を行ったところ、両者に違いは見られなかった。また、ブリッジマナイト単相の構成則を決定し、ブリッジマナイトがマントル主要鉱物で最も硬いことを明らかにした。3)下部マントルと核の間の熱交換を制約するため、パルス加熱法による熱伝導度測定でブリッジマナイトの熱伝導度の組成依存性を決定したところ、今までの研究に比較して、AlやFeといった主要な不純物は大きく熱伝導度を下げることが確認された。 -
核ーマントル境界における熱電効果による鉄同位体分別の探索
研究課題/領域番号:21K18657 2021年07月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
芳野 極
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
鉄は太陽系の非揮発性元素の中でも最も豊富な元素の1つで、惑星の形成と分化過程において重要な役割を果たしている。地球のマントルの鉄同位体(δ57Fe)は、コンドライトと同等のδ57Feを持つ火星、小惑星ベスタに対して約0.1‰高いが、高温高圧でのケイ酸塩メルトの実験はコアとマントルの分離時にこのような分別が起きる可能性を否定している。本研究では、CMB上部に位置するマントル最下部は地球内部最大の熱境界層であることから、大きな温度差による熱電(ゼーベック)効果により、CMBで酸化還元反応が起こり、マントル物質の鉄同位体分別が引き起こされたという仮説を検証する研究である。本年度は大容量マルチアンビルプレスを用いた高圧実験を行った。ケイ酸塩試料の片側を鉄合金としてその反対側に白金の電極を配置して、温度差によって生じる熱起電力を模して直流電場を与えた。実験はまず複雑な高圧セルを試すために地球より鉄同位体比が高い月を対象として5GPa程度の圧力で電位差や温度を変数として実験を行なった。オリビン中には白金の酸素雰囲気センサーを入れることで、電位差をかけた試料を横切る酸素雰囲気のプロファイルを検出した。予想通り、試料の電極付近では酸化還元反応が生じており、陽極では酸化的、陰極では還元的となり、試料を横切って連続的な酸化還元プロファイルを持つことがわかった。オリビンのゼーベック係数の測定は2系統独立加熱法を用いて試料の両端の温度差を制御しながら実施した。鉄を含むオリビンのゼーベック係数は低温では電子ホールのホッピングによって正の値を示すが、1100℃以上では金属サイトの空孔の移動が主体となり負の値を示した。このことは、ゼーベック効果によってCMBで起こる反応は還元反応ということになる。本試料を用いて次年度は鉄同位体分析を行う。
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岩石の溶融温度近傍の電気伝導度測定と伝導メカニズムの解明
研究課題/領域番号:20K04129 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤田 清士, 佐久間 博, 芳野 極, 市來 雅啓
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
本研究では、室内実験により、任意の温度圧力条件下で含水鉱物・含水岩石を溶融させることにより、その物理条件下における状態を電気伝導度変化として捉えることを試みる。室内実験の結果を、理論計算から推算された電気伝導度と比較を行い、MT法のような電磁気観測から得られた電気伝導度構造解析結果などと直接対比することにより、データの相互検証が可能になる。火山体下やプレート発生領域の溶融温度近傍を電気伝導度の視点から捉えることが本研究の特徴である。
2021年度は、玄武岩質岩石を高温高圧下で、電気伝導度測定する事に注力した。実験では、溶融状態を想定して電気伝導度測定を行った。試料は、玄武岩の主要組成を合成をした物と富士山麓から採取した玄武岩のシュミラントを使用した。実験結果からは試料の温度依存性と圧力依存性を確認することができた。
理論的な電気伝導度推算のために、ニューラルネットワーク解析を利用した。本年度は既存のプログラムを他の言語に移植し、推算の精度を向上させた。その結果、酸化鉄や酸化チタンなどの物質が岩石全体の電気伝導度に与える影響を定量的に評価できる成果を得た。
本研究では、導電性鉱物の挙動解明やネットワークの連結など電気伝導メカニズムを精査する。研究では、実験値と理論計算を相互に検証する計画であるため、従来の“手探り”の実験から大幅に進化した研究を行うことができる。2021年度から2022年度にかけては、様々な電気伝導度測定実験をおこない、計算機シミュレーションから電気伝導度の推算を推進する。 -
「核-マントルの相互作用と共進化」の推進と支援
研究課題/領域番号:20H05611 2020年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
土屋 卓久, 芳野 極, 鈴木 昭夫, 入舩 徹男, 鈴木 勝彦, M Satish‐Kumar, 田中 聡, 田中 宏幸, 鍵 裕之
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
計画研究ごとの総括、複数計画研究の共同研究から得られた成果とりまとめ、全体の考察を通して、領域の研究成果を取りまとめた。具体的には、マントル深部及び核の熱特性、始原物質の貯蔵機構、熱源元素総量などを軸として個々の成果について集約し、領域全体としての活動を総括し成果取りまとめを実行した。前年度までと同様に地球惑星科学連合(JpGU)年次大会において国際セッションを主催し、本領域で得られた核-マントルの相互作用と共進化に関する研究成果を世界の研究者と共有するとともに、本領域の活動により得られた新たな知見を集約した書籍や論文特集号の編集及び執筆を行った。それらを通し、最終的には「核-マントルの相互作用と共進化」について領域として新たなモデルを提案し、新たな学理として統合的地球深部科学の確立を試みた。成果取りまとめを計画的に進めるために、5月、8月、10月に集中的に総括班メンバーによるメール会議を行った。その他、社会・国民に向けた研究成果情報の発信も精力的に実施した。具体的には、一般に向けて研究教育成果を分かりやすくまとめた成果報告書を編集するとともに、ホームページ及びSNSを活用して成果の周知及び情報発信を行った。これらに加え、成果取りまとめの一環として、本領域の活動により得られた新たな知見を集約した英文書籍の編集及び執筆を行った(英文書籍については米国地球物理学連合からの出版を現在進めている)。これらを通じ、本研究プロジェクトの成果を一般のレベルから専門家のレベルまで国内外を問わず幅広い対象に向けて発信した。これら領域の活動について事後評価を受け、「A」の評価を得た。一方、本年度に実施を予定していた研究成果発表会については、新型コロナウイルス感染症の蔓延により延期せざるを得ない状況となった。
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X線非弾性散乱法による下部マントル条件での含鉄ブリッジマナイトの結晶弾性定数測定
研究課題/領域番号:19H02004 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
福井 宏之, 米田 明, 芳野 極, 鎌田 誠司, 中塚 晃彦
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
鉄やアルミニウムに富む中央海嶺玄武岩組成の出発物質からブリッジマナイト単結晶を高圧下で合成し、その評価を電子プローブμアナライザ、単結晶X線回折、放射光メスバウア分光により実施した。この結果、海洋地殻起源のブリッジマナイトでは、電荷カップル置換により結晶中のMg,SiがFe,Alに置き換わっていることを明らかにした。この内容は論文に纏められ、2021年11月に研究分担者が主著者としてScientific Reports誌に掲載された。研究代表者も本論文の著者に含まれている。この評価された単結晶と同時に合成された単結晶を集束イオンビームにより切り出し、ダイヤモンドアンビルセルに封入した。これについてのX線非弾性散乱実験は現在進行中である。
これとは別に、bcc構造を持つタンタル単結晶に対し、54万気圧までの条件でX線非弾性散乱測定を実施した。fcc構造を持つ金属単結晶に比べて、bcc構造は非静水圧下でも単結晶の結晶性が悪化しにくいため、54万気圧でも良好な測定が可能であった。この結果に基づき、タンタルを用いた絶対圧力スケールを構築した。このスケールは、近年報告されたルビースケール(Ruby2020)とも測定圧力までの範囲で調和的であった。本研究では測定していないが、タンタルは100万気圧付近でコーン異常による軟化が報告されているが、約80万気圧まで先行研究による状態方程式と矛盾はなかった。またこの内容はすでに論文に纏めて現在投稿中である。 -
非含水主要マントル鉱物の水素位置の特定とそのレオロジー特性の解明
研究課題/領域番号:18H01314 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
辻野 典秀, 芳野 極, 山崎 大輔, 米田 明
配分額:17290000円 ( 直接経費:13300000円 、 間接経費:3990000円 )
水がカンラン石のレオロジーに大きな影響を与えることが示されてから、30年以上にわたってマントル鉱物のレオロジーへの水の効果は多くの研究者によって調べられてきている。しかし、報告された結果には一貫性がなく、マントルのダイナミクスへの水の効果を定量的に応用する段階にないのが現状である。その主な原因は、ほとんどの研究で全含水量をパラメータとした議論に限定されてきたため、マントル鉱物のレオロジーに対する水素の結晶学的配置の影響が全く考慮されてこなかった点にあると考えられる。また、遷移層・下部マントルに至っては、レオロジーに関する研究が限られており、水の影響を議論するに至っていない。本研究は、FTIRで観測されるいくつかのOH伸縮バンドがそれぞれの水素位置を反映していることに着目して、上部マントルから下部マントルまでの主要鉱物について水素位置を特定し、レオロジーに与える水の影響を結晶学的に解明することを目的とする。
水素位置の特定には主にIRスペクトルを用いる。本研究では主に無水マントル鉱物単結晶の結晶方位・圧力・温度依存性を明らかにすることで、水素位置の特定を行う。そこで、2018年度は主に、ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧その場IRスペクトルの温度依存性を明らかにすべく、加熱(~400℃)・冷却(~-80℃)システムの導入を行った。また、この加熱・冷却システムの導入に先立って、徳島大学にてカンラン石とAlを含む斜方輝石についての極低温条件(8K)までのIRスペクトル測定を行い、Alを含む斜方輝石でブロードなOH伸縮バンドはガーネットで報告されているような結果とは異なり、極低温下でもブロードなままであることが確認された。また、さらに、水素位置を特定後、水を含むマントル鉱物のレオロジーを測定するための変形試験機の高度化も併せて行った。 -
下部マントル深さ~1000kmの粘性率異常の原因解明と化学組成の制約
研究課題/領域番号:17H01173 2017年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
山崎 大輔, 辻野 典秀, 芳野 極, 米田 明
配分額:44590000円 ( 直接経費:34300000円 、 間接経費:10290000円 )
本研究の目的は、深さ~1000 kmの粘性率異常の原因を解明することである。最近のジオイド研究から、下部マントルの深さ1000km付近で粘性率が1-2桁増加することが指摘されている。一方で、地震学的研究において、沈み込んで行くスラブの滞留が、660 kmの下部マントル境界のみならずおおくの場合で1000 kmにあることが見て取れる。すなわち、1000 kmにおける粘性率増加が、マントル対流へ与える影響は660 km不連続面と同程度かそれ以上であること示している。従って、全マントルの運動を理解する上で、この1000 kmの粘性増加が何に起因しているのかを物質学的に明らかにすることは非常に重要な課題である。
下部マントルは主にブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相混合岩石で構成されている。この2相では粘性率が数桁のオーダーで異なっており、複合岩石としての微細構造やそれぞれの相の量比が全岩の粘性率に影響を与える。すなわち、逆に、観測されている粘性率を与える量比を実験的に明らかにすれば、現在でも問題となっている下部マントルの組成(パイロライト的かコンドライト的か)については、新たな制約を与えることができる。
そのため、下部マントル条件を実験的に再現し、ブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相混合岩石の粘性率に関する実験を行ってきている。特に、30年度は、2相混合岩石に大変形剪断歪みを与える実験の技術的開発を行い、100%以上の実験に成功した。また、開発した手法を放射光その場観察実験に応用し、変形場での応力その場測定を実施した。 -
微量な水のマントル物性への影響-アセノスフェア軟化の解明-
研究課題/領域番号:17H01155 2017年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
芳野 極, 辻野 典秀, 山崎 大輔, 米田 明
配分額:45500000円 ( 直接経費:35000000円 、 間接経費:10500000円 )
マントルに水が存在すると岩石の融点を下げるだけでなく、マントルの物性に多大な影響を与えることが指摘されてきた。マントルの進化・ダイナミクスを考慮する上で水のマントルの物性への影響の理解は重要である。特にマントルの力学的に柔らかい部分であるアセノスフェアの軟化の成因における水がどのような役割を果たしているかは重要なトピックとなっている。しかしながら、どの程度の量の水が、どのようにマントルの物性へ影響しているかを特定することは簡単ではない。本研究では、微量な水を含むマントル鉱物中の水の物性への影響を、水の量、酸素雰囲気の関数として、弾性定数、減衰(Q値)、電気伝導度、熱起電力を高圧実験の手段によって決定し、地球物理学的な観測データと比較することにより、地球のマントルに存在する水の量と分布の定量化を行うことを目的とする。
本年度は、極微量な水を含むマントル物質の物性測定を開始した。H-D相互拡散実験による水素自己拡散係数の決定を行い、オリビンの電気伝導度への水の影響の見積もりを行なった。含水フォルステライトの電気伝導度測定をSiO2バッファー化で合成した含水試料とMgOバッファーの環境で合成した含水試料について行った。本研究課題で導入した全真空型顕微赤外分光器を用いて合成オリビン試料の赤外吸収スペクトルから、SiO2バッファー試料とMgOバッファー試料のスペクトルは異なっており、SiO2バッファー試料はより低端数側にピークを持ち、水の量に対してより大きな依存性を持ち、電気伝導度の活性化エネルギーが大きくなることが分かった。このことから、マントル中の水を定量化するためには、バッファー環境を制御する必要があることが分かった。強制振動実験の放射光その場観察から、少量の水が存在するとフォルステライト多結晶体はより減衰する傾向が認められた。 -
「核-マントルの相互作用と共進化」の国際活動支援
研究課題/領域番号:15K21712 2015年11月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
土屋 卓久, 芳野 極, 鈴木 昭夫, 入舩 徹男, 鈴木 勝彦, M Satish‐Kumar, 田中 聡, 田中 宏幸, 鍵 裕之
配分額:74750000円 ( 直接経費:57500000円 、 間接経費:17250000円 )
米シカゴ大、メリーランド大、カリフォルニア州立大バークレー校、カーネギー研究所、仏リヨン高等師範学校、モンペリエ大、リール大、チェコ共和国チャールズ大、加クイーンズ大などから著名研究者計8名、その他海外から計7名、合計15名の研究者を招聘し共同研究を行った。一方、領域内からは独バイロイト大への2名の大学院生の長期派遣をはじめとして計7名の研究者及び学生を海外へ派遣し、共同研究やセミナーを実施し国際ネットワークの強化を図った。これらを通じ計9カ国、30機関に及ぶ多数の海外研究機関と研究者の相互派遣を行い、精力的に国際連携・国際共同研究を実施した。また国際活動支援班による支援を受けた計9件の研究成果を、国際共著論文として出版した。
招聘した研究者の中から一線で活躍する研究者や権威と位置付けられる著名研究者に関しては、共同研究のみならず国際レクチャーも実施した(計2件)他、高圧鉱物学、グローバル地震学、地球化学、地球力学、ニュートリノ物理学の著名研究者を講師とした第2回国際スクールを総括班とともに開催し、領域内の先端教育にも協力いただいた。これらは領域内外に広く周知を行い、多数の参加者が得られるよう工夫した。また総括班が領域全体の成果発表会を兼ねて年度末に主催した国際シンポジウムや計画研究A01-3が愛媛大共同利用共同研究拠点と共催して開催した超高圧実験技術に関する国際ワークショップを支援し、領域の研究推進と研究成果の国内外への発信、若手研究者の育成及び国際連携強化に取り組んだ。さらに令和元年度に計画研究A03-1を中心としてタイで開催を計画している国際ワークショップの準備にも取り掛かった。
また領域の英語版ホームページを通じて活動報告を発信するなど、領域に関する他国研究者の興味と関心を幅広く集めるべく国際広報活動の充実化を推進し、本研究の活性化・拡大を図った。 -
核-マントル物質の動的挙動
研究課題/領域番号:15H05827 2015年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
芳野 極, 西原 遊, 平賀 岳彦, 太田 健二, 久保 友明, 安東 淳一
配分額:152360000円 ( 直接経費:117200000円 、 間接経費:35160000円 )
熱・物質輸送過程の観点から地球深部物質の物性測定の研究を推進し、今年度は以下のような成果が得られた。外核の熱伝導率を検証するために、マルチアンビル装置を用いて溶融状態の鉄の電気伝導度測定の開発を行ない、15GPaまでの測定が可能となった。DACを用いた研究では、内核の熱伝導率と熱流の異方性の有無を検証するために、内核の主要構成相であるhcp鉄の熱伝導率異方性の測定を行った。その結果、hcp鉄には45 GPaで約3倍程度の熱伝導率異方性が存在することがわかった。また、外核に含まれる軽元素候補の一つである水素が鉄の電気伝導度に与える影響を高温高圧実験により初めて明らかにした。(Mg,Fe)Oは下部マントル中で様々な組成で存在していると考えられている。本研究では組成の異なる(Mg,Fe)Oの格子熱伝導率の測定を高圧下で行い、(Mg,Fe)Oの格子熱伝導率の組成依存性を明らかにした。
KEK, NE7Aに導入したD111型ガイドブロックを用いた高圧変形実験では、hcp鉄の高温高圧変形その場観察を行なった。圧力17-23GPa、温度423-873Kで行なった歪速度ステップ、温度ステップ、圧力ステップ実験により、この条件でのhcp鉄の流動則を決定した。約700K以上の高温では、純金属のべき乗則クリープで一般的な5に近い応力指数の値が得られた。これは地球内核の粘性率を解明するための足掛かりとなる。また、せん断変形場でMg2SiO4のオリビンースピネル相転移実験、NaNiF3のペロフスカイトのポストペロフスカイト相への相転移機構を明らかにする研究を開始した。パイロライト物質に加えMORBについても下部マントルにおける粒径進化を検討し、MORBはパイロライトよりも細粒になることから、粘性に違いが出る可能性が示唆された。 -
「核-マントルの相互作用と共進化」の推進と支援
研究課題/領域番号:15H05826 2015年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
土屋 卓久, 芳野 極, 鈴木 昭夫, 入舩 徹男, 鈴木 勝彦, M Satish‐Kumar, 田中 聡, 田中 宏幸, 鍵 裕之
配分額:67470000円 ( 直接経費:51900000円 、 間接経費:15570000円 )
領域の研究推進と計画研究間の情報交換を目的として、計画研究が開催する国際ワークショップや複数の計画研究が連携して行う研究集会の支援を行った(計3回)。また日本地球惑星科学連合年会及びアジア・オセアニア地球科学会において領域セッションを開催し、本領域の研究成果や進捗状況を公表した。一般科学誌において本領域の特集号を出版し、領域の活動や最新の研究成果について発信を行うとともに、専門誌特集号の製作についても検討を開始した。年度末には国際活動支援班と連携して国際シンポジウム兼成果発表会を開催し、研究の進捗状況について点検を行うとともに、最終年度に向けてとりまとめ計画を策定した。
若手育成活動に関しては、海外から高圧鉱物学、グローバル地震学、地球化学、地球力学、ニュートリノ物理学の著名研究者を講師として迎え、第2回国際スクールを開催し、地球深部科学の先端教育を実施した。また若手研究者を中心とした研究集会を1回開催し、分野を越えた交流を活発に行った。また一線で活躍する海外の研究者や権威と位置付けされる著名研究者による国際レクチャー(集中講義)を計2回、国際セミナーを計8回開催した。さらに領域内での研究手法の共有を目的とした先端技術インターンシップを1回開催した。
アウトリーチに関しては、国際スクールの際に開催地(岐阜県飛騨市)周辺の高校生に対し普及講演や若手研究者とのグループワークを行った他、計10件の一般向けイベントを開催した。その他、ニュースレター第6号、第7号の発行の他、ウェブサイトやメールニュース(毎月1回配信)を通じて領域内連携の活発化を促進するとともに、SNSも活用して領域外への広報活動や情報公開を幅広く行った。また日本地球惑星科学連合年会において、展示ブースを設置し本学術領域の活動を広く紹介した。その他、研究成果等について計8件のメディア報道を行った。 -
マントル鉱物の結晶弾性測定:地震波速度異方性の物質的解釈に向けて
研究課題/領域番号:15H02128 2015年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
米田 明, 辻野 典秀, 芳野 極, 山崎 大輔, 福井 宏之
配分額:42640000円 ( 直接経費:32800000円 、 間接経費:9840000円 )
本基盤研究Aでの研究目標は、“マントル鉱物の結晶弾性のマントルその場条件での測定”である。GHz音波、X線、レーザー光のセル内への導入実績のあるダイヤモンドアンビルセル(DAC)を高圧装置として採用し、測定対象は重要なマントル鉱物であるワズレアイト、リングウタイト、ブリッジマンナイト(MgSiO3ペロブスカイト)、フェロ ペリクレース、CaSiO3ペロブスカイト、MgSiO3ポストペロブスカイトとしている。端成分組成のデータだけでなく、鉄やアルミ ニウム、さらには水の影響を解明するデータも重要である。
非弾性X線散乱実験(IXS)では、NaClで20GPa、Taの単結晶弾性を約33GPaまで測定することに成功した。一方、Ptの20GPaまでの状態方程式を作成し論文として纏め、HPMPSの特集号に投稿し受理されている。正式発表はまだであるが、ネットで閲覧できる状態になっている。このPtと前年度の測定したAuの結果を比較検討中である。これらの状態方程式は、IXSで取得した体積弾性率と同時測定した格子定数のデータのみを使っており、一次圧力スケールと位置付けられるものである。GHz音速法も、時間がかかっているが、最近、重要な進展があった。世の中で確立している方法ではなく、自分で考えながらやっている研究手法である。最近の進歩に対し、手ごたえを感じており、成果を出せる日は近づいている。ここまでの技術開発については学会等で発表している。論文化できるデータ取得を2019年度中に行う。 -
研究課題/領域番号:15K05342 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤田 清士, 宇野 康司, 古川 邦之, 芳野 極
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究では、火山体を構成する岩石の電気物性と磁気物性を同時に検証した。流紋岩が高温で溶融する際、その試料を電気伝導度で“その場観察”すれば、溶融の度合いに関するデータを得る事ができる。一方、高温下の流紋岩も磁性を大きく変化させる。申請者等は、火山体下の状態を実験により再現し、電気伝導度・磁化の2つの視点から岩石の熱履歴を捉える研究を試みた。実験から得られた岩石の電気伝導度・磁化データを、電磁場観測から得られた電気伝導度構造解析結果や磁力計によって観測されたマクロな火山体の磁化構造などと直接対比することにより、観測結果と実験結果との相互検証が可能となった。
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軽元素の六方晶鉄のレオロジーへの影響:内核の構造とダイナミクスへの応用
研究課題/領域番号:26287136 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
山崎 大輔, 米田 明, 芳野 極
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
内核物質である六方晶鉄合金の粒成長速度と拡散速度を実験的に決定し、内核の変形機構および粘性率を推定した。その結果、地震波速度減衰の東西方向の不均質性を説明する為には、化学組成の不均質性が必要なことが判明した。さらに、珪素の粘性率に対する依存性が小さいことを明らかにすることによって、他の軽元素が核中に大きく不均質に固溶し、レオロジー特性の不均質性を生み出している可能性を示した。
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冥王代初期のメルト生成過程とhidden reservoirの生成条件の解明
研究課題/領域番号:26400514 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
小木曽 哲, 近藤 望, 芳野 極, 松影 香子
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
地球の材料物質と現在の地球の間のNd同位体比の差を補完する「隠された」リザーバー(hidden reservoir)が持つべき主成分元素組成と密度を、同位体に基づいたモデル計算と高圧融解実験、状態方程式を用いたモデル計算によって求めた。その結果、hidden reservoirとなるべきメルトは、地球形成から3000万年以内に7GPa・1750℃で2%以下の融解度で生成される必要があることがわかった。このメルトは、鉄・チタンなどに富むコマチアイト質で、密度は始原的マントルよりも有意に小さいため、冥王代初期に地球表層に地殻を形成し、その後の巨大衝突によって地球から失われた可能性が高い。
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マントルの水マッピング:高温高圧下の地震波減衰特性と電気伝導度からの制約
研究課題/領域番号:24244087 2012年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
芳野 極, 米田 明, 西原 遊, 山崎 大輔
配分額:46020000円 ( 直接経費:35400000円 、 間接経費:10620000円 )
本研究は地震波減衰を特徴付けるQ値、電気伝導度を水の量の関数として決定し、マントルに存在する水の量と分布を解明を試みた。短周期振動油圧システムの開発、導入を行い、その場X線ラジオグラフィ観察によって高温高圧下の含水物質のQ値の決定が可能となった。上部マントル、マントル遷移層の主要鉱物であるオリビン、ワズレアイト、リングウッダイトの電気伝導度を水の関数として決定するため、単結晶の含水鉱物を合成してH-D相互拡散実験を行った。その結果、今まで測定の難しかった比較的高温の条件での電気伝導度の推定に成功し、マントル遷移層の平均の水の量は0.1wt.%であり、量に多様性があることも分かった。
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研究課題/領域番号:24540512 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
藤田 清士, 芳野 極, 和田 穣隆, 市來 雅啓
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
含水鉱物・含水岩石からどれだけの“水”や“流体”が脱水したかを定量的に評価する手法は未だ確立していない。申請者のこれまでの研究はこの問題を解決するための布石であり、電気伝導度変化量から脱水量や脱水した流体の化学組成まで見積もる定量的解釈に貢献する基礎技術の確立であった。本申請では、これまでの研究からさらに一歩踏み込み、閉じた系に含水岩石を封入し、脱水させた際の電気伝導度を測定するだけでなく、岩石が溶融した際の電気伝導度もその場観察した。従前に収得した無水岩石・無水鉱物の電気伝導度と対比から、脱水量や脱水した流体の塩濃度だけでなく溶融の度合いまで見積もることが可能になった。
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ダイヤモンドアンビルセルNMRによる地球惑星内部の水素系物質の高圧その場観察
研究課題/領域番号:23340161 2011年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
奥地 拓生, 芳野 極, 佐々木 重雄, 山下 茂
配分額:18200000円 ( 直接経費:14000000円 、 間接経費:4200000円 )
太陽系の惑星や衛星内部の鉱物や氷物質に含まれる水素の化学結合状態と拡散ダイナミクスを、高圧その場条件で観測した。水素は拡散が最も速い元素であり、また水素結合をつくることから、その挙動が特異的である。この水素の挙動の問題に対して新たな研究成果を提出した。代表的な成果としては、水素ハイドレートと水素流体のNMRによるダイナミクス、ブルーサイトの中性子回折による結晶構造と高温アニーリングによる水素拡散、およびメタンハイドレートの中性子回折を、いずれも高圧その場条件で観測した。
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地球深部をアナログとしたFe‐C系高温高圧実験における炭素同位体分別の研究
研究課題/領域番号:23654186 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
M. Satish-Kumar, 芳野 極
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
本研究では,地球コアに含まれる軽元素の主な成分を炭素と想定し,高温高圧実験からFe-C系の状態図について検討した.高圧実験は,出発物質に粉末の鉄と同位体比が既知の粉末のグラファイトを使用し,川井型マルチアンビル装置を用いて5~14GPa,1200~2100℃の条件で反応実験を行った.この実験より鉄の炭化物-固体炭素間における超高温高圧条件での炭素同位体分別を定量化し、炭化物-固体炭素間の炭素同位体分別係数を得ることができた.
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川井型装置による核マントル境界の温度圧力発生とマントル最深部実験地球科学の展開
研究課題/領域番号:22224008 2010年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
米田 明, 伊藤 英司, 山崎 大輔, 芳野 極, 富岡 尚敬, 辻野 典秀, 大迫 正弘
配分額:201760000円 ( 直接経費:155200000円 、 間接経費:46560000円 )
焼結ダイヤモンドアンビルによる川井型装置圧力発生のフロントランナーとして世界的に認知される成果をあげた。期間中の代表的成果は“ε鉄の状態方程式の決定”である。半導体ダイヤモンドヒーターを実用化した。超高温発生に最適なヒーターとして近年中に世界標準になると断言できる。ポストペロブスカイトのアナログ物質であるCaIrO3で多様な実験を実施した。特にSPring8でのX線非弾性散乱法によるペロブスカイト及びポストペロブスカイトCaIrO3の結晶弾性測定は世界的にも先駆的業績である。
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研究課題/領域番号:22340124 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
藤 浩明, 浜野 洋三, 芳野 極
配分額:11310000円 ( 直接経費:8700000円 、 間接経費:2610000円 )
マントル中の「水」は,マントルの物性を大きく変え,またその対流様式にも強い影響を与えている。本研究では,高い貯水能力を持つと予想されるマントル遷移層に着目し,その含水率を海底観測と室内実験から解明する事を目的とした。室内実験の結果,ごく微量(<0.1 wt%)の水では,観測された電気伝導度に有意な違いをもたらさない事が分かり,海底観測からは,北西太平洋海盆下で数‰程度の水しか含まない比較的乾いたマントル遷移層の存在が確認された。
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研究課題/領域番号:21109003 2009年07月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
小川 康雄, 藤田 清, 神田 径, 松島 政貴, 芳野 極, 藤 浩明, 上嶋 誠, 市來 雅啓, 小山 崇夫
配分額:168220000円 ( 直接経費:129400000円 、 間接経費:38820000円 )
東北日本弧の中央部に位置する宮城県鳴子周辺で電磁気観測を高密度に行い、地殻・上部マントルの3 次元比抵抗構造を推定した。活動的な火山である鳴子や鬼首では、地殻深部から地表に向かう鉛直状の低比抵抗異常が解明された。この低比抵抗体は、その上面がほぼ脆性塑性境界に対応することから、メルトではなく高塩濃度の流体だまりであろう。マントルに関しては、沈み込むプレートの上面から低比抵抗体が立ち上がり、その延長が脊梁山地に向かうものと、さらに分岐して日本海側の火山列に至るものが見いだされた。下部地殻条件の含水岩石実験からは、これらの低比抵抗を説明するために、高塩濃度の塩水の存在が必要であることがわかった。
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高圧実験によるポストペロフスカイトとマントル最下部のレオロジー
研究課題/領域番号:21340128 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
山崎 大輔, 伊藤 英司, 芳野 極, 桂 智男
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
ポストペロフカイトはマントル最下部層(いわゆる、D"層)の主要構成物質である。そこで、地球内部の対流を理解するために、ペロフスカイトからポストペロフスカイトへの相転移に伴う、レオロジー的性質の変化を高圧実験的手法により調べた。結晶粒径は、物質の粘性率や変形機構を制約する重要な要因で有り、実験結果から、相転移に伴い細粒化が起こることが明らかになった。このことは、ポストペロフスカイトに相転移することによって粘性率の低下が起きることを示している。
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巨大単結晶と大容量超高圧発生技術に基くマントル深部のレオロジー
研究課題/領域番号:20224010 2008年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S) 基盤研究(S)
桂 智男, 米田 明, 山崎 大輔, 芳野 極, 安東 淳一, 伊藤 英司, 富岡 尚敬
配分額:198900000円 ( 直接経費:153000000円 、 間接経費:45900000円 )
1. 本年度、設備備品として、精密イオンポリッシングシステム(PIPS691)・PIPSコールドステージ・GATAN636試料冷却2軸傾斜ホルダ・試料ホルダ予備排気装置・GATANデジタルマイクログラフソフトウェァを購入し、セットアップを行った。
2. 単結晶フォルステライトの珪素自己拡散係数を圧力3~13GPa、温度1600Kと1800Kで測定じた。単結晶試料の化学組成は、電子線マイクロープローブで調べた限り不純物は検出されない純粋なMg2Si04である。拡散の方向は[100]および[001]である。超高圧高温拡散実験は川井型マルチアンビル装置で行い、拡散プロファイル測定は二次イオン質量分析計で行った。得られた拡散係数は、1600Kでは10^<-20>~10^<-21>m^2s^<-1>、1800Kでは10^<-19>m^2s^<-1>であった。これにより、活性化エネルギーは430kJ/mol、活性化体積は1.3x10^<-6>m^3/molと見積もった。
今回得られた拡散係数は1気圧下での測定結果より2桁以上拡散係数が大きい。これは圧力効果では説明できない。他の研究結果と合わせて総合的に検討すると、拡散実験中に圧力媒体から進入してきた水がフォルステライト結晶中に欠陥を作るためと考えられる。無水条件下で拡散実験をするための特別な技術の開発が必要であることがわかった。
3. 単結晶試料によるMgSi03ペロフスカイトの珪素自己拡散実験を行った。拡散実験は、圧力23GPa、温度1870Kと2070Kで行った。単結晶試料によって得られた珪麦自已拡散係数は、他結晶試料によって得られた珪素自己拡散係数と誤差の範囲で一致する。また、有意な結晶方位依存性は見られない事が分かった。
4. MgSi03ペロフスカイトの変形実験用の単結晶試料を合成し、4軸回折計・EDS付SEMによって結晶性・化学組成・包有物の有無な調べた。単結晶試料は結晶軸方向に垂直な面で研磨した。現在、変形実験用長高圧セルの開発を行っている。 -
差応力下における部分溶融ペリドタイトの微細構造・物性に関する研究
研究課題/領域番号:20340120 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
芳野 極, 山崎 大輔, 米田 明, 桂 智男, 伊藤 英司
配分額:18720000円 ( 直接経費:14400000円 、 間接経費:4320000円 )
差応力下における部分熔融ペリドタイトの物性を決定するために、変形機構を有するDIA型マルチアンビルのシステム更新を行った。変形実験で差応力場での部分熔融ペリドタイトの電気伝導度の異方性と静水圧場における電気伝導度の比較を行った。予察的な結果は剪断応力場では剪断方向に水平方向に電気伝導度が垂直方向に比べ、約1桁高くなる傾向が得られた。このことはアセノスフェアで観測される電気伝導度異方性が部分熔融メルトによっていることを示唆する。
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複合体としてのマントル岩石物性:試料合成・弾性測定・モデリングによる実証的研究
研究課題/領域番号:19204044 2007年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
米田 明, 桂 智男, 山崎 大輔, 芳野 極, 伊藤 英司, アントン シャッキー
配分額:48620000円 ( 直接経費:37400000円 、 間接経費:11220000円 )
スティショバイトの純良単結晶の合成に成功し、X線、FTIR,EPMA等で結晶評価行った。プリセッションカメラにより結晶方位を確定し、200-500ミクロン長の直方体に整形した。高周波共振法で約20本のピークを確認し、弾性定数を決定した。マルチバッファレイヤーモデルを開発し、2次元多孔質体の空孔効果を系統的に解析し、その結果から、空孔率、空孔の扁平率、ポアソン比と実効弾性定数の間に極めてエレガントな解析式を見出すことに成功した。
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2相系としてとらえた高圧下における下部マントルレオロジーの研究
研究課題/領域番号:18340173 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
山崎 大輔, 桂 智男, 芳野 極, 伊藤 英司, 大藤 弘明
配分額:15800000円 ( 直接経費:14600000円 、 間接経費:1200000円 )
地球の下部マントルは主要に珪酸塩鉱物とフェロペリクレースで構成されていることから、単相ではなく2相系としてのレオロジー特性が重要であるとの認識に基づき、2相系の下部マントル岩石を実験室内で再現するために高温高圧実験を行った。実験試料の微細構造観察により、比較的低温である沈み込んでいくスラブの粘性率はフェロペリクレースのそれに制約されていること、マントル最下部で観測されている地震波速度の異方性はフェロペリクレースに起因していることを明らかにした
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地球マントル物質の電気伝導度〜水の影響について
研究課題/領域番号:18740280 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
芳野 極
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
本度は、上部マントルの主要構成紘物であるカンラン石、ウオズリアイト、リングウッダイトの電気伝導度への水の影響に関する研究を引き続き行った。水入りかんらん石の電気伝導度への水の寄与に関しては、前年度のうちにNature誌に公表されたが、同じ号に掲載された他のグループの同種の論文の結果と大きく異なっていることが分かった。この2つの結果の大きな違いが生じる原因として、測定温度領域の違いと我々の用いたサンプルが単結晶であるのに対し、彼らの使用したサンプルが多結晶体であることが挙げられる。彼らの測定した温度領域は1000Kを超えるような高温領域であるため、かんらん石の電気伝導度メカニズムは高温で鉄の効果による小さなポーラロン伝導が卓越してくるので、単純に水の効果によるプロトン伝導だけを示さない。そのために、低温の測定を行うことが伝導メカニズムをより分けるために必要である。そこで本年度は水入りかんらん石の電気伝導度への影響を彼らと同じく多結晶体を用いて行った。我々は、多様な水の量を含むかんらん石を合成し、その電気伝導度を含水サンプルに関しては脱水がほとんど起こらない低温(<1000K)で無水に近いサンプルは高温までの幅広い温度領域で測定した。その結果、2つのメカニズムを分離することに成功し、求めたプロトン伝導の活性化エネルギーは、単結晶から得られたものに非常に良く合うことが確かめられた。一方で、前年度行ったウオズリアイト、リングウッダイトの電気伝導度への水の影響に関する論文を投稿した。その過程で査読者はインピーダンススペクトル解析の必要性を言及した。我々の通常の電気伝導度測定は、低周波数(0.1〜0.01Hz)の交流回路であることから、サンプルと電極の反応、プロトンの分極などの効果が現れる可能性を否定できない。そこで、新たにインピーダンススペクトル解析を幅広い周波数帯(1Mhz〜0.01Hz)で実施した。この解析結果から、低周波数測定から得られた電気伝導度とインピーダンススペクトル解析から得られた電気伝導度はほぼ一致することが確認された。この結果を踏まえて、論文を改訂し、2008年1月号のNature誌に公表された。
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電気伝導度測定による珪酸塩鉱物中の連結度の解明
研究課題/領域番号:03J02518 2003年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
芳野 極
配分額:3300000円 ( 直接経費:3300000円 )
本年度は、アメリカ合衆国ニューヨーク州トロイにあるレンセラー工科大学のワトソン教授の下で、主にピストンシリンダー高圧発生装置を用いた実験を行い、固液混合系における液相の分布形態の幾何学を回収試料の電子顕微鏡写真を用いて行った。液相の連結度は電気伝導度に非常に敏感であり、その微細構造の詳細を知ることは地球深部物質の液相の移動(浸透率)、弾性特性、レオロジーなどの物性を明らかにするのに非常に有効な手段である。
本年度前半は様々な二面角、ファセットの度合いを示す液相と固相からなる系を液相の体積分率を変えることにより、固相の表面が液相にどれだけ濡らされるのか(ウエットネス)を詳細な画像解析により調査した。ウエットネスは固相の全境界(固相? 固相境界および固液境界)面積に占める固液境界の比で表される。ウエットネスは概して液相の体積分率の増加につれて増加するが、二面角の小さな系ほど増加の度合いが大きいことが分かった。特に、ファセットの度合いの小さい系に関しては、理論から予測される値に近い結果を与えた。しかしながら、ファセットの度合いが大きくなるにつれ、ウエットネスは理論曲線からはずれて低い値を持つことが示唆され、これは結晶の表面エネルギーの異方性が大きくなると粒子のクラスター化、液相が不均質にプール状に集まるためであると推測される。また、液相の体積分率とウエットネスを対数でプロットすると傾き1/2で近似できることが分かった。このことは、液相の固相内における分布は、粒子の稜部を結ぶ線状のネットワークを形成していることを示す。この結果に基づき固液2相系における弾性モデルを構築した。
本年度後半はオリビン-水系の二面角の測定を1200度Cで1? 13GPaまでの範囲で行った。4GPa以上の実験はエール大学の唐戸教授のもと行った。二面角は圧力の上昇にともない急激に減少することが測定の結果から明らかになり、おそらく10GPa付近では二面角は0度に近くなることが示された。このことは少量の水の存在が上部マントル深部で物性に対し、多大な影響を与えることを示唆する。