共同研究・競争的資金等の研究 - 加藤 公児
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フィコビリソーム-四量体光化学系I超複合体の構造生物学的研究
研究課題/領域番号:20H02914 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
加藤 公児, 長尾 遼
配分額:17940000円 ( 直接経費:13800000円 、 間接経費:4140000円 )
光化学系I(PSI)は、シアノバクテリアでは三量体そして植物では単量体であることが広く知られている。近年、研究代表者らはシアノバクテリアであるアナベナから新しいタイプの四量体PSIを精製し、クライオ電子顕微鏡を用いて3.3Å分解能で構造を決定し、これまでにない色素間の相互作用とエネルギー伝達経路を明らかにした。本研究は、この四量体を形成するPSIと光エネルギーを集めるアンテナタンパク質の超複合体を単離し、その構造と機能を解明することを目的とする。
2021年度は高分解能の解析が困難であることが予想されるアンテナタンパク質サブコンプレックス、フィコシアニンを、陰イオン交換カラム等を用いて精製を行った。その精製標品と市販の結晶化スクリーニングキットを用いて約500条件で結晶化し、いくつかの条件で結晶が得られた。それらの結晶を用いて、SPring-8のビームラインBL41XU及び、BL44XUにて、X線回折実験を行い、1.5Å分解能の回折強度データを収集した。さらに、分子置換法により初期位相を決定することに成功した。
超複合体の構造解析においては、最終精製ステップに用いたトレハロース密度勾配遠心分離法で得られた複数の画分(複合体)それぞれを、負染色による透過電顕観察を行うことにより粒子の均一性を確認した。その中で最も安定で均一性が高い複合体について、クライオ電顕グリッドの調整条件を検討し、比較的良好な条件で5000枚程度のクライオ電顕画像を撮影し、単粒子解析を行ったところ、分解能が9Å程度のクライオEMマップが得られた。しかしながら分解能が足りないためモデルの構築には至っていない。撮影された電顕画像を確認したところアンテナタンパク質と思われる分子の解離が見られたため、超複合体が不安定で様々な会合状態の超複合体が混在していることが原因で分解能が良いマップが得られなかったと考えられる。 -
褐藻由来光化学系アンテナ超複合体の単粒子構造解析
研究課題/領域番号:20H03194 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
秋田 総理, 宮崎 直幸, 加藤 公児
配分額:18200000円 ( 直接経費:14000000円 、 間接経費:4200000円 )
本研究では、赤色系統の光合成生物である褐藻から光化学系I-フコキサンチンクロロフィルa/cタンパク質超複合体(PSI-FCPI)と光化学系II-フコキサンチンクロロフィルa/cタンパク質超複合体(PSII-FCPII)を単離し、その原子構造をクライオ電子顕微鏡単粒子解析法によって決定する。その構造を基に、複合体中の色素の配置や結合様式、タンパク質サブユニット間の相互作用、エネルギー伝達様式を解明する。さらに、緑色系統の光合成生物が持つPSI-光捕集タンパク質超複合体(PSI-LHCI)やPSII-光捕集タンパク質超複合体(PSII-LHCII)と比較する事で、異なる波長の光を吸収するために、赤色系統の光合成生物がどの様に光合成分子装置を進化させてきたかを明らかにする。今年度はコロナウイルスによって出発材料の褐藻の入手が困難であったため、PSI-FCPIに絞って、精製を行なう事にした。
褐藻Cladosiphon okamuranusをビーズショッカーで念入りに破砕し、遠心分離でチラコイド膜を分離後、回収したチラコイド膜から界面活性剤を用いてPSI-FCPI可溶化した。チラコイド膜の濃度・界面活性剤の種類・界面活性剤の濃度・温度・可溶化の時間などを検討し、SDS-PAGEで確認した。最適な可溶化条件を用いて、ショ糖密度勾配遠心分離法・陰イオン交換クロマトグラフィーでPSI-FCPIを更に精製し、SDS-PAGE、Native-PAGE、吸光スペクトル解析、ネガティブ染色試料の透過型電子顕微鏡観察等により評価した。 -
クライオ電子顕微鏡を用いた光化学系II複合体の反応中間体の構造解析
研究課題/領域番号:19K22396 2019年06月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
秋田 総理, 宮崎 直幸, 加藤 公児
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
本課題では、シアノバクテリアからPSIIを精製し、クライオ電子顕微鏡CryoARM300で約2,000イメージを撮影し、X線結晶構造解析の1.9に匹敵する1.95オングストロームのクライオ電顕マップが得られた。このマップには、PSIIの両端のPsbYサブユニットが完全な形で現れていた。そのため、クライオ電顕マップはより生体内に近い状態を示していると考えられた。しかし、測定に使用した電子線量ではPSIIの一部に損傷が見られた。そこで、イメージのフレーム数を変え、電子線量を減らして再計算したところ、2.08オングストロームという高分解能を保ったまま、損傷の少ないマップを得ることに成功した。
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4者複合体の構造解析によるtranssulfursomeのtRNA変換機構の解明
研究課題/領域番号:17H03637 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
姚 閔, 尾瀬 農之, 田中 良和, 加藤 公児
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
古細菌におけるCys-tRNA(Cys) の生合成は,2 つの酵素,SepRS とSepCysS が,それぞれ触媒する2段階の反応から成り立っている.申請者らは,この反応を推進するためには,第3のタンパク質SepCysE がSepRS とSepCysS をつないで3者複合体(transsulfursome)を形成することが必須であることを明らかにした.本研究では,そのtranssulfursome とtRNA から成る4者複合体の構造解析により,transsulfursomeが2つのリンカーを利用して動的なtRNAをプロセスする分子機構を明らかにする.そのために,H29年度に引き続き,H30年度に下記のように研究を進めた.
H30年度に,transsulfursomeとtRNAの結合実験で確認しながら,各反応段階を反映するtranssulfursomeとtRNAの変異体作製を続き,精製できた第1段階反応状態を反映するtranssulfursome変異体SepRS-SepCysE(H)とtRNA複合体を結晶化し,初期結晶を得た.現在に,その結晶の条件最適化を行っている.また,transsulfursome-tRNA複合体のクライオ電子顕微鏡の測定について,当学科に既存の共用透過型電子顕微鏡(Hitachi社製 H7650)を用いて,硝酸ウランを用いたネガティブ染色法によりtranssulfursome-tRNA複合体の確認を行ったところで,tRNA結合状態のtranssulfursomeが単体より,まっすぐのような形が多かったということが分かった.さらに,放射光施設PFにて,凍結条件のスクリーニングを実施した.その結果,transsulfursome-tRNA複合体が沈殿しやすい,クライオ電子顕微鏡の測定に適切なグリッドの作製が困難であることが分かった. -
tRNAスプライシングにおける多機能性tRNAリガーゼの分子機構解明
研究課題/領域番号:16K18498 2016年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
加藤 公児, 桜井 直文, 鈴木 稚菜
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
Trl1リガーセドメイン(Trl1-LD)- GMP複合体の構造を2.75オングストローム分解能で決定した。Trl1-LDの活性中心付近に2分子のGMP がスタックして結合していた。その複合体構造を詳細に解析した結果、2分子のGMPの周辺には塩基性のアミノ酸が集中していた。このことから、これらのGMPはライゲーション過程のtRNAエキソンをミミックしているものと考えられた。これによりTrl1-LDのtRNAの結合様式を類推することが可能となった。
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熱応答ゲル化ポリマーを利用した,中性子線構造解析のための大型結晶作製法の開発
研究課題/領域番号:16K14677 2016年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
姚 閔, 加藤 公児, 安達 基泰
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
本研究では,中性子線構造解析のために,タンパク質の良質な大型結晶の作製技術を確立することを目的とする.研究期間で,LCST型温度応答ポリマーを利用して,数種類のサンプルの大型結晶を成長させた.そのうち,分子量110kDaであるGatCABと基質の複合体の中性子構造も得られ,そのポリマーが結晶の成長に有効であることが確認できた.また,LCST型温度応答ポリマーが結晶成長に与える影響を検討したところ,結晶成長中に溶液のエントロピー変化量の変化が見られた.これは,結晶成長とともに生じていた温度変化によってポリマーの相転移が起こり,タンパク質結晶の周辺にある水分子に影響を与えたと考えられる.
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分子量4MDaの巨大酸素運搬蛋白質ヘモシアニンの構造生物学研究
研究課題/領域番号:26291008 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
田中 良和, 姚 閔, 加藤 公児
配分額:16770000円 ( 直接経費:12900000円 、 間接経費:3870000円 )
スルメイカ由来ヘモシアニンの結晶化に成功し,その構造を3.0オングストローム分解能で決定した.明らかになった構造から,スルメイカヘモシアニンが円筒型の外壁領域と,5つの内部領域から構成される,10量体の会合体であることがわかった.巨大な10量体は,2つのドメインが会合したドメイン2量体が一つの構造単位となり,それが複雑に会合することで形成されていた.サユブニット同士の界面に糖鎖修飾クラスターが存在していることがわかり,生化学実験の結果を考え合わせた結果,この糖鎖クラスターがサブユニット同士の会合に貢献していることがわかった.
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大腸菌リボソーム駆動部構成蛋白質のカセット交換による真核型合成速度の実現
研究課題/領域番号:26650013 2014年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
姚 閔, 内海 利男, 加藤 公児
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
本研究では,大腸菌のストークタンパク質の一部を真核型に変換したキメラストーク複合体を用いて,真核型タンパク質のフォールド速度に対応した減速型(真核型)発現系に変更させることによって,真核生物タンパク質の可溶化発現の改善を目指す.この目的を達成するために,大腸菌由来のストーク複合体の背骨タンパク質L10のキメラ体をin vitro作製を試み,L10の変異体L10ΔCHと2種類のL10P0キメラL10ΔCH-P0H2CTD/H3CTDの可溶化発現に成功した.また,そのL10P0キメラを精製し,P1との結合実験を行い,大腸菌のキメラリボソームストーク複合体を創製する可能性が示唆された.
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研究課題/領域番号:21770111 2009年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
加藤 公児
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
昆虫細胞-バキュロウイルス大量発現系を構築し、結晶化条件を再検討することにより、良質の結晶が得られており、SPring-8のビームラインBL44XUにおいて、最高で2.9Å分解能の回折点を確認することができた。これらの結果は、今後、高分解能でボルトの全体構造を解析し、ボルトの生体内における機能を解明する上で重要な足がかりになると期待される