共同研究・競争的資金等の研究 - 鄭 国慶
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磁場による電子対液晶状態の制御及び物性の精密測定
研究課題/領域番号:22H04482 2022年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
鄭 国慶
配分額:5850000円 ( 直接経費:4500000円 、 間接経費:1350000円 )
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スピン三重項超伝導物理の開拓
研究課題/領域番号:19H00657 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
鄭 国慶, 俣野 和明, 川崎 慎司, 市岡 優典
配分額:44590000円 ( 直接経費:34300000円 、 間接経費:10290000円 )
2019年度において、以下の成果を得た。
1)遷移金属Crを含む化合物A2Cr3As3(A=Na,K,Rb)において、超伝導ギャップに普遍的に点状のノード(ギャップがゼロ)が存在することを明らかにした。また、この物質群が強磁性量子臨界点付近に位置し、量子臨界点への距離はアルカリ金属Aの半径によって制御できることを発見した。Aの半径が大きいほど、A-Cr-Aのボンド角が90度に近づき、強磁性相互作用を増大させることを指摘した。これらの結果はA2Cr3As3が超流動ヘリウムの固体版であることを示唆している。
2)トポロジカル絶縁体Bi2Se3にCuをドープする単結晶を作製し、Cu濃度が広範囲にわたる高品質な超伝導試料を得た。Se-NMRを測定した結果、Cu濃度が類似した試料において、スピン三重項超伝導を記述するdベクトルが90度異なることがあるのを発見した。この結果は、dベクトルは局所的なひずみによってピン止めされることを示唆する。また、Cu濃度が0.4を超えると、超伝導ギャップが異方的(nematic)なものから等方的なものに変わることを発見した。これは、高ドープ域ではカイラル超伝導状態が実現している可能性が高いことを示すものである。
3)空間反転対称性の破れた超伝導体TaRh2B2を作製し、NMR測定を行った。その結果、非従来型超伝導状態が実現していること、常伝導状態では電子相関の強いことが明らかになった。
4)非磁性不純物効果と超伝導ギャップ対称性の対応関係を理論的に明らかにした。 -
六方晶や三角格子等の特殊構造が生み出す新奇超伝導のNMR法による研究
研究課題/領域番号:16H04016 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
鄭 国慶, 俣野 和明, 川崎 慎司
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
本研究の目的は三角格子や六角晶など特殊な結晶構造を有する物質において、新奇な超伝導状態を核磁気共鳴(NMR)法によって探索することである。研究対象物質の中に、空間反転対称性が破れるものもあり、反対称スピン軌道相互作用が強く、スピン三重項超伝導が期待できる。また、バンド構造にバン・ホッフ特異点があり、非従来型超伝導状態の実現に有利な条件が整っている物質もある。本研究では、NMR等の測定を行い、スピン格子緩和率やナイトシフトの温度・結晶軸方向及び磁場依存性から、特殊な結晶構造が生み出す新奇超伝導の物性を明らかにした。
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研究課題/領域番号:15H05852 2015年06月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
前野 悦輝, 松田 祐司, 高木 英典, 鄭 国慶, 藤本 聡, 浅野 泰寛, 宇田川 将文
配分額:305370000円 ( 直接経費:234900000円 、 間接経費:70470000円 )
本計画研究は、超伝導体・磁性絶縁体・半金属などの物質の中でトポロジカルな量子状態を特徴とする物質や現象を見出し、特に電子同士の相互作用が強い「強相関電子系」ならではの効果を理解することを目的に行った。顕著な成果として、世界に先駆けて、電子の分数化状態であるマヨラナ準粒子の存在を確実にする観測事実を得た。これはルテニウム化合物の量子スピン液体状態での熱ホール効果の半整数量子化を発見したことによる。また、トポロジカル物質の中から、ネマティック超伝導、アンチペロブスカイト酸化物で初の超伝導や、線ノード半金属での超伝導などを発見した。さらに、時間反転対称性を破るトポロジカル超伝導体の研究を深化させた。
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電子相関背景超伝導と新奇量子相の極限環境下核磁気共鳴法による研究
研究課題/領域番号:25400374 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
川崎 慎司, 鄭 国慶
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
(1) 鉄系高温超伝導体Sr2VFeAsO3の反強磁性と超伝導の圧力相図を高圧NMR実験によって初めて明らかにした。(2) 鉄系超伝導関連物質SrPt2As2において、複数の電荷密度波(CDW)秩序と超伝導の共存を明らかにした。(3) 重い電子系反強磁性超伝導体CeRhIrIn5の低温高圧下NQRおよび高圧下電気抵抗測定を行い、反強磁性量子臨界点と非従来型超伝導の圧力相図を明らかにした。(4) 鉄系超伝導体Ca1-xLaxFeAs2のNMR実験を行い、高電子ドープによって増強する反強磁性秩序と高温超伝導の共存を発見した。(5) 銅酸化物高温超伝導体において、新たな電荷秩序相を発見した。
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研究課題/領域番号:22103001 2010年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
前野 悦輝, 田仲 由喜夫, 石川 修六, 鄭 国慶, 柏谷 聡, 浅野 泰寛, 野村 竜司, 安藤 陽一, 佐藤 昌利, 上田 正仁, 野村 竜司, 佐藤 昌利, 田仲 由喜夫, 浅野 泰寛, 上田 正仁
配分額:73970000円 ( 直接経費:56900000円 、 間接経費:17070000円 )
平成27年度は研究成果とりまとめにあたり、主に次の二点を行った。
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第一に、領域活動によるこれまでの研究成果を事後評価報告書にまとめ上げ、文科省でのヒアリングを経て事後評価を受けた。結果は評価A+をいただいた。総合所見において、「本研究領域は世界をリードする多くの研究成果を生み出し、当該学問分野における我が国の国際的優位性の確保と、その向上に大きく貢献した。また、積極的にアウトリーチ活動が実施されたことは、物性物理学における新しい概念の普及という点で高く評価できる。本研究領域の活動によって、多くの若手研究者が育成されたと認められる。」との評価をいただいた。報告書作成に際しては、領域メンバーからの成果情報を収集・集積して、発表論文、招待講演、受賞などに含まれる研究成果内容の分析を加えたうえで、今後の展望も含めた。また、新学術プロジェクトならではの、異なる専門分野研究者間の連携による研究成果・論文成果、5回開催(そのうち2回は国際会議として開催)した領域研究会の成果、17回開催した「集中連携研究会」の成果、若手育成のための若手国際会議や若手相互滞在プログラムの成果、市民講座や出前講義の成果の分析も行った。
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第二に、本領域の研究活動から生み出されたトポロジカル量子現象に関する新学術領域をさらに発展させるための活動を行った。まず、引き続き領域のHP と事務局を維持し、研究成果情報の収集と公開に務めるとともに、トポロジカル量子現象の研究に関わる研究者に対しての情報ソース・フォーラムとしての機能も果たし続けた。幸い、後継新学術領域プロジェクト「トポロジーが紡ぐトポロジカル物質科学のフロンティア」が採択されたので、さらに飛躍的な発展を生むために必要な引き継ぎ活動を行った。 -
研究課題/領域番号:22103004 2010年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
鄭 国慶, 上野 和紀, 瀬川 耕司, 野島 勉, 稲田 佳彦, 獅子堂 達也, 安藤 陽一, 永長 直人, 岩佐 義宏, 花栗 哲郎, 長田 俊人, 俣野 和明, 横谷 尚睦, 安藤 陽一
配分額:246870000円 ( 直接経費:189900000円 、 間接経費:56970000円 )
空間反転対称性の破れとスピン軌道相互作用が協奏した系において、様々なトポロジカル量子現象を観測・解明し、以下のような成果を得た。空間反転対称性の破れた超伝導体において、スピン三重項成分を増大させる要因を突き止めた。新種のトポロジカル絶縁体を発見し、また、ドープしたトポロジカル絶縁体CuxBi2Se3がスピン三重項超伝導状態にあることを明らかにした。さらに、化学ドープの手法では超伝導転移を示さないKTaO3おいて電場誘起法により超伝導を発見した。
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電子相関を舞台とする非従来型超伝導発現機構の核磁気共鳴法による研究
研究課題/領域番号:22740232 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
川崎 慎司, 鄭 国慶
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
1.高温超伝導体の超強磁場 NMR による研究;米国立強磁場研究所において超強磁場下(45 万ガウス) NMR 実験を行い、磁場によって高温超伝導を破壊することに成功し、高温超伝導の背景電子状態を初めて同定した。
2. 鉄系高温超伝導体の磁性と超伝導に関する研究;2008 年に東工大で発見された鉄系高温超伝導体の電子相図が、銅酸化物高温超伝導体と類似したものであり、銅酸化物同様、磁性が鉄系高温超伝導発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 -
研究課題/領域番号:20244058 2008年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
鄭 国慶, 稲田 佳彦, 川崎 慎司, 市岡 優典, 櫻井 吉晴
配分額:47320000円 ( 直接経費:36400000円 、 間接経費:10920000円 )
空間反転対称性の破れた超伝導体Li_2(Pt_<1-x> Pd_x)_3Bを作製し、NMR測定により超伝導対称性がx~ 0. 8を境に急激にスピン三重項状態に変わることを明らかにした。また、結晶構造の解析を行った結果、Pt(Pd) B_6八面体の歪みがx> 0. 8では急激に増大することを見出した。この歪みの増大がスピン軌道相互作用を増大させた原因であり、スピン三重項混成の主原因であることを明らかにした。
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遷移金属二酸化物の電気化学的強酸化合成とその電子構造の解明
研究課題/領域番号:19740201 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
本橋 輝樹, 山内 尚雄, カルピネン マーリット, 菅野 了次, 鄭 国慶, 川崎 慎司, 吉川 信一, 鱒渕 友治
配分額:3340000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:240000円 )
本研究では、電子相関効果やスピンフラストレーション効果が期待される層状遷移金属二酸化物の電気化学的強酸化合成とその電子構造の解明を目的とした。特に、巨大熱起電力や超伝導の発見により注目を集めている層状コバルト酸化物の一種であるLixCoO2系について、Li量 (x) を幅広く制御した高品質試料の合成と物性評価を行い、Li量 (x) をパラメータとする電子状態図を構築した。
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研究課題/領域番号:17072001 2005年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
野尻 浩之, 鄭 国慶, 小林 典男, 金道 浩一, 高増 正, 木戸 義勇
配分額:32800000円 ( 直接経費:32800000円 )
本領域では、超強磁場下の先端計測実現を軸として、未踏の100テスラ領域におけるスピン科学を推進し、(1)スピンによる電子状態の制御、(2)強磁場により誘起される様々な相の起源の解明と制御原理の確立、(3)電子状態のプローブとしてのスピンの利用、の3つの柱において世界を先導する成果をあげた。特に、パルス超強磁場下の先端的実験手法開発により、新研究分野を開拓し、精密物性科学としての強磁場スピン科学を100テスラ領域に広げる基盤を確立したことは大きな成果である。
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超強磁場下における機能性材料および生体物質のNMR/ESR法による研究
研究課題/領域番号:17072005 2005年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
鄭 国慶, 萩原 政幸, 後藤 貴行, 太田 仁, 熊谷 健一
配分額:104300000円 ( 直接経費:104300000円 )
本研究の目的は強磁場下磁気共鳴計測法の開発及び物性研究への応用である。主な成果は:
(1) 48Tまでのパルス磁場下においてスピンエコー法によるNMRスペクトルの計測に世界で初めて成功し、パルス磁場NMRという新領域を創成した。
(2) 東北大学に設置しているハイブリッド磁石などを用いて、44Tまでの定常磁場下でNMR測定を行い、銅酸化物高温超伝導体の基底状態や量子スピン磁性体NH_4CuCl_3の磁場誘起マグノンの性質を明らかにした。さらに、重い電子系物質CeCoIn_5において空間変調した超伝導相を観測した。
(3) ESR技術の適用を70T級の強磁場域に伸張し、量子スピン磁性体NDMAP, BaCoV_2O_8, Pb_2V_3O_9やフラストレート磁性体CuCrO_2やNiGa_2S_4などにおける磁気励起の性質を明らかにした。さらに、生物系への応用を展開した。Mn-ミオグロビンにおいて高周波ESRの測定に初めて成功し、結晶場定数の定量的決定に成功した。 -
NMR法による強相関電子系における磁性と超伝導の共存に関する研究
研究課題/領域番号:16340104 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
鄭 国慶
配分額:16500000円 ( 直接経費:16500000円 )
本研究では、強相関電子系における磁性と超伝導の関係をNMR法によって調べ、以下の研究成果を得た。
(1)重い電子系Ce(Ir_<1-x>Rh_x)In_5において、Ir濃度の増加とともに、反強磁性転移温度T_Nが一旦上昇し、x>0.5以上では急激に減少してx=0.6で消失することを見出した。しかも、T_N以下で超伝導が現れ、x=0.35 0.55の広い領域にわたって磁性と微視的に共存することを明らかにした。さらに、超伝導と反強磁性秩序は同一の電子によること、超伝導状態では共存する磁性によると思われる低エネルギー励起が存在することを見出した。
また、Ce(Ir_<1-x>Rh_x)In_5を構成するユニットであるCeIn_3においても、高圧下実験を行ない、超伝導と磁性の関係を調べた。2.2GPa付近で磁気秩序状態と常磁性状態が相分離することを見出した。また、2.3-2.5GPaの圧力領域では反強磁性と超伝導が均一に共存することを明らかにした。
(2)銅酸化物超伝導体Bi_2Sr_<2-x>La_xCuO_6において、反強磁性に起因すると考えられる擬ギャップという現象が超伝導と共存することを発見した。45テスラまでの強磁場で超伝導が抑制された後、最低温の擬ギャップ状態においてもフェルミ準位に有限な状態密度が残ることを明らかにした。これらの結果は、重い電子系において反強磁性と超伝導が共存するのと類似しており、擬ギャップは超伝導と共存する物質の状態であることを示す。
(3)コバルト酸化物超伝導体Na_xCoO_2^*1.3H_2Oにおいて、超伝導ギャップ関数に線状の節が存在することや、隣接する磁気/電荷秩序のために超伝導状態では低エネルギーの準粒子励起が存在することを明らかにした。 -
充填スクッテルダイト化合物の重い電子状態の解明
研究課題/領域番号:15072204 2003年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
播磨 尚朝, 大貫 惇睦, 鄭 国慶, 今田 真, 清水 克哉, 難波 孝夫, 杉山 清寛
配分額:157800000円 ( 直接経費:157800000円 )
(電子状態計算)LaOS_4P_12のフェルミ面を明らかにし、ネスティング条件を議論した。
(dHvAと高磁場)ROs_4P_l2(R=La,Ce,Pr,Nd,Sm)とEuRu_4Sb_12の単結晶育成に成功し、dHvA測定を行った。PrOs_4P_12のフェルミ面はLaOs_4P_12と類似しており18m_0の重いサイクロトロン有効質量を観測し、LaOs_4P_12に比べ4倍ほど重くなっている。EuRu_4Sb_12においてdHvAを観測し、フェルミ面の形状からEuの価数は2価であると推測した。
(NMR/NQR)PrOs_4Sb_12の超伝導状態および結晶場分裂をP=3.82GPaまでの高圧下NMRによつて調べた。また、YbFe_4Sb_12の緩和時間測定(100K以下)で見られる異常に関して、価数変化とラットリングの観点から議論を行った。
(光電子分光)重い電子系的な振る舞いを示すSmOs_4Sb_12は、電子状態の基本的な知見が不足してが、Smが2価と3価の間の価数揺動状態にあること、平均価数が温度変化すること、フェルミ準位付近に大きなSm4f部分状態密度が有ることを明らかにした。
(高圧測定)高圧下の比熱測定技術を整備し、電気抵抗測定との同時測定を可能にした。結晶構造解析等によって、PrRu_4P_l2の高次の多極子秩序および超高圧下の物性変化について系統的に研究した。
(赤外分光)・CeRu_4As_12を常温でCeOs_4As_12を室温から3.3 Kの温度範囲で光反射率の測定を行った。いずれも0.leV程度のエネルギーギャップを有する半導体であることを明らかとした。 -
重い電子系Ce(Ir,Rh)In5における超伝導と反強磁性の共存に関する研究
研究課題/領域番号:14540338 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
鄭 国慶
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
CeMIn_5(M=Ir, Co, Rh)という物質群は重い電子系の性質を示すことで注目されている。特にCeIrIn_5とCeCoIn_5はそれぞれ400mKと2.3Kで超伝導転移を示し、CeRhIn_5は常圧下でネール温度T_N=3.7Kの反強磁性体であるが、1.7GPa以上の高圧下ではT_c=2.1Kの超伝導体に変わる。さらに、Irの一部をRhで置換したCe(Ir_<1-x>Rh_x)In_5では、x=0.5でT_cが倍以上も上昇し、しかも、広いIr濃度にわたって超伝導は反強磁性秩序と共存する。
本研究の目的は、Ce(Ir_<1-x>Rh_x)In_5における超伝導と反強磁性秩序がどのような形式で共存するか、また、CeRhIn_5においては臨界圧力付近の高圧下で磁性と超伝導がどのように関わりを持つかを核磁気共鳴法で調べることである。
得られた結果は、CeRhIn_5については、1.6Gpa〜1.9Gpaの高圧下で超伝導と反強磁性秩序が均一に共存することがわかった。この圧力領域では、Ce電子に起因する磁気モーメントが常圧下のものと比べてかなり減少していることが示唆された。また、超伝導転移温度以下では、1/TI(スピン格子緩和率)にHebel-Slichterピークが見られず、異方的な超伝導状態が実現していると考えられる。さらに、超伝導状態でも低エネルギーの磁気励起が強く残っていることを明らかにし、磁性と超伝導が共存している状況下の新しい側面を明らかにした。
一方、Ce(Ir_<1-x>Rh_x)In_5において、Ir濃度の増加とともに、ネール温度が一旦上昇し、x>0.5以上では急激に減少することを見い出した。しかし、T_N以下で超伝導が現れ、しかも、磁性と共存した領域(x=0.35〜0.55)で超伝導転移温度が最高値を迎えることを明らかにした。さらに、超伝導と反強磁性秩序は同一の電子によることを明らかにした。 -
磁性高温超伝導体RuSr_2YCu_2O_8の自己誘起・量子磁束ダイナミックスの研究
研究課題/領域番号:13440112 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
北岡 良雄, 秋光 純, 石田 憲二, 鄭 国慶
配分額:13100000円 ( 直接経費:13100000円 )
研究分担者の秋光グループが高圧下での合成に成功した磁気モーメントを有する希土類を含まない多結晶試料、RuSr_2YCu_2O_8(Ru-1212)に関するゼロ磁場Ru-NMRの研究から
1.強磁性モーメントと超伝導がミクロなスケールで共存していること
2.共存状態では「自己誘起・量子化磁束状態」が実現していること
を初めて明らかにし、フィジカルレビューレター誌にその成果を発表した。
同じく共存が期待されているEu_<2-x>Ce_xRuSr_2Cu_2O_<10-d>に関して、国外のグループと共同研究を展開し、3.RuY1212系で見られた4価の成分がほとんど消失し、RuY1212系はRuの価数の違いによってホールを注入するのに対し、(EuCe)Ru1222系ではCe^<4+>とEu^<3+>を置換することでホールをドープしていること
4.(EuCe)Ru1222系では擬ギャップを観測し、系がアンダードープであること、を明らかにした。構造上(EuCe)Oブロック層が大きいため2次元性が強くなったためだと考えられる。残念ながら、共存状態に関する知見は得られず。今後の課題である。
さらに、層状構造をもつ高温超伝導体の「磁性と超伝導の共存状態」に対する層間結合の役割を広い観点から捉える目的で多層型高温超伝体HgBa_2Ca_4Cu_5O_<10-y>に関する研究を実施した結果、超伝導層と反強磁性層とが交互に積層して共存していることなどの多くの成果が得られた。この場合は、RuY1212系とは異なり、磁性層と超伝導層の両層ともCuO_2面で構成されており、超伝導転移温度は、ほとんど減少しないことが明らかとなった。両者の比較から[磁性と超伝導の共存」に対して、より理解を深めるとことができた。 -
NMR法によるd波超伝導渦糸の電子状態に関する研究
研究課題/領域番号:11640350 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
鄭 国慶
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
超伝導体に磁場をかけると、磁場は量子化された渦糸の形で試料に侵入する。d波超伝導の場合、エネルギーギャップが異方的で、フェルミ面上にノードが存在する。理論的に、渦糸に附随した準粒子のエネルギー状態は、ノード方向に沿って渦糸の外まで伸張すると予想されている。しかし、実験的にこのような状態を示す確たる証拠はまだ得られていなかった。本研究では、NMR(核磁気共鳴)法を用いて、高温超伝導体におけるd波渦糸の電子状態を実験的に調べた。
過剰にドープした高温超伝導体TlSr_2CaCu_2O_<6.8>(T_c=68K)を試料として選び、28テスラーまでの強磁場下でナイトシフトを測定した。その結果、渦糸の外に対応する位置でのナイトシフトが磁場と共に増大することが分かった。この結果は渦糸の外に準粒子状態が存在することを実験的に示すものである。さらに、超伝導による反磁性の効果を補正して解析すると、スピンナイトシフトは磁場の1/2乗に比例して増大することがわかった。これはd波超伝導に対する理論的予想と合致する。また、定量的に考察した結果、渦糸に附随した準粒子のうち、85%が渦糸の外に、残り15%が渦糸の中心に局在することがわかった。
本研究で我々はNMRという局所的実験手段によって渦糸の外の準粒子の存在を実証し、またその状態密度をはじめて定量的に明らかにした。 -
多重極限環境科の強相関電子物性の研究
研究課題/領域番号:10044083 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
北岡 良雄, 鄭 国慶, 三宅 和正, 天谷 喜一, 石田 憲二
配分額:6200000円 ( 直接経費:6200000円 )
平成10年度の研究成果
1.「高圧・極低温・高圧下での重い電子系物質の研究」
石田らはCe_xCu_2Si_2系が常圧で異方的超伝導-反強磁性転移が起こることを示した。またメタ磁性を示すCeRu_2Si_2系の重い電子状態の強磁場特性を明らかにした。三宅は重い電子系Ce化合物が高圧下(3GPa)で急激に超伝導転移温度が上昇するのは「Ceの価数揺動現象」に起因するとの理論的な提案を行った。
2.「強磁場下の高温超伝導物質の研究」
鄭らは軽ドープ域の高温超伝導物質について強磁場下での磁束の性質およびスピンギャップ相の磁場変化の研究をG.Clark(アメリカ)と共同で行った。フロリダ大学強磁場実験施設の世界最強定常磁場(24テスラ)を利用したNMR研究を行い、d波の磁束状態についての詳しい知見を得た。また24テスラの磁場で超伝導転移温度は減少する一方、スピンギャップを示す温度は全く温度変化しないことを明らかにした。
平成11年度の研究成果
1.「高圧・極低温・高圧下での重い電子系物質の研究」
石田らは、異方的超伝導-反強磁性転移が常圧で起こるCe_xCu_2Si_2系の加圧下の研究を行い、x=0.99で観測された異常磁性が僅か2キロバールの圧力によって抑制され、x=1.00と同様の異方的超伝導特性を示すことを明らかにした。ドイツ側から研究分担者C.Geibel氏を招へいし、NMRの研究結果とドイツ側の研究成果の情報交換、および討論を行った結果、均一なCeCu_2Si_2は量子臨界領域にあることを結論した。さらにSiをGeで置換した系に関して研究協力者O.Trovalleli氏との共同研究によって、超伝導と反強磁性がミクロに共存していることを明らかにした。
CeIn_3の高圧下による研究によって超伝導が発現する圧力(P=2.4Gpa)でも反強磁性状態にあることを明らかにした。
2.「強磁場下の高温超伝導物質の研究」
研究分担者の鄭は僅かに過剰ドープ領域にある高温超伝導物質について強磁場下での磁束の性質および擬ギャップ相の磁場変化の研究をG.Clark(アメリカ)と共同で行った。フロリダ大学強磁場実験施設の世界最強定常磁場(28テスラ)を利用した研究と詳細な磁場変化によるNMR研究からスケーリング則を見い出し、過剰ドープでの擬ギャップは超伝導ゆらぎによるものであることを確定させた。平成10年度に明らかにした軽ドープでの結果と合わせて、高温超伝導体で問題となっている擬ギャップの機構を理解する上で重要な実験結果を提示できた。 -
高圧下におけるYM_<n2>の反強磁性スピンゆらぎのNMRによる研究
研究課題/領域番号:09740284 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
鄭 国慶
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
YMn_2は常圧下でネール温度が100Kの反強磁性体であるが,0.3GPa以上の圧力下では磁気秩序が消失する。本研究では、YMn_2に1.2GPaまでの圧力をかけ、その磁気的性質を^<55>Mn-NMRとNQRを用いて調べた。特に、そのスピン相関を銅酸化物超伝導体のものと比較した。以下、本研究で得られた結果について述べる。
まず、0.33GPaから0.4GPaまでの圧力の範囲内では、反強磁性相と常磁性相の共存を見い出し、圧力誘起相転移が1次相転移であることを明らかにした。次に、常圧下でナイトシフトを測定し、スピン帯磁率を評価した結果、この物質のエネルギーバンド幅が電子相関を取り入れない計算値よりも6倍ほど狭いことを明らかにした。これは電子相関の効果であると考えられる。次に、0.4GPaと8.5GPaの圧力下でナイトシフトを4.2Kから300Kまでの温度範囲内で測定した。ナイトシフトの大きさは圧力とともに減少した。Mn核の超微細相互作用が負であるので、この結果はエネルギーバンド幅が圧力とともに増大することを示すものである。これは、圧力はMn3d電子の遍歴性を増大させた結果と考えられる。
さらに、0.33GPa,0.40GPa,0.85GPaと1.2GPaの圧力下で核スピン緩和率1/T_1を測定した。1/T_1が低温で異方的スピンゆらぎの理論に従うが高温では局在的スピンゆらぎの振る舞いを示す。このクロスオーバー温度が圧力とともに増大する。これは圧力とともに、Mn3d電子の遍歴性が増大した結果と考えられ、先のナイトシフトの結果と一致する。また、このクロスオーバーが銅酸化物に似ていることを指摘した。 -
銅酸化物人工格子のNMRによる研究
研究課題/領域番号:07740297 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
鄭 国慶
配分額:1100000円 ( 直接経費:1100000円 )
本研究の当初の目的は,銅酸化物人工格子の研究であったが,その人工格子を構成する酸化物高温超伝導体のいくつかの性質をさきに究明する必要があったので,平成7年度は主にその研究を行い,人工格子の研究は現在進行中で,成果は間もなく発表する予定である。以下,酸化物高温超伝導体Tl_2Ba_2Ca_2Cu_3O_<10>(T12223)について研究成果を述べる。
T12223の超伝導転移温度T_cは125Kで,YBa_2Cu_3O_7(Y123,T_c=92K)に比べて3割以上も高い。その原因の究明は高温超伝導の発現機構の解明に重要な手がかりを与えるものと考えられる。本研究では^<63>Cu,^<17>O及び^<205>TIのNMRを行い,スピンゆらぎの特性を解析した。その結果,Y123に比べて,スピン相関長ξは同程度であるが,スピンゆらぎのスペクトルウエートが高エネルギー側に移っていることが判明した。具体的に,反強磁性スピンゆらぎの特性エネルギーГ_Qは4割ぐらい大きいことが明らかになった。スピンゆらぎによる超伝導の機構では,T_cはГ_Qξ^2に比例する。したがって,この実験結果は高温超伝導がスピンゆらぎによって実現していることを示唆するものである。 -
新しい重い電子系超伝導体UM_2Al_3(M=Ni,Pd)のNMRによる研究
研究課題/領域番号:04452051 1992年 - 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(B)
朝山 邦輔, 鄭 国慶, 北岡 良雄
配分額:6300000円 ( 直接経費:6300000円 )
本研究では、核磁気共鳴法(NMR)を用いて、重い電子系超伝導体UM_2Al_3(M=Ni,Pd)の磁性と超伝導の特徴をミクロ観点から調べ以下のような重要な成果を挙げた。
1.U123系の磁性
1.UNi_2Al_3は、比較的小さい0.06μ_Bの磁気モーメントがc-軸方向に変調されたヘリカル構造であることを結論した。さらにT_1の温度変化から、スピンの揺らぎの性質はこれまでの重い電子系の振る舞いとは異なり弱い金属反強磁性体で観測された特徴を持ち、スピンの揺らぎの波数依存性が大きいことが判明した。
2.UPd_2Al_3については、中性子回折の研究で明らかにされた磁気構造と予盾しない結果が得られた。また他の実験から示唆された磁場中の磁気多重相は、反強磁性のドメイン構造に起因していることが分かった。さらにT_1の測定から、磁気転移温度以下で、約40K程度のエネルギーギャップが発生するが、低温では、T_1T=一定の振る舞いが観測されフェルミ面の1部で状態密度が残ること、また反強磁性との共存を維持したまま超伝導に転移する事が分かった。
2.U123系の超伝導
UNi_2Al_3については、T_c以下で(1/T_1)やナイトシフトに変化はなく、この系の超伝導性は確認できなかった。しかし、UPd_2Al_3については、以下の様な重要な結果を得た。
1.核スピン-格子緩和率(1/T_1)の温度変化は、T_c直下での増大なしにT^3に近い温度変化をし、これまでに報告されていた重い電子系超伝導体の振る舞いと一致している。従ってUPd_2Al_3の^<27>AlのT_1の温度変化は、線状でギャップレスになる異方超伝導モデルで、他の重い電子系超伝導体と同様に一貫して説明できることが判明した。しかしながら、0.6K以下の低温では予想される変化からずれる。これが、超伝導混合状態での磁束の影響なのか、試料の質に起因するのかを調べる為に、1/T_1の磁場変化を測定した。その結果、磁場の減少と共に、1/T_1が減少し、T^3に近づくことが分かった。
2.ナイトシフトの測定をUPd_2Al_3の多結晶および単結晶を用いて測定を行い、この系のスピン帯磁率がT_c以下減少する事が分かった。この結果から、クーパー対がスピン一重項であることを結論した。 -
NMR法を用いたNb-Cu多層膜における超伝導近接効果に関する研究
研究課題/領域番号:03740191 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
鄭 国慶
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )