共同研究・競争的資金等の研究 - 内山 淳平
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改変型人工抗菌酵素による薬剤耐性グラム陰性桿菌感染症の治療基盤の確立
研究課題/領域番号:25K02692 2025年04月 - 2028年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
内山 淳平
配分額:18200000円 ( 直接経費:14000000円 、 間接経費:4200000円 )
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細菌特異的に感染するバクテリオファージを利用した新しい細菌検出技術の創出
研究課題/領域番号:24K08465 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
渡辺 茂, 内山 淳平
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
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多剤耐性緑膿菌感染症に対する超殺菌作用を有する人工抗菌酵素の創出
研究課題/領域番号:24K11653 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
内山 伊代, 内山 淳平
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
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黄色ブドウ球菌眼内炎におけるDAMPsによる炎症制御機構の解明および治療法の開発
研究課題/領域番号:24K12764 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
福田 憲, 内山 淳平, 石田 わか, 岸本 達真, 山城 健児
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
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ファージ吸着分子結合マイクロ粒子を利用した抗C. difficile治療法の創出
研究課題/領域番号:22K08580 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
内山 淳平
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
ディフィシル菌(Clostridioides difficile)は、感染症の治療には抗菌薬が使用される。多くの抗菌薬に耐性であること、抗菌薬の副作用の点から、本感染症に対して抗菌薬に依存しない治療法の開発が求められている。
細菌ウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)は細菌種特異的に感染するという特徴を有する。ファージの菌種特異的感染には、宿主菌への吸着が第一義的に重要で、ファージの尾部に存在する尾繊維やスパイクなどの吸着に関与する分子(ファージ吸着分子)と細菌表層の特異的な相互作用に起因する。ファージ吸着分子には、それ単独で菌種特異的な吸着能力を有する。
研究代表者は、世界に先駆けて、ファージ吸着分子は、抗体と同等の高い性能を有しているばかりでなく、開発コストや製造に関して優れており、細菌特異的な抗体の代替えとして利用できることを提唱した。研究代表者は、C. difficile腸炎の治療法の問題に対して、ファージ吸着分子を結合したマイクロ粒子を投与することで、腸管内でマイクロ粒子がC. difficileが特異的に凝集体を形成し、糞便として排出されることでC. difficileを除菌する方法を考案した。本治療法は、難渋化するC. difficile腸炎の問題を解決する新しい治療薬のシーズとなると考えた。
本研究課題では、4つの研究項目を実施する:(I)「C. difficileファージ吸着分子の作製」、(II)「C. difficile特異的ファージ吸着分子の結合メカニズムの解明」、(III)「ファージ吸着分子結合マイクロ粒子の作製」、(IV)「C. difficile腸炎マウスモデルに対するファージ吸着分子結合マイクロ粒子投与による評価」。本年度は、研究項目(I)を実施した。 -
KHP30様ファージのピロリ菌認識機構の解明とピロリ菌の迅速検査・除菌への応用
研究課題/領域番号:22K08593 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松崎 茂展, 内山 淳平, 岩本 昌大
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
本研究の最終目標は、ピロリ菌に感染するバクテリオファージ(ファージ)KHP40のリガンド分子および宿主におけるレセプター分子を特定し、それらを検査や除菌に応用することである。
まず宿主菌におけるKHP40ファージのためのレセプター分子を特定するための第一段階として、当該ファージに対する吸着能が大きく異なる宿主の探索を試みた。まず標準宿主である3401株に対する吸着活性を検討した、その結果30分ほどで約50%が吸着しその後は徐々に吸着が進行する状況が示された。次に、3401株、26695株、HPK5株において、実験開始後60分における吸着活性を比較した。その結果、3401に対する吸着能が最も高く、次いで26695株が高かった。一方、HPK5株に対しては、吸着は認められるものの、その活性は3401株、26695株に比べかなり低かった。この結果は、KHP40の吸着活性が、宿主菌株によって大きく異なることを示している。
以上の吸着実験の結果は、ファージの増殖宿主をピロリ菌3株(3401、26695、HPK5)とした場合のすべてでほぼ同じであった。すなわち、増殖宿主は、KHP40の吸着能にほとんど影響を与えないことが示された。
上記結果から、3401株(26695株)とKHP5株の吸着活性の違いは、レセプター分子が相互に異なっているためであると予想される。この相違は、以降のレセプター分子特定および分離の指標となると期待され、次のステップに進むための重要な知見がえられたと考えられる。 -
細菌に感染する天敵ウイルスを利用した新奇な細菌検出技術の創出
研究課題/領域番号:21K05113 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
渡辺 茂, 内山 淳平, 仁子 陽輔
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
感染症を取り巻く環境は,細菌性食中毒の集団感染,院内感染の多発や新興・再興感染症の発生など多様化しており,早期診断・治療および二次感染の予防には迅速な微生物検査が不可欠である.宿主細菌に対して特異的に感染するバクテリオファージ(“天敵ウイルス”)を機能性ナノ粒子とハイブリッド化することでPCR法や免疫検出法に代わる新たな細菌検出技術への応用が期待できる.高感度かつ高選択的な細菌検出法の開発には,検体中,検出したい細菌にのみ結合し,その情報を我々が検出可能な物理信号に変換する蛍光プローブの開発が不可欠である.本年度は,ファージと蛍光性ナノエマルションを利用した細菌の蛍光検出法の開発について検討した.
蛍光法を利用した高感度・高信頼性の細菌検出には,光安定性に優れ強力な蛍光を発する信号発信部位を有する蛍光プローブが求められる.これまでにファージの頭部に蛍光色素を結合させた蛍光プローブが開発されているが,輝度が低い上に光安定性にも欠ける.そこでオイルと界面活性剤からなる粒径が数十nmのナノエマルションに大量の蛍光色素を溶解させることで,光安定性に優れ高輝度な蛍光性ナノエマルションを開発した.
次に表面にカルボキシル基を導入した蛍光性ナノエマルションを合成し,活性エステルへと導いた後,ファージとアミド結合を介して結合させることで蛍光性ナノエマルション修飾ファージを合成した.これを各種細菌と混合後,蛍光顕微鏡を用いて観察した.試料中の細菌がファージの宿主細菌(S.aureus)である場合,細菌から強力な蛍光が観察されたのに対して,宿主以外の細菌(E.coliなど)からは蛍光が観察されることがなく,蛍光性ナノエマルション修飾ファージを利用して,選択的に細菌を蛍光検出できることがわかった. -
再発性C. difficile感染症に対する新規創薬シード化合物の探索
研究課題/領域番号:21K08514 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松井 秀仁, 内山 淳平
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
Clostridioides difficileは、芽胞形成性を有する嫌気性グラム陽性桿菌である。本菌は、抗菌薬関連下痢症の原因菌として、強毒株の流行から世界的に問題となっている。本研究では、C. difficile感染症で問題となる再発例の抑制に繋げることができるような新たな作用を有した天然化合物の探索を目的としている。今年度は、種々のスクリーニング系を構築するために検討を行った。毒素産生抑制効果を評価するため、Binary toxinを構成するCDTa及びCDTbの組み換えタンパクの作製を行った。CDTaについては、精製タンパクを得ることができ、ラットに免疫することで特異抗体の作製を行った。得られた抗体を用いて、ELISA法による定量系を構築し、これまでにC. difficile培養上清からCDTaを検出可能であることを確認している。CDTbについては、種々の発現プラスミドを検討し、可溶化発現可能な系を構築することができ、現在精製条件の検討を進めている。また、毒素活性の阻害スクリーニングでは、腸管由来細胞を用いてスループットの高い実験系の構築を進めている。また、抗菌活性及び芽胞形成性の評価方法については、評価系を構築済みである。これまでに、既存薬剤であるバンコマイシン、メトロニダゾール、フィダキソマイシンなどを用いて基礎データを取るとともに、スクリーニング系の安定性を評価しいてる。今後、これらのスクリーニング系を用いて、天然化合物ライブラリーの評価を進めていく予定である。
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バクテリオファージライシンを利用する新しい多剤耐性結核制御法の創出
研究課題/領域番号:19K08953 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松崎 茂展, 山本 哲也, 内山 淳平, 渡辺 茂, 福田 憲, 北村 直也
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本件研究では、ファージY10が保有する溶菌酵素(ライシン)を利用する結核菌制御法の開発を目指している。低病原性迅速発育抗酸菌であるスメグマ菌は、ファージY10に対して結核菌と同様の感受性を示すことが知られている。
そのため、まずスメグマ菌に対するライシンの溶菌測定条件の検討を行なった。抗酸菌は、コードファークター産生の故に、液体培地では紐状構造となるため、吸光度測定を使用するファージやファージライシンのインビトロ活性の計測が極めて困難である。そのため、培地中に結核菌培養で使用されるTween20をLB培地に添加すると、菌は均一になるものの、ファージの増殖活性が著しく抑制されることが分かった。そのため、ライシンに対しても抑制的に働く可能性があるため、他の界面活性剤の有用性をスクリーニングすることにした。まず、9種類の界面活性剤について、0.5%濃度の添加により、ファージY10の増殖に影響があるか否かを検討した。その結果、CHAPS,n-Octyl-β-D-glucoside, Sodium cholate, MEGA-8,n-octyl-β-D-maltosideの4種においては、ファージの活性は大きく低下することはなかった。次に、これら4種の界面活性剤を各種濃度で添加したLBにおける、菌の増殖及び菌拡散状況について検討した。その結果、これら4種の界面活性剤とも、0.01~0.025%の濃度で菌増殖が正常に増殖できることが分かった。また、Tween20ほど強力ではないものの、対照と比較して菌を均一化する拡散効果が認められれた。一方、物理的方法による菌の均一化についても検討した。菌培養液を、短時間超音波処理すると、菌の生存率を落とすことなく均一化できることが分かった。 -
ディフィシル菌バクテリオファージの宿主認識機構の解明及び治療と予防への応用
研究課題/領域番号:19K07560 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
阪口 義彦, 加藤 はる, 大宮 直木, 内山 淳平, 後藤 和義, 妹尾 充敏, 林 俊治
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル感染症(CDI)は、抗菌薬関連下痢症・腸炎の1つであり、抗菌薬の使用等により正常な腸内微生物叢が乱れ、ディフィシル菌が過剰に増殖することにより発症する。CDI治療では、バンコマイシンやメトロニダゾールなどの抗菌薬が有効であるが、抗菌薬は選択性に乏しく結局は有益な腸内微生物叢を撹乱させるため、再びCDIが引き起こされることがある。従って、腸内微生物叢を撹乱せず、原因となるディフィシル菌のみを特異的に殺菌するCDIの新規治療法の確立が喫緊である。本研究課題では、新規治療法の候補の1つとして、バクテリオファージ(ファージ)に着目した。ファージは、宿主である細菌に対して特異的に結合し、自己の溶菌酵素により殺菌する活性を示す。このようなファージの特性を有効に利用したCDIの新規治療法の確立を目指し研究開発を行っている。そこで、まず、溶菌性ファージの単離を試みたが、分離株からは困難であったことから、次に、ファージが有する溶菌酵素について解析を行った。ディフィシル菌ファージのゲノム情報を基に、ゲノム上の個々の遺伝子について他のファージの溶菌酵素との相同性解析を行ったところ、2つのファージ由来溶菌酵素と予想される遺伝子(cdph33およびcdph34)を特定した。そこで、これらの遺伝子を基にHis融合タンパク質(CDph33およびCDph34)として、大腸菌で発現・精製した。精製した2つのタンパク質について、ディフィシル菌に対する溶菌活性を測定したところ、CDph34は活性を示したが、CDph33は高濃度下でも活性が認められなかった。CDph33とCDph34を組み合わせた場合では、CDph34の溶菌活性と比較してほぼ同等の活性であったが、両タンパク質を組み合わせた方が時間依存的に高い活性を示した。現在、詳細な解析を進めている。
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2019年 - 2020年
科学技術振興機構 産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 機能検証フェーズ 試験研究タイプ
内山 淳平
担当区分:研究代表者
細菌培養検査において、雑菌が培地に増殖し、目的とする細菌の検出が困難となる事例が報告されている。本研究では、雑菌を選択的に殺菌可能な抗菌剤をウイルスから分離し、本問題を解決可能な試薬の研究開発を行う。
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バクテリオファージをテーラーメード細菌認識素子とする新奇な細菌検出技術の開発
研究課題/領域番号:18K05174 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
渡辺 茂, 松崎 茂展, 仁子 陽輔, 内山 淳平
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
微生物検査は,感染症や食中毒の予防・衛生管理の面から重要である.しかし,培養に基づく従来法では検査に2~10日を要し,病原菌の特定に至っても手遅れになる場合が多く,検査の迅速化・簡易化が強く求められている.近年,PCRや抗原抗体反応を利用した迅速検査技術が開発されているが,遺伝子解析には煩雑な操作や高額な機器が必要である.また,細菌の中には,宿主免疫を回避するような防御機能を備えているものもあり,遺伝子解析や免疫反応に依らない新奇な検出原理が求められている.
バクテリオファージ(以下,ファージと省略する)は,細菌特異的に感染するウイルスの総称であり,標的細菌を特異的に識別する機能を備えている.その機能を自在に活用できるようになれば,遺伝子や免疫検出法に代わる迅速かつ簡便な細菌検出法への応用が期待できる.本年度は,ファージと金ナノ粒子を組み合わせた比色法に基づく細菌検出技術について検討した.
ファ―ジは,その表面のカルボキシル基を活性エステルへと変換した後,アミノエタンチオールと反応させることによってチオール化ファージへ変換した.次に細菌を含む試料と混合した後,遠心分離によって余剰のファージを取除き,金ナノ粒子の水溶液を添加した.黄色ブドウ球菌(S.aureus)を宿主とするファージを利用した場合,試料にS.aureusが含まれている場合,金ナノ粒子溶液の色は赤色から青色へと色調が変化する様子が観察された.一方,大腸菌属のE.coliや同じブドウ球菌属のS.Pseudintermediusを含む試料では色調変化は全く観察されなかった.本手法は,特別な分析機器を利用することなく,属のみならず種レベルで細菌を高選択的に検出することが可能であり,検出限界は数百cfu/mlに達することがわかった.また,利用するファージを変えることによって細菌選択性を自在に制御できる可能性がある. -
研究課題/領域番号:18K07127 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
内山 淳平, 松崎 茂展, 林 俊治, 阪口 義彦, 三室 仁美
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
1.KHP30様ファージのピロリ菌内在化に関する遺伝的解析:研究分担者(林俊治 氏)が保有するピロリ菌 約300株からKHP30様ファージ保有に関してPCRスクリーニングを行ために、研究を行った。共同研究者 林 俊治 氏より菌株の譲渡を行った。その中の菌株を現在、培養を行っている。また、PCR用の試料の調製を行っている。今後、PCRを行い、実際にファージのスクリーニングを行う予定である。
2.KHP30様ファージが脱落・再内在化した菌株の網羅的mRNA発現解析:平板寒天培地を使用し、ファージ保有ピロリ菌からファージ脱落ピロリ菌、再度ファージを内在化させたピロリ菌を分離した。ピロリ菌株には、ファージを内在化するKMT83株とNY43株を使用する。種々の培養条件で分離菌を培養し(嫌気培養あるいは微好気培養)、高速シークエンサー(Illumina社MiSeq)による網羅的なmRNA発現解析(RNAseq解析)用の試料調製を行なった。今後、RNA抽出を行い、RT-PCRを行った後、高速シークエンサー用のサンプル調製を行いたい。 -
原子構造に基づく黄色ブドウ球菌ファージS13’の感染マシナリーの解明
研究課題/領域番号:18K06154 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
宮崎 直幸, 内山 淳平
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
平成30~31年度は、非収縮性の短い尾部を有するPodoviridae科の黄色ブドウ球菌ファージS13’の宿主認識とゲノム注入に関わる分子装置の仕組みを理解するために、クライオ電顕単粒子解析法を用いて、黄色ブドウ球菌ファージS13’を構成する全タンパク質の原子モデルの決定を目指して研究を進めてきた。そして、局所3次元クラス分類と局所3次元精密化の方法を改良することにより、S13’を構成するほぼ全ての構成タンパク質の原子モデルの構築に成功した。そして、尾部先端のgp11においては、原子モデル構築は出来なかったが、そのタンパク質が2量体で存在しているという新しい知見を得た。今年度は、その構築した原子モデルの精密化を行い、そのタンパク質間相互作用から、分子装置を構成する個々のタンパク質の認識や、会合機構に関する知見を得た。
さらに、その解析において、S13’のレセプター結合タンパク質が、Siphoviridae科(非収縮性の長い尾部を有するファージ群)のφ11などと構造的類似性があることが判明した。このことから、黄色ブドウ球菌に感染するファージが、共通のレセプター結合タンパク質を持っている可能性が考えられた。そこで、もう1つのMyoviridae科に属す黄色ブドウ球菌の尾部先端の構造を調べ、レセプター結合タンパク質が、実際に黄色ブドウ球菌に感染する全てのウイルス科に渡って保存されているのか調べることにした。Myovirfidae科のファージは、長い収縮性の尾部を有するのが特徴であり、そのウイルス科の黄色ブドウ球菌ファージS6の尾部先端の構造解析も進めた。最先端クライオ電子顕微鏡を用いて、S6のクライオ電顕写真を約2万枚収集した。これは、S6ファージが全長400 nmを超え、非常に巨大であるために、1枚の写真に1~2粒子程度しか写らないためである。現在、その構造解析を進めている。 -
研究課題/領域番号:17K15385 2017年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
村上 裕信, 佐藤 礼一郎, 内山 淳平, 前田 洋佑, 加藤 肇
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
牛白血病ウイルス(BLV)の遺伝的多様性がウイルス性状に影響をもたらすか調べるため、最初にウイルスゲノム全長の解析を行った。その結果、国内のBLV野生株が3つのグループに分類され、それらグループは異なるウイルス産生能力を示した。さらに、上記で高いウイルス産生能力を有するグループの株が、農場での感染拡大に寄与することが明らかになった。また、株により病原性が異なっており、ウイルスゲノムの欠損変異を有するウイルス株や低いウイルス産生量でも病原性を保持していることが明らかになった。これらのことから、病原性と伝播性は異なる遺伝的素因により支配されていることが示唆された。
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C型とD型ボツリヌス毒素遺伝子を伝達するファージの宿主認識機構の解明とその応用
研究課題/領域番号:16K08785 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
阪口 義彦, 林 俊治, 加藤 はる, 大宮 直木, 内山 淳平, 妹尾 充敏
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
C型とD型菌による感染症(ボツリヌス症)が発生すると、生産者への経済的な損失や消費者への食の安全に対する不安感を助長させる。その原因となるC型とD型ボツリヌス毒素をコードする遺伝子は、バクテリオファージ(ファージ)により伝播されている。本研究では、C型菌とD型菌ファージの宿主菌への感染に重要である吸着に関して遺伝学的に研究を行った。C型菌とD型菌ファージのゲノム解析を基に、ファージの構造タンパク質を特定し、数種のファージ尾部吸着分子の候補遺伝子を推定した。現在、当該遺伝子産物の機能を調べているところである。吸着阻害によりファージ伝播を阻止することでボツリヌス症の制御が可能になると考えられる。
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研究課題/領域番号:15K19095 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
内山 淳平, 松崎 茂展, 黒川 健児, 宮崎 直幸, 村田 和義, 内山 伊代
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
S6ファージを介した普遍形質導入をモデルとし、環境中の遺伝子の水平伝搬を解析した。はじめに、S6ファージは、グラム陽性菌とグラム陰性菌ファージと共通な祖先を有することが明らかににした。また、他の黄色ブドウ球菌の細胞壁タイコ酸に吸着し、感染をおこなうことも明らかにされた。さらに、S6ファージは宿主ゲノムを取り込み、受容菌へ遺伝子を水平伝播し、相同組み換えで遺伝子の水平伝播することを明らかにした
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バクテリオファージの溶菌活性を利用した慢性中耳炎の新規治療法確立のための基礎研究
研究課題/領域番号:15K10756 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
小森 正博, 松崎 茂展, 内山 淳平, 小林 泰輔
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
ファージは細菌のみに特異的に感染し、これを破壊するウイルスである。それぞれの宿主菌に特異的なファージが存在し、常在細菌叢やヒトの細胞には感染しない。よって、宿主菌が死滅すればファージも死滅する。また、薬剤耐性の影響は受けず、バイオフィルムも破壊するとされる。慢性中耳炎に対するファージの安全性を明らかにする目的にて研究を行った。
経外耳道的に黄色ブドウ球菌ならびにファージを投与した。予想されたより高濃度の菌量が必要であったが、ファージにて炎症が消退した。体調不良例や死亡例や内耳障害が疑われた例は認められなかった。ファージ治療の有用性は示されたが、耳毒性についてはさらに検討が必要と考えられ -
バクテリオファージの溶菌活性を利用した細菌感染性眼疾患の新規治療法の開発
研究課題/領域番号:26462692 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
福田 憲, 松崎 茂展, 内山 淳平
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
家兎角膜にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を感染させて、バクテリオファージを点眼しその効果を抗菌薬点眼と比較検討した。対照群および抗菌点眼群に比してバクテリオファージ点眼群は有意に角膜混濁スコアが低下したが、角膜内の生菌数は統計学的有意差が得られなかった。
細菌性眼内炎の動物モデルを確立するため、家兎およびマウスを用いて検討した結果、マウスの硝子体へ緑膿菌あるいは腸球菌を投与することで、多数の好中球浸潤を生じ組織破壊を伴う非常に激しい眼内炎を安定して誘導することが出来た。眼内炎を生じたマウスの硝子体にファージを投与すると、臨床スコアおよび眼内の生菌数が有意に低下した。 -
ピロリ菌の病原性発現へのファージの関与機構の解明とその殺菌力を用いる除菌法の開発
研究課題/領域番号:26461504 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松崎 茂展, 内山 淳平, 大畑 雅典
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
本研究では、バクテリオファージ(ファージ)KHP30、KHP40を利用する、薬剤耐性ピロリ菌の胃内からの効果的除菌法の開発を行うために必要な、菌保有のファージ排除機構である制限-修飾系に関する情報の収集を目指した。その結果、ファージの感染効率を著しく減衰させる制限-修飾系が、ピロリ菌には複数存在していることが明らかとなった。そのため、本ファージを含むピロリ菌ファージを除菌に使用するためには、これらの制限-修飾系に適応したファージセットの構築をする必要性があることが明らかとなった。
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C型とD型ボツリヌス毒素変換ファージの尾部吸着タンパク質と宿主菌レセプターの解析
研究課題/領域番号:25460541 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
阪口 義彦, 松崎 茂展, 内山 淳平
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
C型とD型ボツリヌス菌は、家畜にボツリヌス症を引き起こす。その結果、食品・畜産業界へ大きな損失を与える。その原因となるC型とD型毒素遺伝子は、バクテリオファージのゲノム上にコードされているため、ファージによる毒素遺伝子の水平伝播を阻害させることがボツリヌス症の感染制御法として考えられる。本研究では、C型毒素変換ファージ、c-stファージの感染に第一義的に重要である吸着に関して遺伝学的に研究を行った。はじめに、C型毒素変換ファージゲノムの比較、c-stファージのビリオン遺伝子の同定を行った。これらの情報をもとに、いくつかの吸着に関与する遺伝子を予想している。現在、本研究を継続している。
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ポイント・オブ・ケア診断を目指したバクテリオファージ尾部吸着分子を利用した簡易迅速細菌検出技術の開発
2013年04月 - 2014年03月
黒住医学研究振興財団 第21回研究助成金 第21回研究助成金
内山淳平
担当区分:研究代表者
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ポイント・オブ・ケア診断キットを目指したファージ尾部吸着タンパク質を利用するイムノクロマトグラフフィー法の技術開発
2013年
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 探索タイプ
内山 淳平
近年、細菌検査におけるポイント・オブ・ケア診断キットの社会的ニーズが高まっている。本申請研究課題では、「ポイント・オブ・ケア診断キットを目指したファージ尾部吸着タンパク質を利用するイムノクロマトグラフィー法の技術開発」を行った。本研究で提案する技術は、ファージ尾部吸着タンパク質を細菌検出に使用する技術である。イムノクロマトグラフィー法の変法であるため、ファージクロマトグラフィー法と命名した。はじめに、黄色ブドウ球菌を標的とし研究開発を行った。ファージクロマトグラフィー法は、現在、流通しているキット類と比較して、感度・精度は優れており、また、他の細菌種との交差反応は認められていない。既存技術と比較して技術的優位性を有しており、十分技術移転可能であると考えられる。現在、本法の更なる技術改良を行っている。さらに、様々な細菌種に対するファージ吸着タンパク質の分離を行い、ファージクロマトグラフィー法の構築を目指して研究を継続している。 本研究成果により、ファージ尾部吸着分子の十分技術移転が可能であるという結果を得た。今後、研究を継続して行い、様々な菌種に対して、高感度に検出可能なファージクロマトグラフィー法を作製し、事業化を目指したい。
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新規バクテリオファージゲノム由来ヌクレオシドの抗ウイルス活性の可能性検討
研究課題/領域番号:24791025 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
内山 淳平, 蒲生 啓司
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
ウイルス感染症に対する化学療法では、ヌクレオシドの構造をベースにした核酸類似体が使用されている。一部のバクテリオファージ(ファージ)は、ユニークなゲノムDNAを有している。本研究では、抗ウイルス薬の創薬基盤となりうる新規核酸をファージゲノムDNAから捜索した。
LC-MSを使用しファージゲノムDNAを分析した結果、ほとんどのファージは、通常のゲノムDNAであった。一方、黄色ブドウ球菌ファージS6では、チミンがウラシルに完全置換されたゲノムDNAを有することは明らかとなったが、抗ウイルス薬の創薬基盤となりうる新規核酸の発見には至らなかった。 -
研究課題/領域番号:23591478 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
松崎 茂展, 竹内 啓晃, 内山 淳平, 大畑 雅典
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:5330000円 ( 直接経費:4100000円 、 間接経費:1230000円 )
本研究では、我々が独自に分離した新規ピロリ菌ファージ KHP30 の溶菌活性を利用するピロリ菌除菌法の開発をめざし、それに必要な本ファージの基本的な特性(形態学的特性、生理学的特性、ライフサイクル、およびゲノム塩基配列およびゲノム構造)を確定した。KHP30は、臨床分離ピロリ菌株の約65%を溶菌可能であり、広宿主域であることからファージ療法に有用なファージであると予想された。ファージKHP30のゲノム配列を解読し、相同性検索によりホリン様タンパク質の遺伝子は推定されたが、通常それに近接する溶菌酵素遺伝子は推定されず、従来のファージとは異なる独自の溶菌システムを保有すると推定された。
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バクテリオファージ尾部リガンド分子を利用した新規迅速細菌同定法の開発
研究課題/領域番号:22890129 2010年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
内山 淳平, 大畑 雅典, 松崎 茂展, 内山 伊代
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3016000円 ( 直接経費:2320000円 、 間接経費:696000円 )
感染拡大防止には、感染管理が極めて有効である。感染管理における迅速な細菌種同定は、患者早期治療、医療費削減、感染拡大防止等に大きく貢献する。それゆえ、より迅速な細菌同定法の開発は急務である。研究代表者は、バクテリオファージ(ファージ;細菌ウイルス)の構造タンパク質が細菌種特異的吸着能に関与していることに着目し、細菌検出法への応用性を検討した。その結果、ファージ尾部分子は迅速細菌検出法に使用できる可能性が明らかとなった。