共同研究・競争的資金等の研究 - 梶井 一暁
-
近代転換期日本における教育者の宗教観と宗教者の教育観の形成:その関係的状況の分析
研究課題/領域番号:21K02219 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
梶井 一暁
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
近代日本における教育と宗教の関係の発達史を究明する歴史的前提として、近世の状況を検討した。教育史に仏教史・文化史の関心を重ね、近世仏教諸教団が設置した僧侶教育・仏教研究機関を対象に取り上げ、その学習者たる修学僧に関する基礎的考察を進めた。
具体的には西本願寺が17世紀に設置した学林(京都)を扱い、学林の学籍簿にあたる史料『大衆階次』(龍谷大学所蔵)を調査した。『大衆階次』に記載される約16500人の修学僧(所化)のうち、85人をリスト化した。この85人は阿波国出身者であるが、京都の学林に修学しつつ、あるいは修学後、地元で寺子屋(手習塾)や漢学塾を開く者があった。この西本願寺学林の修学僧の状況にみられるように、近世社会において、僧侶はもちろん宗教者であるが、同時に教師であり、漢文を解する知識人でもあった。そして、その修学僧が開く寺子屋や漢学塾の数例は、明治初期まで存続し、近世・近代移行期を通じて地域の教育を支える存在であった。
明治初期の新学制において、寺院は学校教場として使われた。僧侶は教師(訓導)ともなった。近世と近代の教育状況の位相は、単なる断絶と刷新の視点では把握できないはずである。教育と宗教が混交して成立する地域の〈知〉をめぐる状況について、引き続き、検討を進める。近世と近代をつなぐ僧侶(宗教者)は、どのような教育的営為をなしたのか。士庶出身の教師と何が違ったのか。今年度の調査では、これらの実態はまだ捉え切ることができておらず、史料の調査と分析を継続する必要があると考えている。 -
教員養成に関する国際交流研究:ジャーマン・インパクトを中心に
研究課題/領域番号:21K02198 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
尾上 雅信, 高瀬 淳, 平田 仁胤, 梶井 一暁, 小林 万里子
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究の目的は、フランス、イギリス、オーストリア(ハンガリー帝国)、ロシア、そして日本を具体的な研究対象としてとりあげ、各国相互に如何なる影響関係のなかで教員養成の改革を展開してきたか、その具体的な実態を明らかにすることにより、特定モデルの受容パターンを解明し類型化をめざすところにある。本年度は4か年計画の初年度であり、基礎的な作業段階の第1年度である。対象各国における、個別の教員養成発達史の実態解明のため基本的な資料収集を行うとともに、その実態の特質解明に向けての取り組みを、基本的な研究課題とした。具体的には、①教員養成の理念(目的)と思想(ペスタロッチ主義とヘルバルト主義を対象)、②教員養成の制度的な内容(養成機関・教育課程・免許と任用など)、③その時点における改革の動向・経過、課題、などを精査することであった。資料収集については、残念ながらコロナ感染による海外渡航制限、また国内移動の制限もあり、所期の目的を達成することはできなかったが、オンライン購入や国内での刊行文献購入を行なうことはできた。また、共同研究としての取り組みも、簡単な意見・情報交換は定期的に行なうことができたうえに、第1回の研究会(2021年9月13日(月):岡山大学)を実施することができた。研究発表は、「フランスの場合 ─ 七月王政(1830年代)における初等師範学校制度(男子)成立へのドイツ(プロイセン)の影響」(尾上)、「イエナ大学の教育学ゼミナール:ブルツォスカの思想と実践」(小林)、「明治期日本への西洋教育の影響に関する一考察 ─ 一斉教授の伝播と実際」(梶井)、「イギリスにおけるジャーマン・インパクト」(平田)であった。これらのことから、初年度としては当初の目標をおおむね達成することができたと考える。
-
文献学的地方語史研究のための地方寺院所蔵文献を主対象とする調査研究
研究課題/領域番号:17K02778 2017年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
原 卓志, 梶井 一暁, 町田 哲, 刀田 絵美子
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
地方語史研究推進を主としつつ、あわせて地方史・地方教育史に資する文献資料を見出し、当該文献の資料的な価値を分析・考察するために、以下のような調査研究を行った。
徳島県においては、板野郡の無尽山荘厳院地蔵寺所蔵文献について悉皆調査を継続し、調査を終えた文献について、『無尽山荘厳院地蔵寺所蔵文献目録』〔第6冊〕(全560頁・私家版)を作成・刊行した。また、徳島県小松島市の国伝山宝珠院地蔵寺について、新たに発見された典籍・古文書について調査を行い、その結果を『国伝山宝珠院地蔵寺所蔵文献目録』〔追補〕(全182頁・私家版)にまとめ刊行した。これらは、鳴門教育大学附属図書館を通し、機関リポジトリとしてウェブ上に公開した(https://naruto.repo.nii.ac.jp/)。
徳島県立図書館所蔵の『三宅松庵日記』については、安永8年(1779)の第一次解読を進め、解読中に見出した口頭語的な言語事象についての分析を継続して行っている。
さらに、これまでに見出した文献を基にした教育史(学習史)的な観点からの分析も継続しており、「国伝山地蔵寺住侶の修学と典籍」(『寺院文献資料学の新展開第5巻「中四国諸寺院Ⅰ」』〈2020年3月、臨川書店〉所収)として発表したほか、僧侶の学習や教育活動に関する研究と史料調査を進め、僧侶の活動を、寺院間ネットワークの観点から把握するとともに、その活動を私塾学習者なども含めた地域学習史に位置付けることに取り組み、武士の文字学習における寺院の役割、庶民の教育・教化に果たす僧侶(とりわけ旅する知識人としての旅僧)の意義などについて考察し、「古代・中世の教育」(『日本の教育史を学ぶ』〈2019年5月、東信堂〉所収)として発表した。 -
近世・近代移行期における教育と宗教の関係―仏教者による教育活動の実態の検証から
研究課題/領域番号:17K04554 2017年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
梶井 一暁
配分額:3380000円 ( 直接経費:2600000円 、 間接経費:780000円 )
宗教文化の形成や変化をめぐる中央本山と地方末寺の関係性について、学習者や知識人としての僧侶が切り結ぶネットワークや文化的環境の位相という関心から、歴史的考察を進めている。本年度は、東海地域と瀬戸内地域を事例に、江戸末期から明治初期にかけての僧侶の学問と教育の経験を検討した。そのための史料について、文書館所蔵のものの調査だけでなく、地方寺院所蔵のものも掘り起こし、宗教文化をめぐる中央と地方の関係性の叙述を、一次史料にもとづいて行うことに努めた。史料は文書が中心であるが、石碑や墓碑などの史蹟も一部調査した。
近世・近代の移行期は一種の社会経済的また価値文化的変動期であり、教育と宗教は未分化であるところに特色がある。僧侶が学校教師であったり、高等学校生が信仰を求めて学外にアイデンティティのありかを探ったり、教育と宗教は人間形成作用全体のうちに、ともにある。西洋と東洋という補助線をそこに引き入れても、教育と宗教の関係は相互的であるし、即応的である。
調査研究の成果の一部は、前近代の教育通史の記述のなかに、学習者ないしは知識人としての僧侶のありかたを位置づけ、若干の説明を行った。しかし、専門論文として成果を公表するにはいたっていない。
史料調査について、十分な機会と時間を確保することができなかったため、論述のための一次史料を、当初の予定どおりには収集できなかった。
引き続き、一次史料の掘り起こしを進め、実証性の高い論文の提出に努めたいと思う。 -
教員養成の思想と制度に関する比較発達史:20世紀の国際関係を視野に入れて
研究課題/領域番号:16H03764 2016年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
尾上 雅信, 高瀬 淳, 熊谷 愼之輔, 尾島 卓, 平田 仁胤, 梶井 一暁, 山口 健二
配分額:15990000円 ( 直接経費:12300000円 、 間接経費:3690000円 )
本研究の目的は、フランス、イギリス、ドイツ、ロシア、アメリカ、中国そして日本の各国が20世紀の国際関係のなかでどのような教員をもとめ、どのように養成し、国民教育の現場たる学校(主として初等学校)に教員を送り出していたのか、比較発達史的分析を試みることにある。
第4年度にあたる2019年度は、これまでに引き続き、研究計画全体の基礎的な部分となる研究作業、すなわち、①比較分析の対象であるフランス・イギリス・ドイツ・ロシア・アメリカ・中国・日本、各国における教員養成発達史の個別的側面の把握に努めるとともに、②それぞれの成果の一部を大学紀要等に発表し、さらに共同研究としての成果の一部を関連学会で口頭発表することを目指した。具体的には、①については各国担当者(主分析者)それぞれ個別的に国内外の文献調査と資料(図書などの刊行資料及び複写資料)の調査と収集を行った。担当者それぞれが先行研究及び基本的な研究資料を調査して図書を中心に購入することに努めた。また②については、おもに尾上、梶井、山口が各々指導する大学院生との共同執筆で学部紀要に論文を掲載した。さらにこの際の分析結果をもとに、岡山大学(教育学部)で開催された国際会議でポスター発表を行なうことができた。また、フランス担当の尾上、ロシア担当の高瀬、日本担当の梶井の3名が、19~20世紀のドイツ(プロイセン)から各国にどのような影響(インパクト)が与えられたか、ジャーマン・インパクトの視点から共同討議を行い、教育史学会第63回大会(静岡大学)において仮説的な口頭発表(コロキウム)を行なうことができた。以上から、第4年度もまた当初の目標をおおむね達成することができたといえる。 -
労働市場の近代化と人的資本形成に関する比較史的研究
研究課題/領域番号:15H03371 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
齊藤 健太郎, 谷本 雅之, 山本 千映, 梶井 一暁, 三時 眞貴子
配分額:13650000円 ( 直接経費:10500000円 、 間接経費:3150000円 )
本研究は、19-20世紀初頭のイギリスと日本において、人的資本や労働供給の変化を通じて、近代化に対応する標準的な労働力が形成されつつあったことを明らかにした。イギリスに関しては、19世紀前半に識字能力の低下がみられた一方で読む能力が上昇する可能性があったこと、19世紀後半には学校教育によって技能職への基礎的知識が普及したことが示された。技能にグレードを導入し職場内外の評価に対応する労働組合もあった。日本に関しては、労働供給の年給化や近接化などの労働市場の変化、国民教育を通じた児童の労働力としての訓練、さらに徒弟教育の近代化が試みられたことなどを示した。これらは計4回の国際学会等で報告された。
-
地域の教育・文化拠点としての近世寺院:宗教施設をめぐる人間形成文化史研究の試み
研究課題/領域番号:25381031 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
梶井 一暁
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
寺院は第一に宗教施設であり、信仰と祈念の場である。同時に仏書や漢籍を討究する学問寺であり、庶民に手習指南や読書指導を行ったり、蔵書を形成して書籍を貸し出したりする場でもあった。近代学校教育制度が現出する以前、近世社会において寺院は学問所であり、学校であり、図書館であった。いわば地域学習センター的役割を担っていた。近世社会に形成される知的環境の実態と特質を解明するため、地域の教育・文化拠点としての寺院への視角は欠かせない。
本研究を教育史と仏教史を結ぶ位置に据え、とくに近世寺院による庶民の文字学習への関与、私塾の学習ネットワークのなかの僧侶という側面を考察した。 -
国語史資料・学習史資料開発のための近世地方寺院伝存文献の調査研究
研究課題/領域番号:22520471 2010年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
原 卓志, 梶井 一暁, 平川 恵実子
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
地方語史研究、および近世僧侶の学習実態の解明のために有益な資料を開発することを目的とし、徳島県真言宗寺院所蔵の文献について悉皆調査を行い、所蔵文献目録・索引を作成した。それに基づいて、以下の研究を行った。
①聞書きなどに地方語史資料として有益な文献が存在することを確認した。発見した文献については、その言語事象を考察し、全文を翻刻し公開した。②僧侶個人の蔵書目録、書写・所持本などを用いて、僧侶個人の学習史の描出を試みた。また、教育機関としての寺院の自立と発展についての研究も可能であることを明らかにした。 -
深層構造としての教育文化解明のための比較教育文化(「モノ」「コト」)史研究
研究課題/領域番号:20330175 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
添田 晴雄, 田中 圭治郎, 矢野 裕俊, 川口 仁志, 岡本 洋之, 柴田 政子, 出羽 孝行, 梶井 一暁, 伊井 義人
配分額:12740000円 ( 直接経費:9800000円 、 間接経費:2940000円 )
深層構造としての教育文化の概念を仮説的に整理してそれを提唱するとともに、学校建築、教室、学校給食、学校掃除、制服、子ども服、学校行事、博物館、教員教育・学習メディアとしての音声言語・文字言語、黒板などの教具、学習具等のモノ・コトに着目して、いくつかの外国と日本における教育事象の比較考察を行い、それぞれの国における深層構造としての教育文化を明らかにしようとした。
-
近世人間形成に果たす宗教メディアの意義-地域文化センターとしての寺院に着目して-
研究課題/領域番号:18730502 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
梶井 一暁
配分額:3410000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:210000円 )
近世寺院や僧侶に関する教育史的研究を試みるため、地域文化センターとしての寺院の性格に着目し、村の知識人や教師として僧侶をとらえる視座から考察を進めた。
町や村に住し、人びとが関係を切り結ぶ末寺僧侶が、その多くはかつて京都や江戸の仏教学の中心的教育研究機関で学んだ経験をもつ者であったことを明らかにした。
末寺僧侶が都市修学経験者という外部とつながる文化的外部性を備えることが、村や町における僧侶の知識人や教師としての文化性や権威性の背景を形成した。町や村をこえてネットワークを形成する庶民も成長しつつあったが、僧侶は都市の学問や文化とより深部において接しうる存在であり、その経験を通じて彼らが外部から町や村に運びいれる文化や学問の性質は、庶民のそれとは一定程度異なったことを明らかにした。 -
近世日本における教育による身分移動に関する実証的研究
研究課題/領域番号:15730358 2003年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
梶井 一暁
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
近世日本は強固な身分制社会であったといわれる。しかし,教育による身分移動がまったく不可能だったわけではない。そのもっとも顕著な例は,僧侶教育機関を通じてみられる。近世の僧侶社会は世襲を原理とせず,したがって農家や商家の子弟が僧侶教育機関に学ぶことによって僧侶となった。仏教諸教団が江戸や京都に設置する檀林や学林と呼ばれる僧侶教育機関には,出自をさまざまとする子弟が全国から参集した。庶民子弟にとって,僧侶となることは,自身の能力や努力によって所与身分を抜け出る進路のひとつであった。僧侶としての成功は,社会的威信や学問的評価を得るにとどまらず,少なくないケースで経済的成功をともなった。身分移動の媒介項としての僧侶教育機関への着眼は,本研究の独創的な点である。
本研究では,1.諸教団の僧侶教育機関が開く身分移動のルートを制度史的に整理するとともに,2,そのルートを利用し,実際に僧侶としての身分移動を果たした農民子弟の事例研究を試みた。とくに2における農家出身の修学僧の具体例の提示は,日本教育史研究上,独自の成果である。尾張農村や安芸農村に生まれた農家の次三男が,江戸や京都の僧侶教育機関での約20年にわたる修学を経て,社会的経済的に自立した寺院住職を得るまでの過程を追った。都市での相当程度の修学費用を負担することを教育投資として積極的に考える農家があったこと,村から僧侶として成功する者があらわれると,それを前例に,続こうとする者があらわれること,比較的厚い信仰心が認められる初期の者に比べ,続く者は僧侶となることをひとつの職業選択として考えている側面があり,流動性を増す近世後期の農村の労働移動の問題を考慮にいれた考察が重要であることなどを指摘した。また,2で調査した修学僧書簡(手書き資料)は,これまであまり知られておらず,資料的価値も高い。
研究成果の一部は,教育史学会(2005年10月,東北大学)で「近世浄土真宗修学僧に関する一考察-農民子弟の修学事情-」,日英比較史研究会(2005年11月,関西大学)で「教育史研究資料とその周辺」として発表した。 -
History of Education
資金種別:競争的資金
-
教育史,仏教教育史,地域教育史,教員養成
資金種別:競争的資金
-
Teacher Education and Training
資金種別:競争的資金