共同研究・競争的資金等の研究 - 香川 俊輔
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消化器癌転移形成過程への好中球細胞外トラップの関与とその制御法の開発
研究課題/領域番号:22K08873 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
香川 俊輔, 寺石 文則
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
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DNAとRNAによる複合バイオマーカーパネルを用いた膵癌治療アルゴリズムの構築
研究課題/領域番号:20K09033 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
吉田 龍一, 香川 俊輔, 重安 邦俊
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
本研究では、3年の研究期間内に、DNA・RNA・循環血液中の腫瘍由来DNA(circulating tumor DNA; ctDNA)を用いた複合バイオマーカーパネルを作成し、発癌から進展の過程で癌細胞に蓄積された分子生物学的特性による個別化を図り、膵癌のプレシジョン医療を確立することを目的としている。ctDNAの解析では膵癌切除100例を対象に,QX200 Droplet Digital PCR システムを用いてKRAS遺伝子のmutation analysisを行った。結果、腫瘍由来のKRAS mutationを血中に認めた症例は極めて予後不良であり、新たな治療戦略構築に有用なバイオマーカーとしての意義を見出すことが可能であった。
2021年度には下記研究を行う予定である。
Ⅰ. 膵癌治療応答性を反映したctDNA内KRAS遺伝子変異の経時的モニタリングと予後との相関を検証
Ⅱ. 腫瘍DNAの解析
Ⅲ. 腫瘍RNAの解析 -
胃癌腹膜播種へ及ぼす腹腔内癌微小環境の影響と細胞外小胞体の関与
研究課題/領域番号:18K08679 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
香川 俊輔, 吉田 龍一
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
腹膜播種を有する胃癌患者の腹腔では腫瘍進行を促進するマクロファージが存在している。本研究ではマクロファージが腫瘍促進型に分化する機序に関して、胃癌由来細胞外小胞 (EV)の影響を検討した。胃癌患者の腹水、胃癌細胞の培養上清からEVが抽出された。それらの精製したEVは、末梢血単核細胞に作用させると、腫瘍促進型マクロファージへの分化を誘導した。そして胃癌由来のEVで分化させたマクロファージは胃癌細胞の遊走能を促進し、それらのEVはSTAT 3蛋白を保有していた。これらの結果から胃癌由来EVはマクロファージ分化に影響を及ぼしうること、腫瘍を促進させる腹腔内環境を形成する因子であることが示唆された。
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消化器がん個別化医療のための蛍光ウイルスを用いたデュアル体外診断システムの開発
研究課題/領域番号:16H05416 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
藤原 俊義, 香川 俊輔, 田澤 大
配分額:17680000円 ( 直接経費:13600000円 、 間接経費:4080000円 )
消化器がんの浸潤・転移形式の中で、腹膜播種(癌性腹膜炎)は最終的な死亡原因の大きな割合を占めており、より細やかな(精密な)診断技術が必要である。本研究では、テロメラーゼ特異的蛍光標識ウイルス製剤TelomeScan(OBP-401)で高率かつ簡便に腹腔内浮遊がん細胞を可視化可能であることを明らかにした。さらに、ユニークなCD46を介した標的細胞特性とmicro-RNAによる厳格な増殖制御機能を有する新たな蛍光標識ウイルス試薬TelomeScan-F45(OBP-1101)を併用するデュアル体外診断システムを考案したが、その有用性は示せなかった。
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マイクロビーズ技術を用いた肺がん検診ツールのイノベーションと臨床応用
研究課題/領域番号:15H03034 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
永坂 岳司, 豊岡 伸一, 香川 俊輔, 楳田 祐三, 母里 淑子
配分額:17030000円 ( 直接経費:13100000円 、 間接経費:3930000円 )
本邦における肺がん検診は,胸部X線検査,喀痰細胞診が,また欧米では,低線量CTが行われているが,その検出精度はばらつきが多い。その理由として,それら検査には読影や細胞診という訓練された医師や技術者の介入が伴うためである。本研究は喀痰中の腫瘍由来Free核酸から腫瘍特異的変化であるメチル化DNAの検出を精確かつMechanicalに行う技術の開発を行い,現状の肺がん検診ツールのイノベーションを試み,喀痰から短時間に76CpGサイトのメチル化の有無を検出可能なシステムの構築を行い,2つの独立したコホートの解析を行い,その各々のROC曲線のAUCが0.93以上という極めて高い精確性と再現性を得た。
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消化器癌腹膜転移機構解明に向けての腹腔内遊離癌細胞解析技術の開発
研究課題/領域番号:15K15193 2015年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
香川 俊輔, 黒田 新士, 永坂 岳司, 田澤 大, 藤原 俊義, 吉田 龍一
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
難治である消化器癌の消化器癌腹膜播種克服のため腹腔内癌細胞と癌微小環境の解析を行った。胃癌、膵癌患者から得られた腹腔洗浄液において癌特異的GFP発現ウイルスTelomeScan を用いた癌細胞標識と免疫染色により腹腔内微小環境を構成する細胞を解析したところ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の存在が確認された。胃癌、膵癌細胞とTAMとの共培養下では、癌細胞の間葉系形質への変化、浸潤、遊走等の悪性形質の亢進、さらに化学療法剤への抵抗性の獲得が観察された。以上より、消化器癌腹膜播種の難治性と腹腔内微小環境、中でもTAMとの関連性が示唆された。
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消化器癌に対する細胞内侵入活性を有する免疫細胞をキャリアとするウイルス療法の開発
研究課題/領域番号:25293283 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
藤原 俊義, 香川 俊輔, 白川 靖博
配分額:18330000円 ( 直接経費:14100000円 、 間接経費:4230000円 )
生体内で癌細胞指向性(ホーミング機能)を有し、細胞内侵入(Cell-in-Cell)活性を持つ免疫細胞HOZOTをキャリア細胞として、ウイルス表面タンパク質のファイバーを35型アデノウイルスのファイバーに置換したウイルスTelomeScan/F35を搭載したAd-HOZOTの抗腫瘍効果を検討した。Ad-HOZOTは、抗アデノウイルス中和抗体の存在下でも抗腫瘍活性を発揮し、腹膜播種モデルで有意に播種病変を減少させ、壊死を誘導するとともに有意な中間生存期間(MST)の延長を来した。本技術は、難治性消化器癌の標的化治療戦略として有用である。
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消化器癌に対する分子標的光免疫治療Photoimmunotherapy
研究課題/領域番号:25462021 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
田邊 俊介, 香川 俊輔, 尾山 貴徳, 藤原 俊義, 田澤 大
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
光感受性物質を結合させた抗体を癌細胞に結合させ近赤外光照射により癌細胞を殺傷するPhotoimmunotherapy(PIT)が新たな癌治療として期待されている。HER2標的治療をモデルとして標的抗原陰性癌にもPITを適応すべく、HER2を発現するアデノウイルスベクターを併用し、HER2陰性癌における抗HER2 PITを試みた。ウイルスによりHER2陽性化させた陰性胃癌細胞株にPITは特異的細胞死を誘導し、さらにHER2陰性胃癌腹膜播種マウスにおいてもウイルスとPITの併用は腹膜播種の抑制と生存期間延長を示した。ウイルス遺伝子導入の併用はPITを抗原陰性癌にも有効とし、適応拡大が可能となる。
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上皮間葉転換を生じた血中循環癌細胞の蛍光イメージングによる選択的捕獲と遺伝子解析
研究課題/領域番号:25670580 2013年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
藤原 俊義, 香川 俊輔, 白川 靖博
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
癌患者の末梢血中を浮遊している癌細胞(CTC)の検出は、上皮系マーカーを指標とした方法が主流であるが、浸潤・転移などに関わる上皮間葉転換(EMT)を生じた癌細胞は理論上検出不能である。本研究では、テロメラーゼ依存性GFP蛍光発現アデノウイルス(TelomeScan)をCTCで選択的に増殖させ、フローサイトメトリーでGFP陽性細胞を捕獲・回収し、遺伝子解析を行う技術を確立した。本技術により、末梢血から個別化医療のための遺伝子情報を得ることができ、EMTを生じた癌細胞を解析することで、悪性度や予後をより高精度に予測可能となる。
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癌抑制遺伝子FHITのPKC制御による膵癌の浸潤・転移抑制効果の研究
研究課題/領域番号:23592009 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
西崎 正彦, 藤原 俊義, 香川 俊輔, 永坂 岳司, 田澤 大
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
Ezrinは癌の転移を促進するが、PKCにより制御されている。PKCI(PKC関連タンパク)と相同性がある癌抑制遺伝子FHITは膵癌でも異常が報告されているが、アデノウイルスベクターを用いてFHITを膵癌細胞S2-VP10に過剰発現させることで、FhitがPKCとEzrinの結合を阻害することによりEzrinのスレオニン基のリン酸化を抑制し、EzrinとActinの結合抑制されることを証明した。結果としてEzrinによる細胞の遊走性が抑制された。以上より、癌抑制遺伝子FHITの過剰発現はEzrinを制御することで膵癌の転移を抑制する可能性が示唆された。
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蛍光発現ウイルスを用いた血中循環がん細胞の分離による高感度遺伝子解析技術の開発
研究課題/領域番号:23591932 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
香川 俊輔, 藤原 俊義, 田澤 大, 重安 邦俊
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
一般の臨床検査情報に加えて、癌組織からの遺伝子診断が癌治療の選択に利用されるようになってきた。癌患者の血液中に循環している腫瘍細胞から遺伝子解析ができれば患者の体に傷をつけることなく、重要な情報が得られると考えた。癌細胞を蛍光色素で検出できるウイルスを用いて血液中の腫瘍細胞を捕捉し、遺伝子解析を行った。遺伝子変異が検出できたことから癌治療上有用な新たな診断方法になることが期待される。
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消化管間質腫瘍における血中浮遊腫瘍細胞検出とその有用性検討の試み
研究課題/領域番号:23659651 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
宇野 太, 藤原 俊義, 香川 俊輔, 西崎 正彦, 永坂 岳司, 田澤 大, 重安 邦俊, 橋本 悠里
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
本研究においてテロメラーゼ活性依存性腫瘍増殖蛍光ウイルス"テロメスキャン"を用いて消化管間質腫瘍(Gastrointestinal Stromal Tumor; 以下, GIST)の浮遊がん細胞(Circulating Tumor Cell;以下, CTC)の検出を、根拠となる基礎研究の成果をもとに臨床検体で試みた。12症例中 6 例で CTC が検出できたことで、肝転移やをきたす GISTの新規バイオマーカーとしての臨床的意義の可能性が示唆された。
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緑色蛍光タンパク質発現ウイルス製剤による膀胱癌に対する新たな診断法の開発研究
研究課題/領域番号:22591767 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
賀来 春紀, 渡部 昌実, 藤原 俊義, 香川 俊輔
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
癌細胞において特異的に増殖し緑色蛍光蛋白(GFP)を発現させる新規の診断用アデノウイルスベクター製剤Telomescanの、各種膀胱癌細胞の検出における有用性が証明された。さらに、次世代の癌細胞検出試薬としてのluciferase発現プラスミド(hTERT-AdTSTA-luciferase)およびGFP発現プラスミド(hTERT-AdTSTA-GFP)の有用性を、各種膀胱癌細胞において確認し、幅広い癌疾患での遊離・播種癌細胞の検出が可能になると期待される。
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テロメラーゼ依存性ウイルス製剤の悪性中皮腫の分子病態に基づく診断・治療への応用
研究課題/領域番号:19390365 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
藤原 俊義, 香川 俊輔
配分額:15600000円 ( 直接経費:12000000円 、 間接経費:3600000円 )
悪性胸膜中皮腫は比較的稀な腫瘍であるが、多くの治療の抵抗性と浸潤性の局所進展、極めて不良な平均生存期間などから、何らかの新しい治療戦略の開発が必須と考えられる。本研究では、テロメラーゼ依存性腫瘍融解ウイルス製剤テロメライシンによる治療効果、および蛍光発現同製剤テロメスキャンによる診断機能について検討した。テロメライシンの胸腔内投与は同所性マウスモデルにおいて顕著な抗腫瘍活性を示し、テロメスキャンにて微小胸膜播種巣を可視化することが可能であった。これらのウイルス製剤は、悪性胸膜中皮腫の診断・治療に有用と考えられる。
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微小リンパ節転移を標的とする選択的ウイルス療法による消化器癌治療の低侵襲化の試み
研究課題/領域番号:19591543 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
香川 俊輔, 藤原 俊義
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
これまで癌細胞を選択的に破壊するウイルス製剤テロメライシンの研究開発をおこなってきた。消化器癌治療における病態に応じた低侵襲手術の実現を目指し、癌のリンパ節転移に対するテロメライシンの治療効果を検討した。癌の原発巣に投与したテロメライシンはリンパ流に乗ってリンパ節に到達し、転移病巣内で治療効果を発揮することが確認された。テロメライシンは癌の原発巣とともにリンパ節転移をも治療できる可能性が示された。
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尿路性器癌に対するテロメラーゼ活性を標的とした新規ウイルス療法の開発研究
研究課題/領域番号:18591754 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
賀来 春紀, 那須 保友, 藤原 俊義, 香川 俊輔, 黄 鵬
配分額:3970000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:570000円 )
本研究は尿路性器癌に対するテロメラーゼ活性を標的とした新規ウイルス療法の開発研究を目的とした。研究期間内に転移癌を含む前立腺癌、腎癌に対する有効性、他の療法との併用効果の増強が確認された。一方、Telomelysinと新規癌抑制遺伝子REICとの併用効果は癌種によって効果は一定ではなく、新規ウイルスArmed-Telomelysin(Telomelysin-REIC)の作製に至らなかった。
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肺癌手術におけるテロメラーゼ活性を指標とした蛍光ナビゲーション・システムの開発
研究課題/領域番号:17390381 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
藤原 俊義, 香川 俊輔
配分額:15400000円 ( 直接経費:15400000円 )
酵素テロメラーゼの構成分子であるhTERT遺伝子のプロモーターに、アデノウイルスの増殖に必要なE1A、E1B遺伝子をIRESで結んだ配列を結合し、癌細胞で選択的に増殖し、GFP蛍光を発現する診断用ナノバイオ・ウイルス製剤TelomeScan (OBP-401)を作成した。まず、ヒト非小細胞肺癌細胞株H1299およびヒト正常肺線維芽細胞NHLFにOBP-401を感染させ、H1299では72時間をピークにGFP蛍光が検出できること、NHLFではGFP蛍光はほとんど観察されないことを確認した。OBP-401のE1A遺伝子に対するプライマーを用いてリアルタイムPCR解析を行ったところ、H1299細胞内ではOBP-401は10e5〜10e6倍に増殖していたが、NHLF細胞内では10e3程度の増殖に抑えられていた。また、カラーチルド3CCDカメラ、データ処理用パソコン、画像解析ソフト、さらにマクロ観察用キセノン光源などを組み合わせ、蛍光マグロ像観察システムを準備した。ヌードマウス背部皮下ににH1299細胞を移植し、形成された肉眼的皮下腫瘍にOBP-401を局所注入した。観察システムにより、OBP-401投与後1日目から腫瘍で蛍光が検出でき、3週間目に摘出した腫瘍では、その割面のほぼ全域でGFP発現が確認できた。一方、腫瘍を持たないヌードマウスの皮下にOBP-401を投与してもG理蛍光は認められず、in vivoでも正常組織ではOBP-401が増殖しないことが明らかとなった。
次に、非小細胞肺癌細胞の胸腔内投与による胸膜播種モデルを作成し、OBP-401の胸腔内投与による播種巣の標識効率を検討した。ヌードマウスの胸腔内に27G針を用いて2×10e6個のA549ヒト非小細胞肺癌細胞を移植すると、約4週間後に胸骨縦切開による開胸下に観察可能な大小不同の胸膜播種結節を形成する。このヒト肺癌胸膜播腫モデルにおいて、1×10e plaque forming units (PFU)のOBP-401を胸腔内に投与し、5日後に開胸にて胸腔内を観察した。マクロ観察用キセノン光源にて励起し、高感度カラーチルド3CCDカメラにて撮影、専用の画像解析ソフトにて処理後にPCモニター上にイメージングした。肉眼的に認識可能な大結節では、表層に斑状のGFP蛍光発現が認められた。また特記すべきことは、肉眼的に判別困難な微小な播種組織も鮮明なGFP蛍光で捉えることが可能であった。 -
テロメラーゼを標的としたアロ不死化樹状細胞を用いた消化器癌の新しい免疫療法の開発
研究課題/領域番号:17591401 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
香川 俊輔, 藤原 俊義
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
健常人末梢血約100mlから単核球分画を分離し、GM-CSF(50ng/ml)とIL-4(50ng/ml)を用いて6日間培養して未熟樹状細胞が誘導できることを確認した。また、TNF-α(25ng/ml)、PGE2(1μg/ml)を用いて成熟させ、フローサイトメトリーを用いてHLA-DR、CD80、CD83、CD86マーカーを解析、樹状細胞であること、および成熟機能を保持していることを明らかにした。hTERT遺伝子発現プラスミドを大腸菌にトランスフォームした後に増幅し、遺伝子導入に十分なプラスミド量を確保した。HLA-A2/A24の健常人末梢血から未熟樹状細胞を誘導し、hTERT遺伝子発現プラスミドをリポフェクタミンを用いてtransfectionした。また、遺伝子導入クローンを確認するために、GFP遺伝子発現プラスミドをco-transfectionした。GFP陽性細胞を経時的に観察したが、導入効率は極めて低く、何らかの工夫が必要と思われた。そこで、導入効率を改善するために、遺伝子導入手法をエレクトロポレーション法に変更した。エレクトロポレーションの至適条件の検討の後に、同様にhTERTおよびGFP発現プラスミドをco-transfectionし、プラスミドはネオマイシン耐性遺伝子を含んでいるため、ネオマイシン・アナログのG418でselectionを行った。初期遺伝子導入効率はやや改善されていたが、GFP陽性細胞の増殖は確認できなかった。hTERT遺伝子導入にもかかわらず樹状細胞の増殖が認められないことから、hTERT遺伝子導入による不死化のみでは自己増殖能を有した樹状細胞は得られないと推測される。
そこで、hTERT遺伝子発現に加えて、ヒトパピローマウイルスのE6/E7遺伝子を追加導入することで樹状細胞のクローン化を目指した。HLA-A2/A24の未熟樹状細胞にE6/E7遺伝子発現レトロウィルスおよびhTERT遺伝子発現レトロウイルス(国立がんセンター研究所清野博士から供与)を感染させ、ネオマイシン・アナログのG418でselectionを行った。しかし、やはり安定導入株は得られず、不死化樹状細胞を樹立する本研究の継続は困難と判断した。
本年度後半は研究の方向性を変更し、テロメラーゼ活性を標的とした腫瘍融解ウイルスで細胞死を誘導した癌細胞を樹状細胞にパルスすることで、癌細胞に特異的な細胞障害性T細胞(cytotoxici T-lymphocytes ; CTL)が誘導可能か否かを検討した。ヒト癌細胞にナノバイオ・ウイルス製剤Telomelysin(テロメラーゼ・プロモーターでウイルス増殖に必要なE1遺伝子を制御する腫瘍融解アデノウイルス製剤)をH1299ヒト癌細胞に感染させ、免疫を活性化するdanger signalとして知られる細胞内尿酸の濃度を測定したところ、著明な上昇を確認することができた。Telomelysinを感染させたH1299細胞と健常人末梢血を混合培養し、7日後の細胞の癌細胞に対する細胞障害活性を検討したところ、H1299細胞に特異的なCTL誘導が確認された。 -
可逆性不死化ヒト膵島β細胞株による細胞療法の開発
研究課題/領域番号:16390380 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
小林 直哉, 岩垣 博巳, 香川 俊輔, 白川 靖博, 持立 克身, 松川 啓義, 藤原 俊義, 中路 修平
配分額:14400000円 ( 直接経費:14400000円 )
1.レンチウイルスベクターを用いたヒト膵島細胞への遺伝子導入を検討し、良好な遺伝子導入が可能であった。低コストで容易に大量培養が可能なヒト膵島細胞株を樹立するにあたり、遺伝子操作は重要なツールとなる。
2.膵島β細胞は膵島の内部に多く存在している。そこで、β細胞への遺伝子導入効率を向上させるために804G細胞の細胞外マトリックスを使用することで、膵島の単層化培養が促進された。
3.大型動物を用いた細胞治療の効果と安全性を検討するために、膵臓全摘によるブタ糖尿病モデルの作成に取り組み成功した。当該ブタは糖尿病性ケトアシドーシスにて10日以内に全例死亡した。
4.健常ヒト膵島β細胞の可逆性不死化株NAKT-15を樹立した。Cre/loxP反応にてNAKT-15細胞から不死化遺伝子を取り除くために、遺伝子導入効率の良好なアデノウイルスベクターAxCANCreを使用した。AxCANCreをNAKT-15細胞に感染させた後、復帰NAKT-15細胞をマトリゲル上で培養すると、膵島様凝集塊を形成した。
5.免疫染色にて細胞質内のインスリンが染色され、インスリン産生に重要である転写因子PDX-1の発現も確認された。また復帰NAKT-15細胞ではIsl-1、Pax 6、Nkx 6.1、Pdx-1といったβ細胞に重要な転写因子とプロホルモン転換酵素1/3および2、分泌顆粒タンパク質の発現が認められた。また復帰細胞はグルコース濃度に応答したインスリン分泌が認められた。
6.復帰NAKT-15細胞を用いて糖尿病モデルマウスを作成し、腎皮膜下移植したところ、全例(10例)とも血糖値のコントロールが可能で有意に生存率が延長した。経過中当該マウスは低血糖を呈することはなかった。一方、細胞移植を受けなかったマウスは全例(10例)糖尿病にて死亡した。 -
癌特異的遺伝子治療の開発,TRAIL遺伝子とhTERTプロモータに関する検討
研究課題/領域番号:01J04327 2001年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
香川 俊輔
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
H13年4月より岡山大学大学院医歯学総合研究科に所属し、癌特異的遺伝子治療の開発をテーマに研究に取り組んでいる。15年度の研究内容であるが、癌細胞を特異的に殺傷するTRAILと非特異的にアポトーシス促進遺伝子baxの比較の結果、Baxの方が治療効果が高い結果となり、胃癌細胞株でのマウス担癌モデルでの研究成果をまとめ、9月ヨーロッパ癌学会(ECCO12)において発表した。さらに非増殖型アデノウイルスによる遺伝子治療の限界から発展の方向性として制限増殖型アデノウイルスによる遺伝子治療を研究している。hTERTのプロモータをウイルスの増殖制御に用いることで、腫瘍特異的増殖が可能となったウイルスを当教室で開発しているが、一つの試みとして、GFPというレポーター遺伝子を発現する非増殖型アデノウイルスと制限増殖型アデノウイルスベクターを同時にマウス胃癌腹膜播種モデルに投与したところ、腫瘍特異的にGFPの発現が確認され、微少転移の肉眼的検出の可能性と、その治療効果が肉眼的に視認できる可能性が示唆された。増殖型ウイルスは癌細胞に感染することで、ウイルスが増殖し腫瘍溶解をもたらすが、肺癌細胞株、および大腸癌細胞株でも腫瘍溶解効果が観察された。以上が当年度の活動であるが、3年間を通じての研究内容のまとめとしては、3点挙げられる。1、遺伝子間の比較検討ではBaxというアポトーシス促進遺伝子がもっとも効果が強く、治療遺伝子として有望であろうと思わる。2、癌特異的プロモータは遺伝子発現制御に用いることで、安全性が増すとは思われるが、現在は治療効果を増す方がまだ重要課題と思わる。3、治療効果を増すためには非増殖型ウイルスベクターを用いる戦略には限界があり、制限増殖型ウイルスをベクターに用いることが現在の可能性としては有望である。