共同研究・競争的資金等の研究 - 德光 浩
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CaMKKシグナル伝達の制御機構解明とそれに基づく分子標的薬創製
研究課題/領域番号:21H02429 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
徳光 浩, 石川 彰彦, 渡辺 泰男, 曲 正樹
配分額:16380000円 ( 直接経費:12600000円 、 間接経費:3780000円 )
本研究では、細胞内Ca2+を二次伝達因子とする細胞内シグナル伝達機構において、神経発生、遺伝子発現制御から代謝応答まで多岐に渡る生体機能調節を担う制御酵素として見出されたタンパク質リン酸化酵素であるCaMKKの分子制御機構の解明とその分子基盤に立脚したCaMKK阻害薬の創製を研究目的としている。本年度の研究実績として、消化管平滑筋におけるカルシウム脱感作反応においてCaMKKを介したリン酸化カスケード反応の関与が、新たに開発したCaMKK阻害剤TIM-063を用いることで明らかとなった(Kitazawa et al. Am J Physiol Cell Physiol 2021)。さらにCaMKKと阻害剤TIM-063の物理的相互作用について、TIM-063誘導体(TIM-127)を架橋したセファロース担体を用いることにより詳細に解析した。その結果、CaMKKと阻害剤TIM-063の相互作用は、酵素のカルシウム/calmodulin結合に依存しており、不活性型のコンフォメーションをとるCaMKKは阻害剤に結合しないこと、さらにはCaMKK/阻害剤結合はCaMKKの活性化状態に依存して可逆的であることを証明することに成功した(Ohtsuka et al. Biochemsitry 2022)。これまでCaMKKはその分子構造が単量体と考えられていたが、本研究において培養細胞に遺伝子導入したCaMKKアイソフォームは、多量体を形成することを細胞膜透過性架橋剤を用いることで明らかにした。さらに、この遺伝子導入細胞より単離した多量体CaMKKは、リン酸化酵素として酵素活性を有することも併せて証明することができた(Fukumoto et al. Biochem Biophys Res Commun 2022)。
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繊毛タンパクによる転写制御機構の証明
研究課題/領域番号:19H03447 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
水津 太, 徳光 浩, 平田 徳幸, 松岡 達臣
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
Inversinは、転写活性中心の一つである核内Cajar body様構造体へ集積し、特定の転写制御活性をもつことから、繊毛タンパクInversinが新規転写制御因子として機能していることが強く示唆された。また、単細胞繊毛虫Colpoda cucullusのシスト形成誘導時に急激な繊毛構成タンパクbeta-tubulinの断片化と発現変化が生じ、体内に取り込まれることが明らかになった。繊毛タンパクの動態変化から、繊毛タンパクの局在・構造・機能変化や再吸収によってシスト形成(細胞構造の再編成)へ向けたアミノ酸や核酸等の再利用を行い、低温、低pH、UV耐性の性質を獲得重要であると推測される。
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CaMKKβ/AMPKシグナル伝達制御の解明と分子標的薬の創製
研究課題/領域番号:18K06113 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳光 浩, 曲 正樹
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
Ca2+/Calmodulin(CaM)依存性プロテインキナーゼ活性化キナーゼβ(CaMKKβ)は、CaMキナーゼⅠやCaMキナーゼⅣ、5’-AMP活性化キナーゼ(AMPK)をリン酸化依存的に活性化し、遺伝子発現や神経発生、代謝調節やがん細胞増殖に至る多様な細胞内Ca2+に応答した生理機能を調節する。これまでの研究より、cAMP/PKA経路がCaMKKβ(Thr144)のリン酸化に関与しており、細胞内Ca2+とcAMP経路がCaMKKβ分子上においてクロストークしていることが明らかとなった。
そこで本研究では、細胞内における主要な脱リン酸化酵素であるProtein Phosphatase 2A/1 (PP2A/1)の選択的阻害剤(オカダ酸:OA)を用いた解析により、CaMKKβ(Thr144)の脱リン酸化を検証した。その結果、未刺激の状態においてCaMKKβ(Thr144)は、PP2A/PP1により脱リン酸化状態を保つことが分かった。さらに、細胞内CaMKKβキナーゼ活性の測定の結果、OAの処理時間に依存してCaMKKβキナーゼ活性が上昇し、脱リン酸化酵素阻害により活性化するCaMKKβ(Thr144)キナーゼの存在が示唆された。しかしこのキナーゼは、阻害剤による薬理学的実験から、これまでに示されたAMPK やPKAとは異なると考えられる。以上の結果より、CaMKKβは細胞内において、PKAを含めたリン酸化酵素および脱リン酸化酵素によりThr144残基のリン酸化/脱リン酸化制御が動的に調節されていることが明らかとなった。 -
スプライシング因子の新規機能を利用した動物細胞ディスプレー技術の高度化
研究課題/領域番号:15H04196 2015年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
金山 直樹, 徳光 浩, 曲 正樹
配分額:16640000円 ( 直接経費:12800000円 、 間接経費:3840000円 )
申請者は、抗体遺伝子の変異能力を有するニワトリB細胞株DT40を利用して動物細胞ディスプレー技術を構築した。本研究では、抗原結合による生存シグナルの惹起と抗体遺伝子変異の誘導におけるSRSF1の機能の一端を明らかにし、スプライシング因子の発現操作により、外来からDT40細胞に導入した抗体遺伝子、非抗体遺伝子への変異導入効率を向上させるのに有効であることを見いだした。一方、変異導入効率に有効な導入遺伝子の最適化法も見いだした。
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カルモデュリンキナーゼカスケードの動作原理と新しいリン酸化制御機構の解明
研究課題/領域番号:26440056 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳光 浩, 波多野 直哉, 曲 正樹
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
細胞内カルシウムイオンをセカンドメッセンジャーとする細胞内情報伝達機構においては、カルシウム受容タンパク質であるカルモデュリン(CaM)を活性化因子とする多機能性CaM-依存性タンパク質リン酸化酵素群(CaMK)がその中心的な役割を担っている。本研究においては、Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase kinase betaの構造機能解析より、基質認識機構の詳細な分子機構が明らかとなった。
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研究課題/領域番号:24591352 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
村尾 孝児, 井町 仁美, 徳光 浩, 大森 浩二
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
糖尿病は予備軍を含めれば実に2200万人との報告され、国民病として理解されつつある。最近、インスリン分泌不全の原因として膵β細胞における糖毒性(glucotoxicity)のみならず、脂肪毒性(lipotoxicity)が注目されており、グルコース感受性の低下が指摘されている。我々は、膵β細胞における脂肪毒性の細胞内情報伝達系メカニズムを網羅的に解明し、インスリン分泌不全の病態を解明する。また治療に関しては、脂肪毒性の解除に向けたインクレチン療法の効果および細胞内情報伝達系への影響、さらには新たなトランスレーショナルによる膵β細胞の機能改善について検討した。
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機能プロテオミクスを用いたカルモデュリン標的分子の網羅的同定と情報伝達機構の解明
研究課題/領域番号:21570143 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳光 浩, 小林 良二, 波多野 直哉
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
ラット脳組織よりカルモデュリンーGST融合タンパク質を用いたカルモデュリン標的分子の網羅的単離法およびLC-MS/ MSを使用することにより、WolframinとPRG. 1の二つの新規カルモデュリン標的分子の同定に成功した。さらに、この新規カルモデュリン標的分子の生化学的解析によりWolfram症候群をきたす遺伝子変異がWolframinのカルモデュリン結合性を失うことを明らかにした。
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研究課題/領域番号:19591054 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
石田 俊彦, 村尾 孝児, 徳光 浩, 井町 仁美
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
糖尿病の病因はインスリンの作用不足であり、進行した病態では膵β細胞からのインスリン合成/分泌不全が生じる。インスリン遺伝子転写の生理的刺激は血中糖濃度の変化であり、インスリン遺伝子プロモーター内にグルコース応答領域が数カ所存在している。我々は新たな転写因子PREBがグルコース応答領域に結合してインスリン遺伝子転写を促進することを明らかにした。さらにグルコース応答に関与するglucokinaseを調節することで、膵β細胞の機能改善をおこなうことを明らかにした。
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カルモデュリン・キナーゼIVの標的基質分子同定と情報伝達機構の解明
研究課題/領域番号:19570134 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳光 浩, 小林 良二, 波多野 直哉
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
機能プロテオミクス法によりCaM-キナーゼの新規標的リン酸化酵素を探索した。その結果、神経特異的リン酸化酵素であるSAD-キナーゼがCaMKKの標的酵素であることを見いだした。試験管内においてSAD-キナーゼはCaMKKによってそのThr189がリン酸化されることにより、約60倍の活性化を示した。このSAD-キナーゼの活性化は培養細胞系においても確認され、CaMKK/SAD-キナーゼという新しい細胞内カルシウムシグナル伝達経路が示唆された
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研究課題/領域番号:18300123 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
小林 良二, 徳光 浩
配分額:8520000円 ( 直接経費:7200000円 、 間接経費:1320000円 )
S100タンパク質 (S100)、Neuronal calcium sensor (NCS)、CaMKKの分子標的薬を開発し、新しいCaシグナル機構の生理学的意義を明らかにした。新しいS100活性測定法を案出し、S100拮抗薬を見いだした。NCS分子標的薬のスクリーニング法としてPpCaMKが有用であることを見いだし、スクリーニング法を確立し、NCS拮抗薬を発見した。更に、CaMKK阻害薬(STO609)を利用し、新しいCaMKKカスケードの標的分子を発見した。
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機能プロテオミクス解析法を用いたカルモデュリン・キナーゼカスケードの生理機能解明
研究課題/領域番号:17570115 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳光 浩, 小林 良二, 波多野 直哉
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
生体内において細胞内カルシウムは細胞内情報伝達因子として、神経伝達物質の放出さらには、遺伝子発現調節にいたる様々な独立した細胞内反応機構を介して、統合的に高次機能を制御していると考えられる。特に、カルシウム受容タンパク質であるカルモデュリン(CaM)を活性化因子とするCa^<2+>/CaM-依存性タンパク質リン酸化酵素群(CaM-キナーゼ)によるリン酸化反応を介した情報伝達機構が、これら多様なカルシウムシグナル伝達の中心的なメカニズムの一つと考えられている。近年、2種類の多機能性CaM-キナーゼ(CaM-KIおよびCaM-KIV)がCaM-KKによるリン酸化反応を介して機能調節を受けることが明らかとなり、CaM-キナーゼカスケードと呼ばれる新しいカルシウム情報伝達機構の概念が提唱された。
17年度の本研究において、CaM-キナーゼカスケードの標的リン酸化基質分子の一つとして神経細胞運命決定因子Numb/Numblを機能プロテオミクス法を用いて同定するとともに、リン酸化特異抗体の作成に成功した。本抗体によりNumb/Numblのリン酸化は生理的な現象である事が明らかとなった。18年度においては、このNumb/Numblのリン酸化反応の生理的意義を生化学的、分子生物学的に検討したところ、14-3-3タンパク質がリン酸化依存的に相互作用する事が明らかとなった。またNumbは非リン酸化状態ではエンドサイトーシス関連タンパク質であるAP-2複合体と相互作用しているが、この物理的相互作用はリン酸化により解除されることが明らかとなった。これらのことから哺乳動物のカルモデュリン依存性キナーゼカスケードを介したタンパク質リン酸化反応をともなう情報伝達機構によりエンドサイトーシスの調節が行われる可能性を示唆するものとなった。 -
グルコース感受性のメカニズムの解明と新たな膵β細胞の再生
研究課題/領域番号:17590937 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
石田 俊彦, 徳光 浩, 村尾 孝児, 大西 宏明, 井町 仁美
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
糖尿病の病因はインスリンの作用不足であり、進行した病態では膵β細胞からのインスリン合成/分泌不全が生じる。インスリン遺伝子転写の生理的刺激は血中糖濃度の変化であり、インスリン遺伝子プロモーター内にグルコース応答領域が数カ所存在している。現在までにグルコース応答領域に結合する転写因子がいくつか報告されているが、我々はPDX-1がサイトカインに応答してインスリン遺伝子発現を制御すること(Eur J Biochem 2000)、また新たな転写因子PREBがグルコース応答領域に結合してインスリン遺伝子転写を促進することを明らかにした(Diabetologia 2006)。またグルコースによるインスリン遺伝子発現の細胞内情報伝達系としてCaMKK/CaMKIVカスケードを新規に同定してきた(Diabetes 2004)。これらの研究の最終目的は糖尿病患者の治療方法の改善にある。そこで現在までの研究を利用して新たな膵β細胞の再生実験を計画した。膵β細胞の再生実験は国内外の研究室でおこなわれており、ES細胞(embryonic stem cell)から膵β細胞が分化誘導されること、膵臓の外分泌細胞または腸管の未分化細胞からインスリン分泌細胞が誘導できること、肝細胞、骨髄幹細胞から誘導できることが知られている。我々が目指す再生膵β細胞は、生理的でより安全かつ簡便に作成できる細胞である。また、我々は血液疾患の治療として骨髄移植を手掛けてきた経験を生かして、多能性幹細胞としてのヒトの骨髄中のmesenchymal stem cellに着目している。今回の研究はこのmesenchymal stem cellから膵β細胞を分化誘導し、さらにグルコース応答性インスリン遺伝子発現機構の解明から得られた知見を利用して、再生膵β細胞に生理的なグルコース応答性を獲得させるものである。
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膵β細胞におけるインスリン発現機序の解明と新たな膵β細胞の再生
研究課題/領域番号:15590944 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
石田 俊彦, 村尾 孝児, 徳光 浩, 佐用 義孝, 大西 宏明
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
糖尿病の病因はインスリンの作用不足であり、進行した病態では膵β細胞からのインスリン合成/分泌不全が生じる。我々は現在までに膵β細胞におけるインスリン遺伝子転写機構について検討してきた。インスリン遺伝子転写の生理的刺激は血中グルコース濃度の変化であり、インスリン遺伝子プロモーター内にグルコース応答領域が数カ所存在する。現在までにグルコース応答領域に結合する転写因子がいくつか報告されているが、我々はPDX-1がサイトカインに応答してインスリン遺伝子発現を制御することを報告してきた。また新たな転写因子PREBがグルコース刺激に応答して膵ベータ細胞で発現誘導されてグルコース応答領域に結合してインスリン遺伝子転写を促進することを明らかにした(投稿中)。またグルコースによるインスリン遺伝子発現の細胞内情報伝達系としてCaMKK/CaMKIVカスケードを新規に同定してきた(Diabetes 2004)。グルコース刺激によりCaMKK/CaMKIVが活性化され、CaMKK/CaMKIVの阻害によってグルコース応答性インスリン遺伝子転写が抑制された。一方、膵β細胞の再生実験として、転写因子IB-1遺伝子に注目した。IB-1遺伝子は膵ベータ細胞に発現しており、膵ベータ細胞のアポトーシスを抑制していることが報告されているが、その分子学的機序としてIB-1遺伝子はPPAR-γに応答することを見出している。今後は、これらに知見をもとに新たな再生膵β細胞を樹立する予定である。
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カルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素カスケードの生理機能解明
研究課題/領域番号:14580649 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳光 浩, 小林 良二, 村尾 孝児, 石田 俊彦, 佐治 幾太郎
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
1 カルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素カスケードの生理機能解明のため、本情報伝達機構の調節酵素であるカルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素活性化リン酸化酵素(CaM-KK)に対する特異的阻害剤、STO-609 (7H-Benzimidazo[2,1-a]benz[de]isoquinoline-7-one-3-carboxylic acid)を世界に先駆け開発した。酵素阻害剤は一般的にその非特異的効果が大きな問題である。そこで本研究において遺伝子改変によりSTO-609低感受性変異体を作成することに成功した。このSTO-609低感受性変異体CaM-KKを導入した培養細胞は阻害剤に対する感受性を消失する結果を得た。このことからSTO-609の薬理学的効果の中でSTO-609低感受性変異体CaM-KKの遺伝子導入によりその効果が消失する反応を解析することにより、カルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素カスケードを介した特異的応答を明らかにすることができると考えられる。
2 カルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素カスケードの生理機能の一つと考えられる遺伝子発現調節機構について、アデノウイルスを用いた恒常的活性型のカスケード分子群(CaM-KK/CaM-KIV)の遺伝子導入法とDNA-アレイ解析法を組み合わせることにより、NOR-1遺伝子がこの新しいカルシウム情報伝達機構の標的遺伝子として同定された。
3 カルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素カスケードのひとつであるCaM-KK/CaM-KIカスケードの生理機能についてHeLa細胞への遺伝子強制発現系を用いて検討した。その結果本カスケードはHeLa細胞においてミオシンII調節軽鎖のSer19のリン酸化反応を介した収縮反応、特にアクチン繊維の再構築を調節することが導きだされた。HeLa細胞より新しいカルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素カスケードの構成因子としてCaM-KIδおよびCaM-KKβ-3の遺伝子クローニングに成功し、その生化学的性質について明らかにした。
4 細胞性粘菌においてミオシン軽鎖リン酸化酵素(MLCK-A)の活性化機構について、CaM-KK変異体を用いて明らかにした。この結果、細胞性粘菌におけるMLCK-Aの活性化は哺乳動物のカルシウム/カルモデュリン-依存性リン酸化酵素カスケード類似のリン酸化酵素カスケード反応により調節されていることが推測された。 -
ウェルシュ菌イプシロン毒素の構造生物学的ならびに分子病理学的研究
研究課題/領域番号:13470060 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
岡部 昭延, 小林 良二, 宮田 茂, 松下 治, 徳田 雅明, 徳光 浩
配分額:10300000円 ( 直接経費:10300000円 )
Clostridium perfringensのε毒素(N末端にFactor Xa siteを導入し、His-tag付加したもの)をSeleno-methionine置換し、その結晶構造を解析した。Twin crystalのコンピュター解析を行ったが、構造決定には至っていない。ε毒素のHeptameric poreの形成は脂質ラフトに依存することを明らかにした。さらにラフトの脂質組成が膜孔形成に及ぼす影響について検討した。ラフト脂質の主要成分であるコレステロールの除去はヘプタマーの形成を阻害し、ガングリオシドの合成阻害はヘプタマー形成を促進した。このことからラフト膜の脂質環境が毒素分子の集合や膜挿入に影響を与える可能性が示唆された。分子病理学的な検討を行うために、マウスに^<35>S_-標識毒素を投与し、Whole body autoradiographyを行い、全身の臓器への分布を調べた。腎臓、脳、脊髄ならびに鼻粘膜に毒素の集積が見られた。最も集積の著しい腎臓の組織内分布を調べるために、免疫染色を行ったところ、糸球体、毛細血管への顕著な分布が認められ、遠位尿細管、集合管にも多量の毒素が検出された。腎臓の病理学的変化としては、糸球体の収縮と集合管上皮の軽度の変性・脱落が見られた。しかし脳の変化(血管周囲の浮腫、神経細胞変性)に比し軽微であった。腎臓における毒素蓄積の生物学的意義を明らかにするため、腎摘出マウスを用いてε毒素投与後の死亡時間を計測した。非摘出マウスに比し、死亡時間が顕著に短縮した。α毒素、ボツリヌス毒素では腎摘出は死亡時間を短縮させず、ε毒素の腎臓への集積は、中枢神経系に対する致死的な毒素作用を軽減するための生体防御であると結論した。Yeast two hybrid systemを用いてレセプター蛋白を構成するペプチドと考えられる遺伝子を単離し、その解析を進める一方、毒素耐性MDCK細胞を用いて、レセプターの同定と毒素作用の分子機構について解析を進めている。
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カルシウム/カルモデュリン依存性リン酸化酵素カスケードを介した遺伝子発現調節
研究課題/領域番号:12680637 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
徳光 浩, 木村 芳滋, 小林 良二, 村尾 孝児
配分額:3800000円 ( 直接経費:3800000円 )
1)新しい細胞内カルシウム情報伝達系として見い出されたカルモデュリン依存性キナーゼカスケードは上流のカルモデュリン依存性キナーゼ活性化リン酸化酵素(CaM-KK)による標的下流カルモデュリン依存性キナーゼのリン酸化を介した活性化により成り立っている。ラットCaM-KKもカルモデュリン依存性キナーゼであり、そのカルモデュリン結合の立体構造をNMRを用いて明らかにしたところ、これまでに報告のあるカルモデュリン依存性キナーゼとはその結合方向性を逆にするものであった。本研究においては、この特徴的なカルモデュリン結合をこれまでに同定した線虫CaM-KKのカルモデュリン結合ペプチドとカルモデュリンとのX-線結晶構造解析により詳細に検討し哺乳動物CaM-KKと同様であることを見い出した。一方、ラットCaM-KKαは構造解析からも明らかなように、その活性発現にはカルモデュリン結合を必要とする。本研究においてCaM-KKの他のアイソフォームであるCaM-KKβがカルシウム/カルモデュリン非在下に高い活性を発現することを見い出した。CaM-KKαはその自己抑制領域に存在するlle441によりカルシウム/カルモデュリン非存在下には不活性状態に保たれているが、CaM-KKβはこの自己抑制機構が触媒領域のN-末端に存在する129番から151番のアミノ酸残基に由来する領域による阻害により生じることを明らかとした。
2)CRE-GFPを有するレポーター遺伝子を保持させた線虫を作成することに成功し、活性型線虫CaM-Klの導入に伴うGFP発現を線虫個体で観察することができ、線虫においてカルモデュリン依存性キナーゼカスケードがCREBを介した遺伝子発現調節に積極的に関与するこをin vivoにおいて明らかとした。またこのカルモデュリンキナーゼカスケード依存性のGFP発現は線虫CREBの遺伝子破壊された個体では見られなかった。 -
卵巣癌細胞における薬剤耐性克服薬の新規開発とその機能
研究課題/領域番号:04152058 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 がん特別研究 がん特別研究
日高 弘義, 徳光 浩, 渡辺 正人
配分額:2600000円 ( 直接経費:2600000円 )
卵巣癌の化学療法では薬剤耐性が大きな障害となっており、P糖蛋白やグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)が耐性のメカニズムに関わるとされている。新規開発薬剤W-77がGSTと結合するという事実から我々は、W-77とアドリアマイシン(ADR)耐性との関わりを以下の方法を用いて研究した。ドラッグアフィニティーカラムクロマトグラフィーを用い、W-77とGSTとの結合について調べた。W-77のGST活性抑制効果を吸光度を用いて測定した。卵巣癌耐性株NOS2、NOS3およびADR耐性の細胞株NOS2AR、NOS3ARを確立し、MDR1とGSTの発現を調べた。MTTアッセイでW-77とベラパミリによる癌細胞のADRに対する感受性の変化を測定し比較した。^<14>C-ADRを用い、細胞内のADRの量への薬剤の影響を調べた。[結果]W-77は、直接GSTと強く結合した。W-77は、下拮抗的にGSTの活性を阻害し、1mMグルタチオン、1mMCDNB存在下300μMで47.3%に低下させた。P-糖蛋白とGSTは、耐性株で過剰発現した。ADR感受性試験ではNOS2に対し67.8倍の耐性を持つNOS2ARは10μMW-77の投与により10.6倍に低下するが、10μMベラパミルでは17.5倍であった。NOS3に対し18.8倍の耐性を持つNOS3ARは、10μMW-77の投与により6.0倍に低下するが、10μMベラパミルでは9.6倍であった。耐性株の細胞内ADR量は10μMW-77は10μMベラパミルと共にNOS2ARでは約1.5倍、NOS3ARでは約2.2倍に増加させた。[結語]以上より、W-77は、P-糖蛋白とGSTの両方の活性を阻害することにより耐性を克服することが判明し、それはP-糖蛋白の活性阻害剤であるベラパミルより有効であった。
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特異的阻害剤によるプロテインキナーゼの立体構造の推定方法の開発
研究課題/領域番号:02557009 1990年 - 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 試験研究(B) 試験研究(B)
日高 弘義, 徳光 浩, 渡辺 正人, 萩原 正敏, 小林 良二
配分額:11600000円 ( 直接経費:11600000円 )
プロテインキナーゼは蛋白質分子に燐酸基を導入する反応を触媒する酵素だが、この反応がダイナミックに、また時には繊細に、細胞機能調節に関与していることが明かになってきた。今やプロテインキナーゼの種類は100種類以上にも昇り、これら個々のプロテインキナーゼの生理機能解明にはその構造的・機能的研究が必須である。本研究では独自の阻害剤データベースを駆使して、プロテインキナーゼの機能ドメインの三次構造の推定、新しい特異的阻害剤の開発、そしてこれらから各プロテインキナーゼの生理機能に迫ることを目的とした。その結果、カルモデュリンキナーゼII(キナーゼII)が平滑収縮、中枢性血圧調節、インスリン・エンドセリンの分泌現象をはじめとする様々な細胞応答に関与することをキナーゼIIの特異的阻害剤、KN-62を用いることによって明かにした。また、cAMP依存性蛋白質燐酸化酵素(Aキナーゼ)がc-fos mRNAの増加、或いはimmedeiate early geneのインダクションに関与することをAキナーゼの特異的阻害剤、H-89を用いて明かにした。新たな特異的阻害剤の開発として、キナーゼII、及び現在最も注目を集めている、Mitogen Activated Proteinキナーゼ(MAPキナーゼ)の下流に位置する新しいキナーゼの特異的阻害剤を阻害剤データベースのデータを基にして夫々開発した。キナーゼIIの特異的阻害剤、KN-62が、我々が新しく発見したカルモデュリンキナーゼVをもカルモデュリン拮抗的に阻害することを発見し、一部のカルモデュリン依存性キナーゼでは、カルモデュリン結合部位が極めてよく保存されていることが間接的にではあるが証明された。
この様に、各プロテインキナーゼの生理機能を明かにし、また阻害剤データベースを基にした新しいいプロテインキナーゼ特異的阻害剤開発の成功、そして特異的阻害剤を用いたプロテインキナーゼの分子構造解明を成しえたことで当初の目的はほぼ達成されたと考える。 -
平滑筋及び非筋細胞の収縮反応におけるミオシンリン酸化説の統合と再構築
研究課題/領域番号:01044066 1989年 - 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究 国際学術研究
日高 弘義, HARTSHORNE D, 徳光 浩, 渡辺 正人, 小林 良二, 萩原 正敏
配分額:7300000円 ( 直接経費:7300000円 )
カルモデュリン依存性ミオシン軽鎖キナ-ゼ(MLCK)によるミオシン軽鎖リン酸化反応は、平滑筋収縮に必須である。しかし、脱リン酸化後の張力維持機構や他のプロテインキナ-ゼによる制御、あるいは、非筋細胞におけるアクトミオシン系の役割やその調節機構については不明な点が多い。本研究は、平滑筋・非筋細胞での収縮制御機構の分子モデルを構築することを目的として、平成元年度から平成3年度までの3年間、米国アリゾナ大学ハ-トショ-ン教授らと国際共同研究を行ない以下の成果を得た。MLCKは、平滑筋のみならず、血小板など非筋細胞や骨格筋にも多量に存在している。そこでまず、ニワトリ砂のうMLCKを抗原としてモノクロ-ン抗体を作成し、12種のエピト-プの異なる抗体を得た。ウヱスタンブロッテングにより各組織のMLCKとの交叉反応を調べるとMLCKには平滑筋・非筋細胞・心筋・骨格筋型の少なくとも4種のアイソザイムが存在し、平滑筋と非筋細胞のMLCKは高い相同性を有するが、骨格筋MLCKは他の組織とは全く異なる酵素であることが判明した。また、MLCK活性を阻害するモノクロ-ン抗体の添加によってアクトミオシンの超沈殿反応が阻害されることを明らかにした。脱リン酸化後の張力維持などミオシン軽鎖リン酸化反応だけでは説明できない現象を明らかにするためMLCK以外のCa^<2+>依存性プロテインキナ-ゼの関与についても検討し、平滑筋においてカルデスモンをリン酸化する酵素を発見し、これが脳のカルモデュリンキナ-ゼII(CaM KII)と同一であることを証明した。次に、平滑筋収縮におけるCaM KIIの役割を解明するために独自に創製したカルモデュリンキナ-ゼII特異的阻害剤KNー62の作用を検討した。KNー62は、CaM KIIをKi値0.9μMでカルモデュリンに競合的に阻害するが、他のプロテインキナ-ゼには影響がなかった。KNー62は、ウサギ頸動脈ラセン条片のノルエピネフリン・セロトニン・ヒスタミンあるいは脱分極筋のCa^<2+>収縮などを非競合的に抑制した。また、イオノマイシン刺激ウシ気管平滑筋細胞のFulaー2法で測定した細胞内Ca^<2+>濃度の増加にはKNー62は影響しなかった。Ca^<2+>動員性のアゴニスト刺激で、ウシ気管平滑筋は、ミオシン軽鎖とともにMLCKもリン酸化され、ミオシン軽鎖のリン酸化は、KNー62の前処理によりコントロ-ルよりも増加した。これらの知見は、CaM KIIが、平滑筋収縮に関与している可能性を示すものである。
さらに、カルモデュリンを含めたCa^<2+>結合蛋白がリン酸化反応によらない平滑筋収縮調節機構に関与している可能性が示唆されているが、我々は、3種類の新しいCa^<2+>結合蛋白質を同定・発見した。カルサイクリン・カルヴァスキュリン・カルギザリンと命名した3つのCa^<2+>結合蛋白質はいずれも分子量が約1,100の酸性蛋白で、よく似ており、cDNAクロ-ニングの結果得られたアミノ酸の一次構造上S100蛋白質ファミリ-に属することが判明した。これらの蛋白質の機能は現在不明であるが、カルサイクリンとカルヴァスキュリンの標的蛋白質としてそれぞれアネキシンファミリ-に属するCAPー50と細胞外マトリックスに存在する36kDa MAPを発見した。少なくとも3つのCa^<2+>受容体が平滑筋に存在することは、新しいCa^<2+>情報系の存在が考えられ平滑筋の収縮制御機構を解明するうえで重要である。一方、脱リン酸化酵素については、PNPPを基質としてLiらの方法で活性を測定し、超遠心分離・硫安分画・DEAEセルロ-スクロマトグラフィ-で部分精製を行ない、3つの活性ピ-クを分離した。ピ-クIIおよびIIIは、基質のリン酸化ミオシンを脱リン酸化した。興味深いことにピ-クIIは、どのプロテインキナ-ゼでリン酸化したミオシンも脱リン酸化したが、ピ-クIIIは、Cキナ-ゼによってリン酸化されたミオシンだけが脱リン酸化された。これらの脱リン酸化酵素の平滑筋収縮における役割を今後の検討課題である。
最後に、この研究の遂行ならびに結果の公表には双方の研究代表者・分担者・協力者を必要に応じて派遣・招へいし、効果的な研究費補助金の使用に努め、当初目的以上の成果が得られたと考える。