共同研究・競争的資金等の研究 - 市岡 優典
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実空間トポロジカル欠陥としての超伝導渦糸を用いる新しいスピン流現象の学理
研究課題/領域番号:22H01941 2022年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
安立 裕人, 大江 純一郎, 加藤 雄介, 市岡 優典
配分額:8710000円 ( 直接経費:6700000円 、 間接経費:2010000円 )
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渦糸状態からの多軌道電子系超伝導の物性解明の理論研究
研究課題/領域番号:21K03471 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
市岡 優典
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
鉄系超伝導体FeSe の2回対称なネマティック超伝導の渦糸状態を主な対象とし、多軌道電子系超伝導における磁場下の渦糸状態での物性を解明することを目的に、超伝導渦糸状態の空間構造と物性について定量的理論計算を実施する手法の開発を進めている。超伝導渦糸状態の空間構造と物理量の理論計算手法は、これまで独自に開発してきた渦糸格子でのEilenberger 理論計算をベースにして研究を進め、この手法の中でネマティック超伝導の特徴を考慮できるように発展させている。これまで我々の研究グループの超伝導渦糸状態についての研究の多くは、等方的フェルミ面上の異方的超伝導ギャップの場合の理論計算により進めてきたが、本研究ではフェルミ面構造やフェルミ速度が二回対称な異方性を持つ場合での渦糸状態の空間構造と物性への2回対称性の影響についての定量的評価も進めている。本研究初年度は、フェルミ面構造の異方性を異方的質量モデルの分散関係による楕円型フェルミ面でモデル化し、超伝導ギャップが二回対称な異方的な場合と、フェルミ面構造が二回対称な異方的な場合、それに両者が組み合わさった場合について、渦糸芯周りの超伝導秩序変数や電流分布、局所電子状態の空間構造を理論計算し、渦糸芯の2回対称な構造がどのように影響を受けるかの解明を進めている。また、この研究を発展させ、理論研究で用いるフェルミ面構造に関しては、鉄系超伝導体FeSe の電子状態についての10軌道tight-binding モデルから出発して得られるネマティック電子状態のホールフェルミ面を用い、超伝導異方性に関しては角度分解光電子分光実験から得られたフェルミ面上の超伝導ギャップ異方性を用いて、渦糸状態の空間構造についての理論計算を行い、走査型トンネル顕微鏡で観測された渦糸像と比較してネマティック超伝導の効果を解明する研究も進めている。
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スピン三重項超伝導物理の開拓
研究課題/領域番号:19H00657 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
鄭 国慶, 俣野 和明, 川崎 慎司, 市岡 優典
配分額:44590000円 ( 直接経費:34300000円 、 間接経費:10290000円 )
2019年度において、以下の成果を得た。
1)遷移金属Crを含む化合物A2Cr3As3(A=Na,K,Rb)において、超伝導ギャップに普遍的に点状のノード(ギャップがゼロ)が存在することを明らかにした。また、この物質群が強磁性量子臨界点付近に位置し、量子臨界点への距離はアルカリ金属Aの半径によって制御できることを発見した。Aの半径が大きいほど、A-Cr-Aのボンド角が90度に近づき、強磁性相互作用を増大させることを指摘した。これらの結果はA2Cr3As3が超流動ヘリウムの固体版であることを示唆している。
2)トポロジカル絶縁体Bi2Se3にCuをドープする単結晶を作製し、Cu濃度が広範囲にわたる高品質な超伝導試料を得た。Se-NMRを測定した結果、Cu濃度が類似した試料において、スピン三重項超伝導を記述するdベクトルが90度異なることがあるのを発見した。この結果は、dベクトルは局所的なひずみによってピン止めされることを示唆する。また、Cu濃度が0.4を超えると、超伝導ギャップが異方的(nematic)なものから等方的なものに変わることを発見した。これは、高ドープ域ではカイラル超伝導状態が実現している可能性が高いことを示すものである。
3)空間反転対称性の破れた超伝導体TaRh2B2を作製し、NMR測定を行った。その結果、非従来型超伝導状態が実現していること、常伝導状態では電子相関の強いことが明らかになった。
4)非磁性不純物効果と超伝導ギャップ対称性の対応関係を理論的に明らかにした。 -
磁場中物性に着目したスピン軌道相互作用が重要な超伝導体の機構解明の理論研究
研究課題/領域番号:17K05542 2017年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
市岡 優典
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究では、非従来型超伝導やスピン軌道相互作用に関係した超伝導機構を解明するため、第一原理電子状態計算より得られた情報も利用し、磁場中の渦糸状態の空間構造や物性を定量的に正しく計算する手法を開発している。これまで、第一原理電子状態計算の情報をもとに多軌道系電子状態のモデルを構成し、スピン軌道相互作用を導入して、クーパー対を形成する擬スピンの基底でフェルミ面上の軌道角運動量とスピン角運動量の情報を得る手法の開発した。そして、その擬スピンの基底におけるクーパー対としてスピン一重項超伝導の場合やスピン三重項超伝導の場合での磁場中物性について理論研究を進めている。超伝導体Sr2RuO4に注目した研究では、超伝導臨界磁場の評価に加え、臨界温度以下の温度での超伝導状態におけるスピンや軌道の分極などを評価する研究に取り組んでいる。
磁場方位が様々な場合での渦糸状態の物性の研究も進めている。磁場方向をc軸から傾けた場合の渦糸電子状態の理論計算では、表面近くでの渦糸線の曲がり方の理論評価が可能なことを示し、走査型トンネル顕微鏡(STM)で観測される渦糸像の磁場角度依存性を解明するなど、渦糸がある場合の表面での理論計算手法を、ほぼ確立することができた。渦糸状態での非磁性不純物散乱効果の理論評価の研究では、d波超伝導体において面内で磁場を回転させた場合での低温比熱の振動現象における不純物散乱効果の評価や、2回対称性を持つ超伝導ギャップの場合の不純物散乱効果の研究を行った。後者の2回対称性を持つ超伝導の研究では、異方的s波とスピン三重項p波の超伝導対称性の場合を比較して、渦糸周りの超伝導秩序変数や局所電子状態の空間構造を比べることにより、渦糸状態における不純物散乱効果と超伝導対称性の関係を明らかにした。 -
研究課題/領域番号:25400373 2013年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
市岡 優典, 大成 誠一郎, 田中 健太, 鍋田 昌宏
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
電場誘起表面超伝導の系について、ボゴリウボフ-ドジャン方程式による計算を行い、表面付近に束縛された電子の局所的な超伝導状態や電子状態を解明した。特に、表面に平行な磁場による超伝導破壊効果について、常磁性による効果に加え、新たに反磁性による効果を理論評価する手法を開発した。これにより、超伝導の磁場依存性において、この系の持つサブバンド構造や多ギャップ超伝導の特徴が物性に顕著に反映することを明らかにした。
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研究課題/領域番号:20244058 2008年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
鄭 国慶, 稲田 佳彦, 川崎 慎司, 市岡 優典, 櫻井 吉晴
配分額:47320000円 ( 直接経費:36400000円 、 間接経費:10920000円 )
空間反転対称性の破れた超伝導体Li_2(Pt_<1-x> Pd_x)_3Bを作製し、NMR測定により超伝導対称性がx~ 0. 8を境に急激にスピン三重項状態に変わることを明らかにした。また、結晶構造の解析を行った結果、Pt(Pd) B_6八面体の歪みがx> 0. 8では急激に増大することを見出した。この歪みの増大がスピン軌道相互作用を増大させた原因であり、スピン三重項混成の主原因であることを明らかにした。
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微視的理論によるスピン三重項超伝導・超流動での特異な渦状態についての解明
研究課題/領域番号:20029016 2008年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
市岡 優典, 町田 一成, 水島 健
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
冷却原子気体で実現が期待されているスピン三重項p波超流動に注目し、ヘリウム3の等方的p波超流動やルテニウム酸化物のカイラルp波超伝導との関連も視野に入れて、秩序変数に内部自由度のあるp波超流動状態での渦状態について理論研究を行ってきた。特に、原子気体でのp波超流動は研究の萌芽期にあり、今後の実験観測でどのような渦状態が現れるかの理論予測を早期に行い、今後の実験研究のための指針となるような成果を心がけ研究を進めた。ヘリウム3超流動においては秩序変数の内部自由度の多彩さのためマーミン・ホー渦のように渦芯のないトポロジカルな構造の渦が実現している。それらの特異な渦の構造を微視的理論などにより詳細に解析し、冷却原子気体を含むp波超伝導・超流動の渦状態の特性を総合的に解明してきた。
内部自由度のあるp波超伝導・超流動の渦状態の空間構造や関係する物理量の計算を可能とするための計算手法として、現象論的手法であるギンツブルグ・ランダウ理論による計算方法、定量的に正しい微視的理論による評価をするための準古典理論やボゴリュウボブ・ドジャン理論による計算方法の開発を行なった。これにより、ヘリウム3で実現しているマーミン・ホー渦やカイラルp波超伝導での渦と類似の渦構造が冷却原子気体で実現する可能性を評価し、その空間構造を理論計節より明らかにした。特に、マヨラナ状態として注目されるp波超伝導量子渦での準粒子状態の存在と特性の解明を行った。また、d波対状態など、より高次の角運動量状態の場合にも研究を発展させ、その特異な渦状態の理論解析を行なった。この他、本特定領域研究に参加している実験グループとの情報交換を行い、ヘリウム3超流動の回転下での特異な渦状態や、ルテニウム酸化物・重い電子系などでの特異な超伝導状態に関しても研究を進めている。 -
磁束渦糸状態の定量的物性評価理論の確立と内部自由度をもつ超伝導への展開
研究課題/領域番号:19540369 2007年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
市岡 優典
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
超伝導体の磁束渦糸状態の空間構造を正確に理論計算し、比熱や帯磁率、中性子散乱強度や核磁気共鳴スペクトルなどの物理量の磁場依存性・温度依存性を定量的に正しく評価する計算手法を開発した。これより、非従来型超伝導体の磁場中での物性を解析し、実験データに隠れている超伝導機構についての重要な情報を考察する手法を確立した。また、スピン三重項超伝導も含め内部自由度を持つ超伝導にも適用できる理論計算手法の開発を行なった。
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スピン3重項超伝導体におけるスピン流の理論的研究
研究課題/領域番号:18043001 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
浅野 泰寛, 市岡 優典
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
本研究課題ではスピン3重項超伝導体に固有の輸送現象の解明を目指している.18年度はその中でもスピン・ジョセフソン効果の基本的な性質の解明と,観測に向けての提案を行った.超スピン流に関する研究はヘリウム3ですでに行われているが,本研究ではスピン3重項超伝導体Sr_2RuO_4を念頭に超スピン流を制御しながら流すための理論的提案を行った.超伝導体中のクーパー対はスピンの外に電荷の自由度をもち,電荷が電磁場とゲージ結合するためスピン流の制御が可能になるという結論を得た.スピン流の基礎的性質の研究とその応用研究は現在磁性体を用いた微小素子においてきわめて盛んに行われており,デバイス応用の可能性も高くなってきた.その意味で超伝導体を用いたスピン流の研究はとても時宜を得たものと考えられる.
19年度はT字形状の超伝導体と常伝導体の接合の電気伝導測定から,スピン1重項超伝導体と3重項超伝導体の峻別が可能であることを示した.この目的のためには多くの実験があるが,ルテニウム酸化物をはじめとして多くの3重項超伝導体について,スピン3重項超伝導を否定する意見もないわけではない.こうした状況の下で,超伝導の対称性をはっきりと区別できる方法の提案は,この分野の発展に大きく寄与すると考えられる. -
磁束渦糸状態から探る非従来型超伝導体の物性
研究課題/領域番号:16740202 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
市岡 優典
配分額:3100000円 ( 直接経費:3100000円 )
重い電子系などの超伝導磁束渦糸状態の物性を理解する上でパウリ常磁性効果による超伝導対破壊の効果をきちんと考慮に入れて計算する必要がある。このため今年度は、超伝導異方性に加え、パウリ常磁性効果による対破壊効果も考慮した磁束渦糸状態の理論計算を行い、磁束渦糸状態の空間構造、磁場依存性・温度依存性におけるパウリ常磁性効果の影響を超伝導異方性の効果とともに明らかにする研究を行った。磁束渦糸状態での常磁性効果が実際の超伝導体で現れていることを検証するため、常磁性帯磁率や磁化の磁場変化などの基本的な物理量に加え、NMRのスペクトルや中性子散乱強度などの物理量を計算することにより、どのように常磁性効果が現れるべきかを解明する計算を実施し、CeCoIn_5やTmNi_2B_2Cなどの実験データを例にして常磁性効果の大きさが評価できることを示した。これらの成果は論文投稿準備中である。また、パウリ常磁性効果と関連した興味深い超伝導状態として、CeCoIn_5で発見されたFFLO(Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinikov)状態についても、NMRスペクトルなどの実験に対応した微視的理論計算を行い、その磁場温度依存性などFFLO磁束渦糸状態の性質について議論した。
一方、多成分超伝導オーダーパラメーターの系における特異な磁束渦糸状態の静的・動的性質についてのシミュレーション研究も、引き続き実施している。今年度は、非磁性不純物の周りの自発電流の空間構造や、ナノ構造超伝導体での超伝導空間構造・磁束渦糸構造に注目し、その中で、多成分超伝導体であることによる特異な振舞いを明らかにする研究を行った。特に、超伝導体に穴を開けてリング状にした系を考え、オーダーパラメーターの空間構造の磁場変化や転移温度の振舞いなど、多成分超伝導体でのリトルパークス効果の特異な様子を確かめる研究を進めている。 -
高温超伝導体の渦糸構造についての理論的研究
研究課題/領域番号:96J05484 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
市岡 優典
配分額:1200000円 ( 直接経費:1200000円 )