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敗血症時の自然免疫におけるCCケモカインリセプター8とそのリガンドの機能解明
Grant number:13226103 2001
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究(C) 特定領域研究(C)
松川 昭博
マウス腹膜炎誘発敗血モデル(cecal ligation and puncture ; CLP)時の浸潤マクロファージにはCCR8の発現増強がみられた。そこで,本モデルにおけるCCR8の生物学的意義を知るために、CCR8-/-およびCCR8+/+にCLPを行い,敗血症に伴う致死率を比較すると、CCR8-/-マウスではCCR8+/+に較べその生存率は有意に高かった。このとき,腹腔内および血中の菌数はCCR8-/-マウスで有意に低く,in vitroにおける菌消化能はCCR8-/-マクロファージで増強していた。腹腔マクロファージのLPS刺激培養上清中の活性酸素、ライソゾーム酵素、一酸化窒素(NO),TNFαおよびCXCL10の産生量は,CCR8-/-マクロファージで有意に高かった。また、脾細胞をconAで刺激した培養上清では,CCR8-/-脾細胞はIFNγ,IL-12の高値,IL-4,IL-13の低値を示した。以上より、CCR8-/-マウスでの免疫反応は自然免疫に必須なI型免疫反応にシフトし、細菌排除に効率的であることが示唆された。
次に、本モデルでのCCR8のリガンドを検索した.すると,CLP後の腹腔内でのCCL17の一過性上昇が検出され,CLPマウスに抗CCL17抗体を投与し、腹腔内および抹消血中の細菌数を検討すると、抗体投与群ではコントロールに比べ有意な菌数の増加が観察された.このときの腹腔内TNFαおよびCXCL10の産生量はコントロールに較べ有意に増加していた。したがって、CCL17は敗血症時の自然免疫反応を抑制する作用を持つことが示され、CCR8-CCL17の作用は自然免疫時の生体防御に負に働くことが示唆された。 -
炎症局所での好中球浸潤支配機構とサイトカインカスケードの解明
Grant number:09770154 1997 - 1998
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
松川 昭博
Grant amount:\1800000 ( Direct expense: \1800000 )
ウサギ急性炎症モデルでのGROの発現動態およびその役割を調べるためには,その遺伝子組み換え体および抗体の作製が必要となる.そこで,LPS刺激ウサギ脾細胞のcDNAライブラリーからGRO cDNAをクローニングし,これを発現ベクター(pQE-30:QIAGEN社)に組み込み,試大腸菌(E.coli M15[pREP4])に導入,ウサギGROの発現を拭みた.次に,大腸菌抽出液からGROタンパクを単離精製し,これをマウスおよびヤギにアジュバントとともに免疫し,モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を作製した.得られた抗体はウサギGROは認識するものの,他のウサギサイトカイン(TNFα,IL-1β,lL-8,MCP-1,IL-1 receptor antagonist)は認識せず,したがって炎症局所のGROの産生動態を知るうえで有用なツールと考えられた.そこで,ウサギGROをウサギ膝関節内に投与し,その時誘導される炎症反応を観察しようと計画した.しかしながら,上記GROは不溶性(8M Ureaには可溶)であったため,これをin Vivoに投与できなかった.そのためBaculovirus Transfer Vectorを用いる方法(Invitrogen社)で再度遺伝子組み換え体の作製を行い,その培養上清および細胞中から可溶性のGROを得た.現在このタンパクを精製中であり,精製後はin Vivoに投与し,その時の炎症反応を観察するとともに,ウサギ炎症モデルでのGROの産生動態を解明しその炎症反応への関与を明らかにしていく予定である.
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炎症局所の好中球による単核球浸潤の支配機構の解明
Grant number:08770161 1996
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
松川 昭博
Grant amount:\900000 ( Direct expense: \900000 )
炎症反応の局面におけるMCP-1の発現動態、その産生細胞を決定し、好中球浸潤と単核球浸潤との相互関係をしるためにこのプロジェクトを計画し,以下の結果を得た.
1)Con A刺激ウサギ脾細胞のcDNAライブラリーからMCP-1 cDNAをクローニングし、これを発現ベクターに組み込んだ.2)発現ベクターを動物細胞(COS-7 cell)に組み込み、ウサギMCP-1を発現させ,その培養上清からウサギMCP-1を単離、精製した.3)ウサギMCP-1をウサギ膝関節内に投与し,経時的な炎症反応の推移を観察したが,好中球浸潤を伴わない単核球浸潤は誘導できなかった.4)遺伝子組み替えMCP-1を用いて,ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製し,免疫染色およびELISA測定系を開発した.5)ウサギLPS関節炎におけるMCP-1の産生動態は,LPS投与後2-4時間で最高になり,以後その産生量は急速に減少した.これは,好中球浸潤のピーク(9時間)に先行するものであり,その産生細胞は免疫組織化学的に滑膜表層細胞と判明した.6)抗MCP-1抗体の投与による細胞浸潤の変化を観察すると,LPSによる好中球浸潤に影響はなかったものの,単核球浸潤は有意に抑制された.
以上の結果から,MCP-1は炎症の極めて早い時期から産生され,単核球浸潤を誘導していることが明らかとなった.しかし我々の結果から,先行して誘導される好中球から産生される単核球遊走因子が,つづいておこる単核球浸潤を誘導するという従来の仮説は否定的であると思われた.今後は,in vivoにおける他の炎症性サイトカインとのカスケード反応について検討する予定である.