共同研究・競争的資金等の研究 - 最相 大輔
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温暖化環境で生じるオオムギ一株収量低下に関わる遺伝構造の解明
研究課題/領域番号:21K05516 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
最相 大輔, 岡田 吉弘
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
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根圏生態系の季節変動から紐解く二毛作体系の生物学的な持続性
研究課題/領域番号:19KT0011 2019年07月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
谷 明生, 山本 敏央, 山地 直樹, 山下 純, 門田 有希, 中川 智行, 最相 大輔, 持田 恵一
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
植物の生育は植物の遺伝背景や環境要因等の相互作用の結果として捉えることができる。根圏微生物叢は植物の生育に多大な影響を与えており、逆に、植物の遺伝的背景や環境要因にも規定され、相互作用すると考えられる。本研究の目的は、圃場環境において微生物叢を含むあらゆるパラメータをデータ化し、それらの要因間のネットワークを可視化し,農業生態系としての季節変動動態を理解することである。
研究所実験圃場の慣行区と無施肥区において、アルミニウムに対する感受性の異なるイネとオオムギの品種対を対象に、隔週で各条件3植物個体ずつ(イネは6個体)サンプリングした。環境要因として、フィールドサーバーを用いて日照、降雨、温度、湿度、風向、風速を測定した。土壌環境データとして根圏土壌を採取し、ICP-MSによる水抽出可能な元素の組成を測定し、土壌センサを用いて土壌pHを測定した。さらに土壌の根圏微生物DNAを精製し、16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンスを行った。
施肥の有無によりイオン等の動態は変化し、pHは慣行区で低く、カリウム、リンは慣行区で高濃度であるが早い時期に消費された。慣行区の硫黄、無施肥区のマグネシウム、マンガン、銅が落水により増加した。同じく落水によると考えられるヒ素の増加、カドミウムの低下が無施肥区で見られた。
微生物叢は、イネではMassilia属、Pseudomonadaceae、Oxalobacteraceaeがstar1で多い傾向が見られた。オオムギでは根圏土壌と根のサンプルで相違が見られ、根のサンプルにのみJanthinobacterium, Methylibium属細菌が多く存在することが分かった。これらはオオムギ根のエンドファイトであると考えられ、そのオオムギに対する共生機構や成長への影響に興味が持たれる。 -
研究課題/領域番号:18K05574 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
最相 大輔
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
農業生産の高品質,安定供給を将来にわたって実現するためには生産性の持続的成長が必要である.本研究では,国内産オオムギ醸造品種の一穂粒数改変に向けた一穂粒数を制御する遺伝基盤を明らかにすることを目的とした.
「はるな二条」x「早木曽2号」の交配に由来する分離集団を使った一穂粒数のQTL解析の結果,醸造用品種の背景では微小な効果を持つ多数のQTLが集積して一穂粒数を増加させることが明らかになった.
一穂粒数の遺伝率は高く(0.80-0.81),国内産醸造品種「はるな二条」の一穂粒数の育種的な改変は可能であるが,従来型のピラミッド型育種に変わる育成手法の開発が必要である. -
システム育種学:麦類の品種育成情報の統合と育種目標発掘のための理論基盤構築
研究課題/領域番号:16KT0148 2016年07月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
最相 大輔, 甲斐 浩臣
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
本研究は育種学の新たな理論的枠組みの創出を目的に,品種育成情報の統合と新たな育種目標発掘のための理論基盤構築に取り組んだ.国内で100年以上の品種育成の実績と官民合同の品種比較合同試験が実施された実績を持つビール麦を対象に,1,500超の品種育成情報と50年にわたる品種比較試験データを取得し,育成系譜ネットワークの描出に取組んだ.また育成系譜データから代表的な約200系統を対象にGRAS-Di解析を実施し,全ゲノム関連解析の実施基盤を整備した.
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農地環境のメタ戦略:土壌・気象・作物の組み合わせ最適解による農地循環力の強化
研究課題/領域番号:15KT0038 2015年07月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
持田 恵一, 平山 隆志, 最相 大輔, 高萩 航太郎, 櫻井 哲也, 松浦 恭和
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
本研究では、周年の農地環境情報を集積・統合することに取り組み、農業形質の生産性を予測するモデルを構築し、農地の生産力と持続力を最大化する農業データ科学の基礎を確立する。オオムギの葉のトランスクリプトームや植物ホルモンの変動を調査し、野生オオムギ系統と在来品種についてライフコースにおける生理状態の変動の多様性を明らかにた。また、オオムギ集団の多型を網羅的に調査した。さらに、栽培記録からの出穂形質データと気象データを用いて、出穂日を予測する統計モデルあるいは機械学習モデルを作成した。
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栽培オオムギの地域適応を紐解く数理モデルの構築
研究課題/領域番号:25119716 2013年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
最相 大輔
配分額:9230000円 ( 直接経費:7100000円 、 間接経費:2130000円 )
本年度は,栽培進化によって広域適応的に分化した栽培オオムギの品種群毎の開花時期制御の変異を,(1)数理モデルによる温度閾値と暴露期間の推定,(2)QTL解析による「秋播性」自然変異の遺伝解析を通して明らかにすることを目的とした.
(1)播性程度の異なる6系統(III~V,各2系統ずつ)の過去6年分の圃場栽培データと栽培期間中の日平均気温データから,各系統の温度閾値および暴露期間を推定したところ,播き性程度IIIでは15℃程度が閾値であるのに対して,IVおよびVでは10℃前後であり,オオムギが低温と感じる閾値温度が異なることが明らかとなった.IVとVとの間では必要な暴露期間に違いがあり,「秋播性」の変異を数理的な手法により記載することに成功した.
(2)「秋播性」同士の交配由来の分離集団を用いたQTL解析の結果,「秋播性」の量的変異を説明する4つのQTLを見出した.これらのうち3つのQTLはそれぞれVRN1, VRN2, VRN3を含む領域に見出され,QTL解析で推定される遺伝効果と矛盾のない構造変異および発現差が検出されたことから,これらの遺伝子の関与が強く示唆された.(1)で温度閾値および暴露期間を推定した6系統のVRN1, VRN2, VRN3の塩基配列を比較したところ,VRN1でのみ推定したパラメーターと連関する構造変異が見出された.一方,3H染色体で見出されたQTL領域には既知の春化或いは花芽分化に関わる遺伝子は報告されておらず,「秋播性」の量的変異を支配する新たな遺伝子座と考えられた.さらにVRN1領域および3HのQTLは,倉敷市での圃場秋播栽培での圃場出穂日QTLとしても検出されたことから,「秋播性」の量的変異をモデル化し開花予測に取り組むためには,この新規QTLの原因遺伝子を特定すると共に,変動環境下における発現パターンを明らかにする必要がある. -
研究課題/領域番号:24780003 2012年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
最相 大輔
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
栽培オオムギは,中近東から中央アジアにかけて自生する野生オオムギから約1万年前に栽培化され,現在では世界中に分布域を持つ.オオムギは,出穂を促進させるため一定期間の低温(春化)に曝される必要がある.中でもアジアに栽培域を拡大する過程では野生種よりもより長い‘冬’を必要とする「高度秋播性」の獲得が各々の地域での適応性をもたらしたと考えられる.本研究では,世界中から収集したオオムギ品種を対象に,高度秋播性の進化的・分子的な実態の解明に取り組んだ.その結果,「高度秋播性」は,春播性遺伝子で見出された特定のハプロタイプ群と未知の春化応答遺伝子座とが複雑に相互作用して発現することが示唆された.
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研究課題/領域番号:23255007 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
加藤 鎌司, 佐藤 和広, 辻本 壽, 露崎 浩, 榎本 敬, 田中 裕之, 西田 英隆, 阿部 純, 笹沼 恒男, 柏木 純一, 岸井 正浩, 田中 克典, 久野 裕, 最相 大輔
配分額:38090000円 ( 直接経費:29300000円 、 間接経費:8790000円 )
作物が東アジアへと伝播した経路上の国々において,本研究班を構成する4グループ(オオムギ,コムギ,ダイズおよびメロン)が合計12回の現地調査を行い,各作物の在来品種や近縁野生種などの新規遺伝資源を収集・導入した.これら遺伝資源の多様性に関する遺伝学的解析により,各作物の進化・伝播・適応について数々の新知見を得ることができ,論文や図書などにより公表した.さらに,実用的に重要な形質(品質,早晩性,各種ストレス耐性など)の改良に有用な遺伝資源を特定できたことから,品種改良への応用ならびに新規遺伝子の解明という基礎研究の展開を可能にした.
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ユーラシア広域分布種のコアコレクションを使った適応遺伝子の解析と保全への応用
研究課題/領域番号:22310144 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
河原 太八, 松岡 由浩, 最相 大輔, 笹沼 恒男, 宅見 薫雄, 山根 京子
配分額:19110000円 ( 直接経費:14700000円 、 間接経費:4410000円 )
タルホコムギの分布全域についてその遺伝的変異を研究したところ,葉緑体ゲノムでは1つのクラスターであったが,核ゲノムでは互いに離れた2つのリネージの存在が見いだされ,この2つは数百万年にわたる隔離で成立したと推定された。なお,現在では2つが同所的に生育している場合もあり,それぞれの分集団が成立した後,分布を広げたと考えられる。近縁の野生オオムギでも同様な分集団構造が見られたので,こうした広域分布種では,種の進化過程で生じる分集団構造が重要であることが明らかとなった。
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研究課題/領域番号:21780005 2009年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
最相 大輔
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
ユーラシア大陸全域に亘って分布する栽培オオムギは,多様な品種群を分化させていることが古くから知られている.本研究では,東アジアに分布する'東亜型'オオムギが,東アジア特有の湿潤な環境というストレスに対して,進化的に獲得した適応メカニズムについて分子遺伝学的に解析した.世界中の栽培オオムギ品種群について,発芽時耐水性を評価しその耐性程度とゲノム多型から推定される集団構造との関係を詳細に解析し,東アジアの中でも極東アジア(中国,朝鮮半島,日本)の品種群が,適応的に種子の耐水性を獲得した可能性を示した.
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トウモロコシのトランスポゾンを利用したオオムギミュータントパネルの構築
研究課題/領域番号:18780005 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
最相 大輔
配分額:3840000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:240000円 )
生物の設計図といわれるゲノムの全塩基配列が次々と明らかになるにつれて,生物が持つ機能や応用に向けた研究は大きく様変わりし,その情報を利用して研究を進める上で必須の研究手法やリソースの整備が求められている.本研究では,世界的に主要な農作物であるオオムギを材料に,ゲノム科学的な研究を進める上で必須と考えられる形質転換法の確立と,それを利用した突然変異体パネルの構築に向けた基礎的な研究を行った.
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東アジアに局在するオオムギ半矮性系統"渦"の進化的・形態的・生理的な多様性解析
研究課題/領域番号:16380008 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
武田 和義, 最相 大輔, 力石 和英
配分額:15600000円 ( 直接経費:15600000円 )
本研究では,世界中で東アジアにのみ分布するオオムギ半矮性系統'渦'について,(1)渦系統の系統分化,(2)子葉鞘の突起およびdm型節間伸長等の渦性特異的な形態特性の多様性,および(3)渦系統の再分化特性の多様性について,分子マーカーを使った系統解析や,渦系統特異的な表現型の遺伝解析・生理解析等を実施し,渦性変異の起源に関する分子レベルの知見を得ると共に,渦系統が持つ形態的・生理的多様性に関わる遺伝子座の検出を目的とする.(1)〜(3)について,次のような解析を実施した.
(1)野生オオムギを含む282系統の世界中から収集された在来オオムギ系統を,農業生態型に基づく10の地域集団に分類し,5つの遺伝子内の配列を用いてハプロタイプ解析を行い,栽培オオムギの地理的分化をゲノムレベルで詳細に調査し,栽培オオムギの成立が多起源であることが裏付けられ,また渦性品種の成立が極東アジアにおける単-起源であることが示唆された.
(2)渦性オオムギに特異的な形態形質の一つである温度依存的に生じる子葉鞘の突起状の構造について,詳細な形態観察,渦性オオムギの品種変異の評価および遺伝解析を行った.渦性品種266系統の品種変異および5つのF_2集団における突起形成頻度の分離を調査した結果,突起の形成頻度は,渦性品種間内に広い遺伝的多様性を有する形質であることが示された.ダイアレル分析の結果から,この形質を支配する遺伝子は,複数の相加的作用を持つと推定された.
(3)遺伝的背景が異なる複数の同質遺伝子系統を用いて,子葉鞘の突起形成に対する外生のオーキシン及びサイトカイニンの効果を調査した.また,異所的細胞分裂に関わるホメオティック遺伝子の子葉鞘における発現を解析した. -
オオムギcDNAマイクロアレイを用いた高速ジェノタイピング法の開発と利用
研究課題/領域番号:16780002 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
最相 大輔
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
研究代表者の属する岡山大学ではオオムギゲノム解析の研究リソースの構築に取り組んでいる.これまでに約14万のオオムギESTから約1万のunigenesを得,これらを位置付けた転写産物地図の作製を進めた.既に約3,000のESTをオオムギ染色体に位置付けている(南角ら,2005).本研究では染色体上に位置付けたオオムギESTとマイクロアレイとを組み合わせ,迅速且つ大量の遺伝子座の多型を検出する方法の確立を目的とする.今年度は,(1)AFLP法を応用したプローブとなるDNA断片の長さの均一化とcRNA法を利用したラベリング効率の改善,(2)連鎖地図上に位置付けられたオオムギESTを配置したcDNAマイクロアレイの作成とそれを使ったハイブリダイゼーション実験,に取り組んだ.
(1)ハイブリダイゼーションのプローブは,AFLP法の原理で断片化したゲノムDNAの両末端にSP6/T7プロモーター配列をリンカーとして連結し,PCRで増幅することによりDNA断片長の均一化し,且つ末端に導入したプロモーター配列を利用したcRNA法によるラベリングの効率化を目指した.種々のリンカー配列やPCR条件を比較検討した結果,以降の実験に使用できる程度迄DNAを増幅する条件を設定した.
(2)連鎖地図上に位置付けた384のオオムギESTクローンのインサートを,シークエンス解析で目的クローンであることを確認後PCRで増幅し濃縮精製した後,ピンヘッド式のスポッターSP-BIO II(Hitachi)を用いて,384クローンを8反復で配置したcDNAマクロアレイ(3,072スポット/スライド)を作製した.
現在これらを用いて,タグライン系統や同質遺伝子系統対を材料に目的とする遺伝子座のマッピングや,オオムギ系統のハプロタイピングへの応用の可能性などについて検討を進めている. -
遺伝子発現と塩基多型に基づくオオムギ系統進化の推定
研究課題/領域番号:16011241 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
佐藤 和広, 最相 大輔
配分額:6500000円 ( 直接経費:6500000円 )
・岡山大学が保有する3'端オオムギESTのUnigeneに由来するプライマーを設計し,約3,000弱のESTを連鎖地図上にマップした(2005年3月現在).また,上記プライマーの六倍性コムギ(パンコムギ)におけるPCR増幅を確認し,コムギの遺伝背景にオオムギの染色体を添加した系統群を用いて約1,000のESTについて座乗染色体を決定した.また,二倍性コムギの分離集団に約100のオオムギESTをマップした.
・オオムギ,コムギ,ライムギを含む近縁植物についてオオムギESTマーカーのプライマー配列に基づく類縁関係を推定した.さらに,近縁野生植物でストレス抵抗性に優れたハマニンニクおよびオオハマニンニクについて,染色体添加コムギ系統の添加染色体の識別と同祖群を決定するために,これらの異種染色体に特異的なマーカー各々約100をオオムギESTから得た.また,野生オオムギH.chilenseの染色体添加系統群の添加染色体をオオムギESTマーカーで同定することに成功した.
・国際オオムギESTコンソシアムを形成している米国,ドイツ,フィンランド,英国のプロジェクトと共同でAffymetrix社からカスタムオリゴアレイを開発し,同社から発売した.さらに,オオムギGeneChipの発現データベースに関する大規模な国際共同実験を進め,成果を論文投稿した.
・Unigeneのクローンを整列化して,品種間に存在するSNPを確認し,これらの配列および用途について米国およびEUに国際特許出願した(岡山大学).
・cDNAアレイシステム,植物RNAの自動抽出システム,イネ-オオムギ比較ゲノム地図,BACライブラリーによる遺伝子単離システムなどを開発した. -
遺伝子発現と塩基多型に基づくオオムギ系統進化の推定
研究課題/領域番号:15011239 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
佐藤 和広, 笹沼 恒男, 最相 大輔
配分額:6000000円 ( 直接経費:6000000円 )
・岡山大学が保有する3'端オオムギESTのUnigeneに由来するプライマーを設計し,1,000以上のESTを連鎖地図上にマップした.また,上記プライマーの六倍性コムギにおけるPCR増幅を確認し,コムギの遺伝背景にオオムギの染色体を添加した系統群を用いて約400のESTについて座乗染色体を決定した.さらに,コムギ連野生植物,ハマニンニクおよびオオハマニンニクの染色体添加コムギ系統を育成した.添加染色体の識別と同祖群を決定するために,オオムギのESTマーカーから,これらの異種染色体に特異的なマーカーを選抜し,それぞれ94および100の特異的マーカーを得ることができた.
・国産醸造オオムギはるな二条のBACライブラリ(平均インサート長115kb,6x,30万クローン)が完成し,遺伝子スクリーニングシステムを開発中である.
・blast検索結果に基づいてcDNAクローンを選抜し,これらをスポットしたDNAアレイシステムの開発を継続している.また,植物RNAの自動抽出システムの開発を完了した.
・本研究で開発したオオムギcDNA情報を網羅したデータベースに,新たにイネの遺伝地図とのイネーオオムギ比較ゲノム地図を構築し公開した (http://www.shigen.nig.ac.jp/barley/).
・国際オオムギESTコンソシアムを形成している米国,ドイツ,フィンランド,英国のプロジェクトと共同でAffymetrix社からカスタムオリゴアレイを開発し,同社から発売した.さらに,オオムギGeneChipの発現データベースに関する国際共同実験を進めた. -
遺伝子発現と塩基多型に基づくオオムギ系統進化の推定
研究課題/領域番号:14011234 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究 特定領域研究
佐藤 和広, 笹沼 恒男, 最相 大輔
配分額:6100000円 ( 直接経費:6100000円 )
・約93,000のESTからUnigeneを作成し,DNAアレイに利用するクローンを選抜して,blast検索結果に基づいて一部を選抜して予備的なDNAアレイシステムを開発した.また,植物RNAの自動抽出システムの開発に目処がついた.
・本研究で開発したオオムギcDNA情報を網羅したデータベースを構築し公開した(http://www.shigen.nig.ac.jp/barley/).
・国際オオムギESTコンソシアムを形成している米国,ドイツ,フィンランド,英国のプロジェクトと共同でESTデータベースを開発した(http://harvest.ucr.edu/).また,この結果に基づいて米国NSF予算でAffymetrix杜からカスタムオリゴアレイを開発済みで,2003年6月頃から販売予定である.
・Unigeneのクローンを整列化して,品種間に存在するSNPを確認したところ,約1,300のUnigeneに存在する約4,000個のSNPを検出し,少なくとも500Unigeneに存在するSNPがアミノ酸の非同義置換によることを明らかにした.また,これらのSNPを特許申請した.
・Unigene由来のプライマーを設計し,100以上のESTを連鎖地図上にマップした.また,コムギにおけるPCR増幅も確認し,Triticeae(コムギ連)の比較ゲノム解析の準備を進めている.さらに,これらの情報に基づいて,SNPを利用したオオムギESTのマッピングをオオムギおよびコムギの集団で進めている. -
栽培および野生オオムギのBACライブラリー構築
研究課題/領域番号:13760007 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
最相 大輔
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
BAC(Bacterial Artificial Chromosome)ライブラリーをはじめとした巨大インサートゲノムライブラリーは,今やゲノム解析の基本ツールの一つである.ゲノムサイズがイネの10倍以上もあるオオムギは,世界的にも重要な穀物の一つであるにも関わらず,北米の六条醸造用品種'Morex'で作製されたもの以外に適当なゲノムカバー率を持つ巨大DNAライブラリーは報告されていない.本研究ではわが国独自のオオムギゲノム研究の基盤構築を目指して,国産オオムギを用いたBACライブラリーを新たに構築した.
日本の醸造用品種「はるな二条」を用いて,Nakamura et al.(1997)の方法を参考にした.本研究で作製した「はるな二条」BACライブラリーは,約28万クローンからなり平均インサート長は115.2kbである.これは,6ゲノム相当であることが期待される.巨大ゲノムを持つ生物種の場合,ゲノムライブラリー作製の過程で生じるライゲーション反応のバイアスが,ゲノムのカバー程度に深刻に影響することが予想される.研究の過程でこの点を重点的に検討した結果,本研究では一度のライゲーション反応で,オオムギゲノムの約62%に相当するクローンを得ることが可能となった.実際のBACクローンのゲノムカバー程度を調査する目的で,「はるな二条」BACクローン73,728(1.8ゲノム相当)に対して,29のSSRマーカーによるスクリーニングを行った結果,1マーカーあたり2.3のBACクローンを単離することができた.以上の結果から,本研究で作製したオオムギBACライブラリーはゲノム解析に利用可能であると判断した.
今後,迅速な目的クローンの選抜実験系を確立し,また分譲のための環境を整備した上で,国内外での共同研究に広く利用していく予定である. -
遺伝子発現に基づくオオムギ系統進化の推定
研究課題/領域番号:13202046 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究(C) 特定領域研究(C)
佐藤 和広, 最相 大輔
配分額:6000000円 ( 直接経費:6000000円 )
1.栽培および野生オオムギ由来の5種類のcDNAライブラリーから,計画班が運営しているシーケンシングセンターで約43,000シーケンスの解析を終了し,約1万のUnigeneを得た.さらに5万クローン程度の解析が進行中で,年度内に完了する予定である.また,Unigeneの作成手法に改良を加えた.さらに,Unigeneから代表クローンを選び出し,DNAマイクロアレイに利用するクローンを選抜した.これらのクローンのblast相同性検索結果に基づき,一部を選抜して予備的なDNAアレイシステムを開発した.これらのcDNA情報を網羅したデータベースを開発中で近日中に公開予定である.
2.国際オオムギESTコンソシアムを形成している米国,ドイツ,フィンランド,英国のプロジェクトと共同でカスタムオリゴアレイを生産することを2002年1月の国際会議で合意し,そのためのデータ解析を開始した.2002年中に約2万個の遺伝子が検出可能なオオムギDNAチップが利用可能となる.
3.農水省イネゲノム研究プロジェクトに了解を得て,当該プロジェクトで作成したイネのESTマップのクローンと本プロジェクトのクローンの相同性を比較してオオムギESTの仮想的なシンテニーマップを作成した.
4.Unigeneに存在するクローンを整列化して,品種間に存在するSNPを確認したところ,352のUnigeneに存在する約1,000個のSNPを検出し,少なくとも66Unigeneに存在するSNPがアミノ酸の非同義置換によることを明らかにした.また,検出したSNPを特許申請した.さらに上記352UnigeneのSNPを含む領域にプライマーを設計し,ダイレクトシーケンシングによってSNPの存在を再確認した.さらに,これらのSNPをマップする方法を確認した. -
オオムギ系統進化の解明に向けたESTの大量シーケンシング
研究課題/領域番号:12202037 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究(C) 特定領域研究(C)
佐藤 和広, 最相 大輔
<背景と目的>オオムギのゲノムサイズは約5,000Mbpと極めて大きいので,cDNA配列を用いたESTプロジェクトはゲノム解析を進める上で効率的な手法である.1999年末までにNCBIのESTデータベース上にオオムギのシーケンスはわずか80件しかなかった.しかし,複数のオオムギESTプロジェクトが精力的に解析を進めた結果.2001年1月現在で約7万件のオオムギESTがNCBIに登録されている.現在,米国(60,000シーケンス解析済み),ドイツ(同13,000)フィンランド(9,000),英国(3,000)などで解析が進んでいる.
<検討結果>材料には醸造用オオムギ「はるな二条」(発芽時の芽,幼苗の葉身,止葉期の上位3葉),「赤神力」(栄養成長期の葉身)および野生オオムギH.spontaneum(OUH602)(止葉期の上位3葉)を使用し,cDNAライブラリーをそれぞれ作成した.シーケンス解析は国立遺伝学研究所のシーケンシングセンターで行った.シーケンシングは各クローン3′および5′の両端から行い.2001年1月末現在で約43,000シーケンスの解析を終了している.
<考察>現在,我々を含めた各国のESTプロジェクトはデータを共有するコンソシアムを形成し,Unigene化したデータと直ちに利用可能なDNAサンプルを共同開発する方向で合意している.また,ESTデータベースについても,いくつかのプロジェクトで我々とデータを共有する予定である.イネのESTとの相同性を検索し,シンテニーを利用してオオムギのESTをマップ上に配列する仮想ESTマップは,イネのマップと遺伝子の情報が効率的に利用できるので,オオムギのESTを利用する上で極めて有用である.さらに,現在,ESTの大規模STS化や,そのPCR産物のシーケンスを系統間で比較して検出するSNP情報など,遺伝子配列に基づいた効率的なゲノム研究手法を開発中である. -
シアン耐性呼吸遺伝子の発現調節による耐冷性イネ作出のための基礎的研究
研究課題/領域番号:99J09434 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
最相 大輔
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )