共同研究・競争的資金等の研究 - 赤木 達
-
心血管メカノセンサーTRPV2の低酸素誘発性肺高血圧症への関与解明と治療法開発
研究課題/領域番号:21K08108 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
中村 一文, 鵜殿 平一郎, 片野坂 友紀, 赤木 達
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
持続的な低酸素症は肺血管収縮を引き起こし、肺血管リモデリングや肺高血圧症(PH)の原因となる。しかし、血管収縮が血管リモデリングにつながる正確なメカニズムはまだ解明されていない。TRPV2は、Ca2+透過性カチオンチャネルであり、血管平滑筋の膜伸張に応答するメカノセンサーである。本研究の目的は、低酸素誘発性PHの発症における血管平滑筋のTRPV2の役割を明らかにすることである。血管平滑筋特異的 TRPV2 欠損マウス(smTRPV2-/-)を作製したところ、定量的PCRにより、smTRPV2-/-マウスから分離した肺動脈平滑筋細胞においてTRPV2が欠損していることが明らかとなった。フロックスコントロール(smTRPV2flox/flox)マウスとsmTRPV2-/-マウスを低酸素および正常酸素に5週間曝露したところ、低酸素によるPHはsmTRPV2-/-マウスではsmTRPV2flox/floxマウスと比較して有意に改善された。低酸素による肺動脈の完全筋肉化の割合は、smTRPV2-/-マウスはsmTRPV2flox/floxマウスに比べ有意に低かった。MTTアッセイにより、低酸素はsmTRPV2flox/floxマウスおよびsmTRPV2-/-マウスの両方の培養肺動脈平滑筋細胞の増殖を促進することが明らかになった。しかし、smTRPV2-/-PASMCsの低酸素による増殖率は、smTRPV2 flox/flox -肺動脈平滑筋細胞のそれよりも有意に小さかった。上記よりTRPV2は、肺動脈平滑筋細胞の不適切な増加とともに、低酸素によるPHの発症に重要な役割を担っていることがわかった(本結果を2021年、2022年日本循環器学術集会において発表した)。
-
特発性肺動脈性肺高血圧症由来肺動脈平滑筋細胞のエネルギー代謝の解明と治療薬の開発
研究課題/領域番号:20K08424 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
赤木 達, 中村 一文, 吉田 賢司, 伊藤 浩
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
特発性肺動脈性肺高血圧症(Idiopathic pulmonary arterial hypertension: IPAH)由来の培養肺動脈平滑筋細胞(pulmonary artery smooth muscle cells:
PASMC)及び非肺高血圧症由来の培養肺動脈平滑筋細胞を、常酸素チャンバー及び低酸素チャンバーに72時間培養後、RNA、蛋白サンプルを得て、ピルビン酸脱水素酵素(Pyruvate dehydrogenase: PDH)、ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ(PDH kinase 1: PDK1)、乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase: LDH)の発現を調べた。PDH及びPDK1は、常酸素下及び低酸素下いずれにおいてもIPAH由来PASMCで非IPAH由来PASMCより高発現していた。一方LDHは常酸素下のみIPAH由来PASMCで非IPAH由来PASMCより高発現し、細胞内乳酸も常酸素下のみIPAH由来PASMCで多かった。以上からIPAH由来PASMCでは常酸素下で解糖系が亢進していることが明らかとなった。
次にフラックスアナライザーを用いてIPAH由来PASMC、非IPAH由来PASMCのミトコンドリア代謝を調べた。常酸素、低酸素いずれもミトコンドリア代謝が非IPAH由来PASMCと比べ、IPAH由来PASMCで低下し、解糖系によるエネルギー代謝が亢進していた、ところがATP産生を調べてみると、常酸素下では非IPAH由来PASMCと比べPAH由来PASMCでATP産生が低下していたが、低酸素下では逆にIPAH由来PASMCでのATP産生が非IPAH由来PASMCを上回っていた。この結果からIPAH由来PASMCではミトコンドリア代謝が比較的保たれていることが示唆された。 -
尿毒素による心不全発症・再発の病態解明と新規治療戦略の基盤構築
研究課題/領域番号:19K08558 2019年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
伊藤 浩, 中村 一文, 赤木 達, 三好 亨
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
高齢化に伴い心不全患者は増加の一途をたどっており、その予後は収縮障害・拡張障害ともに不良である。心不全発症において心 腎 連 関 が 近年注目されるようになり、腎機能低下が心不全に悪影響を及ぼすことが多く報告されるようになってきたが、心腎連関の病態進展の分子機構は未だ不明な点が多い。慢性腎臓病では、全身的な代謝変化および尿中への代謝産物の排泄障害にともない様々な尿毒素が体内に蓄積する。これまでに約90種類の尿毒素質が報告されているが、その一つであるインドキシル硫酸は腸内細菌によってつくられたインドールが肝臓で代謝されて合成さる。基礎研究においてインドキシル硫酸は心肥大、心筋線維化を促進すること(Eur Heart J. 2010 Jul;31(14):1771-9、PLoS One. 2012;7(7):e41281)、また、臨床研究においては少数例ではあるが非透析の拡張型心筋症患者の予後とインドキシル硫酸濃度が関連すること (Circ J. 2013;77(2):390-6)、が報告されている。また臨床面では申請者らによるパイロット研究で、血中インドキシル硫酸増加が心不全再入院の予測因子であることが示唆されている。本研究では、基礎研究として、尿毒素が心不全発症に関与する分子病態を動物実験にて明らかにし、心臓における心腎連関の新規標的分子の探索を行う。同時に、臨床研究として血中インドキシル硫酸と心不全発症の関連を前向きの多施設レジストリーにて検証する。このように、基礎と臨床の両面からインドキシル硫酸の心臓への影響を明らかにし、心不全に対する新規治療戦略の基盤を構築する。
-
RAGE-aptamer封入ナノ粒子による肺高血圧症の新規治療法の開発
研究課題/領域番号:18K08037 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
中村 一文, 赤木 達, 阪口 政清, 三好 亨, 深水 圭, 伊藤 浩
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
1. 肺高血圧モデルラットにおけるRAGE特異的DNA-aptamer封入ナノ粒子の効果の検討
モノクロタリン誘発性高血圧モデルラットにおいてモノクロタリンと同時に終末糖化産物受容体RAGE特異的 DNA aptamerの持続皮下注を行ったところ、右室収縮期圧の上昇を有意に抑制した。すなわち肺高血圧症の発症を抑制することができた。さらに肺動脈病理像を検討したところRAGE特異的 DNA aptamerにおいて中膜平滑筋層の肥厚がモノクロタリン群にくらべ有意に抑制されていた。すなわちRAGE特異的 DNA aptamerの肺動脈リモデリングの発生抑制効果を認めた。この結果を現在論文投稿準備しつつ, RAGE特異的DNA-aptamer封入ナノ粒子の作成を検討中である。また我々の検討を含む様々なナノ粒子の肺高血圧症への治療効果をまとめた総説が英文雑誌に掲載された (Nakamura et al. Int J Mol Sci. 2019)。
2. 肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者肺動脈の細胞におけるRAGE特異的DNA-aptamer封入ナノ粒子による過剰増殖・アポトーシス抵抗性・異常遊走・炎症に対する効果の検討
培養したPAH患者の肺動脈平滑筋細胞において,血小板由来増殖因子(PDGF)刺激にてRAGEの発現は増加した。PAH肺動脈平滑筋細胞の増殖はPDGF刺激のいずれの状態においてもPAHのない対照controlの肺動脈平滑筋細胞より亢進しており,AS-1 (TIR/BB-loop類似構造体(mimetic))にてTIRAP機能抑制を介してRAGE signaling を抑制してみると, PDGF刺激による増殖反応を抑制した。さらにPAH肺動脈平滑筋細胞においてPDGF刺激による増殖をRAGE特異的DNA aptamerも有意に抑制した。 -
特発性肺動脈性肺高血圧症由来心筋細胞の特性解明と新規治療薬の開発
研究課題/領域番号:17K09498 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
赤木 達, 中村 一文, 斎藤 幸弘, 吉田 賢司, 伊藤 浩
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
特発性肺動脈性肺高血圧症は著明な肺動脈の上昇から右室機能低下を来す疾患である。現在の治療薬は肺血管に作用するものだけで、右室に直接作用する薬剤はない。今回我々は特発性肺動脈性肺高血圧症の線維芽細胞からiPS細胞を作成し、心筋細胞への誘導に成功した。この心筋細胞には低酸素下のみならず常酸素下でも解糖系にエネルギー代謝を頼っている特性があることを明らかにした。
-
研究課題/領域番号:15K09158 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
中村 一文, 赤木 達, 阪口 政清, 伊藤 浩
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
1.乳酸・グリコール酸共重合体(co-poly-lactic/glycolic acid: PLGA)という生体内で加水分解され水と二酸化炭素になる物質をナノ粒子化し、イマチニブならびにベラプロストを封入した薬剤封入ナノ粒子を作成した。肺高血圧症モデルラットに気管内投与すると右室収縮期圧や右室肥大の抑制をみとめ肺高血圧の改善がみられた。
2.肺動脈性肺高血圧症(PAH)の肺動脈平滑筋細胞の増殖は亢進しており、TIR/BB-loop類似構造体(mimetic), AS-1 にてRAGEシグナルを抑制してみると、過剰な増殖が抑制された。 -
研究課題/領域番号:26860563 2014年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
赤木 達
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
PGI2誘導体であるベラプロストを封入したナノ粒子を作成し、肺高血圧モデルのSugen/hypoxia及びモノクロタリンラットの気管内に単回投与し、2週間後に右室収縮期圧、右室肥大、肺血管リモデリングの程度をPBS及びFITC封入ナノ粒子と比較した。いずれのモデルにおいても、ベラプロスト封入ナノ粒子投与群では、PBS及びFITC封入ナノ粒子群と比較して有意な右室収縮期圧や右室肥大の低下、肺血管リモデリングの改善がみられた。またモノクロタリンモデルラットでは生存率に関しても検討し、ベラプロスト封入ナノ粒子投与群では、他群と比較して有意な生存率の改善がみられた。