共同研究・競争的資金等の研究 - 竹内 栄
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鳥類の羽形成を司るホルモン系の構造化
研究課題/領域番号:23K05851 2023年04月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
竹内 栄
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
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皮膚付属器のホルモン応答性の部域差を創出する分子基盤の解明
研究課題/領域番号:20K06721 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
竹内 栄
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
鳥類の羽は哺乳類の毛と同様に,表皮細胞に由来する皮膚付属器である。ニワトリでは,鞍羽に顕著な性差が見られ,雌では褐色(ユーメラニン色)を呈する丸型羽であるのに対し,雄では光沢のある赤褐色(フェオメラニン色)の飾り羽で,尖った先端部には小羽枝を欠くフリンジ構造がみられる。羽の性差形成については雄型の羽が雌雄に共通なデフォルトであり,雌型羽は卵巣由来のエストロゲンの作用によって形成れること,このエストロゲン作用には甲状腺ホルモンが不可欠であること, 甲状腺ホルモン欠乏下では,性とは無関係に雄鞍羽に類似なフリンジ構造をもつ光沢のある赤褐色羽が形成されることなどが知られていたが,羽形成におけるホルモン作用の分子機構については不明な点が多く残されてきた。本研究では,ニワトリの羽形成におけるエストロゲン系,メラノコルチン系,甲状腺ホルモン系のクロストークおよび,遅羽遺伝子の解析を通して,甲状腺ホルモンと酷似した働きが報告されているプロラクチンの羽形成における作用機序の検討を行ってきた。本年度は,これらのホルモン系のクロストークの場である羽髄細胞の初代培養系をもちいた解析から,プロラクチンが様々な細胞成長因子や甲状腺ホルモン系因子の発現制御に関わることを明らかにするとともに,甲状腺ホルモン受容体の新規バリアントを同定し発現解析や機能解析から甲状腺ホルモン系の新たな制御系の可能性が示唆された。さらに,マイクロアレイのデータ解析,およびRNAseq解析から羽の性差形成に関わると考えられる候補因子を検討した。
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研究課題/領域番号:17K07471 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
竹内 栄
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
鳥類の羽は哺乳類の毛と同様に表皮細胞の死細胞で構成された皮膚付属器である。ニワトリでは,鞍部に生じる羽(鞍羽)に顕著な性差が見られる。本研究ではこの鞍羽をモデル系として用い,皮膚付属器の性差形成の分子機構を解析した。さらに,養鶏において雌雄鑑別に利用されている主翼羽の遅羽性の分子機構を解析した。その結果,性差形成では,性ホルモンをはじめとする様々なホルモン系が互いにクロストークすることで適材適所な羽形成がなされていることが明らかとなった。また,遅羽性については,プロラクチンシグナルの量的変化が原因であることが示唆され,プロラクチンの羽形成における重要性が示された。
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マウスの卵胞発達ならびに排卵制御におけるRunx3の新規作用の解析
研究課題/領域番号:26440167 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
高橋 純夫, 深町 博史, 竹内 栄, 佐久間 敦子, 土家 由起子, 齊藤 優佳, 小郷 由貴, 小島 史也, 林 紗代, 加用 大地, 前川 哲弥, 顧 婷婷
配分額:4940000円 ( 直接経費:3800000円 、 間接経費:1140000円 )
本研究は転写因子Runx3の雌マウスにおける役割の解明を目的とした。Runx3遺伝子は,卵胞顆粒膜細胞や排卵制御に関わる視床下部領域において発現していた。雌のRunx3ノックアウトマウスでは,視床下部のKisspeptin遺伝子ならびに卵巣のコレステロール側鎖切断酵素遺伝子の発現が低下していた。Runx3ノックアウトマウスにおいて視床下部の排卵制御機構の不全が示されることから,Runx3は卵巣ホルモンの産生制御と視床下部の排卵制御機構の調節に関わることが示唆された。
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研究課題/領域番号:23570078 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
竹内 栄
配分額:5460000円 ( 直接経費:4200000円 、 間接経費:1260000円 )
鳥類ではオスが派手な婚姻色を示し,雌は地味な保護色を示すことが広く知られている。しかし,この羽装色の性差を作り出す仕組みはわかっていなかった。本研究では,おかやま地どりを用い,この問題の解明を試みた。その結果,ニワトリの羽装色が,羽が形成される羽包内の局所ホルモン系(メラノコルチン系)により制御されていることが判明した。また,ニワトリの羽装色はオス型がデフォルトであり,メスでは卵巣由来のエストロジェンがASIP(アグーチシグナルタンパク)の産生を制御することでメス型の羽装色を作っている可能性が示唆された。さらに,本研究では羽形成の仕組みを解明するために重要と考えられる新規の遺伝子が同定された。
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生殖内分泌系器官における組織の破壊と再構築の制御メカニズムの解明
研究課題/領域番号:19370025 2007年 - 2009年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
高橋 純夫, 竹内 栄, 深町 博史, 竹内 栄, 深町 博史
配分額:17940000円 ( 直接経費:13800000円 、 間接経費:4140000円 )
細胞増殖,機能発現ならびにアポトーシス(細胞死)は,細胞から分泌されるホルモンや成長因子,サイトカイン等のシグナル分子や,細胞外マトリックスなどの細胞外環境からのシグナルによって制御される。本研究では,マウス下垂体や子宮内膜における細胞増殖とアポトーシスについて解析した。細胞増殖を促進する成長因子やホルモンの遺伝子の発現制御機構と,成長因子やホルモン作用を調節する因子について解析した。
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研究課題/領域番号:19570059 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
竹内 栄
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
ニワトリの雛や成鶏雌にみられる保護色パターン, 及び成鶏雄に特徴的な婚姻色パターンが, ASIP遺伝子の同一プロモーターの働きによって形成されることが明らかになった。これは, 体色における性差発現の分子機序に関する初めての成果である。また, ニワトリ視床下部におけるASIP発現は, 絶食負荷や高エネルギー食負荷により変動しないことから, 摂食制御以外の機能を持つか, 変異に起因する異所発現である可能性が示唆された。
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新規成長ホルモン(sGH)-αMSH調節系の生理学的意義と分子機構に関する研究
研究課題/領域番号:16570054 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
竹内 栄
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
本研究課題では,申請者らがニワトリの末梢で同定したtruncationタイプの新規成長ホルモンアイソフォーム(sGH)が,成長ホルモン受容体に対してアゴニスト活性をもつのか,それともアンタゴニストとして働くのかを明らかにすることを目的とした。肝細胞に発現するインスリン様成長因子,および成長ホルモン受容体は,成長ホルモンによる発現調節を受けることが広く知られている。そこで,発現系プラスミド(pcDNA3)にsGH cDNAを組み込み,ヒト肝臓由来の株化培養細胞(Huh-7)でsGHを発現させて上記2遺伝子の発現に変化が見られるか否かを解析した。その結果,sGHタンパクを強制発現させた細胞では,成長ホルモン受容体とインスリン様成長因子のいずれにおいても発現の亢進が観察された。この結果は,sGHがアゴニストとして機能したことを示唆する。一方,sGHを強制発現させた株化培養細胞の訓化培養液を肝細胞株に投与したところ,同様な効果は観察されなかった。sGHは5つのエクソンからなる成長ホルモン遺伝子の第3イントロン内から転写開始されるmRNAにコードされており,N末端のシグナルペプチド領域を欠いている。本研究結果を勘案すると,sGHは,それを発現する細胞において,intracrine的に成長ホルモン受容体に作用するアゴニストである可能性が考えられる。ニワトリは外来成長ホルモンに対する抵抗性を示すことが古くから知られている。本研究成果は,その分子機構に示唆を与えるものであると考えられる。このsGHは様々な末梢組織に発現するが,GH遺伝子逆鎖DNAに由来する転写産物もそれらの組織に共発現することを見出した。その構造的特徴から,逆鎖転写産物はsGHの発現を制御する調節性RNAである可能性が考えられた。ニワトリの末梢組織には細胞増殖・分化を制御する新規のGH調節系が存在する可能性が示唆された。
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免疫細胞と黄体内細胞のクロストークによる黄体退行制御機構の解明とその人為的支配
研究課題/領域番号:14360168 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
奥田 潔, 高橋 純夫, 竹内 栄
配分額:14200000円 ( 直接経費:14200000円 )
ウシ黄体におけるアポトーシスの分子制御機構を、免疫細胞と黄体内細胞(黄体細胞および黄体由来血管内皮細胞)とのクロストークという視点から探求し、以下の知見を得た。
1.ウシ黄体に由来する血管内皮細胞の細胞死にFas/Fas Lの機構を介して経路の存在することを明らかにするとともに、そのFas/Fas Lを介した血管内皮細胞の細胞死にTNFαならびにIFNγがFas mRNAを増加させることにより関与していることを示した。
2.プロジェステロンが、ウシ黄体の構造的退行を誘起するサイトカインのFas遺伝子発現促進作用を抑制することによって、アポトーシス抑制因子として作用することを示した。
3.ウシ黄体の退行にインターロイキン-1(IL-1)が、発情周期によってPGF2αとPGE2の合成量を調節することによって関与する可能性を示した。
4.ウシ黄体退行に一酸化窒素が大きな役割を果たしていることを示した。
5.本研究の主題の一つであるTNFαスーパーファミリーの黄体内における役割を総説としてまとめた。これは本研究に至るまでの成果と本研究による成果を依頼により総説としてまとめたものである。また、TNFαと一酸化窒素の黄体退行における役割を総説としてまとめた。
また、黄体の退行には子宮由来のPGF2αとPGE2の役割が大きいことから、子宮内膜細胞のPGs合成にかかわる免疫細胞由来サイトカインの生理的役割について探求し以下の知見を得た。
6.ウシ後大動脈よりTNFαを投与し、TNFαが発情周期の調節(黄体退行)と妊娠維持(黄体維持)の両方に役割を果たしていることを内分泌学的に示した。
7.ウシ子宮内膜間質細胞において、TNFαはPLA2とCOX-2両方の合成を刺激することによりPGF2α合成促進作用を示し、インターフェロンτはその両酵素の合成を抑制することにより妊娠維持に役割を果たすことを示した。 -
インターロイキン18の生殖内分泌系における新しい作用の解析
研究課題/領域番号:14654172 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
高橋 純夫, 奥田 潔, 竹内 栄
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
マウス精巣,卵巣,子宮においてイシターロイキン18およびその受容体mRNAが発現していることを見いだした.本研究では,発情周期や妊娠といった生殖系の機能発現において細胞の増殖などの動的な変化を示す子宮に着目し,IL-18遺伝子発現の解析を行った.子宮におけるIL-18 mRNAの発現が確認されるため,in situハイブリダイゼーション解析によりIL-18 mRNAを発現する細胞の同定をおこなった.3週齢未成熟マウスにおいて,子宮内膜上皮細胞,間質細胞の両方にIL-18mRNAシグナルが検出された.しかし9週齢マウスにおいては,上皮細胞にIL-18 mRNAシグナルは検出されなかった.この変化には,発情周期が開始されたことによる血中のさまざまなホルモン,特に性ステロイドの濃度が影響していることが考えられる.そこで,発情周期によって,血中濃度が大きく変化し,子宮内膜細胞の増殖に大きな影響を及ぼすエストロゲンなどの性ステロイドがIL-18及びIL-18Rα mRNAの発現にどのような影響を及ぼすか,RNase Protection解析を実施した.
卵巣を摘出したマウスにエストラジオール-17β(E_2)を投与し,経時的にIL-18およびIL-18Rα mRNA量を解析した.いずれのmRNA量も,E_2投与12時間後には減少し,その後48時間後には投与前と同程度にまで回復することが明らかとなった.このように,IL-18及びその受容体の遺伝子発現に対し生殖系の因子エストロゲンが大きな影響を及ぼしていることが明らかになった.このことは,IL-18が生殖系の機能発現に対し何らかの作用を持つことを示唆している. -
局所的なホルモン調節系による網膜組織形成制御機構の解明
研究課題/領域番号:14540615 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
竹内 栄, 高橋 純夫
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
胚期ニワトリの網膜色素上皮細胞では、時期特異的にメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)が合成される。期を同じくして、眼球内では新規成長ホルモン(GH)isoform(s-cGH)が合成され、色素上皮表面に発現するGH受容体に結合する事を見出した。これらの観察結果は、局所的なGH-MSH系が網膜形成に関与していることを示唆する。本年度はGH-MSH系に関する解析を進めると共に、その他の下垂体ホルモンの発現についても検討した。
1.眼球に発現する下垂体ホルモンの同定
(1)眼球でGH発現が検出されたことから、GH発現を担う転写因子Pit-1発現の有無を調べた。その結果、神経網膜に於いてPit-1が発現すること、及びその発現が発生の進行に伴い上昇することが分かった。さらに、Pit-1がプロラクチンや甲状腺刺激ホルモンの発現をも制御することから、これらのホルモンの発現も調べた。その結果、下垂体前葉と同様に網膜でもこれらのホルモンが作られることが判明した。
(2)眼球で下垂体中葉ホルモンMSHが免疫組織化学的に検出され、MSHの前駆体であるPOMCの発現も確認されている。しかし、POMCからMSHを作る酵素群(PC1およびPC2)の遺伝子発現については不明であった。そこで、鳥類で初めてPC1およびPC2の遺伝子をクローニングし、これらが、POMC mRNAと共発現していることを明らかにした。
(3)眼球に於いてGH遺伝子の逆鎖RNAが発現していることを見出した。
2.メラノコルチン受容体の薬理学的解析
眼球内にはMSH受容体と考えられる3種のメラノコルチン受容体(MC1R, MC4R, MC5R)が発現する。胚期ニワトリの網膜色素上皮細胞で合成されるMSHは、これらの受容体を介して働くものと考えられる。これらの受容体がMSHをリガンドとすることを明らかとした。 -
血管内皮細胞のアポトーシス誘導による抗血管新生療法の開発
研究課題/領域番号:14656115 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
奥田 潔, 竹内 栄
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
昨年度はウシ黄体細胞由来血管内皮細胞においてFas mRNA発現が認められ、腫瘍壊死因子(TNFα)およびインターフェロン(IFN)-γがFasを介レたアポトーシス誘導機構に関与していることを明らかにした。本年度は、(1)成長因子のFasを介したアポトーシスにおよぼす影響、(2)アポトーシス誘導機構または抑制機構のメカニズム(bcl-2ファミリーのmRNA発現)、(3)血管内皮細胞にFas遺伝子導入を行うことによるアポトーシス誘導モデルの作出について検討した。
1.TNFα、IFNγおよびFasリガンドの添加に加え、成長因子(VEGF,IGE,bFGE,EGF)を単独または組み合わせて添加し、血管内皮細胞の細胞死およびアポトーシスの指標となるアポトーシス小体ならびにDNAの断片化についてそれぞれ検討した。その結果、VEGF単独または、VEGFと他の成長因子の組み合わせ添加において、TNFα、IFNγおよびFasリガンドの誘導するアポトーシスが抑制された。さらに、これらの添加区においてアポトーシス小体ならびにDNAの断片化が減少した。
2.1.の各添加区において、bcl-2およびbax mRNA発現について検討した。その結果、アポトーシスの抑制が認められたVEGF単独または、VEGFと他の成長因子を組み合わせた添加区において、baxに対するbcl-2発現の割合が高くなった。
3.血管内皮細胞にFas遺伝子導入をしたアポトーシス誘導モデルマウスの作出を試みたが、生存能力が極めて低く、目的としている部位にFasリガンドを注入する実験には至らなかった。
以上の結果から、ウシ黄体の血管内皮細胞において、VEGFなどの成長因子はFasを介したアポトーシスに対する抑制作用をもち、その作用はbaxに対するbcl-2発現を高めることによることが示唆された。今後は、アポトーシス誘導モデルマウスを改良し、生体におけるアポトーシス誘導機構の詳細について検討していく予定である。 -
局所調節因子としての子宮内膜由来の成長因子に関する多角的研究
研究課題/領域番号:13440247 2001年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
高橋 純夫, 奥田 潔, 竹内 栄
配分額:14800000円 ( 直接経費:14800000円 )
(1)子宮内膜細胞における成長因子の発現
マウス子宮内膜における成長因子の発現を調べた.インスリン様成長因子I(IGF-I),上皮成長因子(EGF),トランスフォーミング成長因子α(TFG-α),トランスフォーミング成長因子β1,β2,β3(TFG-β1,-β2,-β3)およびサイトカインとしてインターロイキン18(IL-18)の各mRNAの発現が認められた.発情ホルモン投与により,子宮内膜間質細胞においてはIGF-I, TGF-α,TGF-β2 mRNA発現量が増加し,IGF-IおよびTGF-β2の転写が促進されることが示唆された.また,黄体ホルモン投与によりTGF-β1およびTGF-β3 mRNA発現量が減少し,TGF-β1およびTGF-β3遺伝子の転写が抑制されていることが示唆された.
(2)子宮内膜細胞に及ぼす子宮内膜由来成長因子作用の解析
マウス子宮内膜間質細胞の細胞培養系を用いて,子宮内膜由来の成長因子の子宮内膜細胞への作用を解析した.IGF-I,上皮成長因子(EGF)およびTFG-αは,子宮内膜上皮細胞および間質細胞のDNA合成を促進した.何れの成長因子も子宮内膜で産生される成長因子であるので,これらの因子が傍分泌的に細胞増殖を促進する可能性が示唆された.
発情ホルモン受容体の発現は,発情ホルモンによりダウンレギュレイションをうける.マウス子宮内膜細胞の細胞培養系を用いて,子宮内膜由来の成長因子の発情ホルモンならびに黄体ホルモン受容体発現に及ぼす作用を解析した.発情ホルモンα,β受容体,黄体ホルモン受容体A, Bの各mRNA量を定量したところ,TFG-α投与によって,子宮内膜上皮細胞の発情ホルモンα受容体mRNA量が減少した.TFG-αが発情ホルモンα受容体の遺伝子発現の制御に関与することが示唆された.
(3)子宮内膜におけるmatrix metalloproteinase (MMP)遺伝子の発現
マウス子宮では,発情期にMMP3,MMP7およびMMP9 mRNA量の増加が認められた.さらに,子宮内膜細胞の培養系によりMMP mRNAの発現を解析した.MMP3遺伝子の転写は,発情ホルモンにより,24時間で有意に低下したが,48時間では回復していた. -
下垂体ホルモンの下垂体外発現の生理学的意義と局所的ホルモン調節系の分子機構に関する研究
2001年
資金種別:競争的資金
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ニワトリにおけるメラニン細胞刺激ホルモン調節系の分子機構に関する解析
研究課題/領域番号:12640650 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
竹内 栄, 高橋 純夫
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
1.RT-PCR、in situ hybridization および免疫組織化学的手法を用い、ニワトリの眼におけるα-MSH発現を調べた。その結果、発生過程(孵卵10日〜孵化)の網膜色素上皮細胞(RPE)にα-MSHの発現を見いだした。α-MSH受容体であるCMC1、CMC4、CMC5がRPEに隣接する脈絡膜と神経網膜に発現していたことから、RPEがα-MSHの分泌を介して隣接組織の組織形成に関与している可能性が示唆された。また、眼におけるα-MSHの発現は、孵化後は神経網膜錐体細胞に移行した。α-MSHは、網膜組織形成後は神経伝達物質または神経調節因子として視覚機能調節に関わっている可能性が示唆された。従前の鳥類α-MSH調節系に関する成果とあわせて、鳥類α-MSH自己分泌/傍分泌説を提唱した。
2.成長ホルモン(GH)は糖尿病性網膜症の原因因子である。発生過程のニワトリの眼におけるGH発現を調べたところ、新規GH isoformの発現を検出した。このGH isoformは、ヒトにおいて網膜症を引き起こすとされるGH isoformに酷似したタンパク構造をとるが、下垂体型GHの加水分解により産生されるヒトの場合とは異なり、GH遺伝子の第3イントロンから転写されるmRNAにコードされるものであった。このGHは、孵卵10日〜孵化までの網膜色素上皮細胞(RPE)にGH受容体を介して結合する。この時期は、RPEにおけるα-MSH産生が観察される時期と一致することから、同定した新規GHは、RPEにおけるα-MSH産生を介して網膜組織発生を制御している可能性が示唆された。
3.鳥類のアグチ関連タンパクは、ほ乳類の場合と同様に、infundibular NP-Yneuronに共発現していた。節食行動制御機構が鳥類でも保存されていることが明らかになった。 -
ヒト紫外線感受性を一本の毛髪を用いて評価するシステムの開発
研究課題/領域番号:11558067 1999年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
山本 和生, 竹内 栄, 井出 宏之, 山本 博章, 鈴木 格
配分額:13800000円 ( 直接経費:13800000円 )
本研究は、紫外線(UV)防御に重要な役割を果たす色素細胞のメラニン色素産生にかかわる遺伝子群、ガンや老化の原因となる紫外線によるDNA損傷を修復するシステムに関わるタンパク質の発現量をモニターすることによって個々人の紫外線感受性を測定し、紫外線による損傷の予防措置を容易にすることを目的とした。1)メラニン色素産生の鍵酵素チロシナーゼ転写調節領域の解析を行った。その結果、シスエレメントに結合するトランス因子の結合を、3'UTRが本鎖ラセン構造形成に関与することにより阻害し、自身の遺伝子発現を調節する可能性を明らかにした。また、哺乳動物、鳥類、は虫類の当該遺伝子の転写調節領域にE-boxをコアとする配列があった。この両端の配列を加えてM-boxと呼ばれる配列は、βHLH-LZ型の転写調節因子が認識するサイトで、UV照射を受けた色素細胞内で、p38によるタンパク質のリン酸化が重要であることが明らかになり、この研究においても当該遺伝子の発現とその修飾がますます重要になることが予想される。2)小眼球症遺伝子の発現は色素細胞の機能亢進のよいマーカーになるので、その遺伝子構造と発現プロファイルを明らかにした。哺乳動物は色素細胞を発生させる二つの系譜を持つ。すなわち間脳から分化する網膜色素上皮と脊椎動物特異的な胚組織である神経冠に由来するメラノサイトである。この遺伝子座の変異体で、メラノサイトの発生のみが異常になる突然変異体マウスを用いて、メラノサイトの分化にはMタイプと呼ばれるアイソフォームの発現を必須とすることを明らかにできた。したがって、ヒト個々人の紫外線感受性を評価するには小眼球症遺伝子産物のMアイソフォームの活性をモニターすることが重要である。3)皮膚に低線量の紫外線を照射し、色素細胞においてメラニン合成に関わる主な遺伝子の転写活性を明らかにした。紫外線による日焼けには、色素合成に関わる遺伝子の転写レベルでの調節が必要であり、この過程にはプロオピオメラノコルチンに由来するメラニン細胞刺激ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンが関わっている可能性が高い。したがって、ヒトの紫外線感受性評価には、これらを考慮して解析する必要がある。4)紫外線DNA損傷修復する酵素遺伝子をクローニングし現在特許申請中である。損傷に対する抗体のを用い、損傷定量のシステムを完成した。紫外線損傷を修復する大腸菌酵素、UvrA及びUvrBタンパク質に対する抗体を用い、修復酵素系の発現と損傷認識の関係を明らかにした。
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マウス子宮における性ステロイドホルモンと成長因子による細胞機能制御機構の解析
研究課題/領域番号:11640665 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
高橋 純夫, 竹内 栄
配分額:4000000円 ( 直接経費:4000000円 )
哺乳類の子宮内膜細胞の増殖は性ステロイドホルモンによって調節されている.この性ステロイドホルモンによる細胞増殖は、局所的に合成され自己分泌的、傍分泌的に作用する成長因子によって仲介されると考えられている.子宮内膜は,単層の上皮細胞と多層の間質細胞で構成されている.この上皮細胞と間質細胞の相互作用を解析するために3次元培養系の構築をした.上皮細胞のDNA合成は,間質細胞との共培養において増加した.また,間質細胞のDNA合成は上皮細胞との共培養によらず,変化はなかった.Estradiol-17β(E_2)投与により上皮細胞のDNA合成は,単独培養において増加したが,間質細胞との共培養においては顕著な効果が認められなかった.以上の結果より,間質細胞層は上皮細胞の増殖促進効果を持つこと,E_2は上皮細胞に直接作用し細胞増殖を促進することが示された.
間質細胞には,上皮成長因子(EGF)やTransforming growth factor α(TGF-α)及EGF受容体(EGF-R)が発現していることを明らかにした.EGFとTGF-αの2日間処理は間質細胞の細胞分裂率を濃度依存的に高めた。E_2(10^<-9>M)とプロゲステロン(P、10^<-7>M)を同時投与した時、細胞分裂率は2.3倍に増加した.EGF-Rの特異的な阻害剤であるRG-13022(10^<-5>M)を投与すると、各処理による細胞分裂率の増加は全て抑えられた.E_2+Pの24時間処理でTGF-α mRNAは増加し、2.8kb EGF-R mRNAは減少した.EGF-R mRNAはE_2の24時間処理で増加し、EGFmRNA量はホルモン処理では変化しなかった.以上の結果から、間質細胞の増殖はE_2とPが協同的に作用して高めること、ならびにこの増殖機構にはEGF-Rが関与することが分かった. -
脊椎動物MSH受容体遺伝子のクローニングと塩基配列分析
研究課題/領域番号:06740629 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
竹内 栄
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
本研究課題では、鳥類に於けるMSHの生理作用を調べると共に、鳥類に見られるMSHの主要分泌器官、下垂体中葉消失の原因を知る手がかりを得ることを目的としてニワトリMSHリセプター遺伝子のクローニングを試みた。既得のマウス色素細胞特異的MSHリセプター(MC1-R)cDNAをプローブとしたニワトリゲノムDNAサザン解析の結果、およそ1.8kbのBamHl断片を検出した。同プローブを用いたゲノムDNAライブラリーのスクリーニングの結果、この断片を含むクローンを得た。塩基配列を決定したところ分子量35297Daのペプチドをコードする翻訳領域を含んでいた。このペプチドは、N末端側に3カ所の糖鎖付加部位を持ち、Gタンパクにカップリングしたリセプターに共通な7つの膜貫通ドメインを有した。ホモロジー検索を行ったところ哺乳類で発表されているMC1-Rに最も高い相同性を示した。これらの事実から得られた遺伝子は、ニワトリに於けるMC1-Rであると結論づけた。この遺伝子は、哺乳類同様イントロンを持たず、その5´上流および3´下流には、これまでに薬理学的・細胞生物学的に示唆されていたMSHリセプターに関する緒知見を裏付けるいくつかの遺伝子発現調節エレメントが観察された。また、興味深いことにこのリセプターは、ホルモン非依存的活性を示す可能性が示唆された。このことは、鳥類において、下垂体中葉が退化した理由を考える上で有用な知見を与えてくれるものと考えられる。
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アマガエル黒色素胞特異的cDNAのクローニング
研究課題/領域番号:05740507 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
竹内 栄
配分額:800000円 ( 直接経費:800000円 )
本研究課題では、当初アマゲエルのMSH標的細胞を同定するプローブを得るため、受容体cDNAのクローニングを計画していた。しかし、最近、哺乳類のMSH受容体遺伝子が遺伝子群を為し個々が細胞種特異的に発現すること、それらがいずれもイントロンレスであることが報告されたことから、クローニングの対象をゲノムDNAに変更した。実験は、まずマウス色素細胞由来のMSH受容体cDNAをプローブとしたゲノミックサザン法による相同配列の検出を試みた。その結果、微かな陽性シグナルが観察されたが、関連配列(遺伝子群)の検出までには至らなかった。これは、用いたプローブが異種生物由来のDNAであったこと、非RI検出法(酵素抗体法)であったことなどによる低検出感度に原因があったと考えられる。そこで、次にlambda-GEM11をベクターとするゲノムDNAライブラリーを作製し、直接遺伝子のクローン化を試みた。その結果、構造の異なる2種類の遺伝子に由来する数クローンを得た。その構造解析から、興味深いことに両遺伝子とも複数コピータンデムにゲノム中に存在することが明らかになった。これらの遺伝子が機能しているのか否か、更に発現細胞の同定は今後の課題である。
MSHの生理的作用は、進化により多様化がみられることが知られる。哺乳類でクローン化されたMSH受容体遺伝子群が互いに相同性を示すこと、および本研究で得られた知見、即ち両生類に於いて受容体遺伝子の増幅が観察されたことを総合すると、MSHは、その受容体遺伝子の増幅と分化によって機能の多様化を獲得したものと考えられる。今後は、更に系統発生学的にこの遺伝子の存在様式を解析し、上述の仮説を立証すると共に、本研究で得られたDNAをプローブとして用い、MSH標的細胞同定、機能検索を行いたいと考えている。 -
メラノコルチン機能及びその受容体遺伝子に関する系統発生学的研究
資金種別:競争的資金