共同研究・競争的資金等の研究 - 岸本 昭
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非平衡電磁波焼結による酸化物全固体電池の精密界面制御
研究課題/領域番号:24K01162 2024年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
寺西 貴志, 近藤 真矢, 岸本 昭
配分額:18460000円 ( 直接経費:14200000円 、 間接経費:4260000円 )
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ミリ波照射を援用した迅速起動・高効率高温電気化学デバイスの構築
研究課題/領域番号:21H01623 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
岸本 昭
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
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研究課題/領域番号:16H04497 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
岸本 昭, 寺西 貴志, 林 秀考
配分額:18070000円 ( 直接経費:13900000円 、 間接経費:4170000円 )
セリア-ジルコニア系での相互拡散はCeイオン濃度が大きいほど促進量が大きく、いずれの濃度でもミリ波照射下の方が大きな値を示した。これはセリアがジルコニアよりミリ波を吸収するため、各地点に存在するCeイオンが、その効果を受け拡散の駆動力であるエネルギーが増大したためだと考察している。チタニア-酸化スズ相互拡散で電気炉・ミリ波拡散ともチタニアのビッカース硬度は向上したが、曲げ強度はミリ波拡散のみで向上となった。置換量の少ないセリアおよびジルコニアにミリ波加熱を行うと低温焼結でき、陽イオン移動促進が示唆された。また、粒成長や曲げ変形に対しては抑制することができ、関連した陽イオン移動抑制が示唆された。
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研究課題/領域番号:25289229 2013年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
岸本 昭, 林 秀考, 寺西 貴志
配分額:18720000円 ( 直接経費:14400000円 、 間接経費:4320000円 )
報告者の提案した超塑性発泡法を用い、セラミック中に導入した気孔の圧力による形状変化を利用したセンサの開発を行なった。 400℃までの温度範囲であればZnO発泡体は加圧・除圧における抵抗変化を示し,センサ素子としての応用が可能であることを示した。更に、異種元素(Ag,Li)のドーピングによって母体の抵抗値を変化させることで,センサ感度の向上や動作温度を500℃まで高めることに成功した。
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高信頼性耐火物への制御した気孔導入が可能な超塑性発泡法の開発
2012年04月 - 2013年03月
キャノン財団 産業基盤の創成
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窒化物セラミックスへのミリ波照射による拡散促進と迅速焼結
研究課題/領域番号:21017005 2009年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
岸本 昭, 林 秀考, 和久 公則
配分額:9800000円 ( 直接経費:9800000円 )
ミリ波焼結を用いAlNを中心とした窒化物を焼結することのメリットは、選択加熱によるエネルギー効率の向上と非熱効果による等温下での焼結の促進であり、後者も最終的には生産性の向上をもたらす。既に報告者は、24GHzジャイロトロン管を用いたミリ波焼結により、これまでAlNで報告されている内でもっとも低い1700℃で相対密度97%以上の緻密化に成功していた。本研究の第一の目的は、ミリ波焼結とHIP焼結を組み合わせて、トータルの処理時間を短縮してこれまでと同等の高い熱伝導率の試料を得ることにある。複合焼結法では、温度、時間、雰囲気の全ての点での優位性が示された。また、一次焼結を同一条件の常圧焼結したものと比較すると、ミリ波一次焼結試料の熱伝導率は50%以上高いことがわかり、ミリ波による一次焼結が有効であることがわかった。ミリ波一次焼結1600℃の試料の添加物依存性に着目すると、密度は添加量に従って増加するが、熱伝導率は逆になっていることが興味深い。複合焼結では添加物の最適値が従来焼結、単独焼結とは異なる可能性が示された。また、ミリ波照射が拡散におよぼす影響を調べるため、イットリア安定化ジルコニアを用いミリ波照射により昇温したとき得られる導電率を、電気炉により同じ温度にしたときの値と比較した。試料と周辺の温度を同一に保った場合、500℃でミリ波照射下の導電率は通常の電気炉昇温に比べ、2.4倍の値を示した。これによりミリ波照射による拡散促進が示唆された。また、導電率が最大となる最適構造が、通常加熱とミリ波加熱では異なる結果が得られた。
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超塑性発泡法によるセラミックス中への自在形状閉経路の形成
2006年04月 - 2007年03月
東レ科学振興会 東レ科学技術研究助成
岸本昭
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マルチスケール材料シミュレーションによるナノ構造高周波セラミックスの電磁特性設計
研究課題/領域番号:17560597 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
鶴田 健二, 東辻 千枝子, 東辻 浩夫, 岸本 昭
配分額:3670000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:270000円 )
本研究では、研究代表者・分担者のこれまでの研究成果を活用・発展させ、超高速・大容量通信デバイスに用いられるナノ構造化高周波材料の基礎物性値高精度予測シミュレーション手法を開発し、高周波デバイス用ナノ構造セラミック・半導体材料の電子状態・磁気特性へ与える欠陥・粒界・不純物の効果の解明へ適用した。
研究期間内に開発した研究手法ならびに適用研究は以下の通りであった:
1.タイトバインディング近似に基づく時間依存シュレディンガー方程式の数値解法による電子輸送係数計算法を開発し、Siナノワイヤにおけるバリスティック伝導やそのワイヤ径依存性を求めた;
2.Si結晶・粒界における不純物水素の拡散過程をハイブリッド量子/古典分子動力学法により解析し、これまで不明であった1000K付近での活性化エネルギーの変化が、欠陥・粒界構造の安定性に起因している可能性を見出した。
3.ダイヤモンド中の強磁性不純物関連欠陥の電子構造と磁気特性解析により、格子間位置にNi不純物が挿入される場合に残留磁化が局所的に発生する可能性を見出した。また、ダイヤモンド結晶中ならびに点欠陥・転位中の水素原子拡散過程・活性化エネルギーを定量的に解析した。
4.古典写像法による低次元電子系の相関構造とスピン分極率の評価を行い、ナノ構造半導体ヘテロ界面への適用検討を行った。
5.並列分子動力学法により、クーロン微結晶系の安定構造と熱的安定性の解析、ならびにスペクトル解析・分子動力学解析を行い、融解現象との対応関係を解析した。
6.新規高周波デバイスへの応用が期待されるメタマテリアルの電磁応答特性に関する時間領域差分法を高度化・並列化し、金属・絶縁体多層構造におけるスパーレンズ効果の発現のシミュレーションに成功した;
これらの成果は多数の国内学会、ならびに内外からの4つの招待講演において発表した。 -
キャリア濃度の傾斜化によるイオン伝導性セラミックスのその場強化
研究課題/領域番号:17656218 2005年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
岸本 昭, 林 秀考
配分額:2900000円 ( 直接経費:2900000円 )
セラミックス材料は、高温構造材料として用いられているが、粉砕によりリサイクルしようとすると強すぎる強度が問題となる。しかし、作製時に強度を低く抑えると、供用の際信頼性が問題になる。我々は、既にジルコニアセラミックスに圧電体であるチタン酸バリウムを分散させた複合体を作製し、分極の方向にで内部応力を制御することにより強化・劣化が随意に行えることを実証したが、現時点でプラスマイナス15%程度の強度制御しか行うことができていない。
同じ無機材料でもガラスでは、急冷やイオン交換により圧縮応力を残留させ、強度を大きくした、いわゆる強化ガラスが用いられている。融点が大きく作製時点で塑性流動の小さな多結晶材料では、急冷により亀裂が生成したり、密な構造中にイオンの出入りが困難であったりするため、これら物理的・化学的な手法での強度制御が行われていなかった。高強度セラミックスは強化ガラスの十倍以上の強度を有し、このような高い強度材、高融点の耐火物においても強度制御が望まれていた。
本研究では、ガラスより遙かに強度が大きく、高温でも軟化しないといった特性を有していながら、内部応力が熱緩和しないような低温でイオン伝導度、イオン交換能が大きなNaβアルミナセラミックスに着目した。ガラス同様にNaイオンをイオン交換することにより、50%にも上る強度制御が達成され、最高強度が500MPaと、構造材料として十分な特性を引き出すことに成功した。またこの材料は、強度値を熱処理により容易に低減できるというリサイクル性に優れた材料であることがわかった。更に、亀裂生成についても検討し、過剰なイオン交換は生成した内部応力によるマトリックス組織の破壊を導くため強度の劣化をもたらすことを見出した。すなわち強化には最適な交換量があることがわかった。 -
高電圧スクリーニング法によるセラミックスの高信頼性化に関する研究
研究課題/領域番号:11875190 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
岸本 昭, 竹田 俊二, 中村 吉伸
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
我々は既に高電圧印加により、機械的に弱い部材を抜き取る高電圧スクリーニング法を提案し、いくつかの系で実証している。本研究では、応力分布の異なる機械強度試験(三点曲げ、四点曲げ、二軸曲げ)を用い、その機械強度と絶縁破壊強度の相関について検討し、高電圧によるスクリーニングの試験方法依存性について知見を得た。
絶縁体試料としてチタニアセラミックスを用いた。市販粉末を一軸加圧により、直方体および円筒形に成型後、1400℃、3h焼成によりバルク試料を得た。ダイヤモンドカッターおよび手研磨により、4×12×0.3mm3およびφ=14mm,t=0.3mmの薄片試料を作製し、前者は三点曲げおよび四点曲げ試験に、後者は二軸曲げ試験に用いた。それぞれの場合について試料片を120枚作製し、半数でスクリーニング前の機械強度と絶縁強度の分布を測定し、30%の試料が絶縁破壊するスクリーニング電界を求めた。これを残りの試料に印加してスクリーニングを行い、絶縁破壊しなかった試料について機械強度分布を求め、スクリーニング前の分布と比較した。
スクリーニング前の機械強度の平均値は三点曲げ:188MPa、四点曲げ:128MPa、二軸曲げ:77MPaとなり、有効体積が大きくなるにつれ平均強度が減少することを確認した。スクリーニング前後の四点曲げ強度分布から、スクリーニングにより、低強度側が高強度よりにシフトし、強度分布が小さくなることがわかった。応力によるスクリーニング(保証試験)の理論線と比較すると、高電圧スクリーニングの結果はスクリーニング前と応力スクリーニングの中間に位置することがわかった。応力スクリーニングとの関係を三点曲げと四点曲げで比較すると、後者に対する高電圧スクリーニングがより応力スクリーニングに近いことがわかった。これは四点曲げの最大応力範囲が三点曲げに比べて大きく、高電圧スクリーニングの電界により近いためであると思われる。 -
窒素酸化物ガス分解用導電性セラミックスの開発
研究課題/領域番号:08555151 1996年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
宮山 勝, 宗像 文男, 岸本 昭
配分額:15500000円 ( 直接経費:15500000円 )
本研究では、導電性酸化物セラミックスに外部から電界を印加し、この電界効果によりNOxガスの吸着・脱離・分解を制御し、高いNOxガス検出・分解特性と特性信頼性を得ることを目的とした。まず、銅含有ペロブスカイト構造酸化物の電気特性、NOxガスの吸着、反応を調べた。n型導電性のNd_2CuO_4では、NOにより導電性減少、NO_2により導電性増大を示した。光電子分光測定結果から、NOとNO_2の吸着状態を確認することができた。ガス吸脱着の外部電界による制御が可能か調べるため、Si/SiO_2基板上のSnO_2薄膜について、Si基板からの電界によりCOガスの吸脱着への電界効果を測定した。47°CでのCOガスの正電荷吸着による導電性変化は、基板からの-電圧印加により増大、+電圧印加により減少した。これにより、-電圧によりみかけの電子濃度が減少している状態では、電子濃度を増加させる反応(COの正電荷吸着)は促進され、電子濃度を減少させる反応(O_2の負電荷吸着)は抑制されることが分かった。酸素イオン伝導体である安定化ジルコニアの片面にPt、他方にNd_2CuO_4厚膜の電極を設け、400°Cで両面が同じ雰囲気に曝されている状態でNd_2CuO_4電極が負極となるように電圧をかけ、NOxガスによる電流変化を調べた。NOxガスにより電流が増加し、その際の酸素分圧に影響を受けないことがわかった。この現象は、NO,NO_2,O_2による混成電位の発生が両電極により異なることが原因であることが、分極電流測定により明かとなった。また、NOxが高濃度の時は、NO_2とNOの間の平衡反応が電極反応を支配し、酸素分圧の影響が小さくなることが予測された。これらの結果より、NOxガスとの反応性の高い酸化物を用い、外部電界によりその吸脱着および酸素活量を制御することにより、NOxガスの検知及び分解反応の促進が可能であることが示された。
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イオン高速輸送機能をもつ固体の創製と評価
研究課題/領域番号:07239105 1995年 - 1997年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
小久見 善八, 岸本 昭, 江坂 亨男, 八尾 健, 渡辺 正義, 藤波 達雄, 江口 浩一
配分額:140700000円 ( 直接経費:140700000円 )
本研究では高速イオン移動が可能な固体材料を創製するとともに、既知イオン移動固体の構造制御と新規プロセッシング技術の開発を目指した。得られた成果は以下の通りである。
1.新規高速イオン移動固体の創製
(1)H^-に対して高い導電性を示す複ハロゲン化物(LiBaF_3-LiBaH_3系、CaF_3系、CsCaCl_<3-x>H_x系、CsCa_<1-y>Na_yCl_<3-x>H_x系)の固溶体材料を得た。(2)高導電性置換型灰重石型酸化物Pb_<1-x>LnWO_<4+x/2>系の酸化物を合成し、Lnの種類のイオン導電率に対する影響を明らかにするとともにその導電機構を明らかにした。(3)極めて高度に枝分かれしたポリエーテル系のポリマー電解質を合成し、室温で3x10^<-4>というこれまでにない高い導電率を得た。(4)AlやBを中心金属とするアート型錯体を用いるポリマー電解質を合成した。この電解質のカチオン輸率は1に近く、また、約10^<-5>S/cmに近いイオン導電率を達成した。
2.高速イオン移動固体の構造制御(1)ジルコニアセラミック中にサブミクロン以下のアルミナ粒子を分分散させることにより、機械特性を向上させることができた。また、10%転化で導電率は極大となり、30%で無添加と同等の導電率を示した。(2)セリア系酸化物をYSZに高分散させることによって、セリアの高いイオン導電率を保持しながら、耐還元性の高い酸化物イオン導電性材料を合成した。
3.新規プロセシング技術(1)プラズマを導電性媒体として用いる気相電解法を構築して銀イオン導電体薄層を合成した。(2)NiOを酸素源とする電気化学気相析出法によって直径約100μmのセリア、YSZのホローファイバーを合成した。フッ化物錯体を出発物質として液相から直接結晶性の析出物を得た。 -
自己診断機能を有する構造材料の開発
研究課題/領域番号:07555655 1995年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
岸本 昭, 柳田 博明, 戸田 郁也, 武藤 範雄, 杉田 稔, 松原 秀彰
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
(1)CFGFRPにおける自己診断機構の広範な材料への適用
自己診断の考え方のセラミックスへの適用は、分担者であるファインセラミックスミックスセンターおよび東大のメンバーにより行った。このうちファインセラミックスミックスセンターでは、検知材として導電性連続層を導入し、加重負荷時の電気抵抗の変化により窒化ケイ素セラミックスの破壊検知を試みた。また東大では、導電性フィラー分散プラスチック被膜をセラミックス材料上に形成し破壊前の導電性変化が顕著であることを見いだしている。自己診断の考え方の柔軟材料への適用は、分担者の一つ太陽工業により行った。CFGFRP同様の炭素繊維の抵抗片かを利用することにより、定期的に膜構造体の劣化自己診断が可能となった。
(2)大型建造物、防犯へのCFGFRPの適用
清水建設ではCFGFRPをコンクリート補強筋として用いた場合の、破壊自己診断性について、綜合警備保障では、壁材の補強筋として用いた場合の侵入防止に用いることを検討した。
(3)CFGFRP自己診断機構の統計的解釈
東京大学のグループでは、同時荷重印加時の脆性材料の機械および電気的特性の挙動から、CFGFRPの自己診断機構の統計的解釈を試みた。その結果CFGFRPの低歪み域での抵抗の漸増減少は、炭素繊維の強度分布に依存し、多数真意に同時に引っ張り試験を施した際の抵抗変化といる簡単なモデルで説明できることがわかった。 -
電気物性評価によるセメント系材料の信頼性評価・寿命予測
研究課題/領域番号:05650628 1993年 - 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
中村 吉伸, 岸本 昭
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
不均質多相系であるセメント系材料において絶縁破壊試験が機械破壊強度、信頼性の代替評価法としての確立の可能性につき検討を行ない、機械強度がマクロな機構の分布状態で決定される化学的組成が単純なセメント材料においては、絶縁破壊強度が機械破壊強度、信頼性を予測する代替評価法として利用できる可能性があることが示された。
ポルトランドセメントペースト硬化体およびモルタルにおける電気伝導度と破壊強度の関連性につき検討を行ない、反応性骨材(パイレックスガラス)NaClを混入させたモルタルの電気抵抗が材齢4日以上で異常に低い電気伝導度を示すことが明らかとなった。硬化開始後30日後の組織観察、EPMA観察により、NaCl添加の反応性骨材を用いたモルタルにおいてアルカリ濃度の異常に高い部分が確認された。反応性骨材NaCl混入モルタルにおいて、硬化開始後365日後の組織観察により、アルカリ骨材反応の兆候と見られる白色滲出物が確認されている。ポルトランドセメントが主成分のモルタルの硬化過程において、NaClの混入がアルカリ骨材反応を誘発することが知られており、この現象の評価が、アルカリ金属等の不純物混入によるアルカリ骨材反応の事前予知に有効であることが確認され、セメント硬化過程における伝導度変化によりアルカリ骨材反応の事前予知の可能性が見いだされた。
応力による強度のばらつきの評価を破壊歪みにより代替えを試み、歪み速度を一定にした場合、歪みが生じてから破壊までの時間を測定し、これによる強度分布の代替えを試みた。また多数の試験片の歪みを同時に増していった場合の試験片の導電率をモニタリングすることで破壊点の特定が可能となる。セメント硬化体は含有水分、浮遊イオンに由来すると考えられる電気導電性をもつことからこの手法はセメント系材料の強度分布の簡便な測定法としても応用できる。 -
過酸化ポリタングステン酸系無機レジストの感光機構に関する研究
研究課題/領域番号:05750604 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
岸本 昭
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
報告者らは、金属タングステンあるいは炭化タングステンに過酸化水素水水溶液を作用させると、新しいタイプの過酸化ポリタングステン酸が生成することを見いだした。この酸の水溶液から得られる非晶質薄膜は、深紫外線、電子線などの放射線に感応し、水系溶媒に対する溶解度が著しく変化するのでマイクロリソグラフィー用無機レジストとして興味がもたれる。また、本ポリ酸塩を前駆体とする低温焼成法により、応用上興味のある新規複合酸化物が得られることも前年度の研究によって明かになってきた。しかし、このポリ酸は非晶質としてしか固体化し得ないので単結晶X線構造解析が適用できず、ポリアニオンの詳細な構造は未確定であった。
本年度の研究では、非晶質X線回折によって提案された過酸化ポリタングステン酸のアニオン構造モデルを検証するために、赤外、ラマンの各分光法を用いた。その結果、調整当初の過酸化ポリタングステン酸は、WO^6八面体の稜共有による三員環と、同八面体の一カ所を過酸化物基により置き換えた五角両錘の頂点共有による六員環が結合してできたクラスターからなることがわかった。このクラスターの稜共有部分は熱処理により解裂し、頂点共有のみからなる構造となるが、この解裂は80℃を境に起こることがわかった。深紫外線を照射した、試料では、処理により温度はさほどあがっていないにも関わらず、稜共有部分は失われていることがわかった。また、縮重合に伴い酸素が放出されるが、その一部は固体中に捕獲されていることがラマン分校法により明かとなった。 -
混合ポリ酸非晶質薄膜のエレクトロクロミック特性と調光素子への応用
研究課題/領域番号:04555182 1992年 - 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 試験研究(B)
工藤 徹一, 川上 章, 岸本 昭
配分額:11300000円 ( 直接経費:11300000円 )
1.新エレクトロクロミック(EC)材料の開発と評価
金属タングステンWおよびモリブデンMoの混合粉末を過酸化水素水溶液に溶解させるとこの二つの金属を含むポリアニオンを酸基とする過酸化ポリ酸が得られる。この水溶液を導電性ガラス基板上に回転塗布することにより均質な非晶質薄膜(〜0.4μm)を形成できたので、その組成や熱処理条件とEC特性の関係について調べた。120℃で加熱したMo/W=1の膜は、有機電解液中でリチウムイオンをインターカレートした際に無色から黒青色の大きなコントラスト比の着消色特性を示すと同時に、良好な可逆性を示した。
2.高分子固体電解質/EC膜界面の特性評価
過酸化ポリタングステン酸の回転塗布によって得られる酸化タングステン膜をLiBF_4をドープしたエチレンオキシド/プロピレンオキシドの光共重合によって得られる固体電解質膜と接触させ、その界面におけるEC反応について調べ、固体セルの動的特性の検討に適する新たな過渡電流解析手法も開発した。その結果、電解液との界面では電荷移動過程が着消色の速度を律するのに対しこの固体系では酸化タングステン中のリチウムの拡散が律速となっていること、さらには良好な着消色の応答性を有することも明らかになった。
3.透過型全固体EC素子の試作および特性評価
過酸化タンタル酸から作成される新たなプロトン導電性薄膜を開発し、その特性を評価すると共に、これを用いて酸化タングステン/プルシアンブルー(PB)系の透過型素子を試作した。この素子においては、プロトンがPB中にあるときは光を透過するが、プロトンが酸化タンタル膜を通して酸化タングステン中に移動すると透過率が急減する。この繰り返しが安定に起こることが確認されたので、調光素子への応用の可能性が示された。 -
新規な過酸化ポリ酸の構造と感光機能に関する研究
研究課題/領域番号:04205024 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
工藤 徹一, 岸本 昭
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
機能性無機材料研究の一環として、報告者らが見いだした過酸化ポリタングステン酸を用いた無機レジスト材料の研究・開発を行なっている。この新規のポリ酸は金属Wと過酸化水素の直接反応により生成するもので、その水溶液からスピンコート法により均一な薄膜を得ることができる上、深紫外線・電子線・集束イオンビームなど様々な線源に感応してネガ型の特性を示し、高い感度と解像度を有することがわかっている。今回ラマン散乱スペクトルの測定により、感光時の縮重合についての知見とこれに関連した、酸素分子のケージング現象を見い出した。
無添加のW-IPA薄膜について、加熱処理またはdeep-UV照射した試料についてラマン散乱スペクトル測定を行った。これらの処理により580および880cm^<-1>付近のピークが小さくなり、600〜700cm^<-1>のピークが大きくなる。このことより、ポリアニオンの網目構造が発達し重縮合が進むことがわかる。80℃で長時間保持したものについては100℃、0分処理のものと形状が異なり、むしろ80℃、0分のものと似通っている。このことから、80℃付近にある安定相が存在することが示唆され、これはIRでも確認された。またある程度の熱処理を施したものには、1550cm^<-1>付近にピークが存在し、生成した酸素分子はマクロな構造の緻密化によりケージングされていることが明らかになった。UV照射した試料のラマン散乱スペクトルは、100℃で熱処理した試料のものと類似していることがわかった。またこれにも同様に酸素がケージングされていることが明らかになった。これまでのX線動径分布関数を用いた解析によりW-IPAは、WO^6八面体の頂点共有と稜共有三員環からなるクラスター構造をとることがわかっている。以上の結果と合わせ熱処理またはdeep-UV照射すると、縮重合が進み不溶化し、同時に酸素がケージングされるものと考えられる。 -
新規な準安定相三酸化タングステンの構造とインターカレーション機能に関する研究
研究課題/領域番号:04650722 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
工藤 徹一, 岸本 昭
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
報告者らは、金属タングステンと過酸化水素水の反応で生成する過酸化ポリタングステン酸のアンモニア塩を前駆体として用いることにより、六方晶三酸化タングステンが得られることを見いだした。これは、従来のWO_3・1/3H_2Oの熱分解によって生じる六方晶相とは明らかに異なるもので、三酸化タングステンの新しい準安定相と考えられる。これまでは現状は、少なからぬ不純物を含み、また、結晶性も十分ではないため、精密な構造解析は行われていなかった。この物質はアルカリ金属インターカレーションのホストとして興味深いが、このような機能も同じ理由により、系統的には評価されていなかった。本研究では、まず、前駆体アンモニウム塩の合成条ならびにその熱分解条件を精密に制御することにより、純粋で結晶性のより六方晶三酸化タングステン試料を得ることを目的とした。前駆体アンモニウム塩は過酸化ポリタングステン酸溶液にアンモニア水を加え、加熱後中和して析出させ、これを焼成して目的の物質を得た。純粋で結晶性のよい試料を得るため、前駆体中にパラタングステン酸アンモニウムの副生成しない条件および焼成時に高温相の生じない条件を検討した。さらにこの物質のX線回折により構造を決定し、従来の六方晶相との相違を明確にすることができた。第二に、この六方晶フレームワークがもつトンネル中、あるいはトンネル間プリズム位置への種々のアルカリイオンの電気化学的インターカレーションを試み、その可逆性やイオンの拡散挙動について検討した。この化合物を作用電極、アルカリ金属(本年度はリチウム)を対極および参照極とする有機電解液3電極セルをアルゴングローブボックス中で組立て、電量滴定的にインターカレーション反応を追跡し、その可逆性についても検討した。その結果充電時にはわずかな過電圧が見られるものの良好な可逆性を示した。
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極致物性の相関を用いたセラミックス材料の新しい信頼性評価法
研究課題/領域番号:03213204 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
柳田 博明, 岸本 昭, 宮山 勝, 河本 邦仁
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
我々はこれまでに機能性電子材料セラミックスについて絶縁破壊と機械破壊の間に統計分布の相関を見いだしており、これら極致物性の相関を利用した機械強度の信頼性の代替評価法を提唱している。これまでBaTiO_3、TiO_2などを用いて様々な微細構造・表面状態の本代替評価法に及ぼす影響と適用性を明らかにしてきた。このセラミックスに対する新しい評価法^<1‐3)>は誘電体材料のかなりの離囲を網羅するものとして注目を集めつつあるが、その原理的裏付け・適用条件については十分な情報が得られているとは言えない。さらに、現在構造材料として広く使用されているセラミックスへの適用に関しては未知の部分が多い。
そこで本研究では、現在構造材料として広く一般に使用されているAl_2O_3を用いて構造材料セラミックスの本代替評価法の適用を試みると共に、この評価法の原理的裏付けに着いての考察、特に前年度熱衝撃の絶縁・機械両強度の相関を調べた際に、機械強度における折れ曲がり及び絶縁強度と機械強度の分布の相関の原因が熱衝撃によって生じたクラックであると報告したので、今年度はそのクラックと両強度の相関、特に予亀裂を導入することによって、その予亀裂と両破壊の起点との関係を明らかにすることを目的とした。
熱衝撃試験および予亀裂試験の結果、ヌ-プ圧子による圧痕のように亀裂先端の角度が極端に鈍い場合、その亀裂長さと方向が機械強度には大きく影響を及ぼすが、絶縁強度にはあまり寄与しない。また、クラックが表面傷先端から試料内部に進展している試料の絶縁強度は試料表面につけた電極がその内部のクラックをどの程度反映しているかに大きく依存すると考えられた。さらに、絶縁破壊試験により機械強度のばらつきを代替評価する際、弱点分布ひいては弱点そのものが等しく、また表面傷が少ないほど、その信頼性が高くなることを明らかにした。 -
新規な過酸化ポリ酸の構造と感光特性に関する研究
研究課題/領域番号:03205024 1990年 - 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
工藤 徹一, 岸本 昭
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
機能性無機材料研究の一環として、報告者らが見いだした過酸化ポリタングステン酸を用いた無機レジスト材料の研究・開発を行なっている。この新規のポリ酸は金属Wと過酸化水素の直接反応により生成するもので、その水溶液からスピンコ-ト法により均一な薄膜を得ることができる上、遠紫外線・電子線・集束イオンビ-ムなど様々な線源に感応してネガ型の特性を示し、高い感度と解像度を有することがわかっている。
現在、電子線露光により孔径0.1μm程度の微細パタ-ンを描き、これをマスクとして有機樹脂に微細加工できることを確認している。一方、本レジスト材料は有機非線形材料(MBANP)と反応する事なく塗布することができるという特性を利用して、遠紫外線露光により線幅10μm程度のパタ-ンを描き、これをマスクとして下層の有機非線形材料を加工することに成功している。過酸化ポリタングステン酸、過酸化ポリニオブ酸はこれを前駆体として用いることにより興味深い特性を示す複合酸化物が得られる。これまで、塩を形成するカチオン種と生成する骨格構造について調べた結果過酸化ポリニオブ酸を用いて得られた骨格構造複合酸化物は3種類に大別されるが、いずれもこれまでニオブ系複合酸化物として唯一知られていた欠陥ペロブスカイト型とは異なっていた。RbおよびCs塩からは歪んだパイロクロア型構造の結晶が得られた。またYおよびランタノイド系の塩からは六方晶系の結晶が得られた。このうち、YおよびSm〜Luの塩とイオン半径の大きなLa〜Ndの塩では異なるX線回析パタ-ンを示した。前者は過酸化ポリニオブ酸単身を焼成して得られる構造と同一であるが、後者はこれまでに報告のない新規化合物であることが分かった。 -
酸化タングステン水和物の非晶質薄膜の構造と電気的特性
研究課題/領域番号:02650575 1990年 - 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 一般研究(C)
工藤 徹一, 岸本 昭
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
代表的なエレクトロクロミズム発色材料である酸化タングステン水和物薄膜を過酸化ポリ酸からスピンコ-ティング法により作製し、そのEC特性を蒸着など通常用いられる方法により得られた膜と比較した。さらにその構造あるいは組成変化に伴う構造変化を動径分布関数や各種の分光法等で解析し、非晶質中のイオンの伝導メカニズムを検討した。その結果熱処理膜は蒸着膜と同様の六員還を有するクラスタ-構造をとることがわかった。イオンの輸送過程を調べるため行なった定電位法においては、従来報告されている拡散律速の式を当初用いたが、膜厚の増加とともに拡散定数が増加するという不合理な結果が得られた。このため電荷移動律速のモデルをたて解析を行なったところ、実験事実をうまく説明することができた。
全固体ECDを念頭におき、発色膜と組み合わせるべき固体電解質膜を同様の材料から、同じ回転塗布法より作製し、特性評価を行った。原料溶液としてタンタル、ニオブ過酸化ポリ酸を用いた。その結果、過酸化ポリタンタル酸から作製した試料は、同一熱処理条件でも導電率が最も大きく、また雰囲気依存性も最も小さいことから有望なプロトン伝導性膜であることがわかった。
酸化タンズステン系以外のEC発色材料として、同様の過酸化ポリ酸から得られる酸化モリブデン水和物について検討した。モリブデン単独を原料としたポリ酸から得られた膜は、着消色のコントラストが大きい反面、消色か不十分である、熱処理温度を上げると特性が劣化するなどの欠点を持っていた。タングステンとの複合化した膜はW単独から作製した膜と同様ほぼ完全に消色し、150℃まで安定でありながら、Mo系特有の高いコントラストは損なわれていないことが分かった。 -
極値物性の相関を用いたセラミックス材料の新しい信頼性評価法
研究課題/領域番号:02229204 1990年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
柳田 博明, 岸本 昭, 宮山 勝, 河本 邦仁
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
本年度は、実際に構造材料として用いられてれいるAl_2O_3を使用し、熱衝撃を加えた場合の絶縁・機械両強度分布の相関を調べた。
試料として三菱鉱業セメント(株)製アルミナフィルム(厚さ30μm.純度97%)を使用し、このフィルムを10mm+3.5mmに切り出した後、熱衝撃を加えた(△T=0K〜300K)。昇温速度は400℃/hで一定とし、所定の温度まで昇温、それぞれの温度で20min保持した後水中(20℃)に投下急冷することにより熱衝撃を加えた。
熱衝撃を加えていない試料の絶縁強度のワイブルプロットは良い直線性を示し、最弱リンク理論に則ったワイブル統計によって評価できることがわかった。さらに、絶縁・機械両強度のワイブルプロットはよい一致を示しており、絶縁体である構造材料セラミックスに対しても本代替評価法が適用できる可能性が示された。
熱衝撃を加えた場合には、200Kまでの熱衝撃に対しては両破壊とも平均強度値の変化はあまり見られず、200K以上の熱衝撃で徐々に強度が低下したが、臨界温度差△Tcを境にした急激な強度低下という現象は、本実験においては見られなかった。熱衝撃を加えた場合の絶縁・機械両強度分布を同一紙面上で比較したところ、200K以下の熱衝撃では両分布はよい一致を示した。250Kの熱衝撃を加えた試料では、機械強度の分布においてはっきりとした折れ曲がりが見られたが、絶縁強度の分布には折れ曲がりが見られず、両分布は一致しなかった。機械強度はクラックが曲げ方向に対して垂直か平行であるかによって強度が変化することから、折れ曲がりはこのクラックの方向を反映したものと考えると、表面亀裂などの弱点分布に異方性が存在する場合には、絶縁破壊試験においてはその異方性を捕らえることが出来ないために、代替評価法として使用する際には注意が必要であることも同時に示された。 -
新規な過酸化ポリ酸の構造と感光機能に関する研究
研究課題/領域番号:02205026 1990年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
工藤 徹一, 岸本 昭
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
機能性無機材料研究の一環として、報告者らが見いだした過酸化ポリタングステン酸を用いた無機レジスト材料の研究・開発を行なっている。この新規のポリ酸から得られる薄膜は様々な線源に感応してネガ型の特性を示し、高い感度と解像度を有することがわかっている。そこで、感光メカニズムを解明するとともに、感度・解像度をより一層高め、微細パタ-ンを工夫することにより、実用的な二層ナノメ-タ-リソグラフィの実現を目指している。
現在、電子線露光により孔径0.1μm程度の微細パタ-ンを描き、これをマスクとして有機樹脂を微細加工することで高機能分離膜/センサ-膜の製作を試みている。一方、本レジスト材料は有機非線形材料(MBANP)と反応する事なく塗布することができるため、遠紫外線露光により線幅10μm程度のパタ-ンを描き、これをマスクとして下層の有機非線形材料を加工することも試みている。
過酸化ポリタングステン酸は単身で機能性を有するが、これを前駆体として用い、カルカリ金属、アルカリ土類金属と反応、生成した非晶質塩からは一次元あるいは三次元トンネルを有する酸化タングステン基骨格化合物が低温焼成により容易に得られることがわかった。本年度、塩を形成するカチオン種と生成する骨格構造との関係を調べた結果、生成する三種の骨格構造はカチオンのイオン半径と価数に関連付けられることがわかった。更にアンモニウム塩からは、これまで水熱法でしか得られなかった六方晶WO_3を合成することができた。この物質にK^+、Li^+の電気化学的インタ-カレ-ションを試みたところ、前者ではトンネル内のKサイト数に相当するまでの注入では骨格構造は変化せず、格子定数変化も小さいことがわかった。
MoについてもWと同様の方法により過酸化ポリ酸を調製し、そこから得られる固体相の構造と機能について予備的な検討を行なってきた。
Moを用いたときも過酸化基の存在量に対応した固体相が生成するが、Wを用いたときと同様金属原子と0_2^<2ー>の比が1対1の結晶相、過酸化基を含まない一水和物結晶相が得られた。両系ともに金属原子に対する過酸化基の比が1未満の非晶質相が得られるが、Moを用いた場合にのみ0_2^<2ー>の割合がMoに対し0.5の結晶相が生成した。得られた非晶質相は水に対する溶解度が高く、回転塗布による膜形成が可能であることがわかったのでその、EC特性・感光性について検討している。 -
金属の過酸化ポリ酸を出発原料とする新複合酸化物の合成と物性評価
研究課題/領域番号:01645505 1989年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
工藤 徹一, 岸本 昭
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
タングステンに過酸化水素水を作用させると、新しいタイプの過酸化ポリ酸が生成する。この酸は種々のカチオンと不溶性の非晶質塩を作るが、これを前駆体として用いる低温焼成法により、通常の方法では得られない複合酸化物を合成できる。本研究は、このような方法で多くの複合酸化物母体(ホスト)を合成し、それらから導かれる導電性酸化物の物性を検討しつつ、超伝導体の探索を行なうことを目的として研究を行なった。
過酸化ポリタングステン酸(IPA)は、既報と同様に合成した。この溶液に硝酸バリウム攪拌しながら加えると、白色のバリウム塩(Ba-IPA)が沈澱した。この塩は、520℃で結晶化し、650〜700℃で別の結晶相に転移したあと、800℃付近でWO_3とBaWO_4に不均化する。通常の固相反応では800℃以上の高温を必要とするため、ここで得られた二つの結晶相を得ることはできない。
520℃で生成した最初の結晶相:xBaO・WO_3(=Ba_xW_<1-x/3>O_3,x=0.3)は、ほぼ正八面体のWO_6が頂点共有してできたフレ-ムワ-クを基本構造としている。この構造(空間群P6_3/mmc)は、既に報告のある六方晶WO_3や六方晶タングステンブロンズ(P6_3/mmc)とは異なる全く新しいものである。
ここで得られた化合物は完全酸化状態にあり導電性を示さない。導伝性を付与するためには何らかのド-ピングが必要である。Ba_xW_<1-x/3>O_3を例にとれば、Baを一旦プロトンにイオン交換し、これにLa^<3+>を注入するような方法が最も有望と考えられる。このためBa_xW_<1-x/3>O_3を1NHNO_3中で80℃加熱したところ、40%のBaが比較的速やかに交換し、母体の構造はそのまま保存されることがわかった。現在La^<3+>を注入する方法について検討している。xCs_2O・WO_3、xK_2O・WO_3も同様なド-ピングを行なう予定である。