共同研究・競争的資金等の研究 - 豊田 和弘
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CEP ペプチドを介した植物免疫の新制御機構
研究課題/領域番号:21K05597 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
豊田 和弘
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
植物の病原体に対する免疫応答の活性化についての研究は盛んに行われてきたが、免疫を負に調節する仕組みについては世界的にも殆ど解析されていない。このような状況の中、シロイヌナズナの健全な植物体から免疫抑制因子(内生サプレッサー)の探索と精製を進め、その1つが C-terminally encoded peptide 5 (CEP5)のフラグメントであることをすでに明らかにしている。実際、化学合成した CEP5 ペプチドのフラグメントまたは成熟型ペプチドで前処理した植物体では不適応型菌や非親和静菌による感染が成立する。当該年度は、免疫応答時における CEP ペプチドの役割について明らかにする目的で、CEP5 遺伝子を含むすべての CEP 遺伝子 (CEP1-CEP15) の病原体や植物ホルモンに対する応答について調べた。その結果、強い免疫応答を伴う病原性欠損株、非親和性菌ならびに不適応型菌の接種に応答して複数の CEP 遺伝子の発現が誘導されたが、親和性菌では CEP14 遺伝子を除いて明確な応答は認められなかった。すなわち、CEP 遺伝子は ETI や PTI に伴って誘導されること、さらに親和性の組み合わせでも一部の CEP 遺伝子が拡大抵抗性に伴って発現が誘導されるものと推測された。事実、CEP 遺伝子はサリチル酸の処理によって発現が増加することが明らかとなった。このことは、CEP 遺伝子の発現が植物ホルモンによる調節を受けていることを示唆している。以上の結果は、遺伝子応答に伴って生成する一群の CEP ペプチドが「過剰な免疫応答を未然に調節し、成長と防御の最適化を図る」という考え(仮説)を強く支持している。今後は、病原菌やホルモン応答性のすべての CEP ペプチド(成熟型)を化学合成し、これらの免疫応答に対する作用について調べるとともに、CEP 遺伝子の過剰発現体や抑制個体を用いた解析を進め、この仮説の妥当性について検証していく。
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植物細胞壁を介する病原体認識・応答のダイナミズム
研究課題/領域番号:18K05645 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
豊田 和弘
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
パターン認識レセプターを介する植物免疫(PTI)についての研究は急速に進んだが、細胞壁を起点とする情報伝達・応答との関連(相互作用)については依然不明な点が多い。研究実施者はこれまで、植物細胞壁が病原菌を認識し、構成分子を通して細胞内外の防御応答を開始させることを示してきた。一方で、病原体が分泌するサプレッサーやこれと類似の作用をもつ物質(内生サプレッサーと命名)をプローブとしてこれらの制御機構についても解析を進めた。本課題研究では、植物細胞壁における免疫応答と PTI 応答の関連を強く示唆する知見を提供するとともに、既知の免疫分子を必要としない未知の情報伝達機構の存在を示した。
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植物細胞壁における異物認識・情報伝達・防御応答のダイナミズム
研究課題/領域番号:22580051 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
豊田 和弘
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
植物に固有の細胞壁が病原体による感染を未然に防ぐ物理的な障壁となることは周知の事実であるが、外界からの生物的あるいは化学的な情報を受信(認識)し、それらを正確に伝達して細胞あるいは組織全体の防御機構を成立させる動的な小器官であることが最近の申請者らの研究によって明らかとなってきた。本研究は、細胞の外側で行われる高次の情報処理システムの分子基盤について、病理学の視点からメスを入れ、細胞(組織)の統御と恒常性の維持を図る植物細胞壁の新たな機能に迫るものである。
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基本的親和性の破綻を利用した病害抵抗性植物の作出
研究課題/領域番号:18658019 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究
豊田 和弘
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
本研究課題では、病原糸状菌との基本的親和性成立に関与する植物遺伝子について解析し、その機能の改変に基づいた新たな病害防除技術を提案することを目的としている。これまでに、エンドウ褐紋病菌が生産する病原性因子(サプレッサー)に対する宿主植物の応答遺伝子をサプレッション・サブトラクティブハイブリダイゼーション(SSH)法で解析した。シーケンスの結果、約150遺伝子が単離され、その1つに葉緑体局在型のリポキシゲナーゼ(LOX,lipoxygenase)をコードする遺伝子が含まれることが明らかとなった。一般に、葉緑体局在のLOXはジャスモン酸合成への関与が推定され、サプレッサーが宿主植物のジャスモン酸合成経路を転写レベルから活性化していることが予想された。実際、LOXとその下流で働くallene oxide synthase(AOX)、allene oxide cyclase(AOC)ならびに12-oxophytodienoic acid reductase(OPR)のサイレンシング個体では、エンドウ褐紋病菌に対する罹病性が低下し、病斑形成の抑制が認められた。この結果は、サプレッサーの作用発現にはLOXを介した応答(ジャスモン酸経路)が関与し、これと拮抗するサリチル酸経路に依存した防御応答の抑制が関連しているものと考えられた。同様に、毒性発現にジャスモン酸経路を必要とする植物細菌毒素(コロナチン)の作用を調べた結果、いずれのサイレンシング植物でも壊死斑の形成が著しく阻害(遅延)された。以上の結果は、サプレッサーを含む病原性因子の作用発現は宿主の情報伝達系や代謝に依存しており、それらに関与する宿主遺伝子の改変によって、一部の病原菌(糸状菌、細菌)に対する耐性を付与できることを示す。
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植物オルガネラ間相互作用による異物認識機構に関する分子解析
研究課題/領域番号:15108001 2003年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
白石 友紀, 一瀬 勇規, 稲垣 善茂, 豊田 和弘
配分額:109720000円 ( 直接経費:84400000円 、 間接経費:25320000円 )
感染サイクルの大半を細胞外(植物表面や細胞間隙)で営む病原糸状菌や細菌をモデルとして、分子パターン認識と病原性エフェクターの作用機構について解析してきた(H15〜18年度)。今年度は、糸状菌由来エフェクター(サプレッサー)の分子標的である宿主植物の細胞壁アピラーゼの相互作用分子の解析を進め、TOF/MS解析から複数の情報伝達や酸化還元関連分子の存在を示した。また、アピラーゼで生成するリン酸は細胞壁に構成的に存在するペルオキシダーゼ(POX)依存性の活性酸素生成を亢進し、さらに一群の細胞外POX遺伝子を転写レベルから活性化することを示した。一方、表層でのパターン認識に続く過敏感細胞死の分子機構について、エリシチンをモデルに解析した結果、細胞周期(M期)制御系の構成因子NbCdc27Bは過敏感細胞死には直接関与しないが、抵抗性機能発現にそのC末端領域が必要である可能性が示唆された。また、細菌由来分子パターン(フラジェリン)による下流の情報伝達・遺伝子応答についてマイクロアレーで解析し、植物固有の転写因子WRKY41を同定した。WRKY41はフラジェリン処理で急速に発現が誘導されるが、エフェクターにより発現が抑えられる。さらに、WRKY41高発現体ではPseudomonas syringaeに対する抵抗性が増高したが、逆にErwinia carotovoraに対する感受性は高まった。この結果は、WRKY41はSA系に対して正に作用していることを示す。しかし、アピラーゼ高発現体の解析から、SA経路やJA経路とは異なる情報伝達系の存在も示されている。以上から、細胞壁には植物独自の異物認識機構が存在し、細胞壁始発のシグナルは感染防御を担う様々な細胞小器官へ情報伝達され、固有の細胞内因子の活性化あるいはフィードバック機構(増幅)を介して、最終応答(抵抗性発現)が制御されているものと考察した。
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植物防御応答遺伝子の発現を誘導する転写因子の解析
研究課題/領域番号:12460023 2000年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
一瀬 勇規, 豊田 和弘
配分額:13200000円 ( 直接経費:13200000円 )
本研究ではエリシター処理エンドウから単離された新規転写因子E84(ERDP)について解析を進めた。E84の遺伝子産物はアミノ末端付近に植物特有のDof DNA結合タンパク質ドメインを有する転写因子である。大腸菌で発現させたE84組換えタンパク質はAAAG配列を有するDNA断片に結合することがランダム結合選別法により明らかにされた。また、E84結合配列の一つBS4/37(TCATTTAAAGTGTTTT)をモデルとしてAAAG前後の配列に変異を導入して結合実駿を行ってみるとAAAGの3'側のTGT配列も高い結合親和性のために必要な配列であることが明らかとなった。また、エリシター応答性のPsCHS1遺伝子のプロモーターとの結合実験を行ってみたところ、AAAG配列を有する断片に結合した。一方、E84結合配列BS4/37を4つ直列に連結し、CAMV 35Sプロモーターの最小単位に連結させ、エンドウプロトプラストを用いたトランジェントトランスフェクションアッセイを行った。その結果、エリシター処理によりレポーターの活性が高まり、AAAG配列の直列繰り返し配列がエリシターによる転写活性化に関与することが示された。また、E84タンパク質はE84遺伝子自身のプロモーター配列にも結合することより、正のオートレギュレーションを行っている可能性も示唆された。以上のことはE84タンパク質及びその結合配列がエリシターによる転写活性化に貢献している可能性を示している。また、E84以外にDofドメインをアミノ末端付近に有する新規Dof遺伝子を6種単離し、エンドウでDof遺伝子がファミリーを形成していることが示された。これらの知見は植物防御応答時における様々な防御遺伝子の転写活性化の解明に繋がるものと考えている。
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植物細胞における病原菌認識装置の分離とそれらの再構成に関する基礎的研究
研究課題/領域番号:11760036 1999年 - 2000年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
豊田 和弘
配分額:2200000円 ( 直接経費:2200000円 )
植物-病原菌の相互作用における宿主特異性決定機構の解明は、自他識別という生命現象の根幹に迫りうる課題であり、幾多の応用的価値を秘めている。植物の感染病をモデルとすれば、感染の成立(罹病化)、または拒絶(抵抗化)が特異性決定の指標となる。これまでに、エンドウー褐紋病菌Mycosphaerella pinodesをモデルとして、病原菌に対する認識は先ず宿主の細胞壁で行われ、下流の原形質膜シグナル伝達系が制御されていることが次第に明らかとなってきた。そこで、本研究では、細胞壁における病原菌認識と、これに引き続く情報伝達の流れを明らかにすることを目的とした。すなわち、エンドウ細胞壁ならびに原形質膜可溶化タンパク質から病原菌シグナル物質(サプレッサー、エリシター)に対して応答する分子(酵素活性)を探索し、エンドウcDNAライブラリーからそれらのクローニングを行った。一方、大腸菌で発現させた組み換えタンパク質を抗原としてポリクローナル抗体を作製するとともに、ビオチン標識、またはそれらを固相化したアフィニティーゲル担体を作製し、シグナル伝達系における相互作用分子の探索を進めた。この結果、原形質膜シグナル伝達系を構成するリピッドキナーゼ(組み換えタンパク質)を直接リン酸化する原形質膜タンパク質の存在が明らかとなった。また、分離原形質膜におけるリピッドキナーゼはエリシターで活性化し、逆にサプレッサーやタンパク質リン酸化酵素阻害剤の存在下には著しく抑制されたことから、本リン酸化酵素は原形質膜から細胞内部への情報伝達に深く関与しているものと推定された。現在、本酵素の上流で働くタンパク質の精製・解析を進めてる。
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Molecular mechanism on host-parasite specificity
資金種別:競争的資金
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病原菌の宿主特異性とその分子機構
資金種別:競争的資金