共同研究・競争的資金等の研究 - 味野 道信
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研究課題/領域番号:24656236 2012年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
味野 道信
配分額:2990000円 ( 直接経費:2300000円 、 間接経費:690000円 )
室温でマグノン系にボーズアインシュタイン凝縮が発生する事が光散乱実験により報告されている。この非線形緩和過程を利用する新しいマイクロ波デバイスを開発する目的で、パラメトリック励起された強磁性マグノンからのマイクロ波放射を実験的に調査した。平行励起とスール1次不安定化過程による垂直励起により、強磁性体イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)のマグノン励起を行った。大電力励起下では、多くの周波数成分を持つ放射が同時に観測される。放射スペクトルは静磁場、つまり静磁モードに強く依存していることが分かった。また、放射の時系列データからも4マグノン散乱過程が放射機構に関与している事が明らかになった。
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繰り返しパルス磁場を用いた超高精度テラヘルツESRシステムの開発
研究課題/領域番号:13554011 2001年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
野尻 浩之, 松田 康弘, 味野 道信, 山嵜 比登志, 小山 佳一, 左近 拓男
配分額:14100000円 ( 直接経費:14100000円 )
本研究では、30テスラの超強磁場を2秒の繰り返しで発生できる繰り返しパルス磁場装置をテラヘルツESR装置と組み合わせて、信号の積算を行う事により飛躍的なS/N比(信号/ノイズ比率)の改善を達成した。これまで市販のESR装置が100GHz程度までに留まっていたのに対して、本装置では3THzを越える周波数範囲で超高精度の測定を可能にした。従来の単発型パルス磁場ESR装置に比べて単位測定時間あたりのS/N比の改善は50倍以上となり、極微少な信号の検出が可能になった。また定常磁場を用いた高感度装置に対しても遜色のない精度を達成した上に、単位時間に測定できるスペクトル数で定義する測定効率は格段に向上した。磁場分解能に関しては、時間スペクトル積算法において20テスラ領域で約10ガウス、ソフトウエアを用いたピークピッキング積算法により約1ガウスの分解能を達成することに成功した。この装置の応用実験として、梯子物質における極微弱な禁制遷移を2THz以上の高周波で測定することに成功した。また、ナノ分子クラスターの微少単結晶を用いて複雑なESR吸収モードを測定し、そのスピンハミルトニアンのパラメーターを精密に測定することに成功した。今回の開発研究の結果、テラヘルツ領域でのESRを物理だけでなく、生物、化学、医学、材料科学などの研究においても用いる道が開かれた。今後の発展として、繰り返しパルス磁場を用いた分光、ラマン散乱、磁化測定、放射光X線散乱などへの応用も期待される。
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ガーネット薄膜における動的磁区構造の研究
研究課題/領域番号:12740236 2000年 - 2001年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
味野 道信
配分額:500000円 ( 直接経費:500000円 )
膜面垂直方向に磁化容易軸を持つ,Bi置換ガーネット薄膜を試料にして磁区構造パターンに関する研究をおこなった.この組成の試料は,ファラデー効果により磁区構造が偏光顕微鏡で直接観察可能である.まず,今までに行った低周波領域での緩和に伴うパターン変化実験結果の解析を進めた.1Hz以下の交番磁場下で迷路状構造がストライプ状パターンに変化する場合のパターン全体の相関長の変化,ドメインの分岐点や終端などの欠陥分布の解析を行った.パターンの相関長は交番磁場を加えることにより最初緩やかにべき関数的に増加するが,緩和がある程度進んだ段階から速さが増加する.これは,パターンに最初含まれる小さな渦状構造の消滅に関連している.印可する交番磁場の振幅によって,この渦構造の消滅までの時間が異なるため,緩和速度が変化する時間も異なるが,速度変化点でのパターンは同様な相関長を持つことが明らかとなった.パターンの欠陥も初期状態では均一に分布しているが,緩和が進むと特定の領域に集中する.初期の緩和がゆっくりと進行している領域では,欠陥間の距離を規格化すると分布は同一であることが分かった.さらに,交番磁場の周波数及び振幅を増加させた場合,ストライプが異なる方向に平行に揃った領域間での競合が発生する.この時,ストライプが平行に揃った各ドメインサイズはは交番磁場振幅が大きくなると減少する.これは相転移点近傍の高温側で見られるのクラスターサイズの問題に関連していると思われる.より高周波および大振幅領域で,パターンの時間平均コントラストの解析から動的構造相転移の検証を試みたが,磁場強度の不足等によりその存在の確証を得るには至らなかった.しかし,時間平均後にも構造を持つことより,外部交番磁場の周期に比べて長周期な自発構造が発生していることを確認した.
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磁性薄膜における磁区パターン形成過程の観測
研究課題/領域番号:10740191 1998年 - 1999年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
味野 道信
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
強磁性体薄膜において観測される磁区構造の,交番磁場下における緩和現象に関する研究を行った.強磁性体ガーネット薄膜は膜面の垂直方向に磁化容易軸を持つため,偏光顕微鏡を用いて直接磁区構造を観察することができる.外部静磁場がゼロの場合に特定の条件下で観測される島状の磁区構造を初期状態として,これがストライプの迷路状構造に変化する過程に関して測定を行った.磁区のストライプ幅は,異方性と磁化によりほぼ一定に保たれるので,今回は,磁区の長さの逆数に相当する島状磁区の数を特徴的な量として測定を行った.島の数は,最初は加える交番磁場の回数に対して指数関数的に急速に減少する.しかし,ある程度減少した後は,交番磁場回数に対してべき関数的なゆっくりした現象過程に変化する.これは,島状の構造が磁区が平行に揃ったストライプ構造に変化する過程が,2段階に起こっていることを意味している.最初の島が繋がる過程,つまり短い帯が発生する過程は試料のいくつかの領域で独立に発生する.つまり離れた2点間には相関がなく,帯の向きは各領域でほぼランダムであると考えられる.この自発的対称性の破れが発生する初期過程は比較的短時間に急速に,つまり指数関数的に進行すると考えられる.各領域の帯の長さが有る程度発達し互いに接するようになると,試料全体に渡って帯の向きが揃い始める緩和過程に移行する.これが,後半に観測された磁区が伸びる過程であり,帯の向きが異なる各領域間の競合であると考えられる.この過程は,各領域の界面間の相互作用が緩和の駆動力となるため,比較的ゆっくりと長時間にわたって進行することになる.このためにべき関数的な特徴が現れたののではないかと考えられる.
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YIGマグノンからのマイクロ波放射
研究課題/領域番号:09640435 1997年 - 1998年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
山崎 比登志, 味野 道信
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
強磁性体スピン波系に対して,高電力マイクロ波による非線形励起(パラメトリック励起)を行うと,特定の波数を持ったマグノンのみが強く励起されて増大するため,マグノン非平衡状態を作り出すことが出来る.これらのマグノンが直接に,あるいは,マグノン散乱過程により別の周波数のマグノンとなり間接に,マイクロ波を放射する.すなわち放射緩和が起こることが期待される.したがってマグノン系からのマイクロ波放射を検出することにより,マグノン間相互作用あるいはマグノン凝縮状態に関するデータが得られると期待される.
非平衡マグノンはマイクロ波共振器内に置かれたフェリ磁性体YIG(イットリウム・鉄・ガーネット)内に励起されるが,このマグノンという非線形振動子はマイクロ波フォトンと非線型結合してマグノン-フォトン非線形結合共振モードが出現する.この結合モードの特性を実験・理論の両面から解明した.実験は高電力マイクロ波により共振モードを作り出し,そこへ弱い第二のマイクロ波を加えてその周波数をスウィープしながら共振モードを観測した.
放射マイクロ波を検出する実験はYIGの球状単結晶の磁化容易軸である[111]軸方向および単結晶薄膜の膜面内([111]軸に垂直)に静磁場と9-16GHzマイクロ波磁場を加える平行励起法で行った.放射マイクロ波は試料の周りに巻いたピックアップコイルにより検出し,マイクロ波スペクトラムアナライザでそのパワースペクトラムを解析した.また放射マイクロ波強度が減衰する時間変化の測定からスピン波緩和時間を測定した -
強磁性体における非平衡マグノンの擬縮状態の研究
研究課題/領域番号:08454098 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山嵜 比登志, 味野 道信
配分額:6900000円 ( 直接経費:6900000円 )
強磁性体の磁気モーメントに平行に強いマイクロ波磁場を加え非線形励起(パラメトリック励起)を行うと,特定の波数を持ったマグノンのみが強く励起されて、マグノン非平衡状態を作り出すことが出来る.これらのマグノンはマグノン間散乱過程によりエネルギーを失い,やがてマグノンバンドの底に集まって凝縮状態になることが予想される.この研究ではまずこの凝縮状態のマグノンが放射するマイクロ波を探索し,その性質を明らかにしようとした.非線形励起実験はイットリウム・鉄・ガ-ネット(YIG,直径約1mmの単結晶球)の磁化容易軸である[III]軸方向に磁場を加えて行った.励起マイクロ波周波数は9.6GHzで,シンセサイザからの出力マイクロ波を進行波管増幅器により最大16Wに増幅して試料に加えた.その結果試料の周りに巻いた小さいピックアップコイルによってマイクロ波信号が検出された.そのシグナルはロ-パスフィルタ,低雑音マイクロ波増幅器を経てマイクロ波・スペクトラム・アナライザで観測された.そのマイクロ波の周波数は励起マイクロ波のそれとは異なり、スピン波バンドの底よりやや低い周波数およびその2倍,3倍の周波数であった.そのスペクトルは幅を持っているため,マグノンが単一周波数に凝縮しているという確証はまだ得られていない.また非平衡マグノン対とそれを励起するマイクロ波共振器との非線形相互作用も重要になり、それら2つの結合系として扱わなければならない.その考えの基に理論的考察も進めている.
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磁壁移動に関する非線形動力学の光学的観測
研究課題/領域番号:08874036 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽的研究
山嵜 比登志, 味野 道信, 圓山 裕
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
交流磁場中におけるガ-ネット薄膜の磁壁移動による磁区構造の緩和過程に関する研究を行った.ガ-ネット薄膜では赤外および可視光の長波長領域でのファラデー効果を用いて,その磁区構造を偏光顕微鏡によって観測することができる.磁化容易軸,つまり膜面に対して垂直方向に磁場を加えて試料を単磁区化した後に磁場を急速に取り除くと,渦巻き状の磁区が複雑に組み合わさった構造が観測される.その後,数百ガウスの交流磁場(本実験では0.25Hz)を繰り返し加えることによって,この磁区構造に変化が発生する.このとき帯状の磁区がY字状に分岐する点に着目し,定量的解析を行った.このY字状分岐の数は,交流磁場を加えることによって指数関数的に減少する.これは急激な磁場変化のために凍結されていた構造が,摂動磁場によって緩和する過程であると考えられる.さらにその分岐点の空間的分布を調べるために,相関積分法を用いた解析を行った.初期状態では相関距離と相関積分の両対数プロットは傾きが約2の直線上にあり,薄膜の2次元平面上にほぼ均等に分布していることがわかる.交流磁場を加えた後には,相関距離の短い領域で傾きが1.5程度と2次元から1次元の方向に変化する傾向が読み取れた.これは,最初渦巻状に入り組んでいた磁区構造が,磁壁が平行にそろったストライプ状の構造に変化するためと思われる.つまり,磁壁が平行にそろった各領域の中ではY字状分岐が減少し,隣接するストライプ状領域との境界上に沿って1次元的に分岐が残るためである.この時,両対数プロットの傾きが変化する相関距離はストライプ状構造の特徴的長さを与えていると考えられる.
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変調励起下でのスピン波系非線形緩和の研究
研究課題/領域番号:06740292 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
味野 道信
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
大電力マイクロ波によって強磁性体や反強磁性体のマグノンを励起すると,その非線形緩和のためにマグノン数に自励発振さらにはカオスが発生する.この発振現象について以下の2点について研究を行った.
1.変調励起下での引き込み現象の観測
一般に2つの振動子系が非線形に結合されている場合に,周波数の引き込み現象や準周期ルートからのカオスが観測される.今回マグノン系の自励発振に,励起マイクロ波に振幅変調を加える方法と,外部静磁場に変調を加える2つの方法を用いて,発振の引き込み現象について研究を行った.どちらの場合も,ア-ロルドの舌と呼ばれている状態図によく似た引き込みの相図を得ることができた.このことは,励起マイクロ波及び外部静磁場が非線形なコントロールパラメータとして発振現象に関与していることを示唆している.従って今後このパラメータを精密に制御する事によって,カオス発生点近傍及びカオス-カオス転移点での普遍性などの研究が可能であると思われる.
2.マグノンの緩和定数と自励発振の関係
一定の励起周波数のもとで外部静磁場を変化させると,励起されるマグノンの波数が増滅し緩和定数を変化させることができる.この時,自励発振周波数がどう変化するか測定を行った.磁場を低磁場側に変化させ,励起されるマグノンの緩和時間を短くすると発振周波数は高くなる結果を得た.次にシミュレーションで同様に緩和時間を変化させたところ,自励発振周波数は高周波数側にシフトしたが,変化の様子は実験とは異なっていた.このことから,自励発振機構には波数依存性を持つ他のパラメータが重要であることがあらためて明らかとなった. -
高温酸化物超伝導体におけるフォノン異常の中性子散乱による研究
研究課題/領域番号:05224103 1993年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
新井 正敏, 遠藤 康夫, 山田 和芳, 味野 道信, 本河 光博
配分額:1500000円 ( 直接経費:1500000円 )
本研究では酸化物高温超伝導体の機構の解明をフォノンの異常と言う観点より研究してきた。一方スピン揺動が超伝導の発生に関与しているらしい実験事実も多くの測定手段により報告されており、両者の相互作用を解明することは、本機構解明にとって、大変重要な問題であった。折しもCuGeO_3なる一次元反強磁性体がSpin-Peierls転移を示すことが報告され、スピンと格子が直接に相互作用をする系として、高温超伝導機構の解明の立場からも非常に興味を持たれた。本研究ではこのような観点に立って、CuGeO_3のスピン相互作用異常、格子構造異常、格子のダイナミックス異常を重点的に研究した。その結果Spin-Peierls転移の生ずるc-軸方向とは直角面内で、格子の構造及びダイナミックスに非常に大きな異常が室温より成長し、転移温度(Tsp=14K)でその格子異常がスピン相互作用と競合することにより、Spin-Peierls転移が生ずることを突き止めた。つまり、銅原子を一次元鎖につないでいる酸素原子がa-b面内で、構造異常を引き起こし、それが銅原子間の超交換相互作用のc-軸方向の変化を生むことにより、スピン-スピン相互作用に変調を起こすと考えられる。しかしながら、より定量的な結果は今後のより詳しい測定、解析を待たねばならない。
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マグノン系の非線形励起とカオスの研究
研究課題/領域番号:02952070 1990年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(特別研究員)
味野 道信
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )