共同研究・競争的資金等の研究 - 大林 一平
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数理情報科学に基づく超秩序構造の網羅的解析
研究課題/領域番号:20H05884 2020年11月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A) 学術変革領域研究(A)
志賀 元紀, 松下 智裕, 大林 一平
配分額:98670000円 ( 直接経費:75900000円 、 間接経費:22770000円 )
開始年度となる本年度では、まず、計上していた予算を用いて多数CPUコアおよびGPUを搭載した計算機を購入し計算機環境を整備し、また、研究データの整備および開発ソフトウェアの機能強化を行った。
計測データから原子配列を推定する課題において、光電子ホログラフィーや蛍光X線ホログラフィーから原子像を再構成する理論が研究分野全体の鍵を握っている。蛍光X線ホログラフィーでは通常はBarton法が使われるが、これはX線の波長を変えながら、約10枚のホログラムを必要とする。理論が向上すれば、この測定量を減らすことが可能になる。そこで、L1正則化や最大エントロピー法を用いた方法の研究、また、リバースモンテカルロ法を用いて原子像再生をする理論の研究を行った。
超秩序の記述法の課題において、トポロジーの概念を活用し、従来の手法では特徴付けが難しかった構造記述子の構築に取り組んだ。具体的には、孔や空隙の形や大きさ、ネットワーク構造など多体秩序の定量的記述を目指し、この目標のため、パーシステントホモロジー(PH)という数学的手法などを活用した。こうして超秩序構造のための記述子を構成し、それを利用して物性を予測する機械学習モデルを構築し、超秩序と物性の関係を明らかにするための理論およびソフトウェア整備を行った。さらに、他の計画班との連携によって、シリカガラスの化学結合ネットワークのトポロジー解析を行った。具体的には、様々な条件で合成されたシリカガラスにおける化学結合ネットワーク上のリング(閉ループ)を解析し、比較を行った結果をまとめて学術雑誌NPG Asia Materialsにおいて発表した。 -
力学系と計算トポロジーの融合による新しいデータ解析技術の開発
研究課題/領域番号:19KK0068 2019年10月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
荒井 迅, 平岡 裕章, 大林 一平, 竹内 博志
配分額:18330000円 ( 直接経費:14100000円 、 間接経費:4230000円 )
本研究は,力学系と計算トポロジーを融合することにより,新しいデータ解析の手法を開発すること,また開発した手法を用いて様々な分野の具体的な応用問題に貢献することを目指す.さらに,具体的な問題への応用という観点から力学系の安定性理論を見直し,新しい力学系の安定性概念を提案することも目的とする.主な道具は,力学系理論からはコンレイ指数理論や分岐理論,一様双曲性証明アルゴリズムであり,計算トポロジー理論からはパーシステントホモロジー理論やその逆問題解析法などである.この目的のため,力学系の研究と位相的データ解析の双方の分野において世界的に指導的な役割を果たしてきた,米国ラトガース大学のミシャイコフ教授のグループと連携を進める.アルゴリズムの実装から具体的な応用まで幅広く相互に技術を交換し,データ解析の新しい枠組みを 展開することを目指す.ラトガース大学との直接の人的交流は新型コロナ感染拡大もあり思うように進んでいないものの,前回渡航時に検討した問題の解析を進め,基礎理論を構築しつつある.特に,動的なデータ解析を目指す上で重要な,サンプル写像に対するパーシステントホモロジー理論の基礎づけや,具体例への応用のための計算アルゴリズムについて進展が得られた.応用面では,このような位相幾何学的な手法と,統計的因果推論や,大域的な力学系解析手法などを組み合わせた手法について研究を進め,生物学や化学などの異分野から提供される様々な実データに対して適用できる手法の開発を進めている.
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パーシステントホモロジーによる位相高次構造抽出手法開発
2019年10月 - 2023年03月
科学技術振興機構 さきがけ
担当区分:研究代表者
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X線顕微鏡と応用数学の融合による航空機用複合材料の破壊トリガーサイト特定
研究課題/領域番号:19H00834 2019年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
木村 正雄, 大林 一平, 武市 泰男, 丹羽 尉博
配分額:45890000円 ( 直接経費:35300000円 、 間接経費:10590000円 )
(1) 昨年度、高度化に成功したX線顕微鏡による4次元/5次元観察により、高空間分解能(~50nm)で、応力負荷しながら(in situ)X-CTによる観察を行いCFRP (炭素繊維強化プラスチック)におけるき裂の発生、進展の挙動を調べた。
その結果、Mode I (引っ張り)応力でのミクロ・ナノスケールでのき裂の発生・進展挙動は、 (A)樹脂内でのき裂発生と、(B)炭素繊維/樹脂界面での剥離、が競合して進行し、どちらが優位になるかは、炭素繊維の配列に大きく依存していることが新たに判明した。炭素繊維が離散的に配列し炭素繊維間の距離dがd≧1/2r(r:炭素繊維の半径)程度の領域では(A)モードでのき裂発生、炭素繊維が密に配列しd<1/2r程度の領域では(B)モードでのき裂発生が主体となることが初めて判明した。
(2) 昨年度、高度化に成功した走査型X線顕微鏡(STXM)を用いた炭素の化学状態をナノスケールでマッピングする技術を用いて、CFRPの観察を実施した。炭素繊維内の黒鉛微結晶のC=C結合由来のπ軌道の配向分布を定量化するために、回転試料台を用いた観察技術を確立した。
(3)顕微鏡ビッグデータの応用数学による解析として、不均一性のかたちをマルチスケールかつ定量的に特徴付ける手法であるパーシステントホモロジー(PH)の高度化に取り組んだ。現状は、解析の対象が二次元データに限られているため、アルゴリズムの改良と計算プログラムの高度化を継続して行った。鉄系酸化物の三次元顕微鏡データを用いて、解析が可能であることを確認し、更に可視化の高度化を推進中である。
(4)なお、当初予定していた耐環境性セラミックスコーティング(EBC)の観察については、試料の製造が困難であることが判明し、代替として鉄系酸化物の還元過程のX線顕微鏡観察に取り組むこととし、その準備を進めた。 -
ハイブリッド力学系としての二足歩行の吸引領域の形成メカニズムに注目した解析
研究課題/領域番号:16K17638 2016年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
大林 一平
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
去年度の「今後の研究」の所に書いた通り、この年度は位相的データ解析の研究のほうに力を入れて研究した。
パーシステントホモロジーと機械学習の組み合わせに関する論文がこの5月に出版された。パーシステントホモロジーはデータの形を定量的に抽出することができ、機械学習はデータに隠されたパターンを発見(学習)することができる。この2つの組み合わせによってデータの特徴的な幾何的パターンを抽出することが可能となる。さらにこれに逆解析という手法を組み合わせることでその特徴的パターンの起源を具体的なかたちとして取り出すこともできる強力な手法である。材料科学データへの応用例や他の画像解析手法との比較なども含まれ、実践的な応用がしやすい結果であると言える。
また、10月にはパーシステントホモロジーの逆問題に関する論文も出版された。この問題では上に挙げた逆解析の新しい手法を提案する論文である。パーシステント図は2次元平面上のヒストグラムとして表現されるが、ヒストグラム上の各点はデータのホモロジー的構造(穴や空洞など)と対応している。この構造を抽出できれば(上の機械学習によるデータ解析のような)データ解析で有用であるが、それは数学的に容易な問題ではない。既存の手法として「ホモロジー最適化」と呼ばれる手法が用いられており、本論文ではそれをパーシステントホモロジーに適する形で利用した新しい手法を開発した。線形計画法で効率的に計算するアルゴリズムも提案し、それを利用可能なソフトウェア実装やそれによる計算例もこの論文で紹介している。 -
演繹的・帰納的セル・オートマトン構成法が織りなすデータと数理モデルの相互横断研究
研究課題/領域番号:16K13772 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
中野 直人, 宮路 智行, 川原田 茜, 大林 一平, 廣瀬 三平
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
本研究課題では,現象の新しいモデリング手法として統計的セル・オートマトン(CA)構成法を提案し,(A)CAの局所規則の選択性に対する数値解析的研究と,(B)データに対して定量的に適合するモデル化手法の精緻化の両面からのアプローチによって統計的CA構成法の確立を目指した.(A)ではCAとPDEの解との比較を区間演算の概念を用いて明らかにし,統計的CA構成法で導出される局所規則の選択法則に対する数学的な検証を与えた.(B)ではデータ駆動的に非線型波動現象の解挙動を模倣するモデルを構成した.さらに機械学習的手法との関連や力学全構造計算法への応用に結びつけ,現象モデリングの新しい手法を構築した.
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大自由度系を含む力学系の大域的構造と分岐の研究
研究課題/領域番号:21340035 2009年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
國府 寛司, 荒井 迅, 岡 宏枝, 大林 一平
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
力学系の大域的構造を位相幾何的方法と計算機援用解析を融合して解析する Conley-Morse グラフの方法を改良し,隣接パラメータ領域に対する Conley-Morse グラフ間の接続関係を求めるアルゴリズムの開発や,相空間の非一様グリッド分割で計算コストを軽減する手法を得た.Conley-Morse グラフの変化から力学系の構造の変化を捉える位相計算的分岐理論の観点から,crisis 分岐などの新しい数学的定式化を得た.Conley-Morse グラフの方法を用いて結合写像格子や結合振動子系の大域的構造の解析を行い,不安定な不変トーラスなどの不変集合とそれらの間の結合関係が捉えられることを確認した.