Research Projects -
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レドックスを基盤とした光合成機能スイッチングの環境適応原理
Grant number:23H04961 2023.04 - 2028.03
日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)
吉田 啓亮, 桶川 友季, 園池 公毅
Grant amount:\114270000 ( Direct expense: \87900000 、 Indirect expense:\26370000 )
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Photosynthesis ubiquity: Supramolecular complexes and their regulations to enable ph otosynthesis all around the globe
Grant number:23H04957 2023.04 - 2028.03
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
栗栖 源嗣, 斉藤 圭亮, 山本 大輔, 白井 剛, 坂本 亘, 日原 由香子, 広瀬 侑, 丸山 真一朗, 田中 亮一, 皆川 純, 吉田 啓亮, 桶川 友季
Grant amount:\111280000 ( Direct expense: \85600000 、 Indirect expense:\25680000 )
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チオレドキシンによるPGR5/PGRL1依存経路の制御機構とその生理的意義の解明
Grant number:21K06219 2021.04 - 2024.03
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
桶川 友季
Grant amount:\4290000 ( Direct expense: \3300000 、 Indirect expense:\990000 )
光化学系I (PSI) サイクリック電子伝達は光防御機構の誘導に重要な役割を果たす。最近私たちは、PSIサイクリック電子伝達経路の1つであるPGR5/PGRL1依存の経路がレドックスタンパク質であるチオレドキシン(Trx)によって制御されることを明らかにした。しかし制御の詳細な分子機構やその生理的意義など今後明らかにしなければならない課題は多い。そこで本研究ではPGR5/PGRL1依存経路の制御にどのような生理的意義があるかを解明することを目的に研究を進めている。
本年度はPSIサイクリック電子伝達がPSI以降の還元力(電子)分配に与える影響を調べた。葉緑体ストロマではチラコイド膜上での電子伝達反応で生じた還元力(電子)を利用して様々な代謝反応がおこなわれる。PSIサイクリック電子伝達活性が上昇したPGR5の過剰発現株ではTrx依存のカルビンサイクルの酵素の活性化が抑制されることが明らかになった。その一方で、カルビンサイクルの酵素の活性化が抑制されたNTRCタンパク質の欠損変異株(ntrc)バックグラウンドでPSIサイクリック電子伝達を欠損させると酵素の活性化は回復した。またntrc変異株で見られた生育阻害も抑制された。この結果からPGR5依存のPSIサイクリック電子伝達はカルビンサイクルの酵素の活性化に影響を与えるほど活性が大きく、効率的な光合成の誘導にはPSIサイクリック電子伝達活性は厳密に制御される必要があることが明らかになった。これらの結果は論文として報告した。
さらにTrxの変異体解析からf型Trxではなくm型Trxが特異的にPGR5依存のPSIサイクリック電子伝達の制御に関わることを明らかにした。f型Trxの変異株ではPGR5依存のPSIサイクリック電子伝達活性に影響は見られなかった。この結果も論文として報告した。 -
Production of marker-free transplastomic plants using complementation of the psbA-deletion mutant
Grant number:20H02961 2020.04 - 2024.03
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Scientific Research (B) Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
寺地 徹, 山岸 博, 木村 成介, 桶川 友季
Grant amount:\17550000 ( Direct expense: \13500000 、 Indirect expense:\4050000 )
高等植物で葉緑体の組換え体を得るためには、通常、組換え体を選抜するマーカー遺伝子を用いる。マーカー遺伝子の多くは細菌由来の抗生物質耐性遺伝子であり、葉緑体の組換え技術を野菜などの作物へ応用する際には、耐性遺伝子に対して消費者が良いイメージを持たず、作出された組換え作物に不安を抱くことが懸念される。そこで近年、耐性遺伝子を使わずに組換え体を選抜する「マーカーフリー」な組換え方法の開発が求められている。
当研究室では、栽培タバコ(Nicotiana tabacum cv. SR1)を用いて葉緑体の組換え系統を多数作出してきた。その中には、自律複製能力のある葉緑体DNA断片を持つプラスミドを葉緑体に導入して得た系統があるが、#3-2と呼ぶ系統では、導入したプラスミドよりはるかに大きなプラスミドが保持されていることがわかっている。また、この系統の自殖第2代は、若い葉は緑色で生えてくるが、葉が発達して古くなるにつれ白色化してアルビノになるという、特徴的な表現型を示す。このアルビノタバコを次世代シークエンシングにより解析したところ、葉緑体ゲノム上にあるpsbAのコード領域が欠失していることが明らかとなった。
本研究は、このアルビノタバコを材料に、psbAを相補することで白色の葉から緑色の形質転換体を作出することが可能か、またこの現象を利用して抗生物質を使用せずに組換え体を選抜できないかを検討することを目的としている。そのため今年度は、psbAを欠失しているアルビノタバコ(#3-2 T2)の特徴づけを昨年に引き続き行うとともに、psbAをアルビノタバコの葉に導入するために用いる葉緑体形質転換プラスミドの構築を行った。また、構築したプラスミドのDNAを、パーティクルボンバードメント法によりアルビノタバコの葉へ実際に射出し、緑色の組換え体が得られるか調査した。 -
Regulation of PSI cyclic electron transport by the m-type thioredoxin
Grant number:19H04733 2019.04 - 2021.03
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area) Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
桶川 友季
Grant amount:\5330000 ( Direct expense: \4100000 、 Indirect expense:\1230000 )
光合成電子伝達経路の1つである光化学系I (PSI) サイクリック電子伝達は光合成と光防御に必須である。しかし、分子レベルでの制御機構や制御の生理的意義に関する研究はあまり進んでいなかった。そこで本研究では、レドックス制御タンパク質であるチオレドキシン (Trx) の標的タンパク質がPSIサイクリック電子伝達に関わるPGRL1であることを明らかにし、その制御機構を分子レベルで解明することを目的に研究をおこなった。研究材料として用いたシロイヌナズナの葉緑体には5タイプのTrx (f, m, x, y, z) が局在している。
単離したチラコイド膜とTrxタンパク質を用いたin vitroの実験から、還元型のm型Trxが特異的にPSIサイクリック電子伝達を負に制御することを明らかにした。PGRL1のシステイン置換形質転換体を用いたin vivoの解析では、m型TrxがPGRL1の123番目のシステインとジスルフィド結合し、複合体を形成することによってPGR5/PGRL1依存のPSIサイクリック電子伝達を部分的に抑制することが明らかになった。またどのような条件でPSIサイクリック電子伝達が抑制または活性化されるかを調べるために様々な光条件で検討をおこなった。その結果、暗条件では形成されていたm型TrxとPGRL1の複合体が光照射によって一過的に解離することがわかった。これは光合成誘導期にPSIサイクリック電子伝達が活性化することを示唆した。これらの結果を論文として報告した。
さらに変異体の解析からf型TrxとPGR5/PGRL1依存のPSIサイクリック電子伝達が光合成誘導期に協調的に効率的な光合成の立ち上がりに寄与することを明らかにした。両方を欠損したシロイヌナズナの変異株では葉緑体のストロマが過還元状態となり光合成電子伝達が抑制されていた。この結果も論文として報告した。 -
チオレドキシンによる光化学系Iサイクリック電子伝達の制御機構解明
Grant number:17H05730 2017.04 - 2019.03
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
桶川 友季
Grant amount:\6240000 ( Direct expense: \4800000 、 Indirect expense:\1440000 )
光化学系I(PSI)サイクリック電子伝達は、リニア電子伝達と同様に光合成と光防御機構に不可欠であることが証明されているが、その制御機構についてはあまり明らかになっていない。プロトン駆動力の形成に寄与するPSI サイクリック電子伝達の制御機構を明らかにすることはプロトン駆動力制御のネットワークの全貌解明に必要である。
本年度は前年度に引き続き、チオレドキシン(Trx)がPSI サイクリック電子伝達を制御することを明らかにすることと、その制御においてTrx が標的とするタンパク質を同定することを目的に研究を進めた。
前年度の研究から葉緑体ストロマに5グループあるTrxのうちm型Trx(Trx m3を除く)が特異的にPSIサイクリック電子伝達活性を抑制することを明らかにすることができた。そこで本年度はm型Trx が2 つあるPSI サイクリック電子伝達経路のどちらを抑制するかを調べるために、PSI サイクリック電子伝達の2つの変異株、crr2、pgr5 を用いて解析をおこなった結果、m型Trx がPGR5/PGRL1 依存の経路を抑制することを明らかにした。
また、m 型Trx がどのタンパク質を標的とし、PSI サイクリック電子伝達を抑制しているかを明らかにすることを試みた。植物個体から抽出したタンパク質を非還元条件で電気泳動し、m型Trx 特異的な抗体を用いて検出した結果、m型Trx が何らかのタンパク質と相互作用している結果が得られた。分子量からPGRL1 がその候補の1 つとして考えられたため、PGRL1 特異的な抗体を用いて同様の実験をおこなったところ、同じ分子量の位置にバンドが確認できた。またそれぞれの欠損変異株でそのバンドが検出できないという結果から、PGRL1 がm 型Trx の標的タンパク質である可能性が示唆する結果を得ることができた。 -
Study on the redox regulation mechanism in the thylakoid lumen.
Grant number:16K18573 2016.04 - 2019.03
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Young Scientists (B) Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
OKEGAWA Yuki
Grant amount:\4290000 ( Direct expense: \3300000 、 Indirect expense:\990000 )
Redox regulation of the thylakoid luminal proteins is important for the assembly and photoprotection of the photosynthetic photosystem and electron transport. CcdA and HCF164 serves as transducers of reducing equivalent from the stroma into the thylakoid lumen. However, its regulatory mechanism is not yet fully understood.
To study the molecular mechanism of the trans-thylakoid thiol reduction system, we performed the rescue experiments. The growth defects of ccda mutant was partially recovered when grown on the MS media supplemented with TCEP as a reductant, suggesting that the trans-thylakoid thiol reduction pathway is important.
To further characterize the trans-thylakoid thiol reduction system, we investigated the reductant of the system on the stroma side. Because thioredoxins are possible candidate protein, the transgenic plants overexpressing chloroplastic thioredoxins in Arabidopsis wild type were analyzed. -
Molecular mechanism of reducing equivalent transfer system on the thylakoid membrane.
Grant number:23770049 2011 - 2012
Japan Society for the Promotion of Science Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Young Scientists (B) Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
OKEGAWA Yuki
Grant amount:\4550000 ( Direct expense: \3500000 、 Indirect expense:\1050000 )
The redox state of higher plant chloroplast varies greatly under light and dark conditions. Many proteins, including enzymes related to photosynthesis, are activated depending on its redox state. However, its mechanism remains to be fully elucidated. In this project, we focused on thioredoxins, which act as regulator of proteins in chloroplast stroma. Arabidopsis mutants defective in accumulation of thioredoxins were obtained and analyzed, which revealed that thioredoxins are important for photosynthesis and photoprotection.
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PGR5依存の光化学系Iサイクリック電子伝達経路の解明
Grant number:07J08015 2007 - 2009
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
桶川 友季
Grant amount:\2700000 ( Direct expense: \2700000 )
光化学系Iサイクリック電子伝達はリニア電子伝達と同様、光合成と葉緑体の光阻害回避の両方に必須である。これまでにモデル植物であるシロイヌナズナを使って変異株の解析が行われてきた。この重要性から考えて、サイクリック電子伝達の機能はイネでも当然保存されていると考えられる。本年度、私はイネにおけるサイクリック電子伝達の生報機能を解明することを目的に実験を進めた。サイクリック電子伝達に必須なタンパク質をノックダウンさせた形質転換植物ではサイクリック電子伝達活性が減少していた。それに伴い、光合成電子伝達速度も減少していた。これはシロイヌナズナの表現型と一致する。以上のことからイネにおいてもサイクリック電子伝達は光合成と光阻害の回避に必須であるということが証明された。
またもう一つの研究として葉緑体分化と光合成に対するサイクリック電子伝達と葉緑体のプラスチドターミナルオキシダーゼであるPTOXの相互作用について遺伝学的に証明することを目的とし実験を行った。サイクリック電子伝達とPTOXの生理学的な関係を調べるために、両方の機能を欠損する突然変異株の解析を行ったところ、PSIサイクリック電子伝達の減少はPTOXを欠損するシロイヌナズナの突然変異株、immutansにおける葉の斑入りを抑制した。対照的にPTOXの欠損はcrr2pgr5における成長阻害の表現型を緩和した。crr2 immutans spgr5ではストロマの過還元と電子伝達の阻害が部分的に軽減されていた。本研究において様々な変異株のバックグラウンドを使うことによってオルタナティブな電子伝達の機能が初めて明らかとなったと言える。以上の結果から研究最終年度の目的を達成する結果が得られたと言える。本研究の研究成果については11月の関西光合成研究会および、3月の日本植物生理学会において口頭発表を行った。